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株式会社監査の概要 利用統計を見る

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株式会社監査の概要

著者

小川 善吉

著者別名

Z. Ogawa

雑誌名

東洋法学

20

2

ページ

p1-33

発行年

1977-03

URL

http://id.nii.ac.jp/1060/00006060/

Creative Commons : 表示 - 非営利 - 改変禁止 http://creativecommons.org/licenses/by-nc-nd/3.0/deed.ja

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株式会社監査の概要

4・ ノ珂

 序説  株式会社では、取締役の職務執行を監査する機関として、監査役なる機関が定められ、会社の会計に限らず、業務 全般にわたって監査すべきものと定められていたのであったが、昭和二五年の商法改正によってその監査を会計に関 するものと会計以外の業務執行に関するものとに分ち、前者は監査役の監査に服し、後者は代表取締役その他業務執 行を担当する取締役を監督する取締役会の機能の中に包摂されることになった。しかし、取締役会は、同時に会社の 業務執行の意思決定をする機関である関係もあって、その監査の働きを充分に発揮しうる機関たることを期待するの は無理ではないかとの批判が出るようになり、反省が加えられることになった。他方証券取引法一九三条の二の規定 は、上場会社および金融業を営む会社について公認会計士または監査法人による財務計算書類の監査を強制している ので、商法の立場においてもこれとの調整をはかる必要に迫られることになった。  そこで、昭和四九年の商法改正に際し、株式会社の監査についてつぎのような重要な改正が行われた。即ち、監査    株式会社監査の概要      一

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   東 洋 法 学      二 役の監査の対象は、会社の会計のみでなく、昭和二五年改正前のように、取締役の職務執行の全般に復元され、これ に伴って必要な各種の権限が定められ、そのうえ監査役が独立してその権限を行使すると同時に、監査の面からみて 株式会社を資本の額により大中小の三穫に分ち、申会社︵燈鷹動繍離薦灘醐縫趨︶の監査についての法の定めを標準的なもの としてこれを商法の串に定め、大会社︵騰躰⑳磯棚艇癒︶の監査については申会社と同様に監査役の監査をうけるほかに公 認会計士または監査法人の社瓢具隷撚磁耀絵︶から選任される会計監査人の会計監査をうけることにし、小会社︵畷躰榊蠣騨か億︶ の監査については.その監査を昭和二五年法と同様に門査.糎の会計監査に限り.一般業務監査から解放する蔦とにし. 商法の特例法として株式会社の粋絃蓋等に関する商法の特例に関する法律︵瀾蜘螺訥導︵絃辮醐噛獅灘弾敵L壁を制定するに至っ た、本稿において.株式会社の監査の概要を説明するにあたむ、便宜上まず申会社のそれから、順次大会社.小会社 のそれに及ぶことにする。なお特例法施行の際の特例については.同法附則璽を参照きれたい。

第一 申会社の監査

 中会社の監査は、監査役によって行われるが.その会社必置の機関たることは、取締役会、代表取締役.株主総会 と同じである。取締役が本来は取締役会なる会議体の構成員としてはたらくものであって、代表取締役その他定款の 規定または取締役会の議決によって業務執行について特別の権限を付与きれた取締役の場合は別として.単なる平取 締役としては業務執行に関し単独ではたらく余地がないのと異り、監査役は、各自、単独で監査機関を構成し、機能 する点において取締役に対し特徴的である。

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 一、選任 監査役の選任は、取締役と同様、株主総会の決議によって行われるが︵緬鶴杁ヵずに托曙顧酬湖碑騨難磁静る の︶、決議 方法は発行済株式総数の過半数に当る株式を有する株主が出席し、その議決権の過半数をもって決するいわゆる普通 決議の方法によるものとされ、その定足数は、定款をもって軽減することができるが︵起建︶、これを発行済株式総数の 三分の一未満に下げることは許されない︵煮湘穿︶。法が監査役の地位を取締役と同様に重視しているものというべき であるが、一般には、定款の規定で法律の定めるこの限度いっぱいまで定足数の軽減をはかっているのが実状であ る。しかし、取締役の選任について認められる累積投票の方法は認められていない︵素湘穿︶。監査役の職務の性質か らいってその選任に多数派とか、少数派とかいうような政治的、派閥的な色彩が入り込むことは妥当でないとする法 の配慮に基づくというべきである。監査役は、監査役の選任について株主総会で意見を述べることができる︵髪九︶。 不当な人選を防止するために認められたものであって、これによって監査役の地位の強化が期待されているといえよ うo  監査役たるについて、資格上格別の制限がないこと取締役の場合と同様であるが、定款をもってすれば制限を附し うる余地なしとしないけれども、これを株主に限るとの制限を附することは許されない︵蓋齢r︶。人材を広く世に求め ようとの趣旨に出づるものである。したがって、再任を妨げないこと当然であるが、その職務の性質上、その会社は いうに及ばず、子会社︵∼銘姻の︶の取締役または支配人その他の使用人を兼ねることを許されない︵尤七︶。兼任を許され ない者が監査役に選任され、就任しようとするときは、これらの地位を退いた後でなければ就任を許されない。商法 二七六条に違反する監査役の就任は無効であり、したがって、その者がした監査は効力がないものと解すべきであ    株式会社監査の概要       三

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   東 洋 法学      四 る。取締役や支配人その他の使用人との兼任禁止を子会社のそれにまで拡げ、子会社の何たるかにつき新たに規定を 設けたのが今回の改正点の重要なひとつである︵釜四︶。監査役が国内において競争関係にある会社の役員を兼ねるこ とによって一定の取引分野における競争を実質的に制限することになる場合には、かかる兼任は独禁法によって禁止 されているが.その違反に対しては刑事罰が課せられることを注意すべきである︵勲諮鉱↑︶。  二 員数および任期 監査役の員数は、取締役の場合のように三入以上たることを要するという法の定めはない が.定款でその員数を二人以上に定めること素より妨げると嬬ろでない.二人以上の監査役が就任している場合にお いても、各自独立してその職務を行い、数人の監査役が合議の結果一致の監査をしたとしても.その責任は各自が独 立して負うべきものであって.監査の結果に対し異る意見を有する監査役は、他の監査役から離れ.独霞の監査の結 果を打ち出すべきである。けだし、監査役の監査の職務に独立性が強く、多数決の原理の支配する余地がないからで ある。  監査役の任期は、会社設立の当初に就任した場合については.就任後一年内の最終の決算期に関する定時総会の終 結の時までと定められ、その他の場合については、会社更生法に定める更生計画により選任され.または留任せしめ られた場合の任期が一年と定められている︵鴫藤憂生磁一一︶ほかは、就任後二年内の最終の決算期に関する定時総会の終結 の時までと定められている︵毛一一一︶。取締役の任期は、監査役と同様、会社更生法に定める更生計画により選任せられ た場合一年と定められているほかは、右のいずれの場合についても一年または二年を超えてはならないと定められ、 例外的に定款で各任期申の最終の決算期に関する定時総会の終結に至るまでその任期を伸長することができると定め

