• 検索結果がありません。

腫瘍先進部の組織型と組織内CEAの局在, 組織内p53の発現からみた大腸癌患者の予後に関する検討

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "腫瘍先進部の組織型と組織内CEAの局在, 組織内p53の発現からみた大腸癌患者の予後に関する検討"

Copied!
13
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

原  著

倭三輪99第犠,馨謂〕

腫瘍先進部の組織型と組織内CEAの局在,組織内p53の

発現からみた大腸癌患者の予後に関する検討

東京女子医科大学 第1病理学教室(主任:小林愼雄教授)        ウシ  タニ   ヨシ   ヒデ

       牛 谷  義 秀

(受付 平成5年4月16日) Differentiation of the Histological Tllmor Margin, Immllnohistocllemical   Iρcalization of CEA and p53 Gene Expression as Prognostic       Parameters of Co霊orectal Cancer        Yos11量hide USHITANI Department of Pathology(Director:Prof. Makio KOBAYASHI)       Tokyo Women’s Medical College   Among patients who underwent surgical resection for colorectal cancers, two hundred and fifty・ one without liver metastasis or peritoneal dissemination were assessed regarding prognosis by histologically comparing the primary tumor with the tumor margin. Tumors tended to be histologi− cally undifferentiated at the margin, and the cumulative 5−year survival rate of patients in whom the leading margin of the tumor was undifferentiated was poor. The pathological characteristics of colon cancers which affected d孟fferentiation at the histological margin of the tumor included budding, and whether or not there was nodal involvement, the depth of transmural invasion, and budding童n rectal cancers. With examlnation by multivariate analysis, the main factor impacting on tumor differentia− tion at the histological margin, which might affect prognosis, was suggested to be the expression of P53.          緒  言  大腸癌の組織学的特徴を分類する場合,本邦で は大腸癌取扱い規約1)に従って面積・量的優位性 に基づいて高分化腺癌と診断されることが多く, 腫瘍内にみられる組織像の多様性についてふれる ことは極めて少ない.しかし最近,腫瘍先進部は 正常組織との境界部でいわゆる浸潤最前線であ り,腫瘍自体が有する生物学的悪性度や患者の予 後をよく反映するとされ,これらの所見を得るこ とは術後の補助療法および患者の追跡調査を行う 上で極めて有用と考えられる.  今回,リンパ節転移,リンパ管・静脈浸潤,局 所浸潤増殖様式,肉眼型,籏出などこれまで用い られてきた各病理学的因子に加えて,大腸癌の腫 瘍先進部における組織像に注目するとともに,抗 carcinoembryonic antigen(CEA)ポリクローナ

ル抗体を用いたCEAの局在部位および抗p53モ

ノクローナル抗体を用いた組織内p53の発現に関 する免疫組織学的検討を行い,これらの結果が患 者の予後の指標に成り得るかどうかについて多変 量解析を用いて検討した.        対象および方法  1.対象  対象は1980年から1984年の5年間に東京女子医 大消化器病センターで外科的に切除された大腸癌 症例めうち,同時性肝転移および腹膜播種症例を 除く深達度ss以上の結腸癌治癒切除症例158症例 と深達度ss(a、)以上の直腸癌治癒切除症例93症

(2)

      東京女子医大消化器病センター   1980−1984      1992 結腸癌    直腸癌   結腸・直腸癌 性比(男1女)    92/66     60/33     25/9 年齢(平均年齢> 2フ∼91(61歳)  32∼刀(56歳)  35∼80(61歳) 主占拠部位 図1 対 象 5 4 8 5 4 1980∼1984年の症例は同時性肝転移,腹膜播種症例を 除く深達度ss以上の結腸癌治癒切除症例およびa1以 上の直腸癌治癒切除症例. 2 例および1992年1月から9月までに外科的に切除 された大腸癌初回手術症例のうち,手術時新鮮材 料の入手が可能であった34症例(図1)である, なお,主たる腫瘍占拠部位は大腸癌取扱い規約1) に従って分類した.  2.標本作製方法  外科的に切除された標本は長軸方向に切開した 後,なるべく生体に近い状態で進展し20%ホルマ リン液で48∼72時間固定した.一方,1992年1月 から9月までの9ヵ月間に切除された標本に関し てはさらに新鮮切除病変から採取した標本をすぐ

に2分割し,組織内p53発現検索のため1片は

10%中性緩衝ホルマリン液で固定してパラフィン 包埋用とし,残りの1片はAMeX2)∼5標本用とし た.  1)病理組織学的診断に用いた標本の作製  ホルマリン固定した腫瘍の最:深部を通る標本か ら作製したパラフィン包埋標本を3μmの厚さに

最低3枚以上薄切した後,HE(hematoxylin・

eosin)染色を行い,大腸癌取扱い規約1》に基づく病 理組織学的診断を行うと同時に,腫瘍先進部の組 織型についても観察した.ここでいう腫瘍先進部 とは腫瘍の壁深達度を反映した表現であり,腫瘍 細胞が顕微鏡的に浸潤している最深部とした.静 脈侵襲の判定にはVictoria blue染色を追加し た.なお,病理組織学的診断に統一性をもたせる ため,’ ?メ自身が新たに病理診断を行った.  2)免疫組織学的検討に用いた標本の作製  (1)組織内CEAの局在に用いた標本  腫瘍の最:深部を通過するパラフィン包埋標本か ら厚さ3μmの連続切片を作製し,peroxidase− antiperoxidase method(PAP法)により,抗CEA ポリグローナル抗体(DAKO社製)を用いた免疫 組織学的染色を行い,陰性コントロールとの比較 を行うとともにCEAの局在について検討した.  (2)組織内p53の発現に用いた標本  手術時に得られた新鮮材料から作製したホルマ リン固定パラフィン包埋切片より,厚さ3μmの連

続切片を作製し37℃にて伸展した後avidin・

biotin perox至dase complex(ABC法)により, 癌遺伝子産物p53に対する抗p53モノクローナル 抗体〔PAb1801〕(Oncogene Science社製)を用 いて免疫組織学的染色を行い,陰性コントロール との比較検討を行った(表1).なお,陰性コント ロールはp53抗体のかわりにPBSを用い,他の染 色行程はまったく同じものとした.さらにこれと

