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実験心理学者としての多様なキャリアパスを考える(~社会から求められる・社会に貢献できる研究者養成の支援~)特別委員会の設立について

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Academic year: 2021

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DOI: http://dx.doi.org/10.14947/psychono.35.18 79 綾部: 実験心理学者としての多様なキャリアパスを考える

実験心理学者としての多様なキャリアパスを考える

(∼社会から求められる・社会に貢献できる研究者養成の支援∼)

特別委員会の設立について

綾 部 早 穂

筑波大学人間系

Diverse career paths for experimental psychologists:

A proposal of the training system for researchers who are demanded

from the society, and can contribute to the society

Saho Ayabe-Kanamura

University of Tsukuba, Faculty of Human Science

This is a proposal on establishment of Diverse Career Paths for Experimental Psychologists Committee of Japa-nese Psychonomic Society (JPS). The goal of the activity of this Committee is to investigate and analyze both needs and seeds of experts of experimental psychology in the industry, and to communicate the knowledge concerned within JPS and between other societies.

Keywords: diverse career paths, experimental psychology, industry

人間理解に基づいた「物づくり」,製品の開発や改良, またはサービスの向上等を求める社会的なニーズは今ま でにも十分にあったが,近年特に,その傾向が高まって いる。また,経済の急成長により支えられてきた生産と 消費に対する価値観は,現代社会におけるグローバル規 模での経済的停滞の中で,物質的な豊かさ重視から精神 的な豊かさ重視へと大きくシフトしている。日本の企業 は,性能としては十分な製品や東南アジアを中心とする 国々で製造される安価な製品に対抗して,「新たなる価 値」を付加することで消費者の心をとらえようと努力し ている。また,日本の伝統的な「おもてなし」(サービ ス)の精神は世界からも注目を集め,これを日本の観光 資源として有効活用しようという動きもある。これら は,まさに人の「心」に,産業界が改めて注目している 証左である。 心理学,とりわけ実験心理学がこのような産業界の ニーズにどのように応えることができるのかということ について,基礎心理学会として真っ向から取り組むべき 時期にさしかかっているのではないだろうか。従来,基 礎心理学の領域では,「普遍的」な人間特性や人間の心 の働きを実験室実験で解明することを主な研究の目的と してきた。その目的のもとでは,実社会場面で問題とな る「個人差」については往々にして意図的に避けられて きた。現実社会での「応用」研究とは一線を画し,基礎 的,普遍的な心理を研究することが,心理学のあるべき 姿と考えられてきたのかもしれない。しかし,長年,基 礎心理学で培われた実験計画の考え方や実験手続きや, 基礎心理学の研究の過程で個人が獲得した実験テクニッ クやノウハウは,現場での製品開発や評価に有用であ る。また,実験室における人間の「普遍的」な心的機能 は,実社会における人間の「個人差」と対比させること で,より深い理解に至る可能性もある。基礎心理学を実 験室内に封じ込めておくことは,基礎心理学にとって も,また産業界にとっても「もったいない」のである。 基礎心理学の有用性は,産業界でも認識されつつあり, 基礎心理学からの現場への積極的な働きかけが求められ

The Japanese Journal of Psychonomic Science

2016, Vol. 35, No. 1, 79–80

報  告

Copyright 2016. The Japanese Psychonomic Society. All rights reserved. Corresponding address: Faculty of Human Science,

Univer-sity of Tsukuba, 1–1–1 Tennodai, Tsukuba, Ibaraki 305– 8577, Japan. E-mail: sahoaya@human.tsukuba.ac.jp

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80 基礎心理学研究 第35巻 第1号 ているのである。今まさに,産業界と交流し,産業界で 貢献できる実験心理学者の養成,および産業界と交流で きる研究者の見識を向上させる必要性がある。 アカデミックポストが減少している現在においては, ポストの拡充という点からも,産業界との交流は有意義 である。実験心理学者としての産業界へのキャリアパス 拡充を考えた際に,もはや研究者個人レベルではなく, 組織(基礎心理学会)として何らかのアクションが必要 な時期が来ている。そのために,まずは,実験心理学を バックグランドとして民間企業で働く研究者が実際にど のような職種につき,その専門性が活用されているのか の実態を明らかにし,今現在または今後,産業界におい てどのような心理学者(もしくは心理学学修者)が人材 として求められるのかについての,系統的な調査や分析 が必要である。そして,実験心理学者のキャリアパスを 確実に広げるためには,産業界で必要とされている人材 育成のための大学・大学院課程での教育(具体的なカリ キュラム)の提供が求められると想定される。これらの 状況を踏まえ,実験心理学者のキャリアパス拡充を支援 することを目的として,①大学・大学院課程において, 実験計画や実験条件統制法など,高度な実験心理学の 「技法」を獲得した研究者の活躍の場を模索し,②実験 心理学研究者の能力を社会に顕在的に示すためのシステ ムの構築や啓蒙活動等を行うために,「実験心理学者と しての多様なキャリアパスを考える特別委員会」の設立 を提案した。提案時のメンバーは,日ごろから産学の接 点に立ち研究を進めている,綾部早穂(筑波大学),片 山順一(関西学院大学),河原純一郎(北海道大学),熊 田孝恒 (京都大学),原澤賢充(NHK技研),和田有史 (農研機構)の 6名で,その後,川畑秀明(慶應義塾大 学)を迎えた(敬称略,五十音順)。 日本心理学会では2009年から技術心理学研究会の支 援を行っており,また日本認知心理学会においては社会 連携委員会が設立されるなど,関連学会においては心理 学者の活躍の場を産業界に拡げようとする動きがすでに はじまっている。2016年度,日本心理学会では「認定心 理士(心理調査)」の認定制度が創設された。基礎心理 学会においては,「実験心理学者」のキャリアパス拡充 に特に重きを置き,関連組織と連携して活動を進めて行 く予定である。本年度は主に,実験心理学系の博士課程 終了後,民間企業で働く研究者への聞き取り調査を行う 予定である。本活動に関心をお持ちの会員の方にはぜ ひ,当委員会に参画いただきたい。

参照

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