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加藤久恵,兵藤好美

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岡山大学医学部保健学科紀要,16:67‑78,2006 BullFacHealthS°i,OkayamaUnivMedSch

(報 告)

「 介護者の会」参加 によって もた らされる介護への影響 一現役介護者の変化と介護終了者との相互作用 一

加藤久恵,兵藤好美

1)

要 約

本研究は,「介護者の会」参加 によって もた らされる介護への影響 を,現役介護者 と介 護終了者の相互作用 に焦点を当てて探求 しようとするものである。特 に介護終了者が介護 を終えた今 もどういう意図で会に参加 し,実際に何が得 られているのか,また介護終了者 の参加が もた らす現役介護者への影響は何 なのかを,明 らかにすることを目的 とした。 2 つの 「介護者の会」に依頼 し,現役介護者10名 ,介護終了者13名 を対象 として,l半構造的 面接 を行 った。その結果 1)現役介護者 は,会への参加 によって将来への不安が軽減 し, 相談で きる人が出来た,適切 な介護用品を活用で きるようになった等の変化が見 られた。

2)現役介護者は介護終了者が 「介護者の会」の世話役 を行って くれることで安心 して会 に参加で き,介護終了者か ら安心感や介護 ヒントを与 えられていた。 3)介護終了者 は, 次第に聴 く立場か ら語る立場へ と変化すると同時に, 自らの介護の振 り返 りも行っていた

4)介護終了者 もまた 「介護者の会」か ら情報や現役介護者か らの信頼感 を得てお り,会 の成長 ・活動意欲へ と繋がっている, といったことが明 らかになった。

キーワー ド :介護者の会,現役介護者,介護終了者,認知症高齢者,参加継続理由

緒 言

老年人口の増加 に加 え,今後在宅での高齢者介護 はますます増加 してい くと考えられる。介護保険が 適用 されているとは言え,介護者の身体的 ・精神的 負担は大 きく,それまでの生活パ ターンの変更を余 儀な くされることになる。塚 田,斎藤によれば, 日 本 には未だに,「老親の世話 は子供 (特 に嫁)がす るもの」「介護は女性が担 うもの」 といった古い家 族制度的体質が残 っている1)と言われる。 またニー ズがあるにも関わらず,公的サービスの利用は恥ず か しい と思 う高齢者や家族がいること2)も報告 され ている。公的サービスを必要 としなが らも世間体が 気 にな り利用で きず,ひ とり悩 み・迷いなが ら日々 の介護を行っている介護者にとって,セルフヘルプ グループである 「介護者の会」‑の参加 は,介護者 自身の心身に大 きな影響 を与えてい くのではないか と思われる。

介護者の負担軽減に,公的サービス,特 にデイケ アの存在は大 きく,要介護者がデイケアに行 ってい

京都桂病院

1)岡山大学医学部保健学科看護学専攻

る間,介護者 は 「介護者の会」に参加 し,同 じ立場 にある者同士の交流 によって,それぞれの抱 える身 体 的 ・精神的健康問題 を軽減す ることがで きる3)と 言われている。セルフ ・ヘルプ ・グループとは,同

じ悩みを抱 えた人同士が集 ま り,苦 しみを分かち合 った り,問題解決のために助け合 った りするグルー プを指 し,近年 ます ますその活動は盛んになって き ている。その理由 として,西川は(1)家族 ・近隣など の普段 のサポー トシステムが崩壊 した り,機能 しに くくなって きていること,(2)ニーズがあるのに専門 機関 ・制度などが少なかった り,まった くないこと, (3)制度 によるサービスでは満足で きない ものを満た

したい と言 う欲求が出て きていること,(4)利用者の 主体性,権利意識 な どが増大 していること4)を挙 げ ている。また岡は,セルフ ・ヘルプ ・グループを,「わ かちあい」「ひとりだち」「ときはなち」の場である5)

と述べている。一時 しの ぎの 「慰めあい」の場では な く,同 じ体験 をした仲間に, 自分の中の 「抑えら れていた気持ちを出す」 ことによって心 を軽 くし,

(2)

次のステップに進 もうとい う前向 きな姿勢が含 まれ る 「わかちあい」の場である。また,「わかちあい」

の 目的には,「ひ とりだち」 と 「ときはなち」があ る5)と言われる。「ひとりだち」 には,「自分で選び 自分で決める」 という意味 と 「社会に参加する」 と いう二つの意味があ り,「ときはなち」 には,「自分 を尊敬する」 とい う意味 と 「社会に働 きかける」 と い う二つの意味がある5)0

さらに西川の紹介4)によれば,Adamsはセルフ ・ ヘルプ ・グループを(1)専門職がセルフ ・ヘルプ ・グ ループを取 り込むタイプ,(2)専門職がセルフ ・ヘル プ ・グループを側面か ら援助するタイプ,(3)専門職 か らセルフ ・ヘルプ ・グループが 自律 しているタイ プの3つ に分類6)している。 「自律的」 タイプで は, 専門職 とセルフ ・ヘルプ ・グループのあいだにはっ

きりとした距離があ り,専門職か ら独立 して運営が なされ主体的に組織 されてお り,常 に両者の関係 を 問いなが ら活動する特徴が見 られる。更に全国規模 で運営 されているもの,個人が発起 し,地区単位で 行われているものなどにも分類 される

また2つの 「介護者の会」には,現在介護 をして いる介護者 (以下,現役介護者 とする) と,現在 は 介護 を終了 した介護終了者の両者が参加 している。

現役介護者同士が経験 を話 し合 うことで得 られるピ ア ・カウンセ リング効果 に関す る研究報告7)は過去 にもい くつか見 られるが,介護終了者の参加 による 相互作用に関 しての研究は殆 ど見あた らない。

そ こで本研究は,「介護者の会」参加 によって も た らされる介護への影響 を,現役介護者 と介護終了 者の相互作用 に焦点を当てて探求 しようとするもの である。現役介護者では,会参加 により 「介護者の 会」参加前の思いが どのように変化 し,影響 を受け ているのであろうか。一方介護終了者ではどのよう な意図で会に参加 し,実際に何が得 られているのだ ろうか。そ して現役介護者 と介護終了者の相互作用 が どのようにもた らされているのだろうか。以上3 つの課題 を明 らかにすることを目的 とした。

