(6) プリペイドカードを利用したオンライン決済 BitCash ビットキャッシュ株式会社は1997 年に設立され、2002 年にライブドアに買収された。 プリペイドのインターネット決済では最古参の会社であり、ネットワーク対応の電子決 済システムであるBitCash を提供している。BitCash は、2005 年 9 月から NTT ドコモ のおサイフケータイに載る予定である。 (ア) BitCash の特徴 ① 匿名性と安全性 BitCash はプリペイド方式による電子決済システムであり、ネットワーク上の サーバーにバリューが蓄積されることを特徴としている。 またユーザー登録や会員申し込みが不要で匿名性があり、個人情報が不正に利用 される心配がない。 ビットキャッシュは、単純にいえば暗号を売っている会社である。クレジット カードはカード番号を使用するが、ビットキャッシュはインターネットで使う認証 方式として、「ひらがな」を使用しており、「ひらがな」を販売する業者である。「あ いうえお」から「ん」までの中から 16 文字の「ひらがな」を組み合わせて暗号コ ードを作り、決済に使用する。文字数としては 43 文字を使っているが、そこから 16 文字を選択し、43 の 16 乗の暗号化をしている。適当な「ひらがな」の組み合わ せが当たる確率は400 兆分の1以下であり、同じ文字の組み合わせを持つカードは 世の中に一枚しか存在しないといえる。 ② 年齢認証が可能 BitCash には、年齢認証に関して次の3種類のカードがある。 図表3.2- BitCash カードの種類
(標準カード)
(
Kids カード)
(
EX カード)
出典:ビットキャッシュ株式会社講演資料(i) 標準カード だれでも使用できるカードで、BitCash EX 以外のコンテンツを購入すること ができる。オンラインゲーム、アニメ、アイドルの画像配信、占い、音楽配信な どのコンテンツ購入に使用できる。 (ii) Kids カード キッズカードは父兄が購入し、子供に渡すことを前提としたカードである。年 齢認証を行い、子供には見せたくないコンテンツの購入には使用することができ ない。 (iii) EX カード 20 歳以上の成人向けカードであり、大人向けを含むあらゆるコンテンツの購入 に使用できる。コンビニエンスストアで酒やたばこを買う場合には、20 歳以上の 大人が購入できる「EX」が付くカードでしか買うことができない。 ③ 専用のハード、ソフトが不要 ウェブサイトからカードに記載された 16 桁の「ひらがな」情報を入力するだけ で決済できるので、専用のハードウェアやソフトウェアは不要である。 インターネットに接続できる環境であれば、PC のほか、携帯電話や家庭用ゲーム 機でも、「ひらがな」をインプットできるインターフェースがあれば利用可能である。 ④ 完全前払い決済 ユーザーは BitCash カードを現金またはクレジットカードで前払いして購入す る。そのため、BitCash の加盟店は信頼性の高い完全前払い決済を導入することが できる。 ⑤ スピード決済 ユーザーは16 文字の「ひらがな」を BitCash の決済フォームに入力するだけで 決済を行うことができる。PC ならびに携帯電話の3キャリア(ドコモ、au、ボーダ フォン)に対応している。 ⑥ リチャージ可能なプリペイド カード残額がゼロになるまで使用した後は廃棄することができる。また後述する スマートピットの仕組みを利用してリチャージすることも可能である。
(イ) BitCash の販売形態 BitCash は電子マネーであり、その情報は 16 個の「ひらがな」で表されている。 図表3.2- BitCash の電子マネー情報=16 個の「ひらがな」 ひらがな ひらがな ひらがな ひらがな 出典:ビットキャッシュ株式会社講演資料 BitCash の電子マネー情報には 3 種類の販売形態がある。 ① バーチャルBitCash バーチャルBitCash は、パソコンや携帯電話の画面からクレジットカード決済で 購入できる即時発行型のBitCash である。カード情報はメモをするかプリントアウ トして利用する。 ② BitCash シート BitCash シートは、コンビニエンスストアに設置されている MMK 端末で購入で きるもので、代金を支払うと、その場で 16 文字の「ひらがな」が発行され、専用 紙にプリントアウトされる。 BitCash シートは BitCash 全体の販売数の 9 割を占めており、利用者としてはク レジットカードを持っていない20 歳以下のユーザーが多い。 ③ BitCash カード 単純なプリペイドカードである。これは全国の有名書店やパソコンショップなど で販売されている。裏面をコインで削って情報を表示させる。 (ウ) 購入できる場所 コンビニエンスストア、オンライン購入、コンピュータショップ及び書店などで購 入することが可能である。 ① コンビニエンスストア コンビニエンスストアでは、全国の約 36,000 店舗、全国の 9 割のストアで購入 することが可能である。コンビニエンスストアでの売り上げはBitCash の9割を占 めている。 最初は定額のものが販売されていたが、現在では下限は500 円、上限は 10 万円
