兵庫県における同和教育行政の現状と課題 : 行政の主体性と政治的中立性の確保の視点から
124
0
0
全文
(2) 目 次 序章 本研究の目的と問題の所在・■■■一・・■・・t… 一■・■一・・■■■・■・・一一一・一一1. 第1章 行政の主体性と政治的中立性の確保・一■■・一一■一・・… 一… 一・一一・4. 第1節 公平・公正と主体性と中立性の概念…■・一■・・・・・…“一■t一・… 4. 第2節 一般行政と同和行政の関係および同和行政の公平・公正一・・4 第3節 行政における主体性と教育の政治的中立性の確保・■t・・i・■t・6 第4節. 「糾弾権」と行政の主体性と政治的中立性・・… ■一・・■■・・… 7. 第2章 同和対策審議会答申以後の国の同和行政の経過… ■■■一・・■i一■・12. 第1節 同和対策審議会答申と「同和対策事業特別措置法」の制定・・12. 第2節 「地域改善対策特別措置法」の制定と同和行政の転機・一…13 第3節 「地域改善対策特定事業に係る国の財政上の特別措置に 法律」の制定と一般対策への移行… i一・・一・i一■■一■■一■・… t■・・… 16. 第3章 兵庫県における同和教育行政の経過…一t一・・・・・・…■■・・・・…26 第1節 時期区分について・一…一一・・■・■■・一t■・…■・一一■■・・■■一■・・■一・26. 第2節行政の拡大期【第工期】・一一・・一・・一一一・・一一一一一…27 (1)「同和対策事業特別措置法」制定以前の取組み・一・… 一一一… 27. (2)「同和対策事業特別措置法」制定以後の同和教育行政・一一一一・29 ア,「同和対策事業特別措置法」の制定と兵庫県の同和予算推移・・29 イ,兵庫県の運動と行政の特徴・… t■一t■一・・一・■一・■一・■一・■一・… t・一一一t一・30. ウ, 「兵庫教育」における理論的傾向・・一・・一・}一■■一一・… 一・・t・・・・… 33. 第3節 行政の転換ma 一県政の刷新【第旦期】・・・・…一■・…一■・・■■・39. (1)入鹿高校事件と307号教育畏通知・・… …・…… …… …・… 39 ア,山田久差別文章事件・・t・■・・■・■■・・i一・■・}■… 一一■■一・・一・・一・・一・一一■・39. イ,元津事件と橋本宅包囲事件ほか・i一・・一・■一・一一■■一・一一t一一一・・… ・・ ・・ ・・ 40.
(3) ウ,八鹿高校事件・t・■■■■・■・・■・■■・・一■・・… ・・ ・・ ・・ ・・ ・・ ・・ ・・ ・・ ・・ 41. エ,兵庫県教育委員会の3Q7号通知と主体性と政治的中立性・… 42 (2)育成調理師学校事件と行政の主体性・一・・■・・一一・・・… 一■・・・… 一■・45. ア,育成調理師学校事件の概要・・}・・・・・… 一・… 一・・一一・・一・45 イ,事件と行政の主体性・一■・・■i・… 一一・・一・・一■■一i・・一■・・r一・・■・一i… 46. ウ,事件と公正・公平の原理・一・・一■■・・■■・・■・■■・… 一■・・一t・・■■・46. エ,事件といわゆる「糾弾権、の存否■・・■t■一・・一}■■・■・・■一・・■一・47. オ,事件の77号知事通知・……………・・・・…………・…47 カ,県議会議事録の質疑にみる行政の主体性・■■・… i■・・・・・・… 48 (3)「指導助言の方針」と『兵庫教育』にみる理論的変化・■■■一・・■■・50 (4)県民運動の呼称変更・■■・… 一・■t・・… ■一… ■一・・■■・・P一・… 一t… 54. (5)「糾弾権」の否定と『友だち』の全面改訂・■・一一・… 一一・・一・■■■一・55. (6)同和対策事業特別措置法の延長と180号教育長通知・…・・・・・… 55 第4節 行政の適正化期【第納期】・・… 一一・・一一・・・・・… 一一一・61. (1)「地域改善対策特別措置法」の制定と28号教育長通知・・… …・・61. ア,「同和」から「地域改善」への名称の変更と行政組織の変更61 イ,57年知事通知と県単独事業の取扱い方針の見直しと適正化 61 ウ, 「指導助言の方針」と『兵庫教育』にみる地域改善対策として の教育・・・・・… s一・・・… 一・・・・・・… 一■… 一■・… 一t・・・・… 一・63. (2)児童生徒用副読本『友だち』と高校生用『高校生と同和問題』の改 訂・■・t■・・一一・・一■■一■■一・■一■■一■・・)}■■… ■■■一■・・t■■一・・■一・・一■・・■・■■■■・64. 第5節 一般対策への移行期【第W期】・・■・・… 一一・・・・・…一}・・・・…69. (1)「地域改善対策特定事業に係る国の財政上の特別措置に関する法律」 の制定・■・… ■・・■・■・i■■■・■・…t・e■・・t■■… ■■■一・・■t・・}}・・… 69.
(4) (2)18号教育長通知・・・・… t■・・一・・…一・・… ■t一・一■・… ■t・・t一・・… 70. (3)教育資料『21世紀に生きる』の理論的特徴・…・…・…・…・・ 7!. (4)「地域改善対策特定事業に係る国の財政上の特別措置に関する法律」 の一部改正と30号教育長通知・・… 一■■■・・■■・・・・・… 一一■■一・・… ■■・75. (5)児童生徒用副読本「友だち」の全面改訂・・…t・一一・・一■・・一t・・・・…77 [!]改訂への要因・■■・・i■・■・・■一・■一・・一・・一… 一一■・■一■■・・i一一一一一一一■■一t・・… 77. [2]教材選択の視点と内容の変化・■d一・・■■}一■・・i■・・i■・・一・・・・・… 79 第6節 まとめ…■t・一・・・…t一・・一・・…一…i一一一・・一・■一一一・・…一■■一一…83 第4章 今後の同和教育行政のあり方・■■・・・…■一・・一・■一・一…一一一一・・一・一一一・84. 第1節 21世紀に部落差別を持ち越さない取り組み・・… …・・・・・… 84 第2節 神戸市の同和行政と教育啓発・e■t■■t■■t■■■{■・・・… tt・・… 85. 第3節 養父郡大屋町の同和行政・・・・… 一・・一・・一・… 一一一・・一・88 第4節 滋賀県大津市の同和行政ととスバル計画・一一・・一一・… 一一t一… 91. 第5節 実態調査,市民意識調査から見た今後の教育啓発の方向・■■・95. 結び・■一■■・… ■■・・■一・・一■・・・・・・・・・… ■・■“・・・・・…■・t■・… 一■・・■i・104. 【資料】・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・… 106. 【凡例】. 1,本論文申の引用文中のアンダーラインは,特にことわりがなければ,筆者によるものである。 2,本論文での簡略表現は,原則として一般的に使用されているものを使用した。 :二例コ同和対策審議会. 答申→同対審答申,臨時教育審議会→臨教審,同和対策事業特別措置法→同対法,地域改善対策特別措 置法→地対法,地域改善対策特定事業に係る国の財政上の特別措置に関する法律→地対財特法,地域改. 善対策協議会→地対協 ただし,その他,兵庫県等のみで使用している簡略衷現は,(註)あるいは本文で説明している。.
(5) 「教育は,不当な支配に服することなく,国民全体に対し. 直接に責任を負って行われるべきものである。②教育行政 は,この自覚のもとに,教育の目的を遂行するに必要な諸 条件の整備確立を目的として行われなければならない。」 (教育基本法第ユ○条). 「偏なく党なく,王道蕩蕩たり」 (書経). 「公務員は,英雄でもドン・キホーテでもなく,むしろ,. 公共サービスが必要な場合には,これを動員し,公正に,. 公平に配分することができ,そしてこのサービスが必要で なくなったときには中止することができる。」 (『新しい. 行政学』H.G.プL!デリクソン).
