ウルシオ ー ル と酢酸 ‑ , 硫酸 ‑ , ま た は塩 化 一 金属塩 化合物 との反応生成物1'2)
蟻 川 彰 ・ 畑 篤*
( 平成9 年10月3 1日受理)
要 旨
生 漆か ら抽 出したウル シオ ー ルと 鉄, 鉛, マ ンガン, 亜鉛 及 び銅 を含 む酢 酸‑, 硫 酸‑, ま たは塩 化一 金 属 塩 化 合 物 との反応 を 行い, ウル シオ ー ル中に取 り込まれる金 属 量 を測 定した。 ウル シオ ー ルと金 属 粉 末 との反 応の場合よ り, 取り 込 まれる金 属 量は酢 酸 鉄(Ⅲ), 酢 酸 鉛(Ⅱ), 酢 酸亜鉛, 酢 酸マ ンガ
ン(Ⅱ), 塩 化 銅(Ⅱ) を使 用し た場 合に は, 鉄で約3 倍, 鉛で約40倍, 亜鉛で約4 .9倍, マ ンガンで約0 .9 倍, 銅で釣0 .5倍の量が取り込まれた。 ま た, これ らのなかで特に金属含量の多かった鉄 や 鉛のウル シ オ ー ル錯 体は室温で乾燥した。
キ ー ワ ー ド
ウル シオ ー ル, 酢酸 金 属 塩, 硫 酸 金 属塩, 塩 化 金 属塩
1 緒 言
生漆と金 属粉 末との反 応を行 うと, 金属 粉 末は 生漆中の主成分のウル シオー ル に取 り 込 ま れ る事を 明 ら か に してきた3'4'5'6 )。
一 方, 水
・ 有 機辞 剤 混合 溶媒 中でも 金属粉 未はウル シ オ ー ルとの反 応 が 可能で あった2 )。 し か し, 金 属 粉 末と 生漆ま たはウル シオー ル との反応
によって取り込 ま れ る金 属量 に は 限界が あ り,
最 も反応 性の高い鉄粉 末でも, ウル シオ ー ル
1 モ ル当たりに取り込 まれ る鉄含量 は紬Qm m oV
m olであっ た。 本実験 セは, ウル シオ ー ル と 酢 酸‑, 硫 酸‑, ま た は 塩イヒー金属 塩化合 物と
の反 応によ り, ウル シオー ル中に取 り 込 ま れ る 金 属 量 を どこまで増やせるかを 試 み た。 ま た, 中国 産 ウル シオ ー ルと日本産 ウル シオ ー
ルとの反 応 性の比較も 行っ た。 金 属含量 が多
いウル シオー ル ・ 鉄ま た はウル シオ ー ル ・ 鉛 錯体の特徴につ いても明ら か に し た。
2 美 浜
2.1 試 料
生漆は中 国産( 高岡市 うるしの柳 瀬 商店) と 日本産 ( 高山) を使用した。 ウル シオー ル
の抽出 は既 報7 )の方 法にした がっ た。 生漆に ア セ トンを加えて 3 時間撹 拝し, ア セトン不 容 部を渡 過で除去した後, 液液のア セ トンを 減圧除去した ものを使用した。 な お, 本文中
で は以 下, う る しの柳 瀬 商店からのウル シオ
ー ルはウル シオ ー ル(Y), 日本産のウル シオ
ー ルはウル シオ ー ル(N)と略記した。 金 属 化 合 物は塩 化鉄(Ⅱ) (関東化学, 特蔽, 9 6 .0% ), 塩 化鉄(Ⅲ) (関東化学, 特級, 9 7.0% ) , 硫 酸
産 業工芸学 科 *学生課 技 官
2 蟻 川 彰・ 畑
第 一 鉄七水 和 物 ( 関 東 化 学, 特 級, 9 9 .0 ‑
1 0 2 .0% ) , 硫 酸 第二鉄 n水和 物 ( 関東 化 学, 特 級, 6 0 .0% 以 上), 酢 酸鉄(Ⅲ)塩基性 (キシ ダ 化 学; 以下酢 酸 鉄 (Ⅲ) と暗 詰) , 酢 酸 鉛 (Ⅱ) 三水 和物 ( 関東 化 学, 特 級, 9 9 .5% ) , 塩 化亜鉛 ( 関東化学, 特 級, 9 7 .0% ), 硫 酸亜鉛 ( 関東 化 学, 特 廠, 9 8 .0 % ) , 酢 酸亜鉛 ( 関 東化学, 1 級, 9 5 .0% ), 塩 化 マ ンガン(Ⅱ)
四水 和物 (関東化学, 特 級, 9 9 .0 % ) , 硫 酸
マ ンガン( Ⅱ)玉水 和物 (関東化学, 特 級, 9 9 .0
% ), 酢 酸マ ンガン( Ⅱ)四水 和物 ( 関東化学,
