る「実現主義」
著者
菅原 計
著者別名
Sugawara Kei
雑誌名
経営論集
巻
21
ページ
45-66
発行年
1983-03-20
URL
http://id.nii.ac.jp/1060/00005806/
Creative Commons : 表示 - 非営利 - 改変禁止 http://creativecommons.org/licenses/by-nc-nd/3.0/deed.ja税 法に おけ る 「実 質主 義」
∧と
企 業 会 計に おけ る 「実 現 主義」
1 。2.3.4.5.6.7.菅 原
計 はじ めに 租税法律主義と確定決算基 準 税法におけ る実質課 税主義 伝統的実 現主義 の問題点 米国租 税判例にみる「実現」の拡大 実質主義 と実現主義 の異質性 むすび 1. は じ め に 法制度会計上,商法,証券取引法,税法とい う各法規制が少からず企業会 計に影響を及ぼし ,社 会体系上は,秩序ある法会計制度が樹立されてい るか に見える。し かし ながら,法社会シ ステムは,常に社会変革の影 響 を 受 け て,よりよい秩序シ ステムへと発展変化するものである。 法会計論領域においても,法論理と会計論理が,あ る場合には相互 補完性 をもち, またある場合には確執の状況を呈するが, 論理の葛藤は よりよい制 度会計のシ ステ ムを創造する原動力 となる。 法と会計は,その論理基盤 の違いから異なる目的観を有するが, 本来同一 事象に対し ては同一 の認識がなされる筈である。し かし, 法に よる事実認識 は,通常,事実分析を通し てその事実に含 まれている要件を見出し ,法の構 成要件に合致す るか否かを確認するプロセスとい うことができる。し たがっ て,法による認識は,先ず第一にその事実が法的形式を満たし ているか否か とい う形式認識 となる。租税法におけ る認識もまた同様に法的形式に よって 行われるが, 法的形式と実質が異なる場合には,その経済的実質性に基づい て判断される。かかる租税法の認識基準を実質主義とい うことができ るとすれば,実質主 義は企業会計上の認識基準と可成 りの融合性をもつもの と言わなければなら ない。ただ,租税法の実質主義は,すべての取引に対し て適用されるもので は なく,法的形式 と実質が異なる場合に,実質を優先させて租税 法 を 適 用 し , もって課税の公平性を確保し ようとす る目的に支配されてい ることを指 摘 する必要があろ う。 企業会計は,企業活動による経済変動 をその実質に 基 づ い て,記録・計 算 ・表示する測定システムとし て理解す ることができるが,測定のために先 ず 認識が存在し なければならない。企業会計上,従来から発生主義および実 現主義 とい う認識基準が存在するが,発生主 義 と実現主義 の関連が極めて不 明確であ り,かかる認識基準が具体的経済事実に どのように適用され,判断 されるかについ ても必ずし も明確でない。 すべての会計処理にあたって従わなければならない とされてい る「 企業会 計原則」においても,その事実認識基準たる発生主義及び実現主義は,法認 識におけ る形式的厳密性すら具備し てい るとは言えない ようである。 2. 租 税法 律主 義 と確定 決算基 準 租税 法 の法源 は, 基本的に 憲 法に 求 め るこ とが でき る。 す なわち,「あら た に 租税を 課し , 又 は現行 の租 税を 変更 す るに は, 法 律又 は法 律の定め る条 件 に よる こ とを 必 要 とす る。」(憲法第84 条)と, 国家 が国民 又は そ の有す る財 産 に 対し て課税 す るために は, 法律 の定 める条 件に よる こ とを 必要 とし, 何 人 も法律に よら なけ れば,納 税 の義 務 の生じ ない こ とを 明定し てい る。 これ が 所謂 租税 法律主 義 と呼 ばれ る。 法律 とは, 憲 法に よれば国 会での可 決を 必 要 とし ,「 法律案 は, この憲法 に 特別 の定 のあ る場合を 除い ては, 両 議 院 で可 決し た と き法律 となる。」(憲 法第59条第1 項)と規定す る。 但し 法 律は, 政令 お よび 省令 を設 け るこ とが可 能 であ る。 内閣 の職務規定 の1 つに,「 こ の憲 法及び 法 律 の規定を 実施す る た めに, 政 令を 制 定す るこ と。」(憲法第73条第6 号)が 認め られてい る。 なお, 政 令施 行 のため 省令を設 定す るこ とがで き, 国家 行政 組 織 法は こ の点につい て 次の よ うに 規定 する。「 各大臣 は5 主 任 の行政 事 務につ い て, 法 律若し く は 政令を 施 行す る ため, 又は 法律若し くは政 令 の特別 の 委任に 基い て,そ れ
ぞ れそ の機 関 の命令 を発 す るこ とが でき る。」(国家行政組織法第12条第l 項)。 我が国 の租 税法 体系 上, この法律に相当 する のが, 租税 法(所得税法・法人 税法等)であ り, 政令に 相当 す るのが法施 行令(所得税法施行令・法人税法施行令 等)で, 省令に 相当 す る のが 法施行 規則( 所得税施行規則・法人税法施行規則等) とな る。 し た力≒ て,「 わ が国 では, 国税にし ても地 方税にし て も, 租税 が課せら れるに は, 法律 で定 め る要件 にし たがい, モ の範囲に 限 ら れ る, とい う租税 法律主 義の原 理が前 提 とされ ている。 そこで, 株式会 社 そ の他 の法人 が法人 税を納 め るに は, 法人 税法 関係 の法令の規定に よるこ とに な る。 直接 に明ら かな 規定が 設けら れ てい ない事 項に つい ては, そ の関 係 法令 の規定を 一団 と した もの のなかか ら引 き 出され た解 釈に よる1)。」 この よ うに国 税につい ては, 憲法第84 条に より租税 法 律主 義が基 本とな っ 七い るが, 地方 税につい ては租 税法律主義 が同 様に基 本 とな って い るのか, 又は 租税 法律主 義 の例外 なのか が間題 とされ る。 問題 とな るのは, 憲法 第84 条と憲法 第92 条 とに, 関連 性が認 められ るか否 か であ る。 もちろ ん,法 の形 式解釈 上は, 両 条文 の関連 性は認 められ ない と言わな け れば なら ない。 なお, 憲 法第94 条は, 地 方 自治体に対し て,「 法律 の範 囲内 で条例を制 定 す るこ とが で きる。」(憲法第94条)と, 規定す る。 この場 合 の 法律 とは, 憲 法 第92 条 でい う地 方 自治法を指 す。し かし ,地 方税徴 収に 関し ての 具体的規 定 は地方 自治法に定 め られ てい ない。 ただ, 地方 公共団 体 の事務 の 例 示 と し て,地 方税を 賦 課徴 収す る ことがで きる(地方自治法第2 条第3 項21号)とされ, その事 務 処理に あ た って 条例を 制定 す ることが認 めら れ てい るにす ぎない。 つ ま り,「 普通地 方公共 団 体は, 法令に違反し ない 限 りに おい て 第2 条第2 項 の事務に 関し , 条 例を 制定 する ことがで きる。」(地方自治法第14条)。 条例は法 律 ではない か ら, 条例に基 づいて賦 課 徴収 され る地 方 税は, 租 税 法律主 義 の例外 とい うことが でき る。 北野弘 久教 授は , 地 方税 に関し ては, 租税法律主 義 の例外 とい うより, むし ろ租税 条例主 義 とい った方 が より適 切 だと指摘す る。 す なわち,「 地 方税につい て は,84 条に よってでは な く, 92 条,94 条に よって, 租税 『法律』主 義 の『例外』 が認 め られ てい るわけ であ 名。地 方税につ い て は, 租税 法律主義 はむし ろ租 税条 例主 義 とお きかえた ほ うが相当 であ る とい え よう。 こ の ように地 方税 の場 合は, さき の条 約 の場 合
