発達障害をもつ子どもの社会的参照行動の形成について
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(2) 発達障害をもつ子どもの杜会的参照行動の形成について. 目次. 1. 問題と目的. 研究1 方法 参加者. 事前査定 セッティングと材料. 11. 従属変数等. 12. 手続き. 12. 結果. 17. 考察. 24 27. 研究2 31. 方法 参加者. 31. セッティングと材料. 31. 従属変数等. 31. 手続き. 32. 結果. 36. 考察. 45. まとめ. 49. 引用文献. 51. 付録. 57. 謝辞.
(3) 発達障害をもつ子どもの社会的参照行動の形成について. 問題と目的. 症状の多様性から連続体(スペクトラム)として捉えられる自閉症スペクトラム障害(以下ASD)には、. 自閉性障害、アスペルカー障害、小児期崩壊性障害、および特定不能の広汎性発達障害が含まれる (山本・楠本,2007)。また自閉性障害と認められる人は1万人に4−5人(Chaman,2005)から10−15. 人とされるが、似たような症状を持つASDを含めるとその割合は更に高くなる(Ric㎞an,2001)。自閉. 性障害は、(a)社会関係を調節する非言語的行動、仲間関係、他人との情緒的共有などの対人的相 互反応における障害、(b)話し言葉や会話の開始や維持の障害、反復的な言語使用、ごっこ遊びの 欠如などの意思伝達の障害、(C)限定された興味への集中、儀式や習慣へのこだわり、常同的な行動 や興味の異常によって特徴付けられ、この診断基準を満たさない場合も、社会性の障害や行動や興 味の異常が認められる場合は、ASDとの診断にいたることが多い(AmericanPsychiatricAssociation, 2000)。. このうち社会相互反応に関連しては共同注意(JointA廿ention)が近年注目され、シンボル使用能力 や言語能力、社会一認知プロセスとの関わりが研究されてきた(Holth,2005)。例えば、定型発達の子 どもでは生後6ヶ月から18ヶ月で見られ(Cha㎜an,2005;Fei㎜an,1982)、就学前に見られる急速な 語彙の拡大の基盤となる(Pe1色ez,2009)共同注意は、ASDにおいて欠如することが多いと報告されて. いる(Ho1th,2005;M㎜dy&Crowson,1997)。また、ASDをもつ人の発達において共同注意が重要な 役割を果たすことも示されている。例えば、アイコンタクト、追視、名前への反応に関する親の報告やホ. ームビデオを用いた遡及研究や、高リスクと判断された子どもの追跡研究や、自閉性障害への非言語 性社会的コミュニケーションを重視した介入等の前向き研究により(Chaman,2005)、共同注意が見ら. れた場合は見られない場合に比べ将来の言語能力が高く障害が軽いことが示され、共同注意の不在 は自閉症の強力な予測因子だと考えられている(Dawsonetal、,2004;Mundy&Crowson,1997)。.
(4) 共同注意には様々な形態があるが(Ho1th,2005)、その一つである社会的参照は環境や状況を意 味づけるため他人の解釈を用いるプロセス(Fei㎜an,1982)、あるいは曖昧な状況に直面した際に、 他者の顔を見ることで得られる感情的情報により状況を再評価し行動に反映させるプロセス(Sorce, Emde,Campos,&K1i㎜ert,1985)と定義され、(a)自分自身のシェマヘの同化を目的とした情報を得る. ための他者への注目(Fei㎜an,1992)や曖昧状況の評価に資するため感情的な情報を求めて他者の 顔を見る(Sorce eta1.,1985)といった情報探索と、(b)状況解釈に関するメッセージを受けての動作の. 変化(Fei㎜an,1992)、や環境に関する再評価を反映した行動(Sorceeta1.,1985)といった行動調整 (遠藤・小沢,2001;飯塚・大神,2001)により構成される。なお、これらに曖昧状況に起因する不安定. な情動の調整機能を含める研究者もいる(遠藤・小沢,2001)。また、社会的参照は自他の区別、自我. や自尊心、道徳観の発達を媒介し(Emde,1992)、文化の中に蓄積された情報の知識としての内在化 や、試行錯誤的経験によるリスクやコストの回避による効率的な学習、よい教え手ではない養育者を初. めとする不遇で非応答的な環境下での能動的な社会的情報収集を可能にする(遠藤・小沢,2001)と 考えられている。. このようなプロセスの検討のための社会的参照の研究では、見慣れない玩具や人物、視覚的断崖と いった曖昧状況に乳幼児を曝露し、状況に関する肯定的もしくは否定的な感情的情報を大人(保護 者や実験者)が提示した時に、どのように反応するか(Brim,To㎜send,DeQui㎜io,&Pous1on,2009;. 遠藤・小沢,2001;Vaish,Grossm㎜,&Woodward,2008)が観察され、感情的情報の提示方法を独立. 変数、大人の顔を見たか否か、見た場合の継続時間等の情報探索に関する反応や、玩具や人物へ 接近したか否か、視覚的断崖を越えたか否か、超えた場合の所要時間等の行動調整に関する反応が 従属変数として検討される。しかし、得られた情報を状況の解釈に活用しない場合や、活用しても敢え. て行動調整を行わない場合もある等、社会的参照は外に見える行動の変化からしか判定され得ない 為、実際にどのようなプロセスが作用しているかは不明だという限界もある(遠藤・小沢,2001)。. ところで、社会的参照に障害のあるASDでは、他者の感情を推し量り適切な行動をとるために必要 な手がかりが得られず、交互の会話、共同遊び、他者への同情(sympathy)や共感(empathy)は不可 能なため、他者との関わりの困難が当然に予想される(Pe1色ez,2009)。しかし、社会的刺激や社会的情.
(5) 報への注目に関する研究には、ASDの発達メカニズムを理解し、社会性やコミュニケーションを促す 早期介入手続きの策定に資することが期待される(Dawsonet al.,2004)にも関わらず、その数は少な い(飯塚・大神,2001;Pe屹ez,2009;Warreyn,Roeyers,&Groote,2005)。. そのうち曖昧状況での情報探索に関する研究では、例えば、Bacon,Fein,Morris,Waterhouse,&. A11en(1998)が、4−5歳の自閉症、言語遅滞、知的障害、及び定型発達群の子どもが室内で遊んで いる時に動物の鳴き声の類似音を再生したところ、大人を見る反応の生起頻度が自閉症群で最も少 ないと報告した。また、Cha㎜anetal.(1998)は、生活年齢や言語能力を統制した生後20ヶ月の自閉 症、広汎性発達障害、知的障害群を対象とし、光を点滅させ音を出しながら動き回るロボット、部屋を. 走り回る車、鳴きながら前後に体を揺らす豚の玩具を提示した際に、玩具への指差しや接触にはグル. ープ間に有意差が検出されなかったが、自閉症群ではその他の群に比べて大人と玩具を交互に見る 反応が有意に低いと報告した。さらに、Dawsoneta1.(2004)の研究においては、ASD群はASDを伴 わない発達障害群や健常群に比べて、子どもの名前を呼んだり指を鳴らした際に、大人を見たり大人 が指差したポスターや絵本を見ることが有意に少なかった。. 一方、大人の表情に則した行動調整については、例えばロボットを怖がる大人と同室の子どもの反 応を検討したSigman,Kasari,Kwon,&Y㎞iya(1992)の研究があるが、自閉症群は言語発達を統 制した知的障害、および健常群に比べ大人の顔を見ることやロボットヘの接近をためらうことが少なか った。また、飯塚・大神(2001)は大人と自閉性障害をもつ子どもがいる部屋に面をかぶった人が突然 入室し、大人が子どもと逆の情動を示した場合の行動調整を検討したが、例えば、子どもの肯定的な. 情動に応じて大人が否定的な情動を示した場合、面をかぶった人を回避する等の行動調整は、精神 発達年齢が高い子どもでより多いことが示された。warreyn,Roeyers,&Groote(2005)はIQ等を統制し. た知的障害児と自閉症児を対象に、上下逆にした黒バケツを載せたラジコンカーが動き回った時に母 親が「ああ、素敵(Oh,that’snice!)」と言いながら笑顔を見せた群と、「まあ、危ない(Oh,that’s. dangerous)」と言いながら怖がる表情を見せた群を比較した。この結果、自閉症では知的障害に比べ て笑顔群では母親とのアイコンタクトとラジコンカーへの接近が、恐1布群では回避反応が多く見られ予 測と反対の結果となった。これに関しWa耐eyen etaL(2005)は、母親の恐」1布を面白がったり、怖くない.