までとなっている。
コンビニエンスストアでの販売形態は2 種類に分かれている。
ひとつはコンビニエンスストアで購入申し込みと支払いを行うものである。 ファミリーマートの Fami ポート、ローソンの Loppi、スリーエフの eTOWER と呼ばれるマルチメディアキオスク端末や POS レジを使用し、プリントアウトす る形で販売している。Loppi と Fami ポートでのビットキャッシュの売上が一番多 く、Loppi での売上げの1位はビットキャッシュで、2 位は HMV の CD ショップ である。 セブンイレブンと決済ができるのはビットキャッシュだけである。他のプリペイ ド型の電子マネーはローソン、ファミリーマートには入っているが、セブンイレブ ンには食い込めていない。 図表3.2- コンビニで購入申込+コンビニで支払い(取り扱い店) ファミリーマート ローソン スリーエフ ホットスパー 出典:ビットキャッシュ株式会社講演資料 2番目はオンラインで購入申し込みを行い、コンビニエンスストアで支払いを行 うものである方式である。 PC 上で支払い申し込みを行い、それをコンビニエンスストアに持って行くこと でビットキャッシュの「ひらがな」が使えるようになる。支払い表には印刷した時 点 16 個ので「ひらがな」が表示されているが、コンビニエンスストアで入金があ ると、コンビニエンスストアからビットキャッシュに対して入金通知が送られ、そ の「ひらがな」が始めて使えるようになる。 図表3.2- オンラインで購入申込+コンビニで支払い(取り扱い店) セブンイレブン ローソン ミニストップ デイリーヤマザキ セイコーマート 出典:ビットキャッシュ株式会社講演資料
② オンライン購入 オンライン購入ではクレジットカードでビットキャッシュを買うことができる。 JCB が加盟しているのはビットキャッシュだけである。 図表3.2- オンライン購入(利用可能クレジットカード) 出典:ビットキャッシュ株式会社講演資料 ③ コンピュータショップ/書店 コンピュータショップや書籍店でプリペイド型のものが販売されているが、この 流通量は全体の0.5%程度である。 (エ) リチャージ機能 ビットキャッシュはプリペイドカードなので、使い捨てが基本であったが、ユー ザーから暗号の 16 文字を何度も使いたいという要望があり、リチャージ機能が開発 された。この機能を使い、5,000 円、10,000 円、15,000 円、25,000 円、50,000 円、 100,000 円を、もともとある「ひらがな」の暗号にリチャージすることが可能である。 リチャージに必要なものは、暗号である 16 文字の「ひらがな」と、スマートピッ ト情報という、NTT コムウェアが提供する料金収納代行サービスの情報である。 BitCash+スマートピットのジョイントカードには、カードの裏側にスマートピッ ト番号と「ひらがな」の暗号の二つが記入されている。PC あるいは携帯でこの二つ を同時に入力し、5,000 円をチャージしたいと選択すると、そのカードをコンビニエ ンスストアに持って行くことによって、NTT コムウェアを通じてビットキャッシュに 入金通知が送られ、「ひらがな」暗号が使えるようになる。ユーザーはこのカードが一 枚あれば、ビットキャッシュの「ひらがな」に何度でもリチャージすることが可能で ある。リチャージ機能を使える店舗は、ファミリーマート、スリーエフ、ミニストッ プ、サークルK、サンクスで、約 15,000 店舗になる。
図表3.2- スマートピットカードを利用した BitCash のリチャージ
1
1
ウェブサイトから3つの情報を登録
ウェブサイトから
ウェブサイトから3
3
つの情報を登録
つの情報を登録
2
2
コンビニでお支払い
コンビニでお支払い
コンビニでお支払い
3
3
出典:ビットキャッシュ株式会社講演資料 複数のBitCash カードの金額を統合することが可能である。 例えば1 万円の BitCash を買い、その後 9,000 円使い、残りが 1,000 円になった場 合に、5,000 円のものや 10,000 円のものを買おうとした時、残額が 1,000 円では購入 ができない。その時に新たに10,000 円の BitCash を買い、11,000 円とすることが可 能である。管理画面が提供されており、二つのカードの「ひらがな」を一緒に入力す ると、残高がひとつになる。 (オ) BitCash の使用方法 BitCash には前述のように 3 種類の購入形態がある。 BitCash シートはコンビニエンスストアで販売されており、500 円から 10 万円ま でのものがある。暗号を使う手順は、コンビニエンスストアに行き購入する、BitCash 加盟店のサイトで商品を選択し、購入ボタンを押すと、ビットキャッシュの番号を入 力する画面になる。ユーザーはここに「ひらがな」16 文字を入力はれば決済が完了す る。現在は音楽コンテンツが多く、この後にダウンロードしたり、ファイルが再生さ れることになる。 BitCash BitCash情報情報リチャージ完了!
