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男性慢性閉塞性肺疾患患者の握力は全身状態を反映するか? 〜全身状態の各指標との関連および影響要因の検証〜

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男性慢性閉塞性肺疾患患者の握力は全身状態を反映するか?

〜全身状態の各指標との関連および影響要因の検証〜

日髙 晴菜

1)2)

,白仁田秀一

1)2)

,猿渡

1)2)

﨑谷 亜美

1)2)

,渡辺

1)2) 要旨:[目的]男性の慢性閉塞性肺疾患(COPD)の握力と各指標との関連と影響要因につい て調査した。[対象・方法]外来 COPD65例を対象とした。握力との関連を調査する項目とし て,呼吸機能検査は %FVC(%forced vital capacity),FEV1.0%(forced expiratory volume in one second%),%FEV1.0(%forced expiratory volume in one second),呼吸困難感検査は mMRC(modified British Medical Research Council),栄養検査は筋量(上肢筋量,下肢筋量, 体幹筋量,全身筋量),筋力検査は MEP(Maximum Expiratory Pressure),MIP(Maximum Inspiratory Pressure),膝伸展筋力,運動耐容能検査は 6MD(6 Minute Walking Distance), 精神検査は HADS(hospital anxiety and depression scale)の不安とうつ,生活活動範囲検査 は LSA( Life Space Assessment Test ),認 知 機 能 検 査 は MoCA-J( Japanese version of Montreal Cognitive Assessment)とした。解析方法は握力とその他の項目について Pearson 積率相関分析を用いて,また従属変数を握力,独立変数を %FEV1,mMRC,全身筋量, 6MD,HADS のうつ,LSA,MoCA-J としたステップワイズ法による重回帰分析にて握力の 影響因子の抽出を行った。[結果]相関分析の結果,握力は上下肢,体幹,全身筋量,MEP, MIP,膝伸展筋力,6MD,LSA,MoCA-J と相関が認められた。重回帰分析の結果は,全身 筋量と MoCA-J が握力の影響因子として抽出された。[結語]男性 COPD の握力は栄養,運 動能力,生活活動範囲,認知機能と中等度以上の関連が認められ,全身筋量と MoCA-J が影 響していることが示唆された。

Ⅰ.はじめに

握力は,日常診療において簡便に実施できる 測定指標で,上肢筋力の総体値の指標として用 いられている。また,握力は,上肢筋力以外の 筋力や運動耐容能,または身体活動量との関連 性 が,一 般 高 齢 者 や 慢 性 閉 塞 性 肺 疾 患 (COPD:chronic obstructive pulmonary disea-se)などを対象とした先行研究で報告されてい

原 著

1)長生堂渡辺医院 リハビリテーション科 TEL:0955-72-2770 FAX:0955-73-5697 E-mail:[email protected] 2)NPO 法人 はがくれ呼吸ケアネット TEL:080-2794-3580 FAX:0944-88-8121 E-mail:[email protected]

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る1~3)。そのため,欧州,およびアジアのサル コペニア診断基準では,筋力の指標として握力 が採用されている4)。また,握力は COPD に おいても呼吸リハビリテーションの運動療法マ ニュアル必須項目として,運動能力の評価に用 いられている。さらに COPD の握力は栄養評 価と関連を示していることが報告されてお り5),栄養評価としても望ましい評価項目とし て推奨されている。その他に,握力は一般高齢 者を対象とした認知機能に関連する指標である とされ,握力は COPD の増悪の関連因子であ るとの報告もされている6,7)。 このように握力は,COPD をはじめとして, 栄養状態や全身の筋力または運動耐容能,身体 活動量に関連する指標として,また,他にも認 知機能や精神面など様々な評価項目と関連し, 全身状態を反映する検査であると考えられてい る。 しかし,これらの報告は日本人と人種の異な るものを対象としており,日本人 COPD にお ける握力の有用性についての検討は不十分であ ると考えられる。そこで本研究は,本邦におけ る COPD の握力と呼吸機能,呼吸困難感,栄 養状態,筋力,運動耐容能,精神機能,生活活 動範囲,認知機能との関連を明らかにし,加え て影響要因について検証することを目的とし た。