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られている︵仁海獣︶。これらの定めは、一見異るところがないようにみえるけれども、取締役の一年または二年という 任期は、定款の規定または株主総会の決議をもってこれを短縮するを妨げないと解されるが、監査役の任期は、定款 で任期中に退任した監査役の補欠として選任された監査役のそれを退任監査役の任期の満了すべき時までに短縮する 場合のほかは、任期の短縮はいかなる方法によるも許されない︵じ馳磁︶と解される。補欠取締役の任期についても、実 務のうえでは、定款をもって監査役についての右規定と同趣旨の規定を設け、しかも取締役についてこのほか任期を 短縮する定めをしていないのが普通であるから、実際上は両者にさしたる差異があることにならないが、規定の体裁 がこのように異なっているわけは、矢張り、監査役の職務の独立性に由来してその地位の安定をはかろうとの法の趣 旨と解される。  三 終任 監査役は、取締役の場合と同様に、任期終了、定款所定の資格の喪失、公権剥奪または停止︵關強論箏毒レ 噸判妻一︶、委任の法定終了事由︵眠獣駈欺燃糧薩ボ艦髄殿切淵班貯甑忙都灘醗齢購畑襟始壌で馳齢ピ絵灘澱灌勲醐飴疏駒熱斑鴛蛸蕊襯騨鵬蝸尉繍曜恐澱曜測礪 触購殿凱瞭舳籔蛎譲班耀訂︶の発生、会社整理手続における裁判所の解任処分︵鷲換︶、更生計画による解任︵跨硬監︶、会社から する解任︵領蝋講ピニ猛靴叙擁餌ガ解︶によってその任務が終了する。会社からする解任が総会の決議︵購捌礁議︶によるときは、監 査役は総会で解任を不当とする意見を陳述することができる︵巽五︶。監査の職責の重要性に鑑み、軽率な解任に監査 役自身から歯止めをかけようとすることを認めた今回の改正規定であるが、総会にきき入れられなかったときはそれ までである。会社の解散によって、会社の業務執行機関は、取締役から清算人に替り、会社の目的は、清算の範囲内 に制限されるが、この場合裁判所がする清算監督は、破産管財人の破産財団管理に対する監督に遠く及ばず、清算人    株式会社監査の概要       五

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   東 洋 法 学       六 の清算事務執行に対する監査役監査の必要は依然残っているというべきであるから、監査役は、この場合にはその地 位を喪わない。即ち、会社の解散は、監査役の任務終了事由にあたらないのである。  奮査役の任務終了により欠員を生じたときは、任期満了または辞任によって退任した監査役は、新監査役が就任す るまで引き続き監査役の職務を行わなければならない。また監査役を退任した者が退任後にわたってまでも引続きそ の職蘇.鳳行うことが適当でない場合または法律上事実上その職務を行う者がない場合において、必要があるときは. 飛判所は、利害関係人墾講求によって一時監査役の賎猛壷.︸行う者を選任することがで蕊る︵煮臆.︶. 胤うして選任き れた者を仮監査役という、  四 会社と監五役との“係 会社と監査役との関係については.民法の委任の規定が準用されるから︵黙配慰︶.監 査役は、職務の執行にあたり善良な管理者の注意を尽さなければならない︵賑墜。取締役の場合の忠実義務の規定︵釜3 は準用されていない。取締役については、昭和二五年の商法改正で特別の無過失責任を認めたので︵に脈驚これに照 応して特別に忠実義務の規定が設けられたといわれているが、取締役の忠実義務に関するこの規定は.受任者の善管 義務からかけ離れ工愚度な特別の義務を課したものとも思われず.監査役と取締役のそれとの間に注意義務に格別の 差異を認むべきではないであろう。監査役が職務上の善管義務を怠ったときは、会社に対し損害賠償責任を負うべき こと当然である︵都七︶。在任申の監査役を正当の事由なく会社が解任したときは.会社はそれによってその監査役がう けた損害を賠償しなければならない︵︸菰給P︶。  監査役は、委任契約に準ずる契約によって行う監査について会社に対し当然に報酬を請求することができるわけで

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はないけれども、営利を目的とする会社のために、その機関の地位に就いて営利目的にサーヴィスするものであるか ら、そのサービスに対しては報酬が支払われるのが当然である。この報酬の額は、定款または総会の決議をもって定 めなければならない︵薫⑳、︶。通常、この報酬は、他の監査役、取締役の分をも含め一括して営業年度毎にその総額 を予定し、それを以て支給報酬額の最高限度とし、その範囲内において取締役会で決定すべきものとし、取締役会は その個人別の決定を代表取締役に一任する形式を採っている。長い間、この取扱いに格別の疑問も出なかったのであ るが、近時これに疑問が提起され、少くとも取締役全員の分と監査後全員の分とを区分して総会の決議をとり、各監 査役への配分は、取締役会または代表取締役の関与なく、一人または数人の監査役自身によってされるべきではない かとの提案がされている︵螂聯慰雌齢︶。けだし、監査役の職務の独立性に由来する当然の主張であるといえようし、計算 書類の附属明細書にこれらの報酬額を記載するに取締役と監査役に支払った分を夫夫区分して記載すべきものとして いるのは︵鰍碑講類規則︶これを裏書しているものといわれている。退職慰労金も報酬に準じて考えてよいとされている が、それは一般従業員の場合における給与の後払いとの理由づけが適用になるのである。本来、取締役や監査役の如 き役員の報酬は、企業経営上の経費と観念されうべきものであって、経営者たる業務執行機関が経営感覚に基づいて 自由に決定してよいはづのものであるが、経営者自身の自由に委せるときは、経営者の恣意により株主等投資家およ び会社債権者の利益が害されることあるべきを慮り、これを総会の決議にかからしめたものというべきである。い ま、監査役の地位が強化され、経営の申心機関たる取締役会にまで監査役が出席し、意見陳述の権限が与えられてみ ると、役員報酬決定についての総会の控制機能の必要は、監査役についても一層はっきりしてきたのではないかと思    株式会社監査の概要       七

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   東 洋 法 学      八 われる。しかるに、会社はへ一般に役員の報酬や退職金が個別的に各株主に明瞭になることを好まず、たとえば、期 申に退職した二人以上の役員の退職金を一括して総会に付議し.しかもその金額及び区分を明示しないのが実務の取 扱いになっている。これについて、判例は、明示的または黙示的に基準を示し、具体的な金額、支払期日、支払方法 などはその基準によって定めるべきものとし.その決定を取締役会に委せることは許きれるとして、前記実務上の取 扱いを肯定している。このほかに、取締役に対すると同様に.監査役に対しても賞与が支給されることがある.実質 は.一般従業員の一時金に相当するものであるが.会社の経費としての支晦を認められていないので、会社に利益が ある場合に限って定時総会に利益処分としてその承認を求め.その決議を経たうえでなければ.監査役の賞与の支給 は許されない︵瓢邸町︶、  五 監査役の職務 監査役は.取締役の職務の執行を監査することをその職務とする︵膨奮︶.監査の対象たる取締役 の職務は、会社の会計にかぎらず、会社の業務全般に及ぶことはさきに述べた。また.代表取締役.業務担当取締役 の職務執行のみでなく.取締役会の決議もその対象になると解されている。  監査は.取締役の職務の執行が法令または定款に適合しているかどうかの適法性にのみ関するものであるが、会社 経営上合目的的であるかどうかの妥当性には及ばないか.という点について論議がある。それは、商法二七五条にお いて、監査役は取締役が総会に提出しようとする議案および書類について﹁著シク不当ナル事項﹂があると認めたと きは、その意見を総会に報告しなければならない旨定められており.同二八一条の三第二項七号において、監査役は その作成する監査報告書に﹁準備金及利益又ハ利息ノ配当二関スル議案力会祉財産ノ状況二照シ著シク不当ナルト

