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開眼手術後における視機能とその分化 : 視空間の構造を中心として

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(1)

The vraPanese  Jo”r”at of Rsychenomic Science 1989

Vol

7

 No

2

53

70

開 眼

手 術 後

お け

視 機能

分 化

視 空 間

構 造

心 と して

一一一

望   月  登   志   子

日本女 子大 学

Perceptual

 

Characteristics

 of 

Visual

 

Space

 

in

 

the

 

Early

       

Blind

 after 

Surgery

Toshiko

 

MocHlzuKI

ノaPan  

pmOfnens

’伽 勿6γsぎか

    In order  to clarify  the characteristics  of perception  of visual  space  in the early  or  con

genitally 

blind

 who  

have

 

just

 gained  sight  after  surgery , a series  of experiments  covering

aperiod  of over  

10

 years were  conducted

  Subject KT  in this paper

 who  

lost

 her sight

binocularly

 due tQ congenital  cataract

 received  the operation  on 

her

 Ieft eye  at the age  of 

15.

   The  following results were  obtained : 1The  perceived size  of an  object  placed  at

various  

distances

 on a table 

decreases

 when  the physical distance exceeds  20 cm  approximate

1y.

 

The

 ratio of perCeived  sizes to physlcal distances denlonstrates that the size  constancy

is not so high as that of the nornially  sighted  adult

2)Color perception was  slightly  easier

than that of shape

 but it 

became

 diffcult when  the Qbservation  

distance

D

)extended  

60

 c皿

and  whcn  the size  of color  paper was  smalL  3Ide1ユtification of the shape  of a figure was

dif五cult  when  the 且gure was  presented at D>35 cm

  At a near  

distance

 she could scan  the

shape  as a whole

 

but

 at a far distance

 KT  had to employ  the strategy  of partial scanniDg

Key  words : early  blind

 visual  space

 size

distance relationship

 color  perception

 shape  per

ception        1

  問      題   手 術に よっ て以 前よ りも多 量の光を網 膜で受 容 する よ うに なっ た先天盲 開眼者の視 空 間は

どの程 度の拡 がり をもち, さ ら に どの よ うな構造特性を もっ てい るの であ ろ うか

こ の よ うな疑 問は Molyneux 問 題とBerkeley の 「視 覚 新 論」(1709)に端を発する視 空 間 論の根幹を成 す 問 題と して

,17

世 紀 末に 提 出さ れ て以 来

今 日で もな お ひ き続 き検 討と考 察が加え られて い る(Pastere

1971)

 先天盲開眼者の手 術 直後の視 覚 体 験にっ い て論じ た際 に

,Molyneux

は 「立 方 体」 と 「球」の弁 別が開 眼 直 後 か ら 可能か 否 か とい う点に し か 言 及 し なか っ た

Berkeley 「立体形 」の み な らず 「距離」 も 「空 間」 もま た

視覚本来の対象で はないゆえに

開 眼直後はこ * 本研究の

部は

昭和55

56年度の文部 省 科 学研究 費   補 助 金

・一

般 研 究B (研 究 代表 者 :鳥 居 修 晃 )な ら び  に昭 和57

58年 度の同

総 合 研 究A (研 究 代表 者 :   居 修 晃 )の補 助を受けて実 施された

れらを知覚し得ない であろ うと考え た

 こ の よ う な

Berkeley

の所 説に

つ の実 証 的な根 拠 を 与 え る もの として注 目 されたのが

イ ギ リスの外 科医 Chesselden 1728)が提 出し た

篇の臨 床 報 告 で あ っ た

これは13歳に なっ て か ら先 天 性 白 内 障の手 術を受け た少 年に関 する術後の観 察 記 録で ある

こ の少年は手 術 前で も光 覚は保有し て お り

色の識 別 も条 件が良 げれば ある程 度 可 能で あっ た が

形の識 別はで ぎ ない とい う状 態であっ た

手 術 直 後は 「

あらゆる対 象が

あた か も

少 年の表 現に よ ると

触れた ものが皮 膚に接 触し て い るの と同じ ように, 眼に くっ つ い てい る かの よ う に 見え た 」 と報 告して お り

他 方 「距 離」に つ い て は い か なる判 断も下し得ない状 態に お かれていた ともいわれて い る

 これに対し黒 田 (

1930

)は, 上記の

Chesselden

の も の を含 む14篇の事例報告を距 離 知 覚に つ い て 比 較 検 討 し

判 断が困 難であっ た り

誤 判 断を下し た りする場 合 も勿 論 あるが

Chesselden の開 眼 少 年の よ うな報告例

(2)

The Japanese Psychonomic Society

NII-Electronic Library Service The  Japanese  Psyohonomio  Sooiety

54

基 礎 心 理 学 研 究 第

7

巻 第

2

号 はむ し ろ稀でる と して

その報告は術後の距 離 感を や や 誇 張して伝 えてい るの ではない か と批 判してい る

 

方,

Senden

1932

)は

11

世 紀か ら

1931

年まで に欧 米 で刊行さ れた先 天 盲 開眼者に関す る数 十 篇の報 告を集 録 し たその著書の中で, 手 術直後所 与の対 象を自分の眼か らある距離だけ離れたに ある もの とし て捉 え うる か と い う設問 を

奥 行 距 離 知 覚の最も本 質 的な問題 とし て提 出し, 改め て これ につ い て論考し てい る

その結果,

Chesselden

の開眼少年の印 象 報告を確証す る資料が極 めて少い こと に驚き を 示 す と と もに, 手 術直 後は 「対 象 をひとつひとつ 分 化し たもの とし て捉え ることは できな い」 状 態にあるが

前 方にある様々 な色の断 片がえ る 状況にな れば, そ れ ら が 「自分か ら多 少とも離れ て在る とい う漠 然た る印 象はすで に持っ てい る」と結論しいて る

 こ の よ うに空 間の発生}こか か わ る , 主 と し て 先天盲のにお け る “ 対象ま での距離

の知 覚に関 す る吟 味を通して論じ ら れてき た

これに対 し て

著者 らは開眼手 術後の奥行 視して   (a) 奥行距離を どの程 度 判 断できる か,  (b) 奥行距 離の相 対 弁 別は どの程 度 可能か  〔c) 立 体 や3次 元 対 象の形の弁 別 及び識 別は可 能か,  (d)写 真 や 透 視 図 形 な どの

立 体 を

2

次 元 面に表 現し   た映鱇か ら3次 元構造を抽 出で きる か とい う, い くつか の問題 群を設 定し て, これ ら に実験的 な検討を加えつ つ その 明を 目ざして探 索を試み てき た (望 月 

1979

b 望 月

居 1984;

