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カナダ極北地域における先住民教育についての文化人類学的研究 : カナダ北西準州ペリーベイ村の学校教育の事例を中心に

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Academic year: 2021

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(1)Title. カナダ極北地域における先住民教育についての文化人類学的研究 : カナ ダ北西準州ペリーベイ村の学校教育の事例を中心に. Author(s). 岸上, 伸啓. Citation. 僻地教育研究, 48: 25-39. Issue Date. 1994-03. URL. http://s-ir.sap.hokkyodai.ac.jp/dspace/handle/123456789/1476. Rights. 本文ファイルはNIIから提供されたものである. Hokkaido University of Education.

(2) Nn48.. 1994.3. カナダ極北地域における先住民教育についての 文化人類学的研究 −カナダ北西準州ペリーベイ村の学校教育の事例を中心に− 岸 上 伸 啓(北海道教育大学函館校). Cultural Anthropological Study on the Native Education intheArcticReglOnOfCanada ∼ACaseStudyofSchooIEducationinPe11yBay OftheNorthwestTerritories,Canada−. Nobuhiro KISHIGAMI. プラドール半島などの寒冷ツンドラ地域で生活を営. 1.はじめに. んでいる。彼らの人口総数は,1991年の時点で3万. 一般に,教育とは文化を伝達する過程であるとと. 6千あまりである(注1)。彼らは,現在,イヌイッ. もに,その文化を強化していく過程である(鈴木,. トの文化や言語の保全と継承,民族としてのアイデ. 1982:88)。文化人類学では,日常生活における教. ンティティの維持の問題以外に,めまぐるしく変動. 育(informaleducation)の過程に注目して文化. する現代のカナダ社会にどのように適応していくか. 化や社会化の研究が進められてきた。しかし世界的. という現実的な問題と直面している。なお,現代の. な工業化や都市化の状況のなかで複数の民族が同一. カナダ・イヌイットの文化化や学校教育について. の地域に住んだり,接触することが多くなり,一つ の社会内での価値観の多様化やその共存が問題とさ. は,プリッグス(Briggs,1991)やファローら (Farrow and Wilman,1987)によって研究が. れるようになり,制度化された学校教育の果たす役. なされてきている。. 割などが文化人類学者の関心を集めるようになっ. 本稿では,カナダ国北西準州の学校教育のシステ. た。このような背景のもと米国の人類学者スピンド. ムをイヌイットの村であるペリーベイ(PellyBay). ラーらほ教育についてのシンポジュウムを開催し,. の学校教育を事例に使って紹介するとともに,急激. 1950年代より教育人類学(educationalanthro−. な社会変化をとげている社会における学校教育の役. pology)という一分野を開拓した。. 割を検討したい。. 教育人類学には,基礎科学としての側面と応用科 学としての側面がある(江淵,1971:161−2)が,. 2.憫生地の概況と研究方法. 最近の北米では少数民族の教育の問題に人類学者が 深くかかわるようになり,実践応用科学としての教. ペリーベイは,カナダ北西準州にあるイヌイット. 育人類学が注目されるようになってきた(江淵,. の村である。その位置は,北緯68度32分西経89度49. 1987:199−200)。. 分にあり,人口はイヌイットとヨーロッパ系カナダ. 人とを合計すれば1992年9月の時点で430名余りで. カナダ・イヌイットは,カナダの極北地域にすむ. ある(注2)。. 狩猟民族である。彼らは,近代国家カナダの中に住 む先住少数民族の一つであり,北西準州,ユーコン. ペリーベイ村に住む人々やその祖先は,ネッリッ. 準州,ケベック州北部やニューファンドランド州ラ. ク・イヌイット(NetsilikInuit)として極北人類 −25一.

(3) 岸上 伸啓. 学の上では有名で,ラスムッセン(1931)やバリク. の家,イヌゾリ,石ランプなどから成る海氷適応型. シ(1964,1970)らによって民族学的研究が行なわ. の生活様式であった。また,斉一的だったチューレ. れた。1990年代に入ってからは,スチュアート(例. 文化ほ,地域的多様性を持っ文化へと変化していっ. えば1990,1991,1992a,b,1993)らが民族・考. た。. 古学的な研究を精力的に進めている。. 16,17世紀のカナダ・イヌイットは,地域的に幾. 現在のペリーベイ村には,義務教育用の学校のほ. つかのグループに分かれており,各グループは,相. かに準州政府の出先機関をもつ村役場,生協,看護. 対的ではあるが一つの自立した社会を形成していた. 所,FM村内放送局,給油所,発電所や飛行場があ. と考えられる。このグループを越えた交易や交渉も. る。この村での人々の中心的な生業活動は,狩猟・. なかったわけではないが,婚姻や生業活動ははとん. 漁携であるが,40名余りの者が村内で定職につき現. とその中でなされていたといえる(Damas,1969:. 金収入を得ている。固定収入が無い人は,セイウチ. 129)。. の牙の彫刻品を作ったり,生協などでのパートタイ. カナダの東部極北地域におけるラブラドール半島. ムの仕事についたり,準州政府や連邦政府の生活補. のイヌイットは,16世紀頃よりヨーロッパから釆た. 助金,養老年金や家族扶養手当によって生活を営ん. 漁師と頻繁に接触し始めた。その後,北西準州のイ. でいる。住民の多くは,伝統的な生業活動や母語で. ヌイットもヨーロッパからやってきた捕鯨者,毛皮. あるイヌイット語(Inuktitut)を保持したいと願っ. 商人,宣教師そして第二次世界大戦後はカナダ政府. てはいるが,ビデオ,テレビやラジオ放送などの外. の役人や教師と接触をしてきた。この過程で,結核,. 的要因により,子供たちはイヌイット語よりも英語. 天然痘,インフルエンザや梅毒など伝染病がカナダ. を話すようになってきている。. の極北地域に持ち込まれ,イヌイットの人口が急減. 今回の調査の結果では,筆者は,ペリーベイ村の. したうえに「伝統的な」経済システムが崩壊した。. 社会構造や食物の分配を調査するとともに,そこに. さらにキリスト教化や毛皮商人への経済的な依存が. ある義務教育を実施するための学校(クガージュク. おこった。第二次世界大戦後は,カナダ政府が,軍. 校KugaardjukSchool)において授業の参与観察. 事問題,領土問題や非再生天然資源の開発などのた. や教育資料の情報収集を行なった。また準州都イエ. めに極北地方へ積極的に介入しはじめ,1960年代を. ローナイフの教育省では教育関係資料の収集を行. 一つの境として定住化や学校教育の普及を推進し,. なった。ペリーベイ村での現地調査は,1992年8月. いっそう強力な同化政策をイヌイットに対し実施し. 21日から9月23日にかけて行ない,イエローナイフ での調査は,同年の8月22日,9月24,25日に行なっ. てきた。ペイン(Paine,1977)は,この政府の政 策を福祉植民化主義(Welfarecolonialism)と呼. た。. んでいる。イヌイットがヨーロッパと接触し始めて からの歴史は,政治経済的な自立型社会から従属型 社会への変化として理解することもできると思う. 3.カナダ北西準州のイヌイット社会と学校教. (岸上,1990)。. 育の歴史. 1960年代に入り,カナダ政府とカナダ・イヌイッ. カナダ・イヌイットの直接の祖先は,文化的には. トの関係に変化がみられ始めた。この背景には,カ. チエーレ文化の担い手であったと言われている。こ. ナダにおける仏系カナダ人と英系カナダ人との政治. のチエーレ文化とは,10世紀頃以降にアラスカから. 的対立の解消とその共存の問題があった。カナダ政. グリーンランドにかけて急速に広がった捕鯨を生業. 府は,国内での英仏の対立を乗越えるために多文化. の基盤とした非常に斉一的な文化であった。カナダ. 主義(multiculturalism)を国家目標として掲げ. の極北地方では,13世紀ころから寒冷化が進み,17. ざるをえなかった。この政治方針の変化は,カナダ. 世紀には現在のような気候環境に変化した。この環. の少数民族に対する同化ないし国民化政策から多文. 境の変化に,人々は捕鯨狩猟民からアザラシのよう. 化主義への変化をもたらした。. な小型の海棲哺乳動物をとる狩猟民へと変貌するこ. このような政治状況を背景にして,1970年代に入. とによって対処した。この変化の結果できあがった. り,カナダ・イヌイットは土地権など彼らの先住民. 文化が,海氷上でのアザラシ猟とその狩猟技術,雪. 族としての固有の権利についてカナダ政府と政治的 ー26−.

