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3次元有限要素法を用いた支台築造の応力解析

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Academic year: 2021

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博 士 ( 歯 学 ) 谷 野 之 紀

学 位 論 文 題 名

3 次元有限要素法を用いた支台築造の応力解析

―各種ポストの物性の違いによる影響―

学位論文内容の要旨

【目 的】 歯根 破折 は, 無 髄歯 の補 綴治 療に おけ る致 命的 なト ラブ ルで あり ,一 般的にその 予後 は不 良で ある .歯 根 破折 を防 止す るた めに は, 歯根 部で の応 力集 中を 避け ,均等な応 力分 布を 得る こと が必 須 であ る.

  近 年, 金属 より も象 牙 質に より 近似 した 弾性 係数 を有 する ポス ト材 料と して として,フ ァイ バー 強化 型プ ラス チ ック(FRP)が 開発 され た.FRP製 のポ スト ,す なわ ちフ ァイノくー ポス トは これ まで ポス ト に用 いら れて きた 金属 より も弾 性が 高く ,咬 合カ が加 わった場合 に象 牙質 と協 調し て変 形 する こと によ って ,歯 根破 折に 至る よう な応 力集 中を 起こしにく いと 考え られ てい る. し かし ,フ ァイ バー ポス トは 最近 開発 され たも ので ある ために,フ ァイ バー ポス トを 扱っ た 研究 はま だ非 常に 少な い. また ,こ れま での 応力 解析 研究で用い られ てき た歯 根モ デル は ,2次元 モデ ルも しく は,3次元 モデ ルで も軸 対称 形に 単純化され た も の が ほ と ん ど で あ り , 実 際 の 歯 根 形 態 を 正 確 に 再 現 し て い る と は 言 い 難 い .   そ こ で , 本 研 究 で は ヒ ト 抜 去 歯 を マ イ ク ロCT撮 影 し 解 剖 学 的3次 元 モ デル を作 成し , ポス ト部 分の 弓単J陸係 数が歯根象牙質 の内部応カに与える影響にっいて3次元有限要素法を 用い て解 析す るこ とを 目 的と した ,

【方 法】 ヒト 抜去 上顎 中 切歯 をマ イク ロCTによ る断 層撮 影を 行い ,各 断面 画像 の外輪部を 抽 出 し た .3次 元CADプ ロ グ ラ ム (Pro/ENGINEER,ParametricTechnology) に て サ ー フ ェ イ ス を 作 製 す るこ とに より3次元 の解 剖学 的な 上顎 中切 歯モ デル を 作製 した .次 に, 上 顎中 切歯 モデ ルに ポス ト とコ ンポ ジッ トレ ジン を用 いて 支台 築造 を行 う支 台歯 形態とし,

歯冠 修復 物と して ポー セ レン ジャ ケッ トク ラウ ンを 設計 した .

  上 記 の 方 法 に よ り 作 製 さ れ た モ デ ル を 有 限要 素プ ログ ラム(ANSYS5.5ANSYS)に 移行 し た 後 ,3次 元 有 限 要素 モデ ルを 構築 した .ポ ーセ レン ,レ ジン セメ ン ト, コン ポジ ット レ ジン ,既 製ポ スト ,象 牙 質,ガッタパーチャ,歯根膜,皮質骨,海 面骨,を構成要素とし,

    ‑ 779−

(2)

それぞれに応じた物性値を与えた.ファイバーポスト(条件F),チタンポスト(条件T),

ステンレスポス卜(条件S)を想定し,ポスト部分に与える弾陸係数をそれぞれ45 GPa,110 GPa,200 GPa,として解析を行った,ポストの直径は1.6mm,根管内に挿入している長さ は8mmとし,ポストの形状はパラレルな形態とした.

  有限要素モデルは,6接点,5面体と8接点,6面体要素より構成され,節点数は25746, 要素数は14528とした.歯槽骨底部を完全拘束し,荷重は舌側から歯軸長軸方向45度の方 向から歯冠口蓋側中央部に100N荷重負荷し,静解析を行った.

