病理学的に血管炎は,血管構築の障害を呈する血管の炎 症と定義される。血管炎は,小型の血管(小動静脈,毛細血 管)にみられることが多いが,大型・中型血管を特異的に障 害するものもある。血管炎には発症機序,組織所見など種々 の重複があり,疾患単位としての分類は困難な場合が多 い1,2)。汎用される Chapel Hill 分類は 2012 年に改訂された が(詳細は他稿を参照)3),大型・中型血管の定義(特に腎 臓)が明確にされ,大型・中型の血管炎でも小血管炎を合併 しうることに注意が喚起された。これにより,2 つの異な る血管炎の合併(特に結節性多発動脈炎と顕微鏡的多発血 管炎)についての混乱が解消された。新分類は血管炎の拡が りについて含みを持たせることにより,血管炎の臨床組織 像の特徴をより明瞭にすると期待される。 本稿では血管の組織を簡単に述べ,血管炎の基本的な組 織像を概説する。 1.一般的な血管の構造4,5) 内膜(intima),中膜(media),外膜(adventitia)から成る。 内膜は,1 層の内皮細胞と内皮下組織(コラーゲン線維,弾 性線維,平滑筋,一部マクロファージ)から成り,中膜とは 内弾性板(弾性線維の集合体)により境界される。中膜は, 平滑筋,結合組織,弾性線維からなり,外膜とは外弾性板 により区画される。外膜は,結合組織,線維芽細胞,神経 線維や,血管を養う小血管から成る(表)。 はじめに 血管の正常組織 2.動脈の構造 動脈は,大きさと中膜の状態から,大型/弾性動脈,中 型/筋型動脈,小/細動脈の 3 つに分類される。大型動脈(図 1a)は,中膜が厚く,30∼50(∼70)層に及ぶ有窓性の弾性板 があり,その間に平滑筋,コラーゲン線維や細胞外基質が 存在する。内弾性板は,中膜の弾性板の最内層にあたり, 不連続で,中膜との境界は明瞭ではない。中型/筋型動脈 (図 1b)は,平滑筋を主体とした中膜が発達した動脈であ る。内膜は薄く,内皮細胞と基底板と薄い内膜下組織より 成る。小動脈と細動脈は類似した構造を持つが,中膜平滑 筋の厚さで区別される。後者は 1∼2 層,前者はそれ以上 で最大 8 層(10 層)程度である。両者とも筋型動脈と同様に 中膜には平滑筋が発達し,外膜は薄い結合組織のN で覆わ れ,外側の線維と融合する。細動脈では内弾性板は不連続 でないこともある。腎内動脈(図 1c)は,腎動脈→4∼5 本 に分岐→葉間動脈(腎柱と腎錐体の間を上行)→弓状動脈 (皮髄境界を走り,直角に小葉間動脈を分岐)→小葉間(→分 岐)→細小動脈→糸球体→輸出動脈→傍尿細管毛細血管(皮 質),直血管(皮髄境界)→小・小葉間・弓状・葉間静脈→腎 静脈となる。腎内の動脈はすべて中型動脈以下である。葉 間動脈の平滑筋層は 8∼12 層程度であり,組織上は小動脈 と中型動脈の境界にある。 3.毛細血管 内皮細胞と基底膜から成り,周皮細胞が周囲を取り囲む。 4.静 脈 中膜の発達に乏しい。小型静脈には中膜は存在しない。 中膜の平滑筋は斜走およびラセン状に走行し,筋束の間に 結合組織が目立つが弾性線維は少ない。外膜は発達し,腎 内の大型の静脈には外膜に平滑筋の束が走行する。 5.Chapel Hill 分類における血管の定義 血管の分類や定義は教科書により異なる。さらに大型動 筑波大学医学医療系腎・血管病理
血管炎の病理
Pathology of vasculitis
上
杉
憲
子 長
田
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Noriko UESUGI and Michio NAGATA特集:血管炎