(4) Na48.. カナダ極北地域における先住民教育についての文化人類学的研究. 交渉を開始した。その結果,北西準州のイヌイット. 1994.3. 4.カナダ北西準州の教育理念と教育組織. は1992年にやっとヌナブト協定(NunavutAgree− ment)(注3)と呼ばれる政治的合意協定を住民投. (お 教育の現状. 票にかけ,承認するに至ったのである。これにより. 1991年の時点で,北西準州にある60の市町村には. 1999年にイヌイットの準州政府を成立させようとイ. 78(うち高校が9)の学校がある。準州の人口の大. ヌイットら関係者が準備を始めている。. 半は,イヌイットやインディアンらの先住民である。. ところで北西準州における学校教育の歴史とはど. そして彼らが住む市町村には義務教育用の公立学校. のようなものであろうか。この準州における学校教. が設置されている。. 育の歴史は,大別すれば3つの時期,ミッション時. 北西準州では,原則として先住民族の言語(母語). 代(1860−1950),連邦政府時代(1944−1970)お よび準州時代(1970−)に分けることができる. で教育を受ける権利が認められているが,先住民の 教師の数が少ないことやカナダ国内で使用されてい. (Macpherson,1991:15)。. る中心的な言語が英語やフランス語であるという現. ミッション時代とは,キリスト教の各派の宣教師. 実から英語習得が教育の中心となっている。しかし,. たちがイヌイットの教育にあたった時代である。教. 先住民の学生の文化的背景が軽んじられているわけ. 育の目的は,イヌイットのキリスト教化を支柱とし. ではなく,授業時間数は少ないにしても正規の捜業. た文明化であった。. のなかに先住民族の「伝統」文化や言語の授業も組. この時代には,イエローナイフやイハルイット. み込まれている。また,精神生活の重要性が考慮さ. (Iqaluit)など比較的大きな町には寄宿学校があ. れ,宗教の授業も実施されていることも一つの特徴. り,そこにイヌイットの子弟が集められ,教育が実. であろう。. 施された。 連邦政府時代とは,第二次世界大戦終結の前後か. ② 北西準州の教育理念と目棟. ら準州政府が創設されるまでの期間である。すなわ. 北西準州には,イヌイット,インディアン諸民族,. ち1944年ころから1970年ころまでの期間である。第. メティスやヨーロッパ系カナダ人など複数の民族が. 二次世界大戦直後にカナダ政府は,カナダ・イヌ. 居住している(注4)。従って,異なる文化や言語. イット社会に制度化された学校教育を導入し,英語. が準州内に共存していることになるため,準州の学. の習得を中心とした国民化教育ないし同化教育が実. 校教育は,言語や文化に特別な配慮が払われながら. 施された。1960年代には,ほぼすべてのイヌイット. 行なわれている。英語とフランス語とならびイヌ. の村落に学校が建設された。. イット語やデネ民族の5つの言語(チペワヤン語,. 準州時代とは,1970年以降,カナダ政府に代って. ドグリプ語,グチン語,スレービ一語とクリ一語). 準州政府が行政や教育を統轄している時期である。. は公用語とされている。さらにカリキュラムはあら. この時期には,英語習得を中心としながらも,イヌ. ゆる文化的背景を持つ学生の必要を満たすようにつ. イットやインディアンなど先住民族の文化的背景を. くられており,それは学生がカナダの他の地域に移. 重んじる教育が実施されるようになった。1999年に. 動することも可能にする(NWTn.d.)。. 成立が予定されているヌナプト政府が成立すれば,. 準州の教育の目標は,21世紀の大人として役割を. 一層,イヌイットの主体性に基づく教育が実施され. 果たしていくのに必要な事柄を習得させることであ. ることが予想される。. る(NWT,1991:22)。また,すべての人類が共. 現在のカナダ・イヌイットは,制限はあるものの. 有する要求をみたすようにと目標が5つ立てられて. 自治権を獲得し,近代国家カナダの中に住む狩猟民. いる。その5つの目標とは,身体的ゴール,情緒的. 社会として新たな一歩を歩み始めているのである。. ゴール,社会的ゴール,知的ゴールおよび精神的ゴー. 学校教育の内容や実施のやり方も彼らの手に委ねら. ルである(NWT,1991:22一−23)。. れる時代になりつつあるのである。. 身体的ゴールと情緒的ゴールは,心身ともに健全 に子供が成長するように教育することである。社会 的ゴールは,区別なく他者と日常生活を営み,社会 的権利や義務を尊重し,行使するようになるように ー27 鵬.

(5) 岸上 伸啓. (1が英語でない場合には,英語。1が英語の. 学生を教育することである。知的ゴールは,知識, 考え方や問題解決の方法を教え,日常生活の中で適. 場合にはその他の言語). 用でき,他者とコミュニケーションができるように. 3.算数. 18%(約180時間). 教育を行なうことである。精神的ゴールとは,信仰,. 4.理科. 9%(約90時間). 価値や世界観についていろいろ理解させるように教. 5.社会. 9%(約90時間). 育を実施することである(NWT,1991:22−23)。. 6.体育. 9%(約90時間). 7.技術,ビジネス教育,家庭科, コンピュータなど. ③ 北西準州における教育組織. 8.保健. 北西準州の教育組織は,準州政府に教育省があり,. そのもとに10の教育学区(schooljurisdictions). 6%(約60時間). 6%(約60時間). 9.芸術(美術,演劇,音楽)6%(約60時間). が設置されている。学区ごとに学区教育委員会. 93%(約930時間). (divisionalboard ofeducation)が形成されて いる。一つの教育学区は,イエローナイフ市の学区. 残りの7%(約70時間)は,伝統文化や宗教など. を除けば通常4つ以上の村から構成されている。一. の授業時間に利用することができる。このガイドラ. つの教育学区を構成する各村には義務教育用の学校. インは,あくまでも大枠であり,各学校で運用され. とともに村の教育委員会(LocalEducation Au−. る場合には多少なりとも工夫を行なってもよいこと が認められている。これら9科目の教科書や指導要. thority)が設置されている。. 1.北西準州政府の教育省. 領は,北西準州の教育省で作成され,各学区にある 学校へと配布されている。. 北西準州政府教育省の中の学校関係の組織は,教 育大臣,次官,次官補のもとに学生支援部,先住民. 2.学区教育委員会. 言語およびバイリンゲル教育部,カリキュラムサー. 北西準州には,パフイン学区やドグリプ学区など. ビス部と運用・訓練・開発部など4つの部局から構. 10の学区があり,それぞれに学区教育委員会がある。. 成されている。この教育省は,全教科についてのカ. この教育委員会は,学区を構成する各村の教育委員. リキュラムを作成し,準州内にある10の学区教育委. 会を代表する人から構成されており,年に数回,委. 員会に提供したり,教育関係の資金を学区教育委員. 員会が開催される。予算は,準州の教育省から配分. 会に支出する。この資金は,教育プログラムを実施. を受けるが,学区教育委員会はそれぞれ独立した単. したり,教職員の給料を支払うために使用される。. 位である。教育省が決めたカリキュラムをもとに,. 教育省では,義務教育のためのガイドラインを. 各学区の状況に応じて教育プログラムをつくる。主. 作っている。例えば,授業時間や教えるべき教科教. に,この委員会の役割は,学区内での予算の配分や. 育科目やそれらの時間配分の枠などを教育省が決定. 教員採用やどの村にその教員を派遣するかを決定す. している。現在の取り決めによると,グレイド1か. ることである。. ら6(小学校1学年から6学年に相当)までは,1 日最低5時間,最高5.5時間,グレイド7から9(中 学校1年生から3年生に相当)までは,1日最低5. 在する。これらの市町村の人口規模は,はとんどが. 時間15分,最高5時間45分授業を受けることになっ. 500名以下であるが,イエローナイフなど2000名以. ている。1年間を通しての9科目の科目名と時間の. 上の市や町も4つ存在する。すべての市町村には,. 割り振りは次の通りである。. 少なくとも義務教育のための小中学校が一つは設置. 3.各村の教育委員会と学校 北西準州には,ペリーベイ村など60の市町村が存. されている。. 科 目. 各市町村には,教育委員会がある。それは住民の. 割合(総計時間). 21%(約210時間). 中から選挙で選ばれた者から構成され,学校の教育. (英語,仏語,チペワヤン語,ドグリプ語,グ. 方針をはじめ管理・運営に責任を持つ。この委員会. 1.授業に使う言語. イチン語,スレービ一語,イヌイット語クリ一語. は教育長と数名の委員から構成され,学校長と緊密 な連絡をとりながら学校教育を管理する。この教育. のうちから一つ) 2.別の言語. 9%(約90時間). 委員会は,1977年より準州内で制度化はされている −28岬.