方 法

1.対 象

「介護者の会」1(疾患名 を限定 していない混合 型在宅高齢者 を介護 している介護者の会),及び 「介 護者の会」2(認知症高齢者 を介護 している介護者 の会) に所属 している計23名。「介護者の会」 1に 参加 している介護者 は,現役介護者7名,介護終了 者7名。「介護者の会」 2に参加 している介護者 は,

‑ 6 8

現役介護者3名,介護終了者6名であった。本研究 の対象セルフヘルプグループである 「介護者の会」

の選定は,A市社会福祉協議会か らの紹介 によるも のである

「介護者の会」 1及び 「介護者の会」 2は要介護 者の疾患名は異なるが,セルフヘルフグループとし て どち らも 「自律的」タイプであ り,「介護者の会」

参加 によって現役介護者及び介護終了者にもた らさ れるものが何 なのか とい う視点で対象 を選定 した。

要介護者の疾患名,即 ち会の特徴 によって差違が見 られた点については,それぞれのテーマの最初 に記 述 した。

1)介護者の概要

表1に示 した ように 「介護者の会」 1の平均年齢 は

6 6. 7( S D:8. 1 )

歳 で,その内介護終了者

6 2

.4

( S D:

5.7)読,現役介護者71.0

( S D:8. 1 )

歳で あ り,「介護者の会」2の平均年齢は

6 3. 8( S D: 4. 8 )

読,介護終了者

6 6. 2( S D:3

.4)読,現役介護者

5 9 ( S D:3. 6 )

歳であった。

2)要介護者の概要

平均年齢 は 「介護者の会」1では82.

4( S D:

6.5) 歳,「介護者の会」 2では79.3

( S D:1 0. 4 )

歳であ った。「介護者 の会」 1では介護保険を7名中5名 が利用 し,「介護者の会」 2では3名全員が利用 し ていた。

2.データ収集及び分析方法 1)調査方法

「介護者の会」 1では,調査依頼時に協力依頼文 書 と共 に面接依頼項 目を口頭で説明 し,同意の得 ら れた介護者 に対 して,後 日個別に面接調査 を行 った。

内3名については,介護者の都合 により電話での面 接調査 のみ実施 した。「介護者の会」 2では,予め, 副代表か ら会員へ研究協力依頼書 と面接項 目記載用 紙 を送付 して頂 き,後 日,その後1人ずつ訪問調査 の可否 を電話で尋ね,訪問 日時を決定 した。調査期 間は,2003年8月の約1ケ月間。

なお調査 は介護者本人の希望 を尊重 し,プライバ シーの保つ ことので きる 「介護者の会」開催会場 (公 民館等)の一室 もしくは介護者宅の一室で行 った。

一回の面接時間は約

5 0 ‑9 0

分であった。半構造化面 接法 を用い,同意の得 られた介護者 に対 しては,面 接調査内容 をテープに録音 した。 また介護者の発言 時の表情,問いに対する反応,協力度,積極性及び

(3)

介護者の会」参加 によって もた らされる介護へ の影響

表1 対象者 (介護者)の概要

属 性 * 年代 性別 仕 事 続柄 介護終了後 介護期 間 介護時間/ 日 「介護者の会」参加期 間 介護支援者 A 1‑終了 60 4ケ月 6 10時間 介護 時‑7

B 1‑終了 50 2ケ月 108ケ月 介護時 ‑5 有 一 夫 C 1‑終了 60 5 7 3時間 介護時 ‑4 D 1‑終了 60 5 3 4‑5時間 介護時‑3 有 ‑ 妹 .嫁 E 1‑終了 60 7 5 必要時のみ 介護時‑1 有 一 夫 F 1‑終了 60 3 9 3‑4時間 介護時 ‑1

G 1‑終了 60 3 30 1日中 介護時 ‑1年半

H 1‑現役 60 1 2時間 7

1‑現役 70 30 6

J 1‑現役 80 21 1日中 3 有 ‑ 娘

K 1‑現役 60 5 1‑2時間 8

L 1‑現役 80 食事準備のみ 5

M 1‑現役 60 4 必要時のみ 4

N 1‑現役 70 4 必要時のみ 2

0 2‑終了 60 1ケ月 15 1日中 介護時 ‑5

P 2‑終了 70 有 ‑ 蘇 10ケ月 8 1日中 介護時 ‑5 有 ‑ デイケア Q 2‑終了 60 6ケ月 10年 1 介護時 ‑2

R 2‑終了 60 有 ‑ 無 息子 1 7 17時間 介護時‑5

S 2‑終了 60 有 ‑ 無 息子 9 10 1日中 介護時 ‑0年 有 一 病 院 T 2‑終了 60 有 ‑ 無 8ケ月 10 1日中 介護時‑5

U 2‑現役 60 9 1日中 1年半 (会報のみで参加)

2‑現役 50 7 1日中 4 有 ‑ デイケア

属性 *:終了 ‑介護終了者,現役 ‑現役介護者

面接者の適切性 も面接記録 に記載 した。

2)調査項 目

下記のインタビューガイ ドを作成 し,現役介護者 については現在の状態を,介護終了者 については介 護終了時の状態 を振 り返 り,広 く語って貰った。

【インタビューガイ ド】

① 「介護者の会」参加後の変化

会の参加前 と変化 したことがあ りましたか。変化 があった場合, どのような変化があったかを具体的 にお聴かせ下 さい。

② 現役介護者にとっての 「介護者の会」の存在 あなたにとって,会 はどのような存在ですか。

③ 介護終了者にとっての 「介護者の会」の存在意 義 (会への継続参加理由)

あなたにとって,会はどのような存在ですか。 ま

た,介護が終了 されて も継続 して参加 されている理 由を,具体的にお聴かせ ください。

3)データの分析方法

インタビューガイ ドに基づいた介護者 による語 り の内容 を書 き起 こした逐語記録 と面接時記録 をデー ター として,分類 を行 った。分類 にあたっては,各 カテゴリーの定義に沿って各介護者の発言内容 を抽 出 し,整理 した。そ して抽出 ・整理 された内容 をコー ド化 し, さらに意味 と関係性 を考慮 しなが らい くつ かのカテゴリーに分類 した。

