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(1)

新 奈 良 町 に ぎ わ い 構 想

(案)

平成27年○月

奈 良 市

(2)

目 次

1.構想の策定にあたって ... 1 1-1.構想の策定の背景と目的 ... 1 1-2.構想の目標年次 ... 2 1-3.“にぎわい”の定義 ... 3 1-4.構想の対象区域 ... 4 2.新奈良町にぎわい構想の策定の視点 ... 5 2-1.旧構想の検証を踏まえた視点 ... 5 (1)旧構想の特徴 ... 5 (2)旧構想の成果 ... 6 (3)旧構想の検証を踏まえた新奈良町にぎわい構想に必要な視点 ... 14 2-2.奈良町の現況を踏まえた視点 ... 16 (1)ならまちゾーンのポテンシャルと課題 ... 16 (2)きたまちゾーンのポテンシャルと課題 ... 19 (3)奈良町の現況を踏まえた新奈良町にぎわい構想に必要な視点 ... 22 3.奈良町の“にぎわい”づくりの将来ビジョン ... 25 3-1.“にぎわい”づくりの目標像 ... 25 3-2.“にぎわい”づくりの方針 ... 26 (1)奈良町における“にぎわい”づくりの全体イメージ ... 26 (2)“にぎわい”づくりの方針 ... 27 (3)“にぎわい”づくりの空間構想 ... 31 4.奈良町の“にぎわい”づくりの進め方 ... 33 4-1.“にぎわい”づくりの道筋 ... 33 (1)重点区域の設定 ... 33 (2)“にぎわい”づくりの重点施策 ... 34 4-2.“にぎわい”づくりの具体方策 ... 36 (1)「重点施策① 伝統技術者の育成と町家・町並みの保存」に係る具体方策 ... 36 (2)「重点施策② 町家を活かした居住環境及び商業環境の形成」に係る具体方策 ... 39 (3)「重点施策③ 生活観光の促進と回遊性の向上」に係る具体方策 ... 42 (4)「重点施策④ 主体間の連携の仕組みづくり」に係る具体方策 ... 45 5.構想の進捗管理 ... 50 5-1.数値目標の設定 ... 50 5-2.「奈良町データ」の整備とPDCAサイクル ... 52

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1.構想の策定にあたって

1-1.構想の策定の背景と目的

奈良町は、平城京の都を基盤として、元興寺・興福寺・東大寺の周辺に展開した町であり、その 原型は中世にまでさかのぼることができます。奈良町は、長い歴史の中で「社寺の町」、「商工業の 町」、そして「観光の町」へと性格を変化させ、各時代の特徴を積み重ねながら発展し、歴史と文 化の魅力あふれる町へと成長してきました。 奈良市では、その趣ある佇まいを守り、受け継ぎ、そして観光に活かしていくために、平成4年 (1992)1月に「ならまち」(※2ページ下の枠内参照)を対象とした「ならまち賑わい構想」(以 下、「旧構想」という。)を策定しました。そして、旧構想に掲げる理念や方針のもとに、「① 観光 やまちづくりの拠点施設の整備」、「② 歴史的な町並みの保全・形成」の2点を中心とした各種施 策を展開し、「“にぎわい”づくりのための空間的な基盤づくり」を重点的に進めてきました。 現在、旧構想の策定から 20 余年が経過し、奈良町をとりまく環境も大きく変化してきています。 全国的な少子高齢化が進むなかで、奈良町においても定住人口の減少や高齢化が進み、地域コミ ュニティ、祭りや行事、町家の保存・継承などの様々な側面において、その影響が顕著にみられる ようになっています。 一方では、「ならまち」においては、観光やまちづくりの取り組みが活発化し、様々な団体が設 立され、多様な活動の展開がみられ、また、「きたまち」(※2ページ下の枠内参照)においても、 「鍋屋連絡所の保存・活用と“奈良きたまち”のまちづくりを考える会」をはじめとした団体によ る活動の萌芽もみられるようになってきました。さらに、経済面では、奈良町で新たに商売を始め ようと参入される起業家の増加もみられ、観光面では、観光ニーズの多様化のなかで、奈良町の多 様な魅力の発信が進められ、近年は以前にも増して外国人観光客の増加がみられるなどの変化が生 じてきています。

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現在の奈良町は、このような取り巻く環境の変化に対応しながら、旧構想の施策の成果である「に ぎわい”づくりのための基盤」を積極的かつ効果的に活かしていく、「“にぎわい”づくりの第二段 階」に入っているといえます。 奈良町には、古くからの町並みを残す町が共通して有する課題も見られますが、それを打破する に足る豊かな地域資源を有しており、今後の奈良の“にぎわい”づくりを先導する重要な区域であ るといえます。 奈良町にふさわしい“にぎわい”を創出し、深化させていくことにより、内在する課題を解決し、 奈良町に暮らす魅力、奈良町で商売をする魅力、そして、奈良町を訪れる魅力をより一層高めてい くことを目的として「新奈良町にぎわい構想」を策定します。

1-2.構想の目標年次

本構想は、15 年後の平成 42 年(2030)を目標年次と設定します。 なお、社会経済情勢の変化などを踏まえ、必要に応じて、構想内容の見直しを行うこととします。

「奈良町」と「ならまち」、

「きたまち」について

「奈良町」とは、江戸時代に奈良奉行が管轄していた範囲を主としており、東は高畑、西は三 条口、南は京終椚口(くぬぎぐち)、北は奈良阪京口に及ぶ範囲にあたります。現在も、この区域 には古くからの伝統的な町並みや生活文化が色濃く残っており、この区域全体を示す際には「奈 良町」という漢字表記を用いています。 一方、平仮名の「ならまち」は、主に猿沢池以南の元興寺を中心とした伝統的な町並みを残す 地域を示す際に使われ、平成4年の「ならまち賑わい構想」などを通じて、現在広く定着してき ています。また、奈良女子大学を中心とする奈良町の北部の地域については、地域住民から提唱 された「きたまち」の呼称が定着してきています。 本市では、このような考え方のもとに、「奈良町」「ならまち」「きたまち」を使い分けています。

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歴史・文化

奈良町の

“にぎわい”

経 済

居 住

観 光

1-3.“にぎわい”の定義

“にぎわい”には、「① 人が集まるなどしてにぎやかになること」と「② 富み栄え、豊かにな ること」の2つの意味があります。 奈良町が目指す“にぎわい”は、①の概念を含みつつも②の概念を中心としています。 奈良町は、居住と観光が共存・共生する町です。 常に長蛇の列ができ、大勢の観光客が行き交い、居住者が安心して生活できないような町ではな く、墨や線香の香りを感じ、お寺の鐘の音を聞きながら、そぞろ歩きができる、のんびりとした空 気の流れる“にぎわい”の町を目指します。 従って、奈良町の“にぎわい”は、古くから受け継がれる文化や身近に感じられる自然がつくる 住み良い居住環境と程よい観光客の来訪、そして、それらを通じて得られる心の豊かさや経済的な 豊かさであり、「歴史文化」を基盤とした「居住」、「観光」「経済」の相互の関係により成り立つも のであるといえます。 奈良町の“にぎわい”の成り立ち

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1-4.構想の対象区域

本構想では、江戸中期の『奈良町絵図』に描か れた奈良町の区域全体の活性化を見据えながら、 特に、「ならまちゾーン」、「きたまちゾーン」を 中心に“にぎわい”づくりを進めます。 なお、奈良公園の区域については、県との調整 のもとに連携して取り組みを進める「連携ゾーン」 と位置付けます。 構想の対象区域 奈良町絵図(江戸中期:享保・元文) 資料:天理図書館所蔵旧保井家文庫

