Posted at the Institutional Resources for Unique Collection and Academic Archives at Tokyo Dental College,
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Title
歯の問題を伴う不正咬合の矯正治療3.多数歯先天欠如
を伴う不正咬合について
Author(s)
茂木, 悦子; 末石, 研二
Journal
歯科学報, 113(3): 243-245
URL
http://hdl.handle.net/10130/3100
Right
カ ラ ー ア ト ラ ス の 解 説
はじめに
矯正治療は一般的には健康保険は適用されない
が,口蓋裂などの厚生労働省が定める先天異常をと
もなう咬合不全の場合と,外科的な治療が必要な顎
変形症の場合は健康保険の適用が可能である。2012
年4月に「6歯以上の非症候性部分性無歯症」とし
て特定疾患に追加され,6歯以上の多数歯先天欠如
を呈する患者の矯正治療が健康保険の対象となっ
た。
多数歯先天欠如をともなう不正咬合者は被蓋の改
善,空隙閉鎖などの矯正治療により義歯を想定した
スペース確保を必要とするが,固定歯の設定が困難
であること等治療の制限がある。今回,2症例を経
験したので報告する。
症例1
初診時年齢13歳の女子。上の前歯が少ない(図1
−a)ことを主訴に来院した。家族歴はないもよう
である。軽度の上顎劣成長傾向と短い下顔面高を呈
す(図1−b)。口腔内所見(図1−a)は特に正中部
が大きく離開している空隙歯列弓である。パノラマ
X線(図1−c)により欠如歯は,上顎両側側切歯,
犬歯,第二小臼歯,右側第二大臼歯,下顎両側中切
歯,第二小臼歯の計11本と確認した。上顎両側乳犬
歯,第二乳臼歯,下顎両側乳中切歯,右側乳犬歯,
左側第二乳臼歯が晩期残存している。治療方針とし
て乳歯はできるだけ使用し,マルチブラケット法(図
1−d)により上顎正中部の過大なスペースを閉鎖
し,義歯を想定したスペース確保と歯の排列を行う
とした。上顎は正中離開を改善して両側側切歯のス
ペースを確保(図1−e)し,低位の上下顎残存第二
乳臼歯は歯冠補綴した。現在上顎両側側切歯部に人
工歯を,下顎乳中切歯には人工歯キャップを付けた
保定装置を装着し,定期観察中である(図1−f)。
症例2
初診時年齢10歳の女児。歯が足りない(図2−a)
ことを主訴に来院した。家族歴はないもようである。
軽度の下顎前突傾向を呈す(図2−b)。口腔内所見
(図2−a)として,右側犬歯部に逆被蓋が認められ
た。パノラマX線(図2−c)により欠如歯は上顎両
側犬歯,第一,第二小臼歯,下顎両側中切歯,第一,
第二小臼歯の計12本と確認した。上顎乳犬歯,第二
乳臼歯,下顎右側乳中切歯,第一,第二乳臼歯が晩
期残存している。治療方針として動揺著しい乳歯を
除き乳歯はできるだけ使用し,マルチブラケット法
(図2−d)により義歯を想定したスペース確保と歯
の排列(図2−e)を行なうとした。現在上下顎欠如
歯部に人工歯を埋め込んだ保定装置を装着し定期観
察中(図2−f)である。
考察およびまとめ
2症例ともほぼ左右対称の欠如を示したことは矯
正治療としては救いであった。欠如歯,特に臼歯部
欠如が多い場合,オクルーザルストップの喪失は免
れない。2症例とも Lower Facial Height を減少せ
ずに治療が進められたが今後の経過観察が必要であ
る。
多数歯先天欠如歯を有する若年者は歯列,咬合を
整え,義歯の装着が不可欠であり,機能性,審美性
改善はもとより成長にともなった対応が必要であ
り,経過観察のなかでの義歯の再作製は必須である。
おわりに
多数歯先天欠如に対し6歯以上の非症候性部分性
無歯症の矯正治療に健康保険が適用されたが5歯以
下は適応ではない。また,補綴処置のうちインプラ
ントは保険外,歯の移動の固定を歯科矯正インプラ
ントアンカレッジを使用する場合でも保険外である
ため混合診療となり,併用は困難である。保健適用
の道がこれらの患者さんに対する歯科治療上の制約
とならないよう,さらに保険治療での便宜が望まれ
る。
文 献
1)茂木悦子,野村真弓,渡邊仁美,堀江由規子,坂本輝雄,
宮谷真理子,牧村美紀:多数歯先天欠如をともなう若年不
正咬合2症例の報告,66回日本矯正歯科学会大会プログラ
ム・抄録集 Page215,2007.
2)佐藤亨至,三谷英夫:歯の先天的欠如が顎顔面形態に与
える影響:第2報 多数歯の欠如の場合,東北大学歯学雑
誌,7⑵:115−121,1988.
歯の問題を伴う不正咬合の矯正治療
3.多数歯先天欠如を伴う不正咬合について
茂 木 悦 子,末 石 研 二
東京歯科大学歯科矯正学講座
図1−d 治療中:マルチブラケット装置を装着し著明な正中の空
隙を閉鎖している
図1−e 治療後:正中の空隙をほぼ閉鎖した。正中の歯肉の膨隆
が認められる
図1−f 保定中:上下顎義歯を兼ねた可撤式保定装置装着。中切
歯間の歯肉改善が認められる。現存する乳歯は可能な限り保存する
こととする
図2−c 治療前:先天欠如12歯を認める
図2−d 治療中:マルチブラケット装置を装着し,Utility arch
を用いて右側犬歯のクロスバイトを改善している
図2−e 治療後:動揺の著しい乳歯は抜歯を余儀なくされた
図2−f 保定中:義歯を兼ねる保定装置は長期の使用が予測される
図1−c 治療前:パノラマエックス線先天欠如11歯を認める
図1−b 治療前
側面セファログラム
とトレース
図2−b 治療前
側面セファログラム
とトレース
症例1
図1−a 治療前
過大な正中離開と過
蓋咬合を示す
症例2
図2−a 治療前
右側犬歯部クロスバ
イトと軽度の過蓋咬
合を示す