と異 な り.84 条 の 『法律 の定 め る条件 に よ る』 場 合には 該当し な い の で \あ る2)。」 ダ : もち ろん, 条例 のこ内容 は法律 の範 囲内 に 限定さ れ るか ら(憲法第92条・94条), 法 令 の範 囲内 であ る限 り, ( 憲 法第84 条に 規 定す る租 税法 律主義 の趣 旨 に 反 す るも のではな い3)」 とい うこ とも でき るが, 地 方税が 申告 納税方 式 ではな く賦 課 徴収方式 を と ってい るこ と,お よび条 例は法 律 とは言え な い こ 丿と が ら, 租税 法律主 義に基 づいてい る とは い えない 。 し かし ながら ,所 得税お よび法 人税 に 関し て も, その 大部 分は政令 ・省令 に 委 ねら れてお り, そ の上解 釈通達 が 実務 上重 要な 位置 か占め てい るこ とか ら言 って , 国税 も厳密に は租 税法 律主 義に基 づい てい る と言え る の か ど う か,多 少の疑問 が残 る。 \ し かし , 租税 法律主義 が租 税法 体系 上 の前提 とす る と, 法人 課税所得 算定 に あ た って, 我 が国法人 税法は 確 定決算 基準 を 前提 とす る。 す なわ ち,「 内 国 法人 は, 各事業年 度終了 の 日の翌 日から2 月 以内 に, 税務署 長に対し, 確 定し た 決算に基 づ き次に掲げ る事 項を 記載し た申告 書を 提出し なけ ればなら ない 。」(法人税法第74条第1 項)と, 規定 す る。 こ の法人 税 法上 の確 定決 算基 準 の意義 につ い ては, 次 の3 つ の説が考えら れ る とい う。 第1 の考 え方は 法人 税 法 自足説 で,「 各事業年 度 の収益 の額お よび 原 価, 費用 または損 失 の額は, 一 般に 公正妥 当 と認 めら れる会計 処理 の 基 準にし た が って計算さ れ るべ き であ り, かつ, 租 税法 令上 の多 数 の規定に よ って規整さ れ るこ とに な るので, これら の計算 お よび 規整 の 素材 とし て確 定し た決算が 存 在すれば足 りる4)」 とい う考え 方 であ る。 第2 の考え 方は 確定決算 依存説 で,「 確定 決算に は 法第22 条第4 項 の 趣 旨 が当 然 に包蔵さ れ てい るは ずで あ るから, そ れに 依存し て, 租税 法令上 の規 整 の趣 旨に よる差 異を 取 捨す るだけ で, 法人 税法 上 の計算 が行わ れるべき も の5)」 とす る考 え方 であ る。 第3 は 確定 決算基準主 義 と言わ れ るも の で,「法 人 の存立 の根拠法に は, 法人り 会計に 関す る規定 の有 無お よび精 粗 の差異は あ るが, 健全な 会計基準 の予 定 が当 然に 存在す る, と解す るところ から 出発 す る。そ のあ るべき確定 決算 は, 健全な 会計基準を 満足 さ せ るべき も のであ る。Tしか も, 健全な会計 基 準 は 会計処理 の原 則お よび手 続に つい て, 個別 法人 の 選択 に委 ね る余地を
与えてい る。 法人 の確定 決算は, そ の選択 され た会 計 処理 の原 則お よび 手続 にそ の結果を 依存する。 租税法令 の規定は, そ うし た 確定 決算の会計処理 の 方針を基 準 とし, かつ , 租税法令 上 の規整 に よる差 異を 取 捨し て各事業年度 の所 得の金 額を 計算す る6)」 という 考え 方であ る。 エ 第1 説 の法人 税法 自足 説は, 確定 決算基 準 の意義を 明確に 捉え たもの とは 言い難 い。 第2 説 の確 定決 算依 存説 は,確 かに 実定 法 上 の課税所 得算定上, 会計制度に 依 存し てい るかに みえ るが, 完全 に依 存し てい るわけ では ない。 例えば, 貸 倒 引当金(法人税法第52条), 返品 調整 引当 金( 法人税法第53条), 減価 償却 費(法人税法第31条), 繰 延資 産の償却( 法人税法第32条)等 の損金 経 理 が 要 求されてい る項 目は,税 法が確 定決 算に 依存し てい る とい うよりむし ろ, 確 定し た決算 に おいて意 思表示 すべき ことを 要求し てい る かのであ る。 ここに 確定 決算基 準に よる税務 調整の意義 を見 出す こ とが で き る。卜 確定決 算基 準 のも う1 つ の意義 は, 法体系 上 の安 定 思考 に求 める ことが で き る。すな わち,「 税法 の強行 規定お よび 事実に反 す る経理 でない か ぎ り, 商事貸借 対照 表(Handelsbilanz)を もって,税務 貸借対 照 表(Steuerbilanz)の基 準とし なけ れば ならない とい う原則 であ る7)。」 法 の安 定 思 考から 言 って, Handelsbilanz を も ってSteuerbilanz の基準 と すべきこ とは 当然 であ るが, 法 の形式 的 要件が 満 たさ れてい るため商法上有 効であ って も, もし 実 質が 異な るもの であ る場 合によね 税 法上は 是認され な い。 こ の ように, 税法は実 質課税 の観点 から独 白な法 思考 体系を 有す るが, 損金経理 項 目に関し ては, た とえ実 質的 に損 金算 入す べ き ものであ っても,Handelsbilanz で意思表 示 されて い なけ れば 損金 算入 の対 象にす ら なら ない。 そ れでは, Handelsbilanz で税法上認 めら れてい る損 金経 理項 目を 計上し た場 合, そ の 金額が許 容損金 額 とし て 認められ るか, とい うとそ う で も な い。税 法独 目の損金許 容限度 額が設け られ てい るから であ る。 こめ よ うに 見て くる と,法 人税法 第74 条 第1 項 の実 定 法的 解釈 とし ては, 第2 説の確定決算依存説もとることができない。故に,当該条文は,第3 説 の確定決算基準主義 とい うことができる。企業会計上代替処理が認められて いる項目について,企業が自主的に選択経理し た場合に,事実に反し ない限 り,税法上も許容限度額以内は是認し ようとする税法 独目の立場を言 うもり と言わなければならない。 もっとも,制度会計理論の立場から言えば,課税
所 得 算定 は確定 決 算依 存説に よってなさ れ るこ とが望 まし い。 注 i H f c i o n ' v f t m U D h ^ 忠 佐市『決算利益 と課税所得』森山書店,昭和48 年,67頁。 北野弘久『税法講義』中央 経済社,昭和55 年,50頁。 和知弘昇『租税法概論』税務経理協会,昭 和55年,21頁。 忠佐市『税務会計法』税務経理協会,昭和53年 ,44頁。 同書,44∼45 頁。 同書,45頁。 富岡幸雄『税務会計学』森山書店,昭和53年, 295頁。 3. 税法における実質課税主義 課税所得算定上,そ の基 腿となる計算思考は,租税法律主義 と確定決算基 準主義に求めることができるが,法会計上条文適用にあたって,事実認定と い う認識基準が先行する。確定決算基準主義は,事実に反し ないかぎり,企 業経理の自主性を尊重するとい う趣旨であるが,この場合も経済的事実が強 調されてお り,租税法律主義においても単なる法形式が満たされていても, その事実に基づいて法が適用されることが強調される。 すなわち,「 租税法律主義の原理は,租税法令に規定された事実が客 観 的 に存在するときは,その事実に該当するかし ないかを認定し,かつ,その租 税法令を適用す ることを意味し てい る。このような客観的な存在とし ての事 実を認定するに当たっては,その方法お よび手続が客観的に妥当 とされるも のであるべきことは,当然の事理である。条理, すなわち,客観的な『ものの 道理』に よって一般性を有する事実 の認定が行なわれなければならない1)。」 法形式 と事実が異なる場合には,その客観的事実に基づいて法令を適用 す るのが, 法の基本的思考 である。税法においても,所得の帰属が法的形式上 の享受者と実質的享受者が異な る場合には,実質的享受 者の所得とし て課税 することが明文化されてい る。「 資産又は事業から生ず る収益の法律上 帰 属 するとみられる者が単なる名義人 であっ七,その収益を 享受せず,その者以 外の法人がその収益を享受する場合には,その収益は, これを享受する法人 に帰属するものとし て, この法律の規定を適用する。」(法人税法第n 条)。 この実質所得者課税の原則 は, 租税法論理たる実質課税の原則(実質主義)