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2.新奈良町にぎわい構想の策定の視点

2-1.旧構想の検証を踏まえた視点

(1)旧構想の特徴

旧構想(「ならまち賑わい構想」)は、元興寺周辺及び高畑地域にかけての約 48ha に及ぶ「なら まち」を対象に、「都市機能の充実による町の活性化と歴史的な町並みの保存整備」を目的として、 平成 4 年(1992)1 月に策定しました。 旧構想では、まちづくりの基本方針や方向をハード面からソフト面までの幅広い視点で掲げた上 で、具体的な施策として「都市景観形成地区及び伝統的建造物群保存地区の指定」と「6つの公共 施設の整備」を掲げており、「“にぎわい”づくりの基盤となる空間の整備を目標とした構想」とい う特徴がありました。 旧構想で掲げたまちづくりの基本方針・方向・方策 Ⅰ. 住環境の整備 Ⅱ. 新しい文化の 創造 Ⅲ. 観光振興と 地域産業の 活性化 まちづくりの 方向 1.住環境との 調和ある町並み 保存整備 2.快適な 都市環境の整備 1.伝統的文化の 継承・発展 2.国際文化交流 のサロンづくり 3.新しい 文化の創造 1.活力・にぎわい づくりへの 観光振興 2.地域産業の 育成振興 ①町並み保存事業費補助金制度のより一層の推 進 ②都市景観形成地区・伝統的建造物群保存地区 の指定 ①空き地・空き家等の活用 ②道路美装化・電線類地中化、公園整備、防火施 設整備、屋外広告物規制等の美的景観の育成 ③駐車場整備(地区内の居住者・商業者用駐車 場/幹線道路沿いの外来者・観光客用駐車場) ④歩行者の安全性・快適性の確保と緊急車両の 迅速な乗入れの確保 ⑤バス路線の新設(杉ケ町高畑線等) ①伝統文化の研究・学習・展示等の活動の拠点 となる施設の整備 ①ならまちを国際的に紹介し、歴史・文化・生 活に触れ、住民とふれあえる施設の整備 ①新しい文化を醸成するための来訪者・観光客 との交流できる活動の場となる施設の整備 ①寺社や民間展示施設とのネットワーク化によ る散策ルートの確保 ②観光公害が生じないような公衆衛生施設や駐 車場の設置 ③住民が町に誇りをもち、訪れる人を暖かく迎 えるまちにする ①観光振興の受け皿となる商工業・観光・サー ビス業等の地域産業の育成振興 (仮)ならまち郷土館 (仮)伝統工芸館 (仮)奈良国際交流センター (仮)芸能館 (仮)大乗院サロン (仮)ならまち西駐車場 ・観光客用の駐車場 公 共 施 設 整 備 計 画 まちづくりの 基本方針 具体的な方策 地 区 指 定 都市景観形成地区の指定 伝統的建造物群保存地区の 指定

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(2)旧構想の成果

ここでは、旧構想で主な目的として掲げた「歴史的な町並みの保存」と「まちづくり・観光の拠 点づくりのための公共施設の整備」に係る施策・事業の直接的な成果に加え、それらの施策・事業 による付帯効果及び波及効果の2点から、旧構想の成果を整理します。

① 施策・事業の直接的な成果

ア.歴史的な町並みの保存

奈良市では、「奈良市都市景観条例」(平成 2 年(1990)制定)に 基づき、平成 6 年(1994)に「奈良町都市景観形成地区」を指定し ました。同地区では、建造物(建築物・工作物)の新築・改築・増 築・外観の修繕・模様替え・色彩の変更などを行う場合には届出を 義務付けて「景観形成基準」に基づく助言・指導を行ってきました。 また、一方で、「奈良市都市景観形成地区建造物保存整備事業」に より「修理基準・修景基準」に即して修理・修景される建造物に対 する補助金の交付を行い、昭和 63 年度の制度創設以来、平成 26 年 修理・修景の事例 「奈良町都市景観形成地区」指定区域

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度までに計 255 件(年度平均約 10 件)の修理・修景事業を実施してきました。このように、「奈良 町都市景観形成地区」では、景観誘導制度と修理・修景補助金制度の両輪によって、歴史的な町並 みの保存を図ってきました。 一方、歴史的な町並みの保存のためのもう一つの柱として掲げられた「伝統的建造物群保存地区 の指定」については、合意形成などの問題から実現には至りませんでした。

イ.まちづくり・観光の拠点づくりのための公共施設の整備

旧構想で計画された6つの公共施設のうち、概ね計画どおりの機能を備えた施設として整備され たものは、「なら工藝館」(計画時の仮称は「伝統工芸館」)、「名勝大乗院庭園文化館」(計画時の仮 称は「大乗院サロン」)、「奈良市音声館」(計画時の仮称は「芸能館」)、「奈良市ならまち振興館」(計 画時の仮称は「(仮)奈良国際交流センター」、平成 13 年度より建設計画の見直しが行われて中断し たため、予定地の一部区域のみ整備)の4施設となっています。 一方、「(仮)ならまち郷土館」予定地は、現在も空き地のまま残されており、「(仮)ならまち西駐 車場」は、観光客用駐車場ではなく、「奈良市音声館駐車場」として、機能が大幅に変更されて整 備されています。 旧構想に基づいて整備された公共施設や旧構想以前から整備されていた又は建設中であった公 0 50 100 150 200 250 300 0 2 4 6 8 10 12 14 16 18 20 平成 6 年度 平成 7 年度 平成 8 年度 平成 9 年度 平成 10 年度 平成 11 年度 平成 12 年度 平成 13 年度 平成 14 年度 平成 15 年度 平成 16 年度 平成 17 年度 平成 18 年度 平成 19 年度 平成 20 年度 平成 21 年度 平成 22 年度 平成 23 年度 平成 24 年度 平成 25 年度 平成 26 年度 累計 年度別 年度別補助件数 累計補助件数 奈良市都市景観形成地区保存整備事業による補助件数の推移

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共施設では、それぞれの施設の性格に応じた多彩な展示やイベントなどが行われ、多くの住民や観 光客が来館し、まちづくり・観光の拠点としての役割を担ってきました。 旧構想で計画された公共施設の整備状況 (仮)ならまち郷土館 ・ならまちの歴史文化に関する資料の展 示公開による文化意識啓発 (仮)伝統工芸館 ・ならまちの伝統工芸・産業の研究・展 示・体験による伝統工芸・産業の振興 (仮)奈良国際交流センター ・国際文化観光都市「奈良」における国際 交流事業推進のための拠点 (仮)芸能館 ・世界の民族楽器の展示と伝統芸能・民 間音楽団体の活動・練習施設 (仮)ならまち西駐車場 ・観光客用の駐車場 (仮)大乗院サロン ・市民のギャラリーとして美術作品を展示 し、関係団体の活動するサロン 未整備(空き地) バブル期のマンション建設計画地を、地元要請を受けて平成 3 年に 取得するが、建設計画が進捗せず更地のまま管理している。 「奈良市音声館駐車場」の整備 旧構想で計画された公共施設 整備の実施状況 「なら工藝館」の整備(平成 12 年) <設置目的> 長い歴史の中で研ぎ澄まされてきた奈良工芸の 振興発展を図るため <実施事業> ・後継者の育成に関すること ・奈良工芸品並びにその制作道具及び材料の収集 及び展示に関すること ・奈良工芸に関する情報の発信に関すること ・奈良工芸の研究、創造及び制作技術の伝承に関すること ・工芸展の開催に関すること ・工芸の制作実演及び体験教室の開催に関すること 等 「奈良市音声館」の整備(平成 6 年) <設置目的> 伝統的な芸能の継承並びに音楽及び演芸の振興 を図り、市民の文化の向上に資するため <実施事業> ・伝統的な芸能の継承及び振興に関すること ・わらべ歌等の調査、研究及び普及に関すること ・音楽会及び演芸会の開催並びに市民のふれあいの場の提供に関する こと 等 「奈良市ならまち振興館」の整備(平成 7 年) <設置目的> 市民の国際文化の向上とならまちの町並み保全 に資するため <実施事業> ・奈良に関する歴史、文化等の情報の提供に関す ること ・本市の友好姉妹都市の紹介に関すること ・日本の伝統的文化の紹介に関すること 等 「名勝大乗院庭園文化館」の整備(平成 8 年) <設置目的> 市民の文化の向上を図るとともに、市民及び本 市を訪れる観光客の観覧と利便に供するため <実施事業> ・大乗院に関する資料の展示 ・奈良の観光案内及び情報の提供 等