平行してAMeX法にて作製した標本についても

表1 組織内p53染色法(ABC法) 1.脱パラフィン:   室温にて石油ベンジン3槽,各ユ0分.   室温にて100%エタノール3槽,各10分→流水水洗 2.内因性ペルオキシダーゼ反応阻害:   0.3%過酸化水素メタノール液(4℃,30分)   →流水水洗5分 3.正常血清:    20倍マウス血清(4℃,15分) 4.一次抗体:   50倍抗p53抗体(4℃,48時間)   →PBSにて5分間ずつ,3回洗浄 5.二次抗体:   ビオチン化二次抗体(モノクローナル抗体)(4℃,24   時間)   →PBSにて5分間ずつ,3回洗浄 6.ABC:   Avidin・Biotin peroxidase complex(4℃,60分)   →PBSにて5分間ずつ,3回洗浄 7.発色反応:   0.05Mトリスバッファー液50mlにDAB試薬0.01g   を撹絆して溶解,30%過酸化水素を1−2滴加えて使用   (室温) 8.核染色:   ヘマトキシリン10秒(室温)→流水水洗 9.脱水(100%エチルアルコール),透徹(キシロール),封入

(3)

同様の検討を行った.AMeX法では薄切後4%パ ラホルムアルデヒドにて5分間固定し,ABC法に おいて内因性ビオチンをも染色する危険性を回避 した.  3.標本観察部位および観察方法

 1)HE染色

 HE染色では大腸癌取扱い規約1)に基づき肉眼 型,組織型,壁深達度,リンパ管侵襲,静脈侵襲, 局所浸潤増殖様式,リンパ節転移の有無のほか, 腫瘍先進部における侵襲能を反映するといわれて いる籏出の程度についても検討した.族出とは腫 瘍の先進部における発育形式を表す表現で,組織 型のいかんに関わらず腫瘍先進部で低∼未分化な 腫瘍細胞が3∼4個以下の小塊状を呈するか,あ るいは個々に遊離細胞状に発育して組織間隙に浸 潤しているものと定義し,その判定は腫瘍最深部 を通る最低3枚以上の連続切片から作製した組織 標本を用いて行い,腺管の一部と考えられる所見 や明らかなリンパ管侵襲,Victoria blue染色にて 確認された静脈侵襲は除外した.腫瘍先進部での 量的・面積的優位性に基づき,籏出の程度を図2        図2 腫瘍籏出の分類  矢印(▲)は腫瘍最前線の組織間隙にみられる低分化  ∼未分化な癌細胞の浸潤を示す(×60).  A:absence of budding(bdo), B:low grade(bd、),  C:moderate grade(bd2), D:high grade(bd3). に示すように4群に分類して検討した.  一方,大腸癌取扱い規約1)に基づき量的・面積的 に優位な所見から決定した主組織型とは別に腫瘍 先進部における組織型を検討し,両方の組み合わ せと予後との関連について検討した.

 2)組織内CEAの局在

 CEA染色ではとくに腫瘍先進部に注目して腫 瘍細胞を観察し,染色された細胞がまったく見ら れないか,または全視野に5∼6個以下のものを 陰性とし,それ以上のものを陽性とした.  岡田らの分類6)を参考に,  a:apical borderと管腔内分泌物のみが陽性の もの  b:apical borderと管腔内分泌物,細胞質の一 部,とくに管腔に面した部分が陽性のもの  c:apical borderと管腔内分泌物,細胞質,

a

 o   o

・彿・o

@        o  o  o   c  @ ’ o @;吻ノo

oθ・@

    /!ノ 図3   b     ゑ 塗獅・華・ のコ     ロロ む ⑤’・鱒・’●  6) o

d

       組織内CEAの局在部位 a:apical borderと管腔内分泌物のみ陽性, b:apical borderと管腔内分泌物,細胞質の一部,とくに管腔に 面した部分が陽性,c:apical borderと管腔内分泌物, 細胞質,lateral membrane,間質および間質内浸潤細 胞が陽性,d:管腔を形成せず細胞外周と細胞質が陽 性.

(4)

1ateral membrane,間質および間質内浸潤細胞が 陽性のもの  d:管腔を形成せず細胞外周と細胞質が陽性の もの  以上の4群に分類(図3)し,腫瘍先進部にお けるCEAの局在を観察する一方,先進部組織型 および大腸癌患者の予後との関連について検討し た.  3)組織内p53の発現  抗p53モノクローナル抗体を用いた免疫染色を 行い,その結果腫瘍先進部で観察される組織内 p53の発現の程度を,  ①腫瘍細胞核の20%以上に核染色されている 陽性群  ②染色陽性の腫瘍細胞核が20%以下か,または 明らかな細胞核の染色は認めないものの,陰性コ ントロールの染色程度とは明らかに異なる中間群  ③全視野の腫瘍細胞を観察しても染色された 細胞が見られない陰性群 の3群に分類した.なお,陰性コントロール標本 では腫蕩細胞の核,細胞質いずれにおいても染色 陰性であった.  ホルマリン固定パラフィン切片,AMeX切片の いずれについても同一の診断基準で観察し,染色 度が不一致の場合は染色度の強い方を採用した (図4).  4.統計処理  生存率はKaplan−Meier法で算出し,統計学的 有意差検定にはλ12検定を,生存率の差の統計学的 検定にはgeneralized Wilcoxon testを用いた. また多変量解析には,林の数量化理論II類7)を用 いた.          結  果  1.腫瘍主組織型一先進部組織型とstage分類  前期の大腸癌症例251例の腫瘍主組織型と先進 部組織型を比較検討した場合,いずれの症例にお いても先進部ほど低分化の腫瘍細胞が観察される とともに,全例先進部の組織型は主組織型と同じ か,または低分化であった.  図5は同一症例の腫瘍主組織型と先進部組織型 の相違を示したもので,上段に大腸癌取扱い規 a.ホルマリン固定パラフィン包埋切片における  p53免疫染色陽性像(右は陰性コントロール)

b.AMeX切片におけるp53免疫染色陽性像

.誕 陽性像  陰性コントロール 強拡大像 図4 大腸癌組織内p53の発現 約1)に基づき高分化腺癌と診断されたものの,先 進部組織型(下段)は中分化腺癌と診断された症 例を示したものである.  腫瘍主組織型一先進部組織型の組み合わせでみ た頻度を図6に示すが,とくに主組織型が高分化 であった結腸癌135症例,直腸癌78症例に注目して 検討すると,結腸癌,直腸癌のいずれにおいても