(6) ことを母親に説得しようとした子どもが知的障害群に数人いたことから、この実験状況では、知的障害 群の子どもにとって不要だった社会的参照が、より機能の低い自閉症群には必要とされたのだろうと解 釈している。. このようにWarreyeneta1.(2005)の研究を例外として、ASDにおいては情報探索と行動調整の両 面を含めて社会的参照が乏しいと言う知見があるが、社会的参照を形成できる可能性はあるのだろう. か。その検討に先立ち、社会的参照の説明モデルについて概観する。 社会的参照の形成を説明する仮説は多くはない(Gewirtz&Pe1色z−Nogueras,1992)。生得説を採る Campos(1983)は、社会的参照は生物学的に適応的で配線済み(pre−w廿ed)の反応と知覚を要件とし. 社会的に学習される必要のない現象だとし、乳幼児は生まれながらに他者の表情理解が可能で、表 情を介して母親の情動を理解し曖昧な状況下での行動に役立てられると考える。しかしこのような生得 的な立場は、自閉性障害をもつ子どもの社会的参照の欠落の解消には何らの寄与もしないであろう。. 一方、学習説を採るGew㎞z&Pe1色z−Nogueras(1992)は、弁別学習に削った理論的枠組みを提案し た。すなわち、曖昧な状況の出現をきっかけに子どもが大人の顔を見ると大人は一定の表情を示す。. この表情は本来は意味を持たないが、例えば笑顔の場合は肯定的、しかめ面の場合は否定的な結果 を子どもが経験すると、肯定的な結果(強化事象)に先行提示された表情が接触の、否定的な結果 (嫌悪事象)に先行提示された表情が回避の手がかりとなり、表情に応じた反応が形成されるのであ る。. このように、学習の結果として社会的参照が成立すると考えたGewirtz&PeI直z−Nogueras(1992)は、. 生後9ヶ月から12ヶ月の乳児と母親のペアを対象として実験を行った。まず、子どもに布を被した物体 を提示し、子どもが振り向いた場合には母親が右手握り拳の親指を鼻にくっつける仕草(A)と顔の左 右に開いた両手を接触させる仕草(B)をした。続いてこの仕草を見た子どもが物体に触ったら、Aの場. 合は布を除去し乳幼児向けの音楽とともに左右にゆっくり4回動かし(肯定的結果)、Bの場合は大き な騒音とともに左右に素早く4回動かした(嫌悪的結果)。この結果、介入前に比べてAの仕草の時に. はBの仕草に比べて物体に触る反応が有意に増えた。同様の結果はAに嫌悪的結果、Bに肯定的 結果を随伴させたペアでも得られた。またPe1畳ez,Virues−Ortega,&Gewirtz(2011)は笑顔と怖がって. 4.
(7) いる顔を用いて生後4−5ヶ月の乳児を対象とした同様の研究を行し\介入前には生起しなかった表 情に応じた反応(母親が笑顔の時に物体に接触し、怖がっている顔の時は接触しない)が介入後に生 起した事を示し、子どもは生得的に表情を理解できるとする説に疑問を呈し、社会的参照が学習可能 であることを示唆した。. そこで本研究では、社会的参照の重要性に鑑み、Gewirtz&Pe1色z−Nogueras(1992)の学習説の立. 場からASDをもつ子どもに行動分析の手法を用いて社会的参照行動を形成すること(研究1)と、その 維持のために社会的参照行動の強化子を同定することを目的とした(研究2)。. 研究1 前述のように、研究1の目的はASDをもつ子どもの研究場面での社会的参照の形成である。ここで はまずASDの子どもに社会的参照を形成した熊(2008)、Br㎞eta1.(2009)、及びDeQuinzio(2009) の先行研究を概観し、研究1の手続きを検討する。. 熊(2008)は健常児と比較し社会的参照課題(研究2)で成績が低かった2名のASDをもつ子どもを 対象とし、社会的参照による選択行動の制御(研究4)と語意学習(研究5)が成立するための条件を検. 討した。研究4では、同形同色で内部の見えない刺激3個(強化子を入れた容器)を置いたテ』ブルを 挟んで実験者と子どもが正対して着席し、「開けてごらん」の指示により容器の蓋を開けさせた。この際、. 子どもが実験者の意図した容器に手を伸ばした場合は笑顔を、意図しない容器に手を伸ばした場合 はしかめ面を提示し、表情を見ない場合は指差しで顔を見るよう促した結果、自発的な参照と笑顔で. の選択、及びしかめ面での他の容器への移行が形成された。また同じ子どもを対象とした研究5では 「テユとってきて」等との指示により、背後に配置された無意味語の名前を付けた人形3体の中から実 験者の表情を参照(正しい人形を選択した場合は笑顔を、誤った場合はしかめ面を提示)して持ってく る課題を実施したところ、無意味人形の名前の命名が可能になった。 一方、Brimetal.(2009)は自閉症の子どもを対象として、実験者の表情により学習課題を遂行する. か教材を片付けるか判断させる訓練を行った。3分野の学習課題(2点を結ぶ縦の直線を引く、録音さ れた音声を模倣する、ビデオ録画された粗大動作を模倣する)について、通常教材(黒鉛筆と白紙、.
