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Jour. Geol. Soc. Japan, Vol. 112, No. 3, p , March Kinematic history of the Tanakura Shear Zone at brittle regime

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棚倉破砕帯(大森ほか, 1953)は日本列島における先新第 三系地体構造において,西の領家・足尾帯と東の阿武隈帯と の境界をなし,西南日本と東北日本を境する一大構造線とし て認識されている(例えば, 礒見, 1962; 礒見・河田, 1968; 石 原, 1981).棚倉破砕帯の東西では白亜紀花崗岩類の地質年代 に明瞭な違いが見られ,K-Ar 年代法により西の八溝帯で 60 ∼ 70 Ma,東の阿武隈帯では 90 ∼ 100 Ma と東側でより古 い年代値が報告されている(野沢, 1970; 柴田ほか, 1973).ま た,Sn および F の含有量や Sr の同位体比初生値などの化学 的性質にも差異が認められ(石原, 1981, 1982),濃飛流紋岩 に代表される後期白亜紀∼古第三紀酸性火山活動は,棚倉破 砕帯がその東縁となっている(例えば, 山田ほか, 1982).さ らに,先新第三紀には棚倉破砕帯(構造線)が中央構造線と 連結していた可能性も指摘され(柴田・高木, 1989),棚倉破 砕帯は先新第三紀における日本列島の地体構造上重要な位置 に存在している. 棚倉破砕帯は,白亜紀から古第三紀にかけて大局的には左 は じ め に 横ずれ剪断運動が,中新世のある時期には右横ずれ剪断帯と して活動が認められている(大槻, 1975; 佐藤ほか, 1982; 越 谷, 1986).棚倉破砕帯は幅 3 ∼ 4 km にわたる広い領域で破 砕された岩石から構成されている.そのため,新第三紀の主 要なイベントである日本海拡大の際に,個々の地殻ブロック における差別回転境界を担う弱線の 1 つとして活動した可能 性が高い.日本海の拡大様式については,Otofuji et al. (1985)により“開き戸”モデルが提唱されている.これは, 西南日本と東北日本をそれぞれ 1 つの大きなブロックと見な し,西南日本が時計回りに,東北日本が反時計回りに回転し た結果,日本海が形成されたとするモデルである.一方,日 本海を樺太から韓半島に至る間にある右横ずれ断層群による プルアパート盆地として解釈するモデルも提唱されている (例えば, Jolivet and Tamaki, 1992; Jolivet et al., 1995).さ らに,東北日本における多くの古地磁気学的データの集積か ら,前期中新世(20∼ 15 Ma)に,東北日本は右横ずれ伸張 場において,多くのブロックに分かれながら,全体として反 時計回りの回転運動をしたとするモデル(Yamaji, 1990; Yamaji et al., 1999; Mino et al., 2001)も提唱されている. また,東北日本の前弧域では,北東部から南西部にかけて回 The Tanakura Shear Zone is a NNW-SSE trending major fault which divides pre-Neogene basement rocks into NE and SW Japan. Within the study area, the fracture zone is 3 to 4 km in width, and consists of various kinds of fault rocks derived from the Jurassic accretionary complex of the Yamizo Belt, together with metamorphic and granitic rocks derived from the Abukuma Belt. Distribution patterns of brittle faults, fabric patterns and shear senses of fault gouge within the fault zone are described to interpret kinematics of the Tanakura Shear Zone during the Late Cenozoic. Based on paleo stress fields estimated from shear senses of fault gouge by multiple inverse methods(a technique to separate stresses based on heterogeneous fault-slip data, two brit-tle deformation stages(D1and D2)are identified. During the Paleo-gene, a sinistral brittle fault set was originally generated. During exhumation of the shear zone, the fault kinematics inverted from a sinistral(D1: 17 Ma)to a dextral movement(D2: 15 Ma). Therefore, from Paleogene to the mid-Miocene, fault gouges within the Tanakura Shear Zone were reactivated under switched stress fields.

Abstract

CThe Geological Society of Japan 2006 222

Key words: Tanakura Shear Zone, fault gouge, shear sense, paleo stress field, multiple inverse methods.

棚倉破砕帯の脆性領域における運動履歴

*1

Kinematic history of the Tanakura Shear Zone at brittle regime

*1

淡路動太

*2

山本大介

*3†

高木秀雄

*4

Dohta Awaji*2, Daisuke Yamamoto*3†

and Hideo Takagi*4

2005年 11 月 11 日受付. 2006年 1 月 11 日受理.

* 2 早稲田大学大学院理工学研究科

Graduate School of Science and Engineering, Waseda University, 1-6-1 Nishiwaseda, Shin-juku-ku, Tokyo 169-8050, Japan

* 3 早稲田大学教育学部地球科学教室

Department of Earth Sciences, School of Edu-cation, Waseda University, 1-6-1 Nishiwaseda, Shinjuku-ku, Tokyo 169-8050, Japan

現所属:アクセンチュア(株)

Present address: Accenture Co., Ltd., 1-1-1 Akasaka, Minato-ku, Tokyo 107-6672, Japan

* 4 早稲田大学教育総合科学学術院地球科学教室

Department of Earth Sciences, Faculty of Edu-cation and Integrated Arts and Sciences, Wase-da University, 1-6-1 NishiwaseWase-da, Shinjuku-ku, Tokyo 169-8050, Japan

Corresponding author: D.Awaji, dohta@ ruri.waseda.jp

(2)

Fig. 1. Geological map and cross sections of the study area. An inset shows the index map of the study area. MTL: Median Tectonic Line, ISTL: Itoigawa-Shizuoka Tectonic Line, TSZ: Tanakura Shear Zone.

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転量が順次少なくなっていくことから差別回転運動を指摘 し,さらに,この地域の回転運動は 18 Ma に終了していた とする説(Hoshi and Matsubara, 1998; Hoshi and

