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研究成果報告書(基金分)

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Academic year: 2021

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科学研究費助成事業  研究成果報告書

様 式 C−19、F−19、Z−19 (共通) 機関番号: 研究種目: 課題番号: 研究課題名(和文) 研究代表者 研究課題名(英文) 交付決定額(研究期間全体):(直接経費) 33606 基盤研究(C)(一般) 2014 ∼ 2011 CBPRと経営戦略の知見による保健事業を創出する戦略の体系化とその活用

The systematization and its application of strategy to create health programs by CBPR and Business Administration

50349172 研究者番号: 宮崎 紀枝(Miyazaki, Toshie) 佐久大学・看護学部・准教授 研究期間: 23593417 平成 27 年 9 月 16 日現在 円 4,000,000 研究成果の概要(和文):実践者(保健師等)が参考にできる保健事業のデータベースの充実をはかるため、情報発信 コンテンツを作成し公表した。また、経営学の知見を参考に事業化の戦略の体系化を目指して、質問紙調査を実施し、 質的・量的に分析した結果4つの事業化の戦略が確認できた。これらの成果を実践者に報告するためのセミナーを開催 し、研究成果が実践に有効であるとの意見が得られた。

研究成果の概要(英文):The results of our current study are outlined below.

To substantiate the databases that may be utilized by Public health nurses, the contents of information that is transmitted were prepared and published. A survey in a questionnaire format was conducted to systematize the approach in business administration strategy based on the findings of business management. The results were subjected to qualitative and quantitative analyses, which led to a confirmation of 4 strategies. A seminar was held where these results were presented to those who would utilize the information. The participants expressed their opinions to the effect that the results of the current research are effective in their actual practice.

研究分野: 公衆衛生看護

キーワード: 事業化 保健師 データベース 戦略

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様 式 C-19、F-19、Z-19、CK-19(共通)

1. 研究開始当初の背景 保健師の保健事業の創出活動(以下、事業 化)の研究は 2003 年頃より増え、事業化・施 策化のプロセスの解明に始まり、創出時の判 断、保健師の能力の尺度開発等と積み重ねら れている。しかし、戦略という方法に着目し ている研究はまだ少ない。筆者はこれまでの 研究で、事業化のプロセスや1)、事業化のス トラテジーの概念2)を明らかにした。その結 果、行政機関という組織の特質や、保健師が 優先するビジョンの違いなどから、スピーデ ィに事業化する戦略よりも、連携者のモチベ ーションや住民の気持ちの熟成を待つため に一見遠回りに見える戦略を選択すること があると分かった。だが、それは長期的にみ て住民の健康の保持増進のために、必要な事 前の仕掛けづくりとしての活動であること が多く、独自の戦略を選択したからこそ、そ の地域に根差した保健サービス事業の創出 に成功している。しかし、その戦略は科学と して体系化されていない。事業化の戦略を体 系化するためには、実際の事業化事例の収集 と原理原則となる戦略の考え方が必要であ ると考えた。そこで、事業化事例の調査と経 営学の知見を参考に保健師の暗黙知を形式 知で表す着想に至った。 保健師養成のカリキュラム改正後、事業 化・施策化の教育内容が強化されている。一 方で、住民のニーズを汲み取って保健活動に 反映させていく活動は実践現場では少なく なっているという報告もある3)。事業化の戦 略の体系化は、実践現場や教育現場に人材育 成の考え方を提供できると考えられる。 2. 研究の目的 本研究の目的は、保健活動の実践と教育現 場への活用のために、経営戦略の知見を視座 として保健事業の創出戦略を体系化するこ とである。 1) 保健事業の開発過程とその成果のデ ータベースを構築する 2) 経営学の知見に基づいて保健事業の 創出戦略の体系化する 3. 研究の方法 23・24 年度は、保健事業のデータベー スの作成と運用を目標にし、25・26 年度 はデータベースで集められた事例をもと に戦略の体系化を行うことを目標にした。 23 年度は、①文献検討と②保健事業のデ ータベース項目の抽出を目的に事業化の 調査を実施、③実践者である保健師の協力 を得て保健事業のデータベースのひな型 (入力フォーマット)を検討した。 24 年度は、データベースの運用を試行す るために、①学内の倫理審査委員会に研究 計画書を提出し承認を得た。②データベー スのひな型(入力フォーマット)に実践者 の協力を得て保健事業の登録依頼を行っ た。 25 年度は、登録数の増加のために、実践 者の閲覧件数を増やす必要を感じたため、 実践者に役立つ情報発信コーナーを企画 しコンテンツを作成しはじめた。また、調 査データの分析を行い、保健事業の創出に 必要な戦略の体系化案を作成した。 26 年度は、①実践者に役立つ情報発信コー ナーのコンテンツの増加と、②経営学の知見 を戦略の体系化に活かすための専門家から の助言をうけた。実践者からの要望に応え、 ③研究成果の還元のために保健師に向けた セミナーを開催した。 4. 研究成果 本研究の成果は、1)保健事業の創出戦略 の体系化と、2)データベース作成とコンテ ンツ、3)実践者の要望に応えて開催した学 習会(セミナー)の3つについて報告する。 1)保健事業の創出戦略の体系化 全国保健師長会の行政機関に所属する会 員で事業化の経験のある保健師 174 名(都 道府県・市区町村を層化抽出)に質問紙調 査の回答を得た。印象に残っている事業化 事例のうち最新の 1 事例について振り返っ たもらい、事業化のプロセスで行った様々 な活動のうち、その事業化を成功に導いた と思う主な実践についての記述を、質的に 分析した。その結果抽出された重要な活動 は表1の通りである(第 71 回日本公衆衛生 学会発表)。 記述が多かった実践内容は、<関係機 関・関係者との協働>であった。企画を協 働して実践するだけでなく、そのプロセス を共有することで、達成感や一体感も共有 していることが分かった。これらは、平均 1 年半以上続く事業化のプロセスにおいて、 相互で目的を確認し励まし合い<保健師の 意欲>を高め、関係者や行政組織からの< 事業化の合意形成や><魅力ある事業企画 >に向けた整備をしていると考えられた。 特に<事業化の合意形成や><魅力ある事 業企画> を整えていくためには、<十分な ニーズ把握と情報収集>が必要で、対象者 のニーズに沿うことが事業企画の原点であ り、同じ組織内や上司に対して<事業化の 合意形成>のために説得力のある資料を作 成し説明を繰り返し実施していることが分 かった。 事業化を推進していく実践で、<住民と の協働や(住民)支援>は保健師がもっと 時間をかけて実践している内容であると考 えられた。個別の支援を行いながら、ある いは主体的活動を期待しているためリーダ ー育成を行いながら、企画を住民と協働し

