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大腿骨近位部骨折患者の入院中の身体機能および歩行能力から術後1 年のADLを予測することは可能か?

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Academic year: 2021

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(1)理学療法学 第 148 43 巻第 2 号 148 ∼ 149 頁(2016 年) 理学療法学 第 43 巻第 2 号. 平成 25 年度研究助成報告書. 高齢者の身体機能から ADL を予測したりする報告. 3). は散見. されるが,ADL の回復・維持を予測できる入院中の身体機能. 大 骨近位部骨折患者の入院中の身体機 能および歩行能力から術後 1 年の ADL を予測することは可能か?. や歩行能力の基準値はいまだ確立されていない。そこで,本研 究の目的は,大. 骨近位部骨折患者の術後 1 年の ADL に影響. を及ぼすと考えられる入院中の身体機能および歩行能力に着目 し,ADL 低下を予測するためのカットオフ値を算出すること. ─理学療法診断のための多施設共同前向きコホー. とした。. ト研究─. 方  法 1.研究デザイン  本研究のデザインは,多施設共同前向きコホート研究とした。. 1). 2). 梅原拓也 ,田中 亮 ,永尾 進. 1). ,富山大輔. 1). 共同研究施設は,済生会呉病院および済生会広島病院とした。. ,. 川畑祐貴 1),長野吉宏 3),木本優美 3). 2.対象  対象は,2 病院の整形外科にて大. 骨近位部骨折と診断され. 1). た者とした。取込基準は,大. 2). 広島国際大学総合リハビリテーション学部リハビリテーション. を実施している,術前は歩行可能である,とした。除外基準は,. 学科. 術後の深刻な合併症,術後長期にわたって荷重許可されない,. 済生会呉病院リハビリテーション室. 3). 骨近位部骨折患者である,手術. 病的骨折がある,多発性骨折であるとした。. 済生会広島病院リハビリテーション室. 3.測定項目と測定方法 要旨:【目的】本研究の目的は,大 骨近位部骨折患者の術後 1.  ADL の測定には,Barthel Index(以下,BI)を用いた。1. 年の日常生活活動(以下,ADL)に影響を及ぼすと考えられる. 年の ADL の採点に必要な情報は,電話にて聴取した。退院後. 入院中の身体機能および歩行能力を調べ,ADL 低下を予測す. の ADL の予測因子の測定項目は,VAS,歩行様式,CS-30 4),. るためのカットオフ値を算出することであった。 【方法】本研. 認 知 機 能( 改 訂 版 長 谷 川 式 簡 易 知 能 評 価 ス ケ ー ル( 以 下,. 究のデザインは,多施設共同前向きコホート研究であった。退. HDS-R)),術前後の ADL とした。. 院後の ADL(Barthel index)予測因子は,術後の疼痛(以下,. 4.統計解析. VAS) ,歩行様式,30‒second chair-stand test(以下,CS-30) ,.  Vergara ら 5)の報告をもとに,BI90 点をカットオフ値とし,. 認知機能,および術前後の ADL とした。変数ごとに ROC 曲線. 90 点以上を ADL 自立,90 点未満を ADL 低下とした。術後 1. を用いて尤度比が最大となるカットオフ値を求め,ADL 低下. 年の ADL 低下を予測する変数を抽出するために,単変量の統. の事後確率を算出した。 【結果】2 施設 37 名からデータが収集. 計解析を実施した。術後 1 年の ADL 自立・低下を従属変数と. された。術後 1 年における ADL 低下の事前確率は 56.8%であっ. し,単変量解析にて術後 1 年の ADL と有意に関連のあった変. た。ADL 低下の予測因子は,術後 2 週の CS-30,術後 3 週の歩. 数を独立変数とした二項ロジスティック回帰分析を行った。多. 行自立度であった。これらのカットオフ値・事後確率は,術後. 重共線性を考慮するために,独立変数間で相関係数が 0.7 以上. 2 週の CS-30 で 0 回以下・75.0%であり,術後 3 週の歩行自立度. を示した場合は,より早期に測定された変数をモデルに残し. で BI が 5 点以下・87.0%であった。 【結論】大. 骨近位部骨折. た。たとえば,CS-30 の 2 週と CS-30 の 3 週では,2 週時のも. 患者の入院中に測定された術後 2 週の CS-30 および術後 3 週の. のを採用した。