(6) 序章 本研究の目的と問題の所在 戦後の同和教育は,長欠,不就学への取組みより始まった。 「今日も机 にあの子がいない」という就学困難な児童・生徒への「教育を受ける権利」 「教育の機会均等」の保障への教育実践であった。(1)続いて,昭和30年. 代からは,就職差別に対する進路保障の取組みがあった。そして,昭和40 年代に入ると,国の施策の本格化に伴い,同和教育は,一部の良心的教師 の取り組みから,教育政策となり, 「すべての学校,すべての地域社会に. おいて」取り組まねばならない「対策としての同和教育」となり,財政的 においてもバーード面の施設建設,職員の配置等,物的,入的にも急速に量 的拡大を示していった。. ところが,昭和50年代になると,多くの教職員や行政職員が取り組み,. 公的教育での同稀問題についての学習者が多くなるという量的拡大の過程 の中で当初予期しなかった新たな問題が生じてきた。同和対策事業に対す る「ねたみ意識」と「こわい問題」という意識,同和教育と市民啓発に対 する「またか」というマンネリ化意識である。. 従来の研究では,そのような問題意識に立ったものは少なく,単に同和 教育の徹底,そのための研修の強化を論旨とするものが多く,見直しの視 点からのものが少ない。〔2》 いわば, 「すべての学校,すべての地域社. 会」という地域網羅的な同和教育の量的拡大によって解決するという単純 思考からでたものである。. 果たして,量的拡大の徹底によって同和問題が解決に近づくだろうか。 同和教育・市民啓発に関して「消防車論」というのがある。それは, 「消防車がサイレンを鳴らして走るのは,火事が起こっているから走るの. で,消防車が走るから,火事が起こるのではない。同和教育は,部落差別 があるからやるので同和教育があるから差別が起こるのではない。」とい うものである。たとえ話としては,なるほどと納得するであろう。. しかし,地域網羅的な同和教育は,地域住民に対する「押しつけの同和 教育」となり,教員,自治体職員には, 「締めつけの同和教育.となった 側面は,否定できない。それも,20年以上にわたっての取り組みがあり,. 国,地方公共団体の関係予算額の合計で10兆円を超える経費を投入してい るにも拘らず,20年前と同じく「差別がありますよ」という啓発内容と半ば. 一1一.
(7) 強制的な同和教育では, 「また同和か」というリアクションがあるのが当. 然である。ある自治体の教育委員会が事務局となっている市同和教育協議 会の啓発紙に「23年間,各団体や組織を通して啓発活動に取り組んで参り ました。しかしながら,目立った効果に乏しく,残念ながら今なお差別意 識を払拭しきれずに,差別事象すら発生しているのが実態です。」という ような市同教会長挨拶が,掲載されているとすれば,市民一般に同涌問題 に対する解決不可能感を与えてしまう。そして,対象地域住民には,自ら の立場を運命的・宿命的にとらえさせてしまうとともに,過度の被害者意 識を持たせてしまう。. 昭和40年の同対審答申で時計の針の止まったような認識でいいのか。そ れとも,新しい発想のもとに認識を改めないと同和問題の解消にならない のかという問題である。問題を深刻化してとらえ,部落差別が「潜在化」 「巧妙化: 「悪質化」しているという認識や,同対審答申を絶対化する傾. 向は,特定の民間運動団体に強く,その理論の影響受けている市町は,薪 鮮味のない啓発内容に「また同和か.という同和教育に対するマンネリ化 同和教育ぎらいという同和アレルギー・一をもたらしている。そして,同郡問. 題の解決をかえって妨げているのである。次の表!に示した平成3年のA 市の市民意識調査は,それを如実に物語っている。いわゆる「通婚」に対 し,30歳代以上の人よりも,20歳代の人の方が当人同士の意思の問題とは 考えていないことがわかる。つまり, 「対象地域内の入と対象地域外の人 との結婚問題について,あなたの家族(子ども等)が結婚する場合,あなた. は,どうしますか?」という問いに対し,「当入同士に任せる:と回答し た人が30歳男子では49.5%,40歳代では39.ユ%,50歳代でも48.1%あるの. に対し,20歳代では逆に27.8%と最低の数値を示している。20歳代という と同和教育が本格的に実施されている年代である。 一東播磨A市 表1,対象地域内の人と対象地域外の人との結婚問題についておたずねします。 あなたの家族(子ども等)が結婚する場合,あなたはどうしますか?(既婚者、一標本抽出 全体 20歳代 3C歳代 40歳代 50歳代 60蔵代 48ほ9舐6’…44∵6… 47.8 40.3 ア,当人握玉に任せる 男,a槌..’女百5,1. イ,一時的にこだわると思うが,賛成する ウ,他の家族や親曄の考え方を優先して考える. ⊥5.5. 4.5. 男.埠焦.’i女8.1. 男 2!8..’女“國i.亘. 49.59琶き1ゴ’. 8。6’i互;百’じ. ..3!8. 39.1’吾‘:石n. .よ母!昼..1曾.0. 7.2…径:ガ. .λ8,5._工9.唇. L9”6二召…. ,漢5βe,’テ’凸’. 6.2”4∵白…. c,9”. エ,一応考えて見るが,結婚に反対すると思う. 17.8. 男13.9’i女’ゴ9:鳶”. .12三4. 13.7’且石”’. .鉱β.,.202. 16.8’ごき∵i…. 17.る’甑召…. .二9,2_16.3. 13.3’箆’ボ. 宴テ.召”. オ,今は何とも言えない. 21.9. 男3孚!1’女’琶6’6”. 一2一. 25.7’ゴ曲….
(8) つまり,同和教育による知識が,かえって問題の解消の妨げになってい るのではないかというパラドックスに気づく。これまでの同和教育のあり 方に鋭い問題提起をしているのである。. 結局のところ,市町の教育啓発は,新しい発想に転換すべき時が既に来 ているのではないか。行政は,民間運動団体の主張に左右されることなく,. 今日的課題を的確にとらえるとともに主体性をもって,この教育の刷新す る必要がある。. 兵庫県では,県政レベルおいて,既に10数年前に発想の転換があった。 それは,兵庫県の同和教育行政の歩みを振り返れば,そのことが次第に鮮 明になって来る。つまり,昭和49年の八鹿高校事件を背景にだされた307 号教育長通知が一つの大きな発想の転換であり,国レベルでは,昭和57年 の同対法から地対法への変化が,大きな転機であった。. そこで,本研究では,特別法体制のもとで推進されててきた兵庫県の同 和教育行政を行政の主体性と政治的中立性の確保の視点から歴史的に振り 返り,その現状と課題を明確にし,今後の市町の同和教育行政の推進に寄 与することを目的としている。なぜならは,事業主体.は,ほとんどが市町 であり,国及び県は補助金支出からの指導・助成が多いからである。. 兵庫県にしぼって研究を進めたのは,私が,兵庫県で教鞭をとってきた ということだけでなく,昭和49年に八鹿高校事件という兵庫県の同和教育 行政を大きく転回させた大事件が起り,他府県よりも同和教育の見直しが,. 進んでいったからである。そして,兵庫県の基本的な考え方が国において も理解されるようになり,今日において政府から高く評価されているから である。. 一3一.