(8) 通常の音声録音、通常の人物による動作ビデオ)と曖昧教材(色鉛筆とカードや、掃除機の音を背景 にして録音された音声、豚の着くるみを着た人物の動作等)が用意され、曖昧教材が提示された場合 には「見て(Look)」の指示と身体プロンプトにより振向かせ、実験者が笑顔で縦方向に首を振った場. 合には課題を遂行し、しかめ面で左右に首を振った場合には教材を片付ける弁別反応を形成した。 同様に、自閉症の子どもを3名を対象としたDeQuinzio(2009)の研究では、Brimeta1、(2009)の枠 組みを踏襲し、歯を見せて笑顔を作り首を上下に振る、口を閉じた笑顔で親指を立てた握り拳を差し. 出す、腕を教材に向かって伸ばし人差し指を動かすといった動作を課題遂行の弁別刺激、眉を寄せ て顔を左右に動かす、目を閉じ上体と頭を教材の方向からそらす等の動作を教材を片付ける行動の 弁別刺激とした。研究1ではモデル提示及び身体プロンプト(手に手をとって課題をさせる)とプロンプ ト遅延手続きの組み合わせ、研究2では身体プロンプトと修正手続き(プロンプトなしに正反応が生起 するまで試行を繰り返す)及びモデルプロンプト(「笑ってうなづいている時はこうして」「首を振った時. はこうして」と言い正反応をモデル提示する)を行い、3名中2名に社会的参照を形成した。. このように先行研究では、情報探索に関しては身体プロンプトや音声による指示、行動調整に関し ては身体プロンプト、モデルプロンプト、修正手続き等が用いられており、本研究においてもこれらの. 手続きを用いることとした。続いて、これらの先行研究の問題点を検討し本研究の手続きを考察する。. まず熊(2008)の研究4では、実験者と子どもは対面したため容器選択の際には必然的に実験者の 表情が目に入った可能」性が推察される。大人を子どもの後ろに配置したBrimeta1.(2009)の研究では、. 訓練を実施するまでは自発的に振向く子どもはいなかったことから、社会的参照の成立には子どもを 振り向かせるための訓練が必要なことがある。しかし熊(2008)の研究4では、表情に沿った行動調整 は学習されたと言えようが、自ら参照しようとしたのか否かは明確ではなく、参照すべき表情の位置が. 懸念される(熊の研究5では自発的参照の生起については報告されていない)ので、本研究では子ど もが振り返らないと見えない位置に実験者を配置することとした。. また、熊(2008)の研究4では選択肢として複数の刺激が提示されているが、(a)一般に発達心理分. 野での社会的参照研究では1刺激のみが提示され、子ども一親一刺激の三項関係の枠組みで、刺激 への接近と回避が検討される(Go/No−go課題)こと、(b)複数刺激が使用されてもしかめ面が提示され.
(9) た場合、回避に代わり他の選択肢への移行(「怒り顔シフト」)が求められ、手続き的には単数刺激での 手続きの拡張型だと考えられること、(C)例えば、振り向いたままシフトを何回か繰り返す場合は正しい. 選択までの連鎖が長くなり、データの記録も複雑になり得る(単数刺激ではユ回の参照で正しい選択が 可能なため、「振向きの有無」と「弁別の正否」のみの記録でよい)ことから、本研究ではGo州。−Goに 修正を加えた手続きを用いる。. Brimeta1.(2009)の研究では、表情を参照し笑顔が提示された場合は、学習課題を遂行した後に言 語賞賛(rよくできました。笑顔のときに線を引けたね(Super,youホewa1inewhenImadea‘‘happy 色Ce”)」)とドクンが提示されたため、試行の開始から完了までの連鎖が長い。そのため、学習課題自. 体の負荷が社会的参照の生起に影響を及ぼした可能性や、学習課題の負荷により笑顔自体が嫌悪 刺激として機能した可能性がある。また、特定の曖昧教材が特定の表情に固定されていた(J.A. DeQuinzio,Per1ona1co㎜unication,1anuaW21.2011)ため、社会的参照によらなくても正反応が生起 した可能性が排斥できない。. 最後に、DeQuinzio(2009)の研究では、特定の教材が特定の表情と常に対提示されないよう試行毎 に無作為に決定され、社会的参照なしではチャンスレベル以上の正反応率が得られた可能性はない が、常に音声プロンプトと身体プロンプトを用いて振り向かせており、自ら社会的参照を行ったかの検 討はされていない。. また、社会的参照は曖昧な状況に直面した際に、他者の顔を見ることで得られる感情的情報により 状況を再評価し行動に反映させるプロセス(Sorce etal.,1985)だとされ、参照なしに正反応が可能な. 明確な状況と参照しなければ正反応が不可能な曖昧状況では社会的参照行動の生起頻度に差異が 生じると考えられるが、上記の研究では検討されていない。 以上の考察から本研究では、(a)子どもが振り返らなければ見えない位置に実験者を配置し、(b). 単一刺激を用いた修正Go州。−go手続き(笑顔の場合は蓋を開け、しかめ面の場合は容器を箱に片 付ける)を用し\(c)参照後の反応は蓋を開けるか片付けるかの最小限とした上で、(d)社会的参照無. しての正反応の生起率をチャンスレベルに設定した課題における社会的参照を形成する。さらに参照 行動の成立後は、(e)曖昧状況と明確な状況での社会的参照行動の生起頻度の差異を比較する。. 7.
(10) 方法 参加者自閉性障害の親の会等を介して募集した8名を対象とし、全員が応用行動分析に基づい た家庭療育の経験を有していた。研究実施前には研究の内容、ペナルティーなしにいっでも自由に 中止できること、実験者の守秘義務等を参加者の保護者に説明し、文書によるインフォームドコンセン. トを得た。開始に当たり実施したS−M社会生活能力検査の結果は、他の発達検査の結果等と併せて Tab1e lに示す(参加者名は全て仮名である)。なお、アキエは本研究に先立ち研究手続きの検討を行 ったことから参考としてデータを提示する。また、ユキオは自閉傾向があるとの診断は受けていない。. アキエは地域の学校の支援級に在籍していた女児で、2歳3ヶ月時に自閉性障害、4歳2ヶ月時に 広汎性発達障害の診断を受けていた。また、きょうだいが親に叱られるようなことをした場合に親の顔 を見て自分が注意したり、自分の発言の正誤を親の顔を見て判断するとの報告がなされた。. カスマは補助者同伴で地域の学校の普通級に在籍していた男児で、自閉症の診断を受けている。 また困った時に親の顔を見ることや悪戯しようとしても親が怖い顔を見せると止めるといったことが報告 がされた。. ケイゴは特別支援学校に通う男児で6歳頃に自閉症の診断を受けている。また対人関係発達指導 法(RelationshipDeve1opmentIntemention)による家庭療育も実施し、視線に合わせて積み木を操作 する等の課題を習得しており、悪戯をしようとして親の顔を見た時に睨みづけられると止めることがある と報告された。. マナミは自閉的な特徴のある広汎性発達障害の診断を受けた女児で地域の学校の支援学級に在 籍していた。禁じられていることをしようとする時に大人が怖い顔を見せると止めることが報告された。. ミノルは軽度知的障害を伴う自閉症の診断を有する男児で、高いところに上った時に母親が怖い顔 を見せると降りると報告された。. ナオコは地域の学校の支援学級に通う女児で精神発達遅滞を伴う自閉症の診断を有していた。対 人関係発達指導法による家庭療育も実施し、目が合うことを合図に教材を受け取ったり、大人と同時 に反応する等の課題を:習得していた。また叱られるようなことをすると親の顔を見ることが報告された。. ユカリは自閉傾向のある広汎性発達障害の疑いのある女児で、水をこぼした時に親の顔をチラと見.
(11) ることや怒った顔をすると怖がると報告された。. ユキオは地域の保育所に適所していた男児で3歳2ヶ月時に広汎性発達障害の診断を受けていた が自閉傾向は認められていない。課題に取り組んでいる際に親や先生の顔をみて成否を判断すること や母親が怖い顔を見せた時に謝ることがあると報告された。. Tab1e1 地M吻∂批刀θ8C吻血0刀 Social Maturity Scale. Newest dcvo1opmental test scores. 。、。、…D、、g、。、、、、、、・舳・。・i・1㍗嚇ざ。n・・t 鷺鮒、胤 (y−m) quotient age socia1age mme quotie〃lQ stered. Akie 6−lO PDD. F. 72 4_11 5_3. KSPD 67 5−1. 50 4_5 3_9. KSPD 29 7−l1. 71 9−2 9−0. WISC皿 40 12−4. Keigo 14−7 Autism. M M. Man竃mi 9−5 Autism. F. 52 4_11 3_9. KSPD 41 8−3. Minoru 4−H Autism. M. 69 3_5 3_4. KSPD Subscale 4.5. Naoko lO−l Autism. F. 46 4_8 4_9. KSPD 50 10−1. F. 74 3_1 3_4. KSPD 55. M. 81 4_7 4_3. KSPD 84 4−4. Kazuma 8−9 Autism. available邊. PDD Y.k町i 4.2…p・・t・¢ autiStiO traitS. 3−l l. PDD without Yukio 5−8 autiStiC traitS. Note−KSPD=Kyoto Sca1e ofPsycho1ogica1Deve1opment2001. aDevelopmenta1quotient的r Pos血re/Motion subscale=70;Cognit011/Adaptation subscale=57; Language/Sociality subsca1e=58.. 事前査定社会的参照形成には表情の弁別が必須だと考え、4つの手続きにより表情マッチング課 題を実施した。なお本来の査定は消去条件で行うべきだが、本課題で基準をクリアしない場合に参加 を認めないことは研究参加を依頼している手前不都合であることと、子どもを飽きさせずに実施したか ったことから、正反応については強化子の提示とフィードバックを行うこととした。!ブロックは笑顔、しか. 9.
