高齢者の交通事故傷害予測モデル開発と
歩行中および自転車乗車中の傷害予測
― 平成 27 年度(中間報告) タカタ財団助成研究論文 ―
ISSN 2185-8950
研究実施メンバー
研究代表者
芝浦工業大学 工学部
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報告書概要
本年度の研究において,高齢歩行者及び高齢自転車乗員モデルを構築した.開発 したモデルと自動車との衝突シミュレーションを実施し,頭部傷害リスクを中心に 評価を行った.その結果,ある程度以上の速度域で頭部傷害リスクが高いこと,し かし必ずしも衝突速度の増大につれて頭部傷害リスクが増大するものではないこ とがわかった.衝突速度が低い場合においても特異的に高い傷害リスクが予測され ることがあり,高齢者モデルのさらなる検証と傷害メカニズムの詳細検討の必要性 が示唆された.また,頭部傷害及び大腿骨頸部骨折の原因になると考えられる路面 との衝突を評価するため,路面モデルの構築に取り組んだ.しかし,路面の特性は 自動車ボディと比較してかなり硬く,その特性の再現は容易ではなかった.今後の 傷害リスク評価の拡大のためにはさらに高精度な路面モデルとするための改良が 必要である.高齢者の典型的な骨折の一つに脊椎圧迫骨折があるが,これを評価す るための脊椎モデルを構築する必要がある.脊椎モデル構築のために,脊椎構造や 材料特性の基礎検討を行った.今後,有限要素モデルにより脊柱を再現し,マルチ ボディシミュレーションへの組み込み手法の検討を推進する.特に自転車乗員では, 衝突時の腕部筋緊張の違いが頭部衝突位置に影響する可能性が考えられる.そこで, 高齢自転車乗員モデルに腕部筋緊張を考慮するため,筋骨格シミュレーションを研 究計画に導入することとした.今後,筋緊張と巨視的な関節剛性の関係を明らかに し,高齢者傷害シミュレーションモデルに導入する.3/40
目 次
第 1 章 はじめに 1.1 研究背景 4 1.2 研究目的 5 第 2 章 研究手法 2.1 使用モデル 6 2.2 衝突条件 7 2.3 頭部傷害評価法 10 2.4 歩行者モデルの姿勢 9 第 3 章 高齢歩行者衝突シミュレーション結果 3.1 速度の影響 11 3.2 車種の影響 13 3.3 性別の影響 16 3.4 自動車ブレーキの影響 19 3.5 まとめ 24 第 4 章 高齢者自転車衝突シミュレーション結果 4.1 前突の場合 25 4.2 側突の場合 27 4.3 後突の場合 29 4.4 まとめ 32 第 5 章 路面材料特性の再現の検討 4.1 路面モデルの検証方法 33 4.2 路面モデルの構築 34 4.3 まとめ 37 第 6 章 まとめと今後の課題 38 参考文献 394/40
第 1 章
はじめに
1.1 研究背景 今日,歩行中及び自転車乗員の交通事故死者数が 2014 年に図 1.1 より約 6 割となっている. また図 1.2 のより警視庁交通局資料によると歩行中の年齢層別死者数及び負傷者数で高齢者 が共に最も多くなっている.このような現状の中,AM50 の保護を目的とした対策が考察され てきた.しかし,これらの対策は高齢歩行者に対しての有効性は検討されていない.今日, 交通事故死者数の約 6 割が歩行者と自転車乗員のいわゆる交通弱者で占めている.Fig. 1.1 Fatalities in traffic accident in Japan (2014) (1)
5/40 自動車の保護設計試験は交通弱者の中でも主に歩行者のダミーモデルを使用している.す なわち,自動車の保安基準は高齢歩行者および自転車乗員に関しての有効性は確かめられて いないといえる.高齢歩行者・自転車乗員の傷害予測と保護対策の検討は,交通事故死者数, 傷害者数の低減には不可欠である. 1.2 研究目的 本研究では上記の背景を踏まえ,AM50 の歩行者が保護対象とされている自動車の保安基準の,高 齢歩行者・自転車乗員に対する有効性を検討するため,高齢歩行者および自転車乗員傷害シミュレ ーションモデルを構築することが目的である.そのために高齢歩行者および自転車乗員を模擬した シミュレーションモデルを構築する.構築したモデルにより典型的な事故状況をシミュレーション し,頭部傷害や大腿骨頸部骨折,脊椎圧迫骨折のリスクの検討につなげる.
