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学位論文内容の要旨

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Academic year: 2021

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博 士 ( 情 報 科 学 ) 秋 保 政 一

学 位 論 文 題 名

適応アルゴリズムを用いた自動車室内の音響および 騒音の制御に関する研究

学位論文内容の要旨

  近年のディジタル信号 処理技術の発展とディジタル演算処理デパイスの高速度、高集積度の急速 な進展により様々な分野 においてディジタル信号処理技術の応用に関する研究開発が盛んに行われ ている。自動車分野にお いてもエンジン燃焼制御やトランスミッション制御に代表される自動車走 行に関わる制御に加え、 走行に伴い発生する自動車室内騒音の低減を目的としたディジタル信号処 理技術による騒音の実時 間オンライン制御や自動車室内での音楽再生特性の改善を目的としたオフ ライン制御による音響再 生系の等価回路の設計などが実現され、普及に向け更なる実用化に向けた 検討が進められている。

  このような自動車室内 特有の様々な問題を解決するアプローチのひとっとして適応信号処理アル ゴリズム(適応アルゴリ ズム)が広く用いられている。適応アルゴリズムにより騒音と振幅が等し く逆位相の制御音を生成 し騒音を低減する能動騒音制御システムでは、生成された制御音が伝播す る音響系を事前に同定し その伝播モデルを正しくアルゴリズム内に組み込むことが騒音低減性能を 得る上で重要であるが、 実時間オンライン制御を行う上でアルゴリズムの演算量を大幅に増やすこ と な く よ り 精 度 の 高 い 伝 播 モ デ ル を 実 現 す る こ と は 重 要 な 課 題 で あ る 。   適応アルゴリズムを用 いた能動騒音制御システムの騒音低減性能を決定付けるもうひとつのパラ メータとして参照信号の 決定がある。低減対象である騒音と十分にコヒーレントな参照信号を決定 することが極めて重要で ある。ランダム性騒音として知られるロードノイズは走行に伴うサスペン ション機構の振動がその 支持部に伝達されることにより自動車室内に伝播される。ロードノイズの 能動騒音制御システムで は、サスペンション支持部やサスペンション機構に設置された加速度セン サにより振動を検出し参 照信号として用いられるが、その品質はマルチコヒーレンス関数で評価さ れ決定される。そのため 参照信号としての品質を獲得するために多くの加速センサを用い振動を検 出 す る た め 参 照 信 号 数 が 多 く な ル シ ス テム 規 模が 大き くた って し まう とい う課 題が あ る。

本 研 究 は 、 適 応 ア ル ゴ リ ズ ム を 用 い た 自 動 車 室 内 の 音 響 お よ び 騒 音 の 制 御 に 関 し 1.FIRフ イル タに より 実 現さ れた 非最 小位 相 推移 フイ ルタをより演 算量の少なぃARMAダイレク トフオームフイルタに変 換するための設計方法につい ての検討

2. 参 照 信 号 数 を 少 な く す る た め の 参 照 信 号 の 集 約 手 法 の 実 現 に つ い て の 検 討 を中心に行い、自動車室 内の音響および騒音の制御への適応アルゴリズムの応用拡大ヘ寄与すると ともに、新たな応用分野 を見出すことにある。本論文 は5章から構成されており、各章を要約する と以下のようになる。

  第1章は、 序論であり、自動車室内の音 響特徴および騒音課題と、 適応アルゴリズムを応用し たそれらの能動制御の研 究動向にっいて述べる。また、本研究の目的、位置づけ、構成について述 べる。  ―825ー

(2)

  第2章で は、適応アルゴリズムを用 い設計された自動車室内音響伝播特性の擬似逆フイルタであ る 非最 小位 相 推移FIRフィ ルタ と同 じ特 性 を実 現す る演 算量の少ないARMAダイレクトフオーム フイルタ を設計するための手法として 遺伝的アルゴリズム(GA)と シミュレーテッドアニーリング (SA)を 適用し、非 最小位相特性を実現するため に位相特性を評価する位相 特性の2乗誤差を導入 し たフ イッ ト ネス 関数 を提 案し 、その効果に よりARMAダイレクトフオーム フィルタの位相特性 を操作す ることが出来ることを明らか にしている。

  第3章で は、適応アルゴリズムを用 いたロードノイズの能動騒音制御において、複数の加速度セ ンサによ り検出された参照信号群からより少ない新たな参照信号群を生成するためのフアルタ群の 設計法を 提案している。これらのフイルタ群は参照信号群のマルチパワースペクトラムマトリクス の 特異 値分解(SVD)を用い求められる。数値計 算の結果として、提案された フアルタ群による新 た な 参 照 信 号 群 に て も 従 来 同 等 の 能 動 騒音 制御 性能 が 得ら れる こと を明 ら かに して いる 。   第4章では、適応 アルゴリズムを用いたFM放 送の移動体受信時に発生する マルチパスノイズ妨 害等価時 のシステム安定性を向上させるための手法として誤差信号への振幅制限の導入を提案し、

