気 象 と流 れ の相 関解 析 に基 づ い た沖 合 流 れ の発 生 に関 す る検 討
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(2) 412. 海. 岸. 工. 学. 論. 文. 集. 第55巻(2008). 気 圧 の負 相 関 最 大 値 及 び 風 速 の正 相 関 最 大 値 を棒 グ ラ フ. 示 して お り,沖 合 流 れ の発 生 予 測 を 行 う上 で,着. で,相. 関最 大 値 が 発 生 した タ イ ム ラグ を マ ー カ ー で示 し. べ き海 域 を 明 らか に す る こ とが可 能 で あ る.風 速 の 相 関. た も の で あ る.地 点 に よ り相 関 の 大 き さに は差 が み られ. に お い て も,同 様 に 極 値 が 西 か ら東 に移 動 す る様 子 が み. るが,気 圧,風. られ る もの の,風 向 の 変 化 や 陸地 の 影 響 を 強 く受 け る た. 速 と もに 日本 海 側 で や や 相 関 が 高 く,特. 目す る. に 鳥 取 と 直 江 津 で 高 い傾 向 が み られ た.太 平 洋 側 で は相. め,相 関 は観 測 地 周 辺 で 高 く,極 値 は不 明 瞭 とな る傾 向. 関 が 低 い傾 向 に あ り,潮 岬 で は明 瞭 な相 関 の ピー ク が確. が み られ た.そ. 認 され な か っ た.ま. て 変 化 す る と考 え,以 下 で は気 圧 との 相 関 に つ い て 極 値. た,風. 速 は概 ね6時 間 前 ごろ に最 大. 値 が 現 れ る傾 向 が み られ た が,気 圧 につ い て は地 点 に よ. こで,風 速 分 布 は 気 圧 分 布 の移 動 に伴 っ. の 移 動 特 性 に着 目 し,検 討 を行 った .. る ば らっ きが 大 き くな っ て い た. 図‑4は 相 関 解 析 結 果 を も とに 各 格 子 点 の気 象 デ ー タ と 鳥 取 に お け る流 れ デ ー タ と の相 関 係 数 分 布 を タイ ム ラ グ 別 に地 図 上 に等 値 線 で 例 示 した もの で あ り,左 か ら順 に タ イ ム ラ グ が‑24,‑12,及. び0時 を示 して い る.等 値 線. は,気 圧 との 相 関 で は 負 相 関,風 速 との 相 関 で は正 相 関 を実 線 で 示 して お り,0.05刻. み で描 画 した.気 圧 の相 関. は,極 値 が 鳥 取 北 部 の 日本 海 上 に あ り,時 間 と と もに 相 関 の 極 値 が 西 か ら東 に移 動 して い く様 子 が み られ る.こ の 極 値 の移 動 は,擾 乱 の移 動 そ の もの を 示 す もの で は な いが,観 測 地 点 にお け る 流 速 の 変 動 と関 係 が 深 い位 置 を. 図‑2. 圧 と流 速絶 対値 の相 関,右:風. 相互 相 関関数 の一 例(鳥 取). 図‑3. 相互 相関 関数 の最大 値(左:気. 速 と流速 絶対 値 の相 関). 図‑4. 鳥取 にお ける相関 係数 分布 の例(上 段:気 圧 と流速 の相 関,下 段:風 速 と流 速 の相関).