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キ﹂はその旨を記載しなければならない旨定められているからである。しかし、適法性監査に限ると解する説が有力 である。その理由として、①昭和二五年改正前の商法では、監査役が取締役の職務代行をし、取締役の自己取引を承 認し、臨時株主総会を招集する権限が認められていたのに対し、改正法における監査役の右二権限は、共にその範囲 が限定され、広く妥当性監査の権限までも認められたとするためには更に具体的な立法措置を要する。②取締役会が 動く経済状勢に対応して採る施策に対し監査機関が妥当性にまで立ち入って監査をし、それについて取締役会や株主 総会で意見を述べることを許すときは、適時適切な施策の遂行を妨げる怖れがあり、団体としての会社機関の権限の 分配を紫ることになる。③監査役に過重の負担をかけることになる怖れがある、等があげられている。けだし、監査 役は監査について責任を負う立場にあるものであり、業務執行については取締役会および代表取締役が責任を負うべ きであるから、業務執行について決定権限を持たない監査役が通常の事態においてその当不当にまで立ち入ることが できるとするのは行き過ぎというべきであろう。  監査役の執務の体勢について考えるに、会社に常勤して執務する場合と必要に応じ随時執務する場合とがあること 取締役の場合と同様である。後述する監査の内容からすれば、監査役は他人の補助をえないですべて独力で監査しう るともいえないし、営業年度の終了後取締役から計算書類が提出されたり、総会招集にあたり議案が廻付されたりし なければ意見を樹てることができないというわけのものでもない。業務執行機関が会社の使用人に業務執行について 補助させると同様に、監査機関は監査について会社の使用人に補助させることができるからこそ、取締役会におい て、将又株主総会において随時必要にして適切な意見の陳述ができるのである。補助者がえられないとか、監査の時    株式会社監査の概要       九

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   東 洋 法 学       一〇 間が不足だとかいうことがあっても、それは完全な監査をしないことの弁解にはならない。すべからく監査役は、会 社に対し相当な補助者の提供を求めるべきであり、会社はその求めに応ずべきである。また監査役は、期末に多量の 監査が集申して事務処理の繁雑を招かないように平素から準備してかかるべきである。  監査役がその職務を遂行するために法律によって認められている権限は、つぎのとおりである。   の 報禽および調査 監査役は、何時でも取締役に対し鴬業の報告を求め.または会社の業務および財産の状況 を禽ー唱査することができる︵駐匙、監査役のこの求めに対し取締役は.自ら報告すべきであるが.必要があるときは 会社の使用人をして報告の補助をさせたり、代って報告させたりすることができる。業務および財産の状況の調査に あたって監査役が自己の補助者評使用すること素より妨げない.この権限は.監査役の任務遂行上不可欠の重要な基 本的権限であるから.取締役は、その権阪行使に協力すべく、妨害等の如きことがあってはならない。若し取締役の 妨害によって必要な調査ができなかったときは、監査役は、その旨および理由を監査報告書に記載しなければならな い︵∼蘇トの︶。取締役は、会社に著しい損害を及ぼす虞れのある事由を発見したときは直ちに監査役に報告しなければ ならない︵鋸照︶。会計監査人も同様の義務を課せられている︵塒謬。 いずれも監査役の業務および財産状況の調査の発 動を促し.監査を全うせしめることによって会社のうける損害を未然に防止しようとするものである。  監査役は.監査上必要があるときは、懲己の属する会社の子会社に対しても営業の報告を求めることができる︵驚馳 B︶。これに対し子会社が遅滞なく報告しないか、報告はしたが、更に進んでその真否をたしかめるため必要があると きは、報告を求めた事項に関し子会社の業務および財産の状況を調査することができる︵釜圏︶。しかし、子会社とい

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えども独立した経営体制をとっているものであるから、正当な理由があるときは、この調査を拒むことができるもの とされている︵釜四︶。一の企業体の外にまで出ての監査が認められるのは、近代企業の経営が他の企業との協力の下 に行われ、殊に資本的に緊密な連繋を結んでいる親会社がこれを利用して不正を働き、または親会社自身に大きい 損害を招くことなしとしないのを監査役のはたらきによって防止しようとするものである。ここに会社の親子の関係 は、従来経済的な観念として屡使用されていたものであったが、法律用語として商法が始めてこれを取り上げたので あるが、親会社とは、他の株式会社の発行済株式総数の過半数にあたる株式または他の有限会社の資本の過半数にあ たる出資口数を有する会社をいい、これに対し他の株式会社または有限会社を子会社といい︵読照︶、また親会社と子 会社の双方で有する株式もしくは出資口数の合計、または子会社が単独で有する株式もしくは出資口数が他の株式会 社の発行済株式総数または他の有限会社の資本の過半数にあたるときは、その株式会社または有限会社も右の親会社 の子会社とみなされる︵甕四︶ことになっている。子会社が監査役の調査を拒みうる正当理由が何であるかについて は、経営の独立を害する場合というべきも、具体的には先例の堆積に侯つほかはない。  監査役は、右のほか取締役が株主総会に提出しようとする議案および書類を調査し、違法または著しく不当な事項 があるときは、総会にその意見を報告しなければならない︵鷺七︶。ここに調査の対象になるのは取締役から総会に提 出される議案のすべてであるから、総会の決議事項全般に及ぶこと当然である︵些一で︶。取締役から総会に提出しよう とする書類とは貸借対照表、損益計算書、営業報告書、準備金および利益又は利息の配当に関する議案である︵導訊た 一︶。違法は別として、著しく不当の意味は、実際の例を重ねなければ容易に確定しえないと思われるが、取締役の善    株式会社監査の概要       二

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   東 洋 法 学       一二 管義務および忠実義務との関連において会社が損害をうけることが明瞭な場合にはとり上げられ易いと考える。一般 的議案について特にそこまで考えることもないが、書類については、監査役としては違法または著しき不当しなと意 見を附する要なきかとの考えを持っ向きがあるようであるけれども、商法二七五条は、そこまでを求めているのでは ない。たとえ商法二七五条の求めに対し消極的意見を付する場合にも﹁法令、定款二違反シ.又ハ著シク不当ナル事 項アリト認﹂めるものでない趣旨が表われておれば、用いる語に拘泥する必要はない、  然会じ髭出す撫書類の調査のことを法律は監査と称し︵、京︶.胤の書類は.総会の会翼から七週間前に取締役から監 査役に提出すべく痘込︶.監査役はこれをうけとった翼から四週間内に監査報告書を作成して取締役に提出しなけれ ばならない︵鉱然ト︶と定められた。  この監査報告書に記載すべき事項がつぎのとおり法定されるに至ったことは注目に値する。  i 監査の方法の概要  2 会計帳簿に記載すべき事項の記載がなく、もしくは不実の記載があるときまたは貸借対照表もしくは損益計算   書の記載が会計帳簿の記載と合致しないときはその旨  3 貸借対照表および損益計算書が法令および定款にしたがい会社の財産および損益の状況を正しく示したもので   ないときはその旨  4 貸借対照表または計算書が法令または定款に違反し、会社の財産および損益の状況を正しく示したものでない   ときはその旨及び事由