(12) め面、無表情の各表情を5試行ずつの計15試行とし、3ブロック連続して各表情5試行のうち4試行以 上での正反応を通過基準とした。標的となる表情の提示順はブロック内で無作為に決定し、カードの. 配置と配置換えは実験者が課題実施中に無作為になるように実施した。 1.音声→写真マッチング:実験者の表情の写真3枚(笑顔、しかめ面、無表情)を横に並べて置 いた机を挟み正対して座った参加児に対し、「笑ってるどれ?」「恐い顔どれ?」「普通の顔どれ?」と. 教示し選択させた。なお、具体的な教示は理解度に応じて「ニコニコどれ?」等に変更した。教示に応 じた写真を選択できた場合は正反応とし、トークンもしくは菓子と「正解」等の音声フィードバックを提示. した。一方、教示に応じた写真を選択できなかった場合は謀反応とし、実験者は無反応であった。 2.顔→写真マッチング1r同じ顔どれ?」と教示しつつ実験者がr笑顔」、rしかめ面」、もしくは 「無表情」を作り、同じ表情の写真を選択させた。その他の手続きは音声→写真マッチングと同一。. この結果、ケイゴ、マナミ、ナオコ、ユキオは音声→写真、顔→写真の両方の習得基準を達成したの で本研究に移行した。なお、アキエについては顔→イラスト、イラスト→写真、写真→イラスト、音声→イ. ラストの課題も実施し、何れの課題でも15試行中14試行以上で正反応が見られたため、上記の課題 については1ブロックずつ実施したのみである(音声→写真マッチングは15試行中14試行、顔→写 真マッチングは15試行中15試行で正反応)。またこれらの課題を通過しなかった参加者については、 以下の手続きを行った。 3.表情模倣:カスマについては、正対した実験者が「こうして」と教示しづつ「笑顔」、「しかめ面」、. もしくは照表情」を作り、模倣させた。各表情5試行ずつ計15試行を1ブロックとし、3ブロック連続して 各表情4試行以上の正反応を通過基準とした。ミノルについては「笑顔」と「しかめ面」の各表情5試行 ずつ言十10試行を!ブロックとし、3ブロック連続して両表情4試行以上での正反応を通過基準とした。1. 回目の査定では通過できなかったが、表情模倣を家庭療育の課題にとり入れるよう依頼し、後日通過 が確認された。また母親でも1ブロック実施したところ、11試行中9試行(手続きの誤りによりしかめ面は. 6試行)で正反応であった。他の手続きは音声→写真マッチングと同」。. 4. 表情命名:ユカリについては表情模倣での反応の正否の判別が困難だったため、表情命名 課題を実施した。参加者と対面して座った実験者が「どんな顔?」と教示しつつ「笑顔」もしくは「しかめ. 10.
(13) 面」を作り、参加者が表情に応じて口頭で「笑ってる」「怒ってる」等と答えさせた。各表情5試行すっ計. 10試行をユブロックとし、両表情4試行以上での正反応を通過基準とした。しかし1回目の査定では通 過できなかったため、家庭での療育課題に取り入れるよう依頼し、後日習得を確認した。また母親でも ユブロック実施し、9試行で正反応であった。その他の手続きは音声→写真マッチングと同一であった。. 査定は全て録画し、子どものマッチング反応は用紙に記録した。また査定通過の判断に用いたブロ ックの最低25%にらいて、実験者による記録と、独立した観察者が録画を見て行った記録との一致率 を、(両者が一致した試行数)÷(両者が」致した試行数十不一致の試行数)×100により計算したとこ ろ、ミノルについては90.48%、その他の参加者については100%であった。. セッティングと材料本研究は参加者の自宅もしくは本学施設内で1回につき1時間から1時間半、 原則として週1回もしくは2回実施した。参加児は机に向って座り、振向かなければ見えない斜め後方 に実験者が座った(Fig1血e l)。. 機_,障 p1且昌tico㎝ヒ㎞趾. 丁且H巳. ○○ 軸㎞m㎝倣 F敏÷・∫.E・p・・㎞・・t・1・・廿㎞g.. また、トークンとして用いるための直径3.Ocmと3.5cmの円型カラ]磁石、プラスチックの取っ手及び 蓋付き透明容器(縦15.5cm、横9.5cm、高さ515cm)、取っ手及び二重蓋付きの缶(縦12.0cm、横8.O cm、高さ8.0cm)を用意した。机上には獲得されたトークンを置くための金属性の筆入れ(縦17.0cm、 横7.0cm、高さ2.5cm)と直方体の紙箱(縦25.0cm、横12.5cm、高さ5.Ocm、蓋なし)を置いた。. 11.
(14) 従属変数等振向き反応と弁別反応を従属変数とし、研究手続きの忠実度と合わせて録画映像を 見て記録用紙に記号で記入した。 振向き反応は、教示後に容器の蓋(外蓋)を開けるか、容器を箱に入れガタンと音がする時点まで. に、自発的に実験者の顔を見ることとした。なお、振向きの持続時間や実験者の顔への振向き角度を 含む厳密な操作的定義は用いなかった。これは自閉性障害をもつ子どもには対象物を正面ではなく、 視野の隅に捉えるなど目の使い方の異常が多いという保護者の報告が多く、健常児との比較研究から も周辺視野を用いて対象物を見る頻度が高いとの知見がある(Mottroneta1.,2007)ことから、実験者 の顔を視野中央に捉えなくても見えると判断したことによる。. 弁別反応は、アクセス試行については教示後10秒以内に缶の内蓋を開けること、もしくは透明容器 の場合は中に入っているトークンに触れること、片付け試行については教示後10秒以内に蓋を開けな いまま缶もしくは透明容器の底を箱の底に接触させることとした。. 実験着が行った手続きの忠実度は、提示した表情、プロンプト手続き、試行終了時の手続き(強化、. フイ』ドバック等)の正誤については記録用紙上に設けた記録欄に試行毎に、その他の誤りについて は記録用紙の余白に記入し、(正しい手続きで実施された試行数)÷(全試行数)×100により計算し た。アキエは99.3%、カスマは97.5%、ケイゴは98.2%、マナミは99.3%、ミノルは99.O%、ナオコは 98.9%、ユカリは98.8%、ユキオは98.6%であった。. また、無作為抽出した各条件最低25%のブロックについて、実験者による記録と独立した観察者が 録画を見て行った記録との一致率を、(両者が一致した試行数)÷(両者が一致した試行数十不一致 の試行数)×100により一致率を得た。各参加者のデータの一致率は振向き反応、弁別反応、手続き の忠実度の順にアキエは97.9%、I00%、97.9%、カスマは98.1%、1OO%、97.2%、ケイゴは1OO%、 98.7%、99.3%、マナミは99.3%、9916%、98.9%、ミノルは99.1%、96.9%、97.8%、ナオコは99.1%、. 97.2%、98.1%、ユカリは98,9%、99.3%、98.6%、ユキオは99.3%、93.5%、97.8%であった。. 手続き参加者間の非同時進行多層べ一スラインデザインを用いた。また、ミノルとユカリの」部の ブロックは実験者に代わり母親によって実施された。用いられた社会的参照課題は、参加児の正面に 缶が置かれた時に、実験者(もしくは母親)が笑顔であれば蓋を開けトークンを出し、しかめ面の時に. 12.