表 血管組織 相当する血管 (Chapell Hill 分類) 相当する血管 外膜 中膜 内膜 直径* 血管 大動脈,腕頭,総頸,外 頸,内頸,肺,鎖骨下, 総腸骨動脈,腎,腹腔, 上・下腸間膜上腕,内外 腸骨,大腿,膝窩動脈 大動脈 腕頭,総頸部 (外頸,内頸),肺 鎖骨下,総腸骨動脈 結合組織 弾性線維 中膜より薄い 平滑筋 弾性板 内皮細胞 結合組織 平滑筋 >1 cm 大型動脈 (弾性動脈) 大動脈から臓器や筋組織 へ分布する血管とその分 枝 臓器内の太い血管 冠状動脈 腎動脈とその分岐(含む 腎実質内) 葉間動脈 大動脈から臓器や筋組 織へ分布する動脈 (外頸,内頸) 冠状動脈 腎動脈とその分枝 (腎実質外) 結合組織 多少の弾性線維 中膜より薄い 平滑筋 コラーゲン線維 少量の弾性組織 内皮細胞 結合組織 平滑筋 明瞭な内弾 性板 2∼10 mm (0.5∼10 mm) 中型動脈 (筋型動脈) 弓状動脈 小葉間動脈 葉間動脈 弓状動脈 小葉間動脈 結合組織 多少の弾性線維 中膜より薄い 平滑筋(8∼10 層 程度まで) コラーゲン線維 内皮細胞 結合組織 平滑筋 明瞭な内弾 性板 0.1∼2 mm 小型動脈 輸入輸出動脈 小葉間動脈 輸入輸出動脈 小葉間動脈 薄い結合組織の 不明瞭な鞘 平滑筋 (1∼2 層) 内皮細胞 結合組織 平滑筋 10∼100μm (30∼200μm) 細動脈 傍尿細管毛細管(皮質) 直血管(髄質) 傍尿細管毛細管(皮質) 直血管(髄質) なし なし 内皮細胞 (周皮細胞) 4∼10μm (<10μm) 毛細血管 なし なし 内皮細胞 周皮細胞 10∼50μm (10∼30μm) 毛細血管後 細静脈 小葉間静脈 小葉間静脈 結合組織 多少の弾性線維 中膜より厚い 平滑筋 (1∼2 層) 内皮細胞 周皮細胞 50∼100μm 筋細静脈 小葉間静脈 弓状静脈 小葉間静脈 弓状静脈 結合組織 多少の弾性線維 中膜より厚い 平滑筋 (2∼3 層で) 内膜より連続) 内皮細胞 結合組織 平滑筋 (2∼3 層) 0.1∼1 mm (>50μm) 小静脈 葉間静脈 腎静脈の分岐 葉間静脈 腎静脈と腎静脈の分岐 結合組織 多少の弾性線維 中膜より厚い 平滑筋 コラーゲン線維 内皮細胞 結合組織 平滑筋 ときに内弾 性板 1∼10 mm (1∼10 mm) 中静脈 動脈とほぼ同じ 腎静脈 動脈とほぼ同じ 門脈 結合組織 多少の弾性線維 平滑筋 中膜より厚い 平滑筋(2∼15 層) 発達が悪い コラーゲン線維 心筋線維(心臓周囲) 内皮細胞 結合組織 平滑筋 >1 cm (3 cm) 大静脈 *:( )内は異なる教科書の記載
脈と中型動脈との組織学的境界は明瞭ではない。これを反 映して,Chapel Hill 分類では,大型動脈と中型動脈の分類 に重複がある(表)。 小血管炎は,原因を問わず組織変化は類似し,年齢,臨 床症状や検査所見が組織診断の際に重要な役割を果たす。 大型・中型の血管炎では,病理所見よりむしろ年齢,特徴 的な臓器症状や画像所見がより重要な診断根拠となる。 1.年 齢 血管炎の多くは中高齢者以降の疾患が多いが,高安病6), 巨細胞性動脈炎7)や川崎病8)は小児から若年成人に多く,結 臨床所見の重要性 節性動脈周囲炎では年齢的に二層性に分布し,小児報告例 (7∼11 歳)も多い11)。Henoch Schönlein 紫斑病,膠原病など も小児に多い血管炎である8)。 2.血管の障害部位と症状,画像所見 大型・中型血管の血管炎には特異的な分布があり,障害 血管の場所により特徴的な臓器症状が出現する。巨細胞性 動脈炎7∼11)では,視野狭窄欠損,顎跛行,側頭部の波動, 頭痛,非特異的だが臓器の虚血症状(心筋梗塞,腹痛,血 便,腎梗塞)が前景に出る。血管造影(高安病での大動脈の 拡張や大動脈弁の変化6),川崎病での冠動脈8),結節性動脈 周囲炎での腎動脈の瘤状変化11)はそれだけで診断価値があ る。 