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② 施策・事業による付帯効果及び波及効果

ア.付帯効果

〇 世界文化遺産登録

平成 10 年(1998)、「ならまち」内に位置する元興寺をはじめ、東大寺、興福寺、春日大社、春 日山原始林、薬師寺、唐招提寺、平城宮跡の8つの遺産が世界文化遺産「古都奈良の文化財」に登 録されました。その登録に向けた推薦書には、遺産緩衝地帯及び歴史的環境調整区域の法的保護の 手法のひとつとして、奈良町都市景観形成地区(奈良市都市景観条例)における景観形成基準に基 づく建築物等の規制誘導と、建築物等の修理・修景に対する補助金の交付などがあげられました。 このように、旧構想に基づく歴史的町並みの保存の施策は、「古都奈良の文化財」の世界文化遺産 の登録に大きな役割を果たすとともに、世界文化遺産の周辺の良好な景観の形成に役立ってきまし た。

〇 住民のまちづくりに対する意識の醸成

平成 4 年(1992)には奈良市出資財団である「(財)な らまち振興財団(現:(一財)奈良市総合財団ならまち振 興事業部門)」が設立され、同財団は、「ならまちセンタ ー」や「ならまち格子の家」、「ならまち振興館」、「奈良 市音声館」、「名勝大乗院庭園文化館」、「なら工藝館」の 管理・運営を担い、それらの施設を活用して「ならまち わらべうたフェスタ」や「ならまちナイトスクーリング」、「奈良工芸フェスティバル」、ギャラリ ー「格子の家」などの地域振興及び伝統文化・芸能などの継承のための事業を実施してきました。 また、同年、「ならまち格子の家」を活動拠点として「なら・町家研究会」が発足し、公開講座や パネル展などを開催しています。平成 7 年(1995)には、奈良漬屋跡地の活用方法の提案を契機に 「特定非営利活動法人 さんが俥座」(以下、「さんが俥座」という。)が組織され、町家を活かし た地域活性化事業やシンポジウム、まちづくり講座の開催などの様々な取り組みが展開されてきま した。さらに、平成 18 年度には、「奈良の唄保存会」によって元林院で歌い継がれた歌を保存・継 承するために「奈良小唄・奈良盆踊の復活」事業が市民企画事業として採択・実施されました。 このように、旧構想に基づいて、まちづくり・観光の拠点として整備された公共施設は、地域住 ならまちわらべうたフェスタ

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民が「ならまち」について学び、地域住民のまちづくり に対する意識の醸成を促す場となるとともに、まちづく りの担い手となる組織や多く活動団体の結成を促し、そ の活動の場となってきました。そして、これらの組織・ 団体による活動は、「さんが俥座」による「あしびの郷」 や「喫茶ならまち」の整備をはじめ、「(公社)奈良まちづ くりセンター」による「奈良町物語館」の整備など、新 たなまちづくり・観光の拠点となる施設の整備にもつながってきました。

〇 回遊性の向上

県や市、観光協会をはじめ、ボランティアガイドなどの民間団体によって、「ならまち」界隈を めぐる様々な観光コースが設定されています。その多くが、JR奈良駅・近鉄奈良駅を起終点とし たコースであり、これらの駅と奈良公園や東大寺・興福寺・春日大社等を結ぶ東西の観光軸が形成 されてきました。そして、その 東西軸から「ならまち」に足を 踏み入れるコース上には、旧構 想に基づいて整備された公共 施設をはじめとした各公共施 設が位置しており、公共施設の 整備が、「ならまち」観光の回 遊性の向上に寄与してきたこ とがうかがえます。 奈良町物語館

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イ.波及効果

前述のように、旧構想はハード面に主眼を置いたものの、その基本方針には、ソフト面まで含め た幅広い方針が掲げられました。そのため、住民意識の醸成や社会経済情勢の変化を背景に、旧構 想の直接的な成果とは言えないものの、その方針を踏まえた様々な施策や取り組みが展開・波及し てきました。

〇 景観計画の策定と景観形成重点地区の拡大

平成 16 年(2004)の「景観法」の施行を受け、奈良市では、平成 21 年(2009)に、これまでの 自主条例としての「奈良市都市景観条例」を改正し、「景観法」に基づく委任条例としての「なら・ まほろば景観まちづくり条例」を制定しました。そして、平成 22 年(2010)には同法・同条例に 基づき「奈良市景観計画」を策定し、「ならまち」は従前の「奈良町都市景観形成地区」の指定を 引き継ぎながらも、新たに「奈良町景観形成重点地区」として位置づけられ、景観法に基づく届出 制度のもとに景観の規制・誘導が図られてきました。 平成 24 年(2012)の「奈良市 眺望景観保全活用計画」の策定や 平成 27 年(2015)の「奈良市歴 史的風致維持向上計画」の策定・ 認定を受けて、平成 27 年(2015) には、「奈良市景観計画」の見直 しを行い、「奈良市都市景観形成 地区」及び「奈良町景観形成重点 地区」の拡大ならびに「きたまち 景観形成重点地区」の指定を実施 しました。このことにより、本構 想の対象とする奈良町のほぼ全 域が景観計画に基づく景観形成 重点地区となり、景観誘導が図ら 奈良市景観計画に基づく (景観形成重点地区・都市景観形成地区)

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れることとなりました。

〇 伝統町家の保存のための制度的措置

「奈良市都市景観形成地区保存整備事業」は、伝統的な町家(以下、「伝統町家」という。)の修 理や修景に対する補助制度として、奈良町の歴史的な町並みの保存に寄与してきました。しかし、 同制度は、町並み景観としての建築物の外観の修景を目的とする制度であり、伝統町家そのものを 守る制度ではなかったこともあり、依然として世代交代等 を機に取り壊されてしまう伝統町家も多くみられました。 このことから、平成 25 年度より「ならまち町家バンク制 度(現:空き家バンク制度)」と「町家建物内部改修モデ ル事業(平成 27 年度まで)」の2つの制度を新たに設け、 伝統町家を保存しながら、現代の生活様式に適した改修を 施すことによる積極的な活用の推進を図っています。

〇 公共施設の拡充

旧構想で掲げられた伝統文化の研究・学習・展示や国際交流、住民・観光客間の交流などの公共 施設に求められる機能、ならびに社会背景や求められる機能等の変化を踏まえながら、その後も新 たな公共施設の整備が進められ、まちづくり・観光の拠点施設の拡充が図られてきました。 平成 12 年(2000)には、「奈良市杉岡華邨書道美術館」が開館し、杉岡華邨氏の作品を中心に書 道作品及び資料の保存、展示等、書道文化講座や作品解説会、毛筆体験などを通じて書道文化の向 上が図られています。また、平成 24 年(2012)には、寄贈を受けた町家を改修して伝統町家を後 世に引き継ぐとともに、復元した江戸時代のからくりおもちゃ等の展示及び体験を通して地域の活 性化と観光振興の拠点とすることを目的として、「奈良町からくりおもちゃ館」が開館しました。 さらに、平成 24 年度には、地元の要望を受けて旧大西家 を購入し、改修工事を進め、平成 27 年(2015)4 月に「奈 良町にぎわいの家」を開館しました。この「奈良町にぎ わいの家」は、伝統町家を後世に引き継ぐこと、また、 観光振興、地域の活性化、市民・観光客の交流及び教育 ならまち町家バンク制度 (現:空き家バンク制度)

