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ウシ胎盤におけるレトロエレメントの分子生物学的探索に関する研究

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Academic year: 2021

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Title

ウシ胎盤におけるレトロエレメントの分子生物学的探索に

関する研究( 内容と審査の要旨(Summary) )

Author(s)

越, 勝男

Report No.(Doctoral

Degree)

博士(獣医学) 甲第367号

Issue Date

2012-09-18

Type

博士論文

Version

none

URL

http://hdl.handle.net/20.500.12099/47993

※この資料の著作権は、各資料の著者・学協会・出版社等に帰属します。

(2)

氏名(本(国)籍) 主 指 導

員 名 学 位 の 種 類 学 位 記 番 号 学位授与年月 日 学位授与の要件 研究科及び専攻 研究指導を受けた大学 学 位 論 文 題 目

査 委 員 越 勝

男(滋賀県)

岩手大学

教授

橋 爪 博士(獣医) 獣医博甲第367号 平成24年9月18日

学位規則第3条第1項該当

連合獣医学研究科 獣医学専攻 岩手大学 ウシ胎盤におけるレトロエレメントの分子生物学的探

索に関する研究

主査 岩 手 大 学 教 授

居在家

副査 帯広畜産大学 副査 岩手大学 副査

東京農工大学

副査 岐阜 大 学

授 鈴 木 教 授 橋 爪 教 授 田 谷 教 授 志 水 昭 志 善 書 武 義 宏一一泰 論 文 の 内 容 の

旨 内在性レトロウイルスエンベロープ迫伝子は,哺乳動物の胎盤形成ならびに栄養膜細胞 の分化に関与していることが示唆されているが,ウシの胎盤に内在性レトロウイルスエン ベロープ迫伝子が存在するか,また,胎盤の主要な機能細胞である栄養膜細胞の機能や特 性に関与するかは不明であった。本研究では,ウシ栄養腰細胞の内在性レトロウイルスエ ンベロープ迫伝子の同定,発現動態並びに機能について検証した。

第一草では,f〝∫〃わ0解析により3稚頬のウシ内在性レトロウイルスエンベロープ迫伝

子すなわちbovineendogenousretrovirusenvelope-IiketranscriptA(bm柁,A),bERn-Bおよび 占且尺陀-Cを同定した。これらの辿伝子は非妊娠畑子宮,胎盤および胎膜で発現が確認され た。すなわち,ウシにおいても,子宮,胎盤および胎膜で発現する内在性レトロウイルス エンベロープ迫伝子が存在することが初めて明らかとなった。その塩去姻己列の解析から, ∂且尺柁一月および占五月昭一Cは,ガンマレトロウイルス由来内在性レトロウイルスエンベロー プ迫伝子であると推測された。タンパク質の発現の鍵となるopenreadingframe(ORF)の解

析から九E尺γE-Cはエンベロープタンパク質の全長ORFを有していたが,占且尺柁-」および

占且尺㌣E一βでは,エンベロープタンパク質の全長ORFの存在は確認できなかった。これらの ことから,種々の異なる椛造体であるが,ウシの胎盤組織には数種類のレトロエレメント が存在することが示された。 第二章では,第一章で同定した3種類のウシレトロエレメントならびにウシ内在性レト

ロウイルスとして同定されているbovine endogenous retrovirus Kl(BERV-Kl)envおよび

(3)