ロジスティック回帰分析にて有意だった変数に. 歩行自立度から 1 年後の ADL 低下を予測できる可能性が示唆. 対して,ROC 曲線を使って尤度比が最大となるカットオフ値. された。. を算出し,感度,特異度,的中率,尤度比,曲線下面積を算出. キーワード:大 骨近位部骨折,予後予測,日常生活活動. した。さらに,ADL 低下の事前確率を求め,ベイズの定理に 基づき,変数ごとに事後確率を算出した。なお,統計学的解析. はじめに  大. に は,SPSS ver 22.0 for Macintosh と EZR version 1.27 を 使. 骨近位部骨折患者は,歩行能力の回復に時間を要し,1. 年後も 2 割が寝たきりになることもあると報告されている 理学療法士としては,大. 1). 。. 骨近位部骨折術後の ADL を速や. かに回復させることが求められる。大. 用した。 5.倫理的配慮  研究に先立ち,研究内容およびリスク,個人情報の保護,研. 骨近位部骨折術後の. 究成果の学会発表,研究参加中断可能であることについて,十. ADL の回復・維持には,適切なリハビリテーションプログラ. 分な説明を口頭にて行い,同意を得た。なお,本研究は,済生. ムの立案や修正が必要であることはいうまでもないが,それだ. 会呉病院倫理委員会と済生会広島病院倫理委員会の承認(とも. けではなく,退院後の ADL 回復のためには入院中の身体機能. に承認番号 84)を得て実施している。. や歩行能力がどの程度必要なのかという,目標となる基準値. 結  果. (カットオフ値)の参照も有用であると考える。しかしながら,.  済生会呉病院において,事前の基準に合致した 39 名のうち,. これまで,退院後の ADL の回復・維持を予測できる入院中の. 25 名の入院データが収集された。済生会広島病院では,事前. 身体機能や歩行能力のカットオフ値は,我々が知る限り報告さ. の基準に合致した 85 名のうち,16 名の入院データが収集さ. 2). れた。術後 1 年の ADL のデータが収集できた人数は,済生会. れていない。術前の状態から退院時の ADL を予測したり. ,.

(2) 大. 骨近位部骨折患者の術後 1 年の ADL の検討. 149. 表 1 術後 1 年の ADL 低下に影響を及ぼした入院中の変数の診断性能 カットオフ値. 感度. 特異度. 陽性的中率. 陰性的中率. 陽性尤度比. 陰性尤度比. AUC. 事後確率. CS-30(術後 2 週). 0 回以下. 0.88. 0.62. 0.74. 0.80. 2.27. 0.20. 0.76. 0.75. 歩行(術後 3 週). 5 点以下. 0.62. 0.88. 0.87. 0.64. 4.95. 0.44. 0.80. 0.87. 略語:CS-30 = 30‒second chair-stand test, AUC = area under the curve. 呉病院で 22 名,済生会広島病院で 15 名,合計で 37 名であっ. が影響する。ただし,術後の歩行能力は,術前の歩行能力から. た。術後 1 年の ADL 自立群は 16 名,非自立群は 21 名であっ. 影響を及ぼされていると考えられる。そのため,術前の ADL. た。ADL 自立群と ADL 低下群の参加者の間には,年齢,性別,. や歩行レベルが低くかったり,歩行補助具を使用していた者で. 骨折タイプ,受傷側,術式,全荷重時期および術後在院日数で. あっても,リハビリテーションによって歩行に関する BI の得. 有意な差を認めず,受傷前歩行および初期最終 HDS-R で有意. 点が術後 3 週までに 5 点以上になるか,検討する必要がある。. な差が認められた。術後 1 年における ADL 低下の事前確率は.  本研究では,入院中の変数について,術後 1 年の ADL 低下. 56.8%であった。入院中に測定された変数のうち,ADL 自立群. のリスクファクターとそれらのカットオフ値を算出した。我々. と低下群の有意差があったものは,HDS-R(術後 2 週以内,退. が知る限り,これは新たな知見である。しかし,一方で,本研. 院時),CS-30(術後 2 週,術後 3 週,術後 4 週) ,歩行形態(術. 究は,術後 1 年の ADL 低下のメカニズムまでは明確化されて. 後 3 週,術後 4 週) ,歩行(術後 3 週,術後 4 週)であった。. いない。今後は,このメカニズムを解明し,リスクを軽減させ. ロジスティック回帰分析の結果,有意であった変数は,CS-30. る急性期理学療法について,より詳細な検討を行う必要がある。. (術後 2 週) ,歩行(術後 3 週)であった。これらの変数の診断 性能を表 1 に示す。