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由としては, 全身麻酔導入時に胃内容物が逆流し, 気管に流入することによって生じる誤嚥性肺炎を予防するためであり, 術前絶飲食は必要であるといえる. しかし, 不適切な絶飲食は, 患者にとってストレスとなり, また脱水の危険を増加させる. 消化管の作用嚥下された食物は, 胃に入ると, 胃液と食物が混

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全身麻酔時の誤嚥性肺炎の

予防と治療

Prevention and Treatment against Aspiration

Pneumonia during General Anesthesia

誤嚥性肺炎は誤嚥を契機として起こる肺炎であり,全身麻酔に伴う誤嚥性肺炎は, 咳嗽反射の低下または消失による胃内容物の気管への流入である.誤嚥性肺炎を予防 するために,予定手術患者において術前絶飲食が行われている.しかし,適切な絶飲 食時間が守られていたとしても,飲食物の種類によって胃からの排出時間は異なり, また,胃内容物誤嚥のリスクファクタを持つ患者に全身麻酔を施行する際は,細心の 注意を要し,麻酔導入法も検討する必要がある.緊急手術・麻酔においては,胃内容 物誤嚥の可能性が高く,麻酔前評価が不十分になるため,誤嚥のリスクは高まる.嘔吐, 誤嚥した場合は,誤嚥した内容物の量や質,患者の免疫状態によって,その重症度も 異なるため,常に重症化する可能性を考慮し,呼吸管理を行う必要がある. 埼玉医科大学国際医療センター麻酔科

大野聖加

Ⅰ)

磨田 裕

Ⅱ)

はじめに

誤嚥は,口腔内分泌物や胃・腸内容物が気管へ流入す ることであり,誤嚥を契機として発症する肺炎を誤嚥性 肺炎という.誤嚥性肺炎は,誤嚥した内容物の性状によ り,aspiration pneumoniaとaspiration pneumonitisに 分けられ,前者は病原性細菌の流入による肺の急性炎症 反応であるが,後者は無菌性の胃内容物流入による急性 肺障害で重症化しやすい. 周術期における誤嚥性肺炎のリスクは,広く知られて いるが,実際の周術期誤嚥の発生頻度は,30万症例の手 術患者で,約 1 %と決して高くない1).従来,予定手術 を受ける患者において,術前絶飲食を指示する.その理 埼玉医科大学国際医療センター麻酔科

(2)

由としては,全身麻酔導入時に胃内容物が逆流し,気管 に流入することによって生じる誤嚥性肺炎を予防するた めであり,術前絶飲食は必要であるといえる.しかし,不 適切な絶飲食は,患者にとってストレスとなり,また脱 水の危険を増加させる.

消化管の作用

嚥下された食物は,胃に入ると,胃液と食物が混ざり 粥状になる.これを胃の嬬動によって少量ずつ十二指腸 へ運搬する作用がある.たいていは食後10分ごろから胃 の内容物は十二指腸に運搬され始め,2 〜 3 時間で80%, 3 〜 6 時間で全て十二指腸へ運搬される.排出速度は食 物の構成成分により異なるが,三大栄養素では炭水化物 がもっとも速く排出され,タンパク質はその 2 倍,脂肪 は胃の運動を抑制するのでもっとも遅くなる.水分は摂 取後 2 時間でほとんどが胃から排出される.つまり,摂 取された水分が胃から消失するには最低 2 時間は絶飲す ることが必要である.しかし,絶飲食を行ったとしても, 胃内容物が完全に消失するわけではなく,胃内容物貯留 の因子が加われば胃内容物の消失は必然的に遅れること となる.また,胃液は,食物が胃内に存在していなくて も,1 時間に0.6mL/kg程度分泌され,さらに,1 時間に 1 mL/kg程度の唾液の嚥下があるので,これは予定手術 患者に絶飲食を行ったとしても,胃内容物・液は必ず存 在することを示している.