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 5 営業報告書の内容が真実であるか、どうか  6 準備金および利益または利益の配当に関する議案が法令および定款に適合するか、どうか  7 準備金および利益または利息の配当に関する議案が会社財産の状況その他の事情に照し著しく不当なときはそ   の旨  8 取締役の職務遂行に関し不正の行為または法令もしくは定款に違反する重大な事実があるときはその旨  9 監査のため必要な調査をすることができなかったときはその旨および理由  この監査報告書の提出について書類受領の日から四週間内という時間の制限が付されているのは、監査報告書が総 会の日の一週間前から本店に備え置かれ、株主、会社債権者に公示される必要があり︵に撚一一︶、総会の日の二週間前に 発せられる総会の招集通知にその謄本が添付されなければならないからである︵∼獄︶。  監査役は、商法二八一条一項の書類の監査のほか、取締役から提出きれる右書類の附属明細書の監査もしなければ ならない。この附属明細書の取締役からの提出は、総会の会日から三週間前になされることを要し、監査役の監査報 告書はその受領の日から二週間内に取締役に提出することを要する︵砿黙︶。附属明細書の監査報告書についてこのよ うな日限が付されているのは、この監査報告書も商法二八一条の三の監査報告書とともに株主および会社債権者に公 開されているからである︵仁臥一一︶。この監査報告書に記載すべき事項については法律は格別の定めをしていない︵購噂瑚 鯵︶.   口 取締役会への出席 監査役は、取締役会に出席して意見を述べることができる︵砿獣○︶。監査役の監査の目的    株式会社監査の概要       一三

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   東洋法学      一四 を達成するために認められた権限である。単に出席するのみでなく、議事について意見を述べることも認められてい るところよりすれば、監査役の監査が単に事後調査のみでなく、取締役の業務執行に対する事前の控制作用を期待し ていることをも窺うことができる。そうであってみれば、これは権限として認められているばかりでなく、出席の義 務をも課しているものいうべきである。したがって、取締役会の招集権者は.監査役にも招.集を通知することを要す るものというべく.出席した監査役は.取締役とともに取締役会議事録に署名しなければならないことになるわけで ある︵鵜蹴の︶。監査役は議事について議決権声有しないし.その述べた意屍は当然に議事を拘束するものではないが. この意見が事実上後述の監査役の各種権限行使の原動力となりうることが考えられる、   の 取締役の遠法行為の差止 取締役が会社の鷺的の舵囲外の行為その他法令または疋款に違反する行為をし、 それによって会社に著しい損害を生ずる虞があるときは、監査役は.取締役に対しその行為を止むべきことを請求す ることができる︵餐菖。前述のとおり、取締役の違法行為に対しては、監査役としては.取締役会における意見陳述 および株主総会における意見報告を通じてこれを阻止するための活動ができないわけではないが、これらはいずれも 取締役会のメンバーまたは総会の議事にある種の刺戟を与えようとするに止まり、決定的な力を持つものではない。 ここにいう差止請求権は直接的な是正を求めるものであって、極めてドラスティックな権限である。株主にも同じよ うな権限が認められているが︵考︶、二点において異る。一は、株主については権利濫用を防ぐために﹁会社に回復 すべからぎる損害を生ずる虞あるとき﹂と権利行使要件を厳格に絞っているのに対し、監査役については単に﹁会社 に著しい損害を生ずる虞あるとき﹂と権利行使要件を若干緩和していることである。二は、株主の場合はこの権利を

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行使すると否とは自由であって、不行使による責任問題を生ずることがないけれども、監査役の場合には任務僻怠に よる会社に対する損害賠償責任を負うべき場合あることを考えれば、この権利行使は義務的であるというべきであ る。この差止請求は、訴訟外ですることができるが、訴訟でするときは、仮処分申請の方法によるのが適当である。 仮処分を発する場含、裁判所は、申請人たる監査役に保証を立てさせることを要しない︵釜随︶。   ㈹ 会社と取締役間訴訟の代表、訴の提起等会社が一方の当事者となる訴訟の遂行は、当然、代表取締役の業務 執行の体様として代表取締役がその衝にあたるべきものであるが、取締役自身がその他方の当事者であるときにはこ の原則を維持できないし、会社の重要な事項についての訴訟や非訟事件について取締役自身に原告適格または申請人 適格を認めると同様に監査役についてもその資格を認める必要ある場合がある。  1 会社が取締役に対しまたは取締役が会社に対し提起する訴においては、監査役が会社を代表する︵翫五︶。従来   この場合には取締役会の定める者が会社を代表するのを原則とし、例外的に株主総会でこれを定めることができ   るものとされていたが︵欄蚤︶、改正法で監査役の権限が業務監査にまで拡げられたのに伴い、監査役の代表が認   められることになった。会社が取締役に対して提起する訴については、その決定は、取締役会の決議だけでは足   りず、監査役の意思決定も必要である。取締役会の決議があるのに、正当の理由なく監査役が取締役に対し訴提   起に出ないときは、任務癬怠の批難を免れえない。他方取締役会の決議がないにもかかわらず、監査役の独自の   判断で訴提起の措置に出なければならないこともありうる。取締役会の決議がないことは訴提起の効力に影響を   及ぼさない。株主は会社のために取締役に対しいわゆる代表訴訟を提起することができるが、その前に会社に対    株式会社監査の概要       一五

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   東  洋  法 脚ず      一山ハ   し取締役に対する責任追及の訴提起の請求をしなければならない。この請求を会社のためにうける者は監査役で   ある︵誤靴御膨七︶。取締役を代表者として請求しても所期の目的を達し難いとみての配慮である。監査役の責任追   及の訴提起の請求についてその配慮がないのは事の性質上当然である。  2 監査役は.ω設立無効の訴︵薦、一︶.③総会決議取消の許︵娘鰻︶、③新株発行無効の訴︵壕齢︶、㈲減資無効の訴   ︵誌八︶.⑥合併無効の訴︵廻︶をその地位において提起することが認められるに至った。右のうち②③ωの訴を株   主が提起したときは、濫訴防止のため、践判所は会社の講求により相当の担保提供を株主に命じうるが.監査役   に対しては・取締役に対すると同様これを命ずることができない︵鉱選縞訟毒鉱鴫︶。けだし、濫訴の怖れなしとみ   られるからである。  3 監査役は、会社整理開始申立︵一置︶、特別清算開始申立︵蠣一、一︶.会社業務、財産の検査命令の申立︵遡疑︶をする権限   を認められるに至った。  以上のほか.監査役の任免について監査役に意見陳述権が認められたことは前述したところであるが.所謂大会社 の会計監査人の任免について監査役の同意が必要となっていることは特徴的である︵欝覇だ王︶。監査役が数人ある場合 の同意は、多数決をもって決せられる︵鯛︶。このことよりしてこの同意は、監査役各自の独立性が求められる監査と は異り、法が特に認めた監査役の任務であることを理解することができる。  六 監査役の責任 このような職務を負う監査役がこれを癬怠したときは、会社に対し任務癬怠即ち善管義務違反 ︵盗馳煕鷹凧齢脚一一︶の損害賠償責任を負う。数人の監査役相互間でおよび取締役との間で負う責任が連帯性を帯んでいる