(3) 気象 と流 れ の相 関解 析 に基 づい た沖合 流 れの発生 に関す る検討. 出 し,相 関 解 析 を 行 っ た.冬 季 及 び台 風 接 近 時 の 地 点 別. 4. 極 値 の 移 動 特 性. 沖 合 流 れ 発 生 数 を 表‑1に,冬 図‑5は 図‑4の 相 関 係 数 分 布 を も と に,海 (負相 関 最 大 値)の. 413. 域 別 に極 値. 軌 跡 を 示 した もの で あ り,タイ ム ラ グ. 48時 間 前 か ら同 時 刻 ま で を6時 間 毎 の マ ー カ ー で示 して. 季 風浪時 および台風接近 時. そ れ ぞ れ に つ い て の 代 表 的 な沖 合 流 れ 発 生 の 状 況 を図‑7 に 示 す.コ. ン ター は気 圧 を,ベ. ク トル は風 向 ・風 速 を表. して お り,流 れ に つ いて は マ ー カ ー の大 き さ で 流 速 の大. い る.相 関 が 低 く,極 値 が 特 定 で き な い タ イ ム ラグ につ いて は マ ー カ ー を示 さ な い もの と して お り,潮 岬 に つ い て は相 関 が 低 か っ た た め,図 示 して い な い. 日本 海 側 の 観 測 地 点 で あ る直 江 津,伏 鳥 取,柴. 木 富 山,輪 島,. 山 で は観 測 地 点 の 北 方 向 で あ る 日本 海 や オ ホ ー. ツ ク海 に,太 平 洋 側 の観 測 地 点 で あ る高 知,御 前 崎,清 水 で は観 測 地 点 の南 方 向 で あ る太 平 洋 に,玄 界 灘 で は西 方 向 で あ る東 シ ナ海 に極 値 が あ り,い ず れ の観 測 地 点 に お い て も時 間 と と もに極 値 が 西 か ら東 へ と移 動 す る 様 子 が み られ た.久 慈 で は観 測 地 点 が 太 平 洋 側 に位 置 して い る に も関 わ らず,移 動 特 性 は 日本 海 側 の 直 江 津 や伏 木 富 山 と類 似 して い る.日 本 海 で 発 生 した 沖 合 流 れ が 津 軽 海 峡 を通 じて 久 慈 ま で海 流 と して 伝 播 して い る こ とが 考 え られ る が,極 値 の移 動 を み る と,日 本 海 上 を移 動 した 低 気 圧 が久 慈 の 北 側 を通 過 す る こ と が 多 い た めで は な いか と推 察 さ れ る.輪 島,柴 山,鳥 取 で は 同 様 の 移 動 特 性 が み られ るが,こ. の うち 柴 山,鳥 取 で は,極 値 が48〜36時. 間 前 に大 き く移 動 す る様 子 が み られ た.こ. こで は 示 して. い な い が,柴 山,鳥 取 の 相 関 係 数 分 布 を 確 認 す る と タ イ ム ラ グ30時 間 前 以 前 で は極 値 が 二 つ に 分 か れ る様 子 が み られ て お り,台 風 由来 の 相 関 極 値 と冬 季 風 浪 由来 の 相 関 極 値 が混 在 して い る こ とが 要 因 と考 え られ る. こ こで,相. 互 相 関 解 析 に 用 い た6時 間 間 隔 の 日平 均 流. 速 デ ー タに つ いて,観 を 求 め,μ+3σ. 測 地 点 毎 に平 均 値 μ,標 準 偏 差 σ. を 基 準 値 と し,こ れ を 超 え た デ ー タ を. 沖 合 流 れ の 発 生 と仮 定 して,沖 合 流 れ 発 生 デ ー タ数 を 整 理 した.図‑6は. 沖 合 流 れ の 発 生 数(全. 地 点 計)を. 月別 に. 整 理 し,日 本 列 島 に接 近 し た台 風 の数 と比 較 した もの で あ る.沖 合 流 れ は,秋 季 と冬 季 に 多 く発 生 して お り,冬 季 の 発 生 に つ い て は主 に1月 に多 く,秋 季 の 発 生 に つ い て は 台風 の 接 近 数 との 相 関 が 高 い様 子 が み られ た. そ こで 以 下 で は沖 合 流 れ の発 生 頻 度 が 高 く,相 関 分 布 へ の寄 与 が 高 い と考 え られ る台 風 接 近 時 及 び,冬 季 風 浪 時 に お け る移 動 特 性 に つ いて 季 節 別 に検 討 を行 う こ と と した.台 風 接 近 時 に つ いて は,本 検 討 の 対 象 期 間 で あ る 2001年3月 〜2003年12月. 図‑5. 極値 の軌 跡(通 年). ま で の 間 に 日 本 列 島 に 接 近 した. 全18個 の 台 風 に つ い て,気 象 庁 の ホ ー ム ペ ー ジ (http://www.datajma.go.jp/fcd/yoho/typhoon/route̲map/ index.html)で 提 供 さ れ て い る 台 風 経 路 図 を 確 認 し,東 経120〜160度,北. 緯20〜50度. の範 囲 を 台 風 が通 過 して い. る期 間 を 抽 出 し,相 互 相 関 解 析 を 行 っ た.冬 季 風 浪 時 に つ い て は,2002年1月. 及 び2003年1月 を対 象 期 間 と して 抽. 図‑6. 沖合流 れ の月別 発生 数.
