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第1節 時期区分について

 本論文で扱っている兵庫県の同和教育行政は,主として同和対策特別措 置法制定以降から今日までの期間である。それを4つの時期に区分して論

じている。区分している基準は,行政の主体性の確立と政治的中立性の保 持と関連している。

 まず,同対審答申以来,行政が運動団体と連携するということで,いわ ゆる窓rr 一本化によって運動団体に依存しながら,行政施策を拡大してい った昭和49年までの「行政の拡大期」(第工期)。続いて,入鹿高校事件を 契機として,県行政に対する不信を除去しようとして,307号教育長通知

をだした昭和50年から昭和56年までの行政の主体性と政治的中立性の確立 した「行政の転換期」(第1]1期)。そして,特別対策による成果の上にたっ て新たに生じで きた問題を是正していった「行政の適正化期」(第皿期)。

さらに,特別施策の終結を目指し,同和問題の完全解決へと進んでいく

「一般対策への移行期」(第W期)とした。

 時期区分にあたっては,主体性と中立性という概念は行政の姿勢を表現 するのであって,それ自体価値を示すものではないので,第1章で述べた ように公正・公平の概念が,時期区分においても指標となっている。第工 期においては,行政は,運動の要求によって施策を拡大させながらも,主 体性を確立していなかった時期である。第H期においては,行政は主体性 を確立し,個人施策の公正・公平な適用が,運動団体の所属とは無関係に 対象地域内においてなされていったのである。第皿期においては,地対法 制定によって,その第2条2項に「対象地域と周辺地域との一体性の確保」

の規定が定められたことによって,周辺地域との関係においても,公正・

公平な施策の実施がなされるようになったという区分ができる。第IV期で は,事業の進展によって,事業の完了・終結にともない,地区指定の解除 が現実化してきているし,一般対策への移行が課題となってきた。そして,

特別法も真に必要な事業に限っての「特定事業に係る国の財政上の特別措 置」となっているのである。

 したがって,時期区分は,主体性・中立性を根本基準に三層構造になつ

ている。

図1,時期区分の三層構造

H IV

≡≡≡___ _≡≡塁≡≡≡≡塁≡ ≡≡≡≡≡≡圭≡ 事業の終結

;;;;; ;;;;;;; ;;;;;;

一般対策への移行

≡≡…≡== =≡…i≡≡≡≡≡…琵 ≡≡≡≡≡i≡≡≡…套

莞葦≡≡≡≡≡ 公   正 ・

;;;;; 〔地区内〕

〔地 区 外〕

≡≡≡≡≡≡歪

塁≡≡…≡葦 主  体  性 と  中

一 一 一 一 一

 さらに各時期のキーワードをあげれば,

第工期  〔行政の拡大期〕

    運動団体への依存, 「窓ロー本化」,政治的偏向,糾弾の是認 第ll m 〔行政の転換期〕

    個人施策の公正・公平,行政の理論武装,地区内外の交流の促進 第皿期  〔行政の適正化期〕

    周辺地域との一体性,適正化と効率化,住民一般のコンセンサス     事業の政令化

第IV期  〔一般対策への移行期〕

    迅速な授業の実施,可及的速やかに一般対策へ移行,自立向上  1工期から当期,N期へと次第に同和対策事業の完了終結へ進展していく

けるのは,行政の主体性・中立性の確立があってのことであり,民間運動 団体に従属してはなしえな沿。

 このような時期区分をする目的は,兵庫県の同和教育行政の軌跡を明確 にすることであり,さらには,その軌跡の延長線上に明日の教育・啓発の あり方を求めようとするためである。この区分は,国・県の文書に表れた ものをもとにしているため,県の方針が市町にまで浸透し,市町の実態が 県の方針どおりとなっているまでには,タイムラグがある。

第2節 行政の拡大期【第1期】

(1)「同和対策事業特別措置法」制定以前の取組み

 兵庫県では,既に戦後,昭和20年代から同和教育の指針が示され,その 取組みが始まっていた。(1) 県教育委員会の指導助言の要綱(方針)に初       一27一

めて, 「同和教育の振興」が取り上げられたのは,昭和25年のことである。

そこには「同和教育は,教育基本法に明示された教育目的を達成するため に,…その理念は入隅普遍の原理である基本的人権を根基とする…一切の 差甥を払拭して…真理と正義を実現し,もって平和国家を建設しようとす るにある。したがって,同和教育は,そのまま新教育なのである…」(2)

という表現が見られる。これは,明らかにつくられたばかりの日本国憲法 や教育基本法に依拠し,戦後日本の民主化の中に同和教育を位置づけよう としたものであった。そして,同年には,県教育委員会は,指導者用資料 として, 「同和教育の手引」を刊行した。また,昭和26年には,児童生徒 用の同和教育資料として初めて,中学生用「友愛読本」をつくり,昭kl 28 年に小学校高学年用の「なかよし読本」を刊行した1。この昭和20年代は,

全国的にも被差別部落の児童生徒の長欠・不就学の取組みが行われた時期 で,昭和28年には,全国同和教育研究協議会(全同教)が発足し,兵庫県同 和教育中央委員会(昭和25年発足)が改組し,兵庫県同和教育協議会(兵同 車)が発足しでいる。

 昭和30年の指導助言の方向(方針)では,同和教育について「同和教育の 徹底なくして,民主教育の徹底なく,民主教育の徹底なくして,民主化の 実現はありえない」(3)と述べ,民主化の実現に向けての同和教育の重要 性を指摘している。そして,教師自身の前近代なものの考え方や傍観的態 度の問題性を指摘し,同和教育が「孤立化・専門化」することなく, 「す べての地域,すべての学校において,すべての教師すべての入間を対象と