Mochizuki

& Torii, 1987, 1988;鳥居

1973

1976

1982

1984

 本 稿で は そ れ らの実験結果をふ ま え た 上で

,一

人の 先天性白内障の者 (

KT

につ い て, 開 眼 手 術 後の 視 機 能の全 般 的 状 況を 明 らか にする

その上で

(a)対 象の大 きさの知 覚

(b)色 彩の識 別

(c)平 面 図形の識別 な どに関 与 する視 覚 運 動 系の動が どの ような経過を と っ て発 現し

進 展 する か を辿る ことに よっ て

開 眼 手 術 後の視 空 間の 構 造 特 性と その分 化の 過 程の

端を跡つ げ て み ること にする

  2

  被験 者

KT

の視覚機能に関する全般 的な状況  2

1

開眼手 術と術 前の状況   本 稿の被 験 者 (KT )は先 天 性 白 内 障}こ よ り幼 児 期 失 明 と推 定さ れ る開眼女 性で

1974

9

月(当 時

25

歳 )以 来, わ れ わ れ との実 験に被験者と しての労を とっ て もら っ てい る *

  発 症に関し てKT が 母親か ら聞い て い る ところで は

1 歳頃胃腸病と発 熱が約 1ヵ月 続 ぎ, 回復後暫 くする と 両 眼が白 濁してぎた

両 親は親 戚の者に指 摘さ れ て初め てその事 実にづい た と い う

歩行を始め た頃に なっ て も, ものを眼で追 うこ とを せず, ま た階 段で立 止っ てし ま う な どの行動 がみ ら れ たので医 師の診 察を受 け た とこ ろ

水 贔体混 濁に よ る白内障と診 断された

 

3

ヵ月 後 (1歳 半の頃 )に

まず 右 眼の手 術を受けた が結 果は思わし く な く

以後 右 眼は 失 明

学齢 期まで は その ま まで

さ程不自 由なく屋 外で も行 動し ており, 自 分が 盲である との 自覚はなか っ た と報 告し て い る

ただ 「時 折

自分だけが畔 道か ら 田に落ち る こと がある の で

そ れ が 不思議だっ た」とい う

  その後は盲 学 校に通 学して お り

15歳の ときに左 眼に 対 する第 1回 目の手 術に よ り白 内 障の水 晶 体 摘 出と斜 視 の 治 療を受けた

20歳の ときに左眼に対 する第 2回 目の 手 術と し て

虹 彩 切 除 を受 けて い る

 われわれ との協 同 実 験 を 開 始し たの は

左 眼にする 第 1回目の手 術か ら8年後

第2回目の手術か ら は 3 年 近 く経た頃 (

1974

9

月21日

以 下 必 要に応じ

749

21 の よ うに略 記 する)である

 2

2

  左 眼の手 術 前 後の状 況  (1) KT の報告 (

74

9.

21)に よ る と

左眼の手 術 前 は 「赤

オレ ン ジ

青, 藤色, ベ

ュ,

う ぐいす 色

タマ ゴ色 な どが見 えた

形 も多 分 見え たよ うに思 う

ただし

3角

正 方 形

円の よう な平面的な形 な らば

….

人に つ い て は背の高さや体 型や服の色で誰で あ る か言い当て ら れ ることもあっ た が

服が替ると まち がえ る 」 とい う状 態であっ た

ただ

形につ い て の記 憶 は定かでな く

1989

年 3月25日 の報 告は 「手 術前

形は見 てい な かっ た 」 と以前とは くい違 うもの に なっ てい る

     左眼の第

1

回 目の手 術で は40日入 院 し たが

入 院 中に初め て眼帯を はずし た ときの 印象を次のよ うに記 憶 し て い る

「光が 手 術 前の

2

倍 位 入っ てきて

とて も眩 し か った 」

手術 前と 比べ て 「(周囲が) 明る く な り

前 か ら見え ていた ものがよく見え る よ うに は なっ た

し か し

そ れ以上 の変 化は な か っ たの で

少しガ ッ カ リ し た

例え ば

50Cln 位 離れ た所か ら折鶴を見せ ら れ たとき

色 (黄 色)は手 術 前よりも鮮か で, はっ きり見 えたが

形は見 えなか っ た

もの の形とか

ひ との顔を 見分げ ること などは依 然とし て難し くて で きなか っ た」

その意 味で は 「手 術後も生 活 自体に は余り違い はな く

眼を使 用 する た め の トレ

ニ ン の必要性 を感 じて い た 」

* 約15年に及ぶ長期にわ たっ て, 筆者ら との協同実験に   参 加して いる

KT

さ んに, こ こで 心 から感 謝の意を表  し て お ぎた い

N工 工

Eleotronio  Library  

(3)

望 月 ;開 眼 手 術に お け る視機能と その分 化 55  

2

回 目の 手 術後も 「際 立っ た 変 化は なか っ た 」

眼は 「使わ ない と よくなら ない の で よ く使 うよ うに」 と手 術 を 担当し た医 師に言わ れ た が

「どの よ うに使っ た らよ い の か見当もつ か な かっ た 」

「退 院の 日に バ スの 吊 革が揺 れて いたの を よく覚 えて い る」とその記 憶を辿っ て, 述 べ て い る

 2

3

実験 開始当初の状況  

KT

がわ れ わ れの もとに初め て来 訪した と き

当時の 状 態を

KT

は次の よ うに報 告し てい る

「歩い て いると

歩道と車道の境に は め込 ま れてい る白い石 とその切 れ 目 は わ か る 」

「歩 道に置い てあるポ リ バ ケツ い青 ) や 自転車 (光っ てい て

,ハ

ン ドルや荷 台がある)などは見 え る 」

「通 り過 ぎる自転 車の 色は ガ ラス 戸 越し で もわか る」

「で も家の形 は わ か ら ない

か た ま りが立っ てい る よ うだ

上の方が見え ない の で屋 根の 形が わか ら ない」

  実 験 開 始 後2週間の間に行われた3回の 実 験 (

74

9

21

9.

28

10.

5

)に よっ て, 当初の視 覚機能は次の よ う な状 態にる ことが確認さ れ た

 そ れ ぞ れ 台 紙 を 手に持ち

近距離 (15

20 cm 以 内) か ら見る とい う条 件 下では,  

Cll

白台紙 上の小色 片 (面 積 :43 cm2 )の色を識別す るこ とが できる

 {

2

) 白台紙上の図形 (

2

×

10cm

)の方 向 識 別 (水 平

垂直, 斜め)が で き る

 (3} 白 台 紙上の 2次 元 図形 (円

正 方 形

3角

菱 形) は面 積 が 用 意され た最 小の もの (O

8cm2 )で あっ て も識 別 し う る

 (

4

) 立 休 形に つ い て は

立方 体と直 方体の弁別 はで き るが, 円柱に は 「筒

円」 と呼ぶ

円 錐につ い ては名称 を知らず 「円, 丸 くて と がっ て い る」 と答える

た だ し 円 錐を横倒しにる と 「円柱」

円 柱を横にする と 「直 方 体」 とい うような応 答を 示 し た

     事物とな ると

白チ ョ

クに対し 「光っ てい る

長っ ぽそい

ラ イ タ

か な

P

銀 色の よ うだ」, マ ッチ箱 には 「紙 み たい だ

(大 きさは

と訊 く と)ト ラン プ よ りは小さい

チ ぐらいだ

(側 面か ら眺め て, 小さ い箱」

ス トッ プウ ォ ッチ に は 「

1

皿み たい

上}よ網の よ うに見え る

持つ所 があ る 」 とい うよ うに属 性を並べ

名 称を列 挙 するのだが識 別し得 ない ものが少 くない

し か し

提示 した もの 8種の 中

5種につ い て は際立 っ た 特 徴だ げでな く

置かれて い る位 置 や場 所 も手がか り と し て援 用 するこ とに よっ て

識 別に成 功し て いる

 例 えば, ハ サ ミ (決め手は 「持つ 所」)

