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学位論文内容の要旨

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Academic year: 2021

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博 士 ( 農 学 ) 新 妻 靖 章

       Physiological and morphological studies         on different fasting‑foraging patterns in three species of seabirds; Leach's Storm‑petrel,         Rhinoceros Auklet, and King Penguin.

(繁殖エネルギー要求・消費量の変化に対する3 種の海鳥,コシジロウミ ツ バメ ,ウト ウ, キン グベ ンギン の生 理的 ・形 態的調節機構の研究)

学位論文内容の要旨

    鳥類は繁殖に際して、造巣期、抱卵期及び育雛期という3つの時期を経過する。子の生育に対 する親鳥の行動は3つの時期で大きな違いがあるため、親鳥に要求されるエネルギ―の量や消費の 形態はそれぞれの時期で大きく異なる。海鳥のように、繁殖コロニ―(陸上)と採餌場所(海域)が隔 たっているものでは、陸上で繁殖・採餌する鳥に比べてエネルギ一供給が、それらの繁殖の成功にとっ て厳しい制約になっている。本研究では、3種の海鳥、コシジロウミッバメ(Oceanodroma leucor170a)、 ウトウ(Cerorhinca monocerata)そしてキングペンギン(Aptenodytes patagon嵒〃.s)について、親鳥が 自身へどのようにエネルギーを供給し、またどのように消費することで、抱卵中の絶食と育雛中の給餌 量と頻度の増加に伴う飛翔コストの増大という異なる行動的・エネルギ―的制約に、対応しているのか を生理学及び形態学的側面から追求した。

    3種海鳥は雌雄交代で抱卵を行うが、コシジロウミッバメでは―回抱卵日数が3.3日に、ウトウ では1.4日に達することが明らかになり、キングペンギンでは6一18日にも及ぶことが知られている。

3種海鳥はそれぞれ同じ体の大きさを持つ海烏以外の鳥類に比べ抱卵日数が長いため、長期の絶食 を経験する。抱卵期において3種の海鳥の繁殖個体は、抱卵中に餌や水の供給を受けることなく、抱 卵絶食直前に蓄えた限られた蓄積エネルギーで卵を温めなければならないことが認められた。一方、

育雛期のコシジ口ウミツバメとウトウの親鳥は―晩あるいは二晩に1回給餌のために巣に戻るのみな ので、抱卵期にみられた絶食を行う必要はなくなるが、給餌のため飛翔運動はより活発になり、工ネル ギ一消費量は増大する。そこで、抱卵中と育雛中の親鳥の体水分、粗蛋白質、粗脂質及び粗灰分の 体組成分からその栄養状態を評価すること、両時期の消化管重量の推移からエネルギ一摂取量の変 化を推定すること、また両時期の静止時代謝量及び体温からエネルギ一消費を調べることによって、

抱卵期 の絶食 から育雛 期にみられる飛翔運動の負担増というエネルギ一消費の量や形態の変化に 対してどのように生理的・形態的適応しているのか検討した。

    コシジロウミツバメとウトウでは、育雛期よりも抱卵期において、静止時代謝量が明らかに小さい が、体温については繁殖期間を通じて変化がないことが分かった。っまり、両種は少ないエネルギ―

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消費量で高い体温を維持することを可能とする生理的メカニズムを持つことが明らかとなった。また、

抱卵期の親鳥は絶食中のエネルギ―源となる蓄積脂肪を育雛期の親鳥よりも多く蓄えていることが判 明した。すなわち、これら2種は絶食を行いながら卵を適切な温度に維持するという抱卵のエネルギ 一的要求に対して、蓄積脂肪量の増加及び消費エネルギーの節約という2つの方法によって対処して いることが明らかになった。ウトウとキングペンギンでは、代謝量の低下だけでなく、エネルギ一消費 の節約をさらに促進する低体温状態に陥ることが分かった。しかし、抱卵鳥が低体温に陥る期間は短 く、また通常の体温よりもわずかに低下するだけなので、エネルギーを節約する効果を大きくすること は 可 能 で あ る が 、 そ れ は 胚 の 成 長 や 生 存 に 負 の 影 響 を 与 え る ほ ど で は な い 。     ー方、育雛期における親鳥は、給餌という活発な採餌活動を行うことから、消費される多量のエ ネルギーに対して効率的なエネルギ―供給メカニズムと飛翔性能をより高める形態的メカニズムを有 すると考えられる。従来、栄養吸収率の変動の指標として消化管重量の増減が用いられてきた。こ の指標に基づくと、エネルギ一消費量が大きいときは、親鳥はエネルギ―をより多くより効率的に摂取 するために消化管重量が重くなることが期待される。しかし、コシジロウミッバメ及びウトウで消化管 重量を測定したところ、エネルギ一消費量の少ない抱卵期の方が、育雛期よりも大きいという結果を得 た。この結果から、育雛期において両種の親鳥はエネルギ一摂取よりも消費量の方が上回り、その 結果、育雛期において親鳥の体重が減少すると判断された。しかし、この体重の減少は親鳥の栄養 状態の低下を招くほどのものではなく、親鳥は自身の生命活動を維持するには充分な栄養を得ること を可能とするように消化管重量を調節していた。従って、これら2種にみられた育雛期における体重 減少は、結果的に、体重を減らすことによって翼面荷重をより軽減し、飛行コストを削減するという効果 を親鳥にもたらしている。っまり、給餌に伴う飛行頻度の増加に対して、親鳥は生理的あるいは形態 的に対応することが可能であると判断された。