Taka-hashi, 1999; Takahashi et al., 1999)も提唱されている.一

方,桑原(1981, 1982)は破砕帯周辺に分布する断層,およ びこれに伴う新第三系の地質構造を解析し,棚倉破砕帯は新 第三紀においても左横ずれ運動があったことを指摘した.天 野(1991)は棚倉破砕帯の西側に沿って存在する新第三系 が,約 17 Ma の左横ずれ堆積盆であることを指摘している. 以上のように,中新世の東北日本における日本海拡大時のテ クトニクスは複雑なものであることが示唆され,棚倉破砕帯 の運動履歴を解明することは重要な課題の 1 つである. 現在地表に分布する棚倉破砕帯は白亜紀から新第三紀に至 るまで,地殻の深所から浅所へ,塑性領域から脆性領域へと 活動の場を順次移しながら形成された様々な断層岩で構成さ れており(越谷, 1986),新第三紀における棚倉破砕帯の運 動像は,脆性領域で形成された断層岩類に保存されている. しかし,脆性断層岩類の運動学的記載は十分に行われてはい ない.本論では棚倉破砕帯に発達する断層ガウジに注目し, 古応力解析と破砕帯の運動像の復元から,脆性領域での棚倉 破砕帯の運動履歴に関する議論を行う. 大森ほか(1953)は,福島県棚倉町において明瞭な 2 本 の断層が新第三系を東西に分け,この 2 本の断層に挟まれた 帯状の地域において,古期岩類が著しく破砕されているのを 見出し,この帯状に伸びている地域を棚倉破砕帯と呼んだ. この 2 本の断層は,茨城県常陸太田市から福島県棚倉町にか けて,間隔約 3 ∼ 4 km で NNW−SSE 方向の明瞭なリニア メントをもち,確認されている限りではすべて高角で直線的 である(例えば, 大森ほか, 1953; 大槻, 1975; 桑原, 1981).こ の 2 本の断層は棚倉東縁断層,棚倉西縁断層と呼ばれ,東縁 断層より東側は破砕帯東部,西縁断層より西側は破砕帯西部, そして,2 本の断層に挟まれた地域は破砕帯主部と呼ばれて いる(大槻, 1975).破砕帯東部には,阿武隈帯の花崗岩類, 竹 たか 貫 ぬき 変成岩類,日立変成岩類が分布し,破砕帯西部には,美 濃−丹波−足尾帯に対比されるジュラ紀付加体の八溝帯,お よび白亜紀の八溝帯花崗岩類が分布している.破砕帯主部に は,これら破砕帯東部と西部に分布する古期岩類を原岩とし た各種断層岩類が混在する.また,破砕帯東部・西部・南部 には新第三系が広く分布している.破砕帯西部のものは棚倉 東縁断層に沿って幅 5 ∼ 15 km の広い分布をもち,破砕帯 の左横ずれ運動に伴う横ずれ堆積盆であることが指摘されて いる(天野, 1991).破砕帯東部のものは棚倉東縁断層に沿っ て幅 2 ∼ 4 km の分布をもち,破砕帯南部では破砕帯主部を 広く覆う形で分布する. 本論で扱う調査地域は,福島県南東部,久慈川流域に位置 する矢 や 祭 まつり 町地域である(Fig. 1).本調査地域は棚倉西縁・東 縁の両断層に挟まれた破砕帯主部にあたり,阿武隈帯花崗岩 類,竹貫変成岩類,八溝帯堆積岩類をそれぞれ原岩とする断 層岩類で構成されている.破砕帯主部には,様々な断層活動 地 質 概 説 の結果,これら構成岩類がレンズ状に分断されて取り込まれ ている.棚倉東縁断層より東部には,脆性変形の影響を受け ていない阿武隈帯の花崗岩類が分布している.また,棚倉西 縁・東縁の両断層に沿った地域では,新第三系が分布する. 1.八溝帯堆積岩類を原岩とする断層岩類 本断層岩類は,岩相の類似性や広域変成作用を受けていな いことから,八溝帯の堆積岩類に起源が求められている(越 谷, 1986).これらは,破砕帯主部の西側に幅約 500 m で棚 倉西縁断層とほぼ平行に分布し,一部はレンズ状岩体として 取り込まれている(Fig. 1).原岩構成は砂岩・頁岩を主体と しており,一部にチャートや石灰岩を伴っている.千枚岩化 が顕著に認められ,断層近傍では小褶曲をなしていることが ある.これら千枚岩化した岩石には片理面上に明瞭な鉱物線 構造が認められる.面構造の傾斜はばらつくが,線構造の沈 下方向は NNW または SSE 方向に集中し,棚倉破砕帯の延 長方向にほぼ平行である.また,岩体中にはカタクレーサイ トや断層角礫といった脆性変形集中域を広く認めることがで きる. 2.阿武隈帯竹貫変成岩類を原岩とする断層岩類 本断層岩類は,越谷(1986)において阿武隈帯竹貫変成岩 類起源の断層岩類としてまとめられたものに相当する.本調 査地域では,北東部の丘陵地に分布し,一部で阿武隈帯花崗 岩類起源の断層岩類にレンズ状に取り込まれる(Fig. 1).こ れらの原岩は主に黒雲母片麻岩と珪質片岩で,一部に角閃岩 の小岩体を挟んでいる.これらは広くマイロナイト化を被っ ており,NW−SE 走向で中角度の面構造をもったものでは左 横ずれの剪断センスを示す.また,局所的にマイロナイトの 面構造を切る形で,脆性断層岩の発達が認められる.特に東 縁断層近傍では顕著な断層角礫帯が形成されており,その中 心部に断層ガウジを伴う歪集中帯を形成している. 3.阿武隈帯花崗岩類を原岩とする断層岩類 本断層岩類は,越谷(1986)における花崗閃緑岩を主とす る東館 ひがしだて 岩体と,アダメロ岩を主とする大 岩体を起源とす る.これらの花崗岩類が阿武隈帯起源であることは,岩体中 におけるジルコンの結晶形態指数の傾向が八溝帯におけるも のとは異なり,阿武隈帯のものと一致することからも支持さ れている(Ohira, 1994).この岩体は,調査地域南部におい て破砕帯主部の主構成岩体であるが,分布域の北部に向かう につれてレンズ化し,八溝帯堆積岩類,竹貫変成岩類を原岩 とする断層岩類と混在するようになる(Fig. 1).これらは広 くマイロナイト化を被っており,竹貫変成岩類由来のマイロ ナイトと同様に,NW−SE 走向で中角度の面構造をもったも のでは,左横ずれの剪断センスが優勢である.また,マイロ ナイトの構造を切る形で,脆性断層岩類が発達している. 棚倉破砕帯主部には,先新第三紀の基盤岩類を原岩とする 延性から脆性までの,様々な変形様式で形成された断層岩類 が分布している.その中でも,本調査地域には,カタクレー サイト,断層角礫,断層ガウジといった脆性領域で形成され た断層岩類が大小様々な規模で帯をなし,密に分布している 断層ガウジの分布様式 おおぬかり

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のが特徴である.断層ガウジやカタクレーサイトなどの脆性 変形により形成された断層岩は,マイロナイトなどと同様に 面構造や線構造をもち(e.g. Chester et al., 1985; Rutter et al., 1986; Chester and Logan, 1987; Sammis et al., 1987;

Kano and Sato, 1988; Tanaka, 1992),延性変形に見られる

変形微細組織と類似した組織が記載され(高木・小林, 1996; Cladouhos, 1999a, b),それらが剪断センス決定において有 力な手がかりを与える.なお,脆性断層岩類の分類法と定方 位試料の採取法と研磨法は高木・小林(1996)に従い,断層 ガウジの複合面構造についての用語法は,Rutter et al. (1986)に従う. 本調査地域で認められた脆性断層の分布概略図を Fig. 2 に 示す.これら断層群は各々で認められた断層ガウジ帯の姿勢 と剪断センスの傾向からグループ化したものである.断層名 Fig. 2. Distribution map of fault systems in the study area. Initials of faults mean the groups of faults classified by the attitudes of the fault planes and slip directions.

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における最初の英字はグループ名を示しており,各グループ

は以下のように定義される(Table 1).

・グループ A(A-1, A-2); NW−SE 走向,中∼低角,SW

傾斜主体で,一部低角 E 傾斜,上盤西方移動の運動セ ンス. ・グループ B(B-1, B-2); NE−SW 走向,中∼低角,NW 傾斜,左横ずれの運動センス. ・グループ C(C-1 ∼ C-6); NW−SE 走向,中角,W 傾斜, 右横ずれの運動センス. ・グループ D(D-1 ∼ D-4); NNE−SSW 走向,中∼高角, Eまたは W 傾斜,右横ずれの運動センス.