(15) は蓋を開けずに容器を紙箱に入れることである。. 試行の開始に当たっては、実験者が「磁石が入っている時は出してここにつけて。入ってない時は 蓋を開けずにここに入れて」(意味が変わらない範囲での変動あり)と教示しつつ筆箱と紙箱を指差し、. 参加児が実験者の顔を見ていないことを確認してから参加児の正面に缶を置き手を離した。 1ブロックは、缶にトークンを入れ振向き時に笑顔を提示するアクセス試行と、トークンを入れずにし. かめ面を提示する片付け試行を3試行ずつ、計6試行とした。また、試行の順番はアクセス試行が3試 行以上連続しないよう無作為に決定した。これは社会的参照が形成されるまでは優位に生起すると予 想された蓋開け反応を、連続したアクセス試行により必要以上に強化したくないと考えたためである。. また事前に保護者の意見を聞き、マナミについてはDVDの鑑賞(3分程度)、それ以外の参加者に ついては細切れにした果物や野菜、スナック菓子、チョコレート、ラムネ等をバックアップ強化子として. 用い、ト』クンとの交換比率は原則5対1とした。トークンに磁石を用いたのは、缶を振り動かして出る 音による弁別を不可能にするためであった。. 缶を用いたべ一スライン(BL)の実施に先立っては、透明容器を用いて弁別反応が生起するよう練 習を実施した。これは、社会的参照なしに正反応が可能な条件下で、大人の顔を見なくてもどうすれ ばよいかが判断できる「曖昧ではない状況」を擬制するためである。なお、このフェーズでは振り向き反. 応が生起しても実験者は無表情を保った。. 透明容器での弁別反応形成後は、缶を用いたBLと社会的参照の形成手続きを実施した。習得基 準は3ブロック連続で5試行以上での正反応の生起とし、習得基準達成後は透明容器を用いてBLと 同じ手続きで課題を実施した(反転)。これは曖昧な状況を擬制するために中が見えない缶を用いた のに対し、「曖昧ではない状況」を擬制した透明容器を用いることで、社会的参照の生起率の差異を 調べるためであった。以下に、課題で使用した手続きを示す。 1.透明・菓子/モデル提示(Transparent/Snac)Modeling)=透明容器を用いた。試行の開始に当 たり実験者が「お菓子が入っている時は食べていいよ」と言い、続いて「入ってない時はこっちに入れ て」と机上の箱を指差した後に、容器を参加児の正面に置き手を離した。アクセス試行で参加児の手 が菓子等に接触した場合は正反応とし「入ってる時に開けたね」「よかった」等のフイ』ドバックを、それ. 13.
(16) 以外は謀反応とし実験者が菓子等を取り出して食べる真似をして見せた。片付け試行で容器の蓋を 開けずに箱にいれた場合は正反応とし「入ってない時に箱に入れたね」「上手」等のフィードバックと同. 時に菓子等を与えた。それ以外の反応は謀反応とし、正反応のモデルと菓子等を食べている真似をし て見せた。カスマ、ミノル、ユカリで実施した。. 2.透明・菓子/プロンプト修正(Transparent/Snac)Promptedcorrection):アクセス試行と片付け試 行の両方で、正反応の場合は「入ってる時に開けたね」「よかった」「入ってない時に箱に入れたね」. 「上手」等のフィードバックを行った。謀反応の時は実験者が一度容器を取り上げて教示なしに参加児 の正面に置きなおし指差しプロンプトと身体プロンプトにより正反応を生起させた後に菓子等を与えた。 カスマとユカリで実施した。. 3一透明・トークン/モデル提示(TransparenVToken/Model㎞g):①と同様、ただしトークンを用いた。. 参加者が獲得したトークンは筆入れ上に置かせ一定数になるとバックアップ強化子と交換した。なお、. ト』クンの導入にあたり動作模倣や身体部位の命名課題等を数試行実施しバックアップ強化子と交換 できることを経験させた。また、この手続きは缶での指導中にトークンが入っている場合にはアクセスし、. 入っていない場合には箱に片付ける反応が維持されているかを確認するためにも実施した。 4.透明・トークン/プロンプト修正(Transpa鵬nt/Token/Promptedcorrection):②と同様、ただしトー クンを用いた。ナオコのみで実施した。. 5.べ一スライン(BL)/プロンプトなし(BL/Noprompt):缶を用いた。アクセス試行で正反応の場 合は「入ってる時に開けたね」「よかった」とのフィードバックを行った。謀反応の場合は蓋を開けて中を 見せ、「残念」「入ってたね」等のフイ』ドバックを行った。片付け試行で正反応の場合は蓋を開けて見 せ「入ってない時に箱に入れたね」「上手」等のフィードバックと共にトークンを与え、謀反応の場合は 「残念」「からっぽ」「入ってないね」等のフイ』ドバックを行った。. 6一透明容器仮転(TransparenびReverse):アクセス試行では振向き時に笑顔を提示し、正反応の 場合は「入ってる時に開けたね」「よかった」とのフィードバックを、謀反応時には「入っていたのに箱に. 入れたね」等のフィードバックを提示した。片付け試行ではしかめ面を提示し、正反応時は「入ってな い時に箱に入れたね」「上手」等のフィードバックとトークンを、謀反応時には「入ってなかったね」「残. 14.
(17) 念」等のフィードバックを提示した。また、実験者の提示する表情の振向き反応の生起頻度への影響を 検討するため、カスマではアクセス試行での「笑顔」のみ提示(片付け試行では無表情)、ケイゴではア クセス試行と片付け試行の両方で「無表情」を提示したブロックもある。. BL期後に用いた、社会的参照形成のために用いたプロンプト等の手続きは以下の通りである。複 数の手続きを組み合わせて実施した場合もある。 1.蓋ブロック(Lidblock㎞g):教示後に缶を置いた後、振向きが自発するまで手を蓋に置いたまま. 開けさせなかった。また、振向き後の弁別は蓋から手を離して15秒が経過するまでに生起した場合に 正反応とした。. 2蓋ブロック制限時間30秒(L1dblockm4Lmlted hold30s)教示後に缶を置き芸はブロックし たまま30秒経過するまでに振向きが自発しない場合は身体プロンプトにより振向かせた。 3.表情に関する質問(“What臨。e?”):蓋ブロックに加えて、参加児の振向き時にrどんな顔?」と. 質問し、答えの有無や正否に関わらず手を離した。 4.説明的フィードバック(Descriptive胎edback):正反応の場合は「入ってる時に開けたね」「よかっ. た」「入ってない時に箱に入れたね」「上手」等に加えて「ニコニコの時は磁石が入ってる」、謀反応の場 合は「入ってなかったね」「残念」「入っていたのに箱に入れたね」等に加えて「恐い顔の時は、入って ないよ」との説明的フィードバックを行った。. 5.プロンプト修正(Promptedcorrection):謀反応の場合は実験者が一度容器を取り上げて教示な しに参加児の正面に置きなおし、指差しプロンプトと身体プロンプトにより正反応を生起させた後にトー クンを与えた。. 6.無謀学習&プローブ(Errorless&Probe):振向き時には、アクセス試行では笑顔の提示と 同時に缶を開けさせるためのプロンプトを、片付け試行ではしかめ面の提示と同時に缶を箱に入れさ せるためのプロンプトを行って謀反応は生起させず、弁別反応は正反応とはみなさなかった。一方、プ ローブでは謀反応の生起を許容した。 7.質問(Q and A):蓋ブロックを行い、振向き時には「どんな顔?」と尋ね、解答に応じて「そうだね、 笑ってるね」「違うよ、怒ってる」等のフィードバックを行った。続いて、「笑ってる時は入ってる?入って. 15.