(5)

   図5 腫瘍の主組織型と先進部組織型 上段は面積・量的優位性から大腸癌取扱い規約に従っ て高分化腺癌と診断.下段は,同一症例の先進部で中 分化腺癌と診断した症例, 結腸癌 主組織型のみならず先進部組織型までも高分化で あった症例は減少し,逆に中分化・低分化の症例 が有意に増加していた(いずれもp<0.005).  一方,腫瘍主組織型一先進部組織型の組み合わ せによりstage分類(図6)を行い,とくに主組織 型が高分化であった症例に注目して進行程度の軽 いstage II群と進行程度の強いstage III以上の 2群に分類すると,結腸癌においては有意差はな いものの先進部組織型の低分化に伴いstage III 以上の進行癌症例の比率が高くなる傾向にあり, また直腸癌においては有意にstage III以上の進 行癌症例の比率が高率であった.  2.腫瘍組織型と各病理学的所見との関係  大腸癌取扱い規約1)に挙げられる各病理学的因 子との関係を主組織型が高分化の結腸癌135例と 直腸癌78例について高分化一高分化群と高分化 一中分化,低分化群の2群に分けて検討すると, 20   40   60   80   100症例 高分化一高分化 高分化一中分化 高分化一低分化 中分化一中分化 中分化一低分化 低分化一低分化 粘液癌一粘液癌 高分化一高分化 高分化一中分化 高分化一低分化 中分化一中分化 中分化一低分化 低分化一低分化 枯液癌一粘液癌      □…g・11 直腸癌

C。症。■一一

図6 腫瘍の主組織型一先進部組織型の組み合わせと  stage分類 結腸癌では籏出高度(p<0.005),直腸癌ではリン パ節転移陽性(p<0.005),壁深達度s(a2)以上 (p<0.005),籏出高度(p≒0.01)症例において, 先進部組織型が中・低分化の症例が高分化の症例 よりも有意に高率に認められた(表2).  3.腫瘍主組織十一先進部組織型と予後との関 係(図7)  腫瘍主組織三一先進部組織型と予後との関係を Kaplan−Meier法による累積生存率で比較すると 結腸癌,直腸癌いずれにおいても図7に示すごと く,主組織型が高分化でも先進部組織型の分化度 により累積生存率に有意の差が生じ,その分化度 が低いほど予後不良であることが示された.

 4.組織内CEA染色

 CEA染色では前期の結腸癌158例中154例

(97.5%),直腸癌93例中91例(97.8%),後期の大 腸癌34例中31例(91.2%),全体では285例中276例 (96.8%)が染色陽性であった.これらの結果を岡 田らの分類6)を参考にまとめてみると表3のごと

(6)

表2 腫瘍主組織型一先進部組織型と各病理学的因子との関係 結   腸   癌 直   腸   癌 病理学的因子 高分化一高分化 @95例(%) 高分化一中・低分化 @ 40例(%) P・value 高分化一高分化 @22例(%) 高分化一中・低分化 @ 56例(%) P−value 肉眼型 @  type  1 @      2 @      3 潟塔p節転移 @     (一) @     (+) ヌ深達度 @  SS(a,) @  S(a2)∼ ャ管侵襲 @  lyo,l @  ly2β @  VO.1 @  V2,3 ヌ所浸潤増殖様式 @  α @  β @  γ ラ 出 @  bdo.1 @  bd2.3 4(100%) V8(70.9%) P3(65.0%) U5(76.5%) R0(60.0%) Q3(79.2%) V2(69.2%) U2(73.8%) R3(64.7%) W0(71.4%) P5(65.2%) R6(72.0%) T4(69.2%) T(71.4%) U7(79.8%) Q8(54.9%) 0(0%) R2(29..1%) V(35.0%) Q0(23.5%) Q0(40。0%) W(25.8%) R2(30.8%) Q2(26.2%) P8(35.3%) R2(28.6%) W(34.8%) P4(28.0%) Q4(30.8%) Q(28.6%) P7(20.2%) Q3(45,1%) 「野0・005 2(50.0%) P9(27.9%) P(16.7%) P8(43.9%) S(10.8%) P0(58..8%) P2(19.7%) P8(35.3%) S(14.8%) Q0(35.7%) Q(9.1%) U(22,2%) P6(37.2%) O(0%) P8(39.1%) S(12,5%) 2(50.0%) S9(72.1%) T(83.3%) Q3(56.1%) R3(89.2%) V(41.2%) S9(80.3%) R3(64.7%) Q3(85.2%) R6(64.3%) Q0(90.9%) Q1(77.8%) Q7(62.8%) W(100%) Q8(60.9%) Q8(87.5%) 「野0・005 u沓0・005 u野0・01 表3 先進部CEAの局在と先進部組織型  (CEA陽性276例)       結腸癌(154例) 高 分 化(93例) 中・低分化(54例) 粘 液 癌(7例) 79(84.9%) W(8.6%) U(6.5%) O 11(20.4%) Q0(37.0%) P8(333%) T(9.3%) 002(28.6%) T(71.4%) 直腸癌(91例) 高 分 化(21例) 中・低分化(64例) 粘 液 癌(6例) 17(81.0%) Q(9.5%) Q(9.5%) O 14(21.9%) Q2(34.4%) P7(26.6%) P1(17.1%) 0006(100%) 大腸癌〔1992。1∼9〕(31例) 高 分 化(4例) 中・低分化(24例) 粘 液 癌(3例) 4(100%) O00 10(41.7%) W(33.3%) S(16,7%) Q(8.3%) 2(66.7%) O01(33.3%) くであり,腫瘍先進部の組織CEAの局在は先進 部組織型の低分化傾向と相関していた.  とくに粘液癌を除く前期の結腸癌147例,直腸癌 85例および後期の大腸癌28例を先進部組織型によ り高分化群と中分化,低分化群の2群に分類し,

さらに組織CEAの局在をa群とそれ以外の2群

に分類して比較検討した場合,前期の結腸癌,直 腸癌症例では有意に,また後期の大腸癌症例でも 有意差はないものの,2者の相関関係は明らかで あった(表4).  以上よりapical borderと管腔内分泌物のみが 陽性のa群がら細胞質やlateral membraneおよ び間質内浸潤癌細胞まで陽性の。,d群へと移行 するにしたがって先進部の組織型は高分化の比率 より,より低分化の比率が高くなる傾向が示され た.  5.組織内p53  1)組織p53の陽性率(表5)  後期の9ヵ月間に手術時新鮮材料の入手が可能