4)データの信頼性

前述の ように面接 を行 った介護者の協力度 ,積極 性及 び面接者 自身の面接の適切性 としてMcCrack‑

enの発話データの評価基準8)に従い,データの信頼 性 ・妥当性 を検討 した。その結果,半構造的面接に

(4)

よる信頼性の限界 を前提 としなが らも,発話デー タ に相互一貫性,統一性,説明力等が見 られた。

5)倫理的配慮

調査依頼用紙 には,調査への参加 ・質問への回答 は介護者の自由意思であること,記載内容の守秘, 匿名性 を約束 し,拒否による 「介護者の会」への影 響は全 くないことを記載 した。 また面接調査前 に, 改めて調査主旨 ・内容 を説明 し,同意が得 られた介 護者のみに面接 を行った。面接調査のテープ録音 に 関 しては,データは本研究でのみ使用 し,研究中は 外部に漏れない よう厳密 に保管 し,研究終了後速や かに消去することを約束 した。

結 果

会参加後の変化,現役介護者 ・介護終了者それぞ れにとっての会の存在意義,及び相互作用について, 面接 での発言内容 を基 にその関連性 を図式化 した

(図 1)。 そ して以下 に各段 階 を構 成 す るカテ ゴ リー ・サブカテゴリーについて具体例 を挙げなが ら 説明する。なおテーマを 『 』,カテゴリーは 《 》, サブカテゴリーは ( ),典型的な発言 を 「 」で 示 した。

1,『「介護者の会」参加後の変化』

参加後の変化 について,語 られた内容 を類似する 項 目でまとめると,表2に示す ように7個のカテゴ リーと21個のサブカテゴリー として抽出することが で きた。

ストレス軽減

連帯感の獲得

:弼窟悪的 封ヒ

店故か習得 伸度の理解・活用

不安の軽成

★要鯛 め至財ヒ

会の特徴 によって見 られた差違 に注 目すると,「介 護者の会」 1に特徴的なのは, 自分の時間を楽 しむ ことがで きるようになった とい うもので,会で行 う 手芸などの影響が大 きかった。家 に帰 ってか らも手 芸やち ぎり絵 を楽 しむようになった介護者 もいた。

「介護者の会」 2に特徴的なのは,精神的 ・身体的 負担の軽減 と,将来への不安の軽減であった。認知 症や,認知症の進行 に伴 う要介護者の変化,その対 処方法 を,介護終了者や他の介護者か ら予め聞いて お くことで,ある程度予測立てがで きるようになっ たためであった。

≪介護 に対する認識の変化≫

疾患やそれに伴 う症状 についての知識 を得 ること によって,(自分の介護 を客観視で きるようになっ た),(将来の不安 に対する考え方が変わった),(自 分の介護に自信 をもてるようになった),く介護にゆ とりが持てるようになった) という語 りが聞かれて いる。そ して世間体 を気 に して公的サービスの利用 に罪悪感 を抱いていた介護者 は,会参加後介護者 自 身が健康でいなければいけない とい う思いを抱 くよ うになった (介護に対す る考え方が変わった) と語 っている。 またこれまでの義務感で行 って きた く要 介護者への介護態度 を改める)発言がみ られ,(自 分の生活ペースを掴み),(自分の時間を楽 しめる)

ようになる等のポジティブな認識の変化がみ られて いる。

「私 よ りももっと大変な人がいるんだと思 ったO 他者の話 を聞 くと,介護に対する見方が主観か ら

気分転

悩み加瀬 ち合いr相談

情報交

仲穂 哉

ストレス発散

自らの働 返り

現馴 バイス

団杜 して行蜘劫

会別 席 僻 Ln ヽ

実行封Ⅵユ肺 +

図1 現役介護者の変化 と介護終了者 との相互作用

‑ 70‑

(5)

介護者の会」参加 によって もた らされる介護への影響

表2 「介護者の会」参加後の変化

カテゴリー サブカテゴリー

1.介護に対する認識の変化 介護 に対す る考 え方が変わった 自分の時間を楽 しむようになった 自分の生活ペースが掴 めるようになつ た (気分転換)

介護にゆ とりが もてるようになった 将来の不安 に対する考 え方が変わった

自分の介護 を客観視出来るようになつ

自分の介護 に自信がついた

要介護者 に対する介護態度 を改めた 家族 に介護 に対 しての意見が言 えるよ

うになった

2.安心感 不安が軽減 した「自分だけ じゃないんだ」 とわかった 今後出現する症状の予測が出来た

3.ス トレスの軽 ス トレスが溜 まらな くなった 愚痴 を言わな くなった

家で要介護者 にあた らない ようになつ

4.制度 .介護用品の活用 介護保険を使い住宅改修 したトロメリンを使 うようになった

5.知識の習得 新たな介護方法 を取 り入れた 認知症 についての対処方法が解 った 6.連帯感 介護者同士の連帯感が得 られた 7.要介護者の変 要介護者の公的サービスに対する認識

客観に変わった。要介護者の行動 を,ゆとりを持 って見守れるようになった。介護者が疲れて しま うとろ くな介護にならないか ら,施設へ預けるこ とに引け 目を感 じな くなった」 (Q)「義務感で していた介護が,ここ2‑3年は母の介護があっ たか ら今の自分があるのだ と言 う考え方がで きる ようになった

」( S)

「余暇活動等で 自分 自身が 気分転換 出来ることで,朗 らか に介護 で きた。」

( T)

《安心感≫

どうして自分だけがこんな目に合わなければいけ ないのか という思いを抱いていた介護者が,他の介 護者の触れ合いを通 して仲間意識や連帯感 を獲得 し,

(自分だけで じゃない) という認識に変わってきて

いる。 また認知症の進行に伴 う症状や対処方法につ いては,介護終了者介護者の経験 を聞 くことで予測 を立てることがで き,(今後出現す る症状 の予測が 出来る) ようになっていた。そのことで,先の見 え ない将来への (不安が軽減) されていた。

「同 じような苦労 をしている人たちと話 をするこ とで, 自分だけ じゃない と判って,精神的にす ご くラクになった」 (F)「他者の話 を聞 き,次に 出て くる症状の予測が出来た」 (P)