を 明文 化し た も の で あ るか ど うか, 換 言 す れ ば こ の 第U 条 を も っ て, 実 質 課 税 の 原 則 とみ る こ と が で き る か ど うか , に つ い て 広 狭 各 説 が 存 在 す る。 こ れ ら 各 説 を 要 約 す る と, 次 の よ うな3 つ の 考 え 方 に 集 約 さ れ る とい う。「(1 )実 質 課 税 の 原 則 は , 課 税 物 件 の 帰 属 暉 関 す る場 合 に の み 適 用 さ れ る とい う, 最 も 狭 義 に 解 す る 説 。 す な わ ち, 実 質 課 税 の 原 則 とは , 実 質 所 得 者 課 税 の原 則 そ の も の を 指 す とす る 説 で あ る。(2 )実 質 課 税 の 原 則 は , 課 税 物 件 の帰 属 お よ び 課 税 物 件 の実 現 に 関し て 適 用 さ れ る と い う説 。 す な わ ち, 実 質 課税 の 原 則 と は , 実 質 所 得 者 課 税 の 原 則 と実 質 所 得 課 税 の 原 則 で あ る とす る 説 で あ る 。(3 )実 質 課 税 の原 則 は , 租 税 法 全 般 の解 釈 適 用 に 関 す る通 則 であ る と す る 。 最 も 広 義 に 解 す る説 。 す な わ ち , 実 質 課 税 の 原 則 と は, 実 質 所 得 者 課 税 の 原 則 と 実 質 所 得 課 税 の 原 則 を , モ の 内 包 部 分 とし , 租 税 法 全 般 の解 釈 適 用 に 認 め ら れ る べ き 基 本 原 理 で あ る とす る 説 で あ る2)。」 租税 法 律主 義 とい う実定法 的文 理 解釈 から言 えば, 法人税法 第n 条は 租税 法論 理た る実 質課 税の論理を 条文化し た も のではな い。 何故 なら, この条文 は 実 質所 得 者課 税の原則を謳 った もの であ り, そ0 要 件は 法人が 名義 の如 何 を 問わ ず実 質的に収 益を 享受す る場 合, そ の当 該法 人 に帰 属す るものとし て 課 税す るこ とを規定し てい る。 し かし な がら, こ の条文 を学 理的 に解 釈す るなら ば ,必 ずし も単な る名義 人 の問 題 では く,むし ろ 法的形 式 に対し て そ の経済的 実 質を 優先し て課 税所 得 を 算定す る とい う例示 的 ・確認 規定 と解 さ なけ れば なら ない。 経済的実質 を優 先さ せ るためには, そ こに 税 法 独自 の認 識基 準 が 予定さ れてい る。租 税 法 律主 義 も,単に 法形式 が満た さ れてい る事 象に, 該当 す る条文を機械的 に 適用 す るこ とを 意味す る ものでは な く, 法に 規定 さ れ た事 実 が客観的に存 在 す る場 合に のみ, そ の客 観 的事 実に 最 も適 す る条文 が 選択 適用さ れるこ とを 意味 す る。 こ の よ うに 租 税法 律主義 を解 す れば , 租税 法適用 に 先立 って,客 観的事実 の 認定 が行 われ てい る筈 であ る。 かか る事 実 認定 を, 実 質課 税達成のため の 重 要な 認識基 準 とし て捉え られ れば, かか る認識基 準 を実 質主義 と呼 ぶこ と がで き よ う。 ◇ ’。 富岡 教授は ,実質主 義 の考え方 を 次 の よ うに説 明す る。「 租税におい ては, 経 済的 実質に 即応し た実 質課 税の実 現を 理 念 とし ,事 実 の実 体ないし 実質,
す なわち経済 的 実 質に 即し て 判断 す べきであ り,表 面 の仮装的 事 実を 否定し て背後に 存す る経済的 実 質に 即し て課 税を なす べ きであ るとし , または,行 為 の形式 よりは実 質, そ の法的評 価 よりは 実現さ れた 経済的 結果を重 視し な け ればなら ない とい う思 考があ る3)。」 同教授に よれば,実 質 課税主 義は税 務 会 計原則 の1 う に 位置づ け ら れ, そ れは 税務会計公 準 の基 本的 公 準 た る租税 負 担公平 性 の原則 と租 税 負担能力 の公準 から導 出され, さ らに 実 質所 得者課 税 の原則,所 得実 質把 握 の原則, 租 税回避 否認の原則 とい う3 つ の個別原則 を導 出す るもの であ るとい う4)。 犬 この点 に 関し て 次 の よ うな反論 も あ る。「 特に 『租 税回避 否 認の原 則』 と し て説 明され てい る同族 会社 の行為 また は計算 の規定に 至 って は, 法学 理論 とし て も実 質主 義理論 に 含 まれ るのか ど うかについ ては 異論 があ る。 こ の法 学理論 とし て の上記 ア の見 解につ い て, 私は 法令解 釈論 とし て より も, 法令 適 用 の前段 階にお け る事 実 の認定 の問 題 とし て理解 され るべ き ものでは ない か と主張し て きてい る5)。」 問題は, 租税 の実 質 課税 思考を 税務 会計原 則 とし て位 置づけ るか, 租税法 学 上の租 税認 識論 とし て 位置づけ るか であ る。 実質 課税 が租 税 の基本理 念 で あ る とす るならば, そ の理 念は, 租 税法全般 の解 釈適用 に貫 か れてい なけれ ば なら ず,そ のた めに は客 観的 事実 を 認識す る始発 概念 とな って い なけ れば なら ない。す な わち, 実 質主 義は 第一 義的に 経済的 事実 の認 識 基準 とし て位 置づけ られ,公 準 概念 の も とに 包括 され るもの とな ろ う。 もし , 実 質主 義 が公 準 とし て捉え られ るなら, この実 質主 義 から 実 質課税 の原則が導 出され, こ の実 質 課税 の原則 の1 個別 原題 とし て実 質 所得 者課税 の原則を 挙げ る こ とが でき る。し たが って, 法人 税法 第n 条 は, 実質 課税o 原則の実定法的確認規定であって, その根底にぱ租税法論理上の実質主義が 存在す るもの と言え よ う。 会計学上 の費用 ・収 益対 応概 念(matcliing concept)も, 原則 とい う よりは むし ろ理 念であ る。 この理 念を 達成 す るために, 収益 と 費用 の期 間測定 の精 密さ が要求され, そ のた めに認 識 基準 が 存在す る。 1957年AAA 会計基 準に 見ら れる よ う に,「 実 現」 とい う収益 及び 費用 の認 識基 準を公 準 とし て位 置 づけ るこ とに よって, す べて め会計 事象に 同一 の認識基 準が適用 され, 最 も 適切 な会計処理 基 準が 選択さ れ るこ とに より, 対応理 念 が相対的 に貫 徹され
る こ とに な る。 。 こ の よ うに 見 て く る と, 租 税 法 学 上 の 実 質 主 義 と 会計 学 上 の 実 現 主 義 は , と も に 客 観 的 経済 事 実 認 定 の た め の 認 識 基 準 とし て 捉 え ら れ る。 忠 博 士 は , 事 実 認 定 の 同 一 性 を 強 調 し , 企 業 会 計上 も 実 質 主 義 に よ っ て認 識 す べ き で あ る と次 の よう に 述 べ る。「 会 計 実 務 上 の 論 点 とし て は, ( ■ア)企 業 会 計 に お け る 会 計上 の 事 実 の 認 定 と そ れ に 対 す る 会 計 上 の 判断 , また は ,(イ)税 務 会 計 に お け る 会 計 上 の 事 実 の 認定 とそ れ に 対 す る 法 令 の適 用 につ い て は , 事 実 の 認 定 に お い て , 企 業 会 計 上 乱 また 税 務 会 計 上 乱 実 質 主 義 の 原 則 に よ る と い う 要 請 が 現 わ れ る と 考 え る 。 会 計 上 に 真 実 性 の原 則 な る も の 於 る なら ば , こ の 実 質 主 義 の 原 則 こ そ , そ の真 実 性 の 原 則 な る も の の 内 容 の 重 要 な 一 部 であ る べ き は ず な の で あ る6)。」 万 こ の 提 言は , 現 行 「 企 業 会 計 原 則 」 上 の 認 識 基 準 に 対 す る批 判 に 他 な ら な い 。 発 生 収 益 を 保 守 士 義 的 思 考 の も とに , 出 来 るだ け 限 定 し よ う とす る伝 統 的 実 現 主 義 が とら れ て い る限 り, 租 税 に お け る 実 質 主 義 が 経 済 的 事 実 認 定 の た め の 唯 一 の 認 識 基 準 と な ら ざ るを え な い 。 し かし な が ら , 伝 統 的 実 現 概 念 に お い て も当 初 か ら 実 質 主 義 的 思 考 が 含 ま れ て い る の で あ り, そ れ が 経 済 的 実 質 の 変 化 か ら , し だ い に 回 収 時 点 か ら 発 生 時 点 へ と 認 識 時 点 が 変 化 し つっ あ る 。 か か る実 現 主 義 の 概 念 変 革 は , 収 益 認 識 か ら 費 用 認 識 へ と拡 大 さ れ , さ ら に 資 産 及 び 負 債 の 認 識 へ と拡 大 さ れ る。 こ の よ うに 拡 大 さ れ た 実 現 主 義 は , す べ て の経 済 事 象 の 実 質 性 に 着 目し た 認 識 基 準 に 他 な ら な い 。 注"Ih cq CO 0 萄 剛 忠佐市『税務会計法』税務経理協会,昭和53年, 30頁。 和知弘昇『租税法概 論』 税務経理協会,昭和55年, 69∼70 頁。 富岡幸雄『税務会計学』森 山書店,昭和53 年,83頁 。 同書, 82∼85頁。 忠佐市『決算利益と課税所得』森 山書店,昭和48 年 ,188 頁。 同書, 189頁。 4. 伝統的実現主義の問題点 課税所得概念は,経済力の純増加額を純資産増加額に求めるが,発生主義 会 計においては,収益と費用の差額とし て期間発生利益を捉え る差額利益概