(9) 第1章 行政の主体性と政治的中立性の確保 第1節 公平・公正と主体性と政治的中立性の概念 研究の視点にした「行政の主体性と政治的中立性」の概念の組立てである が,行政施策の公平・公正の原則の概念と結びつけている。まず,行政の. 主体性とは,いかなる勢力の支配に服することなく,行政機関みずからの 意思や判断で,法律に定められたことにのっとって公平・公正な施策を実 施することである。行政の主体性が否定的に問題とされるときは,施策の 公平・公正が失われ,不公正・不公平となっているときである。逆に,公 平・公正が達成されていたら,行政の主体性は問われないし,確立している と言ってよい。ただし,主権者の意思とはなれていては,権力行政となり, その場合,施策の公平・公正も疑問である。そのためには, 「行政というの. は,絶えずやり方を見直して,絶えず国民の常識,一般常識から見て,こ れでいいんだろうかということを見る必要がある。」(3)そのような見直し. も行政の主体性においてなされることが,フレキシブルな行政である。 つまり,行政の主体性自体が価値でなく,行政の目的とする価値には,公. 平・公正の実現があると考える。したがって,主体性を持った施策の実施 には,適法であることはもちろん,主権者の多数意思による支持や理解が, 不可欠である。. 行政の政治的中立性とは,いかなる政治勢力からも自由であるというこ とで,特定の政治勢力の排除を意味し,法と正義にもとづいた施策の実施 をいう。. 第2節 一般行政と同和行政の関係および同和行政の公平・公正 同和行政と一般行政の関係は,同和行政が特別行政であると把握するこ とで,その性格や施策の実施,運用のありようが明確化される。特別行政 は,普通法ではなく,特別法によって実施される。普通法とは,効力範囲 において,普遍的・一般的であるのに対し,特別法は,効力範囲が特殊的 限定的である。ただし,特別法は,普通法に優先する。特別行政というの は,効力範囲が限定されている特別法によって実施される行政であるとい. 一4一.
(10) うことであり,行政施策の対象が限定されているということである。すな わち,同和行政は,属地・属入という地域と人の特定がある行政施策であ る。そして,一一一me行政施策だけでは,実現できない格差是正と差別解消を. 目的とするという意味で,一般行政を補完する特別措置である。そして,. そのような特別措置を必要としない状態を一日も早く実現することが,目 標でもあるところの過渡的・特例的な行政措置である。したがって,同和 行政は,限時法によって,実施しているのであり,地対協も「国民に対す る行政施策の公平な適用という原則からできるかぎり早期に目的の達成が 図られ,一般対策へ移行すべきである」(4)という認識を示している。ま. た,同和対策は,対象地域の指定が伴うことで,周辺地域との線びきをす る分離主義的な性格もある。つまり,同和対策事業が,属地・属入主義で. おこなわれることによって,対象地域住民を特定化・固定化する側面もあ る。したがって,同和対策は,対象地域住民の自立のためには,必要であ るが,同和対策からの自立なしに,真に問題を解決したことにならないの である。つまり,同和行政は,同和行政が必要でない状態を目的としてい るという意味で,同和行政は,その自己否定において完成するという性格 を持っている。. 特別行政には,緊急性を持った対策から,恒常性を持った施策まで,さ まざまであるが,同和対策の場合,一定期間恒常性を持った特別施策であ ると考えてよい。したがって,対策事業によって実態が改善されることで の事業の見直しや事業の終結は,当然のことである。 次に同和行政の公平・公正について述べる。. 同和行政が特別法体制のもとで実施を開始したとき,地域と人の特定を 民間運動団体に依存した。同和対策は,対象を限定しての事業であるから どこが「同和地区」なのか,だれが「同和関係者」なのか特定しなければ ならないe(5) だれが事業の対象となる同和関係者なのかということは,. 「誰が部落民か」ということに直結する。行政がその特定をすれば,差別 となるとざれ,民間運動団体を事業の受け皿にし,民聞運動団体が人の特 定をした。しかし,運動団体は,分裂しており,一つではない。そこで,. 一つの運動団体だけを受け皿にし,対象者の特定をするという,いわゆる 「窓ロー本化」をすれば,その団体に所属していないか,または,他の団 体に所属している人は,対象とならないという不公平・差別をうむことに. 一5一.
(11) なる。さらに,特定の運動団体による「窓ロー本化」は,同和対策事業の 企画・立案,予算策定,予算の執行,事業の運営にいたるまで,運動団体 の意向にそって行なわれるようになり,同和行政自身が「別枠行政化」し てしまう。その結果,一般予算に占める同和対策予算が肥大化し,不均衡 を生むこととなり,対象地域と周辺地域の間に逆差別現象をもたらし,不 公平感を招来することになる。このように,公平・公正に関しては,地区 内の不公平の問題と,地区と地区外の均衡の問題の二つの側面がある。 同和行政における公平・公正とは,同和関係者間にあって不公平・差別. があってはならないということと,事業の実施にあたっては,周辺地域と の一体性を確保するということが,必要不可欠であるということである。. 地方公共団体の施策の公平に関わっては,地方自治法第10条の2の「住 民は,…役務の提供をひとしく受ける権利を有し,その負担を分担する義 務を負う」となっているように,行政サービスの公平と納税などの義務の 公平・公正は,すべての住民のものでなくてはならない。同和行政に関わっ て,よく問題になるのが,隣保館等の公の施設が特定の運動団体によって 独占的に使用されているといわれるが,これは,地方自治法第244条の2の 「地方公共団体は,正当な理由がないかぎり,住民が公の施設を利用する ことを担んではならない」とか同条の3の「住民が公の施設を利用するこ とについて,不当な差別的扱いをしてはならない」という規定に違反する こととなる。. 第3節 行政の主体性と教育の政治的中立性の確保 地方公共団体の行政の主体性については, 「地方自治法」第138条の2に 関連している。そこでは,「地方公共団体の執行機関は,…議会の議決に. 基づく事務並びに法令,規則その他の規定に基づく…事務を,自らの判断 と責任において,誠実に管理し及び執行する義務を負う」と定められてい. るのである。また,教育基本法の第10条には,教育に対する不当な支配の 排除が定められている。. 教育行政の政治的中立性については,教育基本法第8条が法的根拠であ る。同和教育が特別法体制の申で推進しはじめたとき,同和教育と社会運 動や政治的運動が明確に区別されず,運動そのものを教育と考え,理論的. 一6一.
(12) にも運動理論に依存していた。教育内容として係属中の裁判を批判したり, 義務教育在学中の児童・・生徒や高校生を運動に動員するという,特定の主. 義主張に偏った運動を,教育委員会が支持したり,そのような運動と連携 するよう指導したこともあった。これは,明らかに政治的中立性を保って いたとはいえない。. 教育の政治的中立性とは,教育に対する政治的党派性の排除であり,教 育が政治的勢力に左右されず,普遍的な教育を実施することである。教育 行政は,そのための指導をも含めた諸条件の整備確立である。したがって,. 教育基本法第10条の不当な支配の排除が,第8条の政治的中立性の確保の 前提条件である。言い替えれば,行政の主体性の確立が,政治的中立性の 確保を可能にする。. 第4節. 「糾弾権」と行政の主体性と中立性. 行政の主体性と教育の政治的中立性を論じる上で「糾弾権」の存否が深 い関わりを持っている。. かっで行政自身が, 「糾弾会は最高の学習の場である」と言い,行政職 員や教職員を糾弾会に積極的に参回旧せた時期があった。それは, 「運動. に学べ」という時期でもあり,糾弾会は,運動団体の,主観的恣意的判断 によって,差別事象を解釈するのであり,その中で行政に対し「窓ロー本 化」等の要求を突きつけるものとなることもあった。それゆえに, 「糾弾. 権」を認める立場によって,行政職員が糾弾会にのぞんだとしたら,運動 団体の要求に屈賑するほかはなく,行政の主体性は喪失し,教育行政の政 治.的中立性は,確保できなくなってしまうのは,当然の帰結である。つま り,「糾弾権」は,行政の主体性・中立性を奪ってしまうのである。. しかし,民間運動団体は,様々な主義主張をするのは自由であり,それ を統制する必要をいっているのではない。誤った運動であれば,人々の支 持を失って,消滅するか,’根本的な運動方針の変更を余儀なくされるので. あって,公権力によって運動が変えられるべきものでない。行政の主体性 の喪失が民間運動の糾弾等の威圧的行動形態にその原因があったとしても,. 法治主義を貫くべきなのである。つまり,行政が,運動団体の主張をその まま取り入れてしまうかどうかの問題をいっているのである。行政が主体. 一7一.
