ZOIDS─記憶をなくした
男─
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あ
ら
すじ
︼
共 和国 と 帝国 との 間 で 行われ た戦 争 が終結して 、悠 久の時が流 れ た 惑星Zi。 記憶を なくした男が 一人、荒野 に佇 ん でいた 。 自分 が何 者 で 、 何 処 か ら 来て 、 何 処 へ 行 こうとしていたのか 。自分 のこと を 何 も思 い 出 せない男は 、 助 けてく れ た キャラバン で 仕事を 手 伝 いなが ら、 メンバー たちの協 力を 得 て 、自分 の 記憶を探 す 旅を始める。 *不定期更新 のた め、気長 にお 待 ちください 。誤 字 ・ 脱 字 を 発 見 さ れ た場 合、 お 気軽 にご 連 絡 を。目
次
│ │ │ │ │ │ │ │ │ 記憶喪 失の男 1 │ │ │ │ │ │ 剣 を 携え る 白き獅子 18 │ │ │ │ │ │ │ │ │ 白百 合 の 聖 女 37 │ 白百 合 の 園 の 長 い 一日︵ 前 編︶ 55 │ 白百 合 の 園 の 長 い 一日︵ 中 編︶ 70 │ 白百 合 の 園 の 長 い 一日︵後編︶ 91 │ │ │ │ │ │ │ │ │ 少 女の 旅立 ち 115 │ 強 襲、ブリッツ・ティーガー隊 135 │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ 雷虎 再 び 159 │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ 英雄 の故 郷 182 │ │ │ │ │ │ │ │ │ 魔装竜、現る 202 │ │ │ │ │ │ │ │ │ 魔装竜、暴走 226 │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ 王 とな る者 250 │ │ │ │ │ │ │ │ 帝国 の ライガー 269 │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ 宣 戦 布 告 298 │ │ │ │ │ │ │ │ │ 決 意 と 真実 と 324 │ │ │ │ │ │ │ │ │ 魔装竜、復 活 354 │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ 救 出 370 │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ 戦う 理 由 392 │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ 聖 女 再 び 419 │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ 紅 き戦 姫 439
記憶喪
失の男
地 球 か ら遠 く 離れ た 銀河 に存在す る惑星Zi。 かつてこの 惑星 には 、 帝国 と共 和国。二 つの 国 が 惑星 の 覇 権 を争 い 、 長 きに渡 る 戦 争 が 行われ ていた 。 その戦 争 において 、 両 国 は ゾイド と呼ば れる金 属 生 命体 を 主 力 兵器として改 造 ・ 運 用 していた 。 激化を辿る 戦 争。 だが 、 長 く 続 いた戦 争 はいつしか終結 を向 え 、 永く平 和 な年 月 の中 、 惑星Zi か ら は 〟国〟 という 概念 が 消 え 、 各都市 が 確固 た る自治を持 ち 、 都市間 での 貿 易 が 行われるよ うになっていった 。 だが 、 戦 争 が終 わり国 が 消 えて も、人 と ゾイド の 関係 が 変わる ことはなかった 。 *************** 二人 の 少 女に 銃を突 きつけ られ、 男の 頬 か ら 汗が流 れる。 1﹁ っ !・・・・・﹂ 特に 目 の前に 立 つ 、 猫の 様 な 釣り目を した女の子などは 、 今 に も 男に発砲しかねない ほど 殺気立 っていた 。 │ な ん で 、 こ ん なことになって るん だ ・・・・オレ ? その男 ・ ・ ・ ・ ・ 〟エス〟 と 名 乗 る 彼は 、 命の危機に晒さ れ なが ら、自分 の 陥 ってい る状況を 振 り返り始め た 。 彼の 一 番 古 い 記憶 は 、一週間 ほど前か ら始 ま る。 気 が 付 くと 、 乾いた 砂 と 岩 に 覆われ た 荒野 に 一人、エス は佇 ん でいた 。 ﹁ ここは ・・・・・・・・・オレ は ?﹂ 彼は 、 自分 が何 者 で 、 何 処 か ら 来て何 処 へ 行 こうとしていたのか 、 忘れ てしまってい た 。 自分 のこと を調 べ よ うに も、 凡 そ 荒野を旅 す る には 軽装過 ぎ る 格好 を して 、 目 ぼしい 手 荷 物は 辺り に無く 、 あ る のは 首 に 掛 か る表面 が削 れ、 辛 うじて 〟S〟 と 読めるプレー ト と稲 妻を 横にした よ うな マーク の刻ま れ た プレート が 二枚 ついた ペンダント だけ 。 途方 に 暮れるエス だったが 、 佇 ん でいて も状況 は好 転 しない 、 と当て も 無く 荒野を 彷 徨 い 始め、 そして数時 間後 に 生 き 倒れ た 。 2 記憶喪失の男
だが 、 幸 運 なことに彼が 倒れ た場所は 、 交易路 として キャラバン が利用してい る〟道 〟 の 上 で 、 さ ら に 運良 く 通り かかった キャラバン に 助 け られ たのだった 。 エス は 、 助 けてく れ た キャラバン の メンバー たちにお礼 を言 い 、 自分 の 身 に 起 こって い る事 態 を説明 した 。 話を聞 き 、 荒野を 彷 徨 うには 軽装過 ぎ るエス の格好 。荷 物 も 無く 、 唯 一 の所 持品 は 首 か ら下 げ る表面 の削 れ、 辛 うじて 〟S〟 と 読めるプレート と 見 慣 れ ない マーク の刻ま れ た プレート の 二枚 がついた ペンダント だけ 。キャラバン の メンバー は 、 盗賊 に 襲われ た 際 に 、荷 物だけでなく 記憶も 無くしたのでは 、 と 心配 した 。 〟エス〟 と 言 う 名 前 も、 名 無しのままでは 不便 だ ろ うと 、 唯 一 の 持 ち物であ るペンダ ント に刻ま れ た 〟S〟 と 言 う 文 字か ら、キャラバン の メンバー が 名 づけた も のだ 。 記憶も 無く 、 行 く当て も ない エス に メンバー たちは ﹁丁度人 手が 足り ない 。仕事を 手 伝 うな ら、 ここに居て も良 い ﹂ と エス に 提 案し 、 彼は ﹁頼む﹂ と即答したのだった 。 そ ん な エス が 、 キャラバン に 参加 し 初め て 訪れ た 都市 が 〟要 塞 〟 と 言 って 差 し支えな い 、台 地の 上 に 築 か れ た 巨 大な 都市 であった 。 要 塞 都市・・・通称︻ 白百 合 の 園︼ かつて 、 花街 として 栄 えていたそこでは 、 女性は 道 具であ り、 虐 げ られる 存在だった 。 そ ん な 状況を憂 い 、 一人 の女性が 立 ち 上 が る。後 に マザー と呼ば れる その女性は 、 不 3
満を持 つ 多 くの女性たち を 束ね 、 都市を 支 配 す る 男たちに 反 乱 を起 こし 、 ついには 都市 の 首長 と男たち を排除 す る ことに 成功 した 。 その 後、 マザー はそこに 新 たな 都市を 作 り、 いつしか 〟 女の楽 園〟 と呼ば れるよ うに なっていった 、 と エス は 説明を受 けた 。 白百 合 の 園 は 、 強 固 な 壁 に 護られ、 台 地という地 理的 優位 も合わ さ り、 ま る で中に住 む 女性たちの 貞操 の よ うな 鉄壁 さだと 言わ し める ほどだった 。 そ ん な 台 地の 麓 には 、他 の キャラバン が数 多 く キャンプを 張 り、滞 在していた 。 ﹁ 全 員 ここで 、 何 を してい るん だ ?﹂ ﹁も ち ろ ん 商 売 さ 。街 に は 女 し か 入 れ な い か ら、キ ャ ラ バ ン に 所 属 す る 女 た ち に 街 へ 交 渉 に 行 かせ 、 帰 りを待 ってい るキャラバンや、 キャラバン同士 の商 売や情 報 交換 な ん か も行われ てい るん だ ﹂ ﹁ ふ ーん・・・・・﹂ キャラバン で 仲良 くなった メンバー の マーク に 説明を受 けなが ら、 エス は 興 味 深 げに 辺りを見 渡す 。 所属す る 女性たちが 、 白百 合 の 園 へと商 売 に 行 ってい る間、 帰 りを待 つ男たちは 同 じ よ うに 外 で 待 ってい るキャラバン と 情 報 交換 など を していた 。 4 記憶喪失の男