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ているためである。しかし、事業化事例に よっては、住民が参加しない事例もあるこ とから、事業化事例と実践内容や事業化期 間と間に関連がある可能性があると思われ た。そこで、量的な分析をおこなった。 先行研究と自由記載の分析結果をもとに、 保健事業の創出に必要な戦略の構成概念は、 4・5つあるという仮説を得て、因子分析 をした結果、4つの主な戦略が抽出された (宮﨑・河原,2013)(表 2)。 構成概念の特性を、事業化事例の種類と の関連で分析した(一元配置分散分析、重 回帰分析)。健康教室・グループ育成など の住民に直接サービスを提供する事業化 においては、住民が将来主体的に動けるよ うな戦略を中心に活動展開していた。災害 時の対応や認知症行方不明者対策などの 地域システムづくりの場合は、行政機関や 関連機関との合意や連携等の戦略を中心 に展開していた。2つの種類には有意な差 を認めた(第 73 回日本公衆衛生学会発表)。 経営学的視点から抽出された戦略の構成 概念に経営学の専門家より助言をもらい、 質的な結果に近い、構成概念は5つになる 可能性があることがわかった。 2)保健活動・保健事業のデータベース作成 と情報発信のためのコンテンツ 保 健 事 業 の デ ー タ ベ ー ス を 作 成 し た (http:www.phn-recipe.net/)。 依頼で保健事業のデータ登録する場合は、 登録時の自治体の手続き上の手間が必要 であることがわかった。このため、自治体 の保健活動のデータ数の増加のために、サ イトの閲覧を増やすことを優先すること にし、情報発信のコンテンツ作成を中心に 変更した。情報発信用のコンテンツは、事 業化のコツ、禁煙関係、フットケア関係、 運動関係の4種類である。 (http:www.phn-recipe.net/ad01〜6/)