(18) ない?」「怒ってる時は入ってる?入ってない?」と尋ね、解答に応じて「そうだね、入ってる」「違うよ、. 入ってない」などと更にフィードバックを行い、蓋から手を離した。振向き後の弁別は蓋から手を離して. 15秒経過するまでに生起した場合に正反応とした。. 8.頚動きプロンプト(Headmovem㎝tprompt):振向き時にアクセス試行であれば笑顔を作り顔を 下に向けて、片付け試行の場合はしかめ面を作った顔を箱に向けて、動かした。正反応が連続して生 起した場合には徐々にフェードアウトした。. lO.指差しプロンプト(Pohting)=アクセス試行では人差し指で下方向を、片付け試行では箱を、 指差した。. 11.カードプロンプト(Promptcard):箱にはしかめ面、机上には笑顔の写真を配置した。またカー ドプロンプト導入時には、振向き時に2枚のうちの正反応に対応したプロンプトカード1枚(Fig㎜e2)を 示した。続いて、カード上の写真を指差し「どんな顔」と尋ねた上で、指差しのイラスト(アクセス試行で. は下向き指差し、片付け試行では前向き指差し)を指し示した。なお導入後2ブロック目以降は、振向 き時にカードを提示したのみであった。. 卒竜 凡g〃ε2.Prompt c町ds.The card on the lei was used心rAccess T㎡als.The c町d on the right was. used施r Disc町diIlg Trials.. 12訓万頭動き(Headmved㎞1ward)頚動きプロンプトがプロンプトとして機能していることを確 認するため、振向き時に表情を作り、アクセス試行片付け試行ともに同じ動作で前方に顔を動かした。 13.シール(Stickers):直径O.8cmの緑色丸型シールを上下唇に1枚ずつ貼り付けた。. 14.箸(Chopstick):約2cmの長さに切断した割り箸を、笑顔の場合は上下、しかめ面の場合は水. 16.
(19) 平方向になるように、下唇にセロハンテープで貼り付けた。 15.ブロック内プローブ(Withinblockprobe):プロンプトを用いたブロック内片付け試行について、. 最初の2試行での弁別が正反応の場合、最後の試行ではプロンプトなしのプローブを行った。 16.前方(Front):参加者の右斜め前方(正面約30度)に実験者が座った。ユカリのみで実施。. 結果 本研究に先立ち手続き検証を行ったアキエの本手続きでのデータは参考として提示する。アキエで の手続き検証では、容器内にトークンが入っておらず実験者がしかめ面を見せる試行では、容器に触 らず1O秒間待つ(No−go)ことを正反応とし、机上には容器を片付ける箱は置かなかった。また第1ブロ ックから缶を用い、BL条件では「磁石が入っているかも知れないし入っていないかも知れないよ」との. 教示の後に机上に缶を置いた。続いて振向き反応を形成するために、蓋をブロックし振向いた時点で 「上手に振り向けました」との音声フィードバックとともに手を離す手続きを導入した。これにより自発的. な振向き反応が形成されたが、ブロックを中止すると振向きは生起しなくなった。また常に容器を開け るたため、トークンが入っていない試行でlO秒間待たせることは難しいと判断し27ブロックで終了した。 なお全ての試行で缶の蓋を開けており、トークンが入っていた場合(正反応)は「よかったね」、入って いない場合(謀反応)には「残念」などの音声フィードバックを行った。この結果を反映して本研究の手. 続きを確定するに至った。なお、本研究と同じ手続きで実施したアキエのデータはFig㎜’e3として示す。. BL条件で振向き反応、弁別反応ともに習得基準を達成し、2回の透明容器(反転)フェーズでは、全く 社会的参照が生起しないまま正反応が維持された。. =口幽 Tr訓s No 工幽 No. Tok8・ BL 牝ws。)Pro叩t吐6“〕 Pro舳 Mo土1h8 Discrimi旧tiコn←. 100. 出 g0 仁 80. 匹 70 」 60 コ. 0 50. 〆. 昔. ■. …. 罰. ○ 他 0 30. く一一一 Looは㎎. ま 20. 10. 0. 5 10 15 20 25 30 35 40. 日O畝S ^g〃e3Percentage oftr1als wlth1ookmg responses and correct dlscrmmat1ve responses的rAkle. 17.
(20) カスマはプロンプト修正手続きにより習得基準を達成した(Figure4)。振向き反応は、その後の透明. 容器での反転期に減少したが、缶では再び増加し、缶と透明容器間での生起率の差異が確認された。 またカスマは、実験者のしかめ面に手を触れたり、会うたびに自らしかめ面を作るなど、しかめ面が条. 件性強化子として機能していると考えられたことから、透明容器への反転時の片付け試行でしかめ面 の提示を取りやめた。その結果、更に振向き反応の生起率が下がった。. Trm5.. エ幽 Lid 1■rg■!. Lid−8+ D850Fip{i旧. Sngok. Smok. 8L To㎏n bIoo“n6. 一 Lid−B Tok日n ’Who“ tod6ook. Mo’81in6. Prompt餉. Modo1峠 しid−8〕. Mod.li.6 to・ヅ. 。o『roo−lon 00『roo一一〇n 10〕. 90 80 70 00 50 仙 30 20 10. 0. 510152025303540 Do冒。rip−i咄. Prompt8d. F●■dbook. oorrodion. 幽. No Trgn5.. pr㎝、Pt 伽“〕. (ro岨r5●〕. }、. 1m 出 gO E 80. 匹 70 」 60 コ 50. o 〇 一〇. 0 30 ま 20. 10. 0 45. 座 (rou). ’S−r−iヒ^on−Y. 1匹1. 90 80 70 60 50 他 30 20 10 0. …. 50 55 6D. 65 10 75 80. Tr8n5.. No 一 帖 6帥〕 pro岬㌧ Pro岬t Smilゴ on1r. …. ぐ一一眺。ri市9{ioo. ← Looはn6. 85 90 95 1D0 105 110 115 120. Bbcb 〃g〃e4.Percentage oftria1swith lookingresponses…mdc01τectdiscriminativeresponses㎞rKazuma.. 18.
