博 士 ( 理 学 ) 佐 藤 縁 学 位 論 文 題 名
Formation , Structure and Functionalities of Self − Assembled h/Ionolayer of Alkanethiol Derivatives on Electrodes
(アルカンチオール自己組織化単分子層の電極上への形成と構造および機能)
学 位 論 文 内容 の 要 旨
固体表面を化学的に修飾し、機能を付与しようとする研究が活発に行われている。中でもラングミュア・ブロ ジェット(LB)法に関する研究 は幅広い分野で行 われてきた。しかし、LB法で形成した分子層には安定性の問 題があり、安 定性と配向性の面 でLB法より有利で あると考えられる自己組織化法による単分子層の構築にっい てはおよそ10年ほど前から活発に行われるようになってきた。本研究は、固体表面上の種りの機能を有する自己 組織化単分子 層にっいて形成法―構造―機能発現の関係を明らかにすることを目的として行った。機能部位とし て単純な一電 子酸化還元機能を示すフェ口センおよび、感光・発光特性を持っルテニウムトリスビピリジル錯体 を持っアルカ ンチオール誘導体を合成し、固体表面への自己組織化単分子層の形成過程を追跡し、その構造およ び電気化学特 性等の機能を詳細に調べた。また、ニトリル基を官能基として持っアルカンチオール誘導体の単分 子層を用いて、単分子層の構造に及ぼす電位の効果を明らかにした。
本論文は九章から構成されている。
第一章では、近年研究が行われるようになった、有機単分子層による固体表面の修飾のうち、ラングミュア・
ブロジェット
(LB)
法と、本研究で用いたセルフアセンブリング法による単分子層構築について簡単に総括した。第二章で は、機能性部位を有するアルカンチオール誘導体の合成と同定法、平滑な基板の作製法、単分子層 の構 築 手法 およ び 構築 した 単 分子 層の 構 造や 特性 評 価の ため の 種々 の測 定 手法 につ い て詳しく述 べた。
第三章で は、フウロセニル アルカンチオール単分子層の金電極上への形成過程を、電気化学的手法、QCM、
FTIR
により詳 細に検討した。こ れらの測定結果か ら、吸着には速いプロセス(約2xl013分子/cm‑s)とそれに統 く遅いプロセ ス(約2 x1011分子/cm‑s)があることが確認された.吸着はおよそ1000s程度で飽和に達するが、配 向性の高い単 分子層となるまでにはさらに時間が必要であった。白金表面上にも、金表面の場合と同様に草分子 層が得られるが、金への吸着量(3.3 x1014分子/CII12)の方が白金上(1.9x1014分子/cn2)よりも大きかった。金表 面上の単分子 層は、非常に安定であったが、白金表面では、空気飽和の水に浸漬することで酸化分解、脱離する ことがわかった。第四章で は、フウロセニルアルカンチオール単分子層修飾金電極の電気化学的性質を詳細に検討した。フェ
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―ロ セ ニ ル ア ル カ ン チ オZル 修 飾 電 極 の 酸 化 還 元 電 流 ピ ー ク の 電 位 は 溶 液中 の アニ オン の 種類 お よび 濃 度に 依存 し て 変 化 し た 。 ま たEQCM測 定 に よ り 、 酸 化 / 還 元 に 伴 う 質 量 の 増 加 / 滅 少 が 観 察 さ れ た 。 こ れ ら の 結 果 は 酸 化 時 に 生 成 す る 表 面 の フ ェ リ シ ニ ウ ム カ チ オ ン が電 荷補 償 のた め 溶液 内 のア ニ オン とイ オ ン対 を 形成 す るこ とを 示 し て い る 。 さ ら に 、in ‑ situ FTIR法 に よ ル フ ェ ロ セ ン 種 の 酸 化 還 元 に 伴 う 単 分 子 層 の構 造 変化 を 追跡 した 。 第 五 章 で は フ ウ ロ セ ニ ル ア ル カ ン チ オ ー ル単 分子 層 によ り 溶液 / 金電 極 界面 での 電 子移 動 の方 向 を制 御で き る こ とを 示 した . この 単分 子 層は 溶 液内F|e3十の 還元のメディ 工一夕ーとし て機能するが 、E|e2十の酸 化反応につい て は 障壁 と して 働 くこ とを 見 いだ し た。
第六 章 では 、 ルテ ニウ ム トリ ス ビピ リ ジル 錯体 (Ru(bpy) 詈十 ) のア ルカ ンチオー ル誘導体で金、ITO電極表面 を 修 飾 し 、 光 に 関 連 し た機 能 を導 入 した 。 この 単 分子 層は 金 上で は 不安 定 であ った が 、ITO上 で は安 定 に存 在し 、 Ru(bpy) 詈十 ′3十 の安 定な 酸 化還 元 応答 が 見ら れ た。 修飾 金 /ITO両 電 極に お いて 、シ ュ ウ酸 を 含む 溶 液中 で錯 体 が 酸 化さ れ るま で 電位 を正 に する と シュ ウ 酸酸 化の 電 流が 流 れる と とも にRu(bpy)詈十・ を起源とする 発光がみられ た . 詳 細 な 検 討 の 結 果 、こ の 発光 が 以下 の 機構 に よる 電解 発 光(Electrogenerated Chemiluminescence: ECL)で あ る こ とを 明 らか に した 。