﹁ ・ ・ ・ まぁ 、俺 たちは 待 つしかないか ら、 好きに 見 て 回 って も良 いけど 、 あそこへは 近 づかないほうがいいぜ ﹂ マーク の 指差 す 方を見る と 、 銃 で武 装 した 警備 と 思われる 屈強な女性が 二人、 辺りを 警戒 しなが ら立 っていた 。 ドア の 様 な物が 後ろ に存在し 、 そこ を警備 してい るよ うだった 。 ﹁ 何かあ る のか ?﹂ ﹁ 白 百 合 の 園 へ 上 が る エ レ ベ ー タ ー が あ る ん だ よ。 男 が 下 手 に 近 づ け ば 、警 告 な し で 撃 ち 殺 さ れる か ら な ﹂ 首を掻 っ 切るよ うな ジェスチャーを す るマーク。 実際、不 用 意 に 近 づこうとす る 男に 、警備 の女性は 躊躇 なく 銃口を向 けてい る。 ﹁・・・・・・解 った ﹂ 危 険を冒 すつ もり の無い エス は 、 そのまま メンバー たちと別 れ、 散歩へと 出 た 。 ﹁・・・グスタフ・・・・ あま り、メンテ さ れ ていないな ﹂ 目 の前の 鉄 の塊 を見 つ め、エス はそう呟く 。 輸送 用 ゾイド、 グスタフ。他 の ゾイド と 比 べ 、 強 固 な 装 甲に 覆われ たその機体は 、 主 に 輸送 用として 古 くか ら 活 躍 してい る人々 に 身近 な ゾイド だった 。 他 に も、 キャラバンを護衛 す る傭 兵が乗ってい る と 思われる、 モルガやガイサック な 5
どがそこかしこに停 め てあ り、 傍 には 傭 兵と 思われるゾイド 乗 り たちが 、 退 屈そうにし ていた 。 エス は 、 自分 のこと を 何 も覚 えていなかったが 、 なぜか ゾイド に 関 す る知識 は 覚 えて お り、 その 知識量 は キャラバン の メンバーを 唸 ら せ る ほどだった 。 さ ら に 、 ゾイド の 駆 動音を聞 くだけで 、 調 子 を知る ことなど 朝飯 前 。ゾイド の 操 縦 も、 拾 ってく れ た キャラ バン の 誰よりも上 手かったので 、 全 員 か ら﹁良 い 拾 い物 を した !﹂ と 喜 ば れ たほどだ 。 とは 言 え 、 そ れ だけの 腕 前と 知識 があ る のな ら、 有名 な ゾイド 乗 り ではないだ ろ うか 、 と キャラバン の メンバー たちは 考 え 、 居 残りメンバー は 、 他 の キャラバン か ら情 報 を仕 入 れ に 行 ってく れ てい る。 やる こと も 無く 、 その場に 座り ただ呆然と ゾイドを 眺 め ていた エス の 身 体 を、 突 然 言 い 知れ ぬ 衝撃 が 駆 け 抜 けた 。 ﹁ !・・・・・・・・・﹂ 立 ち 上 が り、エス が 遠 く を見 つ めるも、 そこは 見 渡す 限り広 が る荒野。 身 体か ら 発せ られる〟警 報 〟 に 目を 細 めるエス は 、 遠 くでいくつ も の 土 煙が 上 が る の を見 た 。 す る と 、 辺り にけたたましい サイレン音 が 鳴り響 き 、 人々 が慌ててその場か ら逃 げ 出 し 始める。 6 記憶喪失の男
﹁ おい 、 あ ん ち ゃん !そ ん な所にいた ら踏み 潰さ れる ぞ !﹂ 傭 兵と 思われる 男に 逃 げ るよ う 促 さ れるエス は 、 男の 腕を掴む。 ﹁ 何の 騒 ぎだ ?﹂ ﹁盗賊 だ よ !盗賊 !!も うすぐした ら、 白百 合 の 園 か ら警備隊 が 出動 す る。 ここは 、 その 通 り道 な ん だ よ !!﹂ 傭 兵は 、エス の手 を 振 り 払うと 、仲間 の 下 へと 走 っていった 。 傭 兵の 警 告 を聞 き 、 エスも その場 を離れる た め に 駆 け 出 すと 、 誰 かが 落 とした 双 眼 鏡 が 足 に当たった 。 拾 い 上 げ 、土 煙の 方 へと 双 眼 鏡を向 け るエス。 双 眼 鏡 に よ って 拡 大さ れる遠 く 離れ た光景 。 そこに映し 出 さ れ たのは 、 こち ら に 向 っ てく るゾイド の 群れ だった 。 ﹁モルガ に ・・・・ガイサック か ?﹂ 見 え る範囲 で 近 づいてく るゾイドを確認 す るエス。 す る と 、 後方 の 台 地か ら 地 響 きと 共に唸 り声 の 様 な 轟音 が 響 き渡 り、 台 地の 一部 に 造られ た 〟 発 進口〟 が大きく 口を開 い た 。 ﹃セレナーデ隊、 発 進 します わ !外 にい る者 たち 。踏み 潰さ れ たくなけ れ ば 、 道を 空けな さい !!﹄ 7
大 音量 で 響 く女性の 声 と共に 、三 つの白い 巨 体が 姿を現 した 。 ﹃ さぁ 、行 きます わよ !﹄ ﹃ は 、 はい !﹄ ﹃了解 です !﹄ 装 甲 を純 白に 染め、 名 の由来となった 二 振 り の レーザーブレードを 携えた 三 体の獅子 が 、掛 け 声 と共に大地 を踏み し め、迫り 来 る盗賊 たちへと 駆 け 出 した 。 純 白の獅子たち を見送るエス の 表情 が 、一気 に 険 しくな る。 ﹁ あの ブレードライガー たち ・ ・ ・ ・ かな り高度 な整 備を受 けてい るよ うだが 、パイロッ ト は 〟 ひ よ っ子 〟 か ﹂ 通り過 ぎた 瞬間、 エス には ゾイド とその パイロット の 〟力量〟 が手に 取るよ うに 解 っ た 。 確 かに 、 ブレードライガー は強 力 な機体だが 、 乗ってい るパイロット は 明ら かに 〟実 戦慣 れ〟 していない 新 米だった 。 に も拘ら ず 、 ブレードライガー三 体 以外、 他 の ゾイド が 出 てく る気配 は 感 じ られ ず 、 そ のまま発 進口 の 巨 大な扉は 閉 まってしまう 。 あ ま り に 無 謀 な 対 応 に 、エ ス が 舌 打 ち し て い る と 、背 後 か ら ニ 体 の ゾ イ ド が エ ス に 向 って 駆 けて来た 。 8 記憶喪失の男
﹃エス っ !﹄ ﹃エス !無 事 か ?!﹄ そ れ は 、エ ス が 身 を 寄 せ て い る キ ャ ラ バ ン が 所 有 し て い る 二 機 の コ マ ン ド ウ ル フ で 、 専 属 パイロット の 意向 に より、 一方 は 伝説 の 傭 兵が乗っていた コマンドウルフ と 同 じ 黒 と 赤 の カラーリング に 、 背面 武 装も 機 動力を 奪うが砲 撃力を上 げ るロングレンジライフ ル が 装備 さ れ、 も う 一方 は デザートカラー に 、 ニ連装ロングレンジキャノン と アシスタ ン ト ブ ー ス タ ー を 装 備 し た A C 仕 様。 し か も 対 人 ガ ト リ ン グ と 対 ゾ イ ド ニ 連 衝 撃 砲 ま で 取り付 けた フル装備 版であ る。 そ れ ぞ れ の キャノピー が 開 き 、 中か らパイロット たちが 顔を見 せ る。黒 い コマンドウ ルフ には 妹 の ナデア が 、 そして デザートカラー の 方 には 、 兄の ジェドー が乗ってお り、 兄 妹 の息のあった コンビネーション には 定評 があった 。ナデア は 、 他 の女性 メンバー と 一 緒 に 白 百 合 の 園 へ は 行 か ず 、 兄 と 共 に 相 棒 で あ る コ マ ン ド ウ ル フ の 調 整 を し て い た が 、 騒 ぎ を聞 きつけ散歩か ら 戻 ら ない エスを探 しに 飛 び 出 し 、 そ ん な 妹を心配 して兄までつ いて来ていたのだった 。 ジェドー の問いに 、エス は 視線を〟 戦場 〟 に 向 けたまま 、頷 く 。 ﹁ あぁ ・ ・ ・ ・ ・ そ れより、 ここの奴 ら は正 気 か ?いく ら 強 力 な ゾイド に乗ってい る とは 言 え 、新 米だけで戦 わ せ る な ん て ・・・﹂ 9
苦虫を 噛 み 潰した よ うに 顔を顰めるエス に 、 ジェドー は 首を傾 げ る が 、 すぐに何か を 思 い 出 し 、 手 を 打った 。 ﹁新 米 ?・・・・ そ れ は 多分、〟初陣式〟 だ ﹂ ﹁初陣式 ?﹂ 説明 す るよ う 視線 で 促 す エス に 、ジェドー はた め 息 混 じ り に 説明 し 始め た 。 ﹁ ここの 警備隊 は 、 少々古風 な ん だ 。警備隊 の 訓練生 の中で 、 試練 に 合 格した 上 位 三人 だ けが 初陣式 に 臨めるら しい 。聞 いた 話 では 一応、 相 手の戦 力 など を分析 し 、 絶 対 に 勝 て る相 手と判 断 した場 合 の み送り出 す よ う 、考 慮してい る とは 言 っていたが ・・・・・﹂ 暢気 に 説明 してい るジェドー に 、妹 の ナデア が 声を上 げた 。 ﹁ そ れ よ り、 お 兄 ち ゃ ん !エ ス を 連 れ て 皆 の と こ ろ へ 戻 ら な き ゃ !い つ 流 れ 弾 が 飛 ん で く る か判 ら ないの よ ?!﹂ ﹁ っと 、 そうだった 。エス !﹂ 妹 に 指 摘さ れ、 ジェドー が エス に 声を掛 け る が 、 何故か エス はその場か ら動 こうとは しなかった 。 │ 何となくだが 、 彼女 ら は 負 け る・・・・・ 彼の中に漠然と 、 だが 確信を持 ってそう 思 え る〟 何か 〟 があった 。 *********** 10 記憶喪失の男