(7)

a.結腸癌治癒切除症例  (%) 1::  1: 護,。 簿・・ 率  40  30  20  10

 0

行…’≡『τ’一’一’『一曹一’一一’一’一’一’一9一’一          * 一響Ar  し1嘗・一L了        L…、一一一一.、_埜一 表4 先進部CEA局在と先進部組織型 一とくに高分化,中・低分化腺癌について一 コ  ロ      しサ L1    ㌧...gi l㌔  も lL._冒 i*** 0 20 生存期間 40 一KapIan−Meier法一 60(M) b.直腸癌治癒切除症例

 1な1      ・

  誌 番1:

  :1   で:

  0   20 生存期間40   60(・1

       −KaPlan・Meier法一 図7 腫瘍の主組織型一先進部組織型と予後との関係  a。結腸癌治癒切除症例     :高分化一高分化*,一一一……:高分化一中分  化籾,……一一一:高分化一低分化***,一一一:中分化  一中分化,中分化一低分化,一一一:低分化一低分  イヒ,        :米占液癌一米占液癌.  b.直腸癌治癒切除症例     :高分化一高分化*,…一一…一:高分化一中分  化**,一一…一一一一:高分化一低分化***,一一一:中分化  一月分化,一一一:中分化一低分化,一一一一:低分化  一月分化,   :粘液癌一粘液癌. 己取1一’、一・・       尊 一 髄 脚 であった34例を対象に,AMeX法およびホルマリ ン固定パラフィン包埋法の2法にて作製した標本 に対して組織内p53染色を施行し,発現の程度を 検討した結、果,①陽性群は20例(58.8%),③陰性

群は6例(17.6%)であり,②中間群が8例

(23.6%)であった.この際,明らかに20%以上の 腫瘍細胞核に染色が認められた①群のみを陽性と

し,またAMeX法とホルマリン固定パラフィン

包埋法の染色の程度を比較して発現の強い方を採 用したが,染色度の一致した症例が25例(73.5%), AMeX法の方が強かった症例が7例,逆にホルマ リン固定パラフィン包埋法の方が強かった症例が 先進部組織型 症例数 a−type(%) 結腸癌 高分化 93 79(84,9%)「 中・低分化 54 、、(2。.4%)_P<0・005 直腸癌 高分化 21 17(81。0%)一1 中・低分化 64 、4(2、.9%)2〈0・005 大腸癌〔1992,1∼9〕 高分化 4 4(100%) NS 中・低分化 24 10(41.7%) 表5 大腸癌におけるp53陽性率 症例数 P53陽性例(%) 大腸癌 @結腸癌 @直腸癌 21 P3 15(71.4%) T(38.5%) NS 2例であり,組織内p53の発現においてはAMeX 法の方がホルマリン固定パラフィン包埋法よりも 感度が高い傾向にあるものの有意差はなかった.  2)組織内p53発現と各病理学的因子  組織内p53発現と大腸癌取扱い規約に挙げられ る各病理組織学的因子との関係を検討すると,占 拠部位では結腸癌21例中15例(71,4%),直腸癌13 例中5例(38.5%)と有意差がみられず(表5), 肉眼型,リンパ節転移,リンパ管侵襲,静脈侵襲 および腫瘍の主組織型一先進部組織型とp53発現 の間にも相関はみられなかった.壁深達度がpm 以下の群とss(a1)以上の2群に分類すると壁深 達度の深いss(a、)以上の症例では有意にp53陽性 率が高かった(p<0.005).また同時性肝転移は5 例にみられたがp53との関連では肝転移陽性例の p53陽性率は80.0%と陰性例の55.2%に比して高 率ではあったものの,有意差はみられなかった. 同時性腹膜播種もp53陽性の1例にみられたが, 有意差はみられなかった(表6).  6.各病理学的因子の5年生存率への寄与度  年齢(60歳以下/60歳以上),性別(男/女),CEA (a/b,c, d), p53(①/②,③)の各因子を表6に 示す病理学的因子にさらに追加したcategoryに 分けて多変量解析を行い5年生存率への寄与度を

(8)

表6 p53の発現と臨床病理学的因子 病理学的所見 症例数 P53陽性例(%) 肉眼型 type 1 1 1(100) 2 27 13(48.1) 3 3 3(100) 4 2 2(100) 5 1 1(100) 主組織型一音半部組織型 高分化一高分化 4 1(25.0)     NS 高分化一中・低分化 13 8(61.5) 中分化一中分化 12 7(58.3) 中分化一低分化 2 2(100) 粘液癌一粘液癌 3 2(66.7) 壁深達度 ∼pm rS(a、)∼ 529  0(0) 一i Q。(69.。)_P<0・005 リンパ節転移 (+) 17 11(64.7)      NS (一) 17 9(52,9) 脈管侵襲 lyo.1 14 5(35,7)     NS 1y2.3 20 15(75,0) VO.1 25 14(56,0)      NS V2.3 9 6(66.7) 局所浸潤増殖様式 α 24 12(50,0) NS β 10 8(80.0) 籏 出 bdo.旦 21 10(47,6)      NS bd2β 13 10(76.9) 肝転移 (+) 5 4(80.0) NS (一) 29 16(55.2) 腹膜播種 (+) 1 1(100) NS (一) 33 19(57.6) 検討したところ,偏相関係数は先進部組織型が 0.4245と最も大きく,以下リンパ管侵襲0.1962, 籏出0.1391の順であり,先進部組織型の関与が最 も大きいことが示された.一方,先進部組織型に 寄与する病理学的因子を同じcategoryで多変量 解析を行ったところ,偏相関係数はp53発現が 0.7368と最も大きく,次いで肉眼型0.5175,静脈 侵襲0.4404の順であり,p53の発現が最も大きく 関与していることが示された.          考  察  大腸癌の進行度を表現する場合,これまで国際 的にはDukes分類8)やそれを修飾したAstler& Coller分類9)のほか,国際対癌連合が提唱した TNM分類10)が広く用いられている.しかし,この 方法は発見時や手術時の進行度を反映するものの 患者自身の予後を必ずしも反映しているとはいい がたい.本邦では大腸癌の進行度の表現方法とし てDukes分類のほかに大腸癌取扱い規約1)に従っ た分類が広く用いられている.ところが,古くか ら壁深達度とリンパ節転移が重要視され,主にこ の2因子の組み合わせで行われてきたこれまでの 分類は進行度の指標とはなるものの,厳密な意味 で患者の術後補助療法や長期予後の指標となり得 るかどうかという問題点を指摘する報告が多い.  大腸癌の組織型を注意深く検討すると,多くの 場合同じ腫瘍病巣内に数種類の組織型が存在し, さらに腫瘍先進部の組織型ほど分化度が低い傾向 にある8>11)12)ことが以前より指摘されている.この 見地から腫瘍自体が本来もっている生物学的悪性 度は腫瘍が非腫瘍組織と接する腫瘍最:前線,すな わち腫瘍先進部の質的診断が最も重要であると考 えられる.現在の大腸癌取扱い規約1)によると大 腸癌の組織型は量・面積的に優位な組織型とされ ており,これが生物学的悪性度を適切に表現して いない大きな要因と考えられる.そこで今回,腫 瘍の主組織型と先進部組織型との比較,腫瘍先進