(6) カナダ極北地域における先住民教育についての文化人類学的研究. 恥48.. が,その内容は市町村ごとに異なると言ってよい。. 多数大学へ進学することやイヌイット語教育を充実. 各学校の人員は,校長以下,数名のヨーロッパ系. させることに重点を置いているとのことであった。. 1994.3. カナダ人の正教員がいるほか,イヌイットの教務補 助員(classroomassistant)が数名,学生の悩み. ② ベリーペイ村の教育嬰■磨と学校の組ヰ. を聞く力ウンセラーが1名,学校事務員や用務点が. ペリーベイ村の教育委員会は,9名の委員から構. 2ないし3名などから構成されている。. 成されている。8名は村民の選挙によって選出され, 残りの1名は村会議員の中から選ばれる。委員長は 9名の委員の中から互選によって決定される。この. 5.カナダ北西準州キティクミュート. 委員会には,学校の教育内容と組織のすべてについ. (Kitikmeot)学区ペリーペイ村の学校数青. て指導したり,意見を述べたりする権限と義務があ. の現状. る。ペリーベイ村には,幼稚園からグレイド9まで. ① キティクミュート学区ベリーペイ村のクガー. の義務教育用のクガージュック校という校名の学校 がある。ここには,教員のリーダーである校長1名. ジュク校. キティクミュート学区は,カナダ・イヌイットの. と正教員5名がいる。彼らは6名すべてがヨーロッ. 居住する地域の一つである。この学区は,タロヨア. パ系カナダ人である。さらに,パートタイムを含め. ク(Taloyoak),ケンブI)ジベイ(Cambridg・e. 3名のイヌイットの教務補助員がいる。この3名は. Bey),コッパーマイン(Coppermine),ジョアヘ ブン(GjoaHaven),ホルマン(Holman),およ びペリーベイ(PellyBay)の6つの村から構成さ. 学生にイヌイット語を教えたり,正教貞の学生指導. れている。この学区の教育委員会の本部は,コッパー. 校と各家庭をつなぐ役目を果たし,困っている学生. マインにおかれている。. の相談にのるイヌイットのカウンセラーが1名い. の手助けを行なう。これ以外に,学校事務を行なう イヌイットの秘曹や用務員が1名ずついる。また学. この学区の教育委員会は,各村を代表する6名と. る。. 議長1名の計7名から構成されている。またコッ. ペリーベイ村には,1962年噴より学校はあったが,. パーマインの本部には,事務長,秘書,事務員,イ. 現在の校舎は,1987年に新築されており,新しい近. ヌイット語の専門家など12名が仕事に従事してい. 代的な施設である。テープレコーダー,スライド映. る。. 写機,ラジオ,電話機,コピー機,小型コンピュー ター,テレビ,OHP,やファックス機などが備え. キティクミュート教育委員会では,理想的な教室 づくりと言語教育を中心課題とし,学生の生活の質. 付けられている。この学校には,教育用に小型コン. 的向上が可能となるような教育の実施を目ざしてい. ピューターが各教室に1,2台設置されている以外. る(KitikmeotBoarkofEducation,1990:3−. に,8台の小型コンピューターや2台のプリンター. 4)。具体的にはつぎのような目標を設定している。. が設置されているコンピューター室があることは特. ①両親が学生や教育を積極的に支持するように奨励. 筆に値する。. する。②学生の出席率が90%以上となり時間厳守を するようになる。③1年で1学級進級できるように. ③ べリーベイ村クガージュック校での教書. 学生の必要に応じた効果的な教育を実施する。④準. ペリーベイ村のクガージェック校は,幼稚園から. 州の提供するカリキュラムに基づき英語教育のプロ. グレード9までの義務教育を行なう学校である。こ. グラムをつくり,学校に提供する。⑤学生のための. の学校では,学生が主体的に学習を行なう過程を大. 相談や援護サービスを行なう。⑥村の協力を得て,. 切にする教育を目棟としており,英語の習得をキイ. 準州の提供するカリキュラムに基づきイヌイット語. と考えている。. のプログラムをつくり,学校に提供する。⑦伝統文. 1.学期. 化や生業技術などについての教育プログラムを提供. 年間の教育スケジュールは,学区教育委員会と各. する。⑧高等教育用プログラムを提供する。⑨教育. 村の教育委員会と協議の末,決定される。1992岬19. の質的向上のため教員の訓練の機会を与える。また,. 93年皮は,1992年の8月4日に始業し,1993年6月. この委員会の委員長によると,将来,学区の学生が. 30日に終業することになっている。土曜日・日曜日 −29−.