(4) 414. 海. 岸. 工. 学. 図‑7. 論. 文. 集. 第55巻(2008). 沖合 流 れ発生 状況 の例. きさを区別 して いる.. り,影 響 を強 く受 けた台風 の経路が異 な って いた ことが. 沖合流 れの発生状況 の例 をみ ると,い ずれ の時期 にお いて も,低 気 圧 の移動 に伴 い,等 圧線 が込み合 う海域 で. 考 え られ た.冬 季 はいず れの観測地点 にお いて も極値 が 観 測地点 の北方 を時間 と ともに東へ と移 動す る様子 がみ. 沖合流 れが発生す る様子 がみ られ た.ま た,全 デー タ数. られ,極 値 の軌跡 は日本海 周辺 に集 中 して いた.伏 木 富. に対す る沖合 流れ の発生数 の割合 は,各 地点 と も通年 に. 山で は観測地点 か ら離 れたオ ホーツク海 付近 に極値 があ. 比べて台風 接近時 に高 い傾向が み られた.冬 季 にお ける. り,能 登半 島の遮蔽域 であ るため に他 の地点 よ り沖合 流. 沖合流 れの発 生数 は直 江津,鳥 取,清 水 で多 く,直 江津 で は台風接近 時 よ りも冬 季 に多 く発生 して いた.な お,. れの発生 が遅 れ る傾向 にあ る可能性 も考 え られ た.. 潮岬で は平均 流速が大 きいため,沖 合 流れが発生 して い. 御 前崎で は,い ずれ の時 間帯 とも観測地 点の南方 に極 値 があ り,時 間 とともに北西方 向へ と移動 す る様子 がみ ら. なか った. 表‑1. 沖合 流 れの地 点別 発生 数. 太平洋側 についてみ る と,台 風接近 時の高知,清 水,. れ,台 風が太平 洋沖合か ら日本列島 に近 づ く際 に沖合 流 れが発生 しやすい もの と考 え られ た.こ の うち高知,清 水 で は極値 が大 き く移動 す る時間帯が あ り,複 数 の台風 の影 響が反 映された結果 であ ることが伺 え る.こ れに対 して久慈 では,極 値が西方 か ら東方へ と移 動す る様子 が み られて お り,日 本海側 を通過 した台風 の影響 を強 く受 けてい るもの と考 え られ た.. ※は期 間中の 全データ数(欠測 を含 む). 両 者の移動特性 を比較 す ると,日 本海 側の観測地点 は 台風接 近時,冬 季 ともに地点 によ る差が小 さい傾 向にあ. 図‑8は台風 接近時及 び冬 季 における海域 別 の極値(負. り,冬 季 は比較 的観測地点 か ら離れ た北部 にお ける低気. 相 関最大値)の 軌跡 を示 した もので ある.日 本海側 につ いてみ る と,台 風接近 時はいずれ の観 測地点 とも48時間. 圧 の移 動 と関係 が深 く,台 風接 近時 は日本 列島の近傍 を. 前 は南西方向 に極値が あ り,時 間とともに日本列島 に沿 っ て北 上す る様 子がみ られ,日 本列島近傍 を縦断す る台風. 縦 断す る低気圧 との関係が深 い ことが推察 された.こ れ に対 して太平洋側 で は,台 風接 近時 は太平 洋沖合 を接近 して くる低気圧 との関係が深 く,冬 季 は地点 によ る差 が. で沖合流 れが発生 しや すい もの と考 え られた.こ の うち. 大 きい ものの,観 測地点 の南方 を東へ と移動 す る低気圧. 鳥取,柴 山では極値が 日本海 側 を北上 し,玄 界灘,輪 島,. と関係 が深 い様子 が伺え た.ま た,久 慈 は太 平洋側 に位. 直江津で は極 値が 日本列 島上 又 は太平洋側 を移動 してお. 置 す るもの の,日 本 海側 の観測地 点 と類似 した特性 を持.