CS-30(術後 2 週)のカットオフ値は 0 回 以下であり,歩行(術後 3 週)は BI が 5 点以下であった。事 後確率は,CS-30(術後 2 週)0 回以下で 75.0%,歩行(術後 3 週)が BI5 点以下で 87%まで上昇した。 考  察  術後 2 週の CS-30 が術後 1 年の ADL 低下に影響することが 4) 示唆された。CS-30 は,高齢者の下肢伸展筋力と強く相関し ,. さらにバランス機能など様々な身体機能を包括した指標である と考えられている 6)7)。また,大. 骨近位部骨折患者の退院時. (約 73.5 日)の CS-30 は,6 ヵ月時点の転倒に影響すると報告 されている 8)。これらのことから,入院中の身体機能の総合力 は退院後の移動能力に影響を及ぼすことがうかがえる。そのた め,大. 骨近位部骨折患者の術後 1 年の ADL 低下に影響を及. ぼす要因として CS-30 が抽出された本研究の結果は,先行研究 の結果と大きく矛盾せず,臨床的にも受け入れられると考えら れる。  Lin ら 9) によると,1 年後の ADL に影響する因子には受傷 前歩行レベルや歩行形態がある。表 1 に示す通り我々の分析結 果においても,これらは ADL 自立群と低下群で有意差を示し ていた。さらに,術後 3 週の歩行も術後 1 年の ADL 低下と有 意に関係していた。これは,長期的な ADL 低下の新しいリス クファクターと考えられる。術後 1 年の ADL 低下を予防する ためには,術後 3 週までに少なくとも 45 m 以上,歩行が可能 になることをめざすべきであることが示唆された。また,久保 ら 2)によると,退院時の歩行レベルには,受傷前 ADL 自立度. 文  献 1)Tsuboi M, Hasegawa Y, et al.: Mortality and mobility after hip fracture in Japan: a ten-year follow-up. J Bone Joint Surg Br. 2007; 89: 461‒466. 2)久保祐介,野口康男,他:大 骨近位部骨折における退院 時の歩行能力に影響する因子の検討.整形外科と災害外 科.2012; 61: 21‒25. 3)鈴川芽久美,嶋田裕之,他:要介護高齢者における運動 機能と 6 ヶ月後の ADL 低下との関係.理学療法学.2011; 38: 10‒16. 4)Jones CJ, Roberta ER, et al.:A 30-s chair-stand test as a measure of lower body strength in community-residing older adults. Res Q Exerc Sport. 1999; 70: 113‒119. 5)Vergara I, Vrotsou K, et al.: Factors related to functional prognosis in elderly patients after accidental hip fractures: a prospective cohort study. BMC Geriatr. 2014; 14: 124. 6)Lord SR, Murray SM, et al.: Sit-to-stand performance depends on sensation, speed, balance, and psychology status in addition to strength in older people. J Gerontol A Biol Sci Med Sci. 2002; 57: M539‒M543. 7)Schenkman M, Hughes MA, et al.: The relative importance of strength and balance in chair rise by functionally impaired older individuals. J Am Geriatr Soc. 1996; 44: 1441‒1446. 8)杉澤裕之,千葉 恒,他:大 骨近位部骨折術後患者にお ける再転倒予測テストとしての CS-30 の有用性.北海道理 学療法.2014; 31: 10‒15. 9)Lin PC, Chang SY: Functional recovery among elderly people one year after hip fracture surgery. J Nurs Res. 2004; 12: 72‒82..

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