Ⅱ.対象と方法

1.研究デザインと研究セッティング 研究デザインは,診療記録からの後方視的横 断研究とし,研究セッティングは,呼吸器疾患 専門外来を有するクリニックのリハビリテー ション室とした。調査期間は,2016年 4 月〜 2016年11月までの 7 ヶ月とした。 2.対象 対象は,外来通院をしている病状安定期の男 性 COPD65例 ( 年 齢:76.0 ± 8.2 歳,%FEV 1.0:59.7 ± 22.9%,BMI:22.5 ± 3.8kg/m2 ) とした(表 1 )。包含基準は,男性で60歳以上 とし,除外基準は,COPD 以外の呼吸器疾患 を有する者,重篤な内科的合併症を有する者, 肢体機能障害を有する者,認知症を有する者, 測定項目に欠損のある者とした。 3.方法 測定指標として,主要測定指標は握力とし, 説明測定指標として,呼吸機能検査は %FVC ( %forced vital capacity ),FEV1.0%( forced expiratory volume in one second%),%FEV1.0 (%forced expiratory volume in one second),

呼 吸 困 難 感 検 査 は mMRC( modified British Medical Research Council),栄養検査は筋量 (上肢筋量,下肢筋量,体幹筋量,全身筋量),

筋力検査は MEP(Maximum Expiratory Pre-ssure ),MIP( Maximum Inspiratory Pressu-re),膝伸展筋力,運動耐容能検査は6MD(6 Minute Walking Distance),精神検査は HADS (hospital anxiety and depression scale)不安と うつ,生活活動範囲検査は LSA(Life Space Assessment Test),認知機能検査は MoCA-J (Japanese version of Montreal Cognitive

Asse-表 1 対象の身体特性(n =65) 年齢(歳) 76.0±8.2 BMI(kg/m2 ) 22.5±3.8 FVC(ml) 2358.6±621.3 %FVC(%) 73.0±15.8 FEV1(ml) 1496.3±577.3 %FEV1.0(%) 59.7±22.9 FEV1.0%(%) 62.8±16.5 CAT(点) 14.9±8.3 GOLD 病期分類(人) Ⅰ:15 Ⅱ:27Ⅲ:18 Ⅳ:5 HOT 処方率(%) 16.9 平均±標準偏差

FVC:forced vital capacity

FEV1.0:forced expiratory volume in one second CAT:COPD assessment test

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ssment)とした。 握力の測定は,デジタル式握力計(竹井機器 工業製)を使用した。測定肢位は立位で,左右 の上肢を体側に垂らした状態で最大握力を 2 回 ずつ測定し,その最大値を測定値とした。 呼吸機能検査と MEP または MIP の測定は MINATO 医科学株式会社製の原子式診断用ス パイロメーターオートスパイロ AS507を用い て,MEP,MIP ま た は %FVC,%FEV1 を 測 定した。それぞれ 2 回以上測定し,最大値を測 定値とした。 栄養検査である体組成の測定は,Innerscan dual RD-800(タニタ社)を使用し,生体電気 インピーダンス法にて測定した。装飾品や時 計,財布などを外し,裸足で行った。続いて, 測定台の上で立位となり,両足を電極上に置 き,両手でグリップの電極を把持した状態で, 測定終了まで静止立位を保持し,上肢,下肢, 体幹部および全身筋量,脂肪量の測定を行っ た。 膝伸展筋力はハンドヘルドダイナモメーター (mTas,アニマ社)を用いた。端座位で下腿遠 位部の前面にセンサーパッドを当て,下腿の後 方に位置するプラットホームの支柱と固定用ベ ルトを膝関節が90度屈曲位となるように長さを 調節し連結した。測定では等尺性膝伸展運動を 最大努力にて行わせた。左右交互に 2 回測定 し,最大値を測定値とした。 6MD の測定は,呼吸リハビリテーションマ ニュアル―運動療法―第 2 版に記載されている 方法に従って実施した。対象者には,時間内に できるだけ長く歩行するように指示をした5) LSA の測定は日本理学療法士協会が厚生労 働省から平成17年度〜19年度に「老人保健事業 推進等補助金事業」の交付を受け開発したアセ スメントセットのうちの 1 つである。合計点数 は120点で,点数が高いほど生活範囲が広く外 出頻度が多いことを表している。個室面談方式 で測定した8)。その他,アンケートも同様に個 室にて行った。 MoCA-J と は,軽 度 認 知 機 能 低 下 の ス ク リーニングツールであり,多領域の認知機能 (注意機能,集中力,実行機能,記憶,言語, 視空間認知,概念的思考,計算,見当識)につ いて評価する検査である。合計得点が30点満点 であり,26点未満が MCI とされている9) 4.統計学的分析方法 握力と説明測定指標の相関は,Pearson 積率 相関分析を用いて行った。また握力の影響要因 の 分 析 は,従 属 変 数 を 握 力,独 立 変 数 を %FEV1,mMRC,全 身 筋 量,6 MD,HADS (うつ),LSA,MoCA-J としたステップワイ ズ法による重回帰分析で分析した。有意水準は 5 % と し,統 計 解 析 ソ フ ト は IBM 社 製 SPSSver21.0を用いた。 5.倫理的配慮 倫理的配慮はヘルシンキ宣言に則り,対象患 者に不利益とならないよう使用データを匿名化 保管し,個人情報保護に努めるとともに,情報 の漏洩防止を徹底した。また,本研究の実施に あたり各患者に説明するとともに,評価結果の 使用について口頭にて同意を得た。