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こともさきにふれた︵濡始、︶。監査役は、無過失を立証しなければこの責任を免れえない。違法配当や役員賞与支払 について計算書類の調査を尽さず、取締役や他の監査役のいうところに追随して違法な利益金処分案が適法妥当なる 旨総会に報告した場合には無過失ということができないとした裁判上の先例がある︵醐翻細卿跳麺齢涛貯神︶。会社に対する 監査役の責任の株主の代表訴訟による追及は、取締役の場合と同様、昭和二五年の改正法によって認められた︵薫憩 鋲諮先砿訊︶。監査役の責任は、取締役の場合と同様、総株主の同意がなければ免除されえない︵素船ド︶。したがっ て、この免除は、出資者数の少い人的会社程度に株主の数が少ない閉鎖的な会社であるとか、対立する利害関係で 責任追及が却って会社の不利益になることが株主全員に理解されうるような特殊の場合でなければ容易にありえない ことである。またこの責任は、.不正の行為があったと慧は別として、計算書類の総会の承認後二年内に総会が別段の 決議︵磧肇臆級︶をしないときは、この二年の経過をもって責任を解除したものとみなされる︵監八︶。計算書類に不実の記 載がきれた場合における取締役の会社に対する責任は、無過失責任であるが、監査役はこれち書類の作成義務者では ないから、この不実記載について責任を負うべき理由はない。しかし、計算書類の監査については善管義務を負うこ と前述のとおりであるから、監査報告書の不実記載による会社の損害については責任を負うべきこと当然である。  会社以外の第三者に対する監査役の責任については、従来どおり、取締役の第三者に対する責任の規定が準用され るに止まる︵塾飲の○ε。取締役のこの責任について最近にした最高裁判決︵關禰陥押㌃主鰍駄厳瀧弧糠外一ガ笹語パ︶は、取締 役のみならず、監査役についても大いに参考になるものである。即ち、判例の前者では、名目代表取締役が実権を持 つ代表取締役に業務執行を委ねた場合に放漫経営で不渡手形が出た事件において手形所持人に対し名目代表取締役に    株式会社監査の概要      一七

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   東洋法一学      一八 も監視義務違反の責任を負わせ、後者では取締役会も総会も全く開かれていないで業務執行が代表取締役に委せきり にされいる倒産会社で不渡手形に関しその所持人に対し平取締役にも代表取締役の監視塀怠責任を認めている。取締 役と監査役の監視義務に差異のあるのは当然ながら.監査役の職務が業務監査にまで拡げられ、取締役会への出席義 務が認められてみると.監査役の監視義務を軽くみてはならないのである。

第二 大会社の監査の特例

 大会社は、監査役の監査のほかに会計監査入として選任された公認会計士︵離礪訟轟喰︶または監査法入がその社員たる 公認会計士の申から会計監査人の職務を行うべき者に指名した者によって行われるいわゆる会計監査︵簾鰍鰭塾縣蜥瀬鋤鹸 弗駄灘郷醐盤繍講耀翻翻磁隙隙欄雛勲嘱鵬蘇圏︶をうけなければならない︵叢覇鴎、︶。会計監査人は、会社の機関ではなく.会社との 契約により右に掲げた書類の監査事務の委託をうけた者であるといわれている。したがって、会社と会計監査人との 関係は.民法の委任に準ずる契約関係というべきである。会計に関するかかる書類の監査の委託をうけた者を会計監 査人と称し.この委託契約の相手方たるべき者を決定することを会社側からみて選任という。この選任については監 査役の過半数の同意が必要であり、取締役会の決議をもってなされ、かつ株主総会に取締役から報告されなければな らないが︵塒廻、一︶、この手続は、監査役解任の手続と全く同じである︵欄獄︶。ただ解任された会計監査人が解任を報告す る株主総会の田の三日前までに解任についての意見を通知したときは、取締役は、その意見の要旨を総会に報告しな ければならない︵曝ハ︶。監査法人が会計監査人に選任されたときは、その監査法人は、自己のために会計監査人の職務

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を行うべき者を社員の申から指名して会社に通知しなければならない︵鋼︶。監査法人の社員は、公認会計士に限られ ているから︵訟嘲吟附獄法︶、会計監査人の職務を行う者は、結局公認会計士に限られていることになるが、①当該会社ま たは当該会社と親子関係にある会社の取締役、監査役または使用人、②公認会計士の業務につき業務停止の処分をう け、その停止の期間を経過しない者、③監査法人の社員のうちに①または②に該当する社員があるときは、その監査 法人は、会計監査人たる資格がないとされている︵驕馴︶。これらの欠格者は、会計監査人として、またはその職務を行 うべき者の指名をうけて自ら会計監査をすることができないのみでなく、使用人として会計監査人の職務を補助する こともできない︵塒碗︶。欠格者が当事者となって結んだ特例法に基づく監査契約は勿論、欠格者が関与した同法に基づ く監査は、会計監査人の補助者としてした場合をも含め、すべて無効と解すべきである。  会計監査人は、前述の通り、商法二八一条一項の書類のうち営業報告書を除く書類およびその附属明細書の監査を 任務とするが︵塒例︶、その任務を遂行するため、つぎの権限を認められている。即ち、何時でも、①会社の会計の帳簿 および書類の閲覧もしくは謄写をすることおよび②取締役に対し会計に関する報告を求めること、職務を行うために 必要があるときは、③会社の業務および財産の状況を調査すること、④子会社に対し会計に関する報告を求めること および⑤子会社が遅怠なく会計監査人の右の報告の求めに応じないとき、またはその報告の真否を確めるため必要が あるときは、報告を求めた事項に関し子会社の業務および財産の状況を自ら調査することができる︵醗甥銘四1㎜璽孟︶。 会計監査人の強力なこの報告徴求および調査の権限に対し子会社がこれを拒みうるのは正当の理由ある場合に限られ る。正当の理由の何たるかについては監査役の場合と同様に考える。    株式会社監査の概要       一九

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   東洋法学       二〇  取締役は、会計監査人の監査をうけるために定時総会の会βの八週間前までに監査をうけることを要する商法二八 一条所定の前記書類を監査役および会計監査人に夫々提出しなければならない︵嚇調︶。中会社において監査役にこれら の書類を提出すべき期限よりも夫々一週間早められている。会計監査人は、右の書類をうけとった鼠から四週間内に その監査報告書を取締役および監査役に提出しなければならないことになっており、監査役は、会計監査人の監査報 告書をうけとった礒から一週間内に会計監査人の監査報皆書をも含めて会社の会計および業務について監査しなけれ ばならないので嬉醐︶、取締役の計算書類提出、会計監査人の監査報告書の提出期限の設定となっているのである。轟駄 の間、監査役は、会計監蓋人の監査報占吉についての理解を深めるため会計監査人の説明を求める権限を与えられて いる︵欝遡︶。  取締役の商法二八一条一項の附属明細書の監査役に対する提出期限もまた申会社の場合よりも一週間早められ、定 時総会の蟹の四週間前までとなっており、会計監査人に対しても同時に提出しなければならない。会計監査人の監査期 限はそれから二週間以内と定められ、監査役の監査期限は、会計監査人の附属明細書の監査報告書受領から一週間以 内と定められ、計算書類及びその監査報告書と同時に法定の定時総会の日の一週聞前にその本店備置並びに閲覧およ び謄抄本の交付の請求に応ずることが義務づけられている︵嚇綱蓋、︶。また定時総会の株主に対する招集通知には附属 明細書およびその監査報告書を除き、監査役および会計監査人の各監査報告書の謄本を添付しなければならないので あるが︵嚇鋼︶、監査役および会計監査人の監査期限は、定時総会の霞の二週間前までという招集通知発送期限︵彊︶を考 慮して定められているのである。