≪ス トレスの軽減≫

誰 にも悩みや愚痴 を話せず,孤独感に苛 まれてい た介護者にとって,安心 して何で も話せ る仲間 ・場 がで きた とい う安心感の獲得 によって,(ス トレス が溜 まらな くな り),(愚痴 を言わな くなった) とい う変化 につながっていた。 また,会の存在 は,介護 に対する認識や(家で要介護者 にあた らな くなった) といった介護態度の変容にも繋がっていた。

「要介護者 に対する愚痴 を聞いて もらった り, 自 分の介護について他者 と話 し合 った りすることで 気持ちがス ッキリし,家 に帰ってか ら要介護者 に きつ くあたることがな くなった」 (A)「介護が 重荷 に感 じな くな り,平常心でで きるようになっ た。ス トレスが溜 まらな くなった。愚痴 は会で言 い,家では言わな くなった」 (H)

≪市TJ度 ・介護用品の活用≫

新 しい制度や介護用品についての知識 は, 日々介 護に追われている介護者 にとって,なかなか情報を 得 る機会がない。納得のい くまで説明を開 き,例え ば くトロメリンを使 うようになった) といった自分 に合った ものを活用で きるようになったことで,棉 神的 ・身体的 ・経済的負担の軽減 にもつながってい る。 (介護保険 を使い住宅改修 した) とい うような 社会制度の上手な活用が,その後の介護継続に大 き

く影響するとい う語 りもきかれた。

「要介護者が水分 を飲むとむせて困っていたので すが, トロメリンがいいって教 えて もらって使 う ようになって‑。す ごく助か りました」(L)「支 援セ ンターの人に教 えて もらって,介護保険を使 って,床の段差 をな くした り, トイ レの改修,辛 す りつけなどを行 った」 (Ⅰ)

≪知識の習得≫

疾患やそれに伴い出現する症状 ・対処方法 を理解 することで,(認知症患者への対処方法が解 り),要

(6)

介護者への理解が深 まったことによる関係性の改善 や,自分な りの (新たな介護方法を取 り入れる)等 の工夫を行い,以前 よりも介護に前向 きに取 り組む 姿勢がみ られた。

「会でお互いの体験 を話 し合って, こういう風 に した方がいいのかなと思 った」 (Ⅰ)「認知症の 症状 に対する対処方法がわかった」 (Q)

《連帯感≫

心 を開いて話ができる仲間の存在は,それまで孤 独感 を感 じていた介護者 にとって,(介護者同士の 連帯感が得 られる) ことに繋が り,大 きな心の支 え になっていた。

「介護者同士の連帯感が得 られた」 (0)

≪要介護者の変化≫

介護者以上に外 との交流の少ない要介護者にとっ て,公的サービスを利用することに大 きな不安 を抱

く人 も多い。知人の公的サービス活用 とい う情報は, それまでサービスに対 して抱いていた不信感や不安 感 を軽減するものであ り,(要介護者の公的サー ビ スに対する認識が変った) という語 りが見 られてい る。介護者 にとっても,知人の活用 をきっかけに, 公的サービスに関する話 を要介護者 と行いやす くな っていた。

「他の参加者の公的サービスの利用状況などを家 庭で要介護者に話すことで

,○

○ さんも利用 して いるのであれば私 も利用 してみ ようと,要介護者 の公的サービスへの認識が変化 した。公的サービ スについて要介護者 と話 しやす くなった」 (K) 2.『現役介護者 にとっての 「介護者の会」の存在

意義』

会の存在について,面接調査で語 られた内容 を類 似する項 目でまとめると,表3のように9個のカテ ゴリー と26個のサブカテゴリーを抽出することがで きた。

「介護者の会」 1では,定例会 (月1回)に支援 センター職員 も参加 してお り,新 しい制度やその中 講方法について,介護者 に解 りやすい説明があ り, 介護者は納得のい くまで聞 くことが可能であった。

また時には,業者が最新の介護用品を持参 し紹介す る為,それ らの情報 をより身近に感 じ,知 り,活用 することができるようになっていた。

「介護者の会」 2では,定例会 (月1回)に加 え, 本部 と支部か らそれぞれ月1回会報が出版 されてお

表3 現役介護者 に とっての 「介護者の会」の 存在意義

カテゴリー サブカテゴリー

1.情報交換 情 報 が得 られ る (制度 .介護用 品 .病気)

知っていることを教 えあう 情報交換が出来る

他者の話 を開かせて もらえる 視野が広がる

将来発 生す る症状へ の心構 えが 出来る

2.気分転換 気分転換が出来る 安 らげる

楽 しい (手芸 .コーラス) 気の合 う人 と話せ るのが楽 しい 手芸 などをするきっかけになる

3.悩 み の分 か ち合い .相談 悩みを話 し合 える 分かって もらえる 愚痴 を言い合 える

具体的ア ドバイスが貰 える

4.交流 色 んな人 と交流で きる人脈が出来る 友達が出来る

5.ス トレス発散 ス トレスが発散で きる

6.自らの介護の振 り返 り 他者の話 を自分 に重ね合わせ る自分 の抱 えてい る問題 を客観視 で きる

7.心の支え 仲 間意識が出て くる 心強い

8.援助 自分の経験 を役立てたい 介護者の心のケアを行 える

り,定例会に参加出来な くても,介護保険や認知症 に伴 う様々な情報 ・他地域の会員の介護状況などを 知ることがで き,会員への情報発信 ・介護体験の共 有は,認知症介護者にとっての大 きな心の支 えとな っていた。

≪情報交換≫

会参加前には得 られなかった (情報 を得 られる) ことで,(視野が広が る),(将来発生す る症状への 心構 えが出来る) といった効果が見 られている。そ の結果,要介護者のことをさらによく理解で きるよ

72‑

(7)

「介護者の会」参加によってもたらされる介護‑の影響

うになった り,制度 を活用で きた り, (他者の話 を 聞かせて貰った) り,他者の経験 に基づいた工夫 を 知って, 自分の介護 に役立てた りすることがで きて いた。 また,(知 っていることを教 え合 う) といっ た情報の共有の より,会員同士の連帯感の獲得,伝 頼関係の形成につなが りが見 られている

「介護者は悩みの相談や申請などをどこに行 って すればいいのかなどが判 らない ものです よ。会で は,今 まで自分が必要にならなければ知ろうと思 わない制度などを知ること ・活用することが出来 るようにな ります」 (H)「介護方法やいろんな 情報 を教 えてもらって,他の人の している工夫な