血管 有髄神経 コラーゲン 線維 平滑筋 内皮細胞 基底板 内膜 中膜 外膜 弾性板 内弾性板 内膜 中膜 外膜 コラーゲン線維 弾性線維 無髄神経 血管 弾性板 平滑筋 外弾性板 基底板 内皮細胞 (M. Gännsslen) 葉間動脈 直血管 ※ △ a. b. c. 無髄神経 マクロファージ 線維芽細胞 輸入細動脈 細網線維+ 細いコラーゲン 線維 平滑筋 線維芽細胞 コラーゲン 線維 △小葉間動脈 ※弓状動脈 図 1 a:大型/弾性動脈,b:中型/筋型動脈の模式図,c:腎内動脈の模式図 a:大型/弾性動脈では中膜に弾性板や細網線維,コラーゲンなどが目立つ。平滑筋は発達が悪いが, 隣接する平滑筋とは密に接している。内弾性板は中膜弾性板の続きであり,明瞭ではない。 b:中型/筋型動脈では,中膜平滑筋が発達し,互いに連結し合い,輪状に走行する。弾性線維やコラー ゲンは少ない。内弾性板と外弾性板は明瞭である。(a,b:文献 1 より引用,改変) c:腎内動脈は,葉間動脈→弓状動脈→小葉間→細小動脈(輸入細動脈)→糸球体→輸出動脈→傍尿細管 毛細血管(皮質),直血管(皮髄境界)と走行する。葉間動脈と弓状動脈は連続し,明確には分けられ ない。小葉間動脈と弓状動脈はその太さが部位により異なるため,太さによる血管の分類は難しい。 (M. Gännsslen 作図,www.anatomy.med.keio.ac.jp/funatoka/anatomy/Rauber.../190.html)
3.薬 剤 抗甲状腺薬やヒドララジン,抗 TNFα薬などの薬剤性の 血管炎で ANCA 関連や好中球の機能異常などが強く示唆 され12),さらに ANCA 関連の薬剤性血管炎も増えている。 ミノサイクリンで結節性多発動脈炎様の血管炎が報告され ている13)。薬剤誘発性血管炎の標的は皮膚小血管であるが, 一部は腎や肺を侵し,蛋白尿や血尿,腎機能障害を引き起 こす。病理像は,ANCA 関連血管炎や結節性多発動脈炎と 明らかな差はなく,服用歴が診断の決め手となる。 4.膠原病関連の血管炎 光顕像では一般の血管炎との明らかな差はない。 5.その他 結節性多発動脈炎は B 型肝炎との関連が指摘されてい る11,14)。インフルエンザワクチン接種後では,結節性動脈 周囲炎15),好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(eosinophilic granulomatosis with polyangiitis,Churg-Strauss 症候群),皮膚 白血球破砕性血管炎,Henoch Schönlein 紫斑病が報告され ている。 血管炎は,内皮細胞と平滑筋の障害像とその修復像が組 織変化の主体である1,2)。内皮は,抗血栓,抗炎症性,平滑 筋の増殖や維持,収縮性の反応に深くかかわっている。炎 症により内皮細胞間の結合が緩むと,電解質,蛋白が漏出 し組織障害を起こす。高度の血圧の変化や血流の変化(乱流 やうっ滞),凝固因子の異常など血管炎以外の変化でも内皮 障害が起こり,悪性高血圧や血栓性微小血管病変,コレス テロール塞栓ではフィブリンの析出や血栓,炎症細胞浸潤 を含め血管炎と似た変化を起こす2)。内皮細胞の消失や変 性を契機に,platelet derived growth factor(PDGF),fibroflast growth factor(FGF),interferon-gamma,endothelin が産生さ れ,平滑筋や線維芽細胞が増殖し,コラーゲンやエラスチ ンや基質を産生し,血管が修復される。修復機転は組織的 には内膜肥厚という形をとるが,どのような血管障害にも 同様の反応が起こる。 1.血管炎の種類による組織学的な差 多くの血管炎は組織学的には類似している。血管炎の種 類により,炎症細胞の種類や障害部位が異なる。移植によ る血管炎では,炎症細胞浸潤も少なく,フィブリン形成が 血管炎組織総論 血管炎の特殊性 少なく,弾性板の断裂も少ない。