エス の 予想通り、 ブレードライガー の 三 体は 、 戦 闘状 態に 突 入して数 分 で 窮 地に 立 た さ れ ていた 。 襲 ってきた 者 たちは 、 ガイサックやモルガ などで武 装 し 、 白百 合 の 園 周 辺を縄 張 り に して 、 いつ も ち ょ っかい を出 してく る盗賊 たちだった 。 三 体の ブレードライガー は 、 訓練 どお り に フォーメーションを 組 ん で戦 闘を行 い 、 盗 賊 たち を一蹴 した 。 予定調和 といえ る 戦 闘。 しかし 、今回 はいつ も と 違 った 。 敵 を倒 して 一 息ついていた彼女たちに 、 砲弾が 降り注 いだ 。 ﹃ な 、 何 ?!﹄ 目 く ら ましと 取れる 砲 撃 に 騒 然としてい る と 、 彼女たちの眼前に大 型 の ゾイド が 現れ た 。 ﹁レッドホーン ?そ れも、三 体 も・・・・ ?﹂ そう 、 重装 甲と 多 数の武 装 が 施 さ れ た ﹁動 く 要 塞 ﹂ と呼ば れるゾイド、 レッドホーン。 辺境 の 盗賊 が 持 つには強 力 な ゾイド が 三 体 も現れ、 しか も 先ほど 倒 した数 を超 え るゾイ ドを引 き 連れ ていたのだ 。 その光景に 、 ブレードライガー の パイロット であ る少 女たち は 動揺 した 。 11
﹃ いけ 、野郎 ど も !﹄ 動揺 に よる虚を突 か れ、 彼女 ら は 一瞬 にして レブラプターを 中 心 とした 小型ゾイド に 取り囲 ま れ、四方 か ら の砲 撃 に晒さ れる こととなった 。 即 座 にお 互 いの死 角をカバー す るよ うに フォーメーションを 組 み直 し 、 Eシールドを 展 開 して 盗賊達 の攻 撃を耐 え る 白き獅子と 少 女たち 。 ﹁ こ ん な ・・・・・ こ れ は 、 何かの 間違 いです わ﹂ 攻 撃 の 衝撃 で 揺れるコックピット内 で 、 今回 の 初陣式 で 隊長 に 任 命さ れ た セレナーデ は 、目 の前の 現状を 否 定 す るよ うに 言葉を吐 き 出 した 。 〟エリート〟 であ る自分 には 、 この 初陣式 で 華麗 に先 陣を切り、 その 後 は 華々 しい 人 生 が 約 束さ れ てい るも の 、 と 信 じて 疑わ なかった 。 だが 、 蓋を開 けて みれ ば 、 聞 いていた 以上 の 盗賊 の戦 力 に圧 倒 さ れ、 情 けなく 殻 に 閉 じこ もり 攻 撃 に 耐 えてい る。 その 状況 に 、 彼女の プライド は 酷 く 傷 つけ られ ていた 。 ﹃・・・・ い や、も うい や !!﹄ 突 然 、 僚 機か ら叫 び 声 が 上 が り、 シールドを 展 開 したまま 、 たまたま手 薄 だった場所 の敵 を 弾き 飛 ばし 、 白百 合 の 園 へと 駆 け 出 してしまった 。 ﹁ ?!エリナ っ !何 処 へ 行 くのです !!﹂ セレナーデ の 怒鳴り声 に も 振 り返る ことなく 、 エリナ の 駆るブレードライガー は敵に 12 記憶喪失の男
背を向 けて 逃 げ 出 してしまった 。 均 衡 が 破 ら れ、逃 げ 出 し た ブ レ ー ド ラ イ ガ ー を 追 っ て 、 何 体 も の ゾ イ ド が 離 れ た が 、 レッドホーンを 含 む 大 部分 が 、セレナーデ と も う 一 体へと攻 撃を集 中させ る のだった 。 ************* ﹁ !こっちに来 る ぞ !!﹂ 双 眼 鏡を覗 いていた エス が 声を 張 り上 げ る。 ﹁ っあぁ 、も う !エス、 あなたは 下 がってて !お兄ち ゃん !!﹂ ﹁分 かって る !!﹂ 逃 げ て く る ブ レ ー ド ラ イ ガ ー と 、 そ れ を 追 っ て く る 盗 賊 達 の ゾ イ ド に 毒 付 き な が ら、 ナデア と ジェドー は キャノピーを閉め、 そ れ ぞ れ 照 準を、 ライガー に 近 い ゾイド たちへ と 向 け る。 ﹁ 当た れ !!﹂ ﹁ っ !!﹂ ロックオン表 示と共に 二人 が トリガーを引 くと 、 ロングレンジライフル と ニ連装ロン グレンジキャノン が火 を 吹く 。 ブ レ ー ド ラ イ ガ ー に 襲 い 掛 か ろ う と し て い た ガ イ サ ッ ク と レ ブ ラ プ タ ー が 、コ ッ ク 13
ピット ごと 撃 ち 抜 か れ、衝撃 に よ って機体が バラバラ に 砕 け散 り、爆 散した 。 しかし 、 やられ た 仲間を気 に も 留 め ず 盗賊 たちは怯 む ことなく 、 ライガー に 襲 い 掛 か ろ うとす る。二人 の兄 妹 は 、 ライガー に当てない よ う細 心 の 注意を 払いなが らトリガー を引 き 続 け る が 、 そのせいで照 準 が 甘 くな り 命中 率 が 下 が り始める。 とうとう 、 盗賊 の攻 撃 が ライガー の 足 元に着弾し 、 ブレードライガー が 錐もみ状 態で 地 面を転 が る。 ﹁ くそっ !!﹂ す る と 、 何 を考 えたのか エス が 、転 がった ブレードライガー へと 駆 け 出 していた 。 ﹁エス ?!﹂ 悲鳴を上 げ るナデア だが 、 コックピット内 に 警 報が 鳴り響 き 、 盗賊達 の 狙 いが 自分 た ちに 向 いたこと を察 し 、エスを追 いかけ る の を諦め、意識を 戦 闘状 態へと 引 き戻す 。 盗賊達 の 目 が ナデア と ジェドー の コマンドウルフ に 向 いてい る隙 に 、 エス は横 転 した ブレードライガー へと 取り付 き 、キャノピーを 強制 解 放した 。 中には 、 十 七∼ 八歳ほどの 少 女が 頭 か ら血を 流し 、気を 失っていた 。 シートベルトを外 し 、 少 女 を外 へと 運 び 出 す エス。 その 姿を、 キャンプを 張っていた キャラバン の 人々 は 遠巻 きに 見 ていた 。 ﹁ おい !誰 で も いい 、 この子 を助 け る の を 手 伝 ってく れ !!﹂ 14 記憶喪失の男
そ ん な 人々 に 、 エス が大 声 で 声を掛 け る が 、 お 互 いに 顔を見合わ せた り、 俯 くなどし て 顔を逸ら し 誰一人 として 動 こうとはしなかった 。 エス は 舌 打ちし 、 手 持 ちの物で止 血 しなけ れ ばと 、 ポケット など を調 べ 始め た時だっ た 。 ﹁エス !!﹂ ﹁エス、 お前無 事 だったのか ?!﹂ 人 ご みを掻 き 分 け 、マーク とその兄 貴分 であ るホメオ が 駆 け 寄 ってきた 。 ﹁丁度良 かった 、 この子 を頼む !﹂ エス は 、少 女 を二人 に 託 すと 、ブレードライガー の 方 へと 駆 け 出 した 。 ﹁頼む って 、 おい !お前どうす る気 だ !﹂ ﹁・・・・・﹂ 慌てて呼び止 めるホメオ だが 、 エス は 一瞬 振 り返 っただけで 、 そのまま コックピット まで 駆 け 上り、キャノピーを閉め てしまった 。 ﹁ お 、 おい !エス !?・・・ くそっ 、マーク !メディカルキットを寄越 せ !!﹂ ホメオ は 顔を顰め なが ら、 目 の前の 少 女 を応 急 処置 し よ うと 、 ボケッ としていた マー ク に 怒鳴り つけた 。 ﹁ は 、 はい !﹂ 15
マーク は 、 我 に 返 って ショルダーバッグ に入 れ てい るメディカルキットを 慌てて 取り 出 し 、ホメオ へ手渡した 。 ブレードライガー の コックピット へ入 り込ん だ エス は 、 シートベルトを 手 早 く 装 着す る と 、コンソールを操 作し 始め た 。 量 産 型 ・・・ ﹁ こいつ ・ ・ ・ や っぱ り か 。 しか も、OS の リミッター が 通 常 より 強 め に 掛 かって い る・・・・・﹂ キャノピー内 に 表 示さ れるデータを見 つ め、 エス が 再 び コンソールを操 作す る と 、 画 面 に ︻オーガノイドシステム、 リミッターOFF︼ の 文 字が 表 示さ れ、 フリーズ してい た コンバットシステム などが 再起動 した 。 何故 、 自分 がこ ん な 操 作 を苦も 無く 出 来 る のか 、 や は りエス には判 ら なかったが 、 そ の 疑 問 を頭 の 隅 へと 追 い やり、操 縦 桿を握 った 。 ﹁悪 いな 、 お前の 相棒 じ ゃ ないが 、 ほ ん の 少 しだけ手 伝 って もら うぞ ﹂ エ ス の 言 葉 に 呼 応 す る か の よ う に 、倒 れ た ブ レ ー ド ラ イ ガ ー が 力 強 い 駆 動 音 と 共 に 、 咆哮を上 げ 立 ち 上 がった 。 ﹁行 くぞ 、ブレードライガー !!﹂ スロットルレバーを 全 開 にし 、 戒め の 解 か れ た白き獅子が大地 を踏み し め、 駆 け 出 し 16 記憶喪失の男
た
。
剣
を
携え
る
白き獅子