【結果】本研究の結果から,ポスト先端周囲歯質,歯槽骨頂周囲歯質,歯頚部周囲歯質 に他の部位より高い応カが発生する傾向が示された.歯根表面では,荷重側では歯頸部マ ージンから根尖近くまで引張応カが,非荷重側では歯頚部マージンと歯槽骨頂に近接した 部位に圧縮応カのピークが観察された.また,ポスト先端周囲においては荷重側では圧縮 応カが,非荷重側では引張応カが認められた.ポスト部分の弾陸係数は歯根の内部応カに 影響し,ポスト先端周囲では引張応カおよび圧縮応カの最大値は弾陸係数が小さいものほ ど減少する傾向を示した.条件Fは条件Sと比較すると,引張応カは29.6%.圧縮応カは 27.1%低い応力値を示した.条件Tと条件Sと比較した場合,条件Tで引張応カは14.3%・

圧縮応カは16.9%の低い応力値が観察された.

  一方,歯頚部及ぴ骨縁周囲では,ポストの弾陸係数が小さくなるにっれて圧縮・引張応 カともに高くなる傾向が示された.歯頚部周囲歯質は,最も弾陸係数の小さいポストを想 定し た条 件Fで は最 も弾性係数の大きい条件Sに比べ,引張応カは10.3%.圧縮応カは 22.9%高い応力値が認められた.中間の弾性係数を与えた条件Tと条件Sを比較した場合,

条件Tで引張応カは4.2%.圧縮応カは8.1%の高い応力値を示した.骨縁周囲歯質におい ては,条件Fと条件Sを比較すると条件Fは,引張応カは21.1%・圧縮応カは8.2%高い 応力値が認められた.また,条件Tと条件Sと比較した場合,条件Tで引張応カは12.6%.

圧縮応カは2.6%の高い応力値を示した.

【考察】ポスト先端部からの歯根破折は再治療が困難で抜歯となることが多いが,歯頸部 での破折は歯根を救済できる可能性が高い.予後不良な歯根破折を回避するには,ポスト 先端周囲の応力集中を避けることが重要だと考えられる.そのためには,象牙質に近似し た弾性係数を有するファイバーポストの使用が有用であることが,本応力解析研究の結果 から示唆された.しかし,ファイバーポストを用いた場合には,歯頚部周囲歯質の応カが 高くなることから,マージン部分の変形やセメントの破壊といったトラブルが多くなるこ とが危惧される.

【結論J象牙質に近似した弾性係数を有するポストを使用することで,ポスト先端周囲の     ―780―

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応カを軽減できることが示された.一方,歯頚部周囲歯質及び骨縁周囲歯質の応カは,弾 性係 数が大きい ポス卜を 使用した 場合と比 較して, より高くなることが示唆された.

(4)

学位論文審査の要旨 主査    教授    大畑    昇 副査    教授    亘理文夫 副査    教授    佐野英彦 副査   教授   三田村好矩

学位論文題名

3 次元有限要素法を用いた支台築造の応力解析

― 各 種 ポ ス ト の 物 性 の 違 い に よ る 影 響 ―

審査は亘理、佐野、三田村および大畑審査委員全員が出席のもとに、まずは論 文提出者に対して提出論文の内容の要旨を説明させ、提出論文の内容に関する 審査委員の口頭試問を行った。以下に、提出論文の要旨と審査の内容を述べる。

1.提出論文の要旨

  歯根 破折 は、無 髄歯 の補 綴治 療に おけ る致 命的なトラブルであり、一般的 にその予後は不良である。歯根破折を防止するためには、歯根部での応力集中 を避け、均等な応力分布を得ることが必須である。近年、金属よりも象牙質に よ り近 似し た弾性 係数 を有 する ポス ト材 料と して、ファイバー強化型プラス チ ック(FRP)が開 発さ れた 。FRP製の ポス ト、 すなわちファイバーポストはこ れ まで ポス トに用 いら れて きた 金属 より も弾 性に富み、咬合カが加わった場 合 に象 牙質 と協調 して 変形 する こと によ って 、歯根破折に至るような応力集 中を起こしにくいと考えられている。しかし、ファイバーポストは最近開発さ れたものであるために、ファイバーポストを扱った研究はまだ非常に少ない。

ま た、 これ までの 応力解析研究で用いられてきた歯根モデルは、2次元モデル も しく は、3次元 モデルでも軸対称形に単純化されたものがほとんどであり、

実際の歯根形態を正確に再現しているとは言い難い。そこで、本研究ではヒト 抜 去 歯の マイク ロCTデー タを もと に解 剖学 的3次 元モ デル を作 成し 、ポ スト 部 分 の弾 性係数 が歯 根象 牙質 の内 部応 カに 与え る影 響に っい て3次 元有 限要 素法を用いて解析することを目的とした。