絶飲食ガイドライン

麻酔導入時に誤嚥のリスクを軽減させるためには,胃 内容物を減少させることにより,逆流を少なくする必要 がある.そのためには,絶飲食をすればよいが,長時間 の不適切な絶飲食は,脱水,口渇,空腹,不安感,それ に伴う患者へのストレスを増加させる.また,飲食物の 種類によって,胃の通過時間が異なるので,患者や保護 者に対する説明,主治医や看護師への指示の際は,飲食 物の種類と摂取制限時間を明確にする必要がある.しか しながら,明確なエビデンスは少ないのが現状であるが, 米国麻酔学会(ASA)の術前絶飲食ガイドライン2, 3) は次のように推奨されている. 1. 術前評価 カルテや理学的所見,身体的所見,患者との面接など によって誤嚥リスクについての情報を収集し術前評価を 行う. 誤嚥のリスクを増加させる病態として,逆流性食道炎, 嚥下障害,その他の消化管運動障害,気道確保困難が予 測される患者,代謝性疾患(糖尿病など)などがあげら れる(表1). 絶飲食の必要性とその理由について,手術に先立ち患 者へ説明し,絶飲食指示を守れるか否かを判断する. 本ガイドラインに示した絶飲食に関する推奨事項に準 拠しない場合は,実施しようとしている処置の利害得失 を考え,術前に摂取させる水分や固形物の量および種類 を十分に検討しなければならない. 2. 清澄飲料(clear liquids) 全身麻酔,区域麻酔,鎮静/鎮痛(monitored anesthesia care:MAC)を要する予定手術の場合,清澄飲料の摂取 は遅くとも手術 2 時間前までには中止する. 清澄飲料の例としては,水,果肉を含まないフルーツ ジュース,炭酸飲料,お茶,ブラックコーヒーなどである. アルコールは清澄飲料には含まれない. 術前に摂取する飲料については,量よりも種類の方が 重要である. 3. 母乳 全身麻酔,区域麻酔,鎮静/鎮痛(MAC)を要する予 定手術の場合,母乳の摂取は遅くとも手術 4 時間前まで には中止する. 表1 胃内容物誤嚥のリスクファクタ(文献 6 より引用・改変) 胃内容量増加 胃内圧上昇 8 時間未満の絶飲食,絶飲食時間不明,消化管閉塞,腹膜炎,消化管腫瘍,過剰経管栄養, 不安・緊張(ストレス),胃液分泌過多,喫煙,痛み,アルコール摂取,病的肥満 下部食道括約筋 機能異常 妊婦,逆流性食道炎,食道アカラシア,各種神経筋疾患,食道腫瘍,胃全摘術後,食道癌術後 喉頭機能不全 意識障害,嚥下障害,麻薬・鎮痛薬・麻酔薬・鎮静薬・筋弛緩薬・精神病薬投与,外傷(特に頭部), 脳神経疾患

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11. 多剤併用薬の術前投与 誤嚥のリスクが高いと判断される患者以外に,誤嚥の リスクを低下させる目的で術前に多剤併用薬をルーチン で投与することは推奨されない. しかし,これらのガイドラインは,標準,必要条件では なく,文献調査や専門家の意見をもとに作成されており, 明確なエビデンスに基づくものではない.条件も限定さ れていて,あくまでも予定手術を受ける患者が対象であ り,妊婦は対象外である.このように,様々な条件によ り,適宜調整する必要があり,飲食物の種類によっても, 絶飲食時間が異なる点に十分注意しなければならない.

全身麻酔時の誤嚥性肺炎

全身麻酔の合併症としての誤嚥性肺炎は,緊急手術症 例で多く,時期としては麻酔導入時,気管チューブ抜管 時に多く発生するとの報告がある4).覚醒時,胃内容物 が逆流すると,咳嗽反射により吐物の気管への流入を妨 げている.しかし,全身麻酔時は,全身麻酔薬や筋弛緩 薬の投与による下部食道括約筋圧の低下や,マスク換気 による胃への空気流入により,胃内容物の逆流の可能性 が高くなる.また,咳嗽反射も抑制されているので,胃 内容物が逆流すると吐物が気管に流入し,肺への胃液の 流入を妨げられず,肺障害,つまり誤嚥性肺炎を引き起 こす可能性が高くなる.誤嚥した胃液の酸度がpH2.5以 下,量としては0.3mL/kg(成人で20〜30mL)で誤嚥 性肺炎を引き起こす可能性が高くなるとされている5) 前述したように,全身麻酔時の誤嚥性肺炎を予防するた めに,現在では,各施設で予定手術を受ける患者におい て術前絶飲食ガイドラインが策定されている.しかし, 緊急手術患者においては,絶飲食ガイドラインに準拠す るのは困難であり,また,守っていたとしても胃内容物 の誤嚥を引き起こすリスクファクタ6, 7)(表1)を持つ患 者に関しては,細心の注意を必要とする.例えば,緊急 手術患者,妊婦,消化管閉塞,意識障害,肥満患者など である.