Ⅲ.結 果

主要測定項目と説明測定指標の測定値は,表 2 に示す通りであった。 握 力 と 説 明 測 定 指 標 の 相 関 の 結 果 は, mMRC(r =−0.26),上肢筋量(r =0.66), 下肢筋量(r =0.50),体幹筋量(r =0.62), 全身筋量(r =0.62),MEP(r =0.46),MIP (r =0.41),膝伸展筋力(r =0.47),6MD(r =0.51),HADS(不安)(r =−0.27),HADS (うつ)(r =−0.25),LSA(r =0.44),MoCA-J(r =0.50)に有意な相関が認められた(表 3 )。 握力の影響要因の分析は,従属変数を握力,

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独立変数を %FEV1.0,mMRC,全身筋肉量, 6MD,HADS(うつ),LSA,MoCA-J とした ステップワイズ法による重回帰分析を実施した 結 果,握 力 = − 3.922 + 0.526 × 全 身 筋 量 + 0.514× MoCA-J の有意な回帰式が得られ, (R2 =0.451),全身筋量(b=0.502)・MoCA-J(b=0.279)が影響要因として抽出された (表 4 )。 表 2 測定指標の測定値 握力(kg) 30.2±7.2 %FVC(%) 73.0±15.8 %FEV1.0(%) 59.7±22.9 mMRC(scale) 1.6±0.9 上肢筋量(kg) 4.1±0.8 下肢筋量(kg) 13.9±3.8 体幹筋量(kg) 24.0±3.0 全身筋量(kg) 42.6±6.9 MEP(cmH2O) 79.6±36.0 MIP(cmH2O) 46.8±22.9 膝伸展筋力(kgf) 35.9±14.1 6MD(m) 369.2±127.1 HADS 不安(点) 4.6±3.5 HADS 抑うつ(点) 5.9±3.5 LSA(点) 97.1±20.6 MoCA-J(点) 22.9±3.9 平均±標準偏差

FVC:forced vital capacity

FEV1.0:forced expiratory volume in one second mMRC:modified British Medical Research Council MEP:Maximum Expiratory Pressure

MIP:Maximum Inspiratory Pressure 6MD:six-minute walk distance

HADS:hospital anxiety and depression scale LSA:Life-Space Assessment

MoCA-J:Japanese version of Montreal Cognitive Assessment 表 3 握力と説明測定指標の相関 相関係数 p 値 %FVC(%) -0.11 0.36 %FEV1.0(%) -0.20 0.11 mMRC(scale) -0.26 p <0.05 上肢筋量(kg) 0.66 p <0.01 下肢筋量(kg) 0.50 p <0.01 体幹筋量(kg) 0.62 p <0.01 全身筋量(kg) 0.62 p <0.01 MEP(cmH2O) 0.46 p <0.01 MIP(cmH2O) 0.41 p <0.01 膝伸展筋力(kgf) 0.47 p <0.01 6MD(m) 0.51 p <0.01 HADS 不安(点) -0.27 p <0.05 HADS うつ(点) -0.25 0.05 LSA(点) 0.44 p <0.01 MoCA-J(点) 0.50 p <0.01 FVC:forced vital capacity