部での抗CEA抗体による染色度および抗p53抗

体による染色度に注目し,腫瘍自体のもつ生物学 的悪性度の指標となり得るかどうかについて検討 した.  大腸癌の組織型は1988年の大腸癌研究会による 全国集計13)では高分化腺癌59.4%,中分化腺癌 26,4%であり,荻原ら14)の報告でも高分化腺癌が 58%台を占めている.しかし中分化腺癌は高分化 腺癌より生存率が低い12)15)16)との報告もあり,治 癒切除に限っても中分化腺癌は高分化腺癌に比べ てリンパ節転移率が高く,深達度が深いものが多 く,5年生存率も低いとの報告もある.しかしこ こでいう組織型とは主組織型のことであり,これ まで先進部組織型と病理学的因子および予後との

(9)

関連について検討した報告は少ない.文献的には わずかに飯田17)が中分化腺癌とした59例のうち, 中分化腺癌だけからなる純型28例,管腔側は高分 化腺癌で外膜側は中分化腺癌である先進部型16 例,中分化腺癌と高分化腺癌が混在する混合型15 例を比較したところ,純型,混合型には治癒切除 例が多く,先進部型には非治癒切除例が多かった と報告したほか,滝沢18)が高分化の症例を腫瘍全 体が高分化の群(39例)と先進部で分化度の低い 組織型をみる群(25例)の2群に分けて比較した ところ,後者では前者に比べてリンパ節転移陽性 例が多く,5年生存率が低率であったことを報告 し,腫瘍先進部における組織型に注目すべきであ ることを報告しているのみである.

 今回の検討では,大腸癌全体で高分化腺癌

84.9%,中分化腺癌7.2%,低分化腺癌2.8%,粘 液癌5.1%であり,結腸癌,直腸癌による頻度差は なかった.また,結腸癌,直腸癌のいずれの症例 においても全例主組織型より先進部組織型の方が より低分化の傾向にあり,しかも先進三組三型に 着目した場合,高分化症例は激減し,かわって中・ 低分化の症例が有意に増加しており,一方,主組 織型が高分化であった症例でも先進部組織型の低 分化に伴い,stage III以上の進行癌症例が多いこ とが注目された.さらに腫瘍の骨組織二一先進部 組織型の組み合わせでみた累積生存率は明らかに 先進部の組織型に左右され,さらに腫瘍病巣内で の主組織型と先進部組織型との格差が大きいほど 予後が悪化する危険性が示唆され,このことは腫 瘍のもつ生物学的悪性度を反映していることがう かがわれた.そこで先進部組織型に関係する因子 を検討するために,主組織型が高分化腺癌であっ た結腸癌135例と直腸癌78例に注目して臨床病理 学的因子との関係を検討すると,肉眼型,脈管侵 襲,局所浸潤増殖様式などとの関連は少なく,結 腸癌では籏出,直腸癌ではリンパ節転移の有無 壁深達度および籏出が関係する因子として挙げら れた.両方に関係している族出についてはもとも と今井19)が腫瘍実質の基本型を,(1)延伸発育型, (2)肥大発育型,(3)験出発育型の3つに分類し, 門出発育型は癌胞巣の厚さが小さく,平均して癌 細胞が2∼3個口幅に該当する細胞索状を呈する か,あるいは個々の遊離細胞状に発育するものと 定義し,さらに日出発育型を延伸発育型あるいは 肥大発育型から生じる続発性籏出型と原発性思出 型とに分け,前者は癌塊の最辺縁である発育先端 部に起こると説明しており,この発育先端部に存 在する未分化細胞の量が胃癌患者の予後や再発と 関係深い所見であることを強調している.最近の 報告では諸富20)が癌発育先進部において5個前後 の癌細胞が集族した小型腺管として,あるいは未 分化な癌細胞が孤立存在している所見を,あたか も大きな腺管から発芽するかのごとき様相から buddingと表現しており,著者が用いた西出の定 義はこれらのものとほぼ同一のものと考えられ る.長谷ら21)はこの特出がとりわけリンパ節転移 と強い相関を示している点,リンパ管侵襲よりも 早期にしかも高頻度に検出される点,さらに籏出 高度の症例は再発率も高く,累積生存率も低率で あることを強調している.先進部組織型が患者の 予後を大きく左右し,それに関与する因子として 従来より重要視されてきたリンパ節転移や壁深達 度のほかに籏出も重要な因子であることが示唆さ れた.  CEA(carcinoembryonic antigen)は分子量

18∼20万の糖蛋白で,1965年にGoldと

Freedman22)により報告された成人の大腸癌と胎 児の結腸粘膜に対する共通抗原成分として報告さ れて以来,血中CEAと大腸癌病理組織学的所見 との関連23)24),組織内CEAの定量25)26)など数多く の研究がなされてきた.大腸癌の免疫組織学的検 討に関してもCEAの染色性および局在性を中心 にこれまで多くの報告27)28)をみる.大腸癌組織に