どを参考にしています」 (F)

≪気分転換≫

同 じ立場の人同士で悩みや愚痴 を言い合 った り世 間話 をした りする場は,介護者 にとってス トレス発 敬 (気分転換) (安 らぎ)の場 となっていた。 また, 家では一人でしょうとは思わない手芸 も,会で く気 の合 う人 と話せ るのが楽 しく),みんな と話 しなが らすることで,(楽 しんで)で きていた。 こうした 機会は く手芸等 をするきっかけともな り),家 に帰 っ てか らも続 きを行った りして, 自らが楽 しむ時間を 作ることがで きるようになっていた。

「介護ばか りしていた らイライラもするので,気 分転換 に参加 していた。人 といろんな話 をした り,

コーラスや手芸 をす るのが楽 しいんです

」( G)

「介護の場 を離れ ることで気 分転換 になるんで す」 (M)

≪悩みのわかちあい≫

会では介護者にとって, 日頃他者 に言えない ぐ悩 みを話 し合 った り),(愚痴 を言い合 える),(分かっ てもらえる)場であった。悩みを抱 えている介護者 に対 しては,経験に基づいた く具体的なア ドバイス が貰 え),す ぐに自分の介護 に適用 しやすいので助 かる, という語 りもきかれた。本 などで得 られた情 報は, 自分の状況 となかなか合致 しないためあま り 参考にはならない ということだった。

「みんな介護の内容は違 っても同 じ立場の人同士 だか ら愚痴 を言い合 えます」 (G)「お互いの介 護の話 をし,その人の行った事 を汲み取 って,こ んなタイミングでこうい う風 にしてみた ら‑ と, 具体的なア ドバイスをして もらえるので助かる。」

(0)

≪交 流≫

介護 をすることで初めて現実味を帯びて感 じられ た社会の偏見,介護者 としての苦労 を共有 し,同 じ 経験 を積んで きた く色んな人 と交流で き),(友達が で きる),(人脈がで きる〉場であることがわかった。

また,介護者が共通 して痛感する社会の偏見 に対 し ては,団体 として社会 に働 きかけることの大切 さを 感 じていた。

「介護 と言 う苦労 を通 じて,人格的に高い レベル の人が多いです よ」(Q)「人 とのふれあいがある

友達が出来た」 (D)

≪ス トレス発散≫

たえずス トレスに晒 されなが らも,悩みや愚痴 を 家では話す こともで きず,会が (ス トレスの発散で きる)場であることは介護者 にとって, とて も貴重 な存在であった。

「介護の大変 さや悩みを聞いてもらって解決で き る。話す ことでス トレスが発散で きるのです。」

(H)

≪自らの介護の振 り返 り≫

会 に参加するまでは, 自分の介護 を主観で しか捉 えることがで きなかったが,く他者の話 (介護状況) を自分 に重ね合 わせ る) ことで,(自分の抱 えてい る問題 を客観視で きる) ようになっていた。

「他者の介護状況 を聞いて, うちはまだいい方な んだ。あ りがたいな。 と思えるようになった。お 互いの体験 を話 し合 って,こうい うふ うにしたほ うがいいのかな と思った。」 (Ⅰ)「自分の抱 えて いる問題 を客観的に見 ることが出来る」(N)「自 分の してきた介護 を振 り返 り,検証する場で もあ

」 (T)

《心の支え≫

他者の介護状況 を知 ることで同 じ状況であるとい った (仲間意識が出て くる) ことがわか り,参加前 に抱いていた被害者意識が薄れ,介護に対 して (心 強 く)前向 き ・意欲的姿勢 を持つ ことがで きるよう になっていることがわかった。

「自分だけ じゃないか らがんばろうと思えるよう になった」 (L)

≪援 助≫

現役介護者同士の支え合いだけでな く,介護終了 者 との交流がで きる場であった。介護終了者は,現

(8)

在悩 んでいる介護者 に対 して,(自分の経験 を役立 てたい) といった想いでア ドバイスを行 ってお り, それはまた介護終了者にとっても自分の介護の振 り 返 りの機会にもなっていた。現役介護者の抱 える苦 悩は,同 じ経験 をしてきた介護終了者だか らこそわ か り得るものである。(介護者の心のケアを行える), 苦 しんでいる人を助けたい という介護終了者の思い

と,現在の介護状況に悩む介護者 との問に,需要 一 供給関係が成立 してお り,会 という場 を通 して,お 互いの関係性 に良い影響が もた らされていることが 明 らかになった。

「介護者同士が思いを分かち合 えることで,介護 者 自身の心のケアを行 える」 (E)「自分 自身の 経験 を,今困っている人に少 しで も役立てたい。」

(T)

≪社会への働 きかけ≫

「認知症になって も安心 して暮 らす ことがで きる 社会」 を作 るため,個人 としてではな く,より影響 力の強い 「団体」 として行政に働 きかけを行 ってい た。認知症介護の現状 を報告するとともに,社会の 偏見 を解いてい くため 「社会 に働 きかけることが出 来る」組織 を目指 し,活動 を行っている

「個人 としてではな く,団体 として社会 に働 きか けるのが大切だ と思 う。 自分の身内の状況 を外 に さらけ出して, 自分の体験 を公にしない と社会の 認知症 に対する偏見がな くならない と思 う」(T)

3.『介護終了者 にとっての 「介護者の会」の存在 意義 (現在も継続参加 している理由

) 』

介護終了差にとっての会の存在意義について,請 られた内容 を類似する項 目でまとめると,表4の よ うに6個のカテゴリーと12個のサブカテゴリーが抽 出された。

「介護者の会」 1と 「介護者の会」 2の共通点 と しては介護終了者が役員 をすることで,現役介護者 が安心 して会に参加できるよう, また介護継続で き るよう,それぞれの会の特徴 を踏 まえた支援方法が 行われていた。会の違い としては 「介護者の会」 2 への参加者は認知症患者の介護者であ り,苦 しみを 表出できずにいる介護者 に対 しては,表出で きるよ うな投げかけがなされていた。そ して 「介護者の会」

2では,社会‑の働 きかけの中心 を介護終了者が担 っていることが明 らかになった。

表4 介護終了者 にとっての 「介護者の会」の 存在意義 (会への継続参加理由)