・グループ E(E-1); NNW−SSE 走向,中∼高角,E 傾 斜,右横ずれの運動センス. ・グループ F(F-1 ∼ F-3); NW−SE 走向,高角,E また は W 傾斜,剪断センス不明. 各グループの断層の分布様式は,調査地域ほぼ中央部に位 置する東館を境に北部と南部で異なっている.北部に位置す る下石井地域ではグループ C と F に属するものが卓越し, NW−SE 方向の断層群が雁行配列している.これに対し,南 部に位置する小田川地域では NW−SE 走向の断層は認めら れず,NNE−SSW 走向の断層群(グループ D)で特徴づけ られる.中部に位置する東舘地域には,それぞれのグループ に属する多くの断層が密に分布している. 1.下石井地域 下石井地域は八溝帯堆積岩類,竹貫変成岩類,阿武隈帯花 崗岩類をそれぞれ原岩とする断層岩が認められる.認定され た断層は NW−SE 方向のものが卓越し,各岩体の分布もこ の方向に伸びた形状をしている.中石井,大内沢で確認され た断層ガウジを伴う F-1,F-2 は,ほぼ断層面が鉛直である が,その他のもの(C-1 ∼ C-5)は 40 ∼ 60 °で SW 方向に 傾斜している.この地域で確認された破砕帯は,いずれも断 層角礫帯が 1 m 前後で,変形の集中した断層ガウジ帯(10 cm弱)を伴っている.断層角礫帯と断層ガウジ帯の境界面 では断層条線が観察される.下石井地域で確認された断層条 線の姿勢は,いずれも水平成分が強く,横ずれ断層として活 動したことを示唆している.この地域で最も顕著な破砕帯は 大内沢流域の入山に露出している C-4 である(<c4-1>, < c4-2>).この断層は約 1 m にわたる断層角礫帯の中心に幅 10 cm程の断層ガウジが発達しており,ほぼ水平に近い断層 条線が観察される.この断層ガウジ(Fig. 3d)は黒色緻密な 基質をもち,直径 1 ∼ 10 mm で円形度の良い白色フラグメ ントを 10 %以下の割合で含んでいる.右横ずれを示す P-R1 ファブリックの発達も弱いながら認められる.このように, 下石井地域における NW−SE 走向で雁行配列をなす断層群 の断層ガウジには,認められる限りでは右横ずれの剪断セン スを示している. 2.東舘地域 東舘地域には八溝帯堆積岩類,竹貫変成岩類,阿武隈帯花 崗岩類をそれぞれ原岩とする変形岩類が複雑に入り組んで分 布し,すべてのグループに属する断層が密に発達している (Figs. 1, 2).特にグループ A や B の中∼低角断層の発達が, 他の地域と特徴を異にしている.東舘地域の中でも,破砕帯 の露頭が連続的に観察される矢沢川流域の金沢ルート(Fig. 4)および,田川流域の宝坂ほうさかルート(Fig. 5)のルートマップ をそれぞれ示す.ルートマップ上に示した強粉砕の岩石とは, 脆性的な粉砕を強く被り固結性を失った断層角礫状のものを 示し,片理面などを利用した薄いガウジ帯の発達も認められ る.弱粉砕の岩石とは,原岩の組織はかろうじて認められる が,角礫化を弱く受けているものを示す.非粉砕の岩石とは, 角礫化を免れて固結性を維持しているものをそれぞれ示して いる.つまり,これらは脆性的な変形を被った岩体の角礫化 の度合い,すなわち固結性の程度を相対的に示したものであ る. (1)金沢ルート 金沢ルートは調査地域中央に流れる矢沢川 流域に位置し(Fig. 2),竹貫変成岩類と阿武隈帯花崗岩類を 原岩とする断層岩が分布している(Fig. 4).竹貫変成岩類起 源のものは,原岩の組織を残しながら角礫化を受けている. 片理面の姿勢は NW−SE ∼ NNW−SSE 走向,NE 傾斜であ る.この面を利用して薄くガウジ化している部分も認められ るが,花崗岩類起源のものと変成岩類起源のものとは, Table 1. Data of the attitude of fault plane and matrix colors of fault

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Fig. 3. XZ-polished slabs of foliated fault gouges from the study area. Cohesive fragments(CF)and aggregates of crushed fragments(ACF)

are identified. All fault gouges show shape preferred orientation(P-foliation)of fragments. The green fault gouge(a)contains much chlorite.

Black fault gouges(b-e)contain much carbonaceous material in the matrix. The gray fault gouge(f)contains much smectite and kaolinite,

and show asymmetric tails(AT)around fragments.(a)A-1<a1-1> in Kanazawa.(b)A-1<a1-4> in Kanazawa.(c)B-2<b2-1> in Hosaka.

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NE−SW 走向,NW 傾斜である中角断層 B-1 で境されてお り,この断層を切るような方向に発達している.変成岩類は 泥質や砂質,および珪質な片岩の互層であり,カタクレーサ イト化,および断層角礫化を受けている.原岩の組織を示す 自形鉱物として認められるものは,石英,カリ長石,斜長石, 白雲母,ザクロ石,不透明鉱物などである.これらの岩石は カタクレーサイト化に伴う割れ目が絹雲母,方解石などの二 次鉱物で充填されており,また,斜長石,黒雲母などの緑泥 石化も認められる.花崗岩類を原岩とする岩体においても, カタクレーサイト化,断層角礫化を広く被っている.原岩の 組織を残した部分の構成鉱物は,石英,斜長石,カリ長石, 黒雲母,不透明鉱物などであり,割れ目を充填する形で絹雲 母,方解石の晶出が認められ,黒雲母の緑泥石化も顕著であ る.また割れ目を充填する方解石には Burkhard(1993)の タイプⅡ変形双晶(変形温度: 150 ∼ 300 ℃)が発達してお り,方解石の晶出後も岩体が変形を受けたことを示唆する. カタクレーサイト化は広範囲にわたって認められるが,角礫 化の強弱は断層ガウジ帯に近いところで強くなっていること が多い(Fig. 4).このルートからは,変成岩類と花崗岩類の 境界をなす B-1 で 1 試料(<b1-1>),花崗岩類中に発達す

る低角断層 A-1 で 4 試料(<a1-1>, <a1-2>, <a1-3 >, <a1-4>)の断層ガウジを採取し,剪断センスが得られた (Table 1, Fig. 4). <b1-1>は黒色基質の断層ガウジで,丸みを帯びた優白色 フラグメントをおよそ 20 %ほど含み,明瞭な Y-P-R1ファブ リックを示す.このことから,B-1 には,やや正断層成分を 含む左横ずれの剪断センスが認められる(Fig. 4).

A-1は,<a1-1>, <a1-2>, <a1-3>のような緑色基質

の断層ガウジ帯と,<a1-4>のような黒色基質の断層ガウジ 帯の 2 本がほぼ平行に配列した NW−SE 走向,低角傾斜の 断層系として認められる(Fig. 4).緑色基質の断層ガウジは Y-P-R1ファブリックが認められ,上盤が W から WSW 方向 に移動する剪断センスを示す(Fig. 3a).また,黒色基質の 断層ガウジ(<a1-4>)は Y-P-R1ファブリックが明瞭で, 上盤 WNW 方向で右横ずれ剪断センスを示す(Fig. 3b).以 上のように,A-1 は,全体として上盤西方移動を示す剪断セ ンスが卓越する. (2)宝坂ルート 宝坂ルート(Fig. 5)は田川流域にあたり, 棚倉東縁断層のトレースから,およそ 400 m 西側の破砕帯 主部側に位置している(Fig. 2),このルートに分布する断層 岩類は,阿武隈帯の花崗岩類を原岩として,マイロナイト化, カタクレーサイト化,断層角礫化を重複して被っている.こ の宝坂ルートには C-6,B-2,E-1 を連続的に観察すること ができる.周辺岩体の固結性を維持した部分に認められる変 質鉱物は,緑泥石,絹雲母,方解石である. C-6沿いでは 2 試料(<c6-1>, <c6-2>)の黒色基質の 断層ガウジを定方位試料として採取した.主剪断面の姿勢は NW−SE 走向,SW の中角傾斜である(Table. 1).これら断 層ガウジは優白色フラグメントが P 面を形成し,右横ずれの 剪断センスを示す. B-2沿いでは 1 試料(<b2-1>)の黒色基質の断層ガウジ を定方位試料として採取した.剪断面の姿勢は NE−SW 走 向,NW 傾斜で低角である.フラグメントは部分的に褐色を 帯びた白色を呈し,径 1 ∼ 10 mm の“円磨度”の高いもの と,粉砕しながら伸張して P 面を形成する粉砕物集合体が多 く認められ,Y-P-R1ファブリックを形成している(Fig. 3c).