胃内容物誤嚥のリスクファクタのある患者の

全身麻酔

胃内容物誤嚥のリスクファクタのある患者に全身麻酔を 施行する際,麻酔導入時には誤嚥を予防しなければなら ない.全身麻酔に伴う誤嚥の頻度は,2,000〜3,000症例 に 1 症例であり,そのなかで予定手術の3,000〜4,000症 例に 1 症例に対して,緊急手術では600〜900症例に 1 症 4. 乳児用人工乳(粉ミルク) 全身麻酔,区域麻酔,鎮静/鎮痛(MAC)を要する予 定手術の場合,乳児用人工乳(粉ミルク)の摂取は遅く とも手術 6 時間前までには中止する. 5. 固形物とミルク(母乳以外) 全身麻酔,区域麻酔,鎮静/鎮痛(MAC)を要する予 定手術の場合,軽食(例:トーストと清澄飲料)あるい は母乳以外のミルクの摂取は遅くとも手術 6 時間前まで には中止する. 揚げ物などの脂肪分の多い食べ物や肉類は胃内容物消 失時間を延長させるので,このような食べ物を摂取する 場合はさらに 8 時間以上の絶食時間を必要とする. 適切な絶食時間を決定するには,摂取する食事の量と 種類を考慮する必要がある.母乳以外のミルクの胃内容 物消失時間は固形物と同じであるので,母乳以外のミル クの絶食時間を決める場合には量についても指示する必 要がある. 6. 消化管運動促進薬の術前投与 誤嚥のリスクが高いと判断される患者以外に,誤嚥の リスクを低下させる目的で術前に消化管運動促進薬を ルーチンで投与することは推奨されない. 7. 胃酸分泌抑制薬の術前投与 誤嚥のリスクが高いと判断される患者以外に,誤嚥の リスクを低下させる目的で術前に胃酸分泌抑制薬をルー チンで投与することは推奨されない. 8. 制酸薬の術前投与 誤嚥のリスクが高いと判断される患者以外に,誤嚥の リスクを低下させる目的で術前に制酸薬をルーチンで投 与することは推奨されない. 誤嚥のリスクの軽減以外の目的で制酸薬を投与する場 合には,非粒子性の制酸薬を用いる. 9. 制吐薬の術前投与 誤嚥のリスクが高いと判断される患者以外に,誤嚥の リスクを低下させる目的で術前に制吐薬をルーチンで投 与することは推奨されない. 10. 抗コリン薬の術前投与 誤嚥のリスクを低下させる目的で術前に抗コリン薬を ルーチンで投与することは推奨されない.

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例と増加すると報告されている8).では,どのように 予防すればよいのであろうか? 全身麻酔下での手術 を延期するか,または,麻酔導入法を検討する必要が ある.例えば,可能であれば,手術の延期,局所麻酔 下での手術へ変更,意識下挿管などを考慮しなけれ ばならない.このような場合には一般的に,前酸素化 (preoxygeneration)に続き,静脈麻酔薬と筋弛緩薬 をほぼ同時に連続して投与(rapid sequence)し,マス ク換気を行わず気管挿管を施行する迅速導入(rapid sequence induction:RSI)が選択される9).RSIでは,

導入前準備,前酸素化,薬物投与,輪状軟骨圧迫などの 手技を適切に施行することが安全性を高めるうえで重要 かつ必要となる.RSIを施行した症例において,28%に 胃内容物の逆流がみられ,45%では気管挿管が成功しな かったという報告がある10).しかし,意識下挿管と比較 してRSIでは気管挿管の成功率が高いとの報告もある11, 12)