﹁ っの !ち ょ こまか 鬱陶 しい !﹂ ロングレンジライフルを装備 した ナデア の コマンドウルフ が 、 三 体の レブラプターを 相 手に 苦 戦していた 。 懐 に入 られれ ば 不 利とな る のは 明 白な 為、 ナデア は片っ 端 か ら撃 つが 、 妙 に 錬度 の 高 い 動 き を見 せ るレブラプター三 機には 砲 撃 が当た る ことは無かった 。 焦 り の 見 え 始めるナデア。 だが 、突 然 一 機の レブラプター に 二 筋の光が 突 き刺さ り、爆 発した 。 ﹁・・・ え ?﹂ 何が 起 きたのか 分 か ら ず 、 呆け るナデア。 す る と 、通信 機か ら叱り声 が 響 いた 。 ﹃ボケッ とす る な !﹄ ﹁ !?・・ っ !!﹂ 二 機の レブラプター が 動 き を 止 め てい る ことに 気 がついた ナデア が 、 一 機に 狙 い を つ け トリガーを引 く 。 致 命 的 な 隙を見 せた レブラプター に 、ナデア の攻 撃 が命中し 爆 散す る。 18 剣を携える白き獅子残 った 一 機が 逃 げ る 素振 りを見 せ るも 時すでに 遅 く 、 最初 の 一 体と 同 じ攻 撃 に よ って 撃 ち 抜 か れ爆 発した 。 ﹃ だか ら、 いつ も言 って る だ ろ ?ロングレンジライフルを使 うな ら、射撃 ・ ・ ・ 特に 狙撃 の 腕を上 げ る か 、 兄ち ゃん の よ うに牽制用の 装備を つけ ろ って ﹄ 周 り を 警 戒 し な が ら、ジ ェ ド ー の コ マ ン ド ウ ル フ が 近 づ い て く る。 そ の 後 方 に は 、 ジェドー が 相 手 を していた 五 体の ゾイド が 残骸 となって 転 がっていた 。 ジェドー は 、 敵に 接近 さ れ て も、 コマンドウルフ の前 脚 に 装備 してい る対人ガトリン グや衝撃 砲などで 相 手 を 牽制しつつ 、 相 手の 足 が止まった所 を確実 に 狙 う 方法を取 って い る。 その 有効 性 を いつ も妹 に 説 いてい る のだが ・・・・ ﹁ だって 、 わ たしの コマンドウルフ にそ ん なの 載 せた ら、 も っと 動 けなくな る でし ょ !そ れ に 、 ゴテゴテ と牽制用武 装 な ん てつけた ら、 伝説 の 傭 兵 アーバイン が乗ってた コマン ドウルフ と 同 じじ ゃ なくな る じ ゃ ない !!﹂ と 、持論を持 ち 出 し 、 兄の 指 摘に 対 して 、 いつ も頬を膨ら ませて 反論 していた 。 ﹃ な ら、 兄 ち ゃ ん と 同 じ 装 備 に す れ ば い い !何 な ら 青 く 塗 っ て 〟 青 の 軍 〟 仕 様 に し て も・・・﹄ 通信 機の 向 こうで 嬉々 としてい る であ ろ う兄の 顔を想像 したのか 、 ナデア は 顔を真 っ 19
赤 にして 憤 慨した 。 ﹁ 絶 対、 い や っ !!﹂ 自分 乗ってい る 機体にこだ わりを持 ち 、 あまつ 思 春 期真 っ 盛り の ナデア にとって 、 兄 との 〟ペアルック〟 は堪え られ ない も のだった 。 ﹁ そ 、 そ ん な強く否 定 しなくて も ・ ・ ・ ・ 昔 は 、 何で も 兄ち ゃん と 同 じがいいって 言 って いたのに ﹂ 本 気 で 妹 に 拒 絶さ れ、 疎外感 か らジェドー が コックピット内 でいじけてい る と 、 通信 機か らノイズ と共に大 声 が 鳴り響 いた 。 ﹃ おい !ジェドー、ナデア !聞 こえ る か ?お前 ら、 何 処 で 油を売 って る !!﹄ 声 の主は 、 仲間 の ホメオ だった 。仲間 の 声を聞 き 、 いじけていた ジェドー は 気を取り 直 し 、通信 機 をオン にす る。 ﹁ホ メ オ か ?失 礼 な 奴 だ な 。 こ っ ち は 今 ま で 、 白 い ブ レ ー ド ラ イ ガ ー が 引 っ 張 っ て 来 た 盗賊 ど も と戦ってた ん だぞ ?まぁ 、俺 と ナデア の敵じ ゃ なかったけどな ﹂ サラッ と 自 慢 を挟むジェドー だったが 、ホメオ はあっさ り 無 視 した 。 ﹃ な ら、 今 すぐ白い ライガーを追 いかけ ろ !エス の奴 、 パイロット の嬢ち ゃんを こっちに 任 せたかと 思 った ら、ライガー に乗って 行 っちまった !﹄ ﹁ は ?﹂ 20 剣を携える白き獅子
ホメオ の 説明 に 、ジェドー が 首を傾 げ る と 、通信 機の 向 こうで ナデア が 叫ん だ 。 ﹃ お兄ち ゃん、 あ れ !!﹄ ジェドー が 、 ライガー の 転 がっていった 方を見る と 、 白い ブレードライガー が未だ戦 闘 の 続 く 方向 へと 駆 け 出 してい る のが 見 えた 。 ﹁ブースター、オン !﹂ 全 開 の スロットルレバーをエス がさ ら に 押 し 込む と 、 ブレードライガー の 背 中の 装 甲 が展 開 し 、 中か ら増速 用の ロケットブースター が 姿を現 し 、 その 力を解 放す る。 ﹁ っ !﹂ その 瞬間、 ブレードライガー は 一気 に 加速を始め、 コックピット の エス に強 烈 な 加速 の G が 襲 う 。 一 発の弾丸と 化 した ブレードライガー は 、 瞬 く 間 に 盗賊 とその攻 撃 に晒さ れるニ 機の ブレードライガーを視 界に 収め、 エス は ウェポンセレクター か らレーザーブレードを選 択。二 振 り の レーザーブレード が 上 へ 持 ち 上 が り、 横へ展 開 し光 を纏 って 輝 き を 放つ 。 ﹃エレナ ?!﹄ 通信 機の スピーカー か ら、 先ほどの 〟出陣〟 の時に 聞 いた 少 女の 声 が 聞 こえ る が 、 エ ス は答え る ことなく 目 の前に 迫るレブラプター に 狙 い を定め た 。 21
﹃ な ん だ ?﹄ ﹃ さっき 逃 げた奴か ?!﹄ 猛スピード で 近 づいてく るライガー に 、 レブラプター に乗 る盗賊 たちが 気 が 付 き振 り 返ろ うとす る が 、 そ ん な余 裕 は無く 、 白い 風 が 通り過 ぎた 瞬間 には 、 機体は 真 っ 二 つに 切り裂 か れ、爆 発していた 。 ﹃ こ 、 こいつ 速 い ?!う わ っ !!﹄ ﹃ じ ょ、冗談 じ ゃネェ !!﹄ エス は ブースターを緩める ことなく 、 次 々 と 盗賊 の ゾイド たちの攻 撃を掻 い潜 り、 す れ違 いざまに ブレード で 切り裂 き 、 ブレードライガー が 通り過 ぎた 後 には 、 爆 散した ゾ イド の 残骸 が 転 が り、 敵はあっという 間 にその数 を 半 分 ほど 減ら していた 。 大きく弧 を描 きなが ら、エス は 残 った 盗賊 たちへ 狙 い を定める。 ﹃ あの ライガー に攻 撃を集 中し ろ !﹄ ﹃ こっちの 二 機はどうす るん で ?!﹄ ﹃ 放って 置 け !まずは 、 あいつだ !!﹄ さすがに 盗賊 たち も 強敵の 出現 に 、 Eシールド で エネルギーを殆 ど 使 い 果 たし 、 動 け なくなっていた セレナーデ たち を 無 視 して 、エス へと攻 撃を集 中させ る。 だが ブースター で 加速 した ライガーをエス は 巧み に 操り、 右 へ 左 へと砲弾 を躱 してい 22 剣を携える白き獅子
く 。 ﹃ どうなって ん た ?!弾が当た ら ねぇぞ !!﹄ ﹃ ば 、化 け物ぉ !!﹄ 再 び 、 レーザーブレード に よ って 盗賊 たちの機体は 悲鳴を上 げなが ら切り裂 か れ てい き 、三 体い るレッドホーン の 内、一 体が横 一直線 に 切り裂 か れ た 。 百八十 度ターン し 、 攻 撃 体 勢 のまま エス の 駆るライガー がその場に停止す る。 二 十 体 近 く い た 盗 賊 た ち の ゾ イ ド は 、気 が 付 け ば レ ッ ド ホ ー ン 二 機 だ け と な っ て い た 。 ﹃ くそ !ひ よ っ子 相 手の楽な 仕事 だと 聞 いていたのに 、話 が 違 うぞ !!﹄ ﹃ っこの 、覚 えてい ろ !!﹄ 在 り 来た り な 棄 て 台詞を吐 き 、 レッドホーン が慌てて 逃 げていくの を確認 し 、 エス は 盗賊を追 いかけ る ことなく 、 大きく息 を吐 き 出 す 。 次の 瞬間、 ブレードライガ の 各関節部 が スパーク し 、 脚部 が機体 を 支え る ことが 出 来 ずに 傾 いて 倒れ てしまった 。 だが 、 エス はそのことに 驚 き を見 せ る事 は無く 、 む し ろ 当然の結 果 だな 、 と 目を伏 せ る。 彼が乗 り込ん だ 量 産 型ブレードライガー には 、 オーガノイドシステム という ゾイド の 23