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機関との連携の拠点とすることを目的としており、「珠光茶会」の会場としても利用されています。 また、平成 27 年(2015)3 月には、「入江泰吉旧居」を入江氏の業績を称える施設として整備、平 成 27 年(2015)3 月から公開しています。 一方、商工業の中心施設としての機能を担ってきた「奈良マーチャントシードセンター」は、平 成 24 年(2012)10 月、起業家支援や商業振興を担うまちづくりの拠点施設「きらっ都・奈良」と してリニューアルし、若手起業家などが入居しています。

〇 多様なニーズに対応した多彩な観光メニュー

平成 20 年度より、「ならまちナイトカルチャー」を開催し、主に宿泊客に向けて、奈良の夜を楽 しんでもらうため、奈良に縁のある演者を起用した伝統芸能の公演を実施しています。また、平成 22 年(2010)より、奈良の伝統産業を支える店舗や町 家を活かしたギャラリーなどを舞台に、ならまちの 人々がボランティアの「館長」となり、作業場や収集 品などを公開し、地域の伝統や文化に触れる機会を提 供する「奈良まちかど博物館」を実施しています。 また、市民や観光客に対して、市内中心部の商店街 の魅力を広め、まちなかでの消費の拡大や本市の特産 物等の紹介を目的とした「奈良まちなか市場」や「奈良まちなか市場」などのイベントも実施して います。さらに、平成 25 年(2013)3 月からは、入江泰吉記念写真賞及びなら PHOTO CONTEST を各 年で開催しており、平成 25 年度からは、奈良に美しい文化を創造し、観光振興、地域の活性化、 人材の創出に寄与することを目的として、「なら国際映画祭」「ならシネマテーク」を開催していま す。 このように、奈良市では、これまでの社寺巡りや町並み探訪を超えた様々な人々をターゲットと した多彩なイベントや観光メニューを用意し、観光客のニーズの多様化への対応を図ってきていま す。

〇 周辺地域への波及

「きたまち」では、平成 10 年(1998)に「きたまち」を活気ある町にするべく、地元住民によ るボランティア団体として「奈良街道まちづくり研究会」が発足し、各種まちづくりイベント等を ならまちナイトカルチャーの様子

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実施してきました。また、平成 15 年(2003)からいち早 く「奈良まちかど博物館」の取り組みを実施し、平成 20 年度には、「世界遺産東大寺転害門に隣接する町屋活用協 議会」を設立し、旧南都銀行手貝支店の観光案内所や観 光客の休憩場所、観光情報を発信するギャラリー機能を 持った施設としての活用に向けて基本構想を策定し、平 成 25 年(2013)に「きたまち転害門観光案内所」を開所 させています。また、平成 21 年(2009)には、「鍋屋連 絡所」を奈良きたまちの観光拠点・地域の活動拠点など に活用しようと、地元の自治会長や奈良女子大学の教員、 地元住民らにより「旧鍋屋連絡所の保存を考える会」 (現:鍋屋連絡所の保存・活用と“奈良きたまち”のま ちづくりを考える会)が発足し、「きたまち大発見」や「旧 鍋屋交番見学会」などの各種イベントを実施するなどの 取り組みを進め、平成 24 年(2012)に「旧鍋屋交番きた まち案内所」を開所させています。 このように、かつて「ならまち」と一体となって「奈 良町」を形成していた「きたまち」は、旧構想の対象に はならなかったものの、「ならまち」におけるにぎわいづ くりの影響を少なからず受けながら、地域住民が主体となったまちづくり活動や、町家や歴史的建 造物の保存・活用の取り組みが積極的に展開されてきています。

(3)旧構想の検証を踏まえた新奈良町にぎわい構想に必要な視点

ア.「奈良町」としてのにぎわいづくり

旧構想では、「ならまち」を対象区域として、公共施設の整備や町並みの保存などの空間づくり を推進することにより、JR奈良駅・近鉄奈良駅から奈良公園等へと通じる東西軸がつくり出され てきました。そのなかで、近年、その波及効果ともいえる形で、「きたまち」における住民等によ きたまち見学会の様子 旧鍋屋交番きたまち案内所 きたまち転害門観光案内所

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る活動が活発し、奈良観光の新たな魅力が生み出されてきました。 このようななかで、かつての「奈良町」としての一体性を再現しながら、より広い範囲でのにぎ わいづくりのあり方を検討することにより、多様化する観光ニーズに応えられる多彩な魅力づくり が求められているといえます。

イ.伝統町家の保存の拡充

旧構想で志向された伝統的建造物群保存地区の指定には至らず、自主条例に基づく都市景観形成 地区としての規制・誘導のもとに町並みの保存が図られてきました。このことにより、住民の生活 とともにある、生活感のある「生きたまち ならまち」としての魅力が現在に受け継がれてきまし た。しかし、一方では、伝統町家の保存が徹底されず、取り壊され、表面上修景された新しい町家 風の建物が増えてきたことは否めません。そして、この傾向は、今後、世代交代が進むなかで、よ り一層助長されてしまうおそれがあります。 そのため、伝統町家を保存し、本物に触れられる空間を受け継いでいくためにも、空き家バンク 制度のより一層の活用を推進するとともに、現代の生活様式に適した形で改修しながら住み続けら れるよう、内部改修の補助金制度を次年度以降も継続していくことが求められているといえます。

ウ.公共施設のあり方の再検討

旧構想で計画された公共施設のなかには、「ならまち郷土館」などのように、整備が実現せず、 予定地が更地のまま管理されているものもみられます。また、「奈良市ならまち振興館」のように、 新たに「奈良町南観光案内所」としての機能を付加した改修が進められた施設もあります。第1項 で示したにぎわいづくりの対象区域の拡大を踏まえ、観光動線等と連携した「きたまち」における まちづくり・観光拠点の考え方や長期未整備用地のあり方の検討、各公共施設の役割の再検討を行 うことが求められているといえます。

エ.整備された空間のより一層の活用

旧構想では、「ならまち」を中心に、にぎわいづくりの基盤となる空間の整備を進めてきました。 そして、近年、それらの空間を活かし、市・住民・団体等による活動が活発化してきているという 現状もみられます。今後は、そのような動きを受け止めながら、まちづくり(“にぎわい”づくり) の方向性を共有し、これらの公共施設や歴史的な町並みをより一層まちづくりに活かすための施策 の実施や支援、仕組みづくり等のソフト面での対応が求められているといえます。

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2-2.奈良町の現況を踏まえた視点

ここでは、これまでの取り組みの成果を踏まえて形成されてきた奈良町の現況について、本構想 の主な対象とする「ならまちゾーン」と「きたまちゾーン」に分けて、それぞれのゾーンが有する 「ポテンシャル」と「課題」を、奈良町の“にぎわい”を構成する4つの柱(「居住」、「観光」「経 済」「歴史文化」)ごとに整理します。