迅速導入

1. 全身麻酔導入前準備 RSIの適応は,胃内容物が存在し,麻酔導入中に誤嚥 のリスクの存在,かつ,気管挿管困難が予測されない患 者である.麻酔導入に際し,誤嚥のリスクが存在し,気 管挿管困難が予測された場合には,意識下挿管が選択さ れるべきである.しかし,術前に気管挿管困難を適切に 把握することは困難である.そのため,気道確保・気管 挿管困難の予測因子があげられている(表2).しかし ながら,術前に予測しても,実際は挿管困難症例と判明 した時点で筋弛緩薬が投与されている場合が多い.その ために,気道確保・気管挿管困難の予測因子の有無に関 わらず,ラリンジアルマスクや,ガムエラスティックブ ジ(gum elastic bougie)などのDAM(difficult airway management)セットを準備しておく必要がある.また, スタイレットをあらかじめ気管チューブ内に留置し,吸 引カテーテルと吸引装置は必ず動作を確認し,1 名でも 多くの介助スタッフを用意し,全員がRSIを行うという 情報の共有化が重要である. 2. 前酸素化 RSIでは,胃内圧の上昇を避けるために,マスク換気 を施行しない.また,患者の意識消失から気管挿管終了 までの時間短縮を図るため,静脈麻酔薬と筋弛緩薬は, 間隔をあけずにほぼ同時に投与される.トラブルがなく 気管挿管が終了しても,患者は60〜120秒程度無呼吸の 状態になる.喉頭展開や気管挿管に手間取った場合,無 呼吸時間は継続することになる.この間,動脈血酸素分 圧(PaO2)を安全な範囲に保つためには,1 分間に 8 回の 深呼吸による酸素化で,経皮的動脈血酸素飽和度(SpO2) は 5 分間低下しないといわれている13) 3. 輪状軟骨圧迫 胃内容物逆流を防止する目的として,輪状軟骨圧迫 (cricoid pressure)が施行される.患者の意識消失前か ら圧迫(圧は30〜40N:約 3 〜 4 kg)することが理想的 であるが,実際には患者の意識消失から気管挿管が終了 し,カフが膨らむまで継続する. RSIを安全に施行し成功させるためには,できるだけ 多くの介助スタッフの確保,情報の共有化,十分で効果 的な前酸素化,的確な輪状軟骨圧迫,挿管困難に対する 事前準備が重要かつ必要である.

麻酔導入時の誤嚥

挿管前に嘔吐したら,あわてず,頭低位にし,気管へ の流入を防ぐ.次に顔を横に向け,口腔内の嘔吐物を吸 引する.速やかに気管挿管を終了し,気管吸引を施行す る.誤嚥した異物による肺への影響を最小限に抑えるた 表2 気道確保,挿管困難を予測させる因子 解剖学的因子 病態 短く太い首 頸部可動域制限 顎・顔面の形態異常(小顎症) 開口障害(最大開口距離 35mm未満または 2 横指以下) 小さな口 歯列異常(上顎切歯の突出,オーバーバイト) 高口蓋 巨舌 扁桃肥大 いびき 病的肥満 Mallampati分類 ⅢまたはⅣ オトガイ−甲状軟骨間距離 60mm未満 オトガイ−胸骨間距離 125mm未満 頭頸部・口腔内腫瘍 頭頸部への放射線治療 顔面熱傷 睡眠時無呼吸症候群 顎関節強直 慢性関節リウマチ 頭頸部手術の既往 頸椎手術の既往

(5)

めに,気管支ファイバ検査を行い,可能な限り気管吸引 を施行する.術後に胸部X線撮影,CT撮影,血液検査 (表3),血液ガス分析を行い14),誤嚥性肺炎の症状が重 度であれば,術後の呼吸管理の必要性を考慮する.

誤嚥性肺炎の術後管理と治療法

誤嚥性肺炎は,誤嚥した内容物の量や質によって病状 や進行が様々である.また,誤嚥前の患者の状態によっ て症状の進行が大きく異なる. 1. モニタリング 誤嚥性肺炎は,酸素投与のみで対応可能な場合から, 急性肺損傷(acute lung injury:ALI)を惹起し,急性 呼吸促迫症候群(acute respiratory distress syndrome: ARDS)へと重症化し,気管挿管,人工呼吸管理が必要 なものまで多様である. SpO2を観察し,低酸素血症を認める場合には人工呼 吸管理を考慮する.また,血液ガス分析を施行し,低 pH,高二酸化炭素血症の有無を評価する. 2. 呼吸管理 軽症例では,マスクや鼻カニューレによる酸素療法で 対応し経過観察とする.低酸素症や高二酸化炭素血症が 進行する呼吸不全症例では,意識下挿管など注意深く気 管挿管し,人工呼吸管理を行う6).誤嚥性肺炎における 人工呼吸管理の基本は気管挿管下人工呼吸管理である. しかし,誤嚥性肺炎に特有のエビデンスのある人工呼吸 法はなく,ALI/ARDSに準じた肺保護戦略15, 16)に基づ いた人工呼吸管理を適用する14) 中等症例では,5 〜 8 cmH2O程度の呼気終末陽圧法