戦 闘力を劇的 に 高める 特 殊 な システムを実装 さ れ てい る のだが 、 代償 として フルスペッ ク のままでは常 人 に 操る ことが 出 来ない 〟暴れ馬〟 となってしまう 。 その 為、 操 作性 を 高める た め に OS には リミッター が 設 け られ ていた 。 エス は 、 その リミッターを 全て 解除 し ライガー の 限 界性 能を引 き 出 して戦っていたの だが 、 機体の 調 整が リミッターを掛 けた前 提 で 行われ ていたた め に 、 機体が エス の 反応 速度 に 耐 え 切れ ず 、限 界 を超 えてしまったのだ 。 ﹁ ・ ・ ・ すまなかったな 、 無 茶を させてしまって 。 お前 を 整 備 してく れ てい る人 は 、凄腕 の よ うだか ら、 ち ゃん と 〟治 して 〟もら え る はずだ 。 あ り がとうな ﹂ コックピット内 で 、 コンソールを撫 でなが ら、 エス は 自分 の無 茶 に 付 き 合 ってく れ た ライガー の 感謝 の 言葉を述 べ 、キャノピーを開 けて ライガーを降り た 。 横た わるブレードライガーを見 つ め なが ら、 エス は ライガー が全 力 で 動 けたことに 満 足 してい る、 と 感 じ 笑みを 浮かべた 。 ﹁ 機体か ら離れ なさい !!﹂ ﹁ ?﹂ 突 然 、 先ほと 通信 機か ら聞 こえた 少 女の 声 が 後ろ か ら、 しか も怒鳴り声 で 聞 こえ 、 エ ス が振 り向 くと 、 猫の よ うに 目 尻の 釣り あがった 少 女と 、 その 仲間 と 思われる同 年 代 の 少 女が エス に 銃を向 けていた 。 24 剣を携える白き獅子
﹁ ?!﹂ エス は慌てて 、 両手 を挙 げた 。 そして 、 冒頭 へと戻 り、 エス は 走馬 灯の よ うに 思 い 出 していた 記憶を頭 の 隅 に 追 い や り、意識を実 時 間 へと戻した 。 引 き 金 に 指を掛 けてい るセレナーデを 刺 激 しない よ うに 、 エス は ゆ っく り と 口を開 い た 。 ﹁君 た ち の 仲 間 の ゾ イ ド を 勝 手 に 使 っ た の は 謝 る。 そ れ か ら、 こ の ラ イ ガ ー の パ イ ロ ッ ト の子は無 事 だ 。 怪 我を していたが 、俺 の 仲間 が 応 急手当 を してい る。安心 してく れ﹂ エス の 話を聞 き 、 セレナーデ の 後ろ にいた 少 女が 、 安 堵の 表情を 浮かべ る が 、 セレナー デ は全く 真逆 の 反応を見 せた 。 ﹁ そ ん なことはどうで も いいです わ ・ ・ ・ ・ 汚 らわ しい男 風情 が 、よ く も私︽わ たくし ︾ の 初陣式を台 無しにしてく れ ました わ ね !その 代償、 命で 償 っていただきます わ !!﹂ 怒り で 我を忘れ た セレナーデ が 、引 き 金 に 掛 けた 指 に 力を込める。 ﹁セレナーデ !牽制だけな ら まだし も、 さすがにそ れ は マズイよ !!﹂ 後ろ にいた 少 女が 、 慌てて セレナーデ に 駆 け 寄り、羽交 い絞 め にす る。 ﹁ !?離 しなさい 、 クー !!貴 女だって 、 初陣式を台 無しにさ れ たの よ !悔 しくはないの ?!﹂ 25
﹁ そ れ と こ れ と は 話 が 別 だ よ !そ れ に 、 こ の 人 が 助 け て く れ な か っ た ら、ア タ シ も セ レ ナ ー デ も 死 ん で い た か も し れ な い ん だ よ ?そ れ に エ レ ナ だ っ て 助 け て く れ た ん だ 。 恩 を仇 で 返 す よ うな 真 似 、アタシ には 出 来ない よ !﹂ ﹁ !何 を馬鹿 なこと を・・・・ 男に恩など 感 じ る必要 は 有り ませ んわ !!離 しなさい !!﹂ 少 女 二人 の 言 い 争 う中 、 エス が 近 づいてく る気配 に 右 へ振 り向 くと 、 見 慣 れ た コマン ドウルフ二 体が 駆 け 寄りエス の 傍 で止ま る と 、 パイロット の ジェドー と ナデア が キャノ ピーを開 けて 降り てきた 。 ﹁エス、 無 事 ?!﹂ ナデア が エス に 駆 け 寄り、 怪 我 など 負 っていないか彼の 身 体 を見回 す 。 ﹁ あぁ 、 無 事 だ 。 怪 我も 無い よ﹂ ﹁ そう 、良 かった ・・・・・﹂ エス の 声を聞 き 、ナデア が 頬を赤 くして 微笑む。 ﹁ブレードライガー に乗っていったと 聞 いた時は 、 さすがに 驚 いたぞ ﹂ ナデア の 後ろ か らジェドー が呆 れ た よ うな 表情 で エス に 声を掛 け 、 エスもジェドー に ﹁迷惑を掛 けた ﹂ と 頭を下 げた 。 ﹁ まだ 話 は終 わ っていませ んわ !﹂ クー の 拘 束か ら逃れ た セレナーデ が 再 び 、銃口をエス へと 向 け る。 26 剣を携える白き獅子
﹁ ち ょ っ 、 あ ん た本 気 ?!﹂ ナデア と ジェドーも、咄嗟 に 腰 か ら下 げた 銃を取り出 し 、セレナーデ たちに 向 けた 。 ﹁・・・ お嬢さ ん。馬鹿 な 真 似は やめるん だ ﹂ ジェドー が 、 銃 の 安 全 装置 の ロックを解除 しなが ら、 セレナーデ の 構 え る銃 に 狙 い を 定める。 ﹁ 男の 指図 は 受 けませ んわ !その男 を庇 うと 言 うのな ら、貴方 たち も同罪 ・ ・ ・ 死 をも っ て 償 いなさい !﹂ いつ 撃 ち 合 いが 始 まって も おかしくない 状況 に 、 エス は両手 を挙 げたまま 、 腰を落 と して 目 の前の セレナーデ に体当た りを し よ うとした時だった 。 〟 そこまでだ !!!〟 人間 の 声量 とは 思 えない 〟生〟 の大きな 声 が大 気を震わ せ 、エス たちの 耳 に届く 。 突 然 、 両 者 の 間 に 一台 の 軍 用 ジープ が 土 煙 を上 げて 滑り込ん だ 。 運転 していた女性が 立 ち 上 が り、 一瞬エス たち を見 て 、 すぐに セレナーデ たちに 視線 を移 した 。 ﹁ た 、隊長 !﹂ 現れ た女性 を〟隊長〟 と呼び 、クー が ﹁助 かった ﹂ と 銃を下ろ す 。 しかし 、セレナーデ はその女性 を見 て も、銃を下ろ すことはなかった 。 27
﹁セレナーデ、銃を納めろ。 こ れ は 、 命 令 だ !﹂ 手で制しなが ら、 女性が命 令 す る が 、 セレナーデ は 銃を下 す 気配を見 せ る どこ ろ か 、 上 司 であ る 女性に 意見 した 。 ﹁ し か し 、隊 長 !そ こ の 男 は 、我 が 白 百 合 の 園 の 神 聖 な ゾ イ ド を 無 断 使 用 し た だ け で な く 、初陣式を 汚した 痴れ者 !相応 の バツを与 え る べきです !﹂ セレナーデ の 言葉 に 、 女性の 鋭 い 目 つきが 一 層 鋭 さ を増 した 。 ﹁ この 、 大 馬鹿者 !!﹂ 先ほどの 人間離れ した 声量 で 、 女性が セレナーデを怒鳴り つけ る。 ﹁ !?﹂ そのあま り の 迫力 に 、 セレナーデ の 顔色 が 真 っ 青 にな り、 銃を持 った手 を震わ せなが ら 数歩 後 ずさ る。エス たち も、 その 声 に 耳を押 さえた 。 ﹁ 命 を助 けてく れ た恩 人を痴れ者 扱いすなど 、 この恥 知ら ずが !私 は 、 そ ん な恥 知ら ずの 部下を持 った 覚 えは無い !!そ れ に 、 今回 の 初陣式 で敵の戦 力を見誤り、 お前たち を出撃 させ 初陣式を台 無しにしたのは 、 隊長 であ る私 の判 断ミス のせいだ 。 恨 む な ら この 私を 恨 め !﹂ 隊長 の 言葉 に 、セレナーデ は 怒りを滲 ませなが らも、銃を下ろ した 。 隊長 は 短 く息 を吐 き 、ジープ か ら降りる と エス たちの前へ 立 ち 、深々 と 頭を下 げた 。 28 剣を携える白き獅子
﹁ ・ ・ ・ ・ ・ 助 けて 頂 いたに も関わら ず 、部下 が大 変 な無礼 を働 いてしまった 。部下 に 代 わり、謝罪 す る。 申し 訳 ない ・ ・ ・ ・ 私 は 、 白百 合 の 園 の 警備隊隊長を してい るヴェア トリス という 者 だ 。 この 度 は 、 都市 と 部下 の命 を 救っていただき 感謝 す る。貴殿 の 名を 窺 って も ?﹂ ヴェアトリス と 名 乗 る 女性に 、 何故か 懐 かしい 雰囲気を感 じ るエス は 、 自 然と 背 筋が 伸び る。 ﹁エス だ ﹂ ごく 短 い 自己 紹 介 に 、ヴェアトリス は 嫌 な 顔を一 つせず 笑みを 浮かべた 。 ﹁エス殿 か ・ ・ ・ 実 は 、我 が 園 の 代表 が 、貴殿 に 直接 礼 を言 いたい を 申してい る。 ご 同行 願 いないか ?﹂ ヴェアトリス の 言葉 に 、セレナーデ と クー が 驚愕 の 表情を 作 る。 ﹁ なっ ?!﹂ 何か 言葉を 発そうとした セレナーデ に 、 ヴェアトリス は 一 睨 み し 、 彼女 を押 し 黙ら せ た 。 ﹁ ち ょ っと 、待 ちなさい よ !そ ん な 事言 って 、エスを 捕まえ る気 じ ゃ ・ ・ ・ モガモガ !!﹂ 今度 は ナデア の 方 が 抗議 の 声を上 げたのだが 、 そ れをジェドー が両手 を使 って 妹 の 口 を 塞ぎ 、 強制 的 に 言葉を遮 った 。 29