(13) 性を保持できるかどうかは,行政が同和問題に対する理論構築ができてい るかどうかにかかわっている。理論構築ができていないから,「差別は, 差別される側のものしかわからない」・という主張を受け入れてしまう。そ の主張を受け入れてしまえば, 「糾弾権」を認め,行政は,運動に従属せ. ざるを得なくなり,行政の主体性は,保持することが困難になってしまう のである。. 一部に平鹿高校等事件控訴審判決(昭和63年4月12日,大阪高裁第4刑事. 部,石田登良夫裁判長)が,いわゆる「糾弾権iを認めたものであるとす る主張がある。なるほど糾弾について判決では次のように述べている。 「糾弾行為の許される一般的限界について考えてみるに,諸論がるる述べ. ている述べているとおり,今日なお部落差別の実態については,極めて深 刻かつ重大なものがあるにもかかわらず,差別事象に対する法的規制若し くは救済の制度は,現行法上必ずしも十分であるとはいいがたい。そのた め,従来から,差別事象があった場合に,被差別者が法的手段に訴えるこ となく,糾弾ということで自ら直接或いは集団による支援のもとに差別者 にその見解の説明と自己批判を求めるという方法が,かなり一般的に行わ れてきたところである。この糾弾は,もとより実定法上認められた権利で はないが,憲法14条の平等の原理を実質的に実効あらしめる一種の自救的 行為とし、て是認できる余地があるし,また,それは,差別に対する人間と. して堪えがたい情念から発するものであるだけに,かなりの厳しさを帯有 することも許されるものと考える。しかし,そこには自ずと一定の限度が あるのであって,個々の糾弾行為につきその違法性の有無を検討するにあ たっては,当該行為の動機・目的のほか,手段・方法等の具体的状況,更 には,これによって侵害された被害法益との比較など諸般の事情を考慮し, 法秩序全体の見地からみて許容されるかどうかを判断すべきものである。. そして,右の見地からみて許容されないものについては,刑法上それが正 当行為にあたるとも,また可罰的違法性を欠くともいえないのである。」 石田判決は,以上のように述べた上で被告等の行為は, 「多数のものが. 被害者等に対し,一方的になぐる蹴るの執拗かつ激しい暴行を加えたもの であって,社会的に相当と認められる範囲を逸脱しており,…結局,法秩 序全体の見地から見て可罰的違法性を否定することができない」 捕監禁罪・暴行傷害罪等が成立すると判示した。. 一8一. として三.
(14) この判決がでると, 一糾弾権が認められた」とか「糾弾権は憲法第14条. を実効あらしめるもの」という一部の主張が行われるようになった。しか し,判決では, 「糾弾権」と「権」をつけている箇所はどこにもないばか. りか,波線部のように実定法上認められた権利でないとしたうえで,限定 つきで「一種の自救行為として是認できる余地がある」と言っているに過 ぎないのであって,とても被差別者の権利としての一般的・包括的な「糾 弾権」を認めたとは言えない。したがって,.社会的に相当と認められて範. 囲を逸脱している場合は,違法となるのは当然であるが,社会的相当性の 範囲・程度とは,可罰的達法性を論ずる場合に使用されるものであって,. 可罰的違法性がないと判断できたとしても,その行為が権利性を有するも のとなるものではない。法務省見解(B)のように自救行為は「法律上の正. 式の手続きを踏んでいたのでは,権利の回復が不可能となるか,または著 しく困難になるような緊急の事態」に限り許されものであり, 「近代法は,. 私入間の紛争を強制的に解決するには,すべて国家的救済機関の手を通し て行うものとし,自力救済を厳に禁止するものであるから,自救行為を原 則として違法とするのが,近代国家における法理論である」とするのが正 しい。. 実際,地対協「部会報告」(7)でも指摘しているように「確認・糾弾行. 為は,被害者集団によって行われるため,…勢いの赴くまま,行き過ぎた ものになる可能性がある」し,「差別行為のうち侮辱する意図が明らかな 場合は別としても,本来的には,何が差別かというのは,一義的かつ明確 に判断することは難しいことである。民間運動団体が特定の主観的立場か ら,恣意的にその判断を行うことは,異なった理論や思想を持つ人々あ存 在さえも許さないという独善的で閉鎖的な状況を招来しかねない」のであ って,解同中央本部が言うように「糾弾は,差別事件をひきおこした当の 本人の人間変革の場である」, 「椰楡,嘲弄などによって「腹いせ」をす るものではない」(8)「確認・糾弾は,ルールをつくってとりくんでおり,. 「しかえし」ではなく,教育が目的である」(g>というのは,現実の糾弾. の姿ではなかった。昭和61年の地対協意見具申で述べているように「確認・ 糾弾行為は,…被害者集団によって行われるものであり,行き過ぎて,被 糾弾者への入権への配慮に欠けたものとなる可能性を本来持っている」(10). のである。また,確認・糾弾をほのめかしつつ,些細なことをも抗議する 一9一.
(15) ことは,同和問題に対する自由な意見の表明や意見交換を抑制し,阻害す ることとなり,心理的差別意識を潜在化させるばかりか,同和問題をこわ い問題と考え,人々をこの問題から遠ざける結果をもたらすのである。 県の行政職員の述壌によれば, 「同門行政は,運動団体の言うがままに するのが一番楽だが,それでは,広く国民の理解をえることはで壱ない,. 結局,同和問題の解決を妨げる結果となる。したがってゲ行政の主体性が 大切である。」と述べていた。o、)兵庫県では,昭和50年以偉,.行政一と. しての主体性を確立し,同湘行政の適正化を図ってきた。しかしながら, 県下の市町にその方針が浸透するまでには,相当なタイムラグが’あ『り;今. 日においてもまだ,県が昭和40年代に主張していたような教育啓発をして いる市もある。この論文の意義は,県の同称教育行政の変遷を正しく理解 することによって,そのような市町に,主体性のある行政への転換を促す ことにある。. (註). (1)昭和20年代に高知県で福祉教員として, 「今日も机にあの子がいない」. という長欠・不就学の問題に取り組んだ教育実践記録(昭和28年から29 年の記録)に水田精喜著「未完成の記録一高知県の同和教育運動(1)』( 部蒋閥題研究所,1974)がある。. (2)昭甜59年度兵庫教育大学大学院修士論文・大高忠著「戦後の同和教育行 政の考察」. (3)第1回地域改善問題シンポジウムにおける総務庁地域改善対策室長熊代 昭彦(当時)の発言より、地域改善対策研究所編『地域改善対策の展望』 (土曜美術社)71頁。. (4)昭税6ユ年地域改善対策協議会意見具申「今後における地域改善対策に. ついて.と平成3年12月11日地域改善対策協議会意見具申「今後におけ る地域改善対策について」の両方に引用の文章がある。 (5)国が同対審答申を踏まえて同和対策事業を始めようとしたとき「同和. 地区」をどう法的に規定するのかが論議されたが,結局,同対法第1条 の「歴史的社会的理由により生活環境等の安定向上が阻害されている地 域(以下「対象地域」という)」としかまとめられなかった。「同和地区」. の概念規定できないのであるから, 「同和関係者」も当然概念に規定で 一10一.