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 監査報告書の記載事項は、監査役、会計監査人のそれぞれについて法律の規定で定められている。まず会計監査人 のそれについていえば、営業報告書に関する事項を除き、商法二八一条の三の監査役の報告書と同じ事項を記載すべ きであり、監査役の監査報告書には、①会計監査人の監査の方法または結果が相当でないと認めたときは、その旨お よび理由︵湘当概甥勘謙既臆融銅誠翻蛾乱齢嫉脈紬はい︶、②監査役のした監査の方法の概要または結果、③会計以外の業務の監査の 方法の概要、④商法二八一条の三第二項五号および七号ないし九号に掲げる事項を記載すべきである︵特甥貯B亘︶。計算 書類の附属明細書の監査報告書の記載について、法律は、監査役の場合にのみ会計監査人の報告を相当と認めたとき は、その旨を記載すれば足りると定めるが︵略棚肝五︶、その基本は、会計監査人が作成すべき計算書類の監査報告書の 記載事項と同じであると考える。  監査役は、中会社にあっても、大会社にかっても、その監査にあたって調査した事項のうちに違法または著しく不 当事項があると認めたときは、総会でその意見を報告することを要する︵嫡鷺︶。この権限は、監査役にとって特に認め られた重要な権限であるので、法律は、大会社の会計監査人がその職務を遂行するにあたって取締役の職務の遂行に 関する不正または違法を発見したときは、その会計監査人は、そのことを監査役に報告bなければない旨定め、監査 役の職権の発動を促す途を拓いている︵塒例︶。  監査役がその監査報告書の中で会計監査人の監査報告書について批判をすることができることは、前記のとおりで あるが、会計監査人は、いかなる手段をもってこれに対応することが許されているか、当然注意したいところであ る。その一は、会計監査人がその監査した計算書類およびその附属明細書が適法か、どうかについて監査役と意見を    株式会社監査の概要      二一

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   東洋法学      

二二 異にするときは、定時総会に出席して自己の意見を述べることができることであり︵塒哩︶、その二は、定時総会に おいて会計監査人の出席を求める決議があったときは、それに出席して意見を述べることを要するので︵胴上︶、この 機会を利用することである。前者の場合における総会出席は自由意志に基づくものであるが.後者の場合における出 席は.義務的であって、故なくこれを拒否することは許されない。  会計監査人の監査責任については.特例法九条ないし二条の定めるところであるが.監査役の場合と同様、任務 耀怠によウて会社に与えた損害については会計監査人相互閥で連帯して賠償責任を負うし︵塒謬、会計監査人が監査報 告書に重要な事項について虚偽の記載をしたために会社以外の第三者に損害を与えたとき、またその会計監査入が二 人以上のときは連帯して第三者に賠償責任を負わなければならない︵講ハV、会計監査人が第三者に対する責任を免れる ためには、職務を行うについて注意を怠らなかったこと、すなわち無過失を立証しなければならない。会社または第 三者に対し会計監査人が賠償責任を負う損害について取締役、監査役も賠償責任を負うべきときは、これら三者は. 互に連帯債務者となる旨定められている︵載︶。もし、この定めがなければ.いわゆる不真正連帯債務者の関係たるに すぎないのであろう。取締役または監査役の場合のように責任の免除または解除に関する規定はない。これは.会計 監査人の地位が会社の機関でなく.会社外の第三者であって、委任契約における受任者たるに過ぎないからである。

第三 小会社の監査の特例

小会社の監査役の監査については、特例法で特例が設けられ、単に取締役が総会に提出しようとする会計に関する

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書類を調査し、その意見を総会に報告しなければならない旨規定しているが︵講一一︶、会計という限定こそあれ、大申 会社の場合の商法二七五条の規定とその趣旨は異らないと解すべきである。  監査役は、右の如き監査をするについて必要な調査をするために①会計の帳簿および書類の閲覧もしくは謄写を し、②取締役に対し会計に関する報告を求めることができ、③子会社に対し報告を求め、場合によってはその業務お よび財産の状況を進んで調査することができることは、他の株式会社の監査役の場合と異らないが︵矯判堅雌醐窒︶、た だ会計に関するものに限られることを注意すべきである。そして、その任務がこのように会計の監査に限られている ので、取締役会への出席、取締役の違法行為の差止、会社と取締役または清算人との間の訴訟における会社代表、各 種訴の提起等の権限は認められていない︵揃い壷パ鏑蔓£肋一︷套庇︷聖嘆キ硫切阻£繭︶。他方、監査役の任期の法定︵礁洌塵一 斐︶、監査役の選任、解任についての意見陳述︵講輩鋲論︶を認め、選任決議の定足数を定め︵嚇︸症パ麺下︶、当該会社お よび子会社の取締役、使用人との兼任を禁止する︵璽に証、︶等によってその地位の強化に努めていることは、他の株 式会社の場合と同様である。  監査役の監査が会計に関すろ書類に限られるので、取締役の監査役に対する計算書類等︵仁歴︶の提出期限および監 査役の取締役に対する監査報告書の提出期限は他の会社の場合に比し、大幅に短縮され、前者は定時総会の会日の五 週間前と、後者は計算書類等を監査役が受領した日から四週間以内と定められている︵塒鋼︶。 株式会社監査の概要 二一二

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東 洋 法学 二四

第四 株式会社の資本が増減した場合における監査手続の変更

 営業年度の途申で株式会社の資本が増減したことによりその営業年度の監査の構造が変更することのあるべきは. 会社の監査の方法が前述のとおり資本の額によって異る以上、当然であるが、その場合によるべき期末監査の方法を 一般的に定めておく必要がある。この場合の監査方法の定め方としては、資本の増減の前後によりその方法を二途に 分つか.そのいずれか一方の監査の方法に纒めるか.その場合にも営業年度内における資本増減の前後の期間の長短 を比較し.期間のより長い場合によるべき監査方法をとるか.監査手続の厚薄によりその厚きをとるかといった異合 にいろいろの定め方がありうる。しかし、株式会社の監査等に関する商法の特例に関する法律は、資本に増減があっ ても.監査の対象たる決算が二つになるわけでないことを考え、資本の増減前に適用される法律を適用すべきものと する原則を樹ててこれをつぎのように規定した。  e いわゆる大会社が中会社または小会社になり.大会社の特例の適用をうけえなくなった場合にも.その後最初 に到来する決算期に関する定時総会の終結の時までは依然として大会社の特例にしたがって監査すべき旨を定める ︵講︶.  口 いわゆる中会社または小会社が大会社になり、申会社または小会社の規定の適用をうけえなくなった場合に も、その後最初に到来する決算期に関する定時総会の終結の時までは、依然として中会社または小会社の規定にした がって監査すべき旨を定める︵叢︶。