﹁ すまない 、 妹 が失礼なこと を。 だが 、 貴 女について 行 って 、 エス が 安 全だという 保障 は ?﹂ 何 処 か 芝 居 じ み た ジ ェ ド ー の 言 葉 に 、ヴ ェ ア ト リ ス は 一 瞬 キ ョ ト ン と し た 顔 を す る が 、 すぐに 真面目 な 表情 へと戻 る。 ﹁マザー の 名 と 、 この 隊長 の 証 に 誓 って 、エス殿 の 安 全 を約 束す る﹂ 襟 元につけ る 百 合 の形 を象 った ブローチをジェドー に 見 せ 、 誓 い を立 て るヴェアトリ ス。 十数 秒 ほど 真 剣な眼 差 しで 見 つ め合 ったままの 二人 が 、突 然 笑みを こぼす 。 ﹁・・・エス、後 はお前が決 めろよ﹂ 妹 の 口を 塞いだまま 、 ジェドー は 面倒 だ 、 と エス に決 め させ る ことにし 、 話を投 げた 。 ﹁ は ?・・・・・・ まぁ 、断る理 由はないが ・・・﹂ 丸 投 げしてきた ジェドー に 顔を引 き攣 ら せ るエス だが 、 ヴェアトリス か ら〟悪意〟を 感 じないし 、 と 同行を了承 す る。 ﹁ そうか !では 、車 に乗ってく れ !・ ・ ・ お前たちは機体 収容後、 報告 書を出 せ 。 いいな ?﹂ ヴェアトリス は 嬉々 として 車 の 運転 席に 座り、直立不動 の 部下 たちに命 令を下 す 。 ﹁ はっ !﹂﹁・・・・・﹂ 30 剣を携える白き獅子
クー と セレナーデ は 、 ヴェアトリス に敬礼す る と 、 そ れ ぞ れ の搭乗機へと 駆 けていっ た 。 ﹁ では 、行 こう ﹂ エス が 助 手席ついたの を確認 し 、 ヴェアトリス は ジープを 白百 合 の 園 へと 向 けて発 車 させた 。 ﹁ッッッ・・・ ぷはっ !お兄ち ゃん、 どうして エスを行 かせたの !﹂ いつまで も口を 塞ぎ兄の手 を 振 り 払い 、 ナデア が 顔を真 っ 赤 にして ジェドー に噛 み付 いた 。 ﹁記 憶 を 無 く し て い る と は 言 え 、 あ い つ は 子 供 じ ゃ な い ん だ 。自 分 で 判 断 さ せ る の は 当 然だ ろ う ﹂ 髪を掻 き 上 げなが ら、ジェドー は ジープ が 走り去 った 方を見 つ める。 ﹁・・・・ そ れより、 お兄ち ゃん。 あの 美人 な 隊長 さ ん と 知り合 いなの ?﹂ 先ほどの ヴェアトリス との 只 な ら ぬ 雰囲気 に 、ナデア が ジト目 で兄 を 睨 む。 ﹁ん ?さぁな ・ ・ ・ ・ そ れより、俺 たち も 戻 る ぞ 。〟 女 将 さ ん〟 たちが戻ってきて る か も し れ ないし 、エス のこと をみん なに報告しないと ﹂ そう 言 って 、 ジェドー ははぐ ら かす 様 に 相棒 であ るコマンドウルフ の 下 へと歩いてい く 。 31
﹁ ち ょ っと 、 お兄ち ゃん !・・・も う !!﹂ 何となくかくしごと を してい る 兄に 怒りを覚 えつつ 、 ナデアもエス の乗った ジープ が 走り去 った 方を少 し 見 つ め、愛 機の 下 へ 走 っていった 。 ************* ﹁ 改 め て 、 部下 の 事 はすまなかった 。 あの子等にとって 、 今回 は特別だった も のでね 。許 して や ってく れ、 とはいえないが 、 その 辺りを察 してく れる と 助 か る﹂ ジープを走ら せなが ら、 ヴェアトリス が 謝罪 しなが らもセレナーデ たちの フォローを す る。 ﹁ 別に 気 にしていないさ ・ ・ ・ そ れ に 、謝る のはこっちだ 。勝 手に ライガー に乗 り込み、 無 茶を して 壊 してしまった 。パイロット の子には申し 訳 ないこと を した よ﹂ ライガー たち を回収 に 向 ってい る であ ろ う グスタフ と 、 両 腕をクレーン に改 造 した 複 数の ゴドス とす れ違 い 、 その機体 を目 で 追 いなが ら、エス は 深 いた め 息 を つく 。 そ ん な エスを見 て 、ヴェアトリス は 笑みを 浮かべた 。 ﹁ そのことか ・ ・ ・ そ れ こそ 、気 にしなくていい 。 あの ブレードライガー は エレナ ・ ・ ・ 君 が 助 けてく れ た子だが 、 その機体ではない 。警備隊 で 専 用機 を持 つことが 許 さ れ てい る のは 、 隊長 であ る私を 含 め てごく 一部 の 隊員 だけで 、 後 は 状況 に 応 じて乗 る 機体が 変 32 剣を携える白き獅子
わるん だ ・ ・ ・ ・ そ れより、貴殿 の戦い を見 せて もら ったが 、 正 直、自分 が ゾイド 乗 り だ と 名 乗 る の が 恥 ず か し く な っ た よ。ブ レ ー ド ラ イ ガ ー が あ ん な 風 に 動 く と は 思 っ て も いなかった 。一 体 、 何 処 であ れ ほどの 操 縦 技術を ?﹂ ヴェアトリス の問いに 、エス はどう答え る か 迷 ってしまった ・ ・ ・ という より、自分 で も、驚 いてい る というのが本 音 だった 。 自分 に 関 す る記憶を忘れ なが らも、 ゾイド に 関 す る知識 は 覚 えてい るエス。キャラバ ン で も、 何 度もゾイドを動 かしていたが 、 戦 闘 用 ゾイド に よる 戦 闘 機 動 は 初め てだった 。 に も拘ら ず 、 全 力 で 動 く ライガー の コックピット で 、 エス はいつ も以上 に 思考 が クリ ア に な り、ブ レ ー ド ラ イ ガ ー と 一 体 に な っ た か の よ う に 機 体 を 手 足 の ご と く 操 っ て い た 。 ││ 本当に 、オレ は何 者 な ん だ ? そ ん な 疑 問が 頭 の中 を過 ぎった 瞬間、 強 烈 な 頭痛 が エスを襲 った 。 ﹁ !?っぅぅぅ ・・・・・・・・﹂ ﹁ ?どうした 、エス殿 ?﹂ 額を押 さえ 俯 く エス に 、 ヴェアトリス が 声を掛 け る が 、 エス はあま り の 痛み で 返事を 返 せなかった 。 ﹁エス殿 ?!どうしたのだ !!エス殿、私 の 声 が ・・・・・・﹂ 33
遠 くな るヴェアトリス の 声。 そして エス の 視 界が急 激 に 狭 まっていき 、 彼の 意識 はそ こで ブラックアウト した 。 ************** ︵ ???︶ 村の 小高 い 丘 か ら遠 くに 見 え る 地平 線 が大好きな 少 年は 、 あの 向 こうには何があ る の だ ろ う 、 と 毎日 空 想 した 。 そしていつか村 を出 て 、 最高 の 相棒 とな るゾイドを見 つけ 、 相棒 と共に地平 線 の 向 こ うへ 行 くことが 、少 年の夢になっていた 。 そのこと を同 じ村に住 む 幼 馴染 に 語る と 、 彼女は ﹁外 は危ないか ら、 村か ら出 ち ゃ駄 目 だ よ﹂ と 言われ窘められ てしまったが 、少 年は夢 を諦め ず 、 大 人 になった ら ・ ・ と 固 く決 意 す る。 地平 線 の 向 こう を見る こと を 夢 見 なが ら、少 年は 早 く大 人 にな る の を待 つのだった 。 ****************** ﹁・・・・・・ ここは ?﹂ エス が 目を覚 ますと 、見知ら ぬ天 井 が 飛 び 込ん できた 。 34 剣を携える白き獅子
清 潔 感 のあ る 白い天 井。鼻腔を擽る甘 い 香り。事 態が 飲み込め ず 、 エス が呆然と天 井 を見 てい る と 、視 界の 端 に 人 影が 有る のに 気 が 付 いた 。 ﹁ ?﹂ 身 体 を起 こすのが 億劫 なほどの 脱力感 に 、 エス は 首 だけ 動 かし 、 人 影の 方 へ 目線を動 かす 。 ﹁・・・・・ ?!お 目覚め にな られ たのですね !﹂ 水に浸し 、 固 く絞った白い タオルを 手に振 り返 ったその 人 物は 、 エス が 目を覚 ました ことに 気 が 付 くと 、 慌てて ベッドサイド まで 駆 けてきた 。 ﹁よ かった ・ ・ ・ ・ ・ エス様 がここへ来 る途 中に 気を 失 われ たと 聞 いた時は 、 本当に 心配 しました ﹂ 本当に 心配 していたのだ ろ う 。 彼女は 、 タオルを 手にしたまま祈 るよ うに 胸 の前で手 を握り、安 堵の 表情を 浮かべ る。 ﹁・・・ そ れより、 あ ん たは ?そ れ に ・・・ ここは何 処 だ ?﹂ 自分 のこと を心配 してく れ た女性に 対 し 、 エス は 状況を聞 こうと 、 不躾 と 思 いなが ら も質 問した 。 エス の問いに 、 女性は ハッ と 口を押 さえ 、頬を 桜 色 に 染め た 。 ﹁ !申し 訳 あ り ませ ん、わ たくしった ら独り で 舞 い 上 がってしまい ・ ・ ・ ・ わ たくしは マ 35
ザーミレイ。 この白百 合 の 園 の 代表を してお り ます 。 ここは 、 わ たくしの 邸宅 にあ る客 室 の 一室 です ﹂ マザーミレイ と 名 乗 る う ら若 き女性は白い 修道服を身 に 纏 い 、 その 立 ち 姿 はま る で 宗 教画に 描 か れる聖 女 を思わ せ る 神 々 しさ を纏 っていた 。 ﹁よ うこそ 、 白百 合 の 園 へ 。エス様﹂ そ ん な彼女は 、 天 使 の 微笑を 浮かべ 、エス に 深々 とお 辞儀 す る のだった 。 36 剣を携える白き獅子