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第 2 章
研究手法
2.1 使用モデル 本研究ではシミュレーションにおける挙動解析を行うため,自動車の衝突安全の分野で用 いられている解析ソフトの MADYMO(TNO Automotive)を使用した. 本研究の解析で使用する自動車のモデルは,市販車の実測に基づきセダンタイプ,SUV タ イプの前部構造を再現したものを用いた. 構築した自動車モデルのフード,フードエッジ,バンパーは,図 2.1 のような各種インパ クタ(頭部,脚部,大腿部)を用いた実車のインパクタ試験結果との比較により,検証されて いる.各自動車モデルを図 2.1 に示す. Fig. 2.1 Impactors(3)7/40
Fig. 2.2 Car model (left: Sedan type, right: SUV type) (4)
人体モデルは高齢女性歩行者モデルには,身長 149cm,体重 51kg の体格を模擬した.また 高齢男性歩行者モデルでは身長 156.3cm,体重 56.6kg とした.各高齢歩行者モデルを図 2.2 に示す.
Fig. 2.2 Elderly pedestrian model (left: female pedestrian, right: male pedestrian)(5) 自転車乗員モデルは,高齢者モデルを 24 インチサイズの自転車に乗せることで構築した. 2.2 衝突条件 まず,歩行者シミュレーションの衝突条件について述べる.本研究では自動車の速度の影 響を比較するために 10, 20, 30, 40km/h の 4 パターンと,歩行者姿勢の影響を評価するため に右側,左側衝突の 2 パターンと,車種による影響を検討するためにセダンタイプ,SUV タ イプの 2 タイプ,さらに性別による影響を観察するために男性,女性の 2 パターン,また,
8/40 より実際の事故を想定したモデルを作成した.さらに,上記のシミュレーションの自動車の ブレーキの影響を評価するため,8.5 m/s2の減速度によるブレーキの有無を考慮した.自動 車モデルはセダンタイプと SUV タイプを用いた. 自動車衝突事故において,衝突時の歩行者姿勢は様々である.また自動車衝突時の歩行者 姿勢によって歩行者の挙動が変化し,HIC 値が変化することが予想される.本研究では両足 立脚の左足前(図 2.3)と右足前(図 2.4)の 2 パターンの条件で解析を行う.
Fig. 2.3 Pedestrian model attitude (left leg front)
Fig. 2.4 Pedestrian model attitude (right leg front)
次に自転車乗員シミュレーションの衝突条件について述べる.自転車の場合,衝突速度が 歩行者よりも高い場合が考えられるため,10, 20, 30, 40, 50km/h の 5 パターンとした.衝 突方向は,前突,側突,後突とした.予備的な解析の結果,前突と後突の場合,相対速度が 同じであれば自転車の速度の考慮の有無によらず自転車乗員の挙動がほとんど変わらなかっ たため,側突でのみ自転車の速度 10km/h を考慮した.歩行者と同様に自動車のブレーキの有 無の影響についても検討した.自動車モデルはセダンタイプのみを用いた.自転車モデルと 自動車との相対的な関係を図 2.5,2.6,2.7 に示す.
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Fig. 2.5 Sample of Simulation Environment of Frontal Collision.