おけるCEAの免疫染色陽性率は奥田ら29)が

97.6%,崎田ら30)が100%と報告しており,自験例 でも96.8%と高率に陽性であった.染色性の客観 的評価方法として,腫瘍の腺腔内,細胞質内,間 質における染色性と局在性を考慮した分類が一般 的で,CEAの染色が主としてapical borderのみ に限局したapical typeと細胞質内にも強い染色 性を示すcytoplasmic typeに分類して組織型と の比較検討を行った結果,中分化腺癌でapica1

(10)

borderのほか腫瘍細胞の細胞質内が染色され,低 分化腺癌では細胞質全体さらにIateral mem・ braneと細胞外周などにも認められるcytoplas・ mic typeが多いのに対して,高分化腺癌では主と して腺腔内のapical borderのみに局在する apical typeの頻度が高いとする報告が多い.しか し貴田31)は染色性と組織の分化度との間に差はな かったと結論づけており,またSchlagら32)や Heppner33)は腫瘍病巣内の個々の腫瘍細胞は不均 一で,CEAの局在も一つの病巣内に不均一性が認 められるとするなど,必ずしも一致した見解は得 られていない.今回著者はとくに腫瘍先進部の CEA染色性に注目し,岡田らの分類6)を参考に面 積的に優位な染色性と局在性をもって分類する と,腫瘍先進部においてもこれまでいわれてきた ようにapical borderに限局して陽性のものは高 分化腺癌が,また細胞質の管腔に面した一部分に も陽性所見を認めるものは中分化腺癌が,一方, 細胞質全体さらにはlateral membraneも染色陽 性のものは低分化腺癌が多い傾向にあることが示 された.統計学的に組織内CEAの染色性および 局在の先進部組織型への寄与を証明することは困 難であったが,その関連性については充分に確認 されたことからやはり生物学的悪性度を示す一助 となり得るものと考えられた。なお,今回使用し

たポリクローナル抗体はCEA関連抗原の

nonspeci丘。 cross−reacting antigen(NCA)をも 染色している可能性がある.しかしノーザンプ ロット法を用いてNCA mRNAの発現を検:討し た高橋ら34)の報告によれば大腸癌全例でCEAと 同様非八部に比べて三部に明らかに高い発現を認

め,少なくとも組織内ではCEAと同じく腫瘍

マーカーとなり得る可能性を示唆している.大腸 癌組織内でのCEA染色性と局在性を検討した今 回の結果は大腸癌の伸展状態を充分評価し得るも のと考えられるが,今後は分子生物学的手法を用 いた更なる検討が期待される。また各種モノク ローナル抗体を使用した岡田ら6)の報告で同一組 織内での染色性と染色部位はいずれの抗体にても まったく同じ結果であったことは,ポリクローナ ル抗体での染色性を評価し得るものの,今後複数 のモノクロ∼ナル抗体を併用することで複雑な CEAの全体像を多面的にとらえていく研究が望 まれる.  p53i蛋白質はSV40によってトランスフォーム

したマウス3T3細胞から大型T抗原と結合して

いる蛋白質として同定され,ヒトのp53遺伝子は 第17染色体短腕(17p13.1)に位置し,11のエクソ ンからなる全長約20kb,分子量約53,000の蛋白を コードする遺伝子である.またp53遺伝子には野 生型と変異型が存在して後者が癌遺伝子として の,前者が癌抑制遺伝子としての特徴を有するこ とが明らかにされた.p53は細胞質で合成され, Shaulskyら35》によれば,細胞周期と密接に関係し

ておりG1期に細胞質に集積したp53蛋白はS期

の早い時期に核へと移行して約3時間集積したあ と,核内ではp53をもはや観察することはないこ とを実験的に証明している.さらにp53が核内へ と移行するためには,p53内に特有の塩基性アミ ノ酸より成るNLS(nuclear localization signa1)

が必要であり,このNLSが欠損した野生型p53

はもはや癌抑制遺伝子としての特性をほぼ失い, 細胞核内に集積するという能力も減弱する結果, 細胞質内に局在することになる.Colledgeら36)も

p53がNLSを欠損した大型T抗原と結合した場

合,野生型p53は細胞質内にとどまるとしている. 一方,大型T抗原と結合することのない変異型 p53は細胞内に広汎に分布するheatshock pro− teinとしぼしば結合37)∼39)して安定化するため核 内での量も多いとされ,実際にZerrahnら40)が Balb/cマウスから誘導した細胞系の中で,その表

現型が大きくトランスフォームした3T3txや

Meth A細胞では変異型p53の約60%が細胞質

に,残りの40%が核内に存在したとしている.ま たMo11ら41)は炎症性乳癌の27例に対して著者ら が使用した抗体と同じ抗p53モノクローナル抗体 PAb1801を使用して免疫組織学的検討を行い,核 染を認めた8例(30%)の核酸分析を行ったとこ ろ,すべて変異型p53であったと結論している.  以上より,正常細胞におけるp53の発現を免疫 組織学的に証明することはむずかしく,突然変異 により半減期の延長した変異p53のみが染色され

(11)

る可能性が高く42),さらに突然変異による半減期 の延長43),また点突然変異を有する遺伝子産物(蛋 白)は核内への集積が遷延化するという特徴44}45), さらにはMilnerら46}の実験より細胞内濃度が高 くなった変異型p53蛋白質は野生型p53蛋白質と 複合体を形成し,野生型p53の機能を阻害し不活 化するという観点から,免疫組織学的検討では腫 瘍細胞により野生型と変異型の両方が発現し,核, 細胞質の両方が染色される可能性があるものの, 高濃度のp53が検出されたならぽp53遺伝子の突 然変異が存在し,かつ変異型p53の集積が強い可

能性が示唆される.著者が使用したOncogene

Science社の抗ヒトp53モノクローナル抗体

(PAb1801)は正常,異常両方のp53とも反応する 抗体とされるが,これまでの所見から変異型p53 が染色されている可能性が高いことがうかがわれ た.  これまで知られている多くの核蛋白と同じよう にp53の免疫染色も通常のパラフィン切片での染 色はなかなか難しい.凍結切片での報告が多いも のの,その取扱いは煩雑で,組織や細胞レベルで の微細構造を検討するには難点がある.今日では 組織の形態保持にすぐれ,抗原性の保存も良好と いわれるmicrowave照射固定法47)によるパラ フィン切片上でのp53染色やホルマリン固定でも 反応するポリクローナル抗体NCLp53−CM1を使 用した報告42)がみられる.著者はAMeX法およ び形態の保持という面では難点があるものの, 37℃にて伸展したホルマリン固定パラフィン包埋 切片両方でのp53染色を行い,染色程度の強い方 を採用した.明らかに陽性と考えられる①群は大 腸癌全体で58.8%で占拠部位別での有意差はな く,また大腸癌で60%前後42)47)48)との報告が多い p53陽性率と大差ない結果を得た.今回, p53の染 色度の評価にホルマリン固定パラフィン包埋切片