大型・中型の血管炎では, 内膜より中膜や外膜あるいは血管の血管がそのターゲット となり,しかも好中球の関与が少ない。 2.時 期 血管炎は活動期と慢性期で所見が異なり,慢性期では動 脈硬化症などとの鑑別が難しい。 3.分節性 血管炎は分節性に起きることが多く,生検では診断が困 難なことがある。 4.炎症の場 通常の血管炎では炎症は内膜から始まり(内膜炎),全層 性となるが,大型の動脈炎では外膜,中膜,その移行部や vaso vasora(脈管の脈管)を標的とした炎症が観察されるこ とが多い(図 2)。静脈を含む多彩な血管炎を示すときは ベーチェット病 Behçet’s disease を疑う必要がある。 5.一次性変化と二次性変化 直接的な血管自体の障害(一次性変化)と障害された血管 による二次性の組織変化がある。生検では観察する範囲が 限られており,二次性の変化のみがみられることがある。 閉塞や虚血などによる梗塞や組織壊死がその典型である (後述)。ただし,二次性の変化は血管炎以外でも起こるこ とより,それのみで診断されるべきではない。 6.免疫複合体が関与する血管炎 C3,IgG,IgM,IgA の沈着が知られている。ループス血 管炎では,IgG や C3 が皮膚の表皮基底膜あるいは有極細 胞の核に陽性となる。Henoch Schönlein 紫斑病では IgA が, クリオグロブリン血症性血管炎では特にリウマチ因子が高 いときには IgM が血管壁や糸球体に陽性となる。 1.血管炎そのものによる変化(急性) 1)炎症細胞浸潤 時期により出現する細胞が異なることに注意する。 好中球主体:皮膚の小血管炎は,原因を問わず核塵を伴 い,好中球が浸潤する皮膚白血球破砕性血管炎の形態をと ることが多い(図 3a)16)。ほとんどすべての小血管炎と結節 性多発動脈炎(図 4)では,皮膚白血球破砕性血管炎ほどで はないが活動期に好中球の浸潤を認める。慢性化するとリ ンパ球,組織球が主体となる(図 3b)。好中球が非常に多い ときは感染など血管炎以外の病態を疑う。 好酸球主体:好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(Churg-Strauss 症候群)((図 3c,d)(ときに好中球が主体のものもあ 血管炎の一般的病理組織学的変化
る)14)。若年性側頭動脈炎。膠原病の血管炎。寄生虫による 血管炎。 リンパ球や組織球主体:高安病,巨細胞性動脈炎(図 2c),川崎病。結節性多発動脈炎の一部。リケッチアやウイ ルスによる血管炎。ある種の薬剤性血管炎,graft-versus-host disease,膠原病(Sjögren 症候群やループス血管炎), 図 2 巨細胞性動脈炎の 2 例(a,b と c∼f)の側頭動脈生検
a,c(EVG 染色),b,d∼f(HE 染色)。障害の主体が内膜にないことが特徴。I:内膜,M:中膜,Ad:外膜。 a,b:外膜を中心とした炎症細胞浸潤を認める。外弾性板はびまん性に消失している。内腔は赤血球血栓によ り閉塞し,弾性板が一部で断裂している。 c∼f:内・外弾性板はほぼ消失し,中膜を主体とする炎症細胞浸潤を認める(f)。内膜は反応性に,筋線維芽細 胞から成る粗な結合組織が増殖・肥厚し(e),内腔を狭窄している。中膜には炎症細胞浸潤が著明で,巨細胞 の浸潤を認める(f)。 b a d c f e