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Fig. 2.7 Sample of Simulation environment for the rear end collision scenario
2.3 頭部傷害評価法
本研究では頭部インパクタの衝突解析やその後のパラメータスタディで頭部の傷害を評価 するための頭部傷害値指標として独立行政法人自動車事故対策機構の歩行者保護性能評価試 験にも用いられている HIC(5)(Head Injury Criterion)を使用する.なお,HIC は式(1),(2) より求められる. HIC = 𝑀𝑀𝑀𝑀𝑀𝑀 �(𝑡𝑡2− 𝑡𝑡1) � 1 𝑡𝑡2− 𝑡𝑡1� 𝛼𝛼𝑅𝑅 9.8 𝑡𝑡2 𝑡𝑡1 𝑑𝑑𝑡𝑡� 2.5 � (1) 𝛼𝛼𝑅𝑅= �𝛼𝛼𝑥𝑥2+ 𝛼𝛼𝑦𝑦2+𝛼𝛼𝑧𝑧2 (2) 𝛼𝛼𝑅𝑅は 頭 部 の 合 成 加 速 度 ,t1,t2 は 衝 突 中 の 任 意 の 時 間 で あ る . ま た , 本 研 究 で は |𝑡𝑡2− 𝑡𝑡1| ≤ 15[msec]を使用し,HIC15とした.
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第 3 章
高齢歩行者衝突シミュレーション結果
3.1 速度の影響 衝突条件は第 2 章で述べた通り,衝突方向は側突,2 つの自動車モデル(セダンモデル,SUV モデル), 4 つの速度(10km/h~40km/h),2 つの高齢歩行者モデル(男性,女性),歩行者の 姿勢が 2 パターン(左足前,右足前)自動車モデルにブレーキを組み込んだモデル,組み込 んでいないモデの 2 種類,の計 64 パターンで比較する.速度による HIC について比較したも のを図 3.1,図 3.2,図 3.3,図 3.4 に示す.なお,図 3.1 は男性歩行者とブレーキが組み込 まれていない自動車モデルとの衝突,図 3.2 は男性歩行者とブレーキが組み込まれている自 動車モデルとの衝突,図 3.3 は女性歩行者とブレーキが組み込まれていない自動車モデルと の衝突,図 3.4 は女性歩行者とブレーキが組み込まれている自動車モデルとの衝突の結果で ある.Fig. 3.1 Male pedestrian model (car: without braking)
0 150 300 450 600 10 20 30 40 HI C Velosity(km/h) Pedestrian model (car:sedan, right leg front) Pedestrian model (car:sedan, left leg front)
Pedestrian model (car:SUV, right leg front)
Pedestrian model (car:SUV, left leg front)
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Fig. 3.2 Male pedestrian model (car: with braking)
Fig. 3.3 Female pedestrian model (car: without braking)
Fig. 3.4 Female pedestrian model (car: with braking)
速度比較している図 3.1~3.4 から,全体的な傾向として速度が上昇するにつれ HIC の値が 高くなっている.しかし,図 3.1,図 3.2 の自動車速度 30km/h から 40km/h のとき HIC が減 0 150 300 450 600 10 20 30 40 HI C Velosity(km/h)
Pedestrian model (car: sedan,right leg front) Pedestrian model (car: sedan, left leg front) Pedestrian model (car: SUV, right leg front) Pedestrian model (car: SUV, left leg front)
0 500 1000 1500 2000 2500 10 20 30 40 HI C Velosity(km/h)
Pedestrian model (car: sedan,right leg front) Pedestrian model (car: sedan,left leg front) Pedestrian model (car: SUV,right leg front) Pedestrian model (car: SUV,left leg front)
0 500 1000 1500 2000 2500 10 20 30 40 HI C Velosity(km/h) Pedestrian model (car:sedan,right leg front) Pedestrian model (car:sedan,left leg front) Pedestrian model (car:SUV,right leg front) Pedestrian model (car:SUV,left leg front)
13/40 少している結果となった.40km/h のときにどちらの歩行者姿勢の衝突もこのように HIC が減 少した結果の原因としまして, 40km/h の場合,角速度 53rad/s となり頭部が自動車とカー ブ(弧を描いて)して衝突している挙動になっていたのに対し,30 km/h のほうでは角速度 40rad/s となり頭部が自動車とより直線的に衝突している挙動であったことが考えられる. 3.2 車種の影響 次に車種による HIC について比較したものを図 3.5~図 3.12 に示す.なお,図 3.5 は右足 前姿勢,図 3.6 は左足前姿勢の男性歩行者とブレーキが組み込まれていない自動車モデルと の衝突,図 3.7 は右足前姿勢,図 3.8 は左足前姿勢の男性歩行者とブレーキが組み込まれて いる自動車モデルとの衝突,図 3.9 は右足前姿勢,図 3.10 は左足前姿勢の女性歩行者とブレ ーキが組み込まれていない自動車モデルとの衝突,図 3.11 は右足前姿勢,図 3.12 は左足前 姿勢の女性歩行者とブレーキが組み込まれている自動車モデルとの衝突の結果である.