(7) 岸上 伸啓. とカナダ政府や北西準州政府が認定した祝祭日以外. 3.授業の時間割り 北西準州の教育省のレベルでは,すでに指摘した. にも,クリスマス休み,春休みや夏休みがある。 2.学級とクラス編成. ように英語もしくは仏語,先住民族の言語,算数,. ペリーベイ村のクガージェック校では,幼稚園と. 体育,技術,家庭科,理科,社会や美術が小中学校 で教えられることに決められている。. グレード1∼9の小中学校教育が受けられる。通常, 各グレードと学年は対応するが,この学校では,教. 学校は,月曜日から金曜日までの週5日制であり,. 員数,児童数と教室数との関係から,グレード1か. 午後9時から午後4時までの問に授業が行なわれて. ら9の9学年を5つのグループへと編成し,教育を. いる。学校の1日は,9:00∼9:30朝礼,ホーム. 実施している。この混合クラスのことをエリアとこ. ルームおよび黙読の時間からはじまる。1時限目は. の学校では呼び,各クラスをエリア1やエリア2と. 9:30∼10:30,2時限目は10:45∼12:00,3時 限目は13:30∼14:45であり,4時限目は15:00∼. いうふうに呼んでいる。 1992年の各エリアの平均年齢と学生数は,次のと. 16:00である。. エリア1とエリア4の授業の時間割りを紹介すれ. おりである。. エリア1 平均年齢 6才 25名 エリア2 平均年齢 9才(7∼10才)21名 エリア3 平均年齢10.5才(9∼12才)15名 エリア4 平均年齢12.5才(11∼15才)21名. 行はかなり柔軟であり,各教員の予定によって変更. エリア5 平均年齢14.5才(12∼16才)22名. されることもある。休み時間には,全員の生徒が教. ば次のようになる。 週間の時間割りは,各エリアの担任の教員が校長 と相談のもとで設定するが,1日の実際の授業の進. 各エリアは,混合クラスであり,同じクラスであっ. 室の外に出される。エリア1や2の下級生は天気が. ても学生の学習の進度や年齢にも多少の差異が見ら. 良ければ校庭で遊び,上級生は歩いて5分ほどで歩. れる。あるエリアのクラスでは,兄弟姉妹が一緒に. いていける自宅に帰ったりする。昼休みは,全員が. 勉強している場合がある。. 自宅に帰り,昼食を取ることになっている。教師は, 朝のホームルームの時間と3時限目の時に学生の出. 月曜日 英 誌. P亡】. イヌイット語. 火曜日 英 宝玉. P亡コ. イヌイット語. 水曜日. 木曜日. 金曜日. 英 語. 英 語. 英 壬五. イヌイット語. イヌイット語. イヌイット語. Ⅱ. 理 科. 社 会. 理 科. 社 会. 体 育. Ⅲ. 算 数. 算 数. 算 数. 算 数. 算 数. Ⅳ. 保 健. 美 術. 体 育. 宗. 教. ロ【コ. コンピュータ (文書作成). 1992.Pe11yBay,NWT,Canada 図表1 エー」ア4の時間割り. 月曜日 7 ̄−マ. 火曜日. 体. 育. (理・社). 水曜日 7嶋−マ. 木曜日. 体. 育. (理・社). 英 語. 英 語. イヌイット語. イヌイット語. 算 数. 算 数 保 健. 英 壬五. P仁I. 金曜日 フ ̄−マ. (理・社). 英 語. 英 誌. P【コ. Ⅱ. Ⅲ ⅠⅤ. センター. イヌイット語. イヌイット語. イヌイット語. 算 数. 算 数. 算 数. 図書館. 宗. (自由課題). 教. センター (自由課題). 1992.PellyBay,NWT,Canada 図表2 エリア1の時間割り − 30−.

(8) カナダ極北地域における先住民教育についての文化人類学的研究. 恥48.. 席状況を記録につけている。. 1994.3. 10:20 男女別々に一列に整列させ,パーカを著さ. 4.授業の様子とその特徴. せ校庭に出させる準備をする。. ここでは,筆者が観察を行なった事例(エリア1. 10:30 一時時限の終了. の授業)をまず紹介する。その次に,実施されてい. 10:30∼10:45 休み時間(学校の外で遊ぶ). る授業の特徴を指摘したい。紙数の関係で,授業内. 二時間目の開始. 容の描写が十分にできていないことをお断りしてお. 10:45 校庭の入口のところで,エリア1の学生が. きたい。. 男女別々に一列に整列し,教室に訴導され る。. 1992年8月31日(月曜日)エリア1の一日. 授業を行なう。. 8:40 学校のサイレンがなる。. 11:55 授業終了。同様にして退出。. 12:00∼1:30 昼休み(学生は,昼食を取りに. (9:00∼9:30 ホームルームの時間) 9:00 ブザーがなり,学生が校舎の申に入る。校. 自宅に帰る。校舎の申に入ることば禁止さ. 舎の入口のところでエリアごとにグループ. れている。). をつくる。各グループは男女一列に並び先. 三時限目. 生の指示に従って,エリアごとに教室に. 1:30 学生が集ってくる。午前中と同様なやり方. 入って行く。. で,教室に入る。. 9:05 校内放送にて朝礼. 1:4012名が先生のあとについて歌を歌う。出欠. イヌイット語のカナダ国歌を流す。. をとる。遅刻者が入ってくる。. イヌイット語でのお祈り(キリスト教). 7つのグループに分れる。先生が各グルー. イヌイット語で事務員がアナウンス. プの間を回って,指導していく. 校長先生の話しが英語で放送される(次に,. *算数一数をかぞえる。*色板を組み合わ. それは事務員の人によってイヌイット語へ. せて図形をつくる。*つみき*ビーズを. と訳されて放送される。). 使って数を確認*棒や数字のコマを使う。. 9:20以降も遅刻した学生が続々と学校に入ってく. *コンピュータ. る。. 2:35 教室を片付け始める。. 一時限目の開始. 2:40 正教員の前に生徒を全点すわらせ,その先. 9:30 正教員とイヌイットの教務補助貞の2名が. 生が絵本を読む。 2:45 男女別々に教室の所に整列させ,それから. 担当. 外に出させる。. 25名申16名が出席. 正教員が英語の歌を教え,皆に歌わす。次. 四時限目. に,全員で同じ歌をイヌイット語で歌う。. 3:00 授業再開のベル。先生が学生を誘導して教. グループを二つに分け,正教員が7名に英. 室に入る。. 3:10 正教員は,20名全員に絵本を読んで聞かせ. 語を,教務補助員が9名にイヌイット語を 教える。. る。アルファベット文字を利用したビンゴ. 正教員は,生徒ひとりひりとに質問し,終. ゲームを2度行なう。やかましい時には,. わった学生は,ゲームやオモチャなどで遊. 教師は生徒をしかり,教師に従わない生徒. ぶ。. からはゲーム用のカードを取り上げた。 3:45 生徒たちはイスを机の上に上げ始める。そ. 正教員は,全体というよりも個々の生徒を 相手にしている。. れから全員で歌をうたう。それから絵本を. 10:10 正教員が片付けを命ずる。こどもたちはそ. 読む。 4:00 生徒を教室に入口のところに整列させ,廊. の先生に従って片付ける。. 下にならばせて,パーカを着せる。. 10:13 教務補助員の前に全員が集合。イヌイット. さよならを言って生徒全員が帰宅する。. 語でまず話してから,それを全員がイヌ. 4:05 生徒全員が家に帰る。. イット語で歌う。 w31−.