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 口 いわゆる小会社が大会社または申会社になり、小会社の特例の適用をうけえなくなった場合にも、その後最初 に到来する決算期に関する定時総会の終結の時までは、依然として小会社の特例にしたがって監査すべき旨を定める ︵備二︶Q  四 いわゆる大会社または中会社が小会社になり、大会社または申会社の規定の適用をうけえなくなった場合に も、その後最初に到来する決算期に関する定時総会の終結の時までは、依然として小会社の特例によることなく、大 会社または申会社の規定にしたがって監査すべき旨を定める︵塒綱︶。  右のいずれの場合にも、会社はその定時総会終結後は、資本額変更後の会社がよるべき方法によって監査をうける ことになろこというをまたない。日の場合には、監査役は、その定時総会終結の時に当然退任する︵嶺二︶。会計監査 のみにあたる監査役にそのまま業務監査をもする大中会社の監査にあたらせるのは妥当でないとの考えに基づくもの である。したがって、その定時総会で更めて監査役を選任しなければならないわけである。

第五 監査に伴う刑事責任および行政責任

 株式会社の監査制度が充実整備されるにしたがって、それに携る者の責任が過重せられ、会社に対してはいうに及 ばず会社以外の第三者に対してまで民事上の責任を負うべき場合のあることについては既に述べた。このほかこれら の者が違法行為をした場合には、法は更に特別に刑事罰をもってこれが抑圧につとめている。必らずしも、監査役ま たは会計監査人に限るわけでなく、又今次改正法によって更めて定められたもののみというわけではないが、その犯    株式会社監査の概要       二五

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   東洋法学      

二六 罪として定められているものは、つぎのe、乃至㈲である。  の.特別背任罪およびその未遂罪︵朋猷獄、︶  ω.会社財産を危くする罪︵欄八︶  日.不実文書行使罪︵臓九︶  ㈹、預合罪︵噸﹂  鞭の.擬職罪︵騨塑一驚﹀株式会社の役員等の場今よりも会計監査人︵囎譜蘭聴駄御顯鰯麓砺っ︶に対する罰金の法定刑が重いこと を注意すべきである。  このほか、監査役は.商法四九八条の規定によって過料の制裁をうけるが.このほか特例法三〇条の規定によって 会計監査人︵搬酬灘燈鉱獅購鵬能緬っ︶も同様に過料の制裁をうける。  以上のほか.会社更生法.独禁法等にもそれぞれ監査役の職務について罰則︵徽羅鰍鱒のの騨鰍︶が設けられているが、こ こでは省略する。

第六 新監査制度運用上の問題

 かくて、株式会社の監査制度は、著しく強化され、新しい出発をした。そうしてみると、監査の主体たる監査機関 の地位に就く者や監査の対象たる業務執行を掌る者は、その制度が万全の機能を発揮するについて直接に、且つ重大 な責任を持つといわなければならない。この点について一般に指摘されているところとして、つぎの諸点を挙げるこ

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とができる。  一第一に、監査役は、その職務の実体が適正監査にあることをわきまえ、取締役の職務執行の妥当性について は、誰の目からみても不当と思われるような場合に限り、違法の場合に準じて監査の対象とすべきであるということ である。監査役に対し総会における報告権限が認められている﹁著しく不当な事項﹂という場合の不当は、そういう 意味に理解すべきである。監査の対象への取組み方は違法に準ずるのであるが、対象そのものはあくまでもかかる ﹁不当﹂の範囲を出ないことを注意すべきである。監査の仕事は、この点で消極的であり、謙抑的であるといわなけ ればならない。しかし、当不当の問題に限らず、違法性の問題についても、会社倒産の如き重大時機において真に必 要な発言がないために進む方向が誤られることは少くない。会社を取りまく周囲のことを考えながら、冷静に慎重な 発言が 望まれる。  これに関連して、第二に、監査役︵紬撚鍬絵鰍餉絵︶は、外部的ともいうべき対株主総会関係、違法行為差止等の訴訟につな がる対取締役関係、親子関係にある子会社に対する関係などについて相当ドラスティックな権限を認められているが、 これらは、日常内部の対取締役関係で処理できなかった場合の補充的なものであることを知って行使すべきである。 かかる権限が実際に行使されるときは、会社に非常な混乱を生じ、大きな災いをよぶに至ること必定だからである。  それを避けるためには、監査役は、まず会社の執行部内におけるいわゆる内部監査機構と不断の意思疏通をはか り、問題が取締役会に至るまでの段階で解決をはかるべきである。  第三に、監査役の人選に十分な注意が必要であるということである。そのためには、監査能力と人格、識見におい    株式会社監査の概要      二七

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   東 洋法学      二八 て取締役から尊敬される人材を選択することが大切である。監査役は、必らずしもすべてが常勤するを要しないが、 常勤監査役には内部の業務に静通し、入間関係のよい誠実な人を選び、その者が集めた情報の申に違法を発見したな らば、監査役は密に対策を講じ、協同して取締役以下の執行部にあたり.是正の途をとらせるようにすべきであると いうのである。  二 以上は.今回の改正にあたり重要な役割を果された立法者側の意見の要約というべきものであるが麟辮鮒羅誕齢礁 ︵設ン翻灘宮.﹂.なおこれに若干の私見を附加したい。  そもそも.監査制度が株式会社の機構の中で有する存立の基礎は、国の組織に立法、司法.行政が存するが如く. 株主総会、取締役ないしは取締役会と並んで.会社の運営に正義を吹き込む役割を持つものとして考えられ、その機 能は.司法が国の他の機関から独立しているが如く.会社の他の機関.特に業務執行機関から独立し、申正公平でな ければならないとされてきた。しかし.その作用は、総会の決議.招集および議決の手続に及ぶことなく、唯業務執 行に対するものであって.その是正を霞的とすること前叙のところで明らかである。株式会祉において.かくの如く 監査が特別にその存在を認められる所以は、恐らくは.株式会社が企業組織体として大きい資本の集積体であること の結果としてその背後に多数の投資家としての株主が存在し、その活動が広汎かつ尾大であるがために取引高および 取引先の数が大きく、ひいては、その動向が国民経済に及ぼす影響が寡くないことが予想されるからである。  したがって、株式会社監査の実体は、経営の的確な把握にあるこというをまたないが、その結果を企業の内外に映 し出す素材を提供することにもあるということができる。経営の把握についていかなる人材を必要とし、その地位に

