大腿骨近位部骨折患者の入院中の身体機能および歩行能力から術後1 年のADLを予測することは可能か?
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(2) 大. 骨近位部骨折患者の術後 1 年の ADL の検討. 149. 表 1 術後 1 年の ADL 低下に影響を及ぼした入院中の変数の診断性能 カットオフ値. 感度. 特異度. 陽性的中率. 陰性的中率. 陽性尤度比. 陰性尤度比. AUC. 事後確率. CS-30(術後 2 週). 0 回以下. 0.88. 0.62. 0.74. 0.80. 2.27. 0.20. 0.76. 0.75. 歩行(術後 3 週). 5 点以下. 0.62. 0.88. 0.87. 0.64. 4.95. 0.44. 0.80. 0.87. 略語:CS-30 = 30‒second chair-stand test, AUC = area under the curve. 呉病院で 22 名,済生会広島病院で 15 名,合計で 37 名であっ. が影響する。ただし,術後の歩行能力は,術前の歩行能力から. た。術後 1 年の ADL 自立群は 16 名,非自立群は 21 名であっ. 影響を及ぼされていると考えられる。そのため,術前の ADL. た。ADL 自立群と ADL 低下群の参加者の間には,年齢,性別,. や歩行レベルが低くかったり,歩行補助具を使用していた者で. 骨折タイプ,受傷側,術式,全荷重時期および術後在院日数で. あっても,リハビリテーションによって歩行に関する BI の得. 有意な差を認めず,受傷前歩行および初期最終 HDS-R で有意. 点が術後 3 週までに 5 点以上になるか,検討する必要がある。. な差が認められた。術後 1 年における ADL 低下の事前確率は. 本研究では,入院中の変数について,術後 1 年の ADL 低下. 56.8%であった。入院中に測定された変数のうち,ADL 自立群. のリスクファクターとそれらのカットオフ値を算出した。我々. と低下群の有意差があったものは,HDS-R(術後 2 週以内,退. が知る限り,これは新たな知見である。しかし,一方で,本研. 院時),CS-30(術後 2 週,術後 3 週,術後 4 週) ,歩行形態(術. 究は,術後 1 年の ADL 低下のメカニズムまでは明確化されて. 後 3 週,術後 4 週) ,歩行(術後 3 週,術後 4 週)であった。. いない。今後は,このメカニズムを解明し,リスクを軽減させ. ロジスティック回帰分析の結果,有意であった変数は,CS-30. る急性期理学療法について,より詳細な検討を行う必要がある。. (術後 2 週) ,歩行(術後 3 週)であった。これらの変数の診断 性能を表 1 に示す。CS-30(術後 2 週)のカットオフ値は 0 回 以下であり,歩行(術後 3 週)は BI が 5 点以下であった。事 後確率は,CS-30(術後 2 週)0 回以下で 75.0%,歩行(術後 3 週)が BI5 点以下で 87%まで上昇した。 考 察 術後 2 週の CS-30 が術後 1 年の ADL 低下に影響することが 4) 示唆された。CS-30 は,高齢者の下肢伸展筋力と強く相関し ,. さらにバランス機能など様々な身体機能を包括した指標である と考えられている 6)7)。また,大. 骨近位部骨折患者の退院時. (約 73.5 日)の CS-30 は,6 ヵ月時点の転倒に影響すると報告 されている 8)。これらのことから,入院中の身体機能の総合力 は退院後の移動能力に影響を及ぼすことがうかがえる。そのた め,大. 骨近位部骨折患者の術後 1 年の ADL 低下に影響を及. ぼす要因として CS-30 が抽出された本研究の結果は,先行研究 の結果と大きく矛盾せず,臨床的にも受け入れられると考えら れる。 Lin ら 9) によると,1 年後の ADL に影響する因子には受傷 前歩行レベルや歩行形態がある。表 1 に示す通り我々の分析結 果においても,これらは ADL 自立群と低下群で有意差を示し ていた。さらに,術後 3 週の歩行も術後 1 年の ADL 低下と有 意に関係していた。これは,長期的な ADL 低下の新しいリス クファクターと考えられる。術後 1 年の ADL 低下を予防する ためには,術後 3 週までに少なくとも 45 m 以上,歩行が可能 になることをめざすべきであることが示唆された。また,久保 ら 2)によると,退院時の歩行レベルには,受傷前 ADL 自立度. 文 献 1)Tsuboi M, Hasegawa Y, et al.: Mortality and mobility after hip fracture in Japan: a ten-year follow-up. J Bone Joint Surg Br. 2007; 89: 461‒466. 2)久保祐介,野口康男,他:大 骨近位部骨折における退院 時の歩行能力に影響する因子の検討.整形外科と災害外 科.2012; 61: 21‒25. 3)鈴川芽久美,嶋田裕之,他:要介護高齢者における運動 機能と 6 ヶ月後の ADL 低下との関係.理学療法学.2011; 38: 10‒16. 4)Jones CJ, Roberta ER, et al.:A 30-s chair-stand test as a measure of lower body strength in community-residing older adults. Res Q Exerc Sport. 1999; 70: 113‒119. 5)Vergara I, Vrotsou K, et al.: Factors related to functional prognosis in elderly patients after accidental hip fractures: a prospective cohort study. BMC Geriatr. 2014; 14: 124. 6)Lord SR, Murray SM, et al.: Sit-to-stand performance depends on sensation, speed, balance, and psychology status in addition to strength in older people. J Gerontol A Biol Sci Med Sci. 2002; 57: M539‒M543. 7)Schenkman M, Hughes MA, et al.: The relative importance of strength and balance in chair rise by functionally impaired older individuals. J Am Geriatr Soc. 1996; 44: 1441‒1446. 8)杉澤裕之,千葉 恒,他:大 骨近位部骨折術後患者にお ける再転倒予測テストとしての CS-30 の有用性.北海道理 学療法.2014; 31: 10‒15. 9)Lin PC, Chang SY: Functional recovery among elderly people one year after hip fracture surgery. J Nurs Res. 2004; 12: 72‒82..
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