2018/6/11
1 比較宗教学概論Ⅱ
比較宗教学、残された課題群へ
『宗教的経験の諸相』
20180612 九州大学 飯嶋秀治 [email protected]
本日の講義内容
• 本日の講義内容
• 前回の復習
• 聖書を持たない宗教
• 『宗教的経験の諸相ー人間本性の研究』
• 成熟について
前回の復習
シラバス
• 出席:1/3以上の出席で試 験受験可能(15点)
• レポート:毎回
[email protected] へ 感想・質問を提出(15点)*
当日提出
• 試験:(全て持ち込み可)講 義の概要をまとめ(20点)、
自ら設問した(20点)うえで 自らが体験した具体的な事例 を考察せよ(20点)
学問:関心の経緯・それを支える方法
生まれようとしている発達課題
• 人は現在に生きている(これ から生きるためにもう生きた 体験を活かす/もう生きたこ とからこれからも生きる)
• 未整理のことを整理すること でより自らを成長させる
先行研究の探し方
メディア表象とそれを支える世界
• 世界の中の日本 • 戦争・国債・貯蓄
•メディアの投資構造①日本テレビ←読売新聞
②Tokyo Broadcasting System←毎日新聞
③フジテレビ←ニッポン放送(サンケイ・グループ)
④テレビ朝日←朝日新聞
⑤テレビ東京←日本経済新聞
言語メディア圏 日本語
↑ 映像メディア圏 テレビ局(FBS福岡放送、RKB毎日放送、TNCテレビ西
日本、KBC九州朝日放送、TVQ九州放送)
↑ 文字メディア圏 新聞(西日本新聞)
↑ 大株主
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世界のキリスト教、日本のキリスト教 世界の仏教、日本の仏教
学問(含比較宗教学)は解釈と責任を伴う
•【意訳】私たちが大学で探求するものと は諸個人である。その諸個人とは、世界 がその当初の見かけ以上に複雑であると 知るだけではなく、その複雑さゆえに、
解釈的な決断がなされねばならないと知 る諸個人の探求である。判断の決定とは 実際的な帰結を伴い、その帰結のために は人がその責任を取らねばならならず、
専門家ではないからというごまかしで逃 れられないかもしれない責任である。
聖典を持たない宗教学
『セム族の宗教』
•Julius Wellhausen(1844-1918年) 1887年『異教徒アラブの残骸』
•William Robertson Smith (1846-1894年) 1941(1889)『セム族の宗教』
「供儀食の中に直接表現されている唯ひとつの ことは、神とその礼拝者とが『共食者』であ るということで、彼らの相互関係の他の全て の点はこれが包含することのうちに含まれて いるのである。共に食にあづかる者共は、あ らゆる社会的効果のために結合せしめられて いる。共に食にあづからぬ者は、宗教上の親 交もなく、互恵的な社会的意義も負わずして、
相互に敵対関係に立っている」[スミス1943
(1894):88]
「セム族の動物供儀の主要観念は、神に捧げら れる貢ぎ物のそれではなくして、共食の行動 のそれであり、神と人とが神聖な生贄の肉と 血をともに摂取することによって結合すると いうのである」[スミス1943(1894):22]
『金枝篇―比較宗教学研究』
James George Frazer(1854-1941)
「[W・]マンハルトが出版した著作の中でもっとも重要 なのは、まず第一に二つの小冊子、『ライ麦の狼とライ 麦の犬』と『穀物霊たち』である。…彼は着実に研究を 進め、一八七五年には主著『ゲルマン民族およびその近 隣の種族における樹木崇拝』を出版した。これに一八七 七年の『古代の森の祭祀と野の祭祀』が続く。『神話学 研究』は彼の死後、一八八四年に出版された」[フレイ ザー2003(1890)a:14]
「民衆の迷信と農民の風習は、その断片的な性格にも関 わらず、先史アーリア人の原始宗教に関して現在われわ れが手にすることができる、最も充実した、もっとも信 頼のおける証言である。」[フレイザー2003(1890)a : 12]
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宗教学の術語
• 呪術と禁忌のまとめ
• 呪術論のその後
ブラニスラウ・マリノフスキー
『西太平洋の遠洋航海者』
呪術・儀礼
祈り・聖典 呪術 共感呪術 Sympathetic magic
類感(模倣)呪術imitative magic 感染(接触)呪術contagious magic
『宗教的経験の諸相-人間本性の研究』
宗教の心理学へ
[上山1989]
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Herbert Spencer(1820‐1903) 1855『心理学原論』
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Wilhelm Wundt(1832-1920) 1873『生理学的心理学綱要』