(8)

剪断センスは上盤が SW に移動する正断層成分を伴った左横 ずれを示す.

E-1沿いで採取された断層ガウジ 2 試料(1>,

<e1-2>)は,N−S ∼ NNW−SSE 走向,E 傾斜の剪断面をもっ ている灰色基質の断層ガウジである.白色のフラグメントは “円磨度”および固結性が高く,細粒物集合体には乏しい. これらは P 面を形成しているが,R1面の発達は弱い.基質 部は流動組織を示し,σ型のテイルが観察され(Fig. 3f), 右横ずれの剪断センスを示す. 3.小田川地域 小田川地域には東側に阿武隈帯花崗岩類を原岩とする変形 岩類,西側に幅約 500 m の八溝帯堆積岩類を原岩とする変 形岩類が分布している(Fig. 1).この地域には NNE−SSW 走向の高角断層が花崗岩類と堆積岩類の境界部に発達してお り,堆積岩帯中に発達する D-3,および花崗岩体中に発達す る D-4 が認められる. D-3は幅数 100 m の広範な断層角礫帯をなし,阿武隈帯 の花崗岩類と八溝帯の堆積岩類を原岩とするものが混在し, 破砕の強弱を繰り返しながら角礫化している.断層角礫帯中 には断層ガウジが何条も存在し,それらの姿勢はいずれも高 角で,断層角礫帯に平行である. これらの中で,八溝帯堆積 岩類を原岩とする断層ガウジ(<d3-1>, <d3-2>)は,花 崗岩類を起源とするものに比べて粘土化が強いものは認めら れないが,複合面構造(Y, R1)の発達が顕著である.観察さ れた断層ガウジからはいずれも右横ずれの剪断センスが認め られる.また,中川支流沿いの阿武隈帯花崗岩類を原岩とす る断層ガウジ(<d3-3>)は,幅約 20 cm で黒色緻密な基 質をもち,部分的に褐色を帯びた白色フラグメントを約 20%ほど含んでいる.フラグメントには,“円磨度”の高い 径数 mm のもの,およびフィッシュ状に伸びた細粒物集合 体をなしているのが観察される.これらフラグメントの形態 は明瞭な Y-P-R1ファブリックを示し,右横ずれセンスが認 められる(Fig. 3e).このように,D-3 では,観察された脆 性断層でいずれも右横ずれセンスを示し,D-3 は全体として 右横ずれ剪断帯として活動していたことが示唆される. 本調査地域の断層ガウジは基質の色によって 3 つの種類に 分けられる.1 つは基質が黒色,フラグメントが白色のもの で,このタイプのものを黒色ガウジと呼ぶ.調査地域で認め られる断層ガウジの多くはこのタイプである.また,基質が 緑色を呈し,白色のフラグメントをもつものを緑色ガウジと 呼び,灰色基質で白色のフラグメントをもつものを灰色ガウ ジと呼ぶ. 1.黒色ガウジ このタイプの断層ガウジの基質は黒色を呈し,細粒緻密な 組織を示す(Fig. 3b-e).フラグメントは有色鉱物に乏しく, 優白色を呈するものが多い.中には,フラグメントの周囲が 赤褐色を帯びているものも認められる.フラグメントが原岩 の固結性を維持して粘土基質の中に取り残されているものも 認められるが,フラグメント自体が粉砕されて連なり,優白 色の細粒物集合体を形成しているものが多い(Fig. 3b-e). 固結性を維持したフラグメントの伸長比は 2 を大きく超える ことはなく,“円磨度”が高いのが特徴である.それに対し, 粉砕物集合体は著しく伸長して,強い定向性を示し P 面を形 成している.粉砕物集合体は R1剪断面により切られている ことが多く,これらを多く含むときには,明瞭な P-R1ファ ブリックを形成し,剪断センスの決定に有効である. 2.緑色ガウジ このタイプの断層ガウジの特徴は基質部が緑色を呈し,細 粒緻密な組織を示す(Fig. 3a).これらは変質を被り緑色を 帯びた花崗岩類中に局所的に発達している.フラグメントは 断層ガウジの組織

Hosaka

100 0 200 m

<C-6>

<B-2>

<E-1>

Taga w a R. c6-1 c6-2 e1-2 b2-1 e1-1 32 32 76 76 46 10 20 30 46 40

Black matrix gouge Black matrix gouge

Gray matrix gouge Black matrix gouge

Fault gouge

Strongly pulverized Abukuma granitic rocks Weakly pulverized Abukuma granitic rocks Non-pulverized Abukuma granitic rocks Strike & dip of fault

Legend

Attitude of shear plane and slip direction of hanging wall (Schmidt net : lower hemisphere)

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有色鉱物に乏しい優白色のもので,粉砕物集合体も一部では 認められるが,原岩の組織を良く残し,“円磨度”の高いフ ラグメントが多く認められる.フラグメントの長軸方向は XZ面において形態定向配列を示しており,これが P 面を形 成している.フラグメントの量に対し,細粒緻密な基質の割 合が高く,P 面を切る R1剪断面の発達は顕著ではない. 3.灰色ガウジ このタイプの断層ガウジは灰色を呈する基質部をもち,他 のタイプと同様に,フラグメントは有色鉱物に乏しく優白色 を呈する(Fig. 3f).フラグメントの含有比率は低く,粘土 質の基質の割合が高い.フラグメントは径 10 mm 以下で固 結性を維持した円磨度の高いものを主とする.これらは粘土 基質中に孤立しており,粉砕物集合体の発達は顕著ではない. 原岩の組織をそのまま残しているようなフラグメントはほと んど認められず,フラグメントの有色鉱物含有量は著しく低 い.フラグメント周辺では灰色の葉片状基質部に流動組織が 明瞭に認められ,σ型の非対称テイルが観察される(Fig. 3f). 各タイプの特徴的な断層ガウジ 9 試料について,XZ 研磨 面におけるフラグメントの形態を解析して,本地域における 断層ガウジの運動像の特徴を記載する.今回解析を行ったフ ラグメントは,研磨片スケールにて観察される粘土基質中に 認められる面積 1 mm2以上のものについてである.粘土基 質中に 1 mm2以上のフラグメントとして認められるものに は,単一粒子で母岩の組織を残している破砕岩片,および粉 砕化を強く受けた岩片が固結性を保ったまま 1 つの集合体を 形成している粉砕物集合体の 2 種類がある. 1.測定方法 フラグメントの形態測定の手順を以下に示す.まず断層ガ ウジの XZ 面における研磨片についてスキャナーを用いて TIFF形式で取り込み,画像処理ソフト Photoshop(Adobe 社)上で開く.今回解析に用いた断層ガウジのフラグメント は白色で有色鉱物がほとんど見られず,基質と明瞭なカラー コントラストをもっているので,取り込んだ画像を Photo-shop上にて基質とフラグメントの色調が分かれるように明 るさ,コントラストを調整し,白黒の二階調画像に変換する. この時点で,フラグメントは白,基質は黒に塗り分けられて いるので,階調を反転し基質を白,フラグメントを黒にする. 余分なノイズを調整して二階調のビットマップに変換後,フ