Ru(bpy)p→ Ru(bpy)詈 十 十eー
Ru(bpy)詈 十 十C20ー →Ru(bpy)考 十 十C02十C02 Ru(bpy)書 十 十C02→Ru(bpy)詈 十 ゛十C02
Ru(bpy)詈 十 .→Ru(bpy)詈 十 十hr/
第 七 章 で は 、 メ ル カ プ ト ヒ ド 口 キ ノ ン 類 を 金 電 極 表 面 に 固 定 し 、 溶 液 のpHに 依 存 し た酸 化 還元 特 性を 詳細 に 調 べ た 。 非 緩 衝 溶 液 中 で は 、pHに よ っ て 様 々 な キ ノ ン / ヒ ド ロ キ ノ ン の 酸 化 還 元 応 答 が見 ら れた が 、緩 衝溶 液 を 用 い た 電 気 化 学 測 定 で は 、 酸 化 還 元 電 位 とpHの 間 に ー60mV/pHの 直 線 関 係 が 存 在 し た 。 溶 存 ヒ ド 口 キ ノ ン の 場 合 、 高pH領 域 で は 酸 化 還 元 反 応 が 非 常 に 不 安 定 に な り 、 ま た 、 酸 化 還 元 電 位 がpHに 対 し て 独 立 と な る が 、 固 定 ヒ ド ロ キ ノ ン の 場 合 は 、 ア ル カ リ 溶 液 中 で も 安 定 に 酸 化 還 元 応 答 す る こ と が わ か っ た 。 第 八 章 で は 、 メ ル カ プ 卜 ア ル カ ン ニ ト リ ル 修飾 金電 極 を用 い て、 単 分子 層 構造 に及 ぼ す電 位 の効 果 をin―situ FTIR法 で 検 討 し た 。 メ ル カ プ ト オ ク タ ン ニ 卜 リ ル(HSC;CN)の 単 分 子 層 の 場 合 、 末 端CN基 の 伸 縮 バ ン ド 波 数 は 電 位 に よ る 影 響 を ほ と ん ど 受 け な い が 、 メ ル カ プ 卜 プ ロ パ ン ニ 卜 リ ル(HSCよCN)の 場 合 は 僅 か に 電 位 の 影 響 を 受 け 、 電 位 が 正 に な る に っ れ 、 高 波 数 シ フ ト し た 。 こ の 結 果 は 、 炭 素 鎖 の 短 いHSCエCNの 場 合 、 末 端 CN基 がStark効 果 に よ り 電 場 の 影 響 を 受 け る が 、HSC7CNの 場 合 は こ の 影 響 が な い こ と を 示 し て い る も の と 考 え ら れ る 。 ま た 、CH、CNバ ン ド の ピ ー ク 強 度 の 電 位 依 存 性 か ら 、 単 分 子 層 の 配 向 の 電 位 に 依 存 し た 変 化 を 議 論 した 。
第九 章 では 以 上の 内容 を まと め た。
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学位論文審査の要旨
学 位 論 文 題 名
Formation, Structure and Functionalities of Self‑AssembledMonolayer of Alkanethiol Derivatives on Electrodes
( ア ル カ ン チ オ ― ル 自 己 組 織 化 単 分 子 層 の 電 極 上 へ の 形 成 と 構 造 お よ び 機 能 )
固体表面を化学的に修飾し、機能を付与しようとする研究が活発に行われており、中でもラン グ ミ ュ ア・プ ロジェ ット(LB)法に 関する研 究は幅 広い分野 で行われ てきた 。しかし 、LB法 で形成した分子層には安定性の問題があり、固定表面上に自発的に形成される化学結合を用いて 機 能分子 を配列・ 固定させる自己組織化法によってLB膜の欠点を克服した安定な機能性表面の 創製を図ろうとする試みが近年散見されるようになってきた。申請者は、自己組織化法により固 定表面ヘ種々の機能を付与することを目的として本研究を行った。具体的には、フェ口セン、ル テニウム卜リスビピリジン錯体、ヒドロキノンなどを機能部位として持っアルカンチオール誘導 体を合成し、固体表面への自己組織化単分子層の形成過程を追跡し、その構造および電気化学特 性 等 の 機能 を 詳 細に 調 べ 、 さら に 単 分子 層 の 構造 に 及 ばす 電 位 の効 果 を 明ら か に し た。
論文は九章から構成される。第一章では有機単分子層による固体表面の修飾のうち、ラングミ ユ ア・ブ ロジェッ ト(
LB
)法と本研究で採用した自己組織化法による単分子層構築について総 括し、第二章では、機能性部位を有するアルカンチオール誘導体の合成と同定法、平滑な基板の 作 製 法 、単 分 子 層構 築 手 法 およ び 構造や 特性評価 のため の測定手 法にっ いて述ぺ ている 。第三章ではフウロセニルアルカンチオールの金電極上への単分子層形成過程を、電気化,学的手 法、水晶振動子マイクロパランス(