(16) きるはずがない。アメリカの公民権法では,ニグロなり,インディアン をどう判別しているかと言えば,本人がそう思っているということが,. 唯一の判定基準だという。人種的な差異があると認められている場合で すら,それであるから,ましてやわが国の同一民族である人々を判別す. ることは不可能である。不可能であるから,同対法の第1条のような曖 昧な規定にならざるをえなかったのである。東上高志著『ちょっとまて 部落問題・同和教育』 〔部落問題研究所,1992.7.10)61頁62頁参照。. (6)昭和63年6月1日の『入鹿高校事件控訴審判決についての法務省見解』. は, 『入権通信g第133号で,法務省入権擁護絶入権擁護管理室が,見. 解を発表したものである。その『法務省見解』は,沼野輝彦著『刑法学 2』を引用して,自救行為の許される余地として, ①法益に対する違法な侵害のあること。 ②国家の救済機関の発動を求めるいとまがないこと。 ③侵害に対する回復措置として,相当なものであること。. ④即時にこれをしなければ権利の回復を不可能若しくは困難にするおそ れのあること。 をあげている。. (7)「部会報告」とは,昭和61年8月5日の「地域改善対策協議会基本問題検. 討部会報告書」である。地域改善対策研究所編『地域改善対策の展望』 (一土曜美術社!986.9.20)に所収。該当箇所は,127∼128頁. (8)「差別糾弾闘争のあり方について」部落解放同盟中央執行委員会(!986.. 11.25)。和島岩吉1差別事件と糾弾権』人権ブックレット14,部落解 放研究所(解放出版社)の巻末資料に所収。引用箇所は,75頁,76頁。 (9)「地対協」基本問題検討部会での上杉委員長の意見発表後の質疑より。. 部落解放同盟中央本部『「地対協」基本問題検討部会報告に対する抗議声 明一とわ.が同盟の見解』 (解放出版社!986。9.20)に所収。!!3頁。. (10)前掲書『地域改善対策の展望』128頁。 (11)インタビューによる。. 一11一.
(17) 第2章 同和対策審議会答申以後の国の同和行政の経過 第!節 同和対策審議会答申と「同和対策事業特別措置法」の制定. 第2次世界大戦後,わが国政府が初めて,同和対策として予算を計上し たのは,1953年(昭和28)のことで,厚生省が地:方改善…施設整備事業として. 同和地区に隣保館を建設するために補助金を支出したことであった。それ までは,連合軍の占領政策として特別の行政施策が禁止されていたからで ある。その理由は,特権行政の廃止という意味でおこなった軍人恩給の廃 止との関係から,わが国の事情をよく知らない占領軍が,法の下の平等と いう立場から,社会政策一般から対応すべきで,同和行政も特権行政のご とく考えていたからだといわれている。α). その後,同和問題に対する議論の高まりのなかで,政府は,1958年(昭 和33),内閣に同和問題閣僚懇…談会を設置した。さらに,1959年(昭和34). に同懇談会でピ同和対策要綱」が決定され,経済確立,環境改善対策及び 同和教育事業等を各省が昭和35年度から10か年計画でモデル地犀を指定し て実施することとなった。. やがて,民間運動団体の国策樹立要請運動を背景に1960年(昭和35年),. 国会で同和対策審議会設置法が成立し,昭和36年に内閣総理大臣池田勇人 から,同法によって設置された同和対策審議会に,同和問題解決の総合的 施策の樹立のための「同和地区に関する社会的及び経済的諸問題を解決す る基本方策」についての諮問がなされた。そして,1965年(昭和40年)8月1 0日には,その答申(同和対策審議会答申・=以下,同対審答申)が時の内 閣総理大臣佐藤栄作に対してなされた。同対審答申では, 「いうまでもな. く同和問題は,入類普遍の原理である入間の自由と平等に関する問題であ り,日本国憲法によって保障された基本的人権に関わる課題である」とさ れ, 「その早急な解決こそ国の責務であり,同時に国民的課題である」と の認識にたって,環境改善,社会福祉,産業・職業,教育,入権擁護など の総合的対策を打ち出した。 さらに,この答申に基づいて1969年(昭勅44)同和対策:事業特別措置法(. 以下,同対法)が10年間の限時法として成立し,同時に同和対策長期計画が. 閣議了解された。これによって,これまで同和対策は,単なる予算措置に 一!2一.
(18) とどまっていたが,法的根拠を持つ特別対策として関係各省の予算も逐年 増額され,実施されることになった。この間の施策の重点は,同和:地区住. 民の生活の安定向上を阻害している諸要因の解消であり,周辺地域との格 差是正であった。しかしながら,同対法施行10年を経過した時点で,なお 残:事業が見込まれていうことを理由に,衆参両院で3つの付帯決議{2)を. して,3年間延長することとなった。 第2節. 「地域改善対策特別措置法」の制定と同和行政の転機. さらに,昭和57年には,同対法の失効にともない,同法施行13年の成果 を踏まえ,残された課題の解決のために「従来の施策の反省に立った新た な観点を加えた」地域改善対策特別措置法(地対法)が5年間の時限立法と. して成立し,施行された。地対法の新たな観点とは第2条第2項の行政に 対する訓示規定である。そこには,事業実施にあたっては, 「対象地域と. その周辺地域との一体性を図り,公正な運営に努めなければならない」と した点である。(3)それは,同法成立にさきがけて,出された内閣の諮問 機関である同霜対策協議会(同対協)の意見具申(S.56..8.18及び12.10)に. 基づいている。. 昭和56年8月18日目同対協の意見具申(4)によれば,同対事業によって生 活環境,産業基聲整備一lg =)∫いては,「かなりの進展がみられる」し,保育,. 教育の充実,職業の安定化にも「相当な成果をあげて」きたとし,対象地 域住民の生活の改善向上という「目的を達しつつある」としている。しか し,計画中の残事業の達成には,「なお数年を要する」と見込んだ。また, 関係施策実施の結果生じてきた問題として,. ①地法公共団体の財政に相当重い負担となってきたこと ②施策の内容や運営が妥当であったかどうか疑問視されるものがあるこ と. ③民間運動団体の施策の要求への対応や児童生徒の差別発言問題等の処 理に苦慮していること. ④,①②③と関連して同和対策事業に対する国民の批判的意見が見られ ることを指摘している。そして,「施策の内容及び運営についての再検討」 と施策の「適正化と効率化」を求めている。 一13一.
(19) つついて,同年12月!0日の意見具申〔,〕では,同和関係施策の進め方に. ついての問題点として,必ずしも住民の理解を得ながら行われなかったこ とを指摘し, 「行政機関の中にはややもすると民間運動団体の要望に押さ. れてそれをそのまま施策として取り上げるものもありまた同和対策事業の 事業量が大きくなるにしたがって,それが他の施策の拡充整備を抑制した りあるいは周辺地域の状況に比べて不均衡を生ずる等,そこに摩擦が生じ てきたことも見過ごすことができない問題となってきた」と述べ行政の主 体性の欠如とその結果としての逆差別について言及した。そして,新規立 法においては, 「一般法による施策だけでは解決できない事項や,一定期. 間内に特定目的を達成する必要のある事項」を内容とするとした。このこ とで,特別対策としての同和対策独自の目的と内容が明らかになるととも に同和対策と一般行政の関係が明確となった。. そして,問題点の是正のために ①「物的施設については,周辺地域との間に格差のないものを整備し,. その運営にあたっては,周辺地域の人々(b利用にも供するような配慮 をする必要があること」. ②「特に個人給付的事業については,行政の主体性を確保しながら;そ の運営の公平の確保が図られる必要のあること」. ③「同和対策事業はもとより地方公共団体が独自に実施する関係施策に ついても,その事業の内容及び運営に関して,広く住民一般のコンセ ンサスを積極的にえる努力をする必要がある」 と述べている。. ①では,逆格差が生じないようにするための周辺地域との一体性の確保 を意味し,②では民間運動団体を事業の受け皿とするいわゆる窓ロー本化 を否定し,行政の主体性と公平性の確保を求めており,③では,同対事業 が,ややもすると行政機関と同和関係者のみによっておこなわれている印 象を与えていたことを反省し,広く住民の理解と合意を得ることを求めた. ものと考えられる。また,地対法の第1条では対策事業の内容を「政令で 定める事業」として政令化したことも重要である。それまでの同対法では 「各号に掲げるもののほか,前条の目的を達成するために必要な措置を講 ずるとする」(第6条入)となっていたことから,運動団体の要求をそのま. ま事業の内容とする肥大化が生ずる原因となっていたのであったが,地対 一14一.