-92-BERV-K2e仰の計5迫伝子について,受精胚,胎膜,胎怒および子宮での発現プロファイ

ルを解析した。全てのレトロエレメントが受精胚,胎膜,胎盤あるいは子宮内膜のいずれ かで発現すること,このうちbERnAおよびBERV-KJenvは詔床直前から発現が始まり, 妊娠の進行に伴い発現が噌加することを確認した。また,占且尺PE」および九E尺㌢g-Cは栄養 腰細胞に特異的に発現すること,特に栄養膜二核細胞(BNC)に発現することがわ7∫血 hybridizationにより明らかとなった。これらのことから,.ウシ内在性レトロエレメントは, ヒトやマウスのレトロエレメントと同様に,胎盤および胎膜の栄養膜細胞に発現し,胎盤 形成,栄養膜細胞の分化とその特性に重要な役割を担っていると推定した。これらウシレ トロエレメントの胎盤栄鹿膜細胞での機首巨を史に解析するため,ウシ栄養膜細胞(BT細胞 系)の∫乃Vか0培養系を用いてレトロエレメントの発現動態と細胞特性について検証した。 占且尺柁一βを除いた4種のウシレトロエレメントは,体細胞系の細胞に比較して,明らかに 異なる発現動態を示した。特に,占且尺柁」およびBERV-Kle乃Ⅴは,BNC特異的マーカー 迫伝子である占C£汀ノ,占脚一ノおよび古殿Gノを強く発現する細胞系で高発現した。これは, ウシ栄養膜BNCの特性並びにその機能制御に,わ且尺柁」およびBERV-Kle乃Vが関与する ことを示唆している。 第三章では,BNCの形成にレトロエレメントが関与するかを検証するため,BT細胞系を 用いi乃Vか0で栄養膜細胞の二核化を誘導した時の,同遺伝子の動態を探索した。BT細胞 をマトリゲル上に培養し,BNCマーカー迫伝子の発現からBNC誘導を確認した。BNCマ ーカーの上昇が確認できたBT-1およびBT-Cでは,bERn-AおよびBERV-Klenv迫伝子 の発現上昇を認めた。これらレトロエレメント迫伝子とBNCマーカー迫伝子の発現間に高 い相関性を認めた。これらの結果はBNCの機能分化,いわゆる栄養膜細胞特異的分子の産 生ならびに形態的変化にレトロエレメントが関与することを示唆している。 第四草では,ウシレトロエレメントの栄養膜細胞での機能検証の一環として,これらレ トロエレメントの細胞融合能を検証した。融合実験にはCOS-7-COS-7細胞系並びにCOS-7 -ウシ子宮内膜由来線緋芽細胞(EF)系を用いた。BERV-Klenvは,COS-7二cos-7細胞間 ならびにCOS-7-EF間でともに細胞融合能を示した。他のレトロエレメントでは細胞融合 能を検出出来なかった。これら結果はレトロエレメントが細胞融合能を有することを示し ており,ウシ胎盤栄衣膜細胞におけるBNC形成機序に新しい仮説を提唱するものである。

それ故,BERV-Klenvを含むウシレトロエレメントは弟床後のBNCと子宮内膜細胞との融

合,BNCの二核化あるいは栄養膜細胞の分化過程に主む朗勺な役割を果たすことを示唆して いる。 本研究では,りウシ胎膜および胎矧こウシレトロエレメントが発現すること,2)ゐ五月柁一月 およびBERV-Klenvが,BNCの成立,特性,機能の発現に関与すること,3)BERV-Klenv は,細胞融合能を有することを明らかにした。 これらウシ胎盤組織におけるレトロエレメントの機能検証は,晴乳動物が陸生となり胎 子を胎盤という組織を介して育む,いわゆる胎生獲得と言う進化過程におけるウイルス由 来エレメントの役割と機能,それらの組み込み機構の解明に新しい研究展開を提言するも のである。

(4)