とAMeX切片の両方から標本を作製したが,染

色度の不一致例が26.5%にも達したことは注目す

べきであり,しかもAMeX切片を用いた染色の

方がp53に対する感度が良好であると思われた. p53の発現程度と大腸癌取扱い規約に挙げられる 各病理学的因子との関係を検討した今回の結果か ら壁深達度ss以上の進行癌に:おいてp53陽性率 が有意に高率であるものの,ほかの病理学的因子 との関連性は少なく独立した因子と考えられ,し かも先に示したように患者の予後に寄与する先進 部組織型に最も大きく関与する因子と考えられる ため,p53の発現に関する検索は大腸癌の予後規 定因子の一つとして重要な意味をもつものと考え られた.          結  論  1.外科的切除を施行した大腸癌のうち,同時性 肝転移および腹膜播種症例を除く251例(結腸癌 158例,直腸癌93例)および手術時新鮮材料が入手 可能であった34例を対象に,腫瘍の主組織型一先 進部組織型の組み合わせにより大腸癌患者の予後 に関する検討を行った.  2.腫瘍先進部ほど分化度は低い傾向にあり,腫 瘍主組織型一先進部組織型の組み合わせと予後と の関連を比較すると先進部の組織型が低分化に近 づくほど累積生存率は不良であり,患者の予後は 有意に低下した.  3.腫瘍の先進部組織型に関与する病理学的因 子として結腸癌では籏出,直腸癌ではリンパ節転 移の有無,壁深達度および籏出が挙げられた.  4.CEA染色およびp53の発現に関する免疫組 織学的検討を行い,患者の予後を大きく左右する と考えられる腫瘍の先進部組織型に寄与する因子 を他の病理学的因子とともに多変量解析を用いた 検討を行うと,組織内p53の発現が最も大きく関 与する可能性が示唆された.  稿を終えるにあたり,御指導,御校閲を賜りました 小林棋雄教授に心より感謝致します.また本研究に御 助言,御指導を頂きました教室の諸先生方ならびに消 化器病センターの諸先生方に厚く御礼申し上げます.          文  献  1)大腸癌研究会編:大腸癌取扱い規約,改訂第4版.   東京,金原出版(1985)  2)Sato Y,粥ukai K, Watanabe S et al:The   AMeX method, Simpli丘ed and technique of   tissue−processing and para岱n−embedding with   improved preservation of antigens for im−   munostaining. Am J Pathol 125:431−435,1986  3)Sato Y, Mukai K, Matsuno Y et a亘:The

(12)

  AMeX method. A multipurpose tissue・   processing and para伍n・embedding method. II.   Extraction of spooled DNA and its application   to Southern blot hybridization analysis. Aln J   Pathol 136:267−271,1990 4)Sato Y, M櫨ai K, Furuya S et a1: The   AmeX method. A muitipurpose tlssue process.   ing and para缶n−embedding method. III. E翼trac−   tion and purification of RNA and application   to slot−blot hybridization analysis. J Pathol   163:81−85, 1991 5)Sato Y, Mukai K, Furuya S et a1: The   AMeX method. A multipurpose tissue・   processing and paraf五n・embedding method. IV.   Extraction of protein and apPlication to im−   munoblotting. Am J Pathol 140:775−779,1992 6)岡田郁子:各種抗CEA(Carcinoembryonic   Antigen)抗体による大腸癌の原発巣および転移   巣の免疫組織学的比較検討.日本大腸肛門病会誌   43:144−152, 1990 7)林知己夫,駒沢 勉:数量化理論とデータ処理.   pp49−88,朝倉書店,東京(1982) 8)Dukes CE: The classification of the cancer of   the rectum. J Pathol Bacteriol 35:323−332,   1932 9)Astler VB, Coller FA: The prognostic   signi丘cance of direct extension of carcinoma of   the cOlon and rectum。 Ann Surg 139:846−851,   1954 10)Union Intemationale Contre Cancer=TNM   CIassication of Malignant Tumors, pp69−76,   International Union Against Cancer, Geneva   (1978) 11)Dukes CE:Cancer of the rectum:An a龍aly−   sis of 1000 cases. J Pathol 50:527−539, 1940 12)Newland RC, Chapuis PH, Phei監s MH: The   relationship of survival to staging of colorectal   carcinoma:Aprospective study of 503 cases.   Cancer 47:1424−1429, 1981 13)大腸癌研究会:全国大腸癌登録調査報告 第3号   昭和53年,54年度症例.pp10−11,大腸癌研究会   (1988) 14)荻原裕之,馬場正三,照沼秀也:大腸癌の疫学と   Risk factor.診断と治療 79:671−678,1991 15)山田栄吉,山田満昭,加藤王千ほか:病理組織学   的立場からみた直腸癌再発の特殊性について.最   新医学 33:2111−2118,1978 16)MuHay D, Hreno A, Dutton J et al: Progno・   sis in colon cancer. Arch Surg 110:908−913,   1975 17)飯田 明:大腸癌の組織型と治療成績とくに高分   化腺癌と中分化腺癌との生存率の違いについて.   日本大腸肛門病会誌 43:533−541,1990 18)滝沢 建:直腸癌の予後因子に関する病理組織学   的研究一組織型と細胞性間質反応を中心に一.日   本大腸肛門病会誌 42:190−201,1989 19)今井 環:人体癌腫発育状況の形態学的考察。福   岡医誌 45:72402,1954 20)諸富立寿:進行直腸癌における臨床病理学的研究   一日前生検材料からみたリンパ節転移程度の予測   一.日外会誌 89:352−364,1988 21)長谷和生,望月英隆,小池聖彦ほか:直腸癌にお   ける腫瘍籏出の予後規定因子としての意義に関す   る検討.日中外会誌 25:2765−2772,1992 22)Gold P, Freedman SO:Demonstration of   tumor speci丘。 antigens in human’co玉onic car−   cinoma by im狽unological tolerance and   absorption techniques. J Exp Med 121:   439−463, 1965 23)多淵芳樹,出機浩之,斉藤洋一ほか:大腸癌にお   ける血中CEA上昇関連因子に関する臨床病理学   的研究一門脈血ならびに末梢血中CEA測定結果   からの検討一.区外会誌 87:1540−1547,1987 24)出ロ浩之,多淵芳樹,斉藤洋一:大腸癌における   腫瘍関連抗原CEAとCA19・9の血中移行機序に   関する臨床病理学的・免疫組織化学的研究.日外   会誌 5:671−683,1988 25)Martin F, Mirtin MS:Radioimmunoassay of   carcinoembryonic antigen in extracts of human   colon and stomach. Int J Cancer 9:641−647,   1972 26)遠藤健:大腸癌における組織carcinoem−   bryonic antigenの研究.日二親会誌20:   2168−2177, 1987 27)下山孝俊,福田 豊,草野裕幸ほか:大腸癌患者   における門脈血中Carcinoembryonic Antigen   (CEA)について一腫瘍内CEA量と免疫組織化学   的染色との関連一.癌と化療 15:2245−2250,   1988 28)東郷杏一,奥野川副,鄭 容錫ほか:大腸癌にお   けるCEAおよびSPan・1抗原の免疫組織学的検   討.日本大腸肛門病会誌 44:177−183,1991 29)奥田康一,小平 進,渡辺昌彦ほか:大腸癌にお   けるCA19−9とCEAの腫瘍マーカーとしての意   義一血清値と組織内分布との対比一.日癌治療会   誌 21:969−977,1986 30)崎田隆一永山剛久:adenoma−carcinoma   sequenceに関する免疫組織化学的研究. Gas−   troenterol Endosc 31:2573−2583,1989 31)貴田誠:大腸癌大腸ポリポリープにおける上   皮性marker antigenの免疫組織学的検討.京府   医大誌 92:205}2059,1983 32)Schlag P, Scbreml W l Heterogeneity in   growth pattern and drug sensitivity of primary