(9) 岸上 伸啓. 以上が,エリア1の授業の一事例である。筆者は,. 老人たちによって学校教育の枠の中で行なわれてい. エリア1からエリア5の授業を各2日づっ集中的な. る。年度によっては,村に住む工芸家を講師として. 観察を行なったが,その結果,次のような点に気づ. 学校に招き,セイウチの牙や滑石を用いた彫刻の実. いた。. 習授業を担当してもらうこともある。このように学. 第一に,授業の開始と終了のたびに学生を整列さ. 校制度を利用しながらカナダ・イヌイットは,自分. せ出入重させており,時間を守ることや秩序を授業. たちの言語や文化を保持,存続させようと努力して. 時間で教えているように見受けられる。カナダ・イ. いる。. ヌイットは,欧米の時間の観念基準からすると,時. 第五に,学生の授業中の態度は,日本の小中学生. 間に大変にルーズであるといえる。これは極北とい. の授業を受ける態度とは非常に異なる。授業中,特. う環境のもとで生活をしてきたという歴史的所産で. に教員が学生に本を読んで聞かせている時や自習の. あるが(岸上,1993a:44),約束時間を守らなかっ. 時間には,多数のイヌイットの学生は寝転びながら. たり,天気が良ければ仕事場に行かず狩猟に出ると. 話しを聞いたり,自習したりしている。また,エリ. いう態度では,24時間や1週間を単位として動く現. ア4や5の学生の中には授業中にガムを噛んだり,. 代カナダのマジョリティー社会に適応することはで. 糠コーラを飲んだりしている者も多数いる。教員は,. きない。学校教育の一つの眼目は,イヌイットの生. 学生が授業の妨げになったり,他人に迷惑をかけな. 徒に欧米式の時間やそれに付随する態度や考えを教. い限りは,彼らの態度を注意したり,しかることは. えこむことであるように思われる。. ない。. 第二に,クラス編成は,1年を単位とするグレイ. 第六は,北西準州全体にあてはまることであるが,. ド制ではなく,複数のグレイドが混合するエリア制. 精神的な成長を促進する教育として,宗教の時間が. を採用しているため,教育が一人の教員対一つの集. 実施されている。本来,カナダ・イヌイットの宗教. 団(−クラス)ではなく,一人の教員対個々の学生. の基盤は,シャーマニズムとアニミズムであったが,. の形式をとっている。同一のクラス内でも各教科ご. 彼らはこの百年あまりの間に,少なくとも表面上は. とに理解度にかなりのばらつきがあり,/トグループ. キリスト教へと改宗した(岸上,1992a)。現在で. ごとないし個人ごとに各自に合った勉強を行なって. は,所属する宗派は異なることがあるにせよ,ほぼ. おり,教師も個別に教育指導を行なっている。この. 全員のイヌイットはキリスト教徒である。ペリーベ. 点は,日本の小中学校の授業を知っている者にとっ. イ村では,9割以上のイヌイットはカトリック派に. ては,集軌こ重点を置く教育と個人に重点を置く教. 属しており,キリスト教が彼らの生活の精神的基盤. 育の差のように思われる。. の一つであるといっても過言ではない。そこでペ. 第三は,算数,社会や理科などの授業に使用され. リーベイ村の学校では,宗教の時間にキリスト教が. ている言語は,イヌイットにとっては母語ではない. 村のイヌイットの準神父によって教えられている。. 英語である。この学校は,北西準州のイヌイットが. 第七は,伝統文化を尊重した出欠の取り方である。. 住む村落にあり,イヌイット語で教育を受ける権利. カナダ・イヌイットの子供たちは,親や親族の者に. が保障されているにもかかわらず,現実的には英語. 従って,狩猟や漁携に出かけることがある。そのよ. が教育用言語として使用されている。これには,主. うな場合,その子の親が学校に対し,子供が誰かに. に2つの理由があると考えられる。一つは,英語を. ついて狩猟や漁携に付いて行ったことを申し出る. 習得し,使いこなすことが現代のカナダ社会で生き. と,その学生は公欠扱いとなり,学校に出席してい. ていくうえで非常に重要であるという現実であり,. るとみなされる。この処置は,現在の狩猟民イヌイッ. もう一つは,イヌイット語を話せる正教員やイヌ. トに対しては,文化的に妥当なものであるといえよ. イット語で書かれた教材や教科書に非常に少ないと. う。. いう現実である。 第四は,現代社会への適応を促進させるために積. 5.べリーベイ村の学校教育の問題点. 極的な英語教育や初歩的なコンピューター教育など が導入されている一方で,イヌイット語や伝統文化. ペリーベイ村では,父兄も子供の将来のためには. についての授業が,イヌイットの教務補助員や村の. 教育が不可欠であることを十分に認識しており,極 −32−.

(10) N848.. カナダ極北地域における先住民教育についての文化人類学的研究. 力,子供を学校に行かせるように努力している。し. 良い俄に就けないのが現状である。また,中学校や. かし生徒の出席率は低いうえに,出席者の遅刻する. 高校程度の教育を受けたとしても,人種・民族差別. 数が多いことが大きな問題である。これらの問題は,. などにより極北地域以外でも仕事を見つけ就職する. 年々,改善されてきたことは事実であるが,この村. ことは,ほとんど不可能に近い。このような現状は,. での1991−1992年度の幼稚園児からエリア5までの. 若者が教育を受けたいとする意欲を妨げる要因の一. 全生徒の年間出席率は85.4%である。これは約15%. つと言えよう。これは,青少年の向学心や進学意欲. の学生が常時,学校を特別な理由もなく休んでいる. を妨げる村内外の構造的な問題である。. ことを意味する。また出席者の中で,遅刻をせず時 間通りに来る学生の率は83.01%であり,出席者の. 5.検. うち約17%は遅刻をしてきていることになる。ペ. 討. リーベイ村の学校では,毎月1回,出席率と成績の. 本稿では,カナダ国北西準州ペリーベイ村の小中. 良い学生を全校生徒と父兄の前で表彰することにし. 学校教育のシステムを紹介してきた。ここでは,制. ており,井罰を設定して出席率を高めようとしてい. 度化された文化化である学校数育と,現代のカナダ. る。学生の出席率を向上させ,遅刻をなくすことは,. ・イヌイットが直面しているエスニック・アイデン. 村の学校関係者にとって大きな課題である。. ティティの保持の問題,文化や言語の保持の問題や. ペリーベイ村には,校長を含めて6名の正教旦が. 現代カナダ社会への適応の問題などとの関係につい. いるが,すべてヨーロッパ系カナダ人であり,イヌ. て検討を加えたい。そしてカナダ・イヌイットに対. イットの正教員はいない。イヌイット語を教えたり,. する学校教育のあり方について,彼らの将来との関. 正教旦の補助をするイヌイットの教務補助員が3名. 係から私見を述べてみたい。. いるにすぎない。この学校での教育の大半は,英語. まず,検討に入る前に現在実施されている小中学. を使用してなされ,イヌイット語やイヌイット文化. 校教育の特色を要約しておきたい。ペリーベイ村の. についての教育は,十分に行なわれているとは言い. 学校教育で見たように,北西準州の先住民の村落で. 難い。イヌイット語による教科書や教材を開発する. は,主に英語教育を中心として現代カナダのマジョ. とともに,イヌイットの正教員を養成することが課. リティー社会へ適応するための教育が実施されてお. 題の一つであるといえよう。. り,副次的なものとしてイヌイット語教育やイヌ. 学校で実施されている教育に関心を示さない学生. イットの文化教育が実施されているように見受けら. や授業内容についていけない学生が多いうえに,次. れる。しかし,筆者はこの現状はイヌイットが望ん. のエリアに進級することができなかったり,脱落す. でいるものというよりは,教員や教科書・教材など. る学生も多い。ペリーベイ村の中学校を卒業してイ. の制約などに起因することであると患う。別言すれ. エローナイフにある寄宿舎付き高等学校に進学して. ば,現在の学校教育のあり方や実施は,北西準州時. も,それを卒業できずに脱落してしまう学生がはと. 代の実質的な開始年である1970年以前のはっきりし. んどである。ちなみにキティクミュート学区全体の. た同化教育と比べれば,はるかに良くなってきたこ. 場合を見れば,1990/1991年度には,95名の学生が. とは事実ではある。しかし学校教育の現状はこのま. イエローナイフにあるその高等学校に進学したが,. まで良いとはイヌイットは決して考えてはいない。. 一学年が終了しないうちに40名が脱落してしまい,. ペリーベイ村のイヌイットの間でも,教育の在り方. それぞれの村に帰って行ったという。ペリーベイ村. に対しての意見は,英語習得などマジョリティー社. の場合,この高校を卒業した者もほとんどおらず,. 会に順応していくことを教育の第一の目的と考える. 大学を卒業した者は皆無である。将来,イヌイット. 者から,イヌイットの言語と「伝統」文化の教育を. が経済的に条件の良い職に就くことのできる可能性. 第一の目様にする者までおり,多様である。ペリー. を高めることが必要であるならば,学歴の低さは大. ベイ村のイヌイット自身も村の外から来た教育関係. きな問題であると言えよう。. 者もどのような教育が最も妥当なものであるかにつ. ペリーベイ村のような小規模な僻地村では,村内. いては見解の一致をみているとは言い難い。. にある定職の総数は40ほどにすぎず(岸上,1991:. ここでは,学校数育と現代社会への適応の問題,. 3),高校を卒業しても現金収入を得る上で条件の. エスニック・アイデンティティの問題や言語・文化 −33−. 1994.3.