湯 呑

フ ォ

「細長く て金 属 性」)

鉛 筆 (「細 くて先 端の 色が 違 う」)

物 指し (「色と目盛 」)

など である

場所がヒ ン ト にな る もの と して ポス トを挙 げて お り

「道 端に あり

赤くて

4

角い ものだか ら」 と説 明してい 鳥 居

望 月

1978)

    ひ との顔に関し ては当初か ら 「顔や表 情が ど うし て 見 分 け ら れ る の か 不思議だ」と言っ てい る (望 月

1983

;望 月

鳥 居

1987;鳥

1

望月

1977

    3

眼科 的 所見 並びに電 気 生 理 学 的 検 査 結 果

 

(1) 実験開 始後 約 5 年を経た頃 (’

79.

8

2)にけた眼 科 的 診 断 に よっ て, 右 眼は 「眼球 癆

角 膜 帯 状変性」

左眼は 「小眼 球 症, 先 天 性 白 内 障 手 術 後の無 水 晶 体 症 兼 後発 白内障」 との 所見を得てい る

 

 

 

電気生 理学 的な検 査は 2回にわた っ て (第

1

回 は

1979

8

月 2日, 第 2回 は

1983

7

28

日)受 けてい る

ERG

は 1回 目の 検 査で 「photopic (red  stimulus t

photopic

 

fiicker

 

respollse

 

30 c

P

s

 scQtQpic

 

blue stimulus および white  

bright

 stimulus の いず れに お い ても

錐 体 系

桿 体 系は 共にほ ぼ 健常」 と判 定さ れ る ような 結 果であっ た

 第2回目の検 査で は 「ERG は錐体系 (photopic  

ERG

も桿体 系 (scotopic  ERG )も1979年 当 時と 同 じ く

健 常 範 囲の反 応」とい う結 果で

特記すべ は認め られ ない との診 断であっ た

.Fig.1Cl

4

}の左 側は

KT

に お け る第

1

回 目の ERG の検 査 結 果で右 側は 健 常 者 の

ERG

である

 〔3}VER に つ いて も2回の検 査を ERG と同日に けて いる (

Fig.

2)

1

回目の結 果で は 「当教 室で通 常 用い て い る

Ganzfeld

  stimulus の maximum  

light

(standard  leve1)で は

定の波 形が得 られ ず

さ らに

O

8 log unit だ けを用いた ところ明 瞭 な 反 応が現 れ た 」 とい う

こ の こ とは KT の 左 眼の

VEP

の stimulus  threshold

常者よ り約 410g  unit 上昇し

てい ること を示 す

ま た

得 られた波 形 もいわゆる正 常 波 形 (右 側 )とは異なる

こ の

VEP

と第

1

回目の

ERG

の結 果か ら 「網 膜レベ ル よ り も中枢 の 視 路の mass function に障害が あ る と推定される」と の総 合 診 断 が 第

1

回 目の 検 査で得られて い る

       4

  眼 球 運 動の記 録  多くの開 眼 者におい ては

手 術 直 後に nystagmus と 呼 ば れる不 規 則で

非 意 図 的 な 眼 球 運 動がその眼に見 ら * 眼 科 的 診 察は

1979

年当時, 名 古 膣大学眼科学教室の市  川 宏 教 授に よ っ て

また ERG

 

VEP

の検 査は, 同じ  く三宅養三講 師(当時 )に よ っ て行われ

そ れ ぞれ詳し  い所見もいただいた

心か ら感謝の意 を表し ます

(4)

The Japanese Psychonomic Society

(5)

望 月

開眼 手 術後に おける視 機 能と その 分 化 57 Sub

 

KT

Nermal KT

  without  sound K

T

  with  sound         S

T

 without   sound

       withQut  sound

Fig

3

 Eye  move 皿 ent  

during

 

fixation

 

in

 the cases  of Sub

 KT  and  the normally  sighted  subject

    

(a:the lst record

1977

 

b

):the 

2nd

 record (

1978

Sub

 KT

KT .

 with6ut  sound K

T

 with  80  d

Ca)         b

ZH20

Fig

4

Normal

W

八く八

 

S.

T

 with  sound

The record  of  smooth  pursuit eye  movement  of 

Sub .

 

KT

 and  that of  the nor 皿 a11y

sighted  subject

 

(a):

the

 

lst

 record

1978

 

b

:the 2nd record

1979

として フ ィ

ドバ ッ クされる仕 組みに なっ てい る

      手 続 ぎ

 

実 験はシ

ル ドされ た 暗 室 内で

静 止 視 標 注 視条件と 振子状運動視標 追 視 条 件の下で行われた

後 者の視 標の 周 波 数は 0

2Hz (振 幅は 21 cm

視 角に し て 18

08

°

)で 正弦 波 状に提 示さ れ る

視 標の示時間は注 視 条 件で は 60秒

追 視 条 件では 1回

60

秒の試行を 3回 くり返し た

測 定は 1977年

8

月 (左眼へ の第

1

回 目の手 術か ら約14年 経 過 )と その 約

1

年 後の 2度にわた っ て行われた

    結果   

a 注 視時の眼 球 運

 

Fig

3

は静止 し てい る光 源を注 視し て い るときの眼 球 運 動の記録 左側(aV: 

1

回 目 b)は 2回 目の結 果で ある

  , (

b

)いずれ も上段の図は眼の動 きを信 号 音に変 換し ない場合

下 段の図 は変換音 信 号をフ

ドバ ヅ ク させ た揚 合の EOG で

 

KT

につ いて は視 覚 健 常 者

(6)

The Japanese Psychonomic Society

NII-Electronic Library Service The  Japanese  Psyohonomio  Sooiety

58

基 礎 心 理 学 研 究 第7 巻 第 2号 にべ て 不規則で かつ 動 揺の大 ぎい不意図的な 眼球 運 動 が

音 信 号 を 随 伴 させ て も連続的に認め ら れ る

ただ し 1年 後に は

音の フ ィ

ドバ ッ クが与え ら れ る と大 き な動揺がや や減 弱 する傾向 が 現 れてい る

   

一b ,

追 視 時の眼 球 運 動   Fig

4

は視 標を追視し て い るときの滑動性 眼 球 運 動 を

Fig.