審 査 結 果 の

本研究は,ウシ胎盤における内在性レトロエレメントの発現・同定および栄適膜細胞に おける機能について検索したものであり,第一章では,ウシ胎盤に3種類の新たな内在性

レトロウイルスエンベロープ辿伝子すなわちbovine endogenous retrovirus envelope-1ike

transcriptA(bER柁-A),bER膵-BおよびbERレ官-Cを同定した。これらの迫伝子が非妊娠期 子宮,胎盤および胎膜で発現することを確認し,その塩基配列解析から∂且尺柁一月および ∂且皮相-Cは,ガンマレトロウイルス由来であると推測した。 第二章では,上記の3レトロエレメント並びにbovineendogenousretroviruSK】(BERV-Kl) envおよびBERV-K2envの受精月杢,胎膜,胎盤および子宮での発現プロファイルを解析し, このうち∂且尺和一」およびBERV-Kle乃Vが着床直前から発現し,妊娠の進行に伴い増加す ること,insituhybridizationによりbER柁-Aが栄養膜二核細胞(BNC)に特異的に発現する ことを明らかにした。加えて,f〃V加ウシ栄養膜細胞系(BT細胞系)を用いた解析から, ∂且皮相一βを除いた4種のレトロエレメントがBT細胞では体細胞系の細胞に比較して,異 なる発現動態を示し,bERn-AおよびBERV-KlenvがBNCの特異マーーカー迫伝子である ∂C野〃,∂夕月クーノおよび∂朗GJ辿伝子の発現と関連することを発見した。 第三章では,BT細胞の内BT-1およびBT-Cをマトリゲル上に培養することにより,BNC 細胞を誘導し,BNC誘導細胞ではbER昭一AおよびBERV-Klenvの発現が上昇することを 明らかにした。これらレトロエレメントと BNCマーカー迫伝子の発現は高い相関性を示 すことから,栄養膜細胞の多核化にレトロエレメントが関与すると推定した。 第四章では,ウシレトロエレメントの栄養膜細胞での機能検証の一環として,レトロエ レメントの細胞融合能を検証し,BERV-KlenvがCOS-7-COS-7細胞間ならびにCOS_7-ウシ子宮内膜由来線維芽細胞間の細胞融合を誘導することを発見した。これらの結果から, BERV-KlenvがBNCの二核化あるいは栄養膜細胞の機能分化に主導的な役割を果たすと 結論づけた。

これらウシ胎盤組織における内在性レトロエレメントの機能検証は,晴乳動物の進化過

程におけるゲノムへのウイルス由来エレメントの組み込み機構と機能制御の解明並びに胎

盤を介した妊娠成立機構に新しい研究展開を提言するものである。

以上について,審査委員全員一致で本論文が岐阜大学大学院連合獣医学研究科の学位論

文として十分価値があると認めた。 基礎となる学術論文 1)題 目:ExpressionofendogenousretroviruS-1iketranSCriptsinbovine trophoblasticcells 著 者 名:Koshi,K.,Ushizawa,K.,Kizaki,K.,Takahashi,T. andHashizume,K. 学術雑誌名:Placenta 巻・号・頁・発行年:32(7):493-499,2011 2)題 目:Bonemorphogeneticprotein4acceleratestheestablishmentofbovine trophoblasticcelllines 著 者 名:Suzuki,Y.,Koshi,K.,Imai,KヮTakahashi,T.,Kizaki,K. andHashizume,K. 学術雑誌名:Reproduction 巻・号・貢・発行年:142(5):733-743,2011 3)題 目:Bovinetrophoblasticcelldi脆rentiationandbinucleationinvoIves enhancedendogenousretroviruselementexpression 著 者 名:Koshi,K.,Suzuki,Y.,Nakaya,_Y.,Imai,K.,Hosoe,M., Takahashi,T.,Kizaki,K.,Miyazawa,T.andHashizume,K.・ 学術雑誌名:ReproductiveBiologyandEndocrinology 巻・号・貫・発行年:10:41,2012

(5)

-94-既発表学術論文 1)題 目 Expressionofextracellularmatrixmetalloproteinaseinducer (EMMPRIN)anditsrelatedextracellularmatrixdegradingenzymesin theendometriumduringestrouscycleandearlygestationincattle 著 者 名:Mighra,B.,Kizaki,K.,Koshi,K.,Ushizawa,K.,Takahashi,T・, Hosoe,M.,Sato,T.,Ito,A.andHashizume.K. 学術雑誌名:ReproductiveBiologyandEndocrinology 巻・号・頁・発行年:8:60,2010 2)題 目:Expressionofextracellularmatrixmetalloproteinaseinducer (EMMPRIN)anditsexpectedrolesinthebovineendometriumduring gestation 著 者 名:Mishra,B.,Kizaki,K.,Koshi,K.,Ushizawa,K.,Takahashi,T., Hosoe,M.,Sato,T.,Ito,A.andHashizume,K. 学術雑誌名:DomesticAnimalEndocrinology 巻・号・頁・発行年:42(2):63-73,2012

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