リチャージ完了!
リチャージ完了!
スマートピット情報 スマートピット情報 リチャージする金額 リチャージする金額+
+
ひらがな ひらがな ひらがな ひらがな tCash情報は16個のひらがなに 集約されています。 チャージ可能な金額の単位は5,000円、10,000円、 5,000円、25,000円、50,000円、100,000円です。 お支払い後、すぐにお手元のBitCashの残高に、お支 払いいただいた金額がチャージされます。一度情報 を登録いただくと、同じスマートピットカードを使って何 度でもリチャージができます。 マートピット情報はカード裏面の 13桁の数字です。 ピッ ピッ スマートピットカードを持って、コンビニ(*2)で代金を お支払い頂きます。 Bi リ 1 ス ▲スマートピットカード 999 999 999 9999 ウェブサイトにアクセス できる端末があれば、 どこからでも登録できます。 ▲携帯電話でもパソコンでも図表3.2- BitCash の使用方法
まず、BitCashを購入します。
まず、
まず、
BitCash
BitCash
を購入します。
を購入します。
商品を選びます。
商品を選びます。
商品を選びます。
BitCashマークのあるBitCash加盟店 ウェブサイトで購入したい商品を選びま す。 インターネットでのオンライン販売、全国のBitCashカード販 売店、コンビニエンスストアなどでBitCashを購入します。BitCash情報を入力します。
BitCash
BitCash
情報を入力します。
情報を入力します。
商品購入の意思を示すと(例:「購入」ボタンを押す)、BitCashの入 力画面が表示されます。その後、BitCash情報である 「ひらがな16文字」を入力し、支払い手続きを行います。 ▼BitCashマーク購入した商品を受け取ります。
購入した商品を受け取ります。
購入した商品を受け取ります。
1
1
2
2
3
3
●バーチャルBitCash ●BitCashシート ●BitCashカード4
4
※BitCashの情報は「ひらがな16文字」に集約されています。 コンビニエンスストアで 購入できます。 500、1000、2000、3000、 5000、1万、1.5万、2.5万 3万、5万、10万の額面があります。 オンラインで購入できます。 コンピュータショップや 書籍店で購入できます。 出典:ビットキャッシュ株式会社講演資料 (カ) BitCash 導入のメリット ① 導入が簡単 ビットキャッシュのシステムは、コンビニエンスストアでの販売が主である。 コンビニエンスストアが直接接続することにはリスクがあり、導入費用も高い。 コンビニエンスストアと決済代行会社との接続が必要となるが、ビットキャッシュ はそれら全ての決済代行を引き受けている。 導入にあたってはビットキャッシュの決済 API サーバーへアクセスするプログ ラムが必要となるが、ビットキャッシュでサンプルプログラムが用意されており、 遅くとも1週間以内にはスタートが可能とされている。用意されているサンプルプ ログラムの言語は、perl、ASP、PHP、Java である。 商品購入までの流れは、暗号を入力し、ビットキャッシュが提供する決済プログ ラムを通してビットキャッシュとの通信が行われる。ここを流れるのは「ひらがな」、 商品情報、価格である。価格が残額以内であれば引き落としを行い、OK であれば 加盟店に返し、それがユーザーにも届き、商品を閲覧できるようになる。図表3.2- BitCash による商品購入までの流れ ユーザー様 加盟店様 引落しOK 残高確認・引き落し 商品提供 商品閲覧 BitCash情報を入力 決済プログラム 出典:ビットキャッシュ株式会社講演資料 ② 月額料金不要 もう一つの大きなメリットはオーソリ(与信照会)のための費用がかからない点 である。比較的小額決済に向いているといえる。 BitCash はオーソリなどの費用が一切ない代わりに、ビットキャッシュからコン ビニエンスストアに手数料が支払われているため決済手数料は比較的高く、12%以 下8%以上の変動制となっている。売上に応じて下げることも可能である。初期費 用は 15 万円で、これはビットキャッシュの決済プログラムのコンサルティング料 金として請求される。その後、売上が上がらなければビットキャッシュからの請求 は発生しない。 携帯の決済については、加盟店がビットキャッシュに対応したPC 版のサイトがす でにあれば、単純に携帯サイトを記述している HTML 上に入力画面を配置するだけ なので、加盟店側で携帯のサイトを持っていれば、BitCash 用の「ひらがな」を入力 するフォームを作るだけで利用できるようになる。PC サイトが無い場合には、PC サ イト同様に、システムを構築する必要がある。 BitCash は SSL 通信を利用しており、不整合が起こることはない。