  ヒト 抜去 上顎中 切歯 をマ イク ロCTによ る断 層撮影を行い、各断面画像の外 輪部を抽出した。3次元CADプログラム(Pro/ENGINEER,

ParametricTechnology) にて サー フェ イス を作 製す るこ とに より3次元 の解 剖学的な上顎中切歯モデルを作製した。次に、上顎中切歯モデルにポストとコ ン ポジ ット レジン を用 いて 支台 築造 を行 う支 台歯形態とし、歯冠修復物とし て ポー セレ ンジャ ケッ トク ラウ ンを 設計 した 。上記の方法により作製された モ デ ルを 有限要 素プ ログ ラム(ANSYS5.5ANSYS)に移 行し た後 、3次 元有 限要

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素モデ ルを構築し た。ポー セレン、 レジンセメント、コンポジットレジン、既 製 ポス ト 、象 牙 質 、ガ ッタパー チャ、歯 根膜、皮 質骨、海 面骨、を 構成要素 とし、 それぞれに 応じた物 性値を与 えた。ファイバーポスト、チタンポスト、

ス テ ン レ ス ポス ト を想 定 し 、ポ ス ト 部分 に 与. え る 弾性 係 数を そ れ ぞれ45 GPa,110 GPa,200 GPaとして解析を行った。ポストの直径は1.6mm、根管内に 挿 入 し て い る 長 さ は8mmと し 、 ポ ス ト の 形 状 は パ ラ レ ル な 形 態 と し た 。   有 限 要 素モ デ ル は、6接 点 、5面体 と8接 点、6面 体 要 素よ り 構成 さ れ 、節 点 数は25746、 要 素数 は14528と した。歯槽 骨底部を 完全拘束 し、荷重 は舌側 か ら 歯 軸 長 軸方 向45度 の 方向 か ら 歯冠 口 蓋側 中 央 部に100N荷 重負 荷 し 、静 解析を行った。

  本 研 究の 結 果 から 、 ポスト先端 周囲歯質 、歯槽骨 頂周囲歯 質、歯頚 部周囲 歯質に 他の部位よ り高い応 カが発生 する傾向が示された。また、ポスト先端周 囲にお いては荷重 側では圧 縮応カが 、非荷重側では引張応カが認められた。ポ ス ト部 分 の弾 性 係 数は 歯根の内 部応カに 影響し、 ポスト先 端周囲で は引張応 カ およ び 圧縮 応 カ の最 大値は弾 性係数が 小さいも のほど減 少する傾 向を示し た。象 牙質に近似 した弾性 係数を有 するファイバーポストを使用することで、

ポ スト 先 端周 囲 の 応カ を軽減で きること が観察さ れ、予後 不良な歯 根破折を 回 避す る には 、 ポ スト 先端周囲 の応力集 中を避け ることが 重要であ ると考え られる 。ー方、歯 頚部及び 骨縁周囲 では、ポストの弾性係数が小さくなるにつ れて圧縮・引張応カともに高くなる傾向が示された。

2.審査委員からの質問

    ( 1) 解 析 手 法 と し て 有 限 要 素 法 を 選 択 し た 理 由 に つ い て     (2)3次 元 有 限 要 素 モ デ ル の 解 析 精 度 に つ い て ど の よ う に 考 察 する か     (3)  ポ ス ト の 機 械 的 性 質 が 応 力 集 中 部 位 に 関 与 す る 理 由 に っ い て     (4)  ファイバーポストの弾性係数が歯根象牙質に対して働くメカニズムにつ     いてどのように考察するか

    (5)  ファイバーポストの臨床的な活用法(残存歯質量が少ない場合,テーパ     ーポストの場合等)とその展望について

以上のような質問について、論文提出者はそれぞれに的確に解答し、考察・展望 について明確に言及した。

    論 文 提出 者はフ ァイバー ポストの歯 根象牙質 に対する 応力解析 の報告が 少 な いな か で 、特 に ポス ト の 弾性 係 数の 関 与につい て3次元有 限要素法 を用 いて検討した。

  本研究のような基礎的見解を今後の臨床ヘ応用する展望についても深く考察し ており、将来性の点においても評価できる。よって、学位申請者は博士(歯学)の学 位授与にふさわしいと認めた。

参照

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