3 と同 様の方 式で示 してい る

(a

b)と もに視 覚 健 常者に比べ て波 形の乱 れが大 き く

位 相の遅 れ も著明 で あ

b ,

視 標の動 きに対す る 先 行 予 測制御が ない

これ ら の特 徴は KT を含 む 開 眼者に 通して認め られて い る (武 市ほ か

1977)が

,1

年 後の 録 (

b

)で は その傾 向は 若 干 減 じてい る

 追 視 時に おける眼の動 きを 周波数分析した とこ ろ, 音 を 随 伴 させ る と O

2Hz と  

2211z

に成 分の ピ

ク が 集中化し て お り (鳥 居

望 月,

1984

), 音信 号に よ り滑 動 性 眼球運動が 改 善 する傾 向が認め ら れ る

Tabie

 

l.

 

Visllal

 acuitv  and  maximum  distance

         where  Sub

 KT  can  see  O

1 Lando 里tg

        Llng

検 査 実 施 ・

視 標 観 た躑 乃至

74

 9

28

20cm

75

L4 30cm

75

2

8 30cm

76

7

3 30cm 刪 ・・

i

20

38cm

78.

 

6.

17

25cm78

12.

23

15

〜18cm

79.

4

7 ,

83,

 

7,

28 40cm 0

01

             5

 視 力 測 定の結果

 

網膜へ の結 像機能は周 知の よ うに 「調 節」の働 きに よ っ て その

端 が 荷われて い る

水 晶体の 屈 折 力は19D 程 度であるため, 白 内 障の手 術に よ り水晶 体を摘 出し た場 合に は通 常 13D 程 度の レ ン ズ*を装 用 するこ とになっ て い る

,KT

の場 合 その ような レ ン ズ は い て い な い* * が

筆者ら との 実 験に力し てくれ た他の 2名 (NH , SH )は 十

10D

の 眼 鏡を 使 用し てい る

 

(望 月

1979E; 鳥居,

1973

 

遠 対 象の識別 が 可能か ど うかを吟味し よう とする本 実 験で は視 力がその制 約条件にな ると考 え られる

そこ で

KT

に つ い て視 力を継続的に測 定 する ことに し た

 (

1

〕 方 法

 

ラン ドル ト環単

視 標を提 示し て

「字ひ とつ視 力」 を測 定し た

使 用し た の は O

1の視 標で

その 方 向が 5m か ら識 別で きない場合に は視 標を近づけ

識 別 が 可 能と な る観 察 距 離を測定し た

    結果

 

実 験 開 始間も ない段 階 (

74

9.

28

>で

4

方 向が完 全に 見分け ら れ る 距離は 20c皿 で あっ た

その後約2年 間 に実 施し た

3

回の測 定

C75

1.4

2.

8,

76

7

3)で は

30cm にその距離は拡 大して い る

そ れ か ら

2

年 半ほ ど の間に

最も遠い 場 合は 20

38cm

日に よっ て は 15

18cm

とい うよ うに変動がみられる

し か し, 実験 開 始 後

4

年 半を経た頃 (’79

4

7

)に は当 初の

2

倍の 40cm まで拡 大し て い る

更に

4

年 後

C83

7

28)に 眼科で受 けた視力 検 査で は 「OO

1

位」 と報 告さ れて お り

約 9 年 間に 同

視 標

対 する 大識別距離は

20cm

か ら 50cm まで拡 大し た ことにな る*

ge*

 Table 1 KT に おけ る 視 力 検 査の結 果 を 測定 実 施順 に示 し た もの で ある

 術 後に眼鏡 を 用いた 別 の開 眼 者

SII

NH

の場 合

術前の力は 左 右 眼 共に 「眼 前 手 動弁」であっ た

手 術後

1

8

ケ月を経た時 点で SH の右 眼は視力 O

 01 得たが

左 眼 (手 術 が 右 眼よ り約

1

ヵ月 半 遅れ て実施さ れた)は眼前手動弁に と ど まっ てい る (鳥 居

,1973

NH

に おける同時期の視 力は右 眼はO

02,

左 眼は眼 前 手 動 弁で SH よ り若 干艮好で あっ た (望 月

,1979E

,1985

 KT

SH ,

 

NH

に比ぺ て実 験 開 始後約

5

倍の年 月を費し て, 視 力値0

01とい うほ ぼ類 似し た視力 水準に 達し たことに なる

     

6.

  視 野 検 査の結 果

 

開 眼 手 術を受け た先 天 盲の視 野は

少 く と も術後の 期 段 階で は

視覚健 常者に比べ て狭い の では ないか と 言 わ れて い る (

Senden,1932

事 実

周 辺 視 野 計に よ り測 定し て み ると, 同年 齢の健 常 児 (者)よ り も

程 度の差 は ある に ぜ よ狭搾して い る場 合が 少 くな く (Uhthoff

1897;U皿 ezu  et al

1975鳥 居

望 月

1975

;鳥居,  * 水 驫 体の除 去で減じた屈折 力の補 正 として凸レ ン ズ    の装 用をする

限 鏡は角膜よ り前方に位 置して い る

  

ため遠見時よ り弱い

13D

程 度の レ ン ズを 用い る (原    田,

1989

** 術前に強度の近 視ま たは先 天 性 白内障に よる強度弱    視 だっ た 場 合には, レ ン ズ の装 用が必 要で ない こ と

  

がある (原田

1989 )

* * * 実験開 始 後 約9年 目

左眼の手 術後か らは 約 19年     目

N工 工

Eleotronio  Library  

(7)

望 月 :開眼手 術後に おける視 機 能とその分 化 59 80       ’

       !

      !      !       !   ! ! ’ 訪、      、        、       丶 30        、         、 10    、      獸〕4 5079100 lDO8060  40  20 丶 丶   \    、 、       、

       

、、

          ’ 20

   /

       ノ         ! 參レ! 6080

Fig.5.

 

Visual

丘eld  of 

Sub.

 

KT

left

 eye)and

       that of normally  sighted  adult         

−一

Sub .

 KT 72

11.

2)

         

一一

:normally  sighted  adult

1982;Moran &

Gordon,

1982)

開 眼者の視 覚的 探 索 活 動と深い わ りがある と考え ら れ る

特に

単 眼し か 使 用で きない KT の よ うな場 合には

視野の広さ は歩 行 その の 日常生活の円 滑 化に及 ぼ す 影 響は大 きい

 

そこで, 最 初の実験 開 始 後 2ヵ月の時点で ゴ

ル ドマ ン 型 視 野計を

白 色 視標 (視 角 116’)に よ り周辺視 野を左 眼につ い て計 測した

その は Fig

5に示 すとお りで

外 側は65度

内側 が

45

上方, 下 方がそ れ ぞ れ55 度と45度であっ た

こ のと き

KT

27

歳で左 眼の手 術後 約

12

年を経てい た わであるが こ の視野の拡が りは視 覚 健常の成 人に比べ る とかなり狭い と言え る

仮に視 覚 健 常児 の 動 的 周辺視 野 測 定 の 結果

 

(大庭

1973

; Liao

1973)をあて は め る と

,8

歳 児 と10歳 児のほ ぼ中 間の相 当し てい る

    7.