カテゴリー サブカテゴリー

1.現役介護者‑のア ドバ イス 自分の経験か らア ドバイスする 現役介護者が将来 の予測 を立 て る役

に立てる

現役介護者 の心 の苦 しみ を聞いてあ げる

苦 しみを表出で きるよう投げかける 認知症 に対す る介護者 の 自責 の念 を 解いてあげる

現役介護者 に喜 んで もらえるのが嬉 しい

2.交流 仲間がいる

介護 を経験 した人 と触れ合 える 3.情事則文集 最新の情報が得 られる

4.自らの介護の 自分 の介護経験 を振 り返 ることがで 振 り返 り きる

5.役割がある 役員 をしている

6.社会への働 き 会 として社会 に働 きか けるのが大切

≪現役介護者へのア ドバイス≫

介護終了者 による(自分の経験か らのア ドバイス) は,大いに (現役介護者が将来の予測 を立てるのに 役 にたっている)。 さらに (苦 しみを表出で きるよ うに投 げかける) ことや く現役介護者の心の苦 しみ を聞 く) といった精神的な支援 も積極的になされて いることが明 らかになった。 または,(認知症 に対 する介護者の 自責の念 を解いてあげたい) とい う強 い思いか ら,参加 ・助言 している介護終了者 もいた。

そ して現役介護者への世話やア ドバイスをすること によって (現役介護者 に喜んで もらえる) といった 援助の喜びを感 じていることも語 られていた。

「現役介護者 は他者の経験 を聞いて将来への予測 が立つ と思 うか ら」 (0)「介護者の心構 えは共 通だか ら,現役介護者の心の苦 しみを開いてあげ る」 (Q)「認知症 に対す る介護者の 自責の念 を 解 き,そ うで はないのだ と言 う事 を伝 えたい。」

(T)「世話 をす ることで現役介護者 に喜んで も らえる事が嬉 しい。」

≪交 流≫

会の参加 によって く介護 をした人 と触れ合 う) こ とがで き,(仲 間がいる) とい う連帯感 と共 に,介

‑ 74‑

(9)

「介護者の会」参加によってもたらされる介護への影響

護のことは勿論,その他のことについても互いに語 り合える交流の場 となっていることが分かる。

「過去に介護 をした人 と触れ合 う事が出来る」(A, D)「仲間がいる」 (B, Q)

≪情報収集≫

介護が終了 しても,今後 自分たちが要介護者 とな った時への準備 として最新の知識や情報 を収集 して お きたいという気持ちか ら,介護に関する (最薪の 情報が得 られる) という情報収集への期待感 もある

ことが分かった。

「介護用品や制度等の最新の情報 を得 ることがで きる。新 しい知識が得 られる」 (A, B)

≪自らの介護の振 り返 り≫

会において様々な介護者のあ り方や想いを聴 くこ とは,介護終了者にとって もまたこれまでの (自ら の介護 を振 り返 り)の場 ともなっていた。

「自分の介護経験 を振 り返る事が出来る」 (D)

≪役割がある≫

会の中では,それぞれの (役割がある) ことや任 され期待 されていることがあ り,それが参加理由に なっている介護終了者 もみ られた。

「役員をしているか ら」 (B)

≪社会への働 きかけ≫

単 に現役介護者‑ の介護知識の伝達や情緒的サ ポー トに留 まらず,(会 として社会 に働 きかけるの が大切だか ら) という考 えの基,広報活動 に関わっ ていた。

「認知症に対する偏見 ・差別 を無 くすため,社会 に働 きかけるのが大切だと思ったか ら」 (T)

考 察

「介護者の会」参加前,介護者が抱 えていた思い 会参加前の介護者 は,精神的ス トレスの蓄積,孤 立感,生活パ ター ンの崩壊,ゆとりの欠如,不安, 身体的負担 を多 く感 じていた。このことは,ほとん どの介護者に介護支援者のいなかったことが大 きく 関係 してお り,相談 した くて もできない という苦況 の中,介護を継続 しなければならなかった介護者の, 孤独で厳 しい状況が浮 き彫 りにされたことによると 思われる。成木 ら9)の研究 において も,介護支援者 がいないことが介護負担 を増加 させ る大 きな要因で あ り,その必要性が指摘 されている。本研究で も介

護支援者の必要性,介護者への支援体制の重要性が 再確認 されたと言えよう。

認知症の場合,要介護者が見せ る症状 に対 して, 最初は気づかなかった,認めた くなかった,まさか と思った,などの意見が聞かれた。認知症状特有の 波があるため,時折おか しい と感 じて も,なかなか 病気であるとは認識で きず,受診するに至 らなかっ た という。斎藤 ら10)の研究によると,認知症状 に気 付いてか ら診断を受けるまで最 も多かったのが1年 以上経 ってか らであ り,早期 に発見するためにも介 護者が気軽 に相談で きる場所や相談で きる人の必要 性が挙 げ られている。「認知症」 を,身近な存在 と してなかなか受け入れ られず,たとえ受け入れよう として も,その対処方法がわか らず,路頭に迷 う介 護者の苦悩が伺われた。世間の認知症 に対する理解 度の低 さが偏見 を生みだ し,病気 に立ち向かお うと

している介護者 ・要介護者の不安や苦 しみに,更な る拍車 をかけ,世間体 を気 にするあまり公的サービ スの利用 をも跨跨 させて しまう状況 もあることが明

らかになった。

ひとりで介護する介護者の身体的 ・精神的負担の 大 きさは計 り知れない ものである。社会の偏見に傷 つ きなが らも,公的サービスを利用せ ざるを得なか った介護者の状況が,極めて深刻 なものであったの かがわかる。介護終了者 は,偏見 と介護ス トレスに 押 しつぶされそうにな りなが らも介護 を行い,経験 を通 して, 自らの足で情報 を獲得 してい くことで, 自分 な りの介護方法 を見出さなければならなかった。