白百
合
の
聖
女
﹁オレ は 確 か ・・・・﹂ 身 体の ダル さ を 強 引 にねじ 伏 せ 、エス は ベッド か ら起 き 上 が ろ うとす る。 ﹁ !?いけませ ん !まだ 寝 ていないと ・・ き ゃ っ !!﹂ そ ん な エスを見 て 、 ミレイ が慌てて 駆 け 寄ろ うとして 足をも つ れ させ 、 上 半 身を起 こ した エス の 胸 に 飛 び 込む 形で 倒れ こ ん だ 。 ﹁・・・・・ ?!﹂ 自分 が男に 抱 きついてい る、 ということに 気 がつき 、ミレイ は 顔を真 っ 赤 にす る。 ﹁・・・ 大 丈 夫か ?﹂ エス に 声を掛 け られ、 ミレイ が 顔を上 げ る と エス の 顔 が 間近 にあ り、 その 状況 に彼女 の 身 体が 緊 張で硬 直 した 。 ﹁ ﹁・・・・・・・・・・﹂ ﹂ お 互 いに 見 つ め合 い 、 時 計 の 音 だけが大きく 聞 こえてい る。 ﹃エス !あ ん た 、 大 丈 夫な ん ね ?!・・・・・・・﹂ そ ん な 最 中に 、 豪快 に ドアを開 け恰幅の 良 い女性が 部 屋に入ってきて 、 抱 き 合 ってい 37る二人 と 目 が 合 った 。 ﹁・・・・ 空 気読 ま ん で 悪 かねぇ ∼。 おばち ゃん、 すぐ 出 て 行 くけ ん。 ご ゆ っく り∼﹂ 独 特な 喋り口 の女性は 、 そのまま ドアを閉め て 出 て 行 こうとす る。 ﹁ !?お 、小母様 !!こ 、 こ れ は 違 うのです !!﹂ ﹁ 女 将 さ ん !待 ってく れ、誤解 だ !!﹂ エス たちは慌てて 離れ、出 て 行 こうとしてい る 女性 を引 き止 める。 ﹁・・・ウソッ ち ゃ。 そ ん な ん、必 死にな らん で もよ か よ !あははは !﹂ 振 り返り なが らドアを閉め、 豪快 に 笑 う女性に 、 エス と ミレイ は バツ が 悪 そうに 閉口 した 。 入ってきた女性は 、 エスを助 けてく れ た キャラバン の副 リーダー で 、 名 前は リョーコ。 し ょ っち ゅ う 仕 入 れ の 旅 に 出 てしまう夫に 代わり、 キャラバンを纏める お 母 さ ん的 存在 で 、メンバー か ら は ﹁ 女 将 さ ん﹂ と呼ば れ ていた 。 ﹁や け ど 、 入 っ て き た ん が 私 で よ か っ た ね ぇ 。〟 白 百 合 の 聖 女 〟 が 男 に 抱 き つ い と っ た !な ん て 他 の 誰 かに 知られ とった ら、 ど ん な 騒 ぎになっとったかね ・ ・ ・ ・ ワザ と や な いにして も、気を つけ ん な ダメよ∼﹂ 軽 い 口調 だが 、リョーコ の 表情 は 真 剣その も のだった 。 ﹁も、 申し 訳 あ り ませ ん・・・・わ たくしの 不注意 で エス様 に も、 ご 迷惑を・・・・﹂ 38 白百合の聖女
不 慮の 事 故とは 言 え 、自分 の 軽 はず み な 行動 に ミレイ は 目を伏 せてしまう 。 ﹁ 別に 気 にしなくていい 。寧ろ、 無 理を し よ うとした オレ が 悪 かった ん だ 。 だか ら、 顔を 上 げてく れ﹂ ﹁エス様・・・・・﹂ エ ス に 優 し い 言 葉 を 掛 け ら れ、ミ レ イ が 顔 を 上 げ る と 泣 き そ う な ほ ど 瞳 が 潤 ん で い た 。 ミレイ の 様 子 を見 た リョーコ が 、意 地の 悪 そうな 笑みを 浮かべ る。 ﹁ あ ら っ ?な ん ねぇ ∼、 エス。 あ ん た 、 〟 うちの子 〟やナデア だけじ ゃ なくて 、 ミレイ に も 手 を出 す 気 ね ?﹂ 下 世 話 な こ と を 言 う リ ョ ー コ に 、ミ レ イ は 恥 ず か し さ で 頬 を 赤 く し 、エ ス は ﹁ ま た か ・・・﹂ とた め 息 を ついた 。 ﹁ どういう 意 味ですか ?・・・・ そ ん なつ もり は 有り ませ んよ﹂ キャラバン に 拾われ て 一週間。エス は女性と何かあ る と 、 リョーコ にか ら か われ てい た 。も ち ろん、 彼女に 悪気 が無いのは 分 かってい る し 、 キャラバン に 早 く 馴染ん で もら いたいという 、 リョーコ の 心遣 いというの も理解 できたが 、 正 直エス としては やめ て欲 しかった 。 否 定 す るエス に 、リョーコ が ワザ と ら しく 驚愕 の 表情を 浮かべ る。 39
﹁ まっ !こ ん な 可愛 い子たちに 魅力を感 じ ん とね ?!も しかして 、 あ ん た ・・・・・﹂ ﹁ 女 将 さ ん・・・ そ れ以上 か ら かう 気 な ら、オレも怒り ます よ ?﹂ さすがに 冗談 にな ら ない 、 と エス の 目 が スッ と細くな る。 ﹁冗談 ったい 。 さて 、 エス の無 事 な 姿も確認出 来たし 、 私 は帰 ろ うかね 。悪 いけど 、 一 晩 だけ エス のこと 頼む ね ﹂ そういうと 、リョーコ は 今度 こそ 部 屋 を出 て 行 く 。 ﹁ は 、 はい !小母様 !﹂ 帰っていく リョーコを見送ろ うと 、 ミレイ が 追 いかけ よ うとす る と 、 ドア の 隙間 か ら ヌッ と リョ│コ が 顔を出 した 。 ﹁・・・・エス。可愛 いか ら って 、ミレイ ち ゃん に手 、出 した ら いか ん け ん ね ?﹂ ﹁ 女 将 さ ん・・・・・﹂ こ れ は 、 本 気 で 話 し 合 わ な い と い け な い か 、 と エ ス が 立 ち 上 が る 素 振 り を 見 せ る と 、 リョーコ は ﹁ あっはっはっは !﹂ と 豪快 に 笑 いなが ら 帰っていった 。 嵐が 過 ぎ 去り、残 さ れ た エス と ミレイ の 目線 がぶつか る。 ﹁ ・ ・ ・ !?あ 、 あの !すぐに 、 着 替 え を持 ってこさせますね !では 、わ たくしはこ れ で !!﹂ 再 び 二人 っき り になったことに 気 が 付 き 、 ミレイ はその空 気 に 耐 え 切れ ず 、 部 屋の 外 へ 走り出 てしまった 。 40 白百合の聖女
﹁ あ 、 ち ょ っと !・・・・・ ふぅ ﹂ 呼び止 める間も なく ミレイ が 出 て 行 ってしまい 、 一人残 さ れ た エス は ドッ と 疲れ が 押 し 寄 せ 、ベッド に 倒れ こ む。 ﹁・・・・ そ れ にして も、 どうして オレ は 、ライガーを あ ん な 風 に扱えた ん だ ?﹂ 昼 間 のこと を思 い 出 し 、 そう 疑 問 を頭 に 思 い浮かべて も、 今度 は 頭痛 に 襲われる こと は無く 、む し ろ胸 が 高鳴る の を感 じた 。 ま る で 、 自分 の 身 体が 覚 えてい る かの よ うに 、 コックピット に 収 ま り操 縦 桿を握り、 ラ イガー と共に戦場 を駆 けたあの 瞬間、 自分 の居場所はここなのだと 、 強く 思 った 。 だが 、 そ れ で もエス の 記憶 が戻 る事 は無く 、 今 の彼にはあの時の 感覚や気持 ちが 、 別 の 誰 かの物の よ うに 思 えてしまう 。 ﹁ そういえば 、 何か夢 をみ ていた 気 がしたが ・・・・・﹂ とて も懐 かしい夢 を見 ていた 気 がす る、 と 思 った エス だったが 、 先ほどの 一件も あっ て夢の 内容を思 い 出 すことが 出 来ず 、﹁ ま 、 いいか ﹂ と 今深 く 考 えて も仕方 が無い 、 と 考 え る の をやめる のだった 。 ﹁ はぁ ・・・・﹂ 慌てて 部 屋の 外 へ 出 た ミレイ は 、 熱 くなった 頬を 両手で 押 さえ 、 その手 を そのまま 胸 41
の 上 に 置 いた 。心臓 の 鼓動 が 、今 まで経 験 したことが無いほど 早 く 脈 打ってい る。 男子 禁 制の白百 合 の 園 に 〟生 ま れ〟育 った ミレイ だが 、 男性と 触れ合 うことが無かっ た わ けではない ││ と 言 って も、 幼い 頃 の 話 だが 。 そ ん な彼女は 、 先ほど体 験 した 出 来 事 の 衝撃 で 、 大 切 なこと を忘れ ていた 。 ﹁・・・ いけない 。わ たくし 、エス様 にお礼 を言 うの を、忘れ てしまいました ﹂ 気持 ちが 一 杯になっていたせいで 、肝心 の用 件を忘れ ていた ミレイ。 だが 、 背 中の扉 を開 けて 、 も う 一度エス と 顔を合わ せ る勇気 は 、 今 の彼女には無かっ た 。 ﹁一 晩 寝 て 、気持 ち を落 ち着かせ れ ば ・・・ 大 丈 夫 、よ ね ?﹂ ミレイ は 、 胸 に手 を 当てたまま 自分 に問い 、﹁ きっと大 丈 夫 ﹂ と 自分 に 言 い 聞 かせ 部 屋 へと戻っていった 。 ********************* 同 じ 頃、 白百 合 の 園 のとあ る 区画 。 ﹁・・・・・・﹂ 警備隊長 の ヴェアトリス が 、 修復 の 為 に バラ さ れ た 一 体の ブレードライガーを瞬 き も せずに 見上 げていた 。 42 白百合の聖女