FEV1.0:forced expiratory volume in one second mMRC:modified British Medical Research Council MEP:Maximum Expiratory Pressure

MIP:Maximum Inspiratory Pressure 6MD:six-minute walk distance

HADS:hospital anxiety and depression scale LSA:Life-Space Assessment

MoCA-J:Japanese version of Montreal Cognitive Assessment

表 4 握力における影響要因(ステップワイズ法による重回帰分析)

MoCA-J:Japanese version of Montreal Cognitive Assessment

b 標準化 b p 値 偏相関係数 VIF (定数) −3.922

全身筋量 0.526 0.502 p <0.01 0.521 1.229 MoCA-J 0.514 0.299 p <0.01 0.322 1.229

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Ⅳ.考 察

握力は簡便に測定可能な測定指標として広く 用いられ,一般高齢者を対象に栄養状態や運動 能力,さらには認知能力などの様々な項目と関 連することが認められている。しかし,日本人 COPD における握力の有用性についての検討 は不十分であることから,本邦の COPD にお ける握力と呼吸機能,呼吸困難感,栄養状態, 筋力,運動耐容能,精神機能,生活活動範囲, 認知機能との関連を検証し,その影響要因につ いて今回検証した。 相関分析の結果,握力は上下肢,体幹,全身 の 各 筋 量,MEP,MIP,膝 伸 展 筋 力,6MD, LSA,MoCA-J において中程度以上の相関で あった。また,重回帰分析の結果,全身筋量と MoCA-J が握力の影響因子として抽出された。 一方で握力は呼吸機能,呼吸困難感,HADS の不安・うつとは相関係数が0.3未満の弱い相 関であった。 握力と全身筋量また各筋量に関連性がみら れ,影響要因にも全身筋量が抽出された。筋量 測定はサルコペニアの診断基準からも栄養状態 を反映する指標である4)。また,握力も同様に 栄養状態を測定する評価として用いられ5), COPD の握力と全身筋量は栄養状態に関連す る検査であることから,中程度以上の相関が認 められたと考えられる。また,握力と膝伸展筋 力ならびに呼吸筋力との関連性も認められた。 奥住らは握力が総合的な筋力と関連しているこ とを報告している10)。また,上述しているよ うに握力は栄養指標となることから,握力は全 身の筋力と関連することが考えられる。先行研 究において宮崎ら7)は本研究と同様に COPD の握力と膝伸展筋力に中程度以上の相関があっ たと報告している。また,呼吸筋力において, 上肢の筋力の他に体幹や頸部の筋群も含まれて おり,握力は上肢筋力以外にも体幹・頸部筋力 と関連することが考えられた。本研究を通じ て,COPD の握力は上肢筋力の指標にとどま らず,全身筋力の指標となることが示唆され, 加えて,栄養状態の指標となることも示唆され た。 一方,6MD や LSA も握力と中程度以上の相 関が認められた。握力は栄養の側面から全身の 筋力と関連し,特に膝伸展筋力は歩行様式の運 動耐容能の重要な因子であることからも,握力 と 6MD に関連が認められたと考えられる。そ のため,先行研究においても,握力の低下は歩 行速度の低下や連続歩行距離の低下と関連して いることや11),6MD と関連している報告もさ れている12)。また,握力は全身筋力や運動耐 容能または歩行能力と関連するため,握力は生 活活動範囲とも関連することが考えられる。 本研究において,全身筋量と同様に認知能力 検査である MoCA-J が影響因子として抽出さ れ,COPD の握力は認知能力と関連があるこ とが認められた。握力と認知能力の関連につい て,手掌での把持動作や手指での巧緻動作にお ける運動課題は,中枢神経系や脳白質の働きと 関連することが認められている13)。また先行 研究においても,握力の低下が認知機能の低下 を促進させる報告14)や,Schure ら15)による COPD を対象とした報告においても,認知機 能低下群は握力が低下していることを認めてい るなど,握力と認知能力との関連の報告は多 く,本研究においても COPD の握力と認知能 力に先行研究と同様,関連性のあることが示唆 された。 他方の考察として,認知症疾患診療ガイドラ イン2017では,認知症発生要因の一つに,低た んぱくなどの低栄養状態が,軽度認知障害や認 知症のリスクを高めることをエビデンスレベル 2C として認定している16)。筋量を合成するた んぱく質は脳の老化防止や脳内神経回路を形成 する役割を果たしていることから16),握力の 低下は全身筋量の低下またはたんぱく質の低下