(21) ケイゴは無謀学習の後に習得基準を達成した(Fig㎜e5)。その後は、透明容器の反転フェーズで振 向き反応が減少しなかったため、振向き時には無表情を提示したが変化はなかった。さらに、缶→透 明容器(表情あり)→透明容器(表情なし)と続けたが、振向き反応は維持された。また、ケイゴは表情. に関する質問手続きを行ったブロック以降、全試行で振向き時の実験者の表情を報告した。. 絆 、、 ・1“・舳…一日・ 山附1・t1胆・・榊・1冊・。 幽 、。、,.i., 蝸 W鮒舳畝。州。・・m・1・1・。・。町1ωI ●. 1霊 宮 80 = 70. 2 oo. … 50. 8 仙. 0 3o 竈 20. 10. 0 5 10 15 20 25 30 35 4口. 1■一〇n5. Trgnミ.. 一 Tr8n=. 一. 幽 Φm削〕 帖 砺自白〕 伽w・・〕 帖. 吐。爬・盟〕 帖舳1 P岨叩t . N舳dさ■ P旧mpt ○ゆ。05;ion ■■Pc655ion. ÷一 Di昔。rimi冊 100 D1酬1m1固一io・. 90 8D 70 60 50 40 3口 20 10. ぐ一 Loo旧n5. 0 45 50 55 60 65 70 75 80. Bod信 F‘9m7e5.Percentage oftrials with looking responses and correct discriminative responses ibr Keigo・. マナミはカードプロンプト手続きの後のBLで習得基準を達成し、その後は透明容器の反転フェーズ では振向き反応が減少した(Fig㎜e6)。ミノルは論文提出時までに習得基準を達成できず、提出目現 在も継続中である(Fig㎜一e7)。ナオコは蓋ブロック手続きで習得基準を達成し、透明容器の反転フェー ズでは振向き反応が減少した(Figure8)。ユキオは説明的フィードバック手続きで習得基準を達成し、. 他の参加者同様に透明容器の反転フェーズでは振向き反応が減少している(F1gure9)。ユカリは参加 者都合により、習得基準を達成できないまま研究を終了した(Figure lO)。. 19.
(22) Lid. Li’一8+. D帖。ripti岨. To屹n. 61ooはn6. ’whot 佗。o?’. 値∈仙肥k. Mo’oli”. しid一日). BL. 100 00 80 70 00 50 仙 30 20 10 0. 5 10. 25. 15 20. 30 35 40 H80‘. Romtod. Li’一B+. Promtod. Oαr8C{i回1. oorrootion. oo = ○. コ 。. o. ○ 崇. Lid’B+ π一〇岨m・n{ H−i’一P +. Lidi日十Errorlo{5. Qo・d^ P・o岬t 用i^ti咄. &. Probo(■一110ut Errorlo!!.qpon oil・c105). 旧08d−P). 1m 90 宮0. 70 00 50 仙 30 20 10 0. 45. 50. 65. 55 60. 10 75 80. L1d 6+Pro而pt oord. H蜆d−P+ Pointin5. 生. 1.id一目十Pointin6. Lid−B No P70mpt. Robo(withou−Pro叩i酬d.. ム. ○岬。iro1帖〕. Pro由(O帖。ut Pointin6.oPon oiro1●!〕. 1m. 90 80 70 60 50 他 30 20 10 0. 85. 帖. prompt. 1[□=1. 目0. 80 70 00 50 他 30 20 10 0. 90. 95 1D0. Tro帖.. No. Tron;. 帖. ○岨}or;白〕. prompt. 伽w・o〕 P・o叩t. 110 115 120. ヅ. だ 125. 105. 130. 135 140. I 一 一 一 145 15D 155 160. 日100kS. ^g〃e6.Per㏄ntage of血iaIswith lookingresponses and correct discr㎞inative resp㎝ses他rM…mami.. 20.
(23) Tron;.. SnoOk. Tok日n. Mo’白1i岬. Mo土1in6. 日L. ]’b1oo■n5. Lid一日“. D帖。rip{i岨. }wh訓俺。.τ^. tOdbiCk. しid一日〕. Moth・r目L. ・ノV}. 1〔O. O0 80. 訓電CriminOtiOn. ↓. τ0. 60 50 仙 30 20. ●舳=洲き. Moth■r lヨL. loo“o5 ‘. 1口. 0. 15. 10. 25. 2口. 30 35. 40. Lid一目. PromP{o’ ooπoo−ion. Do;crip{i岨. 巳 t■d一■ok. Li’.B+. PrOn■■d 00r固O{iOn. 100 00 90. Lini{od hold305 〔LH305). Lid一目LH目0…十Err〇一1o!!. Pro而}■d CO〃OO{iOn. Pro−o. {. (}thouモError■日…ミ.oPon oiroIo;〕. Loo■nl;. −0. 60 50 仙 ○口 20 10 0. !. ○. DiOOrini −n■tion. ! 45. 50. Li’一目LH30ミ“ 8nt prO01p{. H● d. 60. 5日. 6≡1. 70 75. L1d−8LH畠05+. Lid■BLH305+H由’一Pム. H■■d−P+. Pro6!“thoutH■■d−P.oP■noi爬1■5). 80. Poin−in6. 旧■od−p〕 出. E 些 当 。. ボ. 100 90 90 τ0. 60 50 他 30 20 10. 0. 90. 85. 95. 105. 10口. 110. 115. Lid−B LH305‡. L.d■8LH80!十H.・d−P^ }ithlnblo{Pro−o廿1■1〔”i帖。utH■●d−R. Li‘一8]→30!十Ho.’一P& Pro一■(}{hout H■■d−P.op■n oircl■■〕. 120. I−I■■‘mo}■d. fb’…■rd. oP■noirol.!〕 口p,n口■「ロー!,’. ■ 1 I ■ ■ 1 ■ 1. 100 90 90 70 oo 50 仙 30 20 10 o. 125. 130. Lid−8LH30!十. ‘oonti−. Li’一8. nu8d〕. Ll−I30!. H■■0010㎜’ 七“u●r’. 14D. 135. LiO一日LH305. H ’ P. Pro6o(H1tho“h. 145. 150. 155. 160. Stio−Or‘ t.oP!noirol”〕. 10口. 00 80 70 60 50 他 30 20. 10. 0. 165. 170. 175. 18口. 1日5. 19D 195. 200. 日bOkS Fな〃e7.Per㏄ntage oftria1s with lookingresponses㎝d correct discrimimtive responses向r M㎞oru.. 21.
(24) 工幽 丁固帖・. BL Lid b1oo吋n5 Tr3n!. No prom,t. σ酬。r050〕. Romp帖d. To一服n. C団・rOOtiOn. Mod白1in6. !. 1〔0 90 o o0. 2 70 里 oo. ; 50 8 仙. \. D三〇rimi−. notion. \. 0. 30 20 盟 10. Loo舳n6. 0. 25 30 35 40. 5 1口 15 2口. No町。mp{. Tron5. σo岨帽。). 100 90 80 70 00 50 他 30 20 10 0 66 7D 75 80. 45 50 55 60. 日10Ck呈. 〃g〃e&Percentage oftria1s with looking responses㎜d correct discrimimtive responses的r Naoko.. 幽 日L Lid. Lid■B Do;oripti汕E τrgn….. しid−8). ^Wh・t to.ヅ. Mo土1i” bloo阯n‘. “ 値。db舳k φ:岨門■〕. 1皿1. 的 80 =. 聖 ヨ. 8. フ0. 60 50 他 30 20 10. ㈹. 0. 10 15 20 25. 則 35 40. Tr目n三. Troo;. Tron5. Tron宣.. ¢。岨、冒。〕帖岬州 吐。w説) 帖 吐。m。。。〕N叩固叩、 伽w。。)Nw岬t pro叩{. }. 1〔n. 90 00 70 00 50 他 30 20 10 0. 45. 50 55 60 65. 70 75 80. Blook3. Fな〃e9.Percentage oftria1s with looking responses and correct discriminative responsesわr YOkio.. 22.