これ らの経験 を通 して,介護者の為の,「わかちあい」

「ひとりだち」 「ときはなち」の場 の必要性,社会 の偏見 を解 くことの重要性が痛感 され,それが現在 の活動の基盤 と繋がっていることが推察 される。

会参加 により,もたらされる影響

参加者 にとっての会参加の意味合い ・参加姿勢は, 参加期 間によって変化 していることが明 らか となっ た。月1回の定例会への参加 は,当初,介護者にと っで悩みの相談 ・気分転換 ・ス トレス発散の場 とい った救済所的存在であったが,参加 を継続 し,互い の介護 について話 し合 うことによ り,それは自らの 介護の振 り返 り,仲 間意識の形成 といった効果をも た らしていた。 また,介護の合間をぬって会へ参加 することは,介護者 に必然的に介護の場 を離れさせ るきっかけにもなってお り,そのことが気分転換の 一助 にもなっていた と推察 される。波速11)の研究で ち,高齢者の老いをポジティブに受けとめるために

(10)

は 「細 く長いつ きあい」が重要 とされてお り,在宅 介護者にとって も,時には介護の場 を離れ,気分転 換することの大切 さが感 じられる。 また,参加姿勢 ち,初めは他者の話 をただ聞いているだけであった のが,次第に参加者 に心 を開き, 自分の状況を語 っ た り,他者の悩みを聴いた りする立場 に変化 してい た。 このことは,春 日12)の①孤立 と孤独か らの解放,

②他者 との共感 ・つなが りの回復,(彰問題経験の社 会的文脈の認識,④ アイデ ンティティの再構成 とい ったセルフ ・ヘルプ ・グループ参加 による介護者の 変化 に共通するものである

今回の研究で新たに明 らかになったこととして, 要介護者の認識の変化がある。介護者が会で得た他 者の介護状況や公的サービス利用状況を要介護者に 話すことにより,要介護者のそれ らに対する認識が 変化 し,新たに取 り入れたといった発言 もきかれた。

在宅療養 を機 に,介護者以上に社会 との交流が狭 ま った要介護者 にとって,これ らの情報は認識の変化 とともに,社会性の拡大 にもつながる。介護者同様, 他者 との触れ合いを通 して得 られるものは多 く,自

らの状況 を客観視で きる機会にもな り,介護者 との 関係性の改善以外 にも,その後の生活に広が りをも た らす と考える。

介護終了者の参加 により現役介護者が得 られるもの 介護者同士が 「わかちあい」 を行 うことで,精神 的負担軽減へ とつながることは,セルフヘルプ ・グ ループの活動 目的で もあ り,既 に先行研究5)で も証 明されている。本研究で も同様の結果が得 られたと 言えよう。

本研究において,現役介護者 に特徴的な将来への 不安の軽減,相談で きる人が出来た,適切 な介護用 品を活用するようになった, とい う参加後の変化 に は,介護終了者参加の影響が大 きいことが明 らかに なった。過去に介護 を経験 している介護終了者の冷 静な目での振 り返 りや具体的ア ドバイスにより,現 役介護者が得 られるヒン トや安心感は多大なもので あった。 また,会の運営や世話役 を介護終了者が し ていることで,現役介護者 は安心 して会 に参加 し,

「わかちあい」の時間を設けることがで きるのであ る。介護終了者は自らの経験 を通 し,現役介護者の 切羽詰った思いや苦悩,ス トレスを理解 している分,

こうした形で会を支えてい くことの重要性 を認識, 実践 してい くことがで きるのだと考 える

会参加 により介護終了者が得 られるもの

介護経験者 との交流, 自らの介護の振 り返 り, 自 分の将来の為の情報収集, といったことの他 に,揺 供希望サポー トとして, 自らの経験 を通 した現役介 護者へ のア ドバ イスがある。 これは,西川 による Riessman 「ヘ ルパーセ ラピー原則」 の概念4)に説 明 されている,他者 を援助することによって,援助 者 自身が利益 を得 る効果である。「ヘルパーセラピー の原則」 により援助者が得 る利益 についてGartner

&Riessman13)は, 1)他者 に対 して依存的になる ことが少な くなる。 自分 自身の問題を,距離 をおい て見 る機会 を得 ることが出来る。 2)自分が社会 に 役立っていると感 じることが出来る。 3)他者 を援 助で きるほどだか ら, 自分 はきっとよくなっている に違いない と感 じることや,他者の人生に影響 を与 えてその人の苦 しみを軽減するといった 目に見える 報酬 を得 ることが出来る。 4)他者への援助 は, 自 己に関する過度な関心 を紛 らす大 きな力 となる14)。 と述べている。 これ らの中で介護終了者 にとっての 会参加の意味 として,自らの介護 を客観的に振 り返 る機会がで きること, 自分が社会 に役立っていると 感 じられることが当てはまる。その他 に,社会の偏 見 を解 き認知症高齢者が住みやすい社会に してゆ く ために団体 として行政に働 きかけることも,会の 目 指す ものであ り,介護終了者が得 られるものの1つ,

「団体 としての力」であると考える。

調査前,介護終了者が介護 を終 えた現在 も会に参 加 し,現役介護者の接待やお茶の世話などをするこ

とによって何が得 られているのかが,よく理解で き ず,成果 を期待 して投資するとい うRusbultの投資 モデルには当てはまらず不均衡 をきた しているので はないか と思われた。 しか し今 回の調査か ら,介護 終了者 は自分の将来のための情報や参加者 との交流,

さらには現役介護者か らの信頼 という利益 を得てお り,更なる活動意欲へ とつながっていることが示唆 された。 また会の成長を願い,団体 としての社会へ の働 きかけも行われてお り,介護終了者の会参加理 由において も投資モデル15)が成立 しているのではな いか と思われる

西川 は,「セルフ ・ヘルプ ・グループ参加者全員 が潜在的援助者であると同時に,潜在的被援助者で もある。 自分の体験の開示が他のメンバーの役 に立 った り,相手か ら感謝 された りするならば,援助者 は自己効力感 ・有能感 を高め,他者の窮状の解決や 貢献 した自分 を誇 りに思い,自尊心 を高揚 させ るだ ろう。そ して,その契機 となった援助 に対 して,以

‑ 76‑

(11)

介護者の会」参加 によってもた らされる介護への影響

前 よりも肯定的な態度 を抱 き,積極的にグループの 活動 に関わろうとするはずである。つ ま り,援助者 はヘルパーセ ラピー効果 を享受す る。4)と述べ てい る。