    さらに、繁殖期にみられる体重減少についてウトウの親鳥を各器官別に詳しく検討した。その 結果、育雛中のウトウ親鳥は飛翔運動とは関係のない部位、すなわち脚筋と皮下脂肪の重量を減少 させていたが、胸筋の重量を維持し、また胸筋内に多くの蛋白質や灰分を含蓄させていたことが判明 した。ウトウの親鳥は飛翔するときも潜水採餌する時もその翼を用いる。っまり、胸筋によって産み 出されるカがウトウの飛翔や潜水行動を支えることになる。これらのことから、育雛期においてウトウ は、それまでの抱卵絶食に必要であった器官の中で、育雛行動には不要な器官の蓄積を消費して飛 翔のために体の軽量化をはかるとともに、飛翔器官には十分なエネルギーと栄養を供給し飛翔器官の 運動能カを向上させ、大きな飛翔カを産むことを可能にするという、巧妙なメカニズムを持つことも明ら かとなった。

    これら3種の海鳥は、抱卵期における絶食から育雛に伴う飛翔行動の増加というエネルギ一要 求の短期間の変化に対して、生理的可塑性を示すことによって生理的にも形態的にも適応的に振舞う ことが明らかになった。抱卵絶食に対しては、少ないエネルギ―で体温を維持することを可能とするメ カニズムを、育雛期の飛翔行動の増加に対しては体重減少による翼面荷重の低下と胸筋の増強とい うメカニズムを持つことによって、抱卵期から育雛期にかけてみられるエネルギ一要求や消費の形態 の違いに対応することを可能としている。

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学 位 論 文 審 査の 要 旨

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      Physiological and morphological studies         on different fasting‑foraging patterns in three species of seabirds; Leach's Storm‑petrel,         Rhinoceros Auklet, and King Penguin.

(繁殖エネルギー要求・消費量の変化に対する3 種の海鳥,コシジロウミ ツバメ ,ウ トウ ,キ ングベ ンギ ンの 生理的 ・形 態的 調節機構の研究)

  本 研 究 は97ベ ー ジ の 英 文 論 文 で 、 表20、 図10、 引 用 文 献118を 含 臥8章 で 構 成 さ れ て い る 。 別 に参考論文8編が添えらている。

  鳥類 の繁殖は、造巣期、 抱卵期及び育雛期という質的 に異なった行動を伴う3つの 時期に分けられる。

滴三鳥のよ うに、繁殖場所(陸lと採餌 場所(海j或)が隔たっている場合には、隣接した場所で抱卵・育雛 を行う陸棲 のー島類に比ぺて、親鳥のエ ネルギ一獲得と配分のあり方が、繁殖を成功させる上での厳しい制 約条件にな るであろう。

  そこ で、 本研 究 にお いて 、3種の 海鳥 、コ シ ジ口 ウミ ツパヌ(〇ceanodr〇.maJeuc〇moa)、ウトウ

Qr〇 めめ 匸am〇n〇0噺め そし て キン グベ ンギ ン( 細 ぬ〕〇輒靨pa缶洲刪s)につ いて、長期間の絶食 が 必要 な抱卵期、および頻 繁な飛翔等による採餌が必要 とされる育雛期という2つの 相異なる期間に、親 が生理及び 形態的にどのような対処して いるのかを詳しく検討した 。・

  対象 とした3種海島はいず れも雌雄交代で抱卵を行い 、コシジロウミツバヌでは一 回抱卵日数が3.3日 に 、ウ トウでは1.4日に達 することが明らかになった。 また、キングベンギンの絶 食期間は6―18日にお よんだ。い ずれの種においても、親鳥は 抱卵期間中には自ら餌を採 ることも供給を受けることもできず、