(11) 岸上 伸啓. の保持の問題との関係について論じたい。. を開発するとともに,能力と学習意欲のある学生に. ① 現代カナダ社会への適応と学校数育. は大学まで公共の資金で進学できる制度をより整備. 教育とは,文化を次世代へ伝えるとともにそれを. し,確立すべきであると思う。. 強化することである。教育には大別すれば制度化さ ② エスニック・アイデンティティの保持と学校. れた学校教育と制度化されていない家族らによる日 常生活における教育(文化化)の2つがある。. 教育. 現在のカナダ・イヌイット社会では,主にマジョ. 人間は生きていく上で,常に何らかの視点から自. リティー社会で生き抜くために必要な基礎知識は学. 分の位置や立場を確認し,行動のための準拠集団を. 校で教えられ,日常生活にかかわる人間関係,狩猟. 同定し続けるという特質を持っている。特定の民族. ・漁携などのイヌイット文化にかかわる技術や知識. に帰属しているという意識は,エスニック・アイデ. は日常生活における文化化として家庭の内外で教え. ンティティと呼ばれ,人間が行動をする上での一つ. られている。. の枠組みを提供する。現在のカナダ・イヌイットは,. 文化人類学的知見によるとヨーロッパ系カナダ人. 政治・経済的に見れば,カナダ社会の下層部を形成. が主流をなす産業社会の文化的論理とイヌイット社. しており,マジョリティー社会から見れば極めて否. 会のような狩猟採集民社会の文化的論理との間には. 定的な社会的イメージと結びついていると言える。. 大きな差異が存在する。概略すれば,前者は社会自. カナダにいる他の民族集団と比較しても,文化的欲. 体が内部的に役割が分化,専門化したスペシャリス. 求不満やアルコール問題,青少年の自殺問題や最近. トの世界であるのに対し,後者は社会が内部的に役. の麻薬の問題など社会問題が急激に増加の傾向を示. 割の分化や専門化があまり進んでいないジェネラリ. している(Valleeet.al.1984:674)。この現象は,. ストの世界である。すなわち,極端に単純化すれば. カナダ・イヌイットのエスニック・アイデンティ. 前者では,医師,弁護士,農民,教師のように役割. ティの危機と相関関係にあるものであると言えよ. が多様化しているのに対し,後者では,原則的に成. う。. 人男性はすべてが狩猟者であり成人女性はすべて家. ところで,多民族国家カナダでは多文化主義を横. 庭内のことを取りし切る主婦であり,同じような役. 棒しており,イヌイットはカナダ国民でありながら. 割を担い,遂行しているということである。. イヌイット民族の一員として生きることが制度上保. ところで,現実問題として,カナダ・イヌイット. 障されている。かつてはイヌイット社会における学. 社会は,現代のカナダ国家社会の一部分として政治. 校教育の実施はイヌイットの同化や国民化を促進さ. ・経済的に組み込まれており,彼らはその中で生き. せるための手段の一つであったが,現在は民族の尊. 抜くことを余儀なくされている。かつてのカナダ・. 厳を教え,多民族の共存を可能にするための手段と. イヌイットは,主に自然環境と社会内部への適応を. なりつつある。学校教育は,カナダ・イヌイットの. すればよかったのだが,現在の彼らはそれらに加え. 現状がなぜそしてどのように歴史的に作り出されて. マジョリティー社会へ適応することが必要になって. きたかを正しくイヌイットに教えるとともに,多民. きている。また,北西準州のイヌイットは,ヌナブ. 族共存の重要性を教えることにより,イヌイットに. ト協定の締結によって制限付きではあるが自治権を. 民族の尊さを認識させるべきだと筆者は考える。こ. カナダ国内で獲得し,準州政府を設立し,自らの将. のためには,イヌイット民族やカナダ国の歴史や「文. 来を自らが自主的に計画を立てる時代に入ってい. 化」の相対性(注5)を学校教育で教えることが必. る。このような状況のもとでは,イヌイット自身が. 要であると患う。かかる教育は,カナダ・イヌイッ. カナダ政府や一般企業と交渉したり,準州政府を運. ト社会という部分社会とカナダ国という全体社会と. 営したり,医者,弁護士,技師,大工や教師など分. の関係をイヌイット自身が認識することを可能にす. 化した専門的な仕事に就くことが必要になってく. ると言えよう。. る。したがってイヌイットは現代カナダ社会に適応 して生きていくために必要な人材を育成することが. ⑨ イヌイット文化の保全・発展と学校教育. 重要な課題であると患う。筆者は,スペシャリスト. イヌイットの民族としてのアイデンティティの保. 型人材の育成のための教育システム,教科書や教材. 持と深くかかわるのは,イヌイットの言語や生活様 ー34−.

(12) N848.. カナダ極北地域における先住民教育についての文化人類学的研究. 式の維持である。これまでの学校教育,キリスト教. 日常生活での新技術や近代的な設備・機器の選択的. 化やヨーロッパ系カナダ人のイヌイットの文化に対. 利用は,現状を悪化させるというよりも,現在のよ. する態度は,イヌイット民族の文化を否定し,文明. うな政治・経済的状況では適応的で有利であるとい. 化した生活様式への必然的移行や英語の習得を強調. うことである。. することであった。この考えの根底には,文明化や. 1994.3. さらに,「伝統」文化は,無理をして残し継承す. 人類社会の必然的な進歩的進化という思想があっ. るべきものではなく,時代の要請や必要に応じて修. た。. 正したり変革し,新たに創り出していくべきもので. 一方,現状は,イヌイットが彼らの文化や言語を. ある(ホプズボウム他編,1g83)。いずれにせよ,. 保持したいと望み,カナダ社会もそれを容認する方. 文化や言語の保全や継承は,制度化された学校数育. 向へと社会風潮が変化してきている。イヌイット自. と日常生活における文化化の両方でなされるべきで. 身が,自らの言語や文化を保持し続けたいと自覚し. ある,と筆者は主張したい。クラウスが指摘してい. 始め,村や学区の教育委員会を中心にして,初等教. るように,言語,生活様式や伝統的な思想は,家庭. 育のレベルでイヌイット語や生業技術,伝統的な知. 内で,大人が子供たちに日常的な填で教えていかな. 識や音楽・舞踊などを積極的に教え始め出してい. ければ,それらの保全や継承は極めて困難になると. る。筆者は,この試みを高く評価するが,イヌイッ. 言えよう。そして学校で一日の大半を過ごすように. ト語を教えることができるイヌイットの教員が少な. なったイヌイットの子供たちにとっては,学校教育. いことや,イヌイット語のイヌイット文化について. を利用した言語や文化の教育は看過できないことで. の教材や教科書が十分でないことなど大きな問題点. あるといえよう。このためには,イヌイットの両親. が残っていると思う。. をはじめとする成人全員が学校や家庭内での教育に. 言語は文化の核であるとともに,民族の範囲を明. より深く関心を,持ち,自発的に関与していくこと. 示する象徴(ethnicsymbol)でもある。言語の保. が不可欠であろうと思う。. 持と民族としてのアイデンティティの持続との間に は正の相関関係が見られる(注6)。現在のアラスカ. ④ 社会変化と学校数育. やカナダの極北地域で民族語を保全し維持させよう. カナダ・イヌイット社会は,特に第二次世界大戦. とする努力は,エスニック・アイデンティティの保. 後,定住生活の開始をはじめ急激な変化を蒙ってき. 持や補強という動きと関連していると言えよう(宮. た。近代国家カナダの申で生活している狩猟民イヌ. 岡,1987)。イヌイット語の保全は,イヌイット語. イットにとっては,学校教育のあり方やその実施が,. を学校で教えるだけでは十分ではない。アラスカの. 彼らの将来を左右する重要な要因になると思う。. 先住民の言語を研究しているクラウスは少数民族語. 筆者は,学校教育は文化の継承の手段であるとと. の維持で重要なことは,学校でどれだけ教えられる. もに新たな文化を創造したり,吸収するための手段. かではなく,家庭内で日常的にどれだけ使用されて. であると思う。カナダ・イヌイットは,学校制度教. いるかが問題だと指摘している(クラウス,1992:. 育を主体的にかつ積極的に利用しながら,現代カナ. 360)。アラスカのユイットやイヌピアットの社会と. ダ社会に適応するための教育とイヌイットの「伝統」. 同様カナダのイヌイット社会でもテレビやラジオや. 文化を保持したり,創造的継承をするような教育を. ビデオが普及しているうえに,若者の間では日常生. 実施することが必要になると思う。本稿で紹介して. 活でも英語が使用されるようになってきている。こ. きたペリーベイ村の学校教育では,いろいろと問題. のような状況では,学校でイヌイット語を教えるだ. はあるもののそれら2つのことが実施されようとし. けでは十分ではなく,日常生活でも使用されること. ていることを示している。. が必要となる。かかる意味で,日常生活での文化化. 筆者は,カナダ・イヌイット社会の学校教育につ. の方が,イヌイット語の保持においては重要である. いてこれまでの検討に基づいて4つの必要性を提言. といえる。伝統的な生業技術や知識についても,イ. しておきたい。それらは,①教員,役人,医師,ビ. ヌイット語の保持と同様なことが指摘できる。ただ. ジネスマンや技師などスペシャリストを養成するた. し,ここで一つ指摘しておきたいことがある。それ. めの基礎教育の必要性,②教材,教科書の開発やイ. は,英語とイヌイット語の併用やイヌイット文化の. ヌイット人の教員の養成,③民族や国の歴史を教え 〟35−.