Fig. 3.5 Male pedestrian model (car: without braking, right leg front)
Fig. 3.6 Male pedestrian model (car: without braking, left leg front)
0 150 300 450 600 10 20 30 40 HI C Velosity(km/h) Male model (car:sedan)
Male model (car:SUV)
0 150 300 450 600 10 20 30 40 HI C Velosity(km/h) Male model (car: sedan)
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Fig. 3.7 Male pedestrian model (car: with braking, right leg front)
Fig. 3.8 Male pedestrian model (car: with braking, left leg front)
Fig. 3.9 Female pedestrian model (car: without braking, right leg front)
0 150 300 450 600 10 20 30 40 H IC Velosity (km/h)
Male model (car:sedan) Male model (car:SUV)
0 150 300 450 600 10 20 30 40 H IC Velosity (km/h)
Male model (car:sedan) Male model (car:SUV)
0 500 1000 1500 2000 2500 10 20 30 40 H IC Velosity (km/h)
Female model (car:sedan) Female model (car:SUV)
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Fig. 3.10 Female pedestrian model (car: without braking, left leg front)
Fig. 3.11 Female pedestrian model (car: with braking, right leg front)
Fig. 3.12 Female pedestrian model (car: with braking, left leg front) 車種の比較に関してはすべての条件で,セダンタイプ自動車モデルの衝突のほうが SUV タ イプ自動車モデルの衝突より HIC の値が高い結果となった.これはセダンタイプ自動車モデ 0 100 200 300 400 500 600 700 10 20 30 40 H IC Velosity (km/h)
Feamle model (car:sedan) Female model (car:SUV)
0 100 200 300 400 500 600 700 10 20 30 40 H IC Velosity (km/h)
Female model (car:sedan) Female model (car:SUV)
0 100 200 300 400 500 600 700 10 20 30 40 H IC Velosity (km/h)
Female model (car:sedan) Female model (car:SUV)
16/40 ルの場合歩行者頭部がバンパーに衝突しているのに対して,SUV タイプ自動車モデルの場合 歩行者頭部がどこにも衝突していないため,セダンタイプ自動車モデル衝突時に結果が高い 値が出ると考えられる.また時速 40km の時,角速度がセダンでは 41rad/s,SUV で 11rad/s となりセダンタイプ衝突時に HIC 値が高い値になると考えられる. 3.3 性別の影響 次に高齢歩行者の性別による HIC について比較したものを図 3.13~図 3.20 に示す.なお, 図 3.13 は右足前姿勢,図 3.14 は左足前姿勢の歩行者とブレーキが組み込まれていないセダ ンタイプ自動車モデルとの衝突,図 3.15 は右足前姿勢,図 3.16 は左足前姿勢の歩行者とブ レーキが組み込まれている SUV タイプ自動車モデルとの衝突,図 3.17 は右足前姿勢,図 3.18 は左足前姿勢の歩行者とブレーキが組み込まれていないセダンタイプ自動車モデルとの衝突, 図 3.19 は右足前姿勢,図 3.20 は左足前姿勢の歩行者とブレーキが組み込まれている SUV タ イプ自動車モデルとの衝突の結果である.