(20) 法による政令化によってをその原因を除去したのであった。 以上をまとめてみれば,1982年目昭和57)からの地対法段階は,同対法施. 行期の格差是正,差別解消に加え,行政の主体性の確立をもとに周辺地域. との一体性や施策の公平公正な運営を求めた(地対法第2条第2項に訓示 規定の挿入)ことによってt.国の同和行政の大きな転機の始まりを意味し. ていた。予算計上,同対審答申,同対法制定など,これまでの同和行政の 転機は,いずれも同和対策を単に拡大強化するものであったに比べると,. この転機は,同和対策を根本的に変える方針の変更という意味で,真の転 機と言える。そして,そのような新たな観点から,法律の名称も事業の名 称も「同和一」から「地域改善一」へと変更したと考えられるのである。 つついて,地対法施行5年間の中間年にあたる!984年(昭和59)6月19日 前は,内閣の諮問機関であ・る地域改善対策協議会(地対協)が, 「今後にお. ける啓発活動のあり方について」という意見具申(6)を内閣総理大臣中曽. 根康弘に提出した。この意見具申は,国及び地法公共団体の行政機関に対 して軌道修正を求めるものだけでなく,民間運動団体のあり方にも言及し たことで,さらに突っ込ん翠内容となった。. まず,地対協は,これまでの15年間の約2兆円の国費とこれを上回る地 方公共団体の経費の投入の結果, 「同和地区住民の生活実態,物的環境の. 改善は相当に進み,一部の地区については問題は残してはいるものの,い わゆる残事業は地域改善対策特別措置法の有効期間内におおむね逢成でき るど見込めそうな.状況になっている」との現状認識を示し,さらに「心理. 的差別解消も,実態的差別の全般的な減少,入下意識の普及高揚及び各種 啓発施策の実施により,あ.る程度まで進んできたといえる」という認識に. たった。しかし,同時に3つの新たな問題となる意識が生じていると指摘 した。その3つとは,①同和地区に対する「ねたみ意識」の表面化,②同 和問題に対する「またか意識」及び③こわい問題であるという意識の発生 である。. 「ねたみ意識」が生じるのは,意見具申では,次の3点を示している。. ①行政の主体性の欠如から民間運動団体の要望をそのまま施策として取 り上げるものがある. ㊧一部に施策が行政と同和関係者のみによって行われるがごときEP象を 与える例があった 一一. @15 一.
(21) ③事業量の拡大が他の施策の拡充整備を抑制したり,周辺地域の状況に 比べて不均衡を生じさせる等そこに摩擦を生ずる事例もあった。 これらは,昭和56年の意見具申でも触れられていたが,行政の主体性の 欠如が「ねたみ意識」の原因となることをここではっきり言ったのである。 さらに,①③の状態は, 「国民に同和行政に対する不信感を与える以外何 物でもない」とはっきり言い,②に対しては, 「それを避けるために関係. 施策の内容や予算額を広く公開するなどして国民及び地域社会の理解を得 る」と公開による適正化を打ち出したのも注目してよい。. またかという意識は,画一的で新鮮味にかける啓発活動から生じたとし, こわい問題という意識の発生は,「民間運動団体の行き過ぎたいわゆる確 認,糾弾!をはじめとする行動形態に起因する」とはbめて確認・糾弾のマ イナスの効果について述べている。さらに, 「意見の潜在化傾向について. は,民間運動団体による行き過ぎたいわゆる確認,糾弾が原因となってい ることは否定できない」と述べ確認・糾弾が,自由な意見表明や意見交換 を抑制し,阻害していることを述べている。啓発の方向として「誤った意 識を持っている人に対しては根気強く正しい理解を求めていく」としたの は,確認・糾弾と対比において考えるならば,その否定であることは明ら かである。. そして,啓発のための条件整備として, ・。¢同和問題に対する自由な意見. 交換ができる環境づくりと②いわゆるえせ同和団体の横行の排除をあげて いる。「同和」を名乗り,何らかの利権を得ることを目的として,企業や 行政に不当な圧力をかけるえせ同和行為は,長年にわたる差別解消の取組 みを踏みにじるものとして,勇気を持って排除することを呼びかけたのは 当然と言える。. また,この意見具申で初めて,同和地区の実態の正しい理解に関連して, その「社会的低位性を強調するあまり,かえって心理的差別を助長させて しまうことのないよう十分な配慮をしなければならない」と留意を求めて いるのは,従来の教育啓発活動で対策事業の必要性を説明するのに,同和 堆区の低位性を強調していたことで,かえって差別意識を植えつける結果 となっていたパラドックスを反省したものとして注目される。. 一16一.
(22) 第3節. 「地域改善対策特定事業に係る国の財政上の特別措置に関する. 法律」の制定と一般対策への移行 地対法が期限切れを迎える前年の昭和61年に,再び地対協が地対法後の 地域改善対策あり方の検討を始めた。地対法については,制定当初,与党 である自民党としては,特別措置法としては最後のものと理解されていた。. しかし,残事業などの課題があることから,法的措置の延長を求める声も 一方にあった。地対法後も課題があるとすれば,法的措置の要否を問う以 前に,同和問題の解決のための基本問題とは何かを明確化しなければなら ない。そのために,地対協に基本問題検討部会を設置された。そして,昭 和61年8月5日に基本問題検討部会報告書(以下,部会報告)(7)が発表された。. 部会報告は,地対協総会に報告する性格のもので,法的措置の要否は地 対協総会で決定すべきものであった。この部会報告書は公表され,多くの 議論を呼ぶとともに,部落解放同盟(解同)の激しい批判を受けることとな った。(8) しかし,この部会報告は,まぎれもなく政府の同和政策の転 換を理論づけるものとなった。(s). こ∂)部会報告は,昭和59年の中間意見具申よりさらに踏み込んで同和問. 題の解決のための同和関係者の自立・向上と国民の理解を妨げている諸要 因の解消の基礎的条件を民間運動団体のあり方に求めて言及したため,解 同はs.部落責任論と決め’pけ,強く反発した。. 部会報告は,同和タブー,自由な意見交換を阻害している要因として民 間運動団体の確認・糾弾をあげ,それが「同穐問題はこわい問題,面倒な 問題であるという意識を植え付け」,さらに確認・糾弾に対する恐れから, 行政の広報,マスコミの報道の自由を失わしめているとの認識を示したの であった。そして,その「確認・糾弾行為は,被害者集団による一種の自 力救済的且つ私的裁判的行為であるから,被糾弾者が当然にこれに眼すべ き義務を有するものではない」とし,糾弾権があるという解同等の主張に 対し,「糾弾権の根拠となる法律がないことは言うまでもないが,判例に おいてもそのような権利は認められていない」とそれを否定した。 行政の主体性については,その欠如からくる不適切な事例として, (1)民間運動団体に補助金を支出していながら,その適切な執行について. 十分な監督を実施していない 一17一.