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図 3 種々の細胞浸潤 a,b:好中球,皮膚,白血球破砕性血管炎(紫斑病),c,d:好酸球,腎臓,好酸球性多発血管炎性肉芽腫症, e:肉芽腫,肺,サルコイド血管炎。 a:白血球破砕性血管炎細小血管の内外に好中球の浸潤を認める。フィブリンは見られない。内皮は腫大して いる(→)。 b:白血球破砕性血管炎の慢性期。少量のリンパ球の浸潤と線維化が見られ,内腔(I)が,線維筋細胞の増殖に より高度狭窄している。周囲には多数の新生毛細血管の出現を認める(→)。 c, d:好酸球性多発血管炎性肉芽腫症では多数の好酸球の浸潤を間質に認め,糸球体には壊死を認める。糸 球体への好酸球の浸潤は通常それほど目立たない。 e, f:サルコイドーシスでは,通常は間質に血管炎とは関係ない肉芽腫が見られるが,この例では,血管周 囲に多核巨細胞を主体とする肉芽腫の形成を認め,血管壁が断裂し,サルコイド血管炎が疑われる。 b a d c f e
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Behçet 病。 肉芽腫や多核巨細胞:側頭動脈炎(図 2),高安動脈炎。 多くの血管炎ではときに少量の多核巨細胞や肉芽腫を血管 の壁や周囲に認める(図 4c)。血管炎と関係がない間質肉芽 腫(interstitial/extravascular granuloma)は,多発血管炎性肉芽 腫症や好酸球性多発血管炎性肉芽腫症にときにみられる。 サルコイドーシスは,通常,間質に非乾酪性の肉芽腫を認 めるが,血管炎でときに肉芽腫の形成(図 3e,f)も報告され る。 2)フィブリノイド壊死 フィブリン様物質が生じる壊死で,血管炎早期に出現し, 血管炎に誘発された壊死として定義されることが多い(図 5b)。フィブリン様物質とは,組織学的には好酸性,一様 で,屈折性を持ち,変性したコラーゲンや基質,あるいは 変性したフィブリンを主体に種々の血漿成分(免疫グロブ リンなど)が滲み込み形成される変性物で,同義語は類線維 素変性,線維素様変性,フィブリン様変性。フィブリンは HE 染色で好酸性(明るいピンク,図 6 d),PTAH 染色(紫) や MT 染色(赤,図 6b)となる。PAS 染色はフィブリンの同 定には不向きである。 3)内皮障害と壊死 内皮細胞腫大(図 3a),核の濃染化,異型核,内皮細胞の 消失 /離,アポトーシス,核破砕像の出現,壊死がみられ る。内皮細胞は@ 平で薄く, /離や消失の同定は難しいが, 内膜が浮腫の場合は内皮細胞障害を疑う(図 6d)。 4)内外弾性板の断裂 細小動脈は,内弾性板は不連続か存在しないため,断裂 と混同しない。 5)中膜の弾性線維の断裂や平滑筋の壊死や消失 弾性線維や弾性板は,HE,PAS,PAM 染色では確認でき ず,EVG 染色で確認する。大型・中型血管などの中膜・外 膜障害主体の血管炎では必須である。平滑筋の同定も特に 図 4 結節性多発血管炎の組織 胃穿孔,虚血性大腸炎,脾梗塞を認めた症例。大腸の固有筋層下(a,b)に中型・小型動脈の血管炎を認める。 内腔は線維性に閉塞し,内部に新生血管が出現し,再疎通を認める。脾臓も多くの中型血管が壊死し,一部に 多核巨細胞を認める(c)。脾臓は広範な梗塞(黄色部分)を認める(d)。 b a d c
太い血管ほど難しく,免疫染色などで使用したほうがわか りやすい。 6)血栓 血球成分と血液凝固系反応の最終産物であるフィブリン より成り,白色血栓(血小板+フィブリン),赤色血栓(フィ ブリン+赤血球),血小板血栓,フィブリン血栓と分類され る。血栓は大型の血管炎では肉眼的に同定され,組織では 血栓以外の血球塊との鑑別はつきにくい。フィブリン血栓 は小型血管にできる。 図 5 ANCA 関連血管炎の末 W神経生検 神経周囲(N)の比較的大きい血管にフィブリノイド壊死を認める(a∼c)。内弾性板は消失し,血管周囲にも炎 症細胞浸潤が目立ち,脂肪組織へも浸潤している(a,b)。小型血管 d∼f にも変化を認め,血管壁に活動性の炎 症を認め(d),内膜が細胞増殖により肥厚し,内腔が狭窄している(e,f)。後者では弾性板が消失しており,血 管炎があったことが示唆される。I:内膜,,M:中膜,Ad:外膜