Fig. 3.13 Pedestrian model(car:sedan without braking, right leg front)
Fig. 3.14 Pedestrian model (car: sedan without braking, left leg front)
0
500
1000
1500
2000
2500
10
20
30
40
HI
C
Velosity(km/h) Male Female 0 500 1000 1500 2000 2500 10 20 30 40 H IC Velosity(km/h) Male Female17/40
Fig. 3.15 Pedestrian model (car: SUV without braking, right leg front)
Fig. 3.16 Pedestrian model (car: SUV without braking, right leg front)
Fig. 3.17 Pedestrian model(car:sedan with braking, right leg front)
0 200 400 600 10 20 30 40 H IC Velosity(km/h) Male Female 0 200 400 600 10 20 30 40 H IC Velosity(km/h) Male Female 0 500 1000 1500 2000 2500 10 20 30 40 H IC Velosity (km/h) Male Female
18/40
Fig. 3.18 Pedestrian model(car:sedan with braking, left leg front)
Fig. 3.19 Pedestrian model(car:SUV with braking, right leg front)
Fig. 3.20 Pedestrian model(car:SUV with braking, left leg front)
歩行者性別の比較に関しては全体的な傾向として速度 30,40km/h の時,女性歩行者モデル のほうが HIC の値が高くなり,速度 10,20km/h の時,男性歩行者モデルのほうが HIC の値が 0 500 1000 1500 2000 2500 10 20 30 40 H IC Velosity (km/h) Male Female 0 100 200 300 400 500 600 700 10 20 30 40 H IC Velosity (km/h) Male Female 0 100 200 300 400 500 600 700 10 20 30 40 H IC Velosity (km/h) Male Female
19/40 高い結果となった.このことより女性歩行者モデルのほうが男性歩行者モデルより速度の影 響を受けやすいと考えられる.また図 3.17,図 3.18 より 40km/h の時男性歩行者の場合に HIC の値が 500 以下となっていたのに対し,女性歩行者の場合に HIC の値が 2000 以上となってい た.解析結果の挙動を観察したところ,自動車モデルのバンパーと歩行者頭部の衝突時の挙 動が異なっていることが分かる.そのため角速度を算出したところ男性歩行者モデル時に 32rad/s,女性歩行者モデル時に 33rad/s となっており衝突時の頭部挙動が影響していると考 えられる.
Fig. 3.21 Male pedestrian model (car: sedan without braking, left leg front)
Fig. 3.22 Female pedestrian model (car: sedan without braking, left leg front)
3.4 自動車ブレーキの影響 続いてブレーキによる HIC について比較したものを図 3.23~図 3.30 に示す.なお,図 3.23 は右足前姿勢,図 3.24 は左足前姿勢の男性歩行者とセダンタイプ自動車モデルとの衝突,図 3.25 は右足前姿勢,図 3.26 は左足前姿勢の男性歩行者と SUV タイプ自動車モデルとの衝突, 図 3.27 は右足前姿勢,図 3.28 は左足前姿勢の女性歩行者とセダンタイプ自動車モデルとの 衝突,図 3.29 は右足前姿勢,図 3.30 は左足前姿勢の女性歩行者と SUV タイプ自動車モデル との衝突の結果である.