(positive end-expiratory pressure:PEEP)を用い,5 〜 10cmH2Oの圧支持換気法(pressure support ventilation:

PSV)あるいは間欠的強制換気法(synchronized inter-mittent mandatory ventilation:SIMV)を行う6)

重症例では,鎮静薬投与下,あるいは筋弛緩薬併用下に 調節換気,圧規定調節換気(pressure control ventilation: PCV)を行う6)

3. 人工呼吸ケアバンドル

人工呼吸管理を行う際は,人工呼吸器関連肺炎(ventila-tor-associated pneumonia:VAP)を予防するために,米国 医療保健改善協会(Institute of Healthcare Improvement: IHI)が提唱する,人工呼吸ケアバンドルと呼ばれる治療 管理を実行することが推奨されている. ①30°〜 45°の頭部高位 ②毎日の鎮静薬の中断と抜管の可能性の評価 ③消化管性潰瘍予防薬の投与 ④深部静脈血栓症予防 ⑤クロルヘキシジンによる口腔ケア(ただし,本邦で の口腔粘膜への適用は禁忌) これらの実践に加え,気管チューブのカフ上部の吸引 を行うことにより重症化の予防や治療につながる. 4. 薬物療法 現在,誤嚥性肺炎に対する副腎皮質ステロイド薬の有 効性は見出されておらず,明確なエビデンスを示したも のはない.一方,シベレスタットナトリウム水和物の発 症早期の使用が有用であると考えられている17) 抗菌薬では,クリンダマイシン,ペニシリンとペニシ リナーゼ阻害薬合剤,ペニシリンとメトロニダゾール併 用,レボフロキサン,第三世代セフェム系抗菌薬,ピペ ラシリンが第一選択としてあげられている.いずれにし ても,抗菌薬投与開始前に,必ず喀痰を採取し,起因菌 を確定し,抗菌薬の狭閾化を行うことが重要である. 表3 末梢血白血球減少による誤嚥性肺炎の重症度判定(文献 6 より引用・改変) 重症例では,肺組織の直接障害により血中の好中球が肺組織に遊走,集積が起こるため,誤嚥発生 4 時間後より,末梢血の白血球数の 減少が認められる.したがって,誤嚥発生早期の末梢血の白血球数の減少程度は誤嚥性肺炎の重症度と関係する.

DIC:disseminated intravascular coagulation syndrome,播種性血管内凝固症候群,MOF:multiple organ failure:多臓器不全,

PaO₂:動脈血酸素分圧,FIO2:吸入酸素濃度 末梢血白血球数/μL 呼吸不全 PaO2/FIO2(mmHg) ショック,DIC,MOF 予後 ≦2,000 2,000 ∼ 6,000 ≧6,000 低下なし 最重症 PaO2/FIO2<100 重症 PaO2/FIO2<300 中等症 軽症 呼吸不全は数日で軽快 重症 軽症 なし なし きわめて不良 長期人工呼吸必要

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おわりに

予定手術患者において,誤嚥性肺炎予防のため,術前 に一定期間の絶飲食が指示される.絶飲食時間は飲食物 の種類によって異なるが,術前絶飲食時間が長すぎると 脱水の危険性が高くなるので注意が必要である.最近で は,術後の回復力強化プロトコル(enhanced recovery after surgery:ERAS)の 1 つとして,術前経口補水療 法(oral rehydration therapy:ORT)が導入されてい る施設も多い.ORTは,脱水予防やストレス軽減など 期待される効果は多いが,適応患者の判断や患者への説 明,摂取量・最終摂取時間の確認を必要とする. また,胃内容物誤嚥のリスクファクタを持つ患者に全 身麻酔を施行する際には,麻酔導入法に考慮し,できる だけ多くの介助スタッフの確保,情報の共有化,十分で 効果的な前酸素化,的確な輪状軟骨圧迫,挿管困難に対 する事前準備が重要かつ必要である. 誤嚥性肺炎は,その発症機転で臨床経過が大きく異な るが,人工呼吸をはじめ,呼吸理学療法,口腔ケア,嚥 下リハビリテーション,栄養管理など,麻酔科医のみな らず他科の専門医,看護師,歯科医師,理学療法士など 多くの職種が緊密に連携し,包括的に対応することが治 療に求められる.

(7)

■参考文献

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参照

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