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b a d c f e2.血管炎そのものによる変化(修復期,慢性期) 平滑筋,(筋)線維芽細胞の増殖や結合組織の産生により 内膜肥厚,中膜や外膜の線維化が起こる。その結果,内腔 の狭窄,閉塞や再疎通が起こる。血管壁の脆弱化により, 中型・大型動脈では動脈瘤の形成に至る。慢性期の組織は 動脈硬化症と鑑別が難しい。 図 6 糸球体の血管炎 PAM-HE 染色(a)では多量のフィブリンを伴った半月体の形成を認める。フィブリンは MT 染色でより明瞭と なる(b)。c,d では,PAM 染色でみられるように係蹄の断裂があり,フィブリンの析出が見られ,HE では好 酸性のフィブリンが見られる,核破砕像を伴っている。ややメサンギウムの拡大をみる。e では断裂した係蹄 内には管内の細胞増多が見られ,周囲は上皮細胞の反応性に増殖している。ボウマン *が破綻している。 f は弓状動脈レベルの血管炎。内皮下が開大し,浮腫状である。内皮の同定は難しい。 b a d c f e b a d c f e
3.二次性変化(急性期) 血管周囲組織での赤血球血管外遊走,核破砕像,炎症細 胞浸潤。 組織障害:壊死や梗塞(心筋梗塞,虚血性腸炎,脳梗塞,腎 梗塞)(図 4d)。 4.二次性変化(慢性期) 血管外の組織に線維化や新生血管の増殖を認める(図 3b)。 1.皮膚白血球破砕性血管炎 核塵を伴う好中球を主体とした血管炎で,血栓やフィブ リノイド壊死は比較的少ない。多数の要因があり,形態診 断名にとどまることに注意する。 2.半月体 半月体は,ボウマン *上皮が少なくとも 2 層を呈する増 殖と定義され,非特異的な糸球体係蹄の高度障害の組織反 応である。他の腎炎や腎硬化などでも出現する。その機序 は,内皮細胞の障害による基底膜の断裂や,流出した血漿 や血球によるボウマン *上皮の障害により,Th1 リンパ球, 組織球,炎症性サイトカイン,血漿成分,凝固因子などが 関与し,ボウマン *上皮が増殖する。足細胞は,分化の終 末細胞で半月体を形成しないとされてきたが,ボウマン * 上皮から分化した新しい足細胞が半月体形成にかかわると もいわれる。半月体には,周辺からマクロファージ,リン パ球を含む炎症細胞,線維芽細胞などが流入し線維化が起 こる。半月体は細胞と線維の割合で,細胞性,線維細胞性, 線維性と分類されるが,診断者間の差が指摘されている。 2010 年の EVUS グループが出した分類17)では,半月体は細 胞性と線維性の 2 つに分類された。細胞性半月体は 10 %以 上の細胞成分(細胞の種類は問わない)と定義され,線維化 が進んだものも含まれ,急性期の病変を必ずしも反映しな い。また,この分類では半月体のなかにこれまで半月体か 否か診断者間の差が大きかった病変,混入したフィブリン, ボウマン *の破綻により糸球体外から流入した細胞やそれ による肉芽腫の形成,結合性の少ない糸球体上の足細胞の 増殖なども含む。これらは,定義や発生機序からこれまで の半月体とは異なるが,血管壁の破綻が起こす強い糸球体 障害として,半月体と同様,腎予後を予測する因子として 1 つにまとめたことは画期的である。 障害部の係蹄には内皮腫大や炎症細胞浸潤が出現し,管 内増殖様に見える。係蹄の高度虚脱や分節性硬化もよく認 組織特異性の変化 める所見である。 3.血管炎の組織学的な鑑別疾患 塞栓症(コレステロール塞栓症),高度な粥状硬化,TMA, 抗リン脂質抗体症候群,アミロイド angiopathy 利益相反自己申告:申告すべきものなし 文 献
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