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ある者がいかなる心遣いをしなければならないかについては、抽象的にではあるが前段で可成り核心にふれる意見が あることを述べた。また、大会社の会計監査人は公認会計士または監査法人たるべきことが定められていることは、 この経営把握の的確性確保の一の保障たること疑いを容れない。いままで監査役の監査が充分にその機能を果したと いうことをえず、あたかも業務執行の従属的機関であるかの如く考えられ、処遇されてきたために、種々の法的規制 もあれどもなきが如き感なしとしなかった。今次の法改正は、その点において可成り積極的な姿勢を示してはいるも のは、なお不安なきをえず、たしかに実績を挙げうるとの保障はない。  この点について、繰り返しいわれていることであるが、わたくしは、第一に会社の業務執行に携るひとびとが、監 査の実体と目的とを理解し、その掌にあたる者を正当に遇することが必要であると考える。監査について業務執行に 対する従属的な存在としての理解しか持たず、業務執行者に較べて一段ランクの下の才能の人物を充てるというが如 き従来の風潮は、是非共払拭きれなければならない。第二に、監査にあたる者が会社の内外の事情に精通し、正しい 法律智識を身につけ、これを用いて平素から監査の実を挙げることが大切である。法律の形式は、代表取締役から計 算書類が提出された後に監査し、監査報告書を作成し提出することになっているけれども、この段階で計算書類の不 適正を指摘し、総会にその報告がそのまま出るようでは、会社運営の円滑はとうてい期待することができない。この 点で、会社の業務執行の基準と監査の基準とは、完全に合致していることが望ましく、業務執行部門が平素から監査 部門の意見を理解し、尊重すべきことの必要な半面において、監査役はその努力をするだけでは足りず、それを実現 しうる器量を持たなければならない。洵に重大な職務という一語に尽きる。かくて、第三に、監査役の職務の遂行が    株式会社監査の概要      二九

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三〇 真にその効果を発揮するには、強い勇気が必要であることを附加しておきたい。会社の経営が左前になり、金融機関 との取引が閉されて街の闇金融にたよったり、騎乗手形を発行したり、甚だしきに至っては、利益の計上ができない のに紛飾決算によっていわゆる蛸配当をしたりする例は、会社倒産の場合に往々見かけることであるが、かかる事例 は有能な監査役の監査によって容易に看破できる筈である。取締役のうちから一入の勇気ある者が出てこれを阻止す ることの期待は無理であるとしても、監査役のうちから一人のよくこれを阻止しうる者が出ないことをわたくしは. 甚だ還憾に思うのである.おもうに、畢寛それは監査役その入の責任の自覚の欠如と事に臨んでの断固たる勇気の欠 如にほかならないというべきであろう。若し.監査役にその措置を誤ることさえなかったならば.多数の会社の倒産 は回避され.債権者.取引先、株主および従業員は、倒産による困惑から解放されるか、ないしはより少い困惑です ますことができたのではないかと思うのである。今回の改正法は.かかる場合を考慮して.取締役会に対する関係に おいて.更には株主総会に対する関係において監査役の地位をたかめ.その意見表明の機会を与える至った。もはや 監査役の個人的利害の問題ではないと思われる時に及んで監査役の勇気に期待するしだいである。かかる勇気の評価 は、倒産の如き事態発生の事前には容易に与えられることなく、事後に消極的にしか与えられないのが普通であるか ら、わたくしは.監査役のこの勇気は、経済生活における勘と経験が積まれていなければ湧いてこないのではないか と思う。この意味合いからも、監査役の人選は、慎重でなければならないことになるわけである。  つぎに、かくの如くして非常な努力によって監査役が作り出した監査の結果は、取締役を通じて総会に提出される わけであるが、本来それは時間的制約が附されうべき性質のものではない。監査の対象の分量と含む問題の深さとに

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よって所要時間は様々になりうるであろう。しかし、従来は、株式会社の決算、したがって株主総会の開催は、年二 回たるべきことを前提として、決算期後の定時総会終了までの株主名簿閉鎖期間を二月内とすることによって、事実 上監査の期間を制約してきたが、取締役の監査役に対する計算書類の提出期限は定時総会の会日から二週間前と、監 査役の監査報告書の本店備置による株主及び会社債権者に対する公示は定時総会の会日の一週間前からと夫亙定めら れていたから︵詣蛋↑癌︶、計算書類そのものの形式的な監査期問は、決算期後の定時総会の二週間前から一週間前まで の約一週間でもよいことになっていたわけである。今回の商法改正のねらいの中には年二回決算を行う慣行により、 定時総会をその度毎に年二回開催しなければならない煩わしさと費用を節するために、この慣行を年一回決算の慣行 に改めることによって定時総会をも年一回とし、所期の目的を達成しようとした跡がみえる。  しかし、その結果株主は年一回しか利益の配当をうけることができず、会社の営業成績は年一回しか把握されえな いことになる懸念があった。これに対しいわゆる中間配当の措置がとられた︵能題一一︶ので、株主の利益配当についての 不利益は一応みたされることになった。しかし、証券取引法上の開示制度の適用をうけ、事業年度毎にいわゆる有価 証券報告書または臨時報告書を大蔵大臣に提出しなければならない会社は、その事業年度が一年であるときは、いわ ゆる半期報告書を提出しなければならず、これについて監査役の監査を要しないこと当然ながら、公認会計士の監査 証明をうけなければならない旨定められたこと︵癌諏講噸袈鰐随︶、よりするならば、依然実質的な決算省略をするこ とをえないこと明らかであって、そのうるところは定時総会省略のみであるといわなければならない。  しかし、株式会社の決算は、決算すること自体が目的であるばかりでなく、これを株主や会社債権者に公示するこ    株式会社監査の概要      三一

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   東洋法学      

三二 とによってその保護をはかることが大きな目的となっているこというをまたない。そして、有価証券報告書は大蔵省、 証券取引所および当該会社によって公衆の縦覧に供せられるとはいえ、その効果は、株主や会社債権者にとっては、 商法上の決算毎にこれらの者に対して行われる公示に遠く及ばない。株主が総会をうとんじてこれに出席しなくて も、決算自体には株主も会社債権者も深い関心を持っていることを儒じて疑わないわたくしは.商法上の決算が年一 回しか行われないことになる法の志向を残念に思うしだいである、  なお.これに関連して前述のとおり、会社の決算手続の期問が約一月闇伸長される方向への法の志向に合理的な理 由があったのかと思うしだいである。決算というひとつのインフォメーシ灘ンは.できるだけ短い時間内に、逮やか にしかるべき関係者につたえらるべきものたること明かである。一年間の営業についての決算に要する時間は.半年 分の営業についての決算に要する時間より長かるべきが常識的な観察であるかも知れない。しかし、それは.営業期 問の間題というよりは営業量の問題たるものである。いままでに、一つの会社の取引量が増加したために決算手続期 間を伸長しなければならないということは、きいたことがない。況んや.コンピューターとゼ鶴ックスがあって. 会社の計算のはたらきの迅速化は、戦前の比でなくなっている今鷺である。こういうことの扱いを一旦緩めるとこれ を既往に戻すことは容易にできるものではない。前述のとおり、決算手続期間についての法律の規定は、その最大の 限界を定めるものであって、決算手続の実際がその限度内で最短時間で運営されることを拒むものではない。  わたくしは、実際界の一般的傾向がむしろ決算手続期問を伸長することなく、旧の如く二月内に止め、情報提供の 迅速化に努力すべきであると考える。そして、そのために、会社の計算を担当する経理部門と監査を担当する監査機

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関の積極的な努力を期待する。

以上

株式会社監査の概要

参照

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  支払の完了していない株式についての配当はその買手にとって非課税とされるべ きである。

取締役(非常勤) 武谷 典昭 当社常務執行役 監査役 大河原 正太郎 当社監査特命役員 監査役 西山 和幸