介護者同士の自己開示,心の 「わかちあい」 によ り,参加者全員が援助者であ り,被援助者であるこ とを知 るとい うこと, またそのことによって,「ひ とりだち」で き, 自分への 「ときはなち (自らの尊 厳 を取 り戻す こと)」,社会‑ 「ときはなち(社会の 偏見 を解 き,環境 を変 えてい くこと)」が出来 るよ

うになってい くことが,本研究で も明 らか となった。

今回は2つの 「介護者の会」 にしか,接する機会 を持つことがで きなかった。 しか しなが ら2つの比 較 において明 らか になった ことは,セル フ ・ヘ ル プ ・グループとしての 目的は共通 しているが,支援 方法は深刻 さに応 じ異なっているということである

会参加による満足度は,参加者の安堵の表情 にも表 れていた。「介護者の会」 2では,現在の会 に満足 もしつつ,認知症に対する社会のあ り方が,世界の レベルに比べるとまだまだ といった意見 も聞かれ, 認知症患者が もっと暮 らしやすい世の中にしてい く 事の重要性 と今後の課題が挙げ られていた。認知症 患者にとって現在の社会は,偏見や差別にあふれた 厳 しく困難な状況である。それ故 ,今後 も介護者‑

の支援 と同時に,社会 に向かって理解 を求めてい く 働 きかけがますます重要になって くると思われる。

研究の限界 と今後の課題

今回の調査 は,0市内の2つの 「介護者の会」参 加者23名 を対象にして得 られた結果である。全国に 様々な会が存在する中,本研究の結果だけでは一般 化できない。今後更に事例数や対象特性 を広げて調 査 を継続 し,仮説モデルの検証 を行ってい く必要が あると思われる。

結 論

1)現役介護者に特徴的なのは,将来への不安が軽 減 した,相談で きる人が出来た,適切 な介護用 品を活用するようになった, という点であった。

同 じ立場の人同士で話す ことで, 自らの介護 を 客観視で きるようになった りしていた。

2)現役介護者は,介護終了者が 「介護者の会」の 世話役 を行って くれることで,安心 して会 に参 加で き,介護終了者か ら安心感や介護 ヒン トを 与えられていた。

3)介護終了者は,次第に聴 く立場か ら語 る立場へ

と変化すると同時に, 自らの介護の振 り返 りも 行っていた。

4)介護終了者 もまた 「介護者の会」か ら情報や現 役介護者か らの信頼感 を得てお り,会の成長 ・ 活動意欲へ と繋がっていることが明 らかになっ た。

謝 辞

本研究にご協力いただきましたA市介護者のセル フ ・ヘルプ ・グループ 「介護者の会」 1及び 「介護 者の会」 2の代表者,並 びに参加者 (現役介護者 ・ 介護終了者)の皆様,「介護者の会」 を紹介 して頂

きましたA市社会福祉協議会の皆様

,心 より感謝 申 し上げます。

文 献

1)塚 田典子,斎藤安彦 :高齢者の在宅福祉 サー ビス利用 に対する抵抗感に関する研究.地域保健,33,2002. 2)山田ゆか り,石橋智昭,西村 昌記,堀 田陽一,若林健

市 :高齢者在宅ケアサービスの利用 に対す る態度 に関 連する要因.老年社会科学,19:2228,1997. 3)松村 ちづか,川越博美 :在宅痴呆性老人家族介護者 に

とっての家族会 の意味 一家族介護者 の人生観 ・介護 観 ・家族会へのニーズ との関連 ‑.聖路加看護学会誌,

5,2001.

4)西川正之 :援助 とサポー トの社会心理学.95‑99,北大 路書房 :京都,2000.

5)岡 知史 :セルフヘルプグループ.1386,星和書店 : 東京,1999.

6)Adams,R.:SocialWork and Empowerment.Mac millan:Indianapolis,1996.

7)藤本直規,吉 田摩喜子,祖父江文子 :痴呆患者の介護 者 に対す るピア ・カウンセ リング.保健婦雑誌,54:

928‑933.1998.

8)McCracken,G∴ Thelonginterview.QualitativeRe searchMethodSeries13,NewburyPark,CA:SAGE.

9)成木弘子,飯 田澄美子,野地有子 :後期高齢者の主介 護者 における介護負担軽減 に関す る研究 ‑主観的な介 護負担感を構成する要素の検討 ‑.聖路加看護大学紀要, 22:1‑ll,1996.

10)斎藤好子,松岡里美,佐藤敏子,石川睦弓,佐藤芙佳子, 宮崎修子 :介護保険下 における痴呆性高齢者及び介護 者の現状 と支援的課題.三重看護学誌,4 :2130,2002. ll)波速裕子 :高齢者 と同居する家族の老 いの受けとめに

影響す る要因.第32回 日本看護学会論文集,老人看護, 201203,2001.

12)春 日キス ヨ :介護問題の社会学.227‑249,岩波書店 : 東京,2001.

13)Riessman,F:The helpertherapy principle,Social Work,10:2732,1965.

14)Gartner,A.&Riessman,F∴Selfhelpinthehuman services.Jossey‑Bass:SamFrancisco,久保紘章監訳 : セルフ ・ヘルプ ・グループの理論 と実際.川島書店, 1985.

15)末永俊郎,安藤清志 :現代社会心理学.98,財団法人 東京大学出版 :東京,2002.

(12)

Influence of caregivers meeting on caregivers life - The active caregivers change and interaction with past caregivers-

Hisae KATO, Yoshimi HYOD0

1)

. Abstract

This study investigates interactions between active caregivers and past care- givers, and to search the influence of caregivers meeting on the active caregivers.

Especially, focuses are given on the intention of attendance by the past caregivers, what they obtained in the meeting, and the influence of past caregivers on the ac- tive caregiver. We interviewed 10 active caregivers and 13 past caregivers from two meetings using a semi-structural method.

As a result, 1) management by the past caregivers give some relief to the active caregivers to participate, and they also provide the sense of security and the car- ing tips. 2) The past caregivers gradually change their viewpoint from listening to talking, and they look back own experience in caring. 3) The past caregivers ac- quire some information in the meeting, and obtained trust from the active care- givers, which leads to the growth and the motivation of the meeting.

Key Words:Caregivers meeting (Self help group), active caregivers, past caregivers, dementia elderly person , participation continuance reason

Kyoto Katsura Hospital

1) Department of Nursing, Faculty of Health Sciences, Okayama University Medical School

~ 78 ~

参照

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