(25) Tr8n5.. Sn80k Promptod. s冊。k Modoli”. Tr帥….. Lid. 8L. To㎏n. 丁閑n;.. 51oo■n5. Modolin8. しid一日). Lid一目. Tokon. LH30与. Mod6■in8. Li’一目. LH30;. CO冊OCtiOn U H1 I − H 、一■■一. 100 00 30 70 60 50 軸 30 20 10 0. 〆. Mothor BL Di;砒imin8tioI、. ↓. …. D’. Di珊ri而i−. notion n. / ’. iデ●. Loo舳n5. ! 〆 15. 5 1口. Lid一日. D雷αpti胆. LH30…十 ’whgt. todb肥k. Mo.. Promp−od oorr岨iion. 日L. 20 25. 30 35. Lid−8LH30!十 Pro岬todoorr餉一ion. Lid一日LH305+8叩。rlo!,. 40. &. Rob8(HithoutError1岬.o卿。iro1o;〕. セ田τI’ 金田ヅ. 出 = 聖 …. 1[0. 90 80 フ0. 60 50 軸 30 ま 20 10 0. 8. .十!. 0. △. 55. 45 50. 70. 60 65. Li’一B. Lid一日LH30!. Lid−B LH30!十. Lid一日LH30ミ. LH30!十 日帥d A. 一〇d. ・一.蜆d−P+. 十. mo胆mont. 1コOin−i祀. トー。d−P. pro岬一. Front+ LトO05+ Lid一目LH目05+ H日。’一P+ 序。岬t ○訓d Pointi咄 Li’一B. 75 80. Fro■t+. L−d一日LH305+Hoid P 也. P岨bo(withoutH蜆d−P oP帥。im18;〕. 円蜆‘一P) 1皿1. 90 8口 下D. 60 50 仙 30 20 10 0. 85 90. 〔oonti−. nuod〕. 95. 100. 105. 110. Front+. Lid−B Lト130ミ十. Lid一目LH目Os+. Tr8帖.. Li’一BしHOO与十. Hood−P+ Pointin6+ O,oP5tiok. Poin{in6+. Modolin6. H■8d−P+ Pointin6. 115 120. 0h};tick. 1回〕. 90 80 70 00 50 他 30 20 10 0. \ 125 130. 135. 140. 145. 15D. 155 160. 目bcks. F壇〃θ∫0.Percentage of耐ials with iooking responses and c01Tect discriminative responses的r Yukari、. 23.
(26) 考察 一連の手続きにより参加者8名のうち6名において、社会的参照が形成されプロンプト等を用いての 行動分析的手法を用いての形成が可能なことが示された。また、社会的参照が形成された6名のうち5 名では、透明容器を用いたブロックで振向き反応が減少し、状況の「曖昧さ」により社会的参照行動の. 生起頻度の差異が実験的に確認された。 振向き反応は、本研究の手続き検証過程で振向き反応を形成したアキエを除く全員で、蓋ブロック なしに形成されず、さらにミノルとユカリは蓋ブロックに加えて身体プロンプトを必要とした。これは参加. 者にとって本課題における中の見えない缶は「曖昧」ではなく、蓋ブロックにより始めて状況が曖昧とな ったためと考えられる。. このように強化子の入手が妨害された場合、ASDをもつ子どもは妨害している大人の顔を見る反応 が少ないという研究がある(Cha㎜anetall,1998;Phi1ips,Baron−Cohen,&Pu廿er,1992)。例えば、. Phi1ips eta1.(1992)は、3歳から5歳の自閉症群、生活年齢と発達年齢の同等な知的障害群、及び両. 者に同等の発達年齢の定型群の子どもを対象とし、玩具で遊んでいる子どもの手を押さえつけたり、 提示した玩具を子どもが手を伸ばしたところで遠ざけるといった操作を行ったところ、5秒以内に研究 者の顔を見る反応が自閉症群において有意に少なかったと報告した。なお、これについてPhi1ips eta1.. (1992)は、この操作が曖昧状況を構成し、研究者の顔を見る反応が社会的参照であると論じているが、 これが正しければミノルとユカリ以外では蓋ブロックという状況に際しての社会的参照は既に成立して いたと考えられる。なお、ミノルとユカリの蓋ブロックから振向き反応までの経過時間(潜時)の減少は他 の子どもより緩やかなことから、随伴一性の学習に若干の困難があることが例えた。. 一方、弁別反応については、ミノルとユカリで形成されず、マナミでは形成に長い時間が費やされた。. これは蓋を開ける反応には大きい反応努力が伴わないこと、片付け試行での謀反応には実験者によ る嫌悪刺激操作が不在であったこと、加えてアクセス試行のみで正反応が生起した場合の強化率が 50%であることから、全試行で蓋を開けても大きな不利益がなかったためであろう(しかし、マナミとナ オコには片付け試行で蓋を開けトークンが得られず「入ってない」「もう一回やる」といった発言等の軽 度の感情的反応が見られた)。. 24.
(27) また、ユカリとミノルについては、指差しや頚動きプロンプトに頼った弁別反応は形成されたが、プロ. ンプトなしで単独提示された表情への刺激性制御の転移が不可能であった。しかし、両者においては. 研究場面において蓋がブロックされた際の振向き反応の生起頻度の増加や、以前に比べて顔を見る ことが多くなったとのユカリの両親による報告を鑑みると、一定の臨床的意義はあったと考える。. ところで、ASDの社会的参照の欠如に関しては様々な理由が挙げられている。社会的参照の基本 となる能力の一つは社会的情報の解読(Baldwin&Moses,1996;Feinmaneta1.,1992)であるが、ASD をもつ人は他者の感情を理解するための認知的素地(Sigmaneta1.,1992)や弁別的理解(飯塚・大神, 2001)に欠けると考えられており、実際に表情の理解(Ric㎞an,2001)や弁別(Celani,Ba廿a㏄hi,& 虹。idiacono,1999;若松,1989)に困難があることが矢口られている。基本能力の第二は、他者からの感. 情的情報が環境内のどの刺激に関するものかの理解(Baldwin&Moses,1996;Fei㎜aneta1.,1992)、 あるいは他者と同一対象に注意を向けていることの理解(飯塚・大神,1997)であるが、ASDでは共同 注意(Ho1th,2005;M㎜dy&Crowson,1997)や大人が見ている物の同定(Klein,MacDona1d, Vai11anco耐,Aheam,&Dube,2009)に困難があることが知られている。第三の基本能力は、曖昧状況. 下での情報の必要性を認識する前に、自分が持っていない情報を他者が持っていること、何をどこに 求めるべきかを知っていること(Baldwin&Moses,1996)である。これについてSigmaneta1.(1992)は、. ASDは「心の理論」の欠陥により自分が持っていない知識を他者が持っていることを理解できないため、. 他者の顔を見る動機に欠けると説明した。しかし、ASDを前提としない一般論としては、他者の情動表 出パターンと曖昧な刺激への回避や接近といった行動の結果との連合の学習によるオペラント条件付 けの結果として社会的参照が形成され、そこから心の理論が成立するという立場もあり(遠藤・小沢,. 2001)、その因果関係については更なる検討が必要である。なお、行動分析の手法によりASDをもつ 子どもに感情の弁別(高階・犬飼・井上,2006)や他者視線の同定(K1eineta11,2009)の形成を行った 研究があることをここで指摘しておく。. ASDにおける他者の表情や動作等の社会的刺激への無関心の原因としては、社会的刺激への注 目に必要とされる素早い注意の切り替えの困難、複雑且つ多様が難しい社会的刺激の処理の困難、 社会的刺激の価値の認識に関する報酬知覚に関わる脳神経機能における欠陥(Dawsoneta1.,2004)、. 25.
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