遠 対象の見 え方に関 する体 験報告

 

事物を はじめ とする視 対 象のえ方に関し て,

KT

が 述べ 内 容を その報 告 期日の順に辿っ て み る と, 自発 的 な視 覚的 探 索は当 初

ごく近 くに ある対 象に対してのみ 行われ

遠 対 象に まで探索が 及ぶ の はその次の段 階で あ ること が見 出される

さ らに, 視覚的な関 心が遠 対 象に まで拡がっ た後に 初め て, 「距 離 と対 象の見え方」につ い て の対応関係に着 目する よ うに なっ た とい う三つ の 節 目を認め ること が で き る

以 下

その よ うな観点か らの 体 験 報 告を挙 げて み る

   近 対 象へ の視覚 的

tsva

索  遠 対 象に対し て

KT

は 「験を始め た 頃は

遠 くに あ る もの を 自分は見るこ とが で き ない と考えて い た

だか ら そ の よ う なものを 見よう とは しなかっ た」

ま た 「遠 くの ものは小さく見え る とい うこ と は知識と し て頭に入 っ て いたけ れ ど

ど うい うこと なのか, 実際に は よく理 解でぎな かっ た 」 と当 時 を 回顧 して述べ てい る(

89

3)

 

事 実, 来訪し た際の最 初の実 験 (

74,9,21

)で, 色彩 方向, 平面 図 形の形な どの弁別 に際し て見易い 距離を自 由に選定さ せ る と, 手に とっ た台 紙 を大む ね眼前

15cm

以 内に ま で近づけて探 索 走 査 を行 うのが 認められ た

 

その 事物別課題が験に導入 さ れ る と, 日常 生 活でも 「身の ま わ りの品を 見よ うとする」 よ うに な り

ものを探し た り, 机の上の もの を識 別した りする際 に は

手で触 わ らず

ま ず 眼で見ようとする試み が自発 的に現 わ れて きた

しか し探索の対 象と な るのは, ごく 近 く (通 常 20

25cm 以内)に あり, あ る程 度 以 上 の大 き な事 物 (15Cln 以 上 )に 当 初ら れて い た

「近 頃, もの を見る よ うに し て い る

近くに在っ て, 大 きい ものが見 易い

遠い もの は見え ない」(’

74.10.5

)とい う

KT

の報告はその ような 事 情 を 物 語っ てい る

    視 覚 的探 索範囲の拡 大

遠 対 象へ の関心  その後 1ヵ月 半 余 りしてから, 遠 対 象までの奥行距離 の 目測や対 象の大 きさの判 断 を 求め る実験を徐々に進め てい っ たが, その種の実 験 事 態を何 度か経 験 す る う ち に, 遠 対 象に対し ても視 覚 的な関 心が自然に拡 大し てき た ようで ある

 例えば 「遠 くのもの はボォ

として

小さく見え るの です ね

遠くか らで も見 える もの は大 きい わ け だ か ら, 大きく見え るの か と思っ て い たげれ ど

実際には 小 さ く 見え るの ですね」(’74

11

2 )とい った報 告 を折に ふれ て 寄せ るようになっ たのは こ の 頃の ことで ある

そのよ う な体 験が最 初にら れ たの は 人が次 第に遠ざ か る と き の後 姿を連 続 的に観 察 する よ うな 場 面で っ た と し てい る

 しか し

その

時に は 「私に とっ て遠い ものは小 さい のでは な くて

見 え ない

と言っ た方が 当っ てい る」 (’

74,11,

23

)とい う表 現に 代 表 される状態も依然と し て存 続して い た よ うに思わ れ る

 {3) 距 離と対 象の見え方の応関係へ の注 目  さ らに

1

ヵ月 半ほ どを経た頃か ら

「段々 と遠 くが見

k

て きた感 じがする

もの を遠 くか ら見る練習を し ない といけ ない」(

75

L4 )と自覚 するよ うにな り, 遠対象

よ うえる の か とい う点に関心 が 高まっ てきた様 子 が 窺 える

 

来 訪時の最初の実 験の際に は

し て 「家

g

形は 分ら ない

か た まりが立っ てい る よ うに し か見え ない」

(8)

The Japanese Psychonomic Society

NII-Electronic Library Service The  Japanese  Psyohonomio  Sooiety

60

基 礎 心 理 学 研 究 第

7

巻 第

2

Table

 2

 Verbal report  on the objects  displayed at a long

⊂listance(Sub

 KT )

年 月 日 報 告

74,10

5  

11,

2 「近頃もの を見る よ うに し てい る

近 くて大ぎい ものが見 易い

」 「遠∫

o

のは, ボ ォ

と して小 さ く見 える ん ですね

廻 ら

でも見え るのは

そ れ が

きい か ら だ と思っ ていた け ど, 小さ く見える の ですね

」 「遠 くの家がマ チ箱の よ うに見 える とい は聞いていたけど

」 1L231 「遠い もの覡 える とい う話は知・ ていた が澱 近

・巡 ’

とい うこ

重・

2,

28i

「撒 熔 士

LU

観 た , 75

,1.

4 が

少し わか っ て きた

人が 近づい てくると, 段々大 き くなるか ら

」 「遠い もの は “ 小さい の で はな く

見 え ない

と私は 言い ます

」       白 くて小さか っ た が雪を か ぶ っ ていた

 “ 遠 く

とい う感じ だっ た が, すご く小さ かっ た

昔の丸い ポス トぐらい の大ぎ さ だっ た

」 「段々遠くが見えて きた感 じがするが

物を Σら見る緯習を し ない とし・

rナfsい

」 「自分の 家を

近二

か ら (真正面か ら)見たが

(屋 根 )はえ な か

o 

k

: 遠

家を見た ら, 屋根 が細く見え た

」 「家の大 小と, 屋 根の 形で “ 遠さ

を感じ た

遠い と

少しぼけるの です ね

」 「以 前は人 が 近づ く と突 然 大 き くな り

そ れ まで は 足音しか聞こ え なか っ た

今は,

小 さい人が来る

き く なっ た

ま た , 小さくなっ た (遠 ざか る と)

とい うこ とが わか っ て きた

」 「車窓からV ン シ ョ ンが四角で

さ な箱の ように見え た

両 手で 届 く位 の近い距 離にあ る よ う に見え た

実 際に降り て行っ てみ た ら

かな り遠 《, 近 くに寄る と全

体は とて も 見 きれ ない

位,

大 きか っ た

」 「そ れ以 来

巡 に小さ な璽 が見え て も

‘‘ あ れ は本 当は大き2

をだ” とわか る ようにな っ た

量 色 がわ か ると (遠 くを見ることが )お もし ろ くなっ て き た

C74

9

21)と報告し ていたのだが

そ れか ら

3

ヵ月 程 を 経た 段階では 「家の 大 小と屋 根の 形で “遠 ざ

を感 じ た

遠い と, 色も少し ぼ け る の ですね 」(

75

 

1.