リーソフトの NIH Image Version 1.62 にて,1 mm2以上の

フラグメントについて,面積(A),周長(L),長軸の長さ

(a),短軸の長さ(b),伸長比(R = a/b),Y 面からの反時

計回りを正とした長軸方向の角度(φ)をそれぞれ測定し た. 2.R-φプロット Fig. 6は,各研磨片試料において,横軸に伸長比(R),縦 軸に Y 面からの長軸方向角(φ)をプロットしたものであ る.いずれの試料においても,フラグメントの伸長比(R) は,およそ 1 ∼ 7 の間に収まる.中には伸長比 7 を超えるよ 断層ガウジのフラグメントの形態解析 うな著しく伸長した形態をもつフラグメントも存在するが, これら大伸長比をもつフラグメントの長軸方向(φ)は Y 面 に近い角度に分布している.また,フラグメントの伸長比 (R)は,ある角度(φ)でピークをもつような山型の分布形 態を示し,伸長比の高いフラグメントほど,ある方向に強く 定向配列していることを示す.R-φプロットにおける山型分 布のピーク角度(φ)は,Y 面とやや斜交しているもの (Fig. 6a-c, f, g)と,Y 面とほぼ平行なもの(Fig. 6d, e, h,

i)の 2 通りに分けられる. 3.ローズダイアグラム フ ラ グ メ ン ト の 長 軸 方 向 の 頻 度 分 布 を 見 る た め に , Cladouhos(1999a)に従い,伸長比 1.4 以上のものについ てローズダイアグラムを作成し,長軸方向(φ)の平均ベク トルと平均ベクトルのベクトル強度をそれぞれ求めた(Fig. 7).ローズダイアグラムは,いずれの試料においてもベクト ル強度 0.8 ∼ 0.9 で,長軸方向(φ)は強い定向性をもつこ とを示している(Fig. 7).また,ローズダイアグラムにおけ る最頻値角度と平均ベクトルの角度はほぼ一致している.こ れらの測定から本調査地域の断層ガウジは,フラグメント長 軸方向(φ)の平均ベクトルが 7 °以上で,Y 面から低角度 に斜交しているもの(Fig. 7a-c, f, g),および平均ベクトル が 7 °未満で,Y 面にほぼ平行なもの(Fig. 7d, e, h, i)の 2 つの分けられる.また,この最頻値角度は Fig. 6 の R-φプ ロットにおける伸張比のピークが示す角度とも一致し,剪断 センスを示す P 面の斜交性とも調和的である. 4.フラクタル解析 破砕物や断層ガウジ,カタクレーサイトなどの脆性断層岩 類における構成粒子の粒径分布はフラクタル的になることが 知られている(例えば, Turcotte, 1986 ; Sammis et al., 1987 長濱, 1991; 長濱ほか, 1994).そこで,本地域の断層ガウジに おいて,フラグメントの平均半径 r(=(A/π)1/2)の累積頻度 分布曲線 N(r)について,N(r)= N’r-Dへの近似を行い,フ ラグメントの粒径分布におけるフラクタル性を調べた(Fig. 8).D は粒径分布に関するフラクタル次元であり,N’は測 定数に依存する定数である.近似の結果,いずれの試料にお いても,平均半径(r)の累積頻度分布(Fig. 8)は,指数関 数 N(r)= N’r-Dと相関係数 0.96 以上の高い相関をもってお り,フラクタル分布であることが示唆される.また,測定対 象にしたフラグメントは,研磨片スケールで粒子面積 1 mm2 以上の比較的粗いものであるため,長濱ほか(1994)で指 摘されているような粒径が破壊の下限サイズに達して,累積 頻度分布曲線を頭打ちにするような現象は認められず,いず れの試料においても測定された最小粒径まで良く直線近似さ れている.フラクタル次元 D の値は,サンプル数が少なく 粒径の測定範囲が小さいもので 2 を越すが(Fig. 8f),その 他の試料では D = 1.6 ∼ 1.8 の間でほぼ一致する(Fig. 8a-e, g-i 本調査から得られた断層ガウジを伴う脆性剪断帯は,東 縁・西縁断層に挟まれた破砕帯主部の中で,様々な方位をも 断層ガウジのスリップデータによる古応力解析

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って分布している.そこで,これら様々な方位を向いた脆性 剪断帯の剪断センスは,破砕帯主部地域全体が 1 つの剪断帯 として活動したときの剪断センスを反映していると仮定し て,これらの断層ガウジから得られる断層スリップデータか ら,棚倉破砕帯を活動させた古応力の復元を試みる.古応力 の復元には,複数の応力履歴を復元することが可能な小断層 解析の手法として注目されている多重逆解法(Yamaji, 2000; 山路, 2001)を適用する. 1.多重逆解法 逆解法(Angelier, 1979, 1984)は 3 つの応力主軸の方向 が解るだけでなく,それら主応力の応力比を求めることがで きる強力な古応力解析ツールである.ただし,求められるの は 3 つの主応力の応力比であり,それらの絶対値を決めるこ とはできない.多重逆解法は,小断層解析で広く用いられて きた逆解法を発展させたものである.Angelier(1979, 1984) などの古典的逆解法では,与えられた断層スリップデータが 単一の応力状態で活動したと仮定しなければならず,断層ス リップデータの不均一性を評価することは難しい.しかし, 多重逆解法は複数の応力状態で活動した不均一な断層スリッ プデータから,各応力を分離できる可能性をもっている.多 Fig. 6. Relationship between orientation(φ)of long axis and aspect ratio(R)of fragments in XZ-polished slabs of fault gouges.(a)Green fault

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重逆解法では,まず,与えられた断層スリップデータ N 個 から k 個を任意に取り出し,その k 個のデータに対して古典 的逆解法を適用して最適応力を求める.これをすべての組み 合わせ(NCk個)で計算を行って,NCk個の最適応力解を求 める.そして,求められた最適応力群の分布に対してクラス ター解析を行って解の収束性を吟味して,断層を活動させた 応力を推定する.もしクラスターが複数形成されていれば, そのクラスターの数に応じて,断層を活動させた応力が分離 できたことになる.クラスターを作らないようならば,デー タの不均一性が強いということを示している.通常,これら 小断層解析は,比較的単純な応力状態を反映している小規模 な断層に適用するための手法である.大規模な断層では,変 位量が大きく,変形に伴う断層面の回転や,重複変形,歪分 配など複雑な変形履歴が想定され,これらの手法を適用する のは難しい.しかし,本調査地域の幅数 cm を超えるような 断層ガウジを伴う脆性剪断帯では,剪断帯が破砕帯主部全域 にわたり様々な方向に分布していることや,断層ガウジの剪 断センスがその剪断帯の活動履歴の中でも最後の剪断センス を保存していることを考えれば,断層ガウジ活動時の最後の 応力状態を復元できる可能性がある.また,多重逆解法は与 Fig. 7. Rose diagrams showing orientation of long axis of fragments in XZ-polished slabs of fault gouges. All types of fault gouges have

P-foli-ation oblique to Y-shear and obliquity of mean vector with respect to Y-shear indicates sense of shear(shown by arrows)(a)Green fault gouge..