念 であ る。 こ の差 額概 念におい て,利 益 が意味を もつ ために は, 期 間対応理 念が貫 徹さ れてい なけ ればなら ない。 そ のためには , 厳密 な収益 と費用 の認 識基 準が存在し なけ れ ばなら ない 筈 であ る。し た が って, 発生主 義 会計にお い ては,2 段階 の認 識基 準を 適用 す るこ とに な る。先 ず 第1 次 の認 識基 準は 発生主 義 であ り, この 第1 次認 識基 準に 基づいて 価値 支 出額 と価値収 入額が 決定 され る。 続い て 第2 次認 識基準に よって, 期間発 生し た 費用 額 と収益額 が決定さ れ る。 収益 及び 費用 とい う概念に は, す でに期 間 とい う意 味が人 づ てい る と解 され るから, 第2 次認識基 準は 期間発 生額 の確 定 基準 とし て作用 す るも のとな る。 し かし , 伝統 的実 現概 念は, 特に 収益 の認 識に 力点が お か れ る。 すなれ も ,収益 は,「 営業 の全 プ ロ セスに よる企業努力に よって 稼得さ れ てい るが, 収益は 生産物 の現 金又 は他 の確実 な資産 の転化に よって , 実 現(realize)され る1)。」 この ように , 収益 の実現 を現 金又は 他 の確 実 な資 産 の転化に 求 め る と, 収益 の実現時 点 は通常, 販売時 点に 求めら れ るこ とに なる。 こ の場合ひ 実現 の要 件は, 生 産物 の引渡(法的には所有権の移転)と他 の確 実 な資産 の転化 であ る。 こ の要件を 厳密に 適用 す ると, 農産 物に 適用され る収穫 基準, 鉱業に 適用 され る生 産基 準, 長期 請 負工事に 適用さ れ る工事 進行 基準 , 割賦販売 に適用, され る回 収基 準お よび 回収 期限到 来基 準等 の処理基 準は, 実 現主義 の例外 と い うこ とにな る2)。 もし , これら の基 準が実 現主義 の例外 とい うこ とに なれ ば, こ の例外に 対し て一 体い かか る認 識基 準が作用し て是 認 さ れ るも のと解 さ れ るのか とい う問題 があ る。実 現主義 の 例外につ い ては 発生主 義に よって 認 識さ れ るとす れ ば,回 収 基準お よび回 収期 限到来基 準 は 明ら かに 発生主義 の例 外 となる。 し たが って, もし 実 現主義 を 収益に のみ 適用 す るとい う伝 統的 観点に立つ とし て も, 実現主 義を 販売基 準に 限定 す べきでは な く, 価値 増 加の確定 現象 の生 起を も って収益を 認 識し 確 定す るとい う, 実質 的観 点 から の認識基 準と し て捉 えなけ れば なら ない 。そし て その場 合の実現主 義 の 要件 は,経済的 実 質性に 力点をお いた 客 観性 と確 定性 とい うこ とに な る。 ところ が,差 額利 益概 念の も とでは, 収益 と費用に 異 な る認 識基 準が作用 し て,果し て対 応理 念が貫 徹され てい る と言え るのか ど うか とい う問 題 が残
る 。 費 用 認 識 に 対 し て も , 収 益 と の 関 連 で 明 確 な 相 互 関 連 性 の テ ス ト が 必 要 と さ れ な け れ ば な ら な い 。 収 益 と の 関 連 で 費 用 を 認 識 す る た め に は , 収 益 の 認 識 基 準 が 同 時 に 費 用 認 識 基 準 と し て 作 用 し な け れ ば な ら な い 。 そ の 場 合 の 費 用 認 識 た る 要 件 は , 経 済 的 実 質 性 に 力 点 を お い た 客 観 性 と 確 定 性 と い う こ と に な る 。 1957 年AAA 会 計 基 準 ぱ, 実 現(realization )を 公 準 と し て 位 置 づ け 次 の よ う に 定 義 す る 。「 実 現 の 本 質 的 意 味 は , 資 産 又 は 負 債 の 変 動 が , 会 計 処 理 上 の 認 識 を 保 証 す る に 足 る ほ ど 十 分 な 確 定 性 と 客 観 性 を も つ に い た っ た と い う こ と で あ る3)。」 こ の 定 義 も 必 ず し も 十 分 な も の と は 言 え な い が^ ) 少 な く て も 伝 統 的 実 現 概 念 に お け る 論 理 矛 盾 を 是 正 し , 生 起 す る 経 済 現 象 を そ の 実 質 に 基 づ い て 認 識 し よ う と し て い る 点 は 高 く 評 価 さ れ る 。 た だ , こ の 定 義 が 損 益 計 算 原 理 に 基 づ く 収 益 及 び 費 用 の 認 識 基 準 と し て 適 用 さ れ う る の か 否 か が 問 題 と な る が, Windal に よ れ ば , 当 然 な が ら 収 益 及 び 費 用 の 認 識 基 準 と し て 適 用 さ れ る と い う 。 す な わ ち ,「 こ の 定 義 に よ れ ば , 我 々 は , 原 価 の 実 現 , 原 価 移 転 の 実 現 , 費 用 の 実 現 , 損 失 の 実 現 , 収 益 お よ び 利 益 の 実 現 … … と , 言 う こ と が 可 能 と な る5 )。」 と , 収 益 及 び 費 用 の 認 識 基 準 と し て 実 現 を 位 置 づ け , さ ら に 実 現 の 意 義 を 次 の よ う に 述 べ る 。「AAA 委 員 会 に よ る 定 義 は , 他 方 で 実 現 を 利 益 又 は 収 益 か ら 完 全 に 切 離 し た 概 念 と 考 え る 。 実 現(realization )の テ ス ト は , あ る 特 定 項 丹 が あ る 範 躊 に 入 る か ど う か を 決 定 す る と い う よ り も む し ろ , あ る 特 定 項 目 を い つ 認 識 す べ き か を 決 定 す る た め に 適 用 さ れ る6) 。」 と の よ う に , 新 し い 実 現 概 念 に よ る と , 実 現 は 収 益 の み で な く 費 用 認 識 基 準 と し て も 適 用 さ れ , 第 一 義 的 に は 時 点 認 識 基 準 で あ る が , よ り 重 要 な 点 は 期 間 確 定 認 識 基 準 と し て 位 置 づ け ら れ る 。 ま た , 認 識 は 測 定 の 先 行 基 準 で あ る た め , 実 現 と い う 認 識 基 準 は , 経 済 事 象 の 実 質 的 認 識 を 通 し て , そ の 取 引 に 最 も 適 す る 処 理 基 準 の 選 択 適 用 に も 作 用 す る も の と な る 。 換 言 す れ ば , 実 現 と い う 認 識 基 準 は 第2 次 認 識 基 準 と し て 適 用 さ れ , そ れ は ま た 第2 次 測 定 基 準 と 結 合 さ れ る も の と な る7 )。 ■ ■■ ■ か か る 実 現 主 義 り も と で は , 租 税 法 学 上 の 実 質 主 義 と 企 業 会 計 論 理 上 の 実 現 主 義 は , 少 く と も 事 実 認 定 に 関 し て は 同 様 の 処 理 基 準 を 導 出 す る も の と な ろ う 。 租 税 実 定 法 上 の 実 質 所 得 者 課 税 の 原 則 に お い て も , か か る 実 現 主 義 が