 

4

)とい う よ うに, 色

大 きさ

形の変化を自ら発見し

それ ら を距離に換し始めたこ とを 示唆 する内容へ と次 第に変 っ て きて い る

 

同 様の こと は

同日 ひ き続 き 寄せ られた 体 験報告

「電 車の窓か らマ ョ ンが 4角 くて小さな箱の よ うに 見え た

両 手が届 く位の近い離にある ように見 えた

(駅に降 りて)近づ い て行っ てみ た ら

そ れは か な り遠 かっ た し

近 くに寄る と, 全体は とても見きれない くら い大 きか っ た

そ れ以来, 遠 くに小さい もの が見 え て も, あ れは本 当は大 きい んだ, と わ か る よ うに なっ た 」 とい う体験報 告に も明 確に表 現されて い る

  以上の よ うな, 遠対 象に関 する実 験の進 行に伴い

視 覚 的 探 索が近 空 間から遠空間に拡大し, 遠 対象の見え方 や空 間内へ の位置づけ も次第に化し た

その様 子を 示 す 実 験 開 始後 約3ヵ月 間の体 験 報 告を

括し て 示 し たも のが Table 

2

で ある

8

「大き さ

距離」関係に か かわる 「大きさ 」 の知 覚  われわれは

角膜 移植に よ る別の 開 眼 者 (

TM

に任 意の対 象

1

個を前方種々 の (奥行距離を隔てた)位置に 置い て

各 位 置に おけ る その見えの大きさの判断を求め

る実験を試み たことが ある (

73,12。15

その際

手 術 後の 比 較 的 初 期 段 階で は

視覚健 常な成 人に とっ てそ れ 程 急激OCは見えの大 きさ が変ら ない と思 わ れ る距離範囲 (

1m

以 内)で も

その見 えの大 きさが 規 則的に小さ く な る と 推定し得る結 果を得た (鳥居

望月

,1976a

 一

方, KT も他の開 眼 者と 同様

線路の写 真 (18×

23

cm

モ ノ クロ 版

 Gregory

1968) を見て, 初 期の段階 で はそ れ を 「

3

み たい

山か な ?」と捉 えて い た ’74

N工 工

Eleotronio  Library  

(9)

望 月 :開 眼 手 術 後に おける視 機 能 とその分 化

61

10

19111

2)

そこで わ れ わ れは 2 木の縦線に 横 線 を等 間隔で引いた 梯 子 様の 図 を描ぎ

(1)それ を まず手 に とっ て見て も らい ,   次に は 少し遠ざけて机の上に 倒し て眺め す とい うこと を 試 みた (

74

1L2 )

する と 〔1〕の条件では 図版を 眼前 15

20Cln の所で前 額と平 行 に立て, 頭 部を画 面にそっ て上 下に移 勁させて観察し, 「全体と して長 方形

同 じ線が 規 則正し くある」 と捉え た

次に 嚠 の よ うな机上の図版を斜め上 方よ り

体の 位 置を移 動しないで眺め た とぎに は 「遠い所の 線は小さ く見える

そし て段々 と ぼ や けてい る

.…

手 前の線は大 きく見え るの に

」と驚 きの表 情 を 浮かべ 報 告し た

 こ の よ うな 場 而に遭 遇 して以 来

われわ れ は

KT に とっ て対 象の提 示 距 離 と見えの大 きさ と が どの よ うな関 係にあるの か とい う問 題 を実 験に よっ て吟 味し, 他の開 眼 者と軌を

にする結 果が得られ る か否か を検 討し て み る こ と と し た

KT 以 外の開眼 者の 結 果は望 月 (1979a)

鳥 居 (

1984

鳥 居

望 月 (1976a)を参照 さ れ たい

  方  法  テニ ス ボ

6.

5cm

)又は白 色の円 盤 (直 径 1〔〕crn を (KT が そ れに触わ り確 か め たの ち)

ブ ル の上に置 き

提 示 距 離 (D )を何 通りか に変えて その 都度 各 位 置で の見えの大 きさ(S )を報告し てもら う よう にする

 

報 告にし て は見え た通りの大 ぎさを2本 の 指 で 再 現

表 示し て もらい

その最大 差し渡しの 長さ を採

寸す るか

紙の上 に見え た ま まの円の大 きさ を描画するこ と を求め

実験 者がその直 径を測 定 するとい う方法の いず れか に拠っ た

 

対 象の提示距離は 20icm か ら 230cm の闘で 原 則 として提 示 距離の順 序は ラン ダムとする

どの距離で も 提 示 対 象は前 方 正 面に配 置し て あ り

,KT

は腰か け た 状 態で約 R5 cm ほ ど 上方より斜めに 机の面 を 見 降 す こ とになる

案 内の照 明は天 井か らの もの の み で

特別 な 照 明 器 具 な どは用いなか った

顔 而 固定 器 など は使 用せ ず,

KT

が対象を見つ け易い状態で実験は行われたが

大 きさの観 察に際し て 頭部を大き く揺り動かすとい うこ と は な か っ た

 な お, 上 述の とお り

KT

は左 眼の みを使 用し てい る た め

実 験は すべ て単 眼 視 条 件で われた

こ の 「大き さ

距 離 」 関 係の実 験を最 初に試み た の は

左眼の手 術後 約

10

年目,

KT

がわ れ われとの実 験 を 始め て約2ヵ月後 (

74

11

23)の こ とで あv  , その後 2年 5 ヵ月の間に 日 を隔て て同 種の実 験は通 算6回実施さ れてい る

  結   果

 

(/) ま ず 前方

20

40

70

95,

120cm の各 提示距離 で, 大 き さの判 断を求めた と こ ろ

その 直 径はそ れぞれ

6,

0

4

2

3

5

1

5c

これ らの値 を

S

と し て

こ こ で は

D

20cm

えの 大 ぎ さ を So と し て両者の 比 (

SIS

。)を各Dに対 する縦 軸 方 向の 値と して プ卩 トし た結果が Fig

6 の 白マ ル である

  D コ 95 cm の と きには対 象が 「点み た い」に小さくなっ たとの報 告 を 寄せ てい る

 

得ら れ た結 果に対して

試み に

Gilinsky

(1951)が提 出した 「大 き ぎ

距 離」の関 係 式, 即 ち s /

Se

・=(

A

+ δ)/(A +D)

…………・

…・

1

) をあて は め て み た

こ こでの Sは上述の と お り 「知 覚さ れた大きさ 」, D は提 示 距 離 ( Cnl 単 位 )であ る

δ を

Gilinsky

は normal  viewing  

distance

と呼び

これ を約2フ

トと おい て, So を subjective  true slze

P の

口唖

  ロΩ Φ N

◎馳 勹 Φ 〉

Φ O

Φ 山 駒 O   O

θ

邸 餌 1

0 0

8 0

6 0

4 0

2       A+ δ S!So

      A+D Sub

 K

T (Monocular )

0    20   40   60   80   10〔}  120  140  160  180        Physical Distance(D)in cm 200   220  240  260  280  300

(10)

The Japanese Psychonomic Society

NII-Electronic Library Service The  Japanese  Psyohonomio  Sooiety

62 基 礎 心 理 学 研 究 第 7 巻

2

        1

o     房o

9       邑o

8

   藷

7

   

TL

°

6

   

§

°

5     

k

°

4

   

3

   壽

    

°

6

              Physica且Distance (D in Cm Fig

・7・R

・ti・ ・f percei ・ ・d ・ize

S

S

。)・nd  phy・ical di・t・nce D

i

・ the ca・e ・f th。 。 。,皿 。

11y

       sighted  adult

Table 3

  Parameters  of  the relation  

between

 size and  distance in the cases  of 

Sub 。

 KT

       and  the normally  sighted  adult

 

ST .