(1)ならまちゾーンのポテンシャルと課題

ア.居住

近鉄奈良駅やJR 奈良駅、バス停等から近い交通利便性を兼ね備えるとともに、奈良公園等の豊 かな自然環境が身近に感じられ、古くからの地域コミュニティが受け継がれる、豊かな歴史・文化・ 自然を感じられる良好な居住環境が形成されています。また、地域住民と地域外の人々とが連携し て様々な活動団体を組織し、それぞれの得意分野で活動を展開しており、その一つ一つが柱となり、 「ならまち」の魅力を支える頑丈な土台を築いています。 一方で、奈良観光の主要な観光地としての地位を確立してきたことから、観光と居住の共存が求 められています。また、人口は減少傾向にあり、空き家バンク制度の活用推進等による定住人口の 誘導が大きな課題のひとつとなっています。

イ.観光

旧構想や旧構想の波及効果として展開してきた観光拠点施設の整備により、観光拠点施設が集積 してみられ多くの観光客を呼び込んでいます。また、それらの公共施設や歴史的な町並みを舞台と したイベントや古くから伝わる祭り・行事などがみられるとともに、軒先に吊るされた身代わり申 や花などが供えられたお地蔵さんなどから、住民の生活の香りを感じることができます。 一方で、十分な集客が得られていない公共施設もみられ、公共施設間相互の連携を図りながら、 相互に魅力を向上していく仕組みづくりが求められています。また、主要な観光地として数多くの 観光客が訪れるものの、歴史的な町割りを基盤とした空間構造を活かしてきたがために、団体の観 光客を受け入れられるだけのキャパシティを持ち合わせていない店舗・公共施設が大半を占めるこ

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とが課題となっています。さらに、区域が広域にわたるなかで、徒歩では1日で全てを巡ることが 困難であることや増加する観光客への対応が十分に図られていないことも課題となっています。

ウ.経済

様々な特徴をもつ商店街が多数集積し、通りごとに異なった雰囲気を味わえる商業空間が形成さ れています。そのなかには、観光客をターゲットとした奈良町らしさを感じられる小売店舗や飲食 店が多いことが特徴である一方、景気等の外的要因による影響を受けやすいといった課題や数多く の観光客が来られるにもかかわらず観光消費額が少ないといった課題もみられます。また、「きら っ都・奈良」や「夢 CUBE」などの起業家を育成する仕組みは整ってきているものの、改修時の法規 制の厳しさや手続きの煩雑さなどもあるため、いかにして町家等への入居を誘致するかも課題とな っています。

エ.歴史文化

奈良町都市景観形成地区の指定や修理・修景に対する補助金制度により、数多くの町家が修理・ 修景を受けながら残され、歴史的な町並みが受け継がれています。その町並みの要所には、国指定 文化財などの貴重な歴史的建造物がみられ、これらの歴史的な市街地を舞台に春日若宮おん祭や采 女祭、地蔵盆などの祭りや行事が執り行われるとともに、まちなかを漂う線香や墨の香りなどから は、古くからの元興寺や興福寺との密接な関わりや商工業のまちとしての発展のなかで育まれてき た伝統工芸など、古くからの時代の積み重ねを感じることができます。 一方で、町並み保存の規制・誘導は必ずしも徹底されておらず、町並み質感の低下を招いている とともに、町家等の歴史的な建造物が減少し、駐車場化・空き地化しているものもみられます。そ の背景には、奈良町の町家の価値が十分に理解されていないこと、町家の修理等を担う伝統技術者 が不足してきていることなどの課題がうかがえます。その一方で、歴史的価値があるにもかかわら ず、その価値が見出されていないがために、まちづくりや観光振興に活かされていない文化遺産も 数多く存在しているという課題もあります。

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ならまちゾーンのポテンシャルと課題 分野 ポテンシャル(強み【S】) 課題(弱み【W】) 居住 Sn-1:町会所を中心とした古くからの地域コ ミュニティが受け継がれている。 Sn-2:多様な活動団体の活動がみられる。 Sn-3:近隣に大学が位置する。 Sn-4:奈良公園等の豊かな自然が身近にある。 Sn-5:鉄道駅・バス停等から近く、交通利便 性が高い。 Wn-1:人口は減少傾向にある Wn-2:空き家バンク制度が十分に活かされて いない。 Wn-3:多くの観光客が訪れるため、治安面・ プライバシー面等で課題がある。 観光 Sn-6:観光拠点施設が集積している。 Sn-7:公共施設や歴史的な市街地を舞台に、 様々なイベントや祭り・行事が行われ ている。 Sn-8:身代わり申や地蔵などの住民の生活文 化が感じられる歴史的な町並みが形成 されている。 Wn-4:団体観光客を受け入れられる施設や飲 食店舗等が少ない。 Wn-5:公共施設のなかには、十分な集客が得 られていないものもある。 Wn-6:公共施設間の連携が十分に図られてい ない。 Wn-7:歩行のみの周遊にとっては範囲が広い。 Wn-8:外国人観光客への対応が遅れている。 経済 Sn-9:商店街が集積している。 Sn-10:商店街ごとの多様な性格がみられる。 Sn-11:奈良町らしさを感じられる店舗が増加 している。 Wn-9:観光客をターゲットとした小売店舗や 飲食店舗が多く、景気等の外的要因に よる影響を受けやすい。 Wn-10:商業施設への改修時の法規制が厳し く、手続きが煩雑である。 Wn-11:観光客数に比べ観光消費額が少ない。 歴史 文化 Sn-12:数多くの町家が残る。 Sn-13:町家の修理・修景の蓄積がある。 Sn-14:国指定文化財が集積している。 Sn-15:春日若宮おん祭や采女祭、三枝祭、地 蔵盆など、ゾーン内での祭り・行事が 多い。 Sn-16:伝統工芸の製作・販売店舗が多い。 Sn-17:奈良町都市景観形成地区を中心に町家 等による歴史的な町並みが残る。 Sn-18:街区中心部分の魅力的な活用の可能性 がある。 Sn-19:興福寺・元興寺との密接な関わりがあ る。 Wn-12:町家等の歴史的な建造物が減少し、駐 車場や空き地等が増えている。 Wn-13:町並み保全の規制・誘導が徹底されず、 町並みの質感が低下してきている。 Wn-14:奈良町の町家の価値が十分に理解され ていない。 Wn-15:町家の保存・修理のための伝統技術者 や伝統産業や祭り・行事等の担い手が 不足してきている。 Wn-16:価値が見出されていない(活かされて いない)歴史文化遺産がある。

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(2)きたまちゾーンのポテンシャルと課題

ア.居住

「きたまちゾーン」は「ならまちゾーン」ほど観光地化が進んでおらず、落ち着いた居住環境が 形成されています。また、重点的な施策が講じられてこなかったため、まちづくりの方向性を定め ていくなかで、定住促進等に向けた新たな施策を展開していく余地が残されている地域でもありま す。鉄道駅やバス停等へのアクセスも整備されており、豊かな自然環境と古くからの地域コミュニ ティが受け継がれる良好な居住環境が形成されています。 一方で、人口は大幅な減少傾向にあるため、居住人口の増加を図っていくことが課題となってお り、大学の学生等の居住ニーズとのマッチングなどを含めた空き家バンク制度の積極的な活用が課 題となっています。

イ.観光

「なべかつ」1や「てんかつ」2を中心に様々な活動団体が取り組みを展開してきており、近年は それらの団体や自治会、商店主等の連携が図られつつあります。また、観光地化されすぎていない ため、観光客が自ら魅力を探し出す楽しみを備えたまちであるといえます。 一方で、このことは、観光客への案内施設が十分に整備されていないことでもあり、案内板の設 置などの観光案内施設の程よい整備、外国人観光客等への対応などが求められています。また、区 域が広域にわたるなかで、徒歩では1日で全てを巡ることが困難であること、観光・まちづくりの 拠点となる施設が少ないことも課題となっています。