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えられた断層スリップデータの均一性も評価することができ るので,本調査地域で得られた剪断センスがどの程度均一な 応力を反映しているのか,もしくは,複数の応力を反映して いるのかを議論することができる. 解析に用いた断層スリップデータは,断層ガウジより剪断 センスを得ることができたグループ A ∼ E の 16 試料である (Table 2).これらは黒色,緑色,灰色の各タイプにおける 断層ガウジから得られたデータを含んでいる.解析には京都 大学,山路 敦博士の研究室(http://terra.kueps.kyoto-u.ac.jp/~yamaji/)で公開されている多重逆解法ソフトウェ

ア パ ッ ケ ー ジ ver. 4( MI main processor version 4:

mim4.exe, MI Viewer version 4.04: Miv4.exe)を用いて行

った. 2.解析結果 (1)解の収束性 多重逆解法により得られた最適応力群が有 意なクラスターを形成するかを調べるために,全断層データ から各計算段階で取り出す抽出データ数 k を 2 ∼ 7 に変化さ せて,最適応力群の分布様式を調べた(Fig. 9).抽出数 k を 増やしていくと,得られる最適応力の分布クラスターは徐々 に収束していく傾向が認められ,クラスターが有意な応力で あることが示唆される(Fig. 9).この中で,顕著に収束する クラスターが 4 つ(S1∼ S4)認められる.クラスター S1は, 応力比Φ(=(σ2−σ3)/(σ1−σ3))が 0.2 ∼ 0.6 で,σ1が WNW方向,σ3が NNE 方向で共に水平方向に近いところに 分布している.クラスター S2は,応力比Φは 0.2 ∼ 0.6 で, σ1が WSW 方向に中角度で沈下したところ,σ3が SE 方向 で水平に近い方向にクラスターをもつ.クラスター S3は, 応力比Φが 0.2 ∼ 0.7 で,σ1が SSW 方向中角度沈下で,σ3 が ESE 方向で水平に近いところに分布している.クラスタ ー S4は,応力比Φは 0.4 ∼ 0.7 で,σ1が SSW 方向で水平, σ3が NW 方向で水平に近いところに分布している. (2)最適応力と各断層データの対応関係 多重逆解法で得ら れた複数の応力が,どの断層の活動に対応しているかを評価 するために,得られたクラスターの代表的な値をそれぞれ仮 Fig. 8. Log-log plot of cumulative numbers and diameter of fragments in XZ-polished slabs of fault gouges.

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定して,分析に用いた断層面に,その代表的な応力値で断層 を活動させて期待されるスリップ方向と,観察により得られ た実際のスリップ方向との角度差を比較する.角度差が小さ いものは,その応力で活動した可能性が高い.また,1 つの 断層のスリップ方向は,1 つの応力に対応するはずである. つまり,理想的には得られた複数の応力に対して,その活動 に対応する断層がそれぞれ明瞭に区別されるはずである.そ して,各応力とその活動に一致する断層との対応関係が明瞭 に区別されるならば,求められた各応力は実在した可能性が 高く,複数の応力が識別された可能性が高い.しかし,得ら れた各応力と,その活動に対応する断層が区分されず,1 つ の断層データが複数の応力に重複してしまうときは,得られ た応力の各クラスターがステージの異なる応力には対応せ ず,解の不均一性を示唆している. 今回,多重逆解法によって得られた 4 つの応力クラスター S1∼ S4と解析に用いた各断層グループのデータとの適応性 は以下のようになる(Fig.10, Table 2).グループ A の断層 と整合性が最も高いものは S1であり,S2,S3とも一部整合 性があるものが認められる.グループ B の断層は,S3と整 合性が良く,S1,S4とも一部で整合性をもつものが認められ る.グループ C,D,E の断層は S4と最も整合性が高く,一 部で S2,S3と整合性があるものも認められる. 以上から,S1はグループ A や B の一部で低角傾斜の断層 面をもつ断層と整合性が高く,S4はグループ C,D,E の高 角な面をもち,走向が南北方向に近いような断層と整合性が 高い.すなわち,S1に対応する断層と S4に対応する断層は 明瞭に区別される.グループ B,C,E と整合性をもつ S3 は,S4と応力主軸について角度的に近い関係にある.また, S4に対応する断層と多くのものが重なっている(Fig. 10, Table 2.したがって,S3は S4と類似の断層スリップデー タから計算されたクラスターであり,S4とセットのクラスタ ーであると考えられる.S2は,誤差角が 20 °以内の断層は 多く認められるが,誤差角が 10 °以内になるものは少なく, 対応する断層が明確に区分されない(Fig.10, Table 2).さら

Fig. 9. Convergence of stress clusters(S1−S4)from k = 2-7 by the multiple inverse method(Yamaji, 2000)applied to fault gouges in the

Tanakura Shear Zone(TSZ). The gross pattern does not change for k > 3.Φ is the stress ratio(=(σ2−σ3)(σ/ 1−σ3)). The direction and

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Fig. 10.(a)Clusters obtained from the multiple inverse method applied to fault gouge data with k = 4 and e = 15.(b)Lower hemisphere

pro-jection of analyzed fault planes and shear senses.(c)Tangent lineation diagram of analyzed fault planes and shear senses. The position of the

arrow in the diagram indicates the pole to the fault plane, and the arrow points to the slip direction of the footwall block(Twiis and Moores,

1992)(d). −(g)Tangent lineation diagram of each stress states of stress group S1−S4and misfit directions between real fault slip data and

the-oretical slip direction. Gray arrows are the thethe-oretical slip directions for the stress with the principal orientations designated by the symbols △ and ☆. Black arrows show observed fault slip data.

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に,S2が示す応力は,方向的にも S1,S3,S4の中間的な位置 に近い.すなわち,それぞれ異なる応力を記録した断層スリ ップデータから計算を行って,それらの平均的な位置に作ら れたクラスターである可能性が高い.これは,通常行われて いる小断層解析での試料数に比べて,今回計算に用いた試料 数が少なかったため検出されたと考えられる.したがって, S2は独立した応力を反映しているものではなく,誤差の一部 であると考えられる. 以上から得られた各クラスターを,NNW−SSE 走向の高 角断層である棚倉破砕帯の大局的な運動に対応させて解釈を 行うと,S1は,σ1が WNW 方向,σ3が NNE 方向で破砕帯 に左横ずれ運動を引き起こす応力に対応し,S3,S4はσ1が SSW方向,σ3が WNW−ESE 方向で破砕帯に右横ずれ運動 を引き起こす応力に対応している.すなわち,今回,多重逆 解法から得られた応力から,棚倉破砕帯の左横ずれ運動に相 当するもの(S1: グループ A, B の一部)と右横ずれ運動に相 当するもの(S3, S4: グループ B ∼ E)の 2 つの変形ステージ が復元されることになる. 1.断層ガウジの組織発達過程 本調査地域における断層ガウジのフラグメントの幾何学的 特徴をまとめると以下のようになる.(1)伸長比(R)と長 軸方向(φ)には相関があり,伸長比の高いものほど長軸方 向の分散範囲は狭く,ある長軸方向に伸長比のピークをもっ た山型の分布域を示す(Fig. 6).(2)フラグメントの伸長方 向の頻度分布からも定向配列が認められ,その平均ベクトル は,主剪断面である Y 面に対して 7 °以上斜交しているもの と,7 °以下でほぼ平行なものが認められる.斜交している ものに関しては,剪断センスを示す複合面構造における P 面 と調和的である(Figs. 6, 7).(3)フラグメントの平均粒径 における累積頻度分布曲線(Fig. 8)は,べき乗分布で良く 近似できる.また,累積頻度分布曲線の頭打ち現象は今回の 測定範囲内では認められない.フラクタル次元 D は,一部 測定数の少ないものを除き,1.6 ∼ 1.8 の間に収まる. 断層ガウジなどの脆性剪断帯において形成される複合面構 造は,塑性変形した S-C マイロナイトなどの複合面構造と幾 何学的に類似することが指摘されている(Shimamoto, 1989; 高木・小林, 1996).本調査地域の断層ガウジ中にもフ ラグメント両側に非対称テイルが観察され(Fig. 3a, e, f), マイロナイトのポーフィロクラストとよく類似した形態が認 められる.また,(1)断層ガウジのフラグメントにおける R-φプロットの山型分布が示す定向配列(Fig. 6)は,マイ ロナイトのポーフィロクラストにおける粘性基質中の R-φ プロットのパターン(e.g. Masuda et al., 1995)と類似し, (2)フラグメントの伸長方向の最頻値角度や平均ベクトルが 示す P 面(Fig. 6)は,マイロナイトにおけるポーフィロク ラストの形態定向配列などが示す S 面と類似する.さらに, フラグメントの外形は,粗粒なものほど丸みを帯びており, 本地域の断層ガウジが粘土基質部の破砕流動変形によって磨 耗されながら,組織全体として延性的に変形したことを示唆 する.一方,(3)フラグメントの平均粒径のフラクタル性 は,脆性断層岩類などに認められる一般的な特徴である.す なわち,今回解析に用いた断層ガウジのフラグメントは,脆 性的な破壊によって細粒化が進み,粒径分布が決まったと考 えられる. このように,本地域の断層ガウジには,フラグメントの脆 性的な破壊による粒径分布と,延性的な変形による定向配列 という 2 つの組織的な特徴を合わせもっている.すなわち, 断層ガウジ形成初期には組織全体が粉砕作用を主要プロセス として,粒径分布のフラクタル性を形成し,粉砕化に伴う熱 水変質により粘土基質を形成するようになると,粘土基質の 延性的な変形で歪をまかない,フラグメントの定向配列を形 成したものと考えられる.本調査地域の断層ガウジは数十 cmという広い幅で変形していることも,地表付近の地震断 議     論