齦 者

1

° ・ ・

N

4

1

23

’ ・… 3

20

20

22

ρ

181

・・ ,・

・9

20 50 ・ 

ls

・ 60 50 55       90 ・5

100

晴 眼 者

ST

単 眼 視 30450 両 眼 視

85500

と名づ て い る

こ こで は 多 少これに 修正 を加え て

δ

KT

に とっ て対 象の大きさを 見るの に最 も適切 な距 離 とみ な し た

 

1

回目の実験で は δ

=20cm

と して

その位 置での 見 えの大 き さを So と おくと, 〔

1

成のパ ラ メ

ーA

を 得られた デ

タ にも適合 するよ うにめ る こと が で き る

こ の とぎの 結果 に は A = 20 とお い た 曲線 あて は めて あ る

  D = 120cm で の範 囲で は こ の 線に従っ て 対 象の 見えの大 きさ が変化し て い るとみ な す な らぽ, 60c皿 付 近で の大きさ は δ

20cm で の大 きさの約60 %

1m で 30% 大

120 cm で 25%大, つ ま り

1

4

位に まで縮 小し てい る

同 様の条 件 下で行っ た晴眼成 人の単 眼 視で の結 果は

Fig・

7 に示したが

これ と比べ る と

δ の値よ り も

A

(= 450し て大 ぎ く っ て いる

つ ま り

定 距 離 りも遠 方に対象が位 置し た とき

その見 えの 大 き さは距 離の拡 大に

か な り急激に小さくなっ て い る とい う特徴が窮 える

 

(2} 同 様の条件下で行わ れた 「大 きさ

一一

距 離」実験に 関する そのの結 果は Fg

6

に示 し た と お りである

  2回 日以 降の実 験におけるδ , 対 象の見えの大 きさが

KT

に とっ て ほぼ 恒 常に保た れ る最長 距離 と定 義し直して み た

通 算6回の実 験に よる δ とA の値を

Table 3

δ 

A

その値は次第に大 き くな っ て い る

し か し

条 件下 で行わ れ た晴眼者

ST

の 実験結 果と比ぺ る と δのに つ いて は著しい差はないが Aにし て は大き な隔りが 認め ら れ る

 

3

Gilinsky

定式に 従っ て パ ラメ

を 当て は め た曲線に対 する測 定 値の適合度を み る と (Fig 

6

る距 離 内で は比 較的よ く適 合し てい る 場合で も

その 離よ り遠方で は

S

/S。が急 激に小さくな り

曲 線よ り も 下方に逸 脱 する とい う傾 向が ほぼ

貫し て認め られる

その よ う な現 象が 生じる 境界距離は

初 期の 段 階で は 110

120cm の辺 りであっ た が

後セこは

140〜160cm

辺 りに拡 大してい るよ うに 思われる

         

9.

 遠 距 離で の色 彩 識 別  

9−

1

  識 別可能 な最 大距離

 

近 距 離で の色 彩 識 別は

KT

の場合

当 初か ら十 分 可能 な状態に あっ た

従っ て遠方に鴛か れた 色 標の 識 別 機 能を通じ て 対 象発 見 や 遠 空 間の構 造 化を促すこと を目的 として

以下のよ うな実 験 を試み た

  方  法

 

標準 色紙 (

18

×25

5Cln

5

乃 至

9

* 用意して ラ ン ダムに 1枚 ずつ提 示し, その色を確実に識 別し うる * 用い た色 紙の マ ン セ ルは 次

  

赤 (

5R4

14

), 桃色 (2

5RP  7/8)

橙 (

5YR

   

7

14

), 黄 (5Y8 /12)

黄 緑 (5GY  8/8), 緑

  

(5G5 /8)

青 (5B5 /8), 水 色 (

5B7

/6)

紫    (5P4 /10)

藤 色 (

10PB7

6

), 茶 (

10R4

5

   黒 (

N − 1,

5)

灰 色 (

N −

5

5

N工 工

Eleotronio  Library  

(11)

望 月 :開眼 手 術 後にお け る視機能とその分化

63

最 大 距 離を 測定す る

まず

開らかに 識 別 囲 難な遠 方 (予 備 的実験に よ り推 定 さ れてい る)に提示 し

識 別 可 能にな る 地点 まで 色紙 を 徐々 に近づげる

色紙はKT の 視 線に対して 垂直と なる よう な位 置 関 係で 目のさに実 験 者が保持する か (屋 上 実 験の場 合), 衝立に貼付す る (廊 下での 実 験の場 合 )か

し た

 

実 験 場 所は 3階 建て の建 物の 屋上 と大 学の校 舎 内の

1

階の廊 下の

2

箇所である

屋 上は 13皿 ×23m の 広さで 周 囲は床 面 (灰緑 色 )か ら 上方

90cm

さ まで は灰 色の コ ン ク リ

の腰 壁で囲まれて お り

その腰 壁の 上に はさ 65cm の フ

ン スが乗っ てい る

こ の建物 が急斜面に建っ て いる た めフ エ ン ス越し に見える主な も のは, 後方の樹 木のみである

 

校 舎の廊下 は右 側の 窓か ら十分な採 光が得 られる条件 に あ

b ,

用いた衝立て は

C

 

ジュ 色の木 製で大 きさ ば幅 が

loe

 cm

さが 175cm である

  結   果

 

 

1

圃 目の案験は視 覚実験を開 始し て か ら

1

年余 りを経た時期

C75

25)に

まず 屋 上で行 わ れた

  KT の前 方3皿 の所か ら識別で きる地 点ま で徐々に色 紙を近 づけたところ

2m 以 遠で対 応 する 色名を言い得た もの は黄色 と赤だ けであり

黄 緑

水 色

橙, 緑などは 150cm 前後, 黒と 灰は /rn 以内まで近づけない と識 別 すること はで きなか っ た

こ の よ うに遠 方に 置か れ た対 象を見つ る際には

時 間をか け頭部を動か して探 索し て お り

「眼が動い て し まう」 と 言っ て

眼の脇を自分 で抑える こと な ど も試みて い る

 

1 年半後 (

77

4

9)に, 同 じ場 所で同様の条件 下で実 験が行わ れ たが, 識 別 可 能な最 長距離は 「緑」 を除 く ど の 色に お い ても

, 1m

前 後 延びてい る

フエ ン ス越し に 樹 木 が あり

そのの色が 「緑」の識 別 を困 難に し たの であろう

 

3

年を経た頃 (

80

1.