﹁や ぁ 、警備隊長〟様〟。 こ ん な所に何か用かな ?﹂ す る と 、 横か ら声を掛 け られ 彼女が振 り向 くと 、 作業着に白 衣を羽 織 り、 栗色 の 長 い 髪を一 つにまと め 丸 縁メガネを掛 けた女性が歩いてきた 。腕を 組 ん でい る せいか 、 魅力 的 な 胸 が組 ん だ 腕 に乗っかってい る。 ﹁・・・ドクター。 その呼び 方、やめ てく れ ないか ?﹂ 女性 をドクター と呼 ん だ ヴェアトリス は 、 目 に 見 えて 不 機 嫌 な 顔を す る。警備隊隊長 を拝 命して 、 そ れ な り に 誇りを持 つあ るヴェアトリス だが 、 〟様〟付 けさ れる と 、 どこ か 馬鹿 にさ れ てい るよ うに 聞 こえた 。 顔を顰めるヴェアトリス に 、ドクター は 肩を すく める。 ﹁一応、 親愛 の 念 は 込め てい る つ もり だけどね 。君 がそう 言 うな ら、 やめ ておこう 、 そ れ で 、僕 の ラボ に何の用だい ?ヴェアトリス﹂ 全 く 立 場 の 違 う 二 人 だ が 、同 世 代 と 言 う こ と も あ り、 何 か と 会 話 を 交 わ し て い る 仲 だった 。 ﹁聞 かなくて も、解る だ ろ ?ドクター﹂ そういうと ヴェアトリス は 、 数 多 くの作業 員 の手に よ って 修復 作業の 始 まってい るブ レードライガー に 視線を 戻す 。 彼女たちの 目 の前にあ るブレードライガー は 、 昼 間エス が 勝 手に搭乗し 、 驚 異 的 な戦 闘を行 った機体だ 。 あ る意 味で 、 セレナーデ たちが搭乗し 43
ていた機体 以上 に 損傷 が 激 しかったた め、ドクター の ラボ に 運 び 込 ま れ ていた 。 も ち ろん、運 び 込 ま れ た 理 由はそ れ だけではなかった 。 ﹁ この ブレードライガー のことか 。 そ れ な ら、 見 ての 通り 機体 をバラ したばか り で 、 修理 には時 間 が 掛 か る ぞ ・ ・ ・ ・ と 、 そ ん なこと を聞 きに来た わ けではないか 。 まだ システ ム 周 り の チェック と戦 闘データ の簡単な 確認 しか や っていない ・ ・ ・ ・ 先に 君 に 聞 いて おきたい ん だが 、 この ライガー に乗っていたという パイロット は 、 本当に 人間 だったの か ?﹂ メ ガ ネ を 指 で 上 げ な が ら、ド ク タ ー の 目 が 怪 し く 光 る の を ヴ ェ ア ト リ ス は 見 逃 さ な かった 。 ﹁・・・・・﹂ 彼女の 質 問に 、 ヴェアトリス は半 日 前に 起 きた戦 闘を思 い 出 す 。 彼女が 知る限り、 目 の前の ブレードライガー で戦った先 輩 たちの中で 、 エス と 同 じ戦 闘 機 動 が 出 来た 者 は 一 人も 存在しない 。 あの時 ヴェアトリス は 、 すぐに乗っていたのが 部下 の エレナ では無く 、 別の 人 物だと 分 かった 。 そして 、 相 手 を一方的 に 蹂躙 した パイロット がどの よ うな 人 物なのか 興 味 を 持 ち 、 彼の 出迎 え を買 って 出 たのだった 。 だが 、 直接会 った エス か ら は 、 凄腕 の ゾイド 乗 り 特 有 の 凄み ・ ・ ・ 〟オーラ〟を感 じ る ことは無く 、 いたって 〟 普 通〟 という印 象 し 44 白百合の聖女
か 伝わ ってこなかったことに 、 彼女は大いに 混 乱し 、 ドクター にどう 言 えばいいか 考 え が 纏 ま ら なかった 。 押 し 黙るヴェアトリス に 、ドクター は 頭を掻 き 、話 し を続 けだした 。 ﹁僕 も ゾ イ ド の 研 究 者 と し て 、様 々 な ゾ イ ド や そ の パ イ ロ ッ ト の ス ペ ッ ク や デ ー タ を 見 てきたけど 、 彼はどの数値において も 常 人を は る かに 超 えてしまってい る。 特に 反応速 度 は 、も は や〟 未来 予知〟 と 表現 しないと 説明 できないく ら いだ ・ ・ ・ ・ まぁ 、 ここか ら はあくまで 私見 だが 、 彼に 最も近 い スペックを叩 き 出 せたのは 、 古 の 〟英雄〟 たちぐ ら いだと 、僕 は 考 えてい る﹂ 近 く の 作 業 台 に 置 い て あ っ た 戦 闘 デ ー タ を 写 し た タ ブ レ ッ ト 端 末 を ヴ ェ ア ト リ ス に 渡し 、ドクター が作業 台 に 寄り かか る。 ﹁ドクター がそこまで 言 うほどなのか ?﹂ 画 面 に 目を通 しなが ら、 彼女がきっぱ り と 言 い 切 ったことに 、 ヴェアトリス は 目を見 張 る。ドクター と 出会 って数年 。 そ ん なことは 一度 た り と も 無かったか ら だ 。 ヴェアトリス の 疑 問に 、 ドクター は彼女か ら端 末 を取り上 げ る と 、 画 面を操 作しあ る 情 報 を 呼び 出 して 、再 び手渡す 。 受 け 取 った 端 末には 、オーガノイドシステム に 関 す る情 報が 表 示さ れ ていた 。 45
﹁ そう 思 った も う 一 つの根 拠 は 、 そ れ だ 。ブレードライガー には 、 オーガノイドシステム と呼ば れる 特 殊 な システム が組 み込 ま れ てい る のは 、 前に 説明 しただ ろ ?あの システム は 、 ゾイドコア に 働 きかけ 、 強制 的 に コア か ら膨 大な エネルギーを引 き 出 すた めも のだ が 、 そ れ と 同 時に 、 封 じ 込められ てい るゾイド 本来の 凶暴 性まで 引 き 出 してしまう 諸刃 の剣といえ る代 物だ 。 そのた め、 リミッター なしで扱え る のは エースパイロット と呼ば れ る 者 の 中 で も 一 握 り の 者 だ け 。 そ れ 以 外 の パ イ ロ ッ ト が 扱 う に は オ ー ガ ノ イ ド シ ス テ ム に リ ミ ッ タ ー を 施 さ な け れ ば い け な い 。 白 百 合 の 園 が 所 有 し て い る 三 体 の ブ レ ー ドライガー に も、 その リミッター が 施 してあった ん だが 、 どういう わ けか彼が乗ったこ の機体の リミッター は全て 解除 さ れ ていた ん だ よ﹂ そのことが 腑 に 落 ちないと 言 った 表情を 浮かべ るドクター に 、 ヴェアトリス が 首を傾 げ る。 ﹁ 攻 撃 の影 響 で偶然 外れ たとか ?﹂ ヴェアトリス の 言葉 に 、ドクター は 首を 横に振った 。 ﹁ あ り えないね 。出撃 前に も僕自身 が 確認 した ・ ・ ・ ・ リミッター は 間違 いなく 掛 かって い た よ。 そ れ に 安 全 策 が 何 重 に も 取 ら れ て い る 代 物 だ 。 攻 撃 が 当 た っ た 程 度 で 偶 然 外 れ た り はしない ・ ・ ・ 考 え られる可能 性は 一 つ 。 彼 自身 が 、リミッターを解除 したとい うことさ ﹂ 46 白百合の聖女
自分 の 考 え を述 べなが らも、ドクター は 眉を顰める。 ﹁古 の 英雄 に匹敵す る操 縦 技能 と OS に 対 す る適 正 、 そして 研 究 者 ば り の 知識 ・ ・ ・ ・ ・ ・ 彼は 一 体 、 何 処 でそ れ ほどの 〟実力〟を得 た ん だ ろ うか ﹂ 今 となっては 、 失 われ た 技術 の 一 つであ るオーガノイドシステム。ドクター がこの シ ステムを熟知 してい る のは 、 〟 学 徒 の 都〟 と呼ば れるユニバースシティ の 出身 で 、 しか も代々ゾイド の 研 究 を してい る 学 者 の 家系 だか ら だ 。 だか ら こそ 、 ドクター は エス が何 処 で 専門的 な 知識を身 に 付 けたのか 疑 問に 思 い 、同 時に 興 味が湧いていた 。 ﹁ドクターも そう 思 ったか ・・・﹂ 自分 と 同 じ 疑 問に 行 き着いた ドクター に 、ヴェアトリス は 自 然と 笑みを 浮かべ る。 ﹁ ・ ・ ・ ・ ・ よ し !ここで 悩ん で も仕方 が無い !直接 本 人 に 聞 きに 行 こうじ ゃ ないか !﹂ 善 は急げとばか り に 、突 然 ドクター が 自身 の ラボ の 出口 へと歩いていく 。 ﹁ ま 、 待 て 、 ドクター !彼は 、 ここへ来 る途 中に 突 然 気を 失い 、 今マザー が 看病 してい る !時 間も 時 間 だ 。聞 きに 行 くな ら明日 にし ろ !﹂ 思 い 立 った ら 即 行動 に 移 す ドクター に 、 慌てて ヴェアトリス が 進路を 塞ぎ 、 引 き止 め る。 ﹁ 何だそうなのか ?・・・・・仕方 ない 、 では 朝一 で 聞 きに 行 こう ﹂ 47