適用 さ れ ない 限 り, 租 税公平 性 の原則す ら貫 徹で きない もの と言わなければ なら ない。 し かしレ 現 行「企 業会 計原 則」 の実現主 義 は, 明ら かに伝 統的実 現主 義に よってお り,「 売 上 高は, 実 現主義 の原 則に 従い , 商品 等 の販売又 は役務 の 給 付に よって実 現し たものに限 る。」(損益計算書原則三B) とし ,注 解注6 では, 実 現主義 の適用 の例示 とし て委 託販売, 試用 販売 ,予 約 販売お よび 割賦販売 の 販売基 準に基 づ く時点 認識を 挙げ てい るに す ぎない。 そ の上注 解注6 では, 割 賦販売に つい て,「 収益 の認識 を慎 重に 行 うため, 販 売基 準に代 え て, 割賦 金の回 収期限 の到来 の 日又は 入金 の 日を も って売 上 収 益実現 の 日とす るこ とも認 めら れ る。」(「企業会計原則注解」注6(4))と,収益 認 識の慎重 さ のため に回 収基準を も是認し てい る。 この回 収基 準は, 伝統的 実 現主 義に おい ても認 めら れる ものでは ない8)。 法人 税法 第62 条 は,割 賦販売に つい て割 賦基 準(回収期限到来基準)に よって 経理し てい る時 は,課 税所 得算定 上益金 び損 金に算 入す る ことを 認 め て い る。し かし ,回 収基 準に よる処理 は税 法上認 め られ てい ない 。 税法 が回 収期 限到来 基準を 認 めるの=は, 納税 者の担 税力 ないし は応 能 負担力を 考 慮し た租 税 政策 上の要 請に よる ものであ り,実 質主 義 の適用に よるも のではない。 割 賦 販売 の実質 性 から分析す る限 り,企業 会 計上 の処理 は 販売基 準に よるべき であ り, 税法上 認 められてい て も回収 期限到 来基 準 は認 められ ず, まし て税 法 上で さえ認 めら れ 七い ない回 収基 準は, 公正 な会 計 質行から 見て是認 され るべき でない。 万 租税法 上,経 済的実 質思 考が 作用し てい る もの とし て , リース取引に 対す る課税上 の取扱 いを 指摘 す るこ とが でき る。 取 扱通達 は, リー ス取引につい て は法的形 式 よりも経済的実 質を 優先 させ て課 税し なけ れば 弊害 が生じ ると い う認識 から, 次 の ように述 べ る。「 現在広 く一 般に 行わ れてい るい わ ゆ る フ ァイナン ス リースにつ い ては, そ の経済的 実 質に おい て一 般 の賃貸借 と異 な る面を 有し 七い るとごろから, これを一 般 の賃 貸借 と 同様に取 扱 うことに 課税 上弊害 のあ るも めも認 めら れ るので, 個 々のn ース取引 の経 済的実質に 応じ て これを 売買取 引等 とし て取扱 うこと とし ,そ の処 理 の統= を 図 ること とし た も のであ る。」(「 リース取引に係る法人税及び所得税の取扱いについて」直法-I Q 昭和53年7 月20日)。
同 通 達 は , リ ー ス取 引 を そ の実 質的 観 点(リース期間 , リース条件, リース物 件,当事者の意図)か ら , 売 買 とし て 取 扱 うi; ー ス 取 引 , リ ー ス料 の 一 部 を 前 払 費 用 とし て取 扱 う取 引 , 中 古 資 産 をi; ー ス バ ッ クし た 場 合 の取 扱 い に つ い て 明 ら か に し て い るが , セ ー ル ス ア ソ ドV ー ス バ ッ クに つ い て は , 実 質 的 に 金 融 取 引 と認 め ら れ る,と き は , そ の譲 渡 が な か っ た も の とし て 取 扱 う とし て い る。 ・ す な わ ち ,「 法 人 が 債 務 の 弁 済 の 担 保 とし て そ の有 す る 固 定 資 産 を 譲 渡 し た 場 合 に お い て , そ の 契 約 書 に 次 の す べ て の事 項 を 明 ら か に し , 自己 の 固 定 資 産 とし て 経 理 し てい る と 徊 よ, そ の譲 渡 は な か っ た も の とし て 取 扱 う。 そ の後 そ の 要 件 の い ず れ か を 欠 く に 至 っ た と き 又 は 債 務 不 履 行 のた め そ の弁 済 に 充 て ら れ た と き は , こ れ ら の事 実 の 生 じ た と き に お い て 譲 渡 が あ っ た も の とし て 取 扱 う。」(法人税基本通達2-1-18 )。 な お , 同 通 達 の「 次 の す べ て の事 項 」 と は, (1 )当 該 担 保 に 係 る 固 定 資 産 を 当 該 法 人 が 従来 どお り 使 用 収 益 す る こ 払 (2 )通 常 支払 う と認 め ら れ る 当 該 債 務 に 係 る 利 子 又 は こ れ に 相 当 す る 使 用 料 の 支 払 に 関 す る定 め が あ る こ と, の2 点 で あ る。ト
こ のSales and Leaseback 取 引 は ,法 形 式 上 固 定 資 産 の譲 渡 が 先 行し て お り, 租 税 回 避 取 引 に 該当 す る も の では な い 。 に も か か わ ら ず , か か る解 釈 通 達 が 存 在 す る の は , 租 税 法 学 上 の 実 質 主 義 に 基 づ く 実 質 課 税 の 原 則 の要 請 に よ る も の と解 さ れ る 。 も っ と も , 確 定 決 算 基 準 に 基 づ く 申 告 納 税 制 度 の基 盤 の も と で は , もし 当 該 企業 が 譲 渡 資 産 を 自己 の資 産 とし て 経 理 し て い な い 時 は , 税 法 上 当 該 固 定 資 産 の 譲 渡 が あ っ た も の とし て 取 扱 う こ とに な り, こ の 譲 渡 そ の も のを 税 法 が 否認 す る とい う積 極 的 意 味 を 有 す る も の で は な い 。 こ の 取 引 が 問 題 と な る の は , む し ろ 企 業 会 計 に お い て で あ る。 何 故 な ら , 粉 飾 の 意 図 を も って 資 産 譲 渡 が 行 な わ れ た 場 合 に は , 健 全 な 会 計 制 度 上 に お い で も, ま た 適 正 な 会 計 監 査 制 度 上 に お い て も , 二 者 択 一 とい うわ け に は い か な い 。含 み 資 産 を 多 く 有 す る企 業 が ,一 時 的 な 資 金 繰 脱 出 方 法 とし てSalesand Leaseback 取 引 を利 用 す る ヶ − スが 多 い か ら で あ る。 か か る譲 渡 益 が , 収 益 とな る の か 否 か に つ い て , 伝 統 的 実 現 主 義 は 適 切 な 認 識 基 準 とし て 作 用 す る 資 質 を 有 し て い な い 。 こ こ に , 企 業 会 計 上 の 実 質 主 義 思 考 の 必 要 性 を 痛 感 す る 。 武 田 教 授 は , 経 済 取 引 を 認 識 す るた め に は , 形 式 よ り も 実 質 に 従 って 判 断
す べき こ とを強 調し ,「 経済的 取 引は, まず法 律的 形式 に よって 判断さ れる。 し かし , それ が法的 実質 と異 な ってい る場合に は, 法的 実 質に 従 って解釈す べ きこ とはむし ろ当然 であ る。し かし , さらに, この法的 実 質が経済的 実質 と具 な ってい る場合に は, その経済 的 実 質に 従 って取引 を 解釈す べ き で あ る9)。」とし , 企業 会計 上の認 識基 準がい かに 形式に とら わ れてい るかを 指摘 し て次の よ うに 述べ る。「 企業 会計 は, 本来 法 律的 事実 を 金額表 示 するこ と を 目的 とし て存在し てい るわけ では な くて, 経済 的実 質を 示す こ とを 目的 と す るも のであ る。し かし , 現 実には 法 形式に 捉 われ てい る傾向 かあ る。 この 意 味で, 税法 の考 え方 は,企業 会 計 よ りも,経 済的 実 態を 表わす ように努力 が続けら れてい る よ うに思 われ る10)。」 公正 な会 計 置行 とは,経済 的 実質に 基 づ く客観 的認 識に より, 事実 との関 連 で適切 な会計処理 が 選択 さ れ, そ の 積重 ねに よって公 正妥 当性 が付与さ れ る こ とに より形 成 され るも のであ る。 こ のこ とは, 本来的 に企業 会計 上要請 さ れ るものであ って, 法は か かる実 質的 会 計処 理を基 盤 に形 式 体系を形 成す べき もの であ る。し かし , 現実に は 法認 識 がむし ろ会 計 認識 よ り先 行し てい る のであ る。 注
1 )W.A. Paton & A.C. Littleton, An Introduction to Corporate Account- ing Standards, AAA Monograph No. 3, (Forteenth. printing 1970 ) p. 46・2
) 飯 野 利 夫 『 財 務 会 計 論 』 同 文 舘 , 昭 和53 年, 310 頁 。3
)AAA committee, "Accounting and Reporting Standards for Corporate Financial Statements -1957 Revision," Accounting Review (July, 1957 ),p.