(23) (2)個人給付的施策の対象者の資格審査が民間運動団体任せとなっており. 行政機関が資格審査を十分行っていない例や団体に加入していない同 和関係者の施策の適用が結果として排除される (3)公的施設の運営が特定の民間運動団体に独占的に利用されている をあげている。 主体性の欠如の原因。エ。)として,. ア,「行政職員が民間運動団体の威圧的な態度を恐れるとともに,激しい確. 認・糾弾や暴力行為脅迫を受けるのではないかという不安を持っている ことが考えられる」. イ,「行政職員の閥にこれまでの経緯等から『あきらめ主義』や『事なかれ. 主義』があり,地域改善行政を特別視する傾向があること,同和問題に ついての行政職員の理解や認識が十分でない」 ウ,「さらに, 『対象地域』, 『同和関係者』等地域改善行政における基礎. 的概念の定義が必ずしも具体的に明からにされていない」 ことがあげられでいる。. 部会報告では,適正化のための方策として,. ①民間運動団体との関係を見直すこと ②適正化を図っていくために,国は都道府県に対して,都道府県は市町村 に対して適切な助言,指導を積極的に行t“うこと ③「対象地域」,「同和関係者」,「同和団体」,という行政運営の基礎的概念を. 整理し,具体的にその定義を明らかにする ④事業の内容や目標,予算等を広く住民に公開する ⑤行政職員の理解を十分深めていくべきことや行政の監査,検査機能を積 極的に活用し,内部的なチェックを行っていく ことをあげている。①②⑤については,適正化:方策として,ストレートな. 表現であるのでよく分かるので,③④についてのみコメントしてみる。な ぜ③にいう基礎的概念を明確化しなければならないかと言えば,前述の行 政の主体性の欠如から来る不適切な事例の(2)の個人給付的事業における 施策の公平に係る問題と,不適切事例の(1)の運動団体に対する補助金支. 出が毒るからである。④の公開性については,広く国民的理解を得ること と公開によるチェック機能を期待していると考えられる。. 次は,何らかの利権を得るため同和問題を口実にして,企業・行政へ不 一工8一.
(24) 当な圧力をかけるいわゆるえせ同和行為の排除についてであるが,昭和59 年の中間意見具申では,えせ同和団体の排除が指摘されたが,えせ同和行 為には,既存の運動団体の構成員によっても行われたことから,えせ同和 団体ではなく,えせ同和行為としたことは,既存の運動団体も聖域でない ことを明らかにした。また, 「不当な要求に対しては,断固として断り,. また,不法行為については,警察当局に通報する等厳格な対処で臨む」必 要性を述べたことも前回の中間意見具申より,より踏み込んだものとなっ ている。警察権の「民事不介入の原則」があるので,えせ同和行為につい ’ては,苦慮している面があったが,不法行為については,警察の助力を求 めていくことを示したのである。. 同和教育についての批判的意見が多いことの背景として, 「民間運動団. 体が教育の場に介入し,同和教育にゆがみをもたらしている」としたこと も初めてである。教育の中立性を守るために行政機関に対して, 「毅然た る姿勢で臨む」ことを求めている。. それから,地区指定の解除についても初めて触れた点は注目される。こ れは,現行施策の既得権益化を否定し, 「いわゆる地区指定を解除するこ. とは,差別意識の解消を促進する観点から望ましい」としたことは,地域 改善(同和)施策の実施のための地区指定しいう線引きが,地区内外の区別. となり,同和対策がかえって,差別解消の妨げになっていることを意味し ているものと解され,積極的な提案である。. 以上,部会報告の前回の意見具申より踏み込んだ内容をかいつまんで見 たが,その部会報告の上に立って,12月!1日に法期限をひかえての最終意 見具申α1)を内閣に出したのである。建築に例えれば,部会報告は土台で あり,意見具申はその上に建てられた建築物である。解同の批判によれば 部会報告では,地区指定の解除を言い,意見具申では法的措置について述 べているので,運動の成果としているが,元々,部会報告は,法の要否を 論ずる性格のものではないのである。〔、2). 意見具申では「18年間の地域改善対策の推進により,同和地区と一般地 域との格差は,平均的に見れば相当程度是正された。心理的差別も解消が 進んでいる」という基本認識にたっているが,反面,同対審答申では全く 触れられていない問題として「行政機関の姿勢や民間運動団体の行動形態 に起因する新しい諸問題」を提起している。そして,地域改善対策の今日 一19一.
(25) 的課題として,①行政の主体性の欠如②同和関係者の自立;向上の精神の 滴養の軽視③えせ同和行為の横行④自由な意見の潜在化條向をあげている。 これは,前回の意見具申と部会報告を整理しまとめたと考えられる。その 上で問題の是正の方策を部会報告の線で述べてから,今後の地域改善対策 として,「地対法が失効すれば,地方公共団体の財政負担は増加せざるを 得ない」と述べ, 「今後とも必要な事業を実施していくためには「何らか. の財政措置が必要であって,そのためには特別の立法措置が必要であろう」 とした。ただし, 「これまでの行政運営の反省と現行事業め基本的な見直 し」の上に立って,「新規立法とすべきである」こと,「地域改善対策は, 永続的にに講じられるべき性格のものでなく,迅速な事業の実施によって, できるかぎり早期に目的の達成が図られ,可及的遠や菊・t一般対策へ全面. 的に移行されるべき性格のもの」で,「国民に対する行政施策の公平な適 用という原則から考えれば,できる限り,一般対策の申で対応することが 望ましい一との考えに立ち,基本的な見直しを行い,「真に必要な事業に 限定して,特別対策を実施すべきである」と.した。. 見直しの具体的な基準は,次の7点である。 ①現行事業は,可能な限り一般対策へ移行 ②既に事業目的を達している事業やニーズの乏しい事業は廃止 ③一般対策との均衡に十分配慮 ④個入給付的事業については原則として廃止 ⑤物的事業については,昭和62年度以降具体的な:事業計画が明らかでない. 事業は一般対策へ移行か廃止 ⑥人的事業についても一般対策の移行を検討 ⑦啓発・人権相談事業については,今後とも積極的に推進 また,前回の昭和56年の意見具申で指摘されたにもかかわらず,是正さ れてない不適切な行政事例として,. a,個人給付的事業の対象者の資格審査が民間運動団体任せになっている b,公的施設等の運営が特定の民間運動団体に独占的に利用されている例 がある. 。,民間運動団体に補助金を支出していながら,その適正な使用について の指導・監督等を十分に行っていない. d,公営住宅等の一部に見られる著しい低家賃 一20一.
(26) e,特別な納税行動 〔eの特別な納税行動とは,俗称で「申告是認」と呼ばれているもので,. 所轄の税務署に納税申告をせずに民間運動団体によってまとめて,国税 局に行い,税務調査なしにそのまま認め,ほとんどが無税となるという 事実上の脱税行為であるe〕(、3). このような事例は,民間運動団体の目的である差別の解消という正義と 公平の主張が,一般国民にそのまま受け取ってもらえないし,逆に特権的 利益を狙いとしているという印象を与え,差別解消に逆行する。. また,この意見具申では,同和教育に対する批判的意見の背景として, 「一部に民間運動団体が教育の場に介入し,同和教育にゆがみをもたらし. ている」をあげ,教育と政治・社会運動との区別,教育の申立性の確保に ついて述べている。. そして,この意見具申により, 「事業の円滑かつ迅速な実施を図るため. の財政上の特別措置」と「一般対策への円滑な移行」を目的とした「最終 の特別法」として「地域改善対策特定事業に係る国の財政上の特別措置に 関する法律」が,5年間の時限立法として昭和62年3月に成立した。. しかし,5年後の平成4年の法期限の到来時には,また,日切れ法案と して,一部改正して,5年間延長されることになった。その根拠は,平成 3年!2月の法的措置の続行を求めた地対協の意見具申である。平成3年目 意見具申では,「平成4年度以降の物的事業量が相当程度見込まれている。 この残事業は,地域的な偏在があり,財政基盤が脆弱な地方公共団体にも 見られる。また.,就労対策,産業の振興,教育,啓発等非物的な事業の面 においてもなお今後とも努力を続けていかねばならず,これらのことから,. 直ちに一般対策へ全面的に移行することは適当でなく現実的でもない」と 述バているのである。(14). 以上をまとめると,同対法施行期ではおもに実態的差別の解消のために 対象地域・の生活環境の改善と格差是正に重点が置かれてきた。その結果,. 実態面.において相当程度格差が是正された。ところが,事業の進展にとも. なって新たな問題が起こってきた。それは,行政の主体性の欠如からくる 周辺地域との不均衡や公的施設が特定の運動団体に独占的に使用されてい るという公平公正にかかわる問題であり, 「対象地域と周辺地域との一体 一21一.