6

色 紙を衝立上に

1

枚 ずつ

ラン ダムな順 序に提 示 する とい う条 件 下で行わ れ た屋 内 で の実験 結 果に よ る と

最大識別 距 離は

r

橙」 を除 くい ずれの色に お いて も

さ らに 1m 程 拡大し て お り

と り わ け

黄, 青, 緑に関し ては 4m 辺 り まで遠ざ け て も識 別可能であっ た

赤 や 黒な ど は そ れ よ りも やや近い が・

3m

を越し て も識別が成立して い る

「橙 」に つ い て は, 「地 」 となる衝 立ての色との分 離が難し く 「色 紙 を 動か して ほ しい」 と訴え てい る

 

色 紙の 「色」の識 別が 可能な 最 大 距離を以 上の ような 下 降系 列で求めた3回の実 験結 果に基づ き 色 別に実 験実 施 日に対して図 示し て みると Fig

8 の よ うにな る

 

(2}色の識 別 が成立する ま での過 程 を 「赤」の 場 合を 距 離 [cm )

            〔屋 上 )    (屋 上 )    (廊 下 )        実 験実施日 (場所 )

Fig

8

 

Maxi

皿 um  distance where  Sub

KT

 can

       

identifv

 each  color  of chro 皿 atic papers

Table

 

4.

 

Identification

 of red of chromatic  paper

        at each  distance 

in

 the  case  of 

Sub .

        KT

 (

Red

:  5R  

4

14

) 提示距

77,

4

9 ’80

1.6

1回 目

」.

 

2回目

_

530cm

黄 色 」

。い、

     L 

 

 

↓ 400385   ↓ 赤だ 」 300

・赤・

i

280

・紅 …

i

↓ 「赤だ 」 例に とっ て 示すと, Table 4 の よ うに, 誤 認の内 容が距 離の僅か な変 化で大 き く異っ て い る

提 示 距 離が

300c

皿 で は 「紫」, 「ピン ク」 と類似した色名で答 えてい る が

さらに遠方で誤 認し たと きには 「黄色 ?」 とその内 容が 大き く異なっ た もの に なっ て くる

従っ て

KT

の場合に は遠方にある色 紙 は 単に識 別で きないだ けでな く, その 色印 象 が 距 離の拡 大に応じて多 様に変 化し て い ること も 予想 さ れる

試み に

白 台 紙 (

25

×

25cm

)上 に貼付し た 色彩円 (直 径 2

2cm )を 23エn か ら晴 眼 成 人が観 察し

色彩円を徐々 に近づ た とき, 色の 印 象がどの よ うに変 る かを報 告して も らっ た

場所はKT が実 験 を 行っ た屋 上である が, 赤, 黄

青に関す る 限 り

23m か ら確 実に識 別し う る距 離に至る まで の 間 (も近い場 合で

(12)

The Japanese Psychonomic Society

NII-Electronic Library Service The  Japanese  Psyohonomio  Sooiety

64 理 学 研 究 第 7 巻 第 2

Table

 5

 Identification of  red  and  green chromatic  papers 

by

 two normally  sighted  subjects

観 察距 離   (m ) 赤 Sub A Sub

 N

1

『 −

     

Sub .

 A 緑

Sub ,

 

N

23 … … 焉 141312 … 87654 「赤 」

(終 始赤)    「茶色 」

   ↓

   「赤か な〜」       ↓ 「赤か もし れ ない」    「赤だ」 「青」

  ↓

「青緑 か な ?1 「だ っ た」 「青」

「青じゃない ?  「緑か な

P

」   「緑だ 」 4皿 )に列 挙された色 名は

2

種類だけである

Table 

5

は赤と緑に対して晴 眼 者 2名 が 呼 称し た色 名と言 語 報 告 で ある

  9

2

 色 彩 識 別 に お ける色 紙の 面積と提 示距離  色紙を用いた遠 距 離か らの 色彩識別実験を開 始し て 2 年 半を経た頃 (

81

4

4

)か ら

提示する色 紙の面 積を多 少 変えて 色 領域のさに よっ て識 別の難 易 がどの よ う に変わ る か を吟味する実験を開 始した

実 験の施 期 間 は1981年4月か ら同年 6月22日ま で に及ん で い る

  方   法

 

白 台 紙 (

25

×

25cm

央に色 彩 円 (

4

乃 至 11 種)

を 貼し た も 特 定の距 離 (20

130cm )からラ ンダム順に 示 して, 識 別 を 求め る

円の直径は 7

4 crr/・ 5

6crn

2

2c皿 の

3

種でるが

1 系列の実 験で 用い る大 きさは統

してあ る

識 別の 台紙の面 に対し ほ ぼ垂直に 立て て実 験 者が保 持し, 色彩円が

KT

額 平 行 面 とお お む ね平行に な る よ う な条件 (直立 提 示条 件 )と し た

  結   果

 

に〕 各 提示距離に おける識別率を 色 領域の面 積と色の 種 類の数に 応 じて プロ ッ トすると

Fig,

9の よ うになる

図の記号の うち

φ 印は 色 彩 円の直径 (cm

 k は 提 示し た色の種類の数

Sはその面積を表わし て い る

 

直 径 7

4cm

の 色彩 円 (4

6種)に対す る識 別 率 (△ 印)は

提示距離が

125cm

まで の 間で は

100

を示 し て い る が

,130cm

に なると80%に低 下してい る

,一

4        提 示 距 離 (晴 眼 者 ) 68101214161820222426 m 識 別 100 80 率 60

40

20 & 、 、

 

x

       × 一

1

iiii

0

 

20

 

30

  

40

  

50

 

60

 

70

  

80

 

9Q

 

100

 

110

 

120

 

130

 

cm

      

提 示 距 離 (Sub

 KT

Fig

9

 Results of color  

indentificatiQn

 of  chrQmatic  pepers on white  mount  plotted  against

    

the observation  distance in cases  of 

Sub.

 KT  and  the norma11y  sighted

 

(k :

Number

 of  

hues

 used

≠:

diameter

 of  chro 皿 atic  paper ;S:area of chromatic  paper

Table   2 .   Verbal   report   on   the   objects   displayed   at   a   long ・ ⊂ listance ( Sub .   KT )
Fig ・7・R ・ ti ・ ・ f   percei ・ ・ d ・ ize ・ ( S / S 。 ) ・ nd   phy ・ ical   di ・ t ・ nce ( D ) i ・ the  ca ・ e ・ f   th 。 。 。,皿 。 11y
Table   5 .   Identification  of  red  and   green  chromatic   papers   by   two  normally  sighted  subjects
Table   6.   Verbal   report   on   the   shape   of   2 ・ dimensional 丘 gures   and   effects   of   holding           the   mount   when   seeing   figures ,
+2

参照

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