538. ト4 )1957 年CD AAA 実 現 概 念 の 定 義 上 の 間 題 点 に つ い て は , 拙 稿 「 制 度 会 計 の 基 本
思 考 」『 北 見 大 学 論 集 』 第6 号 , 昭 和56 年 ,47 ∼48 頁 を 参 照 さ れ た い 。 ま た , 実 現 の 要 件 た る 客 観 性 と 確 定 性 の 内 容 に つ い て は , 拙 稿 「 制 度 会 計 に お け る 実 現O 積 極 的 意 義 」『 北 見 大 学 論 集 』 第3 号 , 昭 和55 年, 59 ∼62 頁 を 参 照 さ れ た い 。5 )Floyd w. Windal, “The Accounting Concept of Realization," Account- ing
Review (April, 1961 ), p. 250. 犬6 )Ibid., p. 251.7
) 測 定 の 二 元 性 に つ い て は , 拙 稿 「 制 度 会 計 に お け る 実 現 の 積 極 的 意 義 」 『 北 見 大 学 論 集 』 第3 号 , 昭 和55 年 ,56 頁 を 参 照 さ れ た い 。8
の積 極的 意義」『北見大学 論集』第3 号,昭 和55年,64 ∼67 頁を 参照されたい。9 ) 武田昌輔「課税所得計算におけ る実質優先 思考」『会 計』第Ill 巻第4 号,34 頁10 ) 同,44頁。 5. 米 国 租 税 判 例 に み る 「 実 現 」 の 拡 大 我 が 国 では , 租 税法 学 上 の 実 質 主 義 が , 企 業 会 計 上 の 実 現 主 義 にimpact を与 え て い る よ うに , 米 国 に お い て も 租 税 判 例 上 の 解 釈 に よ っ て ,し だ い に 伝統 的 実 現 主 義 の概 念 が 拡 大 さ れ, 1957 年AAA 会 計 基 準 に よ る 実 現主 義 か 提 起 さ れ る に 至 った とい う。 十 米 国 に お い て , 最 初 の 連 邦 所 得 税 法 が 制 定 さ れ た の は , 南 北 戦 争 勃 発 の年 の1861 年 であ るが ,「 こ の法 律 に お け る 課 税 標 準 は , 現 金 収 入 と現 金 支 出 ど の対 応 に よ っ て 算 定 さ れ る純 所 得(net income) で あ っ た 。 も っ と もこ の 算 定 方 法 は , 所 得 算 定 に お け る 純 資 産 増 加 説(increase-in-net-wortli approach) と は 明 確 に 異 な る も の で あ っ た1)。」 当 時 は , 現 金 収 入 が 現 金 支 出 を 超 え る 額 を も っ て 所 得 と す る現 金 主 義 に よ
る概 念 が とら れ て い た 。こ の考 え 方 は, U.S. V. Schillinger 事 件(27 Fed. 973.1876) に お け る裁 判 所 の 見 解 に も現 わ れ て い る 。 す な わ ち ,「 法 に 反 す る い か
な る特 別 規 定 も な い か ぎ り, 所 得 は 現 金 を 意 味 す る も の と 捉 え なけ れ ば な ら ず, そ れ は 現 金 を 受 取 る 期 待 で も な く , 将 来 現 金 化 で き る とい う権 利 で も な い2)。」
そ の後 , 現 金 主 義 が 拡 大 さ れ , 現 金 収 入に は 現 金 等 価 物 を 含 む とい う 判 例 が 出 さ れ る よ うに な る 。 Maryland Casualty V. u.s べ251, U.S. 342, 1920)事 件 で裁 判 所 は , 次 の よ うに 述 べ る 。( 内 国 法 人 に 対 す る 課 税 所 得 は , 当 該 年 度 に 受 取 っ た 所 得 に 限 定 さ れ る3)。」 こ の場 合 の 当 該 年 度 に 受 取 っ た 所 得 と は , 現 金 お よび 現 金 等 価 物 を 指 す と 解 す る も の であ る 。 伝 統 的 実 現 主 義 に よ って 所 得 を 捉 え よ う と す る裁 判 所 の 支 配 的 見 解 を 反 映 し て , 米 財 務 省 通 達2090 は, 1914 年 ,「 売 却 が 実 現(realization) に 関 す る 十 分 な テ スト と な る4)」 と, 販 売 基 準 に よ る 実 現 を 認 め, 1918 年 の 歳 入 法 で 採 り 入 れ ら れ る こ とに な った 。 ト し かし , そ の後 の 判 例 はし だ い に 発 生 時 点 に 近 い 実 現 主 義 の 解 釈 が とら れ る よ うに な っ て く る 。 Spring City Co. V. Commissioner (292,U.S. 182, 1934)
事 件では, 丁最 高裁 判所が ,所 得 の記 録 とし て発生主義 を 認め る5)」見 解を出 し てお り, Helvering V. Horst (311, U.S. 112)事件 で裁判 所は, 明ら かに伝 統 的 実現主義 を 拡大し た解 釈を表 明し てい る。「 疑い もな く, 納 税 者のすべ て の経済的利 得が 課 税所 得 を構成 す る ものでは ない。し かし 当初 から 歳 入法 解 釈上,所 得 の実現 とは, 単に受 領 権利 の獲得 とい うよ りはむし ろ 課税可能 な 事象 の生 起 であ る と考 え ら れる6)。」 こ のHelvering V. Horst 事 件におけ る裁判所 見解は, 明らか に経 済的実 質 に基づ いて課 税所得(taxable income) を把握し ようとす るも のであ り, か
か る認識基 準 とし て「 実 現」 を 意義づけ てい るものと言え る。 Spring CityFoundry Co. V. Commissioner 事件 で の最 高裁 判例に見 ら れ るよ うに, 発
生主 義会 計が会 計記 録の基 盤 とし て是 認 されてお り, 実 現主 義 は 課 税 所 得(taxable income) の 認識基 準 とし て適用 さ れてい る こ と が 分 る。 ところが,
所得(income) は 収 益(revenue) と費用(expense) との差 額 で ある から, 当然 な がら両 要 素の認 識基 準 とし て実 現主義 が 適用 さ れてい ることに な る。 租税 解 釈上 の実 現を 巡 って, 実現主 義 が財産 価値変 動 に基 づ く増 加現 象 と し て拡 大さ れてい く傾向は , 賃貸資 産造 作に よる課 税所 得判定 に関 す る裁 判 所 の判 例に 見ら れ る ように な る。 この問題 に対し て, 1917年 財 務省は , 賃貸資 産の造 作に よる価値増 加は, 賃貸期 間終了時 に 賃貸人 の所 得に な ると規定 し た が,1919 年 ,Miller V.Gearin (285 Fed. 225)事 件 で裁 判所は , この規定は無 効 であ る とい う判決を 出し た。すな わち,「 この規定 は 無効 であ り, 仮にい やし くも課 税可 能 とす るなら ば,か か る利 得は そ の造 作 が完成 す る年 度 まで課 税さ れなけ れば なら な1 □)。」 \ 賃貸資 産の造作 に よ る価値増 加は, 実 現主義 を適用 す る限 り, 実 現し た所 得 になら ない という 半U例が, 1937 年 のStaples V. U.S. (21 Fed. Supp. 737) 事件, 1938年 のBlatt V. U.S. (305, U.S. 267)事件 の判決 に見 られ る。
ところ が, 1940年 のHelvering V. Brunn (309 U.S. 416)事 件 で最 高裁 判 所 は,か か る価値 増加は 課 税所得 とな り うる とい う判決 を出し た。 ニの判決 は, 1920年 のEisner V. Macomber 事件 以来定 着し て き た 実 現主義 に反 す るも のであるが, 伝統 的 実 現主 義 が 実質主義 的思考 に よ り拡大 され てい く判 例 とし て注 目に値 す る。「 経 済的利 得 のす べてが 必ずし も課 税所得 と ぱ なら