20/40
Fig. 3.23 Male model (car: sedan, right leg front)
Fig. 3.24 Male model (car: sedan, left leg front)
0 150 300 450 600 10 20 30 40 H IC Velosity(km/h) Without braking With braking 0 150 300 450 600 10 20 30 40 H IC Velosity(km/h) Without braking With braking
21/40
Fig. 3.25 Male model (car: SUV, right leg front)
Fig. 3.26 Male model (car: SUV, left leg front)
0 150 300 450 600 10 20 30 40 H IC Velosity(km/h) Without braking With braking 0 150 300 450 600 10 20 30 40 H IC Velosity(km/h) Without braking With braking
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Fig. 3.27 Female model (car: sedan, right leg front)
Fig. 3.28 Female model (car: sedan, left leg front)
0 500 1000 1500 2000 2500 10 20 30 40 H IC Velosity (km/h) Without braking With braking 0 500 1000 1500 2000 2500 10 20 30 40 H IC Velosity (km/h) Without braking With braking
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Fig. 3.29 Female model (car: SUV, right leg front)
Fig. 3.30 Female model (car: SUV, left leg front)
ブレーキ比較している図 3.23~3.30 から,全体的な傾向としてブレーキが組み込まれてい る自動車モデルのほうが,ブレーキが組み込まれていない自動車モデルより HIC の値が低い 結果となった.しかし,図 3.23~図 3.26 の男性歩行者モデル衝突時にブレーキが組み込ま れている自動車モデルの衝突時に HIC の値が高い結果となった.これは自動車モデルと歩行 者モデルの頭部との衝突前の挙動を観察すると,自動車速度が 10km/h ,20km/h の時にブレー キが組み込まれていない自動車モデルでは歩行者モデルの肩,頭部の順に衝突していた.一 0 100 200 300 400 500 600 700 10 20 30 40 H IC Velosity (km/h) Without Braking With braking 0 100 200 300 400 500 600 700 10 20 30 40 H IC Velosity(km/h) Without braking With braking
24/40 方ブレーキが組み込まれている自動車モデルでは直接頭部に衝突している挙動が原因である と考えられる.また自動車速度が 30km/h の場合では,ブレーキが組み込まれている自動車モ デルでは角速度 31rad/s となり頭部が自動車とカーブして(弧を描いて)衝突している挙動 になっていたのに対し,ブレーキが組み込まれていない自動車モデルでは角速度 21rad/s に なり頭部が自動車とより直線的に衝突している挙動であったことが考えられる. 3.5 まとめ ・衝突速度が上昇するにつれ HIC の値が増大する傾向があった. ・図 3.1,図 3.2 の自動車速度 30km/h~40km/h のとき HIC が減少しているのは頭部衝突時の 挙動が影響していると考えられる. ・車種の比較を行い,セダンタイプ自動車モデルの衝突のほうが SUV タイプ自動車モデルの 衝突より HIC の値が高い結果となった.セダンタイプ自動車モデルの衝突は歩行者頭部自体 がバンパーに衝突しているが,SUV タイプ自動車モデルの衝突は歩行者頭部自体はどこにも 衝突していないことが考えられる. ・性別の比較を行い,女性歩行者モデルのほうが男性歩行者モデルより速度の影響を受けや すいと考えられる. ・ブレーキの比較を行い,ブレーキが組み込まれている自動車モデルのほうが,ブレーキが 組み込まれていない自動車モデルより HIC の値が低い結果となった. ・頭部衝突時の頭部角速度によって HIC 値変化すると考えられる.
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第 4 章
高齢者自転車衝突シミュレーション結果
4.1 前突の場合 各衝突速度およびブレーキ条件におけるシミュレーションにおける頭部傷害評価を HIC に よって行った結果を図 4.1,4.2 に示す.また,衝突時の乗員の挙動のサンプルを図 4.3,4.4 に示す.Fig. 4.1 HIC of Male Elderly Cyclist at the frontal collision setup
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Fig. 4.3 Moment of male head impact to the hood, 40 km/h, with brakes applied.
Fig. 4.4 Moment of female head impact to the hood, 30 km/h, without brakes. 結果より,10 および 20 km/h の低速時には,男女共 HIC はほぼゼロであった.30 km/h でブ レーキ有りの場合,自転車乗員は自動車車体とぶつからなかったため,HIC は計測できなか った.また,男性の 50 km/h・ブレーキ有り,女性の 40 km/h・ ブレーキ有りと 50 km/h・ ブレーキ有りおよび無しの場合においても車体と自転車乗員が強く接触することがなかった ため,HIC は非常に低かった.
27/40
4.2 側突の場合
側突シミュレーションにおける HIC の結果を図 4.5,4.6 に示す.また,側突時の乗員挙動 のサンプルを図 4.7,4.8 に示す.図中の緑の人体モデルは自転車の進行速度 10 km/h を考慮 した場合を,灰色は進行速度を考慮しない場合を示す.