ウ.経済

個人経営の店舗が数多くみられることが特徴です。このため、各店舗の店主の多くに「小さいな がらも自分の無理のない範囲でやっていきたい」という考え方がみられ、「きたまち特有の空気」 をつくりだしています。一方で、これらの店舗では、「きたまちWeek」などの形で相互に連携して イベントを開催するなどの取り組みを進めており、大学の立地に伴う若者等をターゲットとしたお しゃれな店舗等が増えてきています。しかし、町家等を改修した新規店舗の出店にあたっては、法 規制の厳しさや手続きの煩雑さなどが課題となっています。 1 正式名称「鍋屋連絡所の保存・活用と“奈良きたまち”のまちづくりを考える会」 2 正式名称「転害門前旧銀行建物活用協議会」

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エ.歴史文化

「きたまち」には数多くの町家が残されていますが、まとまって歴史的な町並みを形成している 区域は少なく、まちなかに点在することにより、歴史的な趣を感じられるまちが形成されています。 また、「きたまち」のまちなかには、指定等文化財は少ないですが、「ならまち」や「奈良公園」な どの隣接する区域には数多くの指定等文化財がみられ、特に東大寺との密接な関わりがあり、山陵 祭などの舞台にもなっています。また、古くからの地域コミュニティが残り、まちなかでの地蔵盆 などの行事も行われ、さらに、近年は文化芸術を中心とした取り組みの展開もみられ、文化性豊か な市街地環境が形成されています。 この歴史的な市街地の景観を守るために、景観形成重点地区の指定を行いましたが、同地区の指 定だけでは誘導力が弱く、歴史的な町並みの保存が難しいという課題があります。人口の減少等を 背景に、空き家となる町家や、取り壊され駐車場化・空き地化しているものもみられるようになっ てきています。この背景には、町家の修理等を担う伝統技術者が不足してきていることに加えて、 「ならまちゾーン」とは異なり、これまでの町家の保存に係る実績が十分にないことから、町家を はじめとした歴史文化遺産の発掘やその価値の理解が十分に進んでいないことが大きな要因の一 つであると考えられます。

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きたまちゾーンのポテンシャルと課題 分野 ポテンシャル(強み【S】) 課題(弱み【W】) 居住 Sk-1:町会所を中心とした古くからの地域コ ミュニティが受け継がれている。 Sk-2:観光地化が進んでおらず、落ち着いた 居住環境がある。 Sk-3:定住促進等に向けた新たな施策の余地 がある。 Sk-4:区域内及び近隣に大学が位置する。 Sk-5:奈良公園等の豊かな自然が身近にある。 Sk-6:鉄道駅・バス停等から近く、交通利便 性が高い。 Wk-1:人口は減少傾向にある。 Wk-2:空き家バンク制度が十分に活かされて いない。 Wk-3:近隣に大学が立地するが、学生等の居 住が少ない。 観光 Sk-7:観光振興やまちづくりに向けた住民主 体の活発な取り組みがみられる。 Sk-8:活動団体と地域との連携が図られつつ ある。 Sk-9:観光地化されすぎていないため、自ら 探せる楽しみがある。 Wk-4:観光・まちづくりの拠点施設等が少な い。 Wk-5:案内板等の観光案内施設が少ない。 Wk-6:歩行のみの周遊にとっては範囲が広い。 Wk-7:外国人観光客への対応が遅れている。 経済 Sk-10:店舗間の連携が図られつつあり、まち なかバル等のイベントに積極的な店舗 が増加している。 Sk-11:個人店舗を中心とした「きたまち特有 の空気」がある。 Sk-12:大学の立地に伴う若者等をターゲット とした店が多い。 Wk-8:商業施設への改修時の法規制が厳し く、手続きが煩雑である。 歴史 文化 Sk-13:数多くの町家が残る。 Sk-14:歴史的な町並みの趣が残る。 Sk-15:隣接して数多くの文化財がみられる。 Sk-16:文化芸術関連の取り組みがみられる。 Sk-17:まちなかでの地蔵盆等の行事が残る。 Sk-18:東大寺との密接な関わりがあり、東大 寺に関連した祭り・行事が行われてい る。 Wk-9:景観形成重点地区の指定だけでは、誘 導力が弱く、歴史的な町並みの保存が 難しい。 Wk-10:奈良町の町家の価値が十分に理解され ていない。 Wk-11:町家等の歴史的な建造物が減少し、駐 車場や空き地等が増えている。 Wk-12:まちなかに指定等文化財が少ない。 Wk-13:町家の保存・修理のための伝統技術者 や祭り・行事等の担い手が不足してき ている。 Wk-14:価値が見出されていない(活かされて いない)歴史文化遺産がある。

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(3)奈良町の現況を踏まえた新奈良町にぎわい構想に必要な視点

(1)及び(2)で整理したポテンシャルと課題は、それぞれ「ならまちゾーン」「きたまちゾ ーン」が有している内部環境としての「強み(Strength)」と「弱み(Weakness)」であるといえま す。一方、社会経済情勢の変化や時代の潮流などの、奈良町を取り巻く外部環境としての「機会 (Opportunity)」と「脅威(Threat)」は、次のように整理できます。 奈良町を取り巻く外部環境(「機会」と「脅威」) 分野 機会【O】 脅威【T】 居住 O-1:町家居住希望者が増加している。 O-2:学生等による継続的な居住需要が見込め る。 T-1:人口減少・少子高齢化がより一層進む (定住人口の減少と空き家の増加)。 T-2:周辺地域におけるバブル期マンション の空きが増加している(周辺地域への 居住の増加)。 T-3:内部改修事業が平成 27 年度で終了予定 である。 観光 O-3:地域外の人々のまちづくりへの参加が増 加している。 O-4:外国人観光客やまち歩きをする女性観光 客が増加している。 O-5:京奈和道やリニア、東京五輪等による 観光客数の増加が期待できる。 O-6:奈良町南観光案内所の整備に伴う京終 駅等の南方向からの観光客の流入が期 待できる(ならまちゾーン)。 T-4:観光の地域間競争が激化している。 T-5:古都ブランドやかつての大仏商法に陰 りがみられる。 T-6:観光ニーズが多様化している。 T-7:奈良公園における集客施設等の整備に より、東向きの観光動線が強まる。 経済 O-7:新規参入者・参入希望者が増加してい る。 O-8:「きらっ都・奈良」や「夢 CUBE」等の 起業家支援施設がある。 T-8:大都市や郊外大規模店舗に買い物客が 流出している。 T-9:商圏人口が減少している。 T-10:ネット通販等の新たな消費・流通形 態が普及している。 T-11:全国的に不況が長引いている(行政 財源の不足)。 歴史 文化 O-9:全国的に、歴史文化を活かしたまちづ くりの機運が高まっている。 O-10:歴史文化に係る制度や補助等が充実 してきている。 T-12:人口減少・少子高齢化により、より 一層の担い手が懸念される。 T-13:伝統技術者が減少している。 T-14:マンション等の建設ブームがみられ る。

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これらの SWOT(「強み(Strength)」「弱み(Weakness)」「機会(Opportunity)」「脅威(Threat)」) を踏まえ、奈良町の“にぎわい”づくりに向けた方向性は、「積極的戦略」、「差別化戦略」、「段階 的戦略」の3つに分けて次のように整理できます。