Fig. 11. Brittle deformation stages of the TSZ.(a)D1: all fault gouge zones were formed by sinistral shear. Shear senses of group A and partial B fault gouges were recorded in this stage.(b)D2: groups B-E fault gouges were reactivated with a dextral shear framework, whereas group A and partial B fault gouges were not reactivated in this stage and remained sinistral shear senses.

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層で知られているような数 cm の狭小なゾーンによる高速す べりによって形成した断層ガウジとは異なり,繰り返し変形 を被りながら発達してきたことを示唆している. 2.断層ガウジに記録された変形ステージの前後関係 断層ガウジに記録された剪断センスについて,多重逆解法 を用いた古応力解析(Figs. 9, 10)から,棚倉破砕帯の左横 ずれ運動(S1:Φ= 0.2 ∼ 0.6, σ1= E−W 方向水平, σ3= NNE−SSW 方向水平, グループ A, B の一部)と右横ずれ運動 (S3, S4: Φ= 0.2 ∼ 0.7, σ1= NNW−SSE 方向水平, σ3= WNW−ESE 方向水平, グループ B ∼ E)の 2 つのステージ が認められた.右横ずれ運動(S3, S4)を記録した断層ガウジ の剪断面は,中∼高角傾斜で,走向は棚倉破砕帯の主トレン ド NNW−SSE 方向に近いものが主である(Fig. 10, Table

2).一方,左横ずれ(S1)を記録した断層ガウジの剪断面 は,グループ A に属する低∼中角傾斜である(Fig. 10, Table 2).左横ずれ運動を示唆する S1と右横ずれ運動を示唆 する S3,S4はσ1,σ3が共に水平方向で,横ずれ運動発生応 力場に相当する.つまり,破砕帯の主トレンドに近い中∼高 角断層は横ずれ運動発生応力場において活動しやすく,S1の 左横ずれであっても,S3,S4の右横ずれであっても活動しや すいと考えられる.すなわち,右横ずれの後に左横ずれを経 験したならば,現在,右横ずれを記録している中∼高角傾斜 の断層ガウジには最終的に左横ずれの剪断センスが記録され ることになる.一方,S1の左横ずれを保存している低角断層 は,基本的に横ずれ運動による活動が容易ではない.さらに, 右横ずれ運動を示唆する S3,S4は,σ1が NNE−SSW 方向 のために,低角傾斜で WNW−ESE 走向の断層面では剪断応 力は小さくなる.つまり,S1の左横ずれを記録している断層 ガウジは,破砕帯の右横ずれを引き起した S3,S4の応力での 活動は困難である.すなわち,中∼高角断層に右横ずれ(S3, S4)が記録され,低角断層に左横ずれ(S1)が記録されてい るのは,左横ずれ運動時にはすべての断層が活動可能であっ たが,右横ずれ運動時には中∼高角断層が活動し,低角断層 は活動しなかったためと考えられる.したがって,脆性領域 における断層ガウジには,左横ずれ運動のあとに右横ずれ運 動があったと考えられる.ここでは,左横ずれ運動の変形ス テージを D1,その後経験した右横ずれ運動の変形ステージ を D2と定義する(Fig. 11). 大槻(1975),越谷(1986)は断層ガウジ帯の形成方向 が,棚倉破砕帯の走向に対してミ型の雁行配列が顕著なこと から,古第三紀の断層ガウジ形成時には左横ずれ運動があっ たことを指摘した.今回の調査で確認された断層ガウジ帯に おいても,グループ C,F の断層群で示されるようなミ型雁 行配列が,破砕帯全域において最も卓越している(Fig. 2). しかし,この方向の断層ガウジの微細組織が示す剪断センス は,確認された限りではすべて右横ずれであり,これらの断 層群から予測される古応力も S3,S4といった破砕帯の右横ず れ運動を示唆する.今回観察された破砕帯主部の脆性断層帯 は,棚倉東縁断層,西縁断層の活動の副次的なものであるに も関わらず,断層ガウジの幅は 10 cm を超えるものが多く 観察される.また,上述のように,断層ガウジの基質部は良 く粘土化して,フラグメントが強い定向配列を示すことから, Table 2. Data of fault gouges analyzed by the multiple inverse methods.

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長期間に渡る変形活動の継続が示唆される.つまり,大槻 (1975),越谷(1986)が述べているように,断層ガウジ帯 形成初期に断層ガウジ帯の姿勢を決定したのは,破砕帯の左 横ずれ運動であり,これに伴って様々な方向の断層が形成し, その中でも特に,NW−SE 走向であるグループ C,F のミ型 雁行配列の発達が最も顕著に進んだと考えられる.そして, この時期に,現在観察される断層ガウジ帯の基本構造はすで に形成され,その後,断層ガウジは様々な応力の変遷を受け て再活動し,最終的に保存した剪断センスが右横ずれ運動 (D2)で,この時期の記録がグループ B ∼ E の各断層ガウジ に保存されたと解釈することができる.一方,古応力 S1が 示す破砕帯の左横ずれ運動(D1)に伴う剪断センスを残すグ ループ A と B の一部の低角断層は,ミ型雁行配列により活 動した高角断層群(グループ C, F)と同時に形成し,最後に 経験した右横ずれ運動(D2)時には活動せず,左横ずれ運動 (D2)で活動した時の剪断センスを記録したまま,現在の地 表に露出したと考えられる.すなわち,断層ガウジは古第三 紀において左横ずれに伴った基本構造を形成し,同一の断層 ガウジが活動を続けながら,D1,D2と応力場の変遷を経験 して,最終的に右横ずれ運動(D2)を記録したと考えられ る. 3.断層ガウジに記録された変形ステージの位置付け まず,棚倉破砕帯周辺地域に知られている中新世の応力場