Fig. 4.5 HIC of Male Elderly Cyclist at the sideway collision setup
28/40
Fig. 4.7 Comparison of moment of male head impact to the hood, 30 km/h. In gray, there are no speed applied to the elderly body while on the purple body, 10 km/h
speed is present.
Fig. 4.8 Comparison of moment of female head impact to the hood, 30 km/h. In gray, there are no speed applied to the elderly body while on the purple body, 10 km/h
speed is present.
全体的な傾向として,自転車の進行速度を考慮した場合に HIC が低く見積もられた.また, 自動車のブレーキは自転車乗員の HIC 低減に効果的であることがわかった.
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4.3 後突の場合
後突シミュレーションにおける HIC の結果を図 4.9,4.10 に示す.また,側突時の乗員挙 動のサンプルを図 4.11,4.12 に示す.
Fig. 4.9 HIC of Male Elderly Cyclist at the sideway collision setup
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Fig. 4.11 Moment of Male head impact to the hood, 30 km/h, with brakes applied.
Fig. 4.12 Moment of Female head impact to the hood, 30 km/h, with brakes applied. 20 km/h・ブレーキ無しの場合を除くと,高齢男性の場合,衝突速度 50 km/h で HIC が急激 に増大した.一方,高齢女性の場合,衝突速度 30 km/h を境界に HIC が増大した.しかし, 衝突速度と HIC の値は必ずしも相関して変化するものではなかった.また,後突の場合は前
31/40 突,側突に比べて HIC が高い水準にあった.20 km/h・ブレーキ無しの場合,高齢男性・女性 とも HIC が特異的に高くなった.図 4.13 は女性モデル・20 km/h の場合と男性モデル・30 km/h の場合の角加速度の履歴を示す(ともにブレーキ無しの場合).これらの条件でのシミュレー ションでは,その他の速度条件の場合に比べ,頭部の角加速度の最大値が非常に高くなった. この高い角加速度を発生したときの自転車乗員の状態を図 4.14 に示す.角加速度が高くなっ たのは,腰部がフードエッジにちょうどあたり,上体が並進運動から腰部まわりの回転運動 に変化する時点であった.このような特徴的な衝突をするとき,頭部の自動車車体への衝突 速度が特異的に高くなり,HIC が高い値となったと考えられる.
32/40
Fig. 4.14 Moment of initial contact of Female(green) and Male(gray)bodies on the hood, 20 km/h, without brakes applied
4.5 まとめ ・高齢者自転車衝突の場合,HIC は必ずしも速度に依存しなかったが,およそ HIC はある程 度以上の衝突速度域において高い値を示す傾向があった. ・自動車のブレーキにより,高齢自転車乗員と自動車車体との衝突を防ぐ,もしくは接触を 一部に止める効果があった. ・後突が最も高い HIC を示した.
33/40
第 5 章
路面材料特性の再現の検討
5.1 路面モデルの検証方法 歩行者や自転車乗員は,自動車との衝突後,もしくは直接に路面に衝突する.そのため, 路面衝突時の傷害特性を評価する必要がある. そこで,路面モデルにアスファルトの力学的特性を採用し,より現実の条件に則した条件 での解析を目指した. 本研究では,過去に独立行政法人交通安全環境研究所で行われたインパクタ試験を参考に 路面材料モデルを構築し,ヘッドフォームインパクタモデル(図 5.1)を衝突させたときの 加速度波形を実験データと比較することによってモデルの妥当性を検証しようとした.イン パクタ試験では,高さ 1.5m から頭部インパクタをアスファルトの路面に自由落下させ衝突さ せる.そしてインパクタに内蔵されている加速度計で頭部インパクタの加速度-時間データを 得た.シミュレーションでは,図 5.2 のような頭部インパクタを用いて図 5.3 に示した実験 と条件を合わせたシミュレーションを行った.34/40
Fig. 5.2 Head impactor model in MADYMO
Fig. 5.3 Collision simulation model that reproduces the experiment
4.2 路面モデルの構築
実験により得られた路面材料特性を示す.図 5.4 は実験で得られた加速度波形,図 5.5 は 加速度波形から算出した反力-貫入量関係を示す.