〇 積極的戦略(強みを有しており、かつ、それを活かす機会があるもの)【S-O】

分野 戦略項目 強み【S】 機会【O】 ならまちゾーン 【Sn】 きたまちゾーン 【Sk】 居住 1:良好な居住環境を活かした町家 居住の促進 Sn-1,4,5,12 Sk-1,2,3,5,6,13 O-1 2:学生居住の促進 Sn-3 Sk-3,4,12 O-2 3:拠点施設等を核とした主体間連 携の促進 Sn-2,5,6 Sk-7,8 O-3,6 4:大学との積極的な連携 Sn-3 Sk-4 O-2 観光 5:コアなファンの育成 Sn-7,8,14,15,16,17 Sk-7,8,9,11,14,16,17 O-3,4,9 経済 6:町家を活用した奈良町らしい店 舗づくり Sn-12 Sk-13 O-7,8 7:個人店舗がつくる魅力の活用 Sn-11 Sk-10,11 O-4,7 歴史 文化 8:町家及び歴史的な町並みの活用 Sn-12,13,17 Sk-13,14 O-9,10

〇 差別化戦略(強みを有しているが、外部環境として脅威があるもの)【S-T】

分野 戦略項目 強み【S】 脅威【T】 ならまちゾーン 【Sn】 きたまちゾーン 【Sk】 居住 1:地域コミュニティの継承 Sn-1 Sk-1 T-1 2:子育て世代等の若年層を中心と した定住人口の増加 Sn-1,3,4,5,12,13 Sk-1,2,5,6,13 T-1,2,3,12, 14 観光 3:自ら発見する楽しみのある生活 観光の振興 Sn-7,8,15,16,18 Sk-9,14,16,17 T-4,5,6 4:社寺と一体となった町の魅力の 発信 Sn-14,15,19 Sk-15,18 T-4,5,6,7 経済 5:おもてなしの心の醸成による人 と人が触れ合う楽しみの創出 Sn-7,8 Sk-12 T-8,9,10 歴史 文化 6:現行の規制制度の継続による歴 史的な佇まいの継承 Sn-11,12,17 Sk-13,14 T-14 7:伝統技術者の育成等、歴史文化 の担い手づくり Sn-2,12,15,16 Sk-13,17 T-12,13 8:奈良町の町家の魅力の発信 Sn-6,12 Sk-13 T-6,13 9:町家保存のためのファンドの創 設 Sn-2,12 Sk-13 T-11

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〇 段階的戦略(機会は存在するものの、弱みであり、克服すべきもの)【W-O】

分野 戦略項目 弱み【W】 機会【O】 ならまちゾーン 【Wn】 きたまちゾーン 【Wk】 居住 1:空き家バンク制度の活用促進 Wn-1,2,10,14 Wk-1,2,3,8,10 O-1,2 観光 2:コミュニティサイクルシステム 等の移動手段の整備 Wn-7 Wk-6 O-4 3:公共施設間の連携による公共施 設の魅力向上 Wn-5,6 O-3,4,6 4:奈良町観光のあり方の提示 Wn-3,4 Wk-4,12,14 O-4,5,6 5:外国人対応の推進 Wn-8 Wk-7 O-4,5 6:観光情報の発信・案内施設整備 Wn-8,9 Wk-4,5,7 O-4,5,6 経済 7:新規参入者に対する支援の充実 Wn-10 Wk-8 O-7,8 歴史 文化 8:町家・町並みの保存・歴史文化 遺産の発掘 Wn-12,13,14,16 Wk-9,10,11,13,14 O-9,10

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3.奈良町の“にぎわい”づくりの将来ビジョン

3-1.“にぎわい”づくりの目標像

奈良町には、古くからの歴史の積み重ねのなかで育み、守り、受け継がれてきた数多くの歴史文 化資源がみられるとともに、それらがつくる歴史文化環境のもとに地域コミュニティの豊かな暮ら しや伝統を活かした活発な商業活動が繰り広げられ、それらが織りなす多様な魅力は数多くの観光 客を奈良町の地に誘うものとなっています。このような「歴史文化」をはじめとした「居住」「観 光」「経済」に係る「もの」「ひと」「こと」は、いずれも奈良町の“にぎわい”づくりを支える「地 域資源」であるといえます。 これらの「地域資源」を紡ぐことにより、居住者や商店主、来訪者などの様々な主体が共存しな がら活き活きと活動できる新たな“にぎわい”を織りなしていくことを目標とします。

“にぎわい”づくりの目標像

居 住

人と人とがあたたか く暮らせるまち 通勤・通学等に便利で あるという特長と昔なが らの近所づきあいなどの 個性を大切にし、新旧住 民がともに住み易いまち を目指します。 また、子どもの良好な 成育環境を整えるなど、 若者世代をはじめとした 多くの人々が、住みたい、 住み続けたいと思えるま ちを目指します。

経 済

昔 と 今 が調和 し、 未来 への新し いビジネスチャンス が生まれるまち 昔ながらの商店や小売 業を大切にしながら、奈 良らしい伝統的なものを 生かした新たなビジネス を生み出すプレイヤーや コーディネーターが集う 伝統と活力を感じられる まちを目指します。 また、観光客や周辺住 民等の様々な人のニーズ に対応した多様な店舗が 集まるにぎわいのあるま ちを目指します。

観 光

多様な歴史文化の魅 力を五感で味わえる まち 世界遺産「古都奈良の 文化財」とともに奈良が 世界に誇る歴史的な町並 みを保全・形成し、そこ に息づく雰囲気や生活感 までを根こそぎ味わい、 楽しめるまちを目指しま す。 また、住民の生活を大 切にしながらも、国内外 の観光客が、ゆっくりと した時を過ごし、滞在し たいと思えるまちを目指 します。

歴史文化

先人が育んできた歴 史 文 化 と と も に 生 き、発展するまち 先 人 の 英 知 に よ り 育 み 、 伝 え ら れ て き た 歴 史・文化が、暮らしに息 づき、滲み出し、歴史・ 文化を大切に思う気風が 感じられるまちを目指し ます。 また、奈良市の中心市 街地として集積する都市 機能と世界に誇る歴史文 化資源やそれらとともに 生きる地域に根差した歴 史・文化が共存するまち を目指します。

多様な地域資源を紡ぎ、新たな“にぎわい”を織りなすまち

(28)

3-2.“にぎわい”づくりの方針

(1)奈良町における“にぎわい”づくりの全体イメージ

奈良町は、町割りや町並み、社寺などにわが国ならびに奈良(大和)の歴史を物語る上で欠くこ とのできない歴史の痕跡をとどめ、各時代を通じて豊かな地域色を反映した多様な文化が育まれ、 受け継がれています。このような奈良町の「歴史文化」が創り出す歴史的風致や歴史的風土は「居 住」「観光」「経済」のそれぞれを支える一方で、「居住」「観光」「経済」が、五感で味わえる奈良 町の「歴史文化」の魅力を高めるという相互関係がつくり出されています。 従って、「居住」と「観光」、「歴史文化」と「経済」といった相反する側面を併せ持つそれぞれ の柱の連携・調整を図りながら、基盤となる「歴史文化」を原動力として、「居住」「観光」「経済」 を相互に循環させることにより、奈良町の“にぎわい”を創出し、持続的に向上させていきます。

奈良町における“にぎわい”づくりの全体イメージ

歴史・文化

居 住

観 光

経 済

↓魅力の向上

基盤として支える↑

奈良町の

“にぎわい”

の向上

(29)

(2)

“にぎわい”づくりの方針

奈良町の“にぎわい”を構成する4つの柱(「居住」、「観光」、「経済」、「歴史文化」)のそれぞれ について、“にぎわい”づくりの方針を次のとおり設定します。

居 住

方針1:町家に暮らす

町家の価値や町家に暮らす魅力を積極的に発信するとともに、空き家バンク制 度の活用などを通じて、伝統町家への居住を推進します。また、建て替え等にあ たっても、奈良町の町家の特徴を反映した新たな町家の建設を推奨し、町家暮ら しを中心とした町にしてきます。 (積極的戦略 1/差別化戦略-/段階的戦略 1)