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3)学習会(セミナー)の実践報告 実践者からの要望があり、専門家からの経 営学の知見の学習会と研究成果報告会を 実施した。 学習会(以下セミナーとする)の内容 セミナーは 3 日間のスケジュールとした (表 3)。セミナー開催の目的は、研究成果の 報告と、保健活動に活かす経営学の知見と、 実践者が事業化時に必要な説明サービスの スキルを学ぶことである。参加人数は 26 名。 保健師、保健分野の事務職員、学生、その他 であった。 第 1 日目は主に研究成果の報告で、保健事 業企画の実践知の共有を図った。保健事業の きっかけとプロセス、また魅力ある事業を企 画するためには複数のサービスコンセプト が重要であることを実践の中から確認し、 「魅力ある事業企画のポイント」の具体的な 対策についてグループワークを行った。グル ープワークより確認された「魅力ある事業企 画のポイント」の内容は、<事業計画決定レ ベルのキーパーソンをつかむ><変化とい うチャンスを活かす><補助金を活かす> <初めは事業を施行する><わかりやすい 説明をする><多角的な評価を活かす>< 社会資源を活用する><関係性を築く>< 住民を誘う広告をする> が出された。 表 3 セミナープログラム 第 2 日目は、経営学の方法論に基づいた SWOT による保健活動の現状分析及びエグ ゼクティブサマリーのワークより、現状の保 健課題の分析及び対策作成面での弱点を確 認できた。参加者からは、「経営学の方法論 を活用することにより保健師間の能力や経 験の差が補完可能では」「経営学の考え方で 保健活動をとらえると新しい発想で事業を 考えることが可能」など、経営学の視点から 保健事業を新たに見直す機会となった(写 真)。

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第 3 日目は、認知心理学の知見に基づき、 効果的な説明サービスについて実践例を踏 まえた知識を得た。人間の情報処理の特徴 を理解し、その特徴に合わせた説明が「わ かりやすい説明」であることを確認し、講 義内容を踏まえ、グループワークでポスタ ーや説明文書の作成を行った。ワークでは、 人間の情報処理の特徴を知ったうえで演習 を実施したことにより、参加者が対象にと っての「わかりやすさ」を共有することが できた。 考察と今後の課題は次のとおりである。 保健活動・保健事業のデータベースへの登 録は不十分であったが、経営学の知見を視座 に事業化の戦略を体系化するという目的は 概ね達成できたと考えられる。経営学者から の助言、実践現場の保健師からの意見から十 分に活用可能であることが分かった。また、 体系化された内容も妥当性があることが分 かった。 経営学を保健活動に活かす学習会を実施 した結果、経営学の知見を看護管理に活かす ことは以前より行われてきているが、実践活 動に活かすための学習の機会はまだ少ない と考えられた。今後は、研究成果を保健活動 の実践レベルで検証し、より妥当性を高めた のちに、保健師教育のカリキュラムや人材育 成のプログラムの開発等へ発展させて行き たいと考えている。 5.主な発表論文等 (研究代表者、研究分担者及び連携研究者に は下線) 〔雑誌論文〕(計1件) 1)宮﨑紀枝,河原加代子:保健師が行う事 業化のストラテジーの構成概念の検討,日本 看護科学学会, 33 巻3号,p82−90,2013 〔学会発表〕(計 4 件、予定 2 件含む) 1)宮﨑紀枝,河原加代子 熟練保健師によ る事業化の成功事例の分析,第 71 回日本公 衆衛生学会 2)宮﨑紀枝,河原加代子:保健師による事 業化のストラテジーの構成概念に影響する 要因,第 73 回日本公衆衛生学会 3)宮﨑紀枝,依田明子:実践者と協働した 保健活動の情報発信サイトの作成−実践知の 体系化に向けて第1報−、第 74 回に本公衆衛 生学会予定 4)依田明子,宮﨑紀枝:経営学の知見を保 健活動に活かす学習会の報告−実践知の体系 化に向けて第 2 報−、第 74 回に本公衆衛生学 会予定 〔その他〕 ホームページ等 1)保健事業・保健活動のレシピ Web-site:http:www.phn-recipe.net/ 2)コンテンツ ① 宮﨑紀枝 http:www.phn-recipe.net/ad02/ ② 依田明子 http:www.phn-recipe.net/ad04/ ③ 小野澤清子 http:www.phn-recipe.net/ad01/ ④ 清水由佳 http:www.phn-recipe.net/ad03/, http:www.phn-recipe.net/ad05/, http:www.phn-recipe.net/ad06/ 6.研究組織 (1)研究代表者 宮﨑紀枝(MIYAZAKI TOSHIE) 佐久大学・看護学部・准教授 研究者番号:50349172 (2) 連携研究者 依田明子(YODA AKIKO) 佐久大学・看護学部・助教 研究者番号:90588188 小野澤清子(ONOSAWA KIYOKO) 佐久大学・看護学部・助教 研究者番号:70588186 征矢野あや子(SOYANO AYAKO) 佐久大学・看護学部・教授 研究者番号:20281256 (3)研究協力者 栗岡住子(KURIOKA SUMIKO) 大阪市立大学・経営学・教授 研究番号:20736561 北野和子(佐久保健福祉事務所) 佐々木伸一(佐久穂町役場) 宮島 綾 (上田市保健師) 清水由佳(YUKA 開業保健師)

参照

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