特 級, 9 9 .0 % ), 塩化 銅(Ⅱ) ( 関 東化学, 1 級, 9 5 .0% ), 硫 酸銅(Ⅱ) ( 関東 化 学, 特級,
9 8 .0% ) の市販品 を そのま ま用いた。 2 .2 実 験方 法
金属化合物と ウル シオー ルとの反応 は前報2 ) と 同様の方 法で行っ た。 1 0 0mlのナス型フラ
ス コ に各種金属化合 物0 .0 1 6m ol を水9 mlに溶 解 し, これにウル シオ ー ル5 g, 酢 酸エ チル 2 1 mlを 加 え, テ フ ロ ン製 撹 搾羽根 ( 半月型,
長さ5 0 m m) を使 用し, 6 0 0rp m で 3 分 間撹 拝 徳, さ ら に2 0 0rp m で所 定 時 間撹 拝反 応 を行
っ た。 撹 拝 終了後, 4 0mlの水 を 加 え, 分液ロ
ー トで 3 回抽 出 洗 浄を行っ た。 溶 媒 層を 分 離, 濃縮し, さ ら に, 濃縮 液を液 過し て残 留 塩 を除き, 再 び濃 縮し, 試料とし て用いた。
金属とし て鉛を使 用した場合, 水を 加 え る と 固 化するので, 水 を加 え ないま ま濃 縮し, 水 を除去 した後, 波 過によ り残 留塩 を取り除 き, 再 び濃縮し, 試 料とした。
2 .3 金 属の定量
既報3 )と 同様に, 2 .2 で調 整した 試料 中の有 機 物 を硝酸と 過酸化 水素水で分解 除去した 後, 後 述の2 .4 に記した機器 を 用い て金 属 量 を測 定
した。
2 .4 測 定 装 置
核磁 気 共鳴(N M R) ス ペクトル洩 定に は F T ‑
N M R R ‑9 0H (日 立製作 所 製) を, 赤外 線吸 収(I R) ス ペクトル測 定に はF T ‑I R4 3 0 0 ( 島 津 製 作所 製) を用いた。 金属の定量 に は 原 子吸 光/フ レ ー ム分 光 光度 計A A‑ 6 8 0 ( 島 津製 作 所 負) を用いた。 液 体ク ロ マ トグラフはL 6 0 0 0
壁 (日 立製作 所 製) と し4 2 0 0型U V‑V IS検 出 栄 (日 立製 作所 製) によ り構 成した。 デ ー タ 処 理 はD‑ 2 2 0 0型G P C インテ グレ ー タ ‑ (日立 製 作 所 製) によ り 行 っ た。 分離カラムに は G L ‑A1 2 0 (日立 化成工業製) を用い, 移 動 相
にテ トラヒ ドロ フランを使用し て測 定した。 3 結果と考察
3.1 鉄化合物と ウルシオ ー ル の反応
塩 化鉄(Ⅱ) , 塩 化鉄(Ⅲ) , 硫 酸第 一 鉄, 疏 酸第二鉄, ま たは酢 酸鉄(Ⅲ)と ウル シオ ー ル
(Y) との反応結 果を図1 に 示す。 縦 軸はウル
シオー ルに取り 込 ま れ た鉄 金属 イ オン の量 を,
横軸は反応時間を示す。 塩化鉄( Ⅱ), 硫 酸第
一 鉄, 硫 酸 第二鉄は 殆 ど反 応性を 示 さ ない が, 塩 化鉄(Ⅲ) はや や反 応 性が高く な り, 酢 酸 鉄は最 も高く なった。 その量は鉄粉とから
の反 応2 )の場合よ り も約3 倍 多く なって いる。
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図1 鉄 化合 物とウル シオ ー ル(Y) との反 応
⑳ 酢 酸 鉄 ○ 硫 酸 第二鉄 濁塩 化 第 一鉄
㊥ 硫 酸 第 一鉄 口塩 化 第二鉄
3 .2 鉛化 合物と ウル シオ ー ルの反応
酢 酸鉛(Ⅱ)と ウル シオー ル(Y) との反 応結果 を図2 に示す。 反 応は開 始1 時 間で殆ど終了 し, その後3 時間 まで延長し ても あ ま り増加 は認め られ ない。 ウル シオ ー ルに取り 込 ま れ た鉛 金 属イ オン量 は, 前 報2 )の鉛 粉 末とウル
シオ ー ル(Y) との結 果よ り約4 0倍 多く なっ て お り, 反応が より効果的であることが 示 され た。
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図2 酢酸 鉛とウル シオ ー ル(Y) との反 応