QCM
)法、FTIRにより詳細に検討している。これらの測定結果 から、吸着には速いブロセスとそれに続く遅いプロセスがあること、また飽和吸着となった後も 配向性の高い単分子層となるまでにはさらに時間が必要であることを明らかにした。白金表面上 に も金表 面の場合 と同様に 単分子 層が得ら れるが、金への吸着量(3.3xl014分子/cm2)の方 が白金上(1.9xl014分子/cm2)よりも大きく、金上の単分子層が非常に安定であるのに対し、白 金 上 で は 空 気 飽 和 の 水 に 浸 漬 す る こ と で 酸 化 分 解 、 脱 離 す る こ と を 確 認 し た 。
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平 明 一 昇 浩 英 陽 崎 多 木 村 々 多 魚 喜 佐 喜 授 授 授 授 教 教 教 教
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査
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主
副 副
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第四章ではフェロセニルアルカンチオール単分子層修飾金電極の電気化学的性質を詳細に検討 している。フウロセニルアルカンチオール修飾電極の酸化還元に基づく電流ピークの電位が溶液 中のアニオンの種類および濃度に依存して変化すること、また電気化学水晶振動子マイクロパラ ンス(EQCM)を用いた測定により酸化/還元に伴う質量の増加/減少が観察されることから酸化時 に生成する表面のフウリシニウムカチオンが電荷補償のため溶液内のアニオンとイオン対を形成 することを見出している。さらに、in―
situ FTIR
法によルフェロセン穏の酸化還元に伴う単分子 層の構造変化の追跡にも成功している。第五章ではフェロセニルアルカンチオール単分子層は溶液内Fe3+の還元のメディエーターとし て機能する一方、Fe2+の酸化反応に対しては障壁として働くこと、っまり溶液/金電極界面での 電子移助の方向を制御できることを見いだした。
第六章ではルテニウムトリスピピリジン錯体(Ru(bpy)
32+
)のアルカンチオール誘導体で金お よぴITO電極表.面を修飾し、発光楓能の導入を試みている。この単分子層は硫酸中、金上では不安 定であるが、ITO上では安定に存在し、Ru(bpy)32+/3+の安定な酸化還元応答が見られることを明 らかにした。さらに修飾金/ITO両電極において、シュウ酸を含む溶液中で錯体が酸化されるまで 電位を正にするとシュウ酸酸化に伴う電流が流れるとともに、Ru(bpy)32十*を起源とする電解発光 が 起 こ る 事 を 発 見 し 、 詳 細 な 検 討 の 結 果 、 こ の 発 光 の 機 構 を 提 案 し て い る 。第七章では金電極表面に固定したメルカプトヒドロキノン誘導体単分子層にっいて溶液のpllに 依存した酸化還元特性を詳細に調ぺ、酸化還元電位とpllの閲に‑60 mV/pIIの直線関係が存在する ことを確認して・いる。また、溶存ヒドロキノンの場合は高pll領域では酸化還元応答が非常に不安 定になり、酸化還元電位がpHに対して独立となるのに対し、固定ヒドロキノンの場合は全pH領域 で−60 mV/pKの関係が見られ、アルカリ溶液中でも比較的安定に酸化還元応答することを見いだ した。
第八章ではメルカブトアルカンニ卜リル修飾金電極を用いて単分子履構造に及ぼす電位の効果 をin一situ FTIR法で検討している。末嫋CN基の伸縮パンド波数は、メルカプトオクタンニトリル
(HSC7CN)単分子層の場台には末端CN電位による影響をほとんど受けないが、メルカプ卜プロパ ンニトリル(IISC2CN)の場合は僅かに電位の影響を受け、電位が正になるにっれて高波数シフ卜 することを見出し、末蛸CN基のStark効果による電場の影響の程度の連いによりこの結果を説明 している。また、CR、
CN
パンドのピーク強度の電位依存性から、単分子層の配向の電位に依存し た変化を議論している。第九章では以上の内容を総括している。
以上、申請者は自己組織化法により金額どの表面へ酸化還元機能や発光機能の導入に成功する とともに、単分子層の構築過程や構造をEQCM法、FTIR法、XPSなどにより明らかにし、自己組織化 法による固体表面への機能導入に重要な指針を与えた。また、本研究の内容の多くの部分は既に 国際学術雑誌に掲載され、非常に高い評価を得ている。よって審査員一同は申請者が博士(理学)
を受けるに充分な資格があるものと認めた。
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