(13) 岸上 伸啓. るとともに,「文化」の相対性を教えること,(参イ. トが言語や「伝統」文化を保全し,継承したければ,. ヌイット語やイヌイット文化の保全や発展のために. マジョリティー社会の手段や制度を修得し,積極的. 学校教育を積極的に利用することを主張しておきた. に利用すべきだと筆者は主張したい。 いろいろな現実的な問題はあるが,現在のカナダ. い。ただし,ここで筆者が必要性を主張してきたこ とは,筆者の個人的な主張であり,選択肢の一つに. において多文化主義が横棒されていることやイヌ. 過ぎないと言うことを明言しておきたい(注7)。. イットがヌナプト協定の締結に成功したことなど,. いずれにせよ,1999年にヌナブット準州政府を自ら. 新しい教育制度を導入し,実施するための条件は. の手で運営することを予定しているカナダ・イヌ. 整ったと見ることができると思う。そして筆者は,. イットにとって必要なことは,教育関係者や文化人. カナダ・イヌイットの学校教育の将来のために,①. 類学者など有識者の意見を参考にしなから自らの将. スペシャリスト養成の教育の必要性,②イヌイット. 来を考え,自らの意志で学校教育のあり方や理念を. 語の教材,教科書の開発やイヌイットの正教員の育. 再検討し,目標を設定し,それに向って邁進するこ. 成,③イヌイット民族やカナダの国の歴史を教える. とであると思う。そのためには,まず,北西準州で. とともに「文化」の相対性を教えること,④イヌイッ. 現在実施されている学校教育の理念と目標,教育シ. ト語やイヌイット文化の保全や発展のために学校教. ステム,教育内容などをイヌイット自身が評価,検. 育を積極的に利用することの必要性を主張したい。. 討し,問題点を洗い出すことが必要であると思う。. 今回の研究では,カナダ・イヌイット社会におけ る日常生活における文化化についてやそれと学校数 育との関係について触れることができなかった。今. 7.結びにかえて. 後の課題として,イヌイットの教育を制度化された. 本稿では,カナダ国北西準州における先住民イヌ. 学校数育と日常生活における文化化の両方の側面を. イットの教育システムをペリーベイ村の事例を用い. 総合して研究していくことが必要である。また,カ. て紹介するとともに,学校教育のあり方をイヌイッ. ナダの先住民教育の実践とその歴史は,日本のアイ. トの将来とのかかわりから論じてきた。現在,ペリー. ヌの場合と比較することができるし,アイヌの民族. ベイ村の/小中学校などでは,いろいろな現実的な制. 教育を今後実現させるための一つの教訓ともなりう. 約から,英語教育を中心とした現代カナダ社会へと. る。カナダ・イヌイットの学校教育と明治期以降に. 適応するための教育が実施されており,副次的なも. 実施されたアイヌの学校教育(小川,1991,竹ヶ原,. のとしてイヌイット語教育やイヌイットの文化教育. 1993)との比較研究も今後の重要な課題である(注. が実施されている。. 8)。. 学校教育は,カナダ・イヌイットの将来を左右す る重要な要因であると思う。仮に,カナダ・イヌイッ. (付記). 本研究は,1992年8月末から9月までの約1カ月. トが国民国家であるカナダの申で21世紀の狩猟者と. の期間にカナダ北西準州ペリーベイ村で実施した. して言語や「伝統」文化を保全し,継承し続けたい と望むならば,筆者は学校教育や文化保全のための. フィールド調査の成果の一部である。北西準州のイ. 補助金など国家の公的な制度を積極的に利用するこ. エローナイフでの資料収集において北西準州教育省. とが得策であると考える。筆者は,あくまで個人的. のDennis Crane氏からは情報および資料を提供. な意見として,イヌイット社会での学校教育は,現. して頂いた。また,ペリーベイ村のKugaardjuk. 代社会に適応するための教育と,同程度にイヌイッ. SchoolのStevenRiley校長をはじめとする教職. ト語やイヌイット文化の教育を実施することが望ま. 員の方々から多大のご協力を得た。これらの方々に. しいと考えている。. 感謝の意を表わしたい。この調査は,スチュアート. そして現代社会に適応するための教育は決して同. ヘンリを代表とする平成4年度の文部省国際学術研. 化教育ではないことを強調しておきたい。現在のイ. 究(課題番号04041099)の一部として行なわれた。. ヌイットがアザラシ猟など生業を続けたいがため. データを分析し論文を書くにあたり,北海道教育大. に,積極的に現金の獲得をめざし,新たな狩猟技術. 学僻地教育研究施設より平成4年度の研究補助金を. を採用してきたように(Wenzel,1991),イヌイッ. 頂いた。草稿を書き直すにあたり,スチュアートへ −36−.