ない とい うこ とは 真 実 で あ る が , 利 得 の 実 現 は , 資 産 売 却 か ら 得 ら れ る 現 金 に限 定 さ れ な い とい う考 え 方 は 定 着 し てい る。 利 得 は , 資 産 の交 換 , 債 務 免 除 もし くは 取 引 完 了 に よ る 実 現 利 益 の 結果 とし て 生 じ る。 利 得 は ,納 税 者 に よ って 受 領 さ れ た 財 産 価 値 の 分 与(a portion )で あ る と い う事 実 は , そ の 分 与 の実 現 を 否定 す る も の で は な い8)。」 も っ と も, こ の 判 例 は 税 法 上 採 用 さ れ る に 至 ら ず , 税 法 改 正 に よ り当 該 資 産 の 再 取 得 時 に , 賃 貸 人 の 課 税 所 得 を 構 成し な い こ と が 条 文 化 さ れ る が') 少 く で も1940 年 代 以 降 , 伝 統 的 実 現 主 義 の 枠 が 租 税 判 例 を 通 し て拡 大 さ れ て く る こ とに な る 。 か か る 拡 大化 は , 発 生 し た 所 得 を 確 実 な 資 産 の転 化 の 時 点 ま で保 留 す る と い う伝 統 的 実 現 概 念 か ら , 価 値 増 加 現 象 を 実 質 性 , 客 観 性 お よび 確 定 性 を 要 件 に 認 識 す る とい う, 新 し い 実 現 概 念 に 集 約 さ れ る こ と に な る。 十 す な わ ち , 租 税 法 上 の 実 現 し た 課 税 所 得 とは, Windal に よれ ば 次 の3 点 に 要 約 さ れ る とい う。「 所 得 の 実 現, すな わ ち 所 得 が 実 在 す る よ うに な る の は , い くっ か の基 準 が 純 資 産 増 加 と関 連し て 満 さ れ た 時 であ るよ た だTし , 贈 与 もし く は 出 資 に よ る 価 値 増 加 は 除 外 さ れ る。 い く つ か の基 準 とは 次 の よ う な も の で あ る。 ① 利 得 又 は 価 値 増 加 は , 現 金 又 は 他 の資 産 の受 領 , 債 務 免 除 , 法 的 権 利 の 実 質 的 移 転 とい う事 象, もし くは 取 引 に よ っ て 確 証 さ れ る かの で な け れ ば な ら な い 。 ② 利 得 又 は 価値 増 加 は , 客 観 的 測定 を 伴 わ な け れ ば な ら ない 。 ③ 利 得 又 は 価値 増 加 は , 変 更 出 来 な い ほ ど確 定 的 な も の で な け れ ば な ら なI ヽ10)。」 こ の よ うに , 課 税 所 得 認 識 基 準 に 対 す る実 現 概 念 の 変 遷 過 程 と の 関 連 で,1957 年AAA 会 計基 準 の 実 現 概 念 を 位 置づ け な け れ ば な ら な い 。 注
1)Floyd w. Windal, “Legal background for the Accounting Concept of Realization," Accounting Review, (January, 1963), p.29∼30.2
)Ib 這., p. 30.3 )Ibid., p.31.4 )Ibid.,p. 31.
10 ) Ibid., p. 32.Ibid., p. S3.Ibid., p. 34.Ibid., p. 34.Ibid., p. 35.Ibid., p. 36. 6. 実質主 義と 実現主義 の 異質性 租税 法論 理にお け る実質主 義1)と企業 会計論理に おけ る「 実 現主義」 は, 経 済的 事実 行為 の分析を 通し て, 客 観的 ・確定 的 要件を も って事実 認 識基 準 とし て適用し よ うとす る点,両 者は同 質性を 有す る。 かか る同質 性 に 立 て ば ,そ の 適用 範 囲 の広狭 から,実 現主義 は実質主 義に 包 括 さ れ るもの とし て 捉 え る考 え方 もあ る2)。 または,米 国租税判 例に 見ら れ る よ うに, 適用 する 認 識基準 は実 現主 義 であ るが, 何か課 税所 得であ る かに つ い ては , ケ ースバ イ ケースに判断 さ れる場 合 もある3)。 この場合 は,実 現主 義 が実 質主 義を 包 括 し た も のとし て捉え られ る。 し かし な がら, かか る認 識基準 の適用 目的 又 はそ の効果 か ら考 え て み る と, 租税 法 と会 計学 では 微妙 に 異な ってい る と言わ なけ れば な らない。 それ は また実 務家に も反映し, Windal も指摘す る よ うに , 法 律家 と会計人 とで は ,実 現主義 の適用 段階 が異な るのであ る。「 法 律家 は, 本来的 に 実現主義 を 所得 実 在の必 要 条件 とし て考 え る。 会計人 もまた所 得 領 域に 実現主 義を 適 用 す るが, 会計人 の場 合, 所 得は実現主義 適用 以前に す でに 存 在し てい ると 確 信し てい る。す なわ ち, 会計人 は,あ る項 目が 会計 処理 上認 識 さ れ る ほ ど, 十 分な確定 性 お よび 客 観性がいつ 生じ たかを 決定す るた めに 実現 テ スト を 適用す る のであ る4)。」 我が国 の租 税 法令は, 租税 法律主義に 基づ き確定 決算 基 準を 採 用 し て い る。 この確定 決 算基 準に おけ る収益 及び 費用 の額は,「 一般 に公 正妥当 と認 め られ る会 計 処理 の基 準に 従 って計 算され るもの とす る 。」(法人税法第22条第4 項)とな ってい る が, 問題 は この「一 般に 公正妥 当 と認 められ る会 計 処 理 の 基 準」 とは 何を 指す か であ る。 法人 税法 第22 条第4 項「 の規定 で『会 計処理の基 準 』とさ れ てい るものは, 益 金 または損 金 の額に 算 入し または 算入し ない こ とが対 象 とさ れてい るわけ
であ る か ら , 性 質 上 実 質 原 則 に 限 ら れ て お り, 形 式 的 原 則 に は お よば な い は ず で あ る(財務諸表 等規m が性質上形式的原則に限られる のと決定的差 異がある)。 そ の内 容 の一 面 に お い て は , 会 計上 の 事 実 の認 定 に 関 す る も の と , そ の 認定 さ れ た 事 実 に 対 す る 会 計 目 的 上 の判断 との , そ の 双 方 を 含 有5 )。」 し た が っ て こ の条 文 は , 租 税 目的 に 支 配 さ れ た 事 実 認 定 及 び 租 税 目的 上 の 判 断 に 関 し て の 確 認 規定 と 意 義 づ け る こ と が で き る 。 故 に , 直 接 的 に は 「 企 業 会 計 原 則 」 を 指 す も の で な い こ とは 明 ら か で あ る 。 こ の 確 認 規 定 は , 租 税 法 律 主 義 の 立 場 か ら 見 て, 会 計 制 度 に 依 存 す る こ とを 確 認し た も の で あ る が , 租 税 法 は 独 自 の 税 務 調 整 を そ の 計 算 思 考 とし て お り, そ れ は 単 純 に 企 業 会 計 利 益 を 調 整 す るこ とを 意 味 す る も の では な い 。 そ こ に , 税 務 調 整 に は 単 に 申 告 調 整 の み で な く , 決 算 調 整 が含 まれ てい る意 義 を 見 出 す こ と が で き る 。 さ ら に 敷 術 す れ ば , 企 業 会 計 上 の利 益 算 定 に 関し て も 税 務 調 整 が 及 ぶ こ と を 意 味し , そ こ に 租 税 目的 に 支 配 さ れ た 事 実 認 識 基 準 た る 実 質 主 義 が 作 用 す る と見 る こ と が で き る。 こ の よ うに , 実 質 課 税 の 原 則 に 支 配 さ れ る実 質 主 義 は , 課 税 所 得 実 在 の 必 要 条 件 を 満 たす 認 識 基 準 とし て 適 用 さ れ る こ と が 分 る。 