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Sigmund Freud(1856-1939) 1900『夢判断』
•William James(1858-1917) 1892『心理学』
『宗教的経験の諸相ー人間性の研究』(1901- 1902)
The Varieties of Religious Experience:A Study in Human Nature
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原著序
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第1講 宗教と神経学
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第2講 主題の範囲
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第3講 見えない者の実在
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第4・5講 健全な心の宗教
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第6・7講 病める魂
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第8講 分裂した自己とその統合の 過程
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第9講 回心
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第10講 回心―結び
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第11・12・13講 聖徳
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第14・15講 聖徳の価値
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第16・17講 神秘主義
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第18講 哲学
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第19講 その他の特徴
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第20講 結論
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後記
問題と方法
• 問題
「宗教とは、個々の人間が孤独の状態にあっ て、いかなるものであれ神的な存在と考え られるものと自分が関係していることを悟 る場合だけに生ずる感情、行為、経験であ る…この関係は、道徳的でも、物質的でも、
儀式的でもありうるのであるから、私たち の解するような意味の宗教から、いろいろ な神学や哲学や教会組織が第二次的に育っ てくるであろうことは、明らかである」
[ジェイムズ1982a(1901-1902):52]
「神々は、存在と力において第一のものと考 えられている、ということである。…神々 にかかわるものは、真理における最初にし て最後の言葉である。そこで、もっとも根 源的、包括的で、もっとも深く真実なるも のは、何であろうと、このようにして、神 のようなものとして扱うことがゆるされる であろう」[ジェイムズ1982a(1901- 1902):57]
• 方法
「私は神学者でも、宗教史を専攻した学者でも、
人類学者でもない。私が精通している学問の 部門はただ心理学だけである。心理学者に とっては、人間にあるさまざまな宗教的性向 というものは、少なくとも、人間の心の構造 に関係のある他のいかなる事実ともおなじく らいは、興味をひくものでなければならない。
それゆえ、ひとりの心理学者として、そのよ うなさまざまな宗教的傾向の事実をひととお り述べて、それを諸君に説明するのが、私に は自然なことのように思われる。…したがっ て、私は、自分の考えをはっきり表現できる だけの十分な自己意識をもった人々の書いた 文書、たとえば信仰告白書とか自叙伝などに 記録されているかなり発達した主観的現象に 私の主題を限らなければならない」[ジェイ ムズ1982a(1901-1902):15]
宗教的経験の考察
• 見えない者の実在
「ぼくがはじめてそのような経験をしたのは、
一八八四年の九月ころのことでした。その前 の晩、大学にある自分の部屋で床ついた後で、
ぼくは、なにかに腕をつかまれているという はっきりとした幻触を感じた。そこで、ぼく は起き上がって、侵入者を見つけようと、部 屋を捜索した」[ジェイムズ1982a(1901- 1902):93]