(14) カナダ極北地域における先住民教育についての文化人数学的研究. 恥48.. 1994.3. ンリ先生からご批判,コメントを頂いた。スチュアー. ク・シンボルの一つとし機能しているにすぎない. ト先生,日本国文部省および北海道教育大学僻地教. と考えている(岸上,1992b)。. 育研究施設に対し,記して感謝する次第である。. 7)例えば,イヌイット自身が現代社会への適応が 最も重要な課題であると考えるならば,英語習得 とスペシャリスト養成に重点を置く教育は一つの. 注. 選択肢であろうし,彼らが母語や文化の保全が最. 1)1991年のカナダ統計局による先住民調査の結果. も重要な課題であると考えれば,徹底したイヌ. によると,北西準州に約21000名,ケベック州の. イット語やイヌイット文化の教育もまた別の選択. 北部に約7000名,ニュープアンドランド州のラブ. 肢である。しかし,現実的にはその両極の間で状. ラドール半島に約4700名,およびその他の地域に. 況に応じたバランスのとれた教育が実施されるべ. いるイヌイットを合計すると約36200名になると. きであると思う。 8)アイヌ学校教育に関する研究には,竹ヶ原(1993. う。. 2)ヨーロッパ系カナダ人は,学校の先生6名とそ. 年)や小川正人(1991)らの研究がある。. の家族,看護婦とその家族,生協の総支配人とそ の家族ら,合計20名はどである。従って,村の人. 引 用 文 献. 口の95%以上はイヌイットである。. Ayabe,T.(綾部恒雄). 3)ヌナプト協定とは,カナダ政府,北西準州政府 と北西準州に住むイヌイットとの間で1990年に原. 1985 エスニシティの概念と定義『文化人類学』. 第1巻2号 pp.8【19.. 則的な合意がとりかわされた先住民の土地の所有. Balikci,A. 権などの民族固有の権利についの協定のことであ. 1964 Development of Basic Socio−Eco−. る。詳しくは,岸上(1993b)を参照せよ。. nomic UnitsIn Two Eskimo Com_. 4)インディアンやメティスは,民族カテゴリー(綾 部,1985:9)であり,民族ではない。インディ. munities.. アンとは,カナダの法律上,インディアンと認定 された人々を指し,メティスは,インディアンと. Bu11etin.202.Ottawa,NationalMu− SeumOfCanada.. ヨーロッパ人の混血の子孫で,法律上インディア. 1970 TheNetsilikEskimo.Garden City,. ンと認定されていない先住民をと指す(Frid−. New York:The:NaturalHistory. eres,1983:6−13)。ヨーロッパ系カナダ人は,. Press. 白人として一括されて呼ばれることがあるが,そ. Briggs,F.. の実態は複数の民族から構成されている。. 1991Expecting the Unexpected.Ethos.. Vol.19(3):259w287.. 5)各々の民族の文化は,所与の環境や社会的条件. Damas,D.. に適応するために形成された歴史的産物であり,. 1969 Characteristics of CentralEskimo. それぞれ固有の価値体系を持っている。個々の文. BandStructure.. 化自体には,優劣はつけることができないし,ま た優劣のような序列をっけるべきではないという. In D.Damas(ed.),pp.116−141.. 立場を「文化相対主義」と言う。この考えは,米. Contributions to Anthropology:. 国のF.ボアズ,R.ベネディクトやM.ハース. Band Societies.Bulletin228.,0ト. コピッツらによって主唱されてきた。. tawa,NationalMuseumofCanada. Ebuchi,K(江淵一公). 6)筆者は,エスニック・アイデンティティの保持. 1971教育人類学の動向 『民族学研究』第36 巻2号 pp.157≠174.. と民族語(母語)の保持・使用との間には正の相 関関係があることを認めるが,民族語の保持・使. 1987 教育人類学 石川栄吉編『文化人類学事 典』 pp.199㌦200.弘文堂. 用は,エスニック・アイデンティティ保持の必要 条件であるとは考えていない。筆者は,むしろ現 代的な社会的脈絡においては,民族語はエスニッ. Farrow,M.andD.Wilman,eds. 一37 −−.

(15) 岸上 伸啓. Klauss,M.(マイケル・クラウス). 1987 Self Determnationin Native Educa−. 1992 アラスカ原住民語の未来 宮岡伯人編. tionintheCircumpolarNorth.. 『北の言語』pp.343−362.三省堂. Yellowkinfe,Canada:Dept.ofEd−. ucation,theGovernmentofNWT. Macpherson,N.]. 1991 Dreams and Visions:Educationin. Friders,).S. 1983 NativePeoplesinCanada:Contem− poraryConflicts. Scarborough,Ontario:Prentice−. HallCanadaInc.. Hobsbawm,E.et.al.eds(エリック・ホブズ. Territories From. the Northwest Early Days to. 1984.Yellowknife,. Canada:Dept.. Of Education,Gov−. ernment of the. Northwest Territo−. rleS.. Miyaoka,0.(宮岡伯人). ボウム他編). 1983 TheInvention of Tradition.Cam−. 1987 『エスキモー』岩波新書 NWT Government. bridge:The Pressofthe University. OfCambridge.. 1991 0ur Students,Our Future.Yel−. 『創られた伝統』(1992)(前川啓治他訳). lowknife,Canada:Dept.ofEduca−. 紀伊国屋書店. tion,theGovernmentofNWT.. Kishigami,N.(岸上伸啓). n.d.Educationin the NorthwestTer−. ritories. Yellowknife, Canada:. 1990 イヌイット(カナダ):その歴史的展開 と現状. Dept.of Education,Government of. 『文化人類学』第6巻1号 pp.14−26. NWT.. 1991カナダ国北西準州ペリーベイ村のおける. Ogawa,M.(小川正人) 1991「アイヌ学校」の設置と「北海道旧土人. ネッリク・イヌイットの拡大家族につい て『北海道教育大学紀要Ⅰ部B社会科. 保護法」・「旧土人児童教育規定」の成. 学編』第42巻1号 pp.1−12.. 立. 1992a カナダ・イヌイットは如何にしてキリ. 『北海道大学教育学部紀要』第55号. Paine,R.ed.. スト教徒になりしや. 1977 The White Arctic.St.John’s,New−. 『北海道教育大学紀要Ⅰ部B社会科学. foudland:Institute of Socialand. 編』第42巻2号 pp.23−34.. EconomicResearch,MemorialUni−. 1992b カナダ極北におけるニュー・エスニシ. VerSltyOfNewfoundland.. ティ. 谷本一之編 pp.91−107.『北方諸民. Rasmussen,K. 1931 The Netsilik Eskimos:Social Life. 族芸能祭報告』所収 北海道教育大学. 1993a 生活時間を通してみるカナダ・イヌ. andSpiritualCultuer. Report of the Fifth Thule Expedi−. イット社会の変化について. tion.Vol.8.,Copenhagen.. 岡田宏明編著『環極北文化の比較研究』. pp.4154.北海道大学文学部 1993b カナダ・イヌイットの自治権獲得:ヌ. Statistics Canada 1993 Age und sex.Ottawa:Industry, ScienceandTechnologyCanada.. ナブット協定 日本カナダ学会北海道. ニュース 第8号(3月25日). Stewart,H.(スチュアート ヘンリ). Kitikmeot Board of Education. 1990 伝統ネッリック・イヌイットのイヌク. 1990 Kitikmeot Board of Educat,ion Poli−. CyManual.. シュクによるカリブー猟『民族学研究』 第55巻1号 pp.75−86. 1991食料分配における男女の役割分担につい. Coppermine,NWT:Kitikmeot. BoardofEducation.. て 『社会人類学年報』17号 pp.115 − 38 ∼.

(16) カナダ極北地域における先住民教育についての文化人類学的研究. 恥48.. ー127.. 1992a ネッリック・イヌイットの漁携 『北. 海道立北方民族博物館』第1号,pp.31 れ52.. 1992b 定住と生業 『定住と移動』(第6回 北方民族文化シンポジュウム報告)pp. 75鵬85.財団法人北方文化振興協会. 1993 極地地帯の石干見 『史観』第128冊, pp.115Ⅶ127. Suzuki,Michiko(鈴木道子). 1982 カナダ原住民とその教育 関口礼子編著 『カナダにおける多文化主義とその教育』. pp.79−96 図書館情報大学 Takegahara,Y.(竹ヶ原幸朗) 1993 近代日本のアイヌ「同化」政策 札幌学院大学人文学編 pp.225≠265. 『北海道とアメリカ』札幌学院大学生活 協同組合. Wenzel,G. 1991. AnimalRights,Human Rights.. Toronto:University of Toronto Press. Va11ee,F.G.,Smith,D.G.andCooper,].D. 1984 Contemporary CanadianInuit.D. Damas,ed.pp.662M675.Hand−. book of North AmericanIndians, Vol.5,Arctic.,Washington,D.. C.:SmithsonianInstitution.. −39脚. 1994.3.

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参照

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