そ の 効 果 に よ ル シ ス テ ム 動 作 の 安 定 性 が 向 上 す る こ と を 明 ら か に し て い る 。   第 5章 は 、 以 上 の 章 の 結 諭 と し て 、 本 研 究 で 得 ら れ た 結 果 の 要 点 を 述 べ る 。 本研究は 、自動車室内の音響および騒音を制御する上で必要不可欠な非最小位相推移フイルタの設 計技術お よび能動騒音制御装置の設計技術に寄与するとともに、更なる適応アルゴリズムの応用技 術の実現 に貢献することが期待される 。

‑ 826

(3)

学位論文審査の要旨

学 位 論 文 題 名

適応アルゴリズムを用いた自動車室内の音響および      騒音の制御に関する研究

  近 年のデジタル信号処理技術の 発展と,デジタル演算処理 デバイスの高速度化,高集積化の急 速な 進展により,デジタル信号処 理技術の応用に関する研究 開発がさまざまな分野において盛ん に行 われている.自動車分野にお ける応用では,エンジン燃 焼制御やトランスミッション制御に 代表 される自動車走行に関わる制 御に加え,適応信号処理ア ルゴリズムを用いた自動車室内の音 響環 境や騒音環境の制御に関する 研究が贐んに行われている ,しかし,その多くは適応信号処理 アル ゴリズムの動作と性能に関す る基礎的な研究を目的とし ており,適応信号処理アルゴリズム の 実 用 化 に 向 け た 応 用 研 究 は , 十 分 に は 行 わ れ て い な ぃ の が 現 状 で あ る .   本 論文は,このような現況にあ る適応信号処理アルゴリズ ムの実用化に向けた応用研究につい て, 特に,自動車室内の音響と騒 音を改善する手法として実 製品に組み込む上で障害となってい る解 決すべき課題について応用事 例と共に整理し,実用的か つ有益な対処法を確立することを目 的と して研究し,適応信号処理ア ルゴリズムの応用拡大へ寄 与するとともに,新たな応用分野を 見出 すことを狙いとしている.

  そ の研究の成果としては,ひと っには,適応信号処理アル ゴリズムを用いて設計された自動車 室 内の 音 響伝 播特 性を 等 化す る非 最小 位相 特性を持 つFIRフイルタをより演算量 の少ない任意 の構 造を持つフイルタに変換する ために,振幅周波数特陸と 位相周波数特性を合わせて評価でき る フ イ ッ ト ネ ス 関 数 を 導 入 した 遺伝 的ア ル ゴリ ズム(GA)と焼 き なま し法(SA)によ る フイ ル タ係 数探索が有効であることを明 らかにした.これにより, 自動車室内の音響および騒音を制御 する 上で必要不可欠な,非最小位相特性フイルタを少ない演算量で実現できる設計技術を提供し,

音 響 等 化 装 置 と 能 動 騒 音 制 御 装 置 の 設 計 技 術 に 直 接 寄 与 す る こ と が 期 待 さ れ る ,   さ らに,能動騒音制御システム に用いる参照信号に関し, その数の増加により能動騒音制御装 置の システム規模を増大させる参 照信号を集約するためのフ イルタ同定手法として,参照信号の 相互 パワースペクトラム行列の特 異値分解を元とした合成法 を導入し,新たに合成された仮想参 照信 号を用いて能動騒音制御装置 の性能が確保できることを 明らかにした.これにより,能動騒 音制 御に用いる参照信号の数を減 らすことが可能となり,能 動騒音制御装置のシステムコストの     ―827ー

紀 治

美 健

山 木

長 荒

授 授

教 教

査 査

主 副

(4)

低減と設 計技術に直接寄与し応用拡大 への貢献が期待される.

  さらに ,著者は,放送局より送信き れた電波が伝播する過程で 発生した多重伝送路歪が,原信 号 にノ イズ と して 重畳 され た現 象 とし て捉 えら れ るFMラジ オ放 送の マ ルチパス妨害により , 自 動車 室内 で 発生 する ノイ ズを 除 去す る等 化シ ステムとして用 いられるCMA(定包絡線基準 ア ルゴリズ ム)適応フイルタの挙動に関 し,パルス性ノイズの入カ によルシステム発散に至ること を 検証 した . そし て, この パル ス 性ノ イズ によ るシステム発散 を防止する手法として,CMA適 応 フア ルタ の 係数 更新 計算に用いる 瞬時誤差信号に振幅制限を付 加することが有効であるこ と を 明ら かに し た. これ によ り,CMA適応 フ イル タの性能を低下さ せること無く,システム実 装 時 の安 定性 を 向上 させ る手 法を 提 供す るこ とが 可 能と なりICMA適応 フ イルタを用いた制御 装 置 の設 計技 術 に直 接寄 与す るこ と がで きる と共 に,CMA適応フイ ルタの応用拡大に寄与する こ とが期待 される.

  これを 要するに,著者は,適応アルゴリズムを用いた自動車室内の音響と騒音の制御について,

その実装 と応用に関する新知見を得た ものであり,適応信号処理 技術に対して実装性能改善と応 用拡大に 貢献するところ大なるものが ある.よって著者は,北海 道大学博士(情報科学)の学位 を授与さ れる資格あるものと認める.

828

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