の変遷について概観する.Hoshi and Matsubara(1998),

Hoshi and Takahashi(1999),Takahashi et al.(1999)は

東北日本の前弧域における反時計回りの回転は 18 Ma に終 了し,西南日本の主要回転時期である 15 Ma よりも早い段 階で回転運動が終了していたことを指摘している.また, 星・高橋(1996),星・大槻(1996),高橋・星(1996)は, 棚倉破砕帯の南西部,八溝山地中部に位置する茂木地域にお いて,約 17 ∼ 15 Ma の間に NNE−SSW 方向の伸張場から, E−W 方向の伸張場を経験し,最後に NNE−SSW 方向の圧 縮場が続いたことを指摘している.天野(1991)は棚倉破砕 帯に沿う中新統の研究から,破砕帯の左横ずれ運動に伴う, およそ 17 Ma の横ずれ堆積盆の存在を指摘している.この 左横ずれ堆積盆の形成は,茂木地域で認められる NNE− SSW方向の伸張場と同時期であり,NNW−SSE 走向の棚倉 破砕帯がこの時期に左横ずれ運動をしていた可能性を示唆す る.また,棚倉破砕帯や周辺地域の中新統における小断層解 析,鉱脈・岩脈法(大槻, 1975 ; 佐藤ほか, 1982; 越谷, 1986; 幡谷・大槻, 1991; Sato, 1994)などから,中新世に NNE−SSW 方向の水平圧縮応力場の存在が指摘され,茂木 地域における NNE−SSW 方向の圧縮場に対比できる可能性 をもつ.一方,関東地方では前期中新世に,秩父盆地などの ハーフグラーベンから E−W 方向の伸張場が認められ,その 後に,NNE−SSW ∼ NE−SW 方向の圧縮場が,庭谷不整合 形成の短い時期(15.3 ∼ 15.2 Ma)に存在し,15 Ma 以降は 中立的な応力場に支配されていたことが指摘されている(大 石・高橋, 1990; 高橋・星, 1996; 高橋・柳沢, 2004).棚倉地 域において 15 Ma 以降の地層の構造解析に関する情報は乏 しいが,このように棚倉破砕帯の周辺で,17 ∼ 15 Ma の短 い期間に,(1)NNE−SSW 方向の伸張場,(2)E−W 方向の 伸張場,(3)NNE−SSW ∼ NE−SW 方向の圧縮場という 2 回の応力場の転換が知られている. 大槻(1975),越谷(1986)は,古第三紀における左横ず れ運動に伴って,ミ型雁行配列する脆性剪断帯が形成したと している.上述のように,断層ガウジの発達過程からも,こ の時期にはすでに断層ガウジの基本構造は形成していたこと が期待される.したがって,応力 S1による左横ずれ運動 (D1)は,この時期の剪断センスを記録している可能性があ る.しかし,S1はσ1が WNW−ESE 方向,σ3が NNE− SSW方向を示し,17 Ma における茂木地域の NNE−SSW 方向の伸張場や,棚倉破砕帯の左横ずれ堆積盆形成時によく 一致している.また,20∼ 18 Ma には,東北日本の前弧域 における回転運動が行われているので,左横ずれ運動が古第 三紀から 17 Ma まで続いていたとは考えにくい.したがっ て,今回復元された左横ずれ運動 D1は,東北日本の回転運 動後の 17 Ma における左横ずれ運動を記録していると考え るのが妥当である.また,今回の解析からは,E−W 方向の 伸張場を示すような応力は求められなかった.しかし,15 Maにおける NNE−SSW ∼ NE−SW 方向の圧縮場は,今回 得られた S3,S4による右横ずれ運動(D2)と良く一致し,D2 はこの時期の運動像を保存していると考えられる. 本論では,従来明確にされていなかった右横ずれ運動(D2) に先立つ左横ずれ運動(D1)の存在を,棚倉破砕帯における 脆性領域の断層岩から独立に認めることができた.このこと から,破砕帯南西部における 17 ∼ 15 Ma の NNE−SSW 方 向の伸張場から NNE−SSW ∼ NE−SW 方向の圧縮場への 変換は,棚倉破砕帯においても認められることを示す.18 Maには東北日本前弧域の回転は終わり,15 Ma には西南日 本が急速に回転した時期である.17 ∼ 15 Ma の応力場の変 遷過程は,棚倉破砕帯をも含む規模で活動していることから, このテクトニックイベントが,従来考えられているよりも重 要なものであることを示唆する.15 Ma の圧縮場について は,高橋(1992)が西南日本の回転と,伊豆−小笠原弧の本 州弧への衝突をこのイベントの候補として指摘している.し かし,このイベントがなぜ 15 Ma の短い期間に限定される のかは明確にされていない.日本海拡大に伴う 17 ∼ 15 Ma のテクトニクスの全容を明らかにしていくために,他の大規 模断層帯においても,さらなる解析を進めていく必要があ る. 棚倉破砕帯には,その活動に伴って様々な方位に発達した 断層ガウジ帯が認められる.それらの分布形態および剪断セ ンスから,断層ガウジ帯はグループ A ∼ F の 6 つに分類す ることができる.これら 6 つのグループの断層ガウジより得 られた剪断センスから,多重逆解法による古応力解析を行い, 棚倉破砕帯を左横ずれに活動させる応力(S1),および右横 ずれに活動させる応力(S3, S4)の 2 つの有意な解が求められ た.この 2 つの応力による運動をそれぞれ,変形ステージ D1(左横ずれ運動),D2(右横ずれ運動)と定義し,脆性領域 ま  と  め

(18)

における棚倉破砕帯から,以下のような運動履歴を明らかに することができた. 1.現在地表で認められる断層ガウジ帯は,古第三紀の左横 ずれ断層活動に伴って,ミ型の雁行配列が優勢であるよ うな断層系として形成された. 2.断層ガウジ帯はその後も活動を続け,粘土基質の破砕流 動が認められるまで組織を発達させていった.新第三紀 中新世(17 Ma)には,NNE−SSW 方向の伸張場による 左横ずれ運動(D1)を経験し,このときの剪断センスの 一部が,グループ A とグループ B の一部の断層ガウジに 保存された. 3.15 Ma には,NNE−SSW 方向の圧縮場に伴って右横ずれ 断層(D2)が活動し,グループ B ∼ E の断層ガウジにこ のときの剪断センスが保存され,現在地表で観察される ようになった.このとき,グループ A とグループ B の一 部の断層ガウジはこの運動には参加せず,D1の運動セン スを保存したまま,現在地表で観察されるようになった. 4.17 ∼ 15 Ma における D1から D2への運動像の変換は,棚 倉破砕帯の南西部において認められる応力場の変遷に対 比され,この時期の応力場が棚倉破砕帯の運動に影響を 与えるような大規模なものである可能性をもつ. 本研究を進めるにあたり,早稲田大学の新井宏嘉博士, James Hunt,戸邉恵里,曽田祐介の各氏には日頃から貴重 な議論をして頂いた.また,石井和彦博士,越谷 信博士, 高橋雅紀博士,山路 敦博士には,査読を通して有益な助言 を頂いた.以上の諸氏に,この場を借りて厚く感謝の意を表 する. 天野一男, 1991, 棚倉断層に沿って発達する横ずれ堆積盆.構造地質, no. 36, 77-82.

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(要 旨)

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Fig. 1.  Geological map and cross sections of the study area. An inset shows the index map of the study area
Fig. 3. XZ-polished slabs of foliated fault gouges from the study area. Cohesive fragments (CF)and aggregates of crushed fragments(ACF) are identified
Fig. 5. Route map within the Hosaka area.
Fig. 10. (a)Clusters obtained from the multiple inverse method applied to fault gouge data with k = 4 and e = 15
+2

参照

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