「そこには、或るものがそこにいるという意識 ばかりではく、その意識の中心にある幸福感 と溶け合って、それがなにか名状しがたい善 であるという驚きの意識もあった。それは、
漠然とした感情ではなかった、詩や風景や花 や音楽などの呼び起こす感情的な感銘のよう なものではなく、一種の強大な人物がまぢか な目の前にいる、という確実な知識であっ た」[ジェイムズ1982a(1901-1902):95]
• 健全な心・病める魂
「神の霊が近くに現前しているということは、
…神の霊の実在として、経験されることがで きる―実際、経験されうるだけである。…そ の目印は、神の霊が近くに在すことと結びつ いたまったく比類のない幸福の感じである」
[ジェイムズ1982a(1901-1902):122]*
FEELING OF HAPPINESS
「幸福で壮健だった私が、毎晩ひとりで眠りに 行く部屋の垂木で首をくくらぬようにと、縄 を隠しておかねばならなかった。手っとりば やく銃で自殺しようという誘惑に負けないよ うにと、私はもはや猟にもでかけなくなった。
…自分が何を欲しているのか、私にはわから なかった。私は生きるのがこわかった。私は 人生に別れたいという気持ちに駆り立てられ た」[ジェイムズ1982a(1901-1902):232]
健全な心→一回の誕生→直線の世界→自然主義 病める魂→二回の誕生→二階の世界→救済主義
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宗教的経験の考察②
• 分裂した自己・回心
「『君はまず怒りと気苦労を取り除かなければな らない。』私は、『しかしそんなことができま すか?』と言った。すると彼は、『できます。
日本人にはそれが可能なのです。ですから私た ちにも可能であるはずです』と答えた。帰途、
私はこの『取り除く』、『取り除く』という言 葉以外何も考えることができなかった。この考 えは私が眠っていた何時間かの間もずっと私に 憑いていたのに相違ない。なぜなら、翌朝目が 覚めて最初に意識が呼び戻したのが、この同じ 考えだったからである。それには、ある発見の 啓示がともなっていて、こういう論法をとって あらわれた。『もし怒りや気苦労を取り除くこ とが可能であるのなら、どうしてそもそも怒り や気苦労をもつ必要があるのか?』この論証の 強さを私は感じた」[ジェイムズ1982a(1901- 1902):274-275]
回心の特徴:(暫時的・突発的回復での自己放棄 からの)高い力の支配・真理の悟り・幻視・幸 福の恍惚
• 聖徳・聖徳の価値
「その特徴は次のとおりである。一、この世の 利己的な卑小な利害関係から成る生活よりも もっと広大な生活のなかにいるという感じ。…
二、理想的な力と私たち自身との生命との間に 親愛な連続性があるという意識…三、閉鎖的な 利己心の外郭がとけてゆくにつれ、無限に意気 が高まり自由になったという感じ。四、感情の 中心が調和のある愛情へと、つまり、非我のも ちだすさまざまな欲求に対して『否』を言わず
『諾、諾』と答える愛情へと移って行く」
[ジェイムズ1982b(1901-1902):29-32]
宗教的経験の概念図
一回の誕生 直線の世界(健全な魂)
自然主義
二回の誕生 二階の世界(病める心)
救済主義
暫時的 突発的
結論
• 神秘主義・哲学
言い表しようがなく、認識的性質をもつが、暫 時性しかなく、受動性を特徴とする神秘主義 は「全体的に見て汎神論的で楽観論的である。
あるいは少なくとも悲観論的の反対である。
それは反自然主義的であり、二度生まれある いはいわゆる別世界的な精神状態ともっとも よく調和する」[ジェイムズ1982b(1901- 1902):249]
「もし哲学が形而上学と演繹とを棄てて、批判 と帰納につき、そして進んで神学から宗教の 科学に変身するならば、哲学は非常に役立つ ことができる」[ジェイムズ1982b(1901- 1902):295]「このようにして、つまらない形 成物をふるい分けることによって、哲学は少 なくとも可能だと考えられる概念だけをあと に残すことができる」[ジェイムズ 1982b(1901-1902):296]
• 宗教生活の特徴
一、目に見える世界は、より霊的な宇宙の部分で あって、この宇宙から世界はその主要な意義を 得る
二、このより高い宇宙との合一あるいは調和的関 係が、私たちの真の目的である 三、祈り、あるいは、より高い宇宙の霊…との内
的な交わりは、現実的に業の行われる方法であ り、それによって霊的エネルギーが現象世界の なかへ流れ込み、現象世界に心理的あるいは物 質的な効果が生み出される
四、或る新しい刺激が、何か贈り物のように生活 に付加され、それが叙情的な感激か、それとも 真剣さおよび英雄主義への訴えかのいずれかの 形をとる
五、安全だという確信、平安の気持ちが生じ、他 者との関係において、愛情があふれて力強く なってくる[ジェイムズ1982b(1901-1902):
338-339]