して」,同和教育を主体釣に推進することを提唱している。社会同和教育 においても,「純真な児童・生徒に誤った意識を植えつけるのは,ほとん ど無理解な買入である」との認識から,学校教育との一体的関係にたって,

各種社会教育活動において「民主道徳の徹底と民衆啓発」という方向で部 落問題の学習が進められていった。(4) そのための同和教育資料として,

「同和教育のしおり」1〜VIを昭和33年から39年にかけて発行した。また,

昭和38年度から,同和地区の児童生徒を対象とした「学力補充学級」や成 人を対象とした「成人学級」を行う市町に対する補助金制度を開始した。

同和教育の研究・研修の面でも,昭和36年に県指定の同和教育研究校制度 ができ,県下各地で実践が積み重ねられていった。

 県教育委員会は,昭和36,37, 38年目「友だち」 (小学生用), 「信愛」

(中学生用)という児童生徒用副読本を刊行した。これらの条件整備によ って,同和教育の実践は拡大していった。ちなみに,昭和34年の兵三教の 調査によれば,同和教育の実施状況は,次の表2のようになっている。

表2,県下中学校における同和教育実態調査(5〕

同和教育を取り上げて実施 している

..一

Q49校.(、回答校の81%)・一..一.・.

イ,道徳の時間のなかで ロ,教科指導のなかで ハ,学校運営のなかで 二,特別活動のなかで ホ,特設単元によって へ,その他

162校(38%)

97校(22%)

コ0校(16%)

47校(!1%)

 32校(8%)

 21校(5%)

灘灘晒簾llllll興i畿

 この昭和30年代における兵庫県の同和教育行政は,国レベルでの同和対 策国策樹立,同和対策審議会設置という機運の高まりと相侯って,条件整 備において着実に拡大していったといえる。

 続いて,昭和40年に同対審答申が出されると,それに基づいて,県と県 教育委員会は,昭和43年に「兵庫県同和対策基本要綱」と「同和教育基本 方針」を策定した。一一昭和44年に同対法が施行されると,同和教育行政もこ の法によって実施唐れ.ることとなった。「同和教育基本方針」では, 「同和 教育の本質は一,人権尊重.の精神に徹し,日本社会の歴史的発展過程におい て形成された身分制度に基づく差別や,現代社会の矛盾からくるもろもろ の差別について正し.く認識し,その解消に積極的な意欲を持った人間を育 てることである一〕と述べ,同和教育の目的と内容を明確化した。そして,

同和教育の徹底の「た.め一に丁あらゆる教育の機会と場でその指導に努める」

とし, 「県下のすべての学校,すべての教育施設,すべての地域社会にお いて」同対審答申に基づいて推進する旨をうちだした。

(2)「同和対策事業特別措置法」制定以後の同和対策行政

ア, 「帝紀対策事業一特別措置法」の制定と兵庫県の予算の推移

同対法が制定.ウれると同和対策事業に対する法的根拠が確立し,事業予

一一@29 一

算も急速に拡大していった。表3は,昭和40年の同対審答申以後の県予算 の推移である。

 表3,同和対策事業予算推移  (単位:百万円)

年度 民生部 商工部 労働部 農林水産部 都市住宅部 教育委員会 合計

40 71 15 4 91

41 105 20 4 !30

42 !63 4 2 26 46 7 250

43 208 34 5 39 38 工4 343

生活環境 社会福祉 産業基盤 職業雇用 教育 啓発 合計

改善 整備

44 487 3 136 16 67 12 721

45 1,113 9 425 40 422 19 2,028

46 1,836 14 928 53 714 22 3,567

47 2,286 37 ユ,477 58 965 27 4,850

48 3,412 73 3,工63 98 2,398 48 9,!92

49 4,818 271 4,862 179 3,847 77 14,057 50 6,351 659 6,393 209 5,303 114 19,029 51 4,932 530 7,012 268 5,845 60 18,647 52 4,898 318 8,278 268 6,088 88 19,938 53 4,729 242 8,986 323 6,335 87 20,702 54 3,976 210 8,582 350 6,526 136 19,780 55 3,915 214 7,726 364 6,658 157 19,034

56ぺ: 3,614 287 8,461 383 6,828 !63 19,736 合計 46,367 2,867 66,426 2,609 51,996 1,010 171,278          [兵庫県民生部地域改善対策局企画調整謀調]

 1969年(昭和44)に同和対策事業特別措置法が制定されると, 「公立義務 教育諸学校の学級編成及び教職員定数に関する法律施行令」も改正され,

「同和対策として教育上特別の配慮を必要とすると認められる小学校また は中学校が存する場合にあっては,当該学校の数等を考慮して文部大臣が 定める数」の教職員を加配されることとなった。(巳〕

 また,昭和45年には,県教育委員会事務局に同和教育指導室を設置し,

学校教育課,社会教育課の中に分かれていた同和教育行政を統合し,集中 的に推進する体制をとることとなった。さらに,同年からは,児童生徒用 の副読本は,無償配布されることとなった。

 イ,兵庫県の運動と行政の特徴

 さて,行政と運動の関係であるが,兵庫県では運動団体と連携し,運動 の理論と経験に学び,同和地区住民の要望に受け入れながら進めてきたと いう経緯がある。それは,同対審答申の「地区住民の自発的意志に基づく 自主的運動と緊密な調和を保ち」,施策を実施するという提言から来たも

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