方針1 町家に暮らす

方針2:

「故郷奈良町」をつくる

学生や子育て世代等の若年層を中心とした居住を推進し、学生にとっての第二 の故郷、子ども達にとっての誇りをもてる故郷として、将来にわたって持続的に 関わりをもち続けてもらえる「故郷 奈良町」づくりを進めます。 (積極的戦略 2/差別化戦略 2/段階的戦略-)

方針2 「故郷 奈良町」をつくる

方針2:

「故郷奈良町」をつくる

町会所の機能を継承・再生しながら、古くからの地域コミュニティを大切に受 け継ぐとともに、居住者や商店主、学生、観光客などの地域外の人々など、奈良 町に関わる様々な人々が、それぞれの立場を超えて話し合い、助け合い、ともに 取り組めるまちづくりを進めます。 (積極的戦略 3,4/差別化戦略 1/段階的戦略-)

方針3 人と人をつなぐ

(30)

観 光

方針2:

「故郷奈良町」をつくる

住民の暮らしと観光を両立させながら、住民の暮らしのなかに織り込まれた伝 統や文化を積極的に観光に活かし、様々な観光メニューや体験ツアーなどを通じ て、奈良町のもつ多様な魅力を、五感を通じて味わえるまちづくりを進めます。 (積極的戦略-/差別化戦略 3/段階的戦略 4)

方針4 「生活観光」を推進する

方針2:

「故郷奈良町」をつくる

社寺と一体となった町の魅力や現在に伝わる説話・伝承、伝統工芸などを活か し、奈良町の歴史文化を体感できる機会の拡充や公共施設の魅力向上などにより、 何度も訪れたいと思える多様かつ奥深い魅力を備えた町として、「奈良町ファン」 を増やしていきます。 (積極的戦略 5/差別化戦略 4/段階的戦略 3)

方針5 「奈良町ファン」をつくる

方針2:

「故郷奈良町」をつくる

奈良町を初めて訪れる人や再訪する人、寺社・仏像巡りをする人や町の雰囲気 を味わいに来た人、外国からの観光客や修学旅行生など、国籍や年齢、訪れる目 的など様々な人々のニーズに対応できる空間づくり、ひとづくり、仕組みづくり を進めます。 (積極的戦略-/差別化戦略-/段階的戦略 2,5,6)

方針6 多様な観光ニーズに応える

(31)

経 済

方針2:

「故郷奈良町」をつくる

伝統町家を活用した店舗や奈良町の町家の特徴を取り入れた町家風の新しい店 舗、また、奈良町に伝わる伝統工芸・伝統産業に係る店舗など、奈良町らしさを 感じられる店舗を増やしていきます。 (積極的戦略 6,7/差別化戦略-/段階的戦略-)

方針7 奈良町らしい店を増やす

方針2:

「故郷奈良町」をつくる

新しいビジネスチャンスを活かすプレイヤーの育成や I/U ターンを促すととも に、地域住民との関わりづくりやスタートアップ支援などを通じて、これらのプ レイヤーが起業し、商売を継続しやすい環境づくりを進めます。 (積極的戦略-/差別化戦略-/段階的戦略 7)

方針8 起業しやすい環境をつくる

方針2:

「故郷奈良町」をつくる

商店主と地域住民や観光客等とがふれあい、楽しみながら買い物ができるよう、 おもてなしの心を醸成していくとともに、店舗間の連携・協業などによって、よ り一層魅力あるおもてなしの空間づくりを進め、商店街を含めた奈良町内の店舗 の活性化を図っていきます。 (積極的戦略-/差別化戦略 5/段階的戦略-)

方針9 おもてなしの商業環境をつくる

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歴史文化

方針2:

「故郷奈良町」をつくる

まちあるきイベントや伝統町家の再評価などを通じて、未だ明らかにされてい ない歴史文化資源の掘り起しを進め、奈良町に受け継がれる様々な歴史文化資源 と関連付けたストーリーづくりを通じて、それらの価値を掘り起し、積極的に発 信していきます。 (積極的戦略-/差別化戦略-/段階的戦略 8)

方針 10 歴史文化の多様な魅力を育む

方針2:

「故郷奈良町」をつくる

様々な法制度を活用し、現在受け継がれる伝統町家を守っていきます。また、伝統 的な建築技術を身に着けた技術者の育成を通じ、伝統町家の修理・修複を進めるとと もに、その質を担保し、さらには、新たに建てられる町家への技術の反映などへとつ なげ、奈良町の伝統町家のDNAを次の世代に受け継いでいきます。 (積極的戦略 8/差別化戦略 6,7,8,9/段階的戦略 8)

方針 11 伝統町家を守る

方針2:

「故郷奈良町」をつくる

奈良町に伝わる伝統的な祭りや行事、伝統工芸・伝統産業などの伝統的な活動 について、その後継者となる人材の育成を進め、伝統町家や歴史的な市街地と一 体となった歴史的風致の感じられる町を受け継いでいきます。 (積極的戦略-/差別化戦略 7/段階的戦略-)

方針 12 歴史文化の担い手を育てる

(33)

(3)

“にぎわい”づくりの空間構想

ここでは、(1)の目標像、(2)の方針を踏まえて、奈良町における“にぎわい”づくりを空間 的にどのように進めていくか(“にぎわい”づくりの空間構想)を示します。 “にぎわい”づくりの空間構想では、次の区域、拠点、軸を設定します。 区域・拠点・軸の設定と取り組み方針 区分 設定の考え方 取り組み方針 区 域 ゾーン 奈良町内の各地域の特徴を 踏まえた“にぎわい”づくり の大きなまとまりとなる区 域 本構想の主要な対象となる「ならまちゾーン」 「きたまちゾーン」の各ゾーンの特徴を反映 した一体的な“にぎわい”を創り出します。 また、「周辺ゾーン」や「連携ゾーン」と連携・ 調整を図りながら、その効果を波及させます。 エリア “にぎわい”づくりの核とな る区域 重点的な施策展開を図り、周辺地域へとその 効果を波及させます。(第4章参照) 拠 点 まちづくり の拠点 地域のまちづくりの中心と なる公共施設など 地域住民や商店主、活動団体などの多様な主 体が情報を交換し、連携して取り組みを進め るための場としての役割を強化します。 回遊の拠点 観光案内施設や鉄道駅等の 交通拠点など 地域との連携を強めながら、観光案内に係る 機能の形成・拡充を図ります。 生業の拠点 伝統工芸・伝統産業に係る公 共施設や人材育成の拠点施 設など 伝統工芸・伝統産業の魅力を発信し、従事者 の育成を図るとともに、地域とのつながりを 強めることにより、奈良町での居住や出店を 支援します。 歴史文化 の拠点 代表的な歴史文化資源や界 隈、奈良町の歴史文化を紹介 する公共施設など 歴史文化資源等については、所有者や管理者 等と連携して適切な保存と積極的な活用を推 進します。また、公共施設については、奈良 町の歴史文化の魅力を発信するための再整備 や連携した取り組みを推進します。 軸 連携軸 ゾーン間を結ぶ大きな視点 からみた連携の方向性を示 す軸 旧構想によりつくり出されてきた東西軸を踏 まえて、奈良公園から「ならまちゾーン」「き たまちゾーン」へと導かれる軸、さらに京終 駅から京街道へと至る南北軸を創り出しま す。 回遊軸 エリア間・拠点間を結ぶ観光 を中心とした動線を示す軸 ※「エリア」内では、縦横に 回遊することを想定し、軸 は設定しません。 案内看板等の施設整備や電線類の地中化など の空間整備、自転車交通などの交通体系の整 備などを進め、エリア間・拠点間の回遊性の 向上を図ります。

(34)

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