(13)

   tumor and metastases in the human tumor    colony forming assay. Cancer Res 42:    4086−4089, 1982 33)Heppner G:Tumor heterogeneity. Cancer、    Res 44:2259−2265,1984 34)高橋裕樹,東出俊之,伊藤 淳ほか:大腸癌にお    けるCEAおよびCEA関連遺伝子の発現.消化器     と免疫 23:228−232,1989 35)Shau亘sky G, Gold血nger N, Ben・Ze,ev A et al:    Nuclear accumulation of p53 protein is mediat−    ed by several nuclear loca董ization signals and    plays a role in tumorigenesis. Mol Cell Biol    10:6565−6577, 1990 36)Colledge WH, Richadson WD, Edge MD et    a1:Extensive mutagenesis of the nuclear    location signal of simian virus 401arge・T    antigen. Mol Cell Biol 6:4136−4139,1986 37)Pinhasi・K:imhi O, M童chalovitz D, Ben・Ze.’ev A    et al.: Specific interaction between the p53    cellular tum6ur antigen and major heat shock    proteins, Nature 320:182−185, 1986 38)Hinds PW, Finlay CA, Frey AB et ah Im・    munological evidence for the association of p53    with a heat shock prote重n, hsc70, in p53・plus・    ras・transformed cell Ilnes. Mol Cell Biol 7:    2863−2869, 198.7 39)F童nlay CA, Hinds PW, Tan TH et a1:    Activating mutations for transformation by    p53 produce a gene product that forms an    hsc70・p53 complex with an altered half−llfe,    Mol Cell Biol 8:531−539,1988 40)Zerrahn J, Deppert W, Weidemann D et a1:    Correlation between the conformational    phenotype of p53母nd its subcellu正ar location・    Oncogene 7:1371−1381, 1992 41)Moll UM, Riou G, Levine AJ: Two distinct    mechanisms alter p53 in breast cancer:Muta−    tion and nuclear exclusion. Proc Nat玉Acad Sci    USA 89二7262−7266,1992 42)湯川雅彦,藤盛孝博,里中和廣ほか:大腸腫瘍に    おける癌遺伝子,癌抑制遺伝子の免疫組織学的検    討一.とくに表面型腫瘍の特異性について一.日本    大腸肛門病会誌 45:196−201,1992 43)Weinberg RA:Tu:nor suppressor genes. Sci−    ence 254:1138, 1991 44)Ucbino S, Noguchi M., H量rota T et a1: High    incidence of nuclear accurnulation of p53 pro−    tein in gastric cancer. JPn J CIin Oncol 22:    225−231, 1992 45)Hiyoshi H, Mats皿no Y, Kato H et al:    C星量nicopathQlogical significance  Qf nuclear    accumulation of tumor suppressor gene p53    product in primary lung cancer, JPn J Can R6s    83:.101−106, 1992 46)Mil皿er J, Medcalf. EA: Cotranslation of    activated mutant p53 with wild type drives the    wild・type p53 protein into the mutant confor一    田ation. Cell 65:765−774, 1991 47)門田卓士,森元秀起,中西弘幸ほか:癌抑制遺伝    子p53について.日本大腸肛門病期誌44:    1206−1213, 1991 48)山口明夫,伏田幸夫,黒阪慶幸ほか:大腸腫瘍に    おける癌抑制遺伝子p53の発現と悪性度.日外会    言志  93:1312−1316, 1992

参照

関連したドキュメント

単変量解析の結果,組織型が境界域ではあった

直腸,結腸癌あるいは乳癌などに比し難治で手術治癒

 6.結節型腫瘍のCOPPとりこみの組織学的所見

の多くの場合に腺腫を認め組織学的にはエオヂ ン嗜好性細胞よりなることが多い.叉性機能減

23mmを算した.腫瘤は外壁に厚い肉芽組織を有して

実際, クラス C の多様体については, ここでは 詳細には述べないが, 代数 reduction をはじめ類似のいくつかの方法を 組み合わせてその構造を組織的に研究することができる

・Squamous cell carcinoma 8070 とその亜型/変異型 注3: 以下のような状況にて腫瘤の組織型が異なると

 プログラムの内容としては、①各センターからの報 告・組織のあり方 ②被害者支援の原点を考える ③事例 を通して ④最近の法律等 ⑤関係機関との連携