抱 卵 開 始 前 に 蓄 え た ェ ネ ル ギ ー で 体 カ を 維 持 し つ つ 絶 食 に 耐 え て い る こ と が 確 認 さ れ た 。

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裕 明

司 豊

     

正 光

藤 訪

川 貫

齋 諏

前 綿

授 授

授 授

     

教 教

教 助

査 査

査 査

主 副

副 副

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  次に、コシジロウ ミツパヌとウトウについて 、抱卵期および育雛期の親鳥 の体水分、耜蛋白質、粗脂 質 及び湘灰分 の組成を測定し、また両時期 の親鳥の静止時代謝量及び4ご温をルモートセンシング法によって測 定 した。これらのデ 一夕から、抱卵絶食時およ び採餌飛翔時期における親鳥 の生理的・形態的変化を分 析 した結果、2種とも育雛期よりも抱卵期 において、静止時代謗渥カミ明らかに小さいが、体温Lについては変 化 がなかった。っま り、両種は少ないエネルギ 一消費量で高い体温を維持す ることを可能にする特別な 生 理的ヌカニ ズムを持つことカ蛎ミ唆され た。また、抱卵期には絶食中のェネルギ一源となる脂肪を体内に多 量 に蓄瞶しているこ とも明らかになった。さら に、リモートセンシングによ る抱卵時体温分布調査から 、 キ ング ベン ギン と ウト ウで は、 工 ネル ギ一 消費 節約 を 可能 とす る「 低体 温 状態(hypothermia)に入る 能 カ をもつこと、また キングベンギンには、身体 の中心部分の熱を抱卵斑に効 率よく送る独特のシステム が 存 庄し 、そ れに よ って 絶食 時の エ ネル ギ一 節約 と抱 卵温度の緇寺とを両立 させていることがわかった 。   一方、育雛期にお ける親鳥は、採餌・給餌と いう活発な飛翔活動を行うこ とから、消費される多量の エ ネ ルギ′の効率的供 給メカニズムと飛翔性能を 向上させる形態的ヌカニズム を有すると予想される。従 来 栄 養吸収率の変動は 、消化管重量の増減に密接 に関係しており、それが増加 するときは、エネルギ一摂 取 量 が多 く、 減少 す ると きは それが少ないとされ ている。そこで、消化管重 量を測定したところ、2種と も に ェネルギ一消費量 の少ない抱卵期の方が、育 雛期よりもその重量カ吠きい という、これまでの多くの 報 告 と逆の結果を得た 。っまり、これらの海鳥で は、育雛期において必ずしも ェネルギ―摂取量が増加し て い なか った 。さ ら に、 この 時期 に 親鳥 の体 重カ 瀦に 減少していたことから 、負のエネルギ―収支にな っ て いると判断された 。一般のJ鷽頃で起きている 消化管重量の増加が、ここ で扱った2種においては見ら れ な いと いう こと は 、そ れが 非適応の結果とみる よりも、これら2種が消化管 を含めて体重を減らすこと に よ り翼面荷重をより 軽減し、その結果として飛 行コストを削減するという、 給餌に伴う飛行頻度の増加 に 対する形態 臨圖芯をもつと考えるのカ適 当であろう。

  飛翔頻度増加に伴 う形態上の変化をさらに詳 しくとらえるために、ウトウ の親鳥の繁殖期にみられる 体 重 変化について各器 官別に検討した。その結果 、育雛中は繃鶸聾釣とは関係 のない部位、すなわち脚筋 と 皮 下脂肪の重量が減 少していたが、飛翔運動器 官である胸筋の重量は維持さ れ、また胸筋内に多くの蛋 白 質や灰分が 蓄積されていることカ嘩l亅 明した。っまり、育雛期のウトウは、重要性の低い器官の蓄瞶を消費 し て 体 の 軽 量 化 を は か り 、 飛 翔 器 宮 に は 十 分 な ェ ネ ル ギ ー を 供 給 し て 飛 翔 カ を 向 上 さ せ て い た 。   以上のように、本 研究では長期間絶食と長距 離の飛翔という相反する行動 を短期間で交替する海鳥の 繁 殖 個体が、どのよう に生理・形態的に対応して いるかを詳細に明らかにした 。亜南極までをフイールド に

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加えて得られた成果は学術的に貴重なものであり、高く評価される。よって審査委員一同は、新妻靖章が 博士(農学)の学位を受けるに十分な資格を有するものと認めた。

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参照

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