し かし な が ら , 企 業 会 計 上 適 用 さ れ る「 実 現主 義 」 は , 歴 史 的 に 見 て も第2 次 認 識 基 準 とし て 適 用 さ れ , 第1 次 認 識 基 準は 発 生 主 義 に よ っ て い る。 し た が っ て , 収 益(正 確に 言えば この段階では価値収入)及 び 費 用(同様に価値支出) は , 第1 次 認 識 に よ りす で に 発 生し て い る 。 第2 次 認 識 基 準 た る 「 実 現 主 義 」 は , 期 間 損 益 計 算 の 要 請 か ら , 期 間 的 に 確 定 す べ き収 益 と費 用 を 各 々の 経 済 取 引 の 事 実 に 基 づ い て 認 識 す る た め の 基 準(criteria)とし て 適 用 さ れ る。 し かし, Sorter は , 従 来 の 財 務諸 表 は 事 実 認 識 に よ る事 実 の 情 報 提 供 を 無 視し す ぎ てい る と批 判し , 価 値 理 論 では な く事 象 理 論 に よ っ て 作 表 す べ き こ とを 提 案 す る 。「 事 象 理 論 学 派 に よれ ば , 会 計 の 目的 は 種 々可 能 な 意 思 決 定 モ デ ルに 役 立 つ よ う な , 適 切 な 経 済 事 象(economic events )に 関 す る情 報 を 提 供 す べ き で あ る と い う6)。」こ の考 え 方 は , 取 得 原 価 主 義 に 基 づ き な が ら 乱 歴 史 的 原 価 と時 価 と の二 欄 式 財 務 諸 表 を 提 案し たASOBAT (AAA 1966 )の 基 本 思 考 で あ り, Sorter は さ ら に そ の発 展的disclosure の 方 向 性 を 示 唆 し た も の で あ る。 十
制 度 会計上 , 価値理論に 基づ く会計 制度 思考 枠に 影響 されざ るをえ ない こ とは 止む を 得ない が, 少 くとも評 価万 能主 義 に陥 った価 値理論 学派は, 意識 的 に か無 意 識的にか,六経済 事象そ の もの の認 識,そ の認 識に基 づ く適切な会 計 処理 の 選択に 関連し て, 曖味に 見過 ごし てきた感じ は 払 拭で きない 。財務 諸 表 の有用 性 は, それ が 経済的 事 実を 客 観的 に表示 す る限 りに おい て増大す る。 こ のこ とが, また会計 制度に 対す る 信頼性 を 高め る ことに なる。し たが って, 第2 次認 識基 準た る「 実 現主義 」 は, かか る意味 で重 要な役 割を担 う こ とに なる。 認 識 は測 定に先 行す る。 故に 測定 の多 様化 は, 認 識の多 様化 から生じ るも の であ る。一つ の会計事 実に対し て, 複数 の認 識が 可能 であれ ば, 複数 の測 定 方法 が導 出さ れる 筈であ る。 測 定技 術 の進歩に よって, 新し い測定 方法が 開発 さ れ,事 実 と表示 の誤 差が縮 小さ れ れば され るほ ど, 会計 の客 観性は 相 対的 に 高 くなる。 特定 の測定基 礎(歴史的原価主義とか時価主義)が与え ら れ れ ば, 経 済事 実を 最も適 切に表 現 でき る測定 技術(会計処理)を取 引毎 に 選 択 す るた め の認 識基 準 とし て「 実現主 義」 が 適用 され る。 か か る認 識基 準 たる「 実 現主 義 」に よ り, よ り客 観性 の高い 会計 処理実務 がし だい に定 着さ れれば, 税務 調整に おけ る決 算 調整の 必 要性は な くなるか もし れ ない 。 会計学にお け る認 識論 の展 開は, 制 度 会計 上 弊害 とな ってい る 確定 決 算基 準の枠を 外し , 企業 会計利 益 の計 算 と課税所 得計算を 切離す 明確 な論 理を 提 供す るもの どなる。 そ のた め の認 識基 準 とし て適用さ れ る「 実現 主義 」 は, 課税所 得計 算上適用 され る実 質主義 と, 適用 範 囲・ 目的・ 結果は 当 然 異 な るとし て も, 実 質に 基づ い て認 識す る とい う点 では, 実 質主義以上 に 実 質を 重 視す る概 念 とな る。 注 1 ) 我 が国の判例上,法 論理におけ る実質主義は必ずし も定着し てい るわけ ではな い。 もっとも責任の一端は 著し く統一を欠いてい る「企業 会計原則」の存在にあ る と指摘し なけ ればならないが,法論理 の確立 も必要不可欠であるとい う指摘が あ る。 忠佐市「『企業 会計原則』 と判決例」『会計』第106 巻第4 号, 86頁では, 法論理を2 つに分け ,最も重要なのは, 企業会計法(確定決算)と税務会計法(申 告所得お よび 更生所得)の関 係の論理 が整序 されなけ れぼ ならないとされてい る62 ) 忠佐市『決算利益 と課税所得』森山書店,昭和48 年, 189頁, 十
) 米国最高裁判所は,課税所得 の定義探求を 放棄し , ケースバ イケ ースに基本的 判断を示す傾向にある。富 岡幸雄『税務会 計学』森山 書店,昭和53年, 53頁。4
)Floyd w. Windal , “Legal background for tlie Accounting Concept of Realization," Accounting Reviezv (January, 1963 ), p. 29.5
) 忠佐市『 税務会計法』税務経理協会,昭 和53年 ,72 頁。6
)George H. Sorter, “An Events Approach to Basic Accounting Theory," Accounting Review (January, 1969 ), p. 13. 7. む す び 会 計制度 の充 実, Disclosureめ拡 大, 会 計 情報 の有 用性 を考 え る場合,や や もす る と㈲定基 礎, 測定 技術, 表示 の間 題 とし て 論議 されや すいが,実 は 測定 ・表 示 の問題 の出発点 は認 識論で なけ れば なら ない 。 会計制度 の本質的 発展は, 単に 処理基 準の択一に 継続 性 の原 則を 適用 す るだけ で保証 されるも のでは ない。 継皆i生の原 則 の意義は,一 度採用し た会 計処理 を形 式 的 に毎期 継続的 に適 用す るこ との みでは な く,正当 な理 由 があ れば 変 更す ることを も含む もので ある。 ただ, 正当な 理由 とは, 第一 義的に , 当 該事 実 の実 質的変化 の認識に 求めら れ るも のであ る。し た が って, 実 質に基 づ く最 も適切 な処理基 準が選 択 され る ところに, 継皆 既の本質的 意義 が 見 出され る。 制度 の定 着は, 少から ず法 と密接 な 関連 を有 す る。 法会 計の 制度化は,一 般に形式 性 と規範 性を もつ 。 租税法に おい て も,実 質 主 義思 考がそ の根底に ある とし て 乱 法 秩序 の形式 体系 の枠 内に 存在す るこ とは疑 いない。法 に よ る規範 性は, よく企業 会計におけ る 自主 経 理 の原 則を 制限す る形 で実定法化 され るが, こ れは必ずし も正し い もの ではない。 複 離多 岐 に わた る経 済現 象を ,そ の実 質に 即し て測定 す るこ とを 自主 経理 とい うの であ って, 単に 処理を 形式的 に 適用す る 自由 経理を 自主 経理 とい う ことは で きない。し かし, 法 は企業 会計に 対し て, 事 実認 識基 準を 欠 如し た 自由経理を 基 盤 とす る計算制 度 と捉 え がち であ る。 こ の よ うな思考に基づ く 法規制は, 徐 々に 自主 経理 の基 盤を 破壊 す るこ とに もつ な がる。 健全 な 会計 制度 の定 着(商法でいう公正な会計潰行, 税法でいう一般に公正妥当 と認められる会計処理の基準)は, 何よ りも認 識論 の展開 から 出発す べきもので あ り, そ の基 本的 思考 は経済的 実質を 優 先す るも ので なけ れば ならない。か
か る 意味 で, る。
自主経理の原則的基盤が,制度会計上容認され うる も の と な (1982年11月26日)