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Fig. 5.4 Acceleration history on the impactor experiment
Fig. 5.5 Force-Displacement curve of the road surface
0
2000
4000
6000
8000
-0.005
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0
0.002
0.004
0.006
F(K
N
)
Displacement(m)
36/40
次に実験結果を参考に路面モデルを構築した.路面モデルでは,実験の加速度波形を再現 するよう,反力‐貫入量特性を図 5.6 のように設定した.
Fig. 5.6 Force-Displacement graph to incorporated in MADYMO
Fig. 5.7 Acceleration-time on experiment and Analysis
図 5.7 に加速度‐時間の解析結果と実験結果の比較を示す.グラフの概形は似通った結果 が得られたが,加速度波形の積分値は実験結果よりかなり大きくなった.HIC の値を比較し ても,実験では 238 に対し,解析結果では 690 と大きい値となった.これは,路面衝突時の インパクタの加速度波形が非常に暴露時間の短いスパイク状を呈しており,スパイク幅の再 0 5 10 15 20 25 30 0 0.001 0.002 0.003 0.004 0.005 0.006 Fo rc e( KN ) Displacement(m) Loading curve Unloading curve Hysteresis
0
2000
4000
6000
8000
-0.005
0.000
0.005
0.010
A
cc
el
er
at
io
n[
m/
s2
]
Time[sec]
Analysis
Experiment
37/40 現精度が HIC の再現精度に直接影響したためと考えられる.今後,さらに路面特性を精度よ く再現する手法を検討し,路面衝突によって生じる頭部傷害や大腿骨頸部骨折の評価に結び つける. 5.3 まとめ ・路面のインパクタ試験に基づき,路面モデル構築を試みた.路面の特性は非常に硬く,傷 害解析に適用可能な精度でそれを再現することは難しかった.さらにチューニングの精度を 向上し,傷害解析用路面モデルを確立する必要がある.
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第 6 章
まとめと今後の課題
本年度の研究において,高齢歩行者及び高齢自転車乗員モデルを構築した.開発したモデ ルと自動車との衝突シミュレーションを実施し,頭部傷害リスクを中心に評価を行った.そ の結果,ある程度以上の速度域で頭部傷害リスクが高いこと,しかし必ずしも衝突速度の増 大につれて頭部傷害リスクが増大するものではないことがわかった.衝突速度が低い場合に おいても特異的に高い傷害リスクが予測されることがあり,高齢者モデルのさらなる検証と 傷害メカニズムの詳細検討の必要性が示唆された. また,頭部傷害及び大腿骨頸部骨折の原因になると考えられる路面との衝突を評価するた め,路面モデルの構築に取り組んだ.しかし,路面の特性は自動車ボディと比較してかなり 硬く,その特性の再現は容易ではなかった.今後の傷害リスク評価の拡大のためにはさらに 高精度な路面モデルとするための改良が必要である. 高齢者の典型的な骨折の一つに脊椎圧迫骨折があるが,これを評価するための脊椎モデル を構築する必要がある.脊椎モデル構築のために,脊椎構造や材料特性の基礎検討を行った. 今後,有限要素モデルにより脊柱を再現し,マルチボディシミュレーションへの組み込み手 法の検討を推進する. 特に自転車乗員では,衝突時の腕部筋緊張の違いが頭部衝突位置に影響する可能性が考え られる.そこで,高齢自転車乗員モデルに腕部筋緊張を考慮するため,筋骨格シミュレーシ ョンを研究計画に導入することとした.今後,筋緊張と巨視的な関節剛性の関係を明らかに し,高齢者傷害シミュレーションモデルに導入する.39/40
参考文献
(1)警察庁交通局交通企画課,交通事故統計,July,2015
(2)警察庁交通局 平成 25 年度中交通事故の発生状況 July,2015 (3)TASS international MADYMO ダミー,人体モデル jun. 2014.
(4)鯉淵朗宏,車マルチボディモデルの検証および車-自転車事故解析 芝浦工業大学機械 機能工学科,2014