3 .3 亜鉛 化合 物と ウルシオ ー ルの反応 塩 化 亜鉛, 硫 酸亜鉛, ま た は酢 酸亜鉛と ウ
ル シオ ー ル(Y) の反 応結果を図3 に示す。 反 応性は塩化亜鉛, 酢酸亜鉛, 硫 酸亜鉛の順で 低く な り, 塩化亜鉛は酢酸亜鉛よ り若干取り
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図3 亜鉛 化 合物とウルシオ ー ル(Y) との反応
○ 塩 化 亜 鉛 ●酢 酸 亜 鉛 口硫 酸 亜鉛
込 み 量 が多くなった。 反応 性の高かった塩 化 亜鉛では, 亜鉛 粉末2 )との場合の約4 .9倍 量の 取り 込 み 量 が あった。
3.4 マ ンガン化合 物と ウルシオ ー ルの反応 塩 化マ ンガン(Ⅱ), 硫 酸マ ンガン(Ⅱ), ま た は酢酸マ ンガン(Ⅱ) とウルシオ ー ル(Y) との 反応 結 果を図4 に 示す。 反 応 性は酢 酸マ ンガ
ン, 塩 化マ ンガン, 硫 酸マ ンガン の順に低く な り, 硫 酸マ ンガンでは殆ど反応 しなか っ た。 反応 性の高かっ た酢 酸マ ンガンでも, マ
ンガン粉 末2 )との換 合の約0 .9倍量の取り 込 み 量 となった。
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図4 マ ンガン化 合 物 と ウル シオ ー ル(Y) との反 応
○酢酸マ ンガン ● 塩 化マ ンガン ロ硫酸マ ンガン
3.5 銅化合 物と ウルシオ ー ルの反応
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T i m e (h r)
図5 銅化 合 物とウル シオ ー ル(Y) との反応
○塩 化 銅 ● 硫 酸 銅
4 蟻 川 彰・ 畑
塩 化 銅(Ⅱ)及 び硫 酸銅(Ⅱ) とウル シオー ル
(Y) との反応 結 果を図5 に 示す。 いずれの銅 化合 物 も殆ど 反 応 しな かった。 反 応性の高か
っ た塩化銅(Ⅱ)でも 銅 粉 末2)の場 合と 比較す る と, その取り 込 み 量 は約半量 と なっ た。
3 .6 中国産ウルシオ ー ルと 日本 産ウルシオ ー ルとの比較
3 .1 か ら3 .5項までの各種 金属 化合 物を用い た結果のな かで反 応性の高かっ た酢酸鉄(Ⅲ),
T im e (h r)
図6 酢 酸 鉄 と ウル シオ ー ル(Y ま た は N) との反 応
○ ウル シオ ー ル( Y ) ⑳ ウルシオ ー ル( N )
T i 皿e (らr)
図8 酢 酸亜鉛ま た は塩化 亜鉛と
ウル シオ ー ル(Y ま た は N) との反 応
○ 酪 酸 亜 鉛 ・ ウル シオ ー ル(Y)
⑳酢 酸亜鉛・ ウルシ オ ー ル(N)
□塩 化亜鉛・ ウルシ オ ー ル(Y) 圏塩 化 亜 鉛 ・ ウルシ オ ー ル(N)
酢 酸銘(Ⅱ), 酢酸亜鉛, 塩 化亜鉛, 酢酸マ ン ガン(Ⅱ・)及 び 塩化 銅(Ⅱ) を用いて, 中 国産 ウ
ル シオー ル と 日本産ウル シオー ル との反応性
の違いを検討した。 そ れ ぞ れの結 果を図6 か ら図1 0 に示す。 比較しやすくする た め, 図1 1 に反応 時間3 時間の結 果を ま と め た。 塩 化 亜 蘇, 酢 酸マ ンガン, 塩 化銅いづれに対 し ても 中 国産 ウル シオー ル の方が反応 性が高かっ た が, 酢 酸鉄, 酢 酸鉛では両 者にあま り大き な 差違が 認 め ら れ なか っ た。
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図7 酢 酸 鉛とウル シオ ー ル(Y ま た は N) との反 応
○ ウルシ オ ー ル(Y) ⑳ ウル シ オ ー ル(N)
T i m e (b r)
図9 酢 酸マ ンガンとウル シ オ ー ル(Y ま た は N) との反 応
○ ウルシ オ ー ル(Y) ◎ ウルシ オ ー ル(N)