(5) 気 象 と流 れの相 関解 析 に基 づい た沖合 流 れの発生 に関す る検討. 図‑8. 415. 台風 接 近時及 び冬 季 にお け る極 値 の軌跡(左 段:日 本海 側,右 段:太 平洋 側). つ こ と が 伺 え た.. が 把 握 で き る もの と考 え られ る.今 後 は成 分 流 速 を用 い た 沖 合 流 れ発 生 状 況 の検 討 を行 い,成 分 風 速 や 気 圧 の勾. 5. 結 論 沖 合 流 れ の 発 生 予 測 を 行 う上 で,着. 配 との 比 較 や数 値 シ ミュ レー シ ョ ンに よ る再 現 に よ り沖 目す るべ き海 域 を. 合 流 れ の発 生 メ カ ニ ズ ム を 明 らか して い く必 要 が あ る.. 明 らか に す る こ と を 目 的 と し,気 圧 と流 れ の 相 互 相 関 解 析 を行 い,海 域 別 に相 関 極 値 の 移 動 特 性 を 検 討 した.本. 謝 辞:本 研 究 に お いて は,相 関 解 析 の方 法 に つ い て,株. 検 討 に よ り得 ら れ た結 論 は以 下 の とお りで あ る.. 式 会 社 エ コ ー の 鈴 山 勝 之 氏 よ り有 益 な情 報 を 頂 き ま した.. ○ 相 関 極 値 の 移 動 特 性 は季 節 に よ り変 化 して い る.. こ こ に記 して感 謝 の 意 を表 しま す.. ○ 日本 海 側 は,観 測 地 点 に よ る差 が小 さ い傾 向 に あ る. ○ 久 慈 は 日本 海 側 の観 測 地 点 と類 似 した 移 動 特 性 を 持 つ. ○ 日本 海 側 で は,冬 季 は観 測 地 点 の北 側 にお け る低 気 圧 の移 動 と関 係 が 深 く,台 風 接 近 時 は 日本 列 島 の近 傍 を 縦 断 す る低 気 圧 との 関 係 が 深 い. ○ 太 平 洋 側 で は,台 風 接 近 時 は太 平 洋 沖 合 を接 近 して く る低 気 圧 と の関 係 が 深 く,冬 季 は 観 測 地 点 の南 方 を 東 へ と移 動 す る低 気 圧 と関 係 が 深 い . な お,本 検 討 で は 流 速 の 日平 均 値 を 用 いて 相 互 相 関 解 析 を行 い,極 値 の移 動 特 性 につ い て の 検 討 を行 った が, 成 分 流 速 を 用 い た相 互 相 関 解 析 に よ り高 精 度 の移 動 特 性. 参 考 文 献 佐 藤愼司(1995): 日本海 沿岸 で観測 された流 れの特性, 土木学 会論文集, No.521/II‑32,pp.113‑122 橋 本典 明, 永井紀 彦, 高 山知司, 高橋智 晴, 三井 正雄, 磯 部憲 雄, 鈴 木敏夫(1995): 水 中超 音波 の ドップ ラー効果 を応用 した海 象計 の 開発, 海岸 工学 論 文集, 第42巻, pp.1081‑ 1085 橋 本典 明, 川 口浩 二, 永井 紀彦, 柴木秀之, 鈴 山勝 之(2002): 気象 ・波浪相 関図 に基 づ く我 が国沿 岸波浪 の出現特 性解析, 海岸工学論 文集, 第49巻, pp.221‑225 横 田雅紀, 山城賢, 橋本 典明, 永井 紀彦(2007): 海象計 に よる 流況観 測結果 を用 いた恒流 の季節変 動特性 に関す る検討, 海洋開発論 文集, 第23巻, pp.615‑620.
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