(27) 性の確保」ないしは, 「広く国民のコンセンサスを得る」という観点から の適正化が図られたのが地対法期であった。さらに,地対財特法期では,. 不均衡からの「ねたみ意識」,糾弾あるいはえせ同和行為からの「こわい 問題」という意識,画一的な啓発からの「またか意識」を総合的にとらえ 最終の特別法による措置がとられ,円滑な一般対策への移行期としての施 策が進められたのであった。. (註). (1)原田伴駅子『被差別部落の歴史』(【朝日選書】朝日新聞社,1975.3.20. 発行)355頁と真田是著『同和行政Q&A』 (部落問題研究所,1993.5.20. 発行)9頁参照。 (2)同対法の延長にあたって,衆参両院内閣委員会での3つの付帯決議。. 「政府は,同和問題の重要性にかんがみ,この問題の早急な解決を図る ため,次の事項について適切な措置を講ずるよう努力すべきである。 一,法の有効期間中に,実態の把握に努め,速やかに法の総合的改正 及びその運営の改善について検討すること。. 一,同和対策事業を実施する地方公共団体の財政上の負担の軽減を図 ること。. 一,同和問題に関する事件の増発状況にかんがみ,国民の理解を深め るため,啓発活動の積極的な充実を図ること。 右決議する。」. 総務庁長官官房地域改善対策室編集『同和行政一二十年の記録一』(中 央法規出版)所収。149頁。 (3)兵庫県教育委員会『地域改善対策としての教育』(1983年発行),!!7頁. に所収。馬原鉄男著「「法」以後の部落解放運動」〔杉之原寿一,馬原鉄 男,東上高志著『90年代の部落問題』(部落問題研究所)〕によれば, 「法. 及び事業の名称を「地域改善対策」としたことと,ことさらこの訓示規 定を導入したことは,この法律がめざした「格差是正」から「周辺地域 との一一:一体性」 「公正な運営」に政策の重点目標を転化したことを意味を. している」と地対法段階の特徴について述べている。 (4)前掲書『地域改善対策としての教育』!12頁∼113頁。 (5)同上書114頁∼1工5頁。. 一22一.
(28) (6)兵庫県教育委員会『部落差別を解消する教育一カリキュラム試案』(19. 85年発行)に所収,153頁∼163頁。兵庫県民生部地域改善対策局編「地 域改善対策の現況』264頁∼278頁に所収。 (7)地域改善対策研究所編『地域改善対策の展望』(土曜美術社)に所収。 !05頁∼162頁. (8)部落解放同盟中央本部『「地対協」基本問題検討部会報告書に対する 抗議声明とわが同盟の見解』 (解放出版社)によれば, 「部会報告」は,. 《驚くべき差別的な内容に満ちている》(!頁)《部会報告は,確認・糾. 弾そのものの否定を求めていることに代表されるように,部落解放運動 の弾圧を狙ったものであり,原則として一入給付を一一ee対策で対応すべ. しとの指摘に示されるように「同和対策事業」の打ち切りを狙ったもので あり,これはいわば,福祉・教育切り捨て=行革の部落版である。わが同. 盟としては,絶対に認めることができないものであり, 「同和行政」史 上,最悪の歴史的汚点として,断固抗議するものである。》(!1頁)と述 べている。. (9)東上高志著『啓発活動はいま』 (部落問題研究所)58頁。. (10)行政の主体性の欠如ないし喪失の原因としては,行政が「足踏まれ論」. と「不利益=差別論」を受け入れたことからくると考えられる。「足踏 まれ論」とは,踏まれている側のものが,踏まれている痛みを知ってい るのでありジ踏んでいる側は,踏んでいることすらわからないという論 法によって,差別かどうかを判断する資格のあるのは,その痛みを知っ ている被差別者であるという論理である。 「不利益=差別論」とは,. 「日常部落に生起す.る,部落にとって,部落民にとって不利益な問題は. 一切差別である」というテーゼである。どちらも解同委員長であった朝 田善之助の発案によるので,これを「朝田テーゼ」と呼んでいる。 (11)兵庫県民生部地域改善局編『地域改善対策の現況』に所収。279頁∼2 93頁. (12)熊代昭彦著『同和問題解決の展望』109頁∼110頁参照。部落解放同盟. 中央本部の『地域改善対策協議会の意見具申に対するわが同盟の見解』 (1986年12月17日)によると,次のような記述が見られる。. 《「意見具申」を,8月5日に出された「 地対協」の基本問題検討部 会報告と比べたとき,新法の必要性を明確に認めたこと,確認・糾弾に 一一. @23 一.
(29) 対する全面的な否定と攻撃は一定後退したこと,さらには,法的規制を 全面的に否定した部分が完全に削除されたものとなっている。これは, 明らかに, 「部会報告」があまりにもひどい内容のものであり,国民的. な批判に堪えなかったものであることを示している。》. 《政府・与党内の一部にあった,強硬な法打切り論,さらには,8月5 日に出された「部会報告ゴが,今後の法律の要否を論議する前提として 民間運動団体の運動のあり方の是正,とりわけ確認・糾弾を止めること を求めていた状況を考慮したとき,とにもかくにも,現行法失効後も,. 法律の必要性を認めさせたことは,われわれの戦いの成果として評価す ることができる》. 《「意見具申」が,今後とも法律の必要性を指摘せざるをえなかった背 景には,わが同盟を中心とした,部落解放基本法の制定を求めた,かっ. てない強力な国民運動の盛り上がりがあった。また,8月5日に出され た「部会報告」に対する各界各層からの批判の高まりがあったからであ る。》. しかし,本文で触れたように「部会報告」と「意見具申」の性格から 考えれば,的外れな批判と言わねばならない。 (13)前掲書『同科問題解決の展望』127頁,135頁∼136頁参照。同書所収. 講演熊代昭彦「地域改善対策の現状と課題」294頁 (14)平成3年12月11日「今後の地域改善対策について」 (意見具申)地 域改善対策協議会 「最終の特甥法」であり,事業の迅速な実施と円滑な一一ee対策への移. 行を目的としていた「地対財特法」が,再度延長することを求めた平成 3年12月目地対−協の意見具申について,解同は,どのよ’うな反応を示し たか。. 1992年1月!3日の『解放新聞』(解同機関紙)に『「地対協・意見具申」. に対する見解』を解同中央本部書記長小森龍邦の署名入りで発表してい. る。それによれば,まず,地対協が平成4年度以降も法的措置を含め適 切な措置を検討する必要を述べたことを「86年「地対協」路線からの脱皮. の閉めの苦渋の表現」と評価している。そして,全国的規模での実態調 査の必要性を述べたことについては, 「部落完全解放にむけて,総合的. かつ抜本的施策のための基礎を明確にすると位置付けることができる」 一 24 一一.
(30) と評価し,審議機関の設置も肯定的に評価している。さらに地対協が差 別事件の司法機関や法務局等の人権擁護のための公的機関による中立公 正な処理の推進と人権擁護機関の充実,強化について述べたことにたい しては,法務省の人権擁護行政が整備されたものとは言い難いことを認 めたものと評価している。そして,これらの意見具申に対する評価の上 にたって小森は, 「われわれは今長い長い道程を歩いた。そしてやっと, 「法打ち切り」「一一ee行政への移行」路線の舵をなかば切りかえすこと に成功した」と主張している。. 一25一.
Outline
関連したドキュメント
教育・保育における合理的配慮
および皮膚性状の変化がみられる患者においては,コ.. 動性クリーゼ補助診断に利用できると述べている。本 症 例 に お け る ChE/Alb 比 は 入 院 時 に 2.4 と 低 値
我が国における肝硬変の原因としては,C型 やB型といった肝炎ウイルスによるものが最も 多い(図
ピンクシャツの男性も、 「一人暮らしがしたい」 「海 外旅行に行きたい」という話が出てきたときに、
全体構想において、施設整備については、良好
結果は表 2
学年進行による差異については「全てに出席」および「出席重視派」は数ポイント以内の変動で
神はこのように隠れておられるので、神は隠 れていると言わない宗教はどれも正しくな