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と関連し,認知能力を低下させる要因になると 考えられている。本研究において,握力の影響 因子として全身筋量に関連が認められたことか ら,これらの先行研究の理論が,握力の影響因 子として MoCA-J が抽出されたものと考える ことができる。 その他に,握力は全身の筋力や運動耐容能ま たは生活範囲と関連したことも認知能力に影響 を与えていると考えられた。筋力や運動耐容能 は神経ニューロンおよびグリア細胞の機能的変 化を及ぼすことや脳への酸素化能力を高め,脳 中枢または前頭葉に関連する実行機能に栄養効 果をもたらし,脳神経栄養因子の刺激,海馬の 容積の増加,脳血流量の増大,空間記憶の強 化,脳組織損失の減少などの変化により,認知 能 力 に 関 連 し て い る こ と が 実 証 さ れ て い る17~19)。さらに,COPD の呼吸筋力の向上が 血液の酸素化に影響し,低酸素血症を改善させ ることにより脳の酸素化の改善が予測され,認 知能力の向上に関与している可能性も示唆され ている20)。このように認知能力に関連するこ れらの項目と握力の関連が認められていること も,握力が認知能力に関連しやすい要因になっ ていると考えられた。 握力と呼吸困難感検査である mMRC に相関 が認められなかった理由として,COPD の主 な呼吸困難感の原因は,動的肺過膨張であ る5)。先 行 研 究 に お い て,動 的 肺 過 膨 張 は %FEV1.0と関連が認められたと報告してい る21)。本研究では,握力と動的肺過膨張に関 連する %FEV1.0と相関が認められなかったた め,握力と呼吸困難感の関連が低かったと考え られる。また,握力と %FEV1.0の関連におい て先行研究の報告では関連していることも散文 されている22)が,筋力と %FEV1.0が関連す る機序において理解できていない。また,先行 研究による本邦の COPD の握力においても, 我々の結果と同様に握力と %FEV1.0の関連は 認められなかったと報告している7)。加えて, 近年,%FEV1.0については COPD の重症度に 反映することはなく,独立した因子であるとの 見解がグローバルスタンダードであり,本邦に おける COPD の握力が %FEV1.0と関連が低 くなることも容易に推測できる。 握力と HADS の相関については,COPD の うつも呼吸困難感や QOL と関連していると報 告されている23)。そのため,呼吸困難感と関 連が低かった握力と HADS の不安・うつも関 連性が低かったと考えられる。さらに,不安や うつの原因は多因子であり,行動的,社会的, 生物学的要因が含まれると考えられている。 COPD を対象とした大規模コホート研究にお いても,うつの決定因子として,疲労の増加, QOL 検査である SGRQ スコアの高さ,若年 層,女性,心血管疾患の既往歴,現在の喫煙状 況が有意に関連していたと報告されている24) ことからも握力との相関が低かったと考察でき る。 本研究を通じて,COPD の握力は,栄養状 態,筋力,運動耐容能,精神機能,生活活動範 囲,認知機能と関連があることが示唆され,特 に全身筋量と認知機能(MoCA-J)が影響因子 となることが示唆された。改めて,握力は簡便 な検査であるにも関わらず,全身状態を反映す る検査であることが分かった。

Ⅴ.引用文献

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表 4 握力における影響要因(ステップワイズ法による重回帰分析)

参照

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