地域共生社会の実現と社会福祉協議会における総合相談
―近畿圏内の市町村社会福祉協議会に対する調査を通して―
A Study about Consultation on Council of Social Welfare
to Realize Community Involvement Society
-Through Investigation for Council of Social Welfare in the Kinki
Area-酒 井 久美子
*SAKAI Kumiko
1.はじめに
(1)研究の背景 現代社会では、多様な課題を抱えて暮らしている個人や世帯が増加し、その支援の重要性が 問われている。このような課題に対する支援や地域共生社会の実現に向けて、中核的な組織と して社会福祉協議会(以下、社協と略す)が位置づけられている。多様な課題を抱える相談者 に対する社協のかかわりや地域における多様な連携、支援方法を検討し、社協がこれまで以上 に地域に求められる存在として認識されることは、今後の地域共生社会の実現に向けて重要な 課題であると考えられる。社協について、佐藤(2015)は、法規定や各種報告書から社協の特 質として、①公共性、②多様性、③主体的参加を挙げる一方で、その特質が社協活動をわから なくさせている大きな課題であると指摘している。特に②では、住民から社協活動が目に見え にくくさせている要因になっていること、③では、主体性を高める活動をどのように高めてい くのかという援助技術は社協ワーカーの経験に頼っており、次世代へ継承しづらいことを指摘 している。 地域課題の深刻化、社協の特質からくる役割のわかりづらさという現状において、地域共生 社会の実現を理念として、2018 年 4 月より、改正社会福祉法が施行されている。これにより、 これまで以上に福祉サービスを必要とする地域住民及びその世帯が抱える多様で複雑かつ深刻 な課題、すなわち複合的な課題を抱えている世帯に対する支援の重要性が問われている。その 支援に当たっては、ニーズ把握と地域における多様な個人や関係機関が連携・協働して取り組 むことが求められている。特に、社協はその中心的な機関の 1 つとして挙げられている。これ を踏まえて、全社協(2018)は、「あらゆる生活課題への対応」と「地域のつながりの再構築」 を柱とし、①「アウトリーチの徹底」、②「相談・支援体制の強化」、③「地域づくりのための * 京都ノートルダム女子大学・現代人間学部・准教授活動基盤整備」、④「行政とのパートナーシップ」を挙げている。そして②に対して、必ずしも 「誰でも」「いつでも」「何でも」受け止める相談支援体制にはなっていないこと、社協が行って いるさまざまな相談事業が住民に十分に周知されていないこと、地域住民が相談のためにアク セスしやすい環境づくりが必要であること、社協全体での連携や情報共有が図られていないた め、制度の狭間の生活課題や同一世帯に住む同居者の生活課題を見落としている可能性がある ことを指摘している。また③については、「我が事・丸ごと」の施策等においては、社協の役割 に期待が高まっていることを指摘している。そして、各地域の創意工夫による事業・活動の展 開で、市区町村社協が「協働の中核」を担い続けることができるよう、社協の事業・活動の方 向性とそのために必要となる取り組みを提起している。 このように地域共生社会の実現に向けて、社協の役割がこれまで以上に期待されている状況 にあると考えられる。忠岡(2012)は、社協が推進すべき地域福祉の理念を概念整理する一方 で、社協のミッション遂行のために必要な専門性や組織のガバナンスにかかわる課題と、その 解決に向けた具体的実践方法等について現状を認識し、社協の存在意義を明確にすることが課 題であるとしている。 (2)研究の目的 このような状況に対して、社協の支援体制の充実、社協職員の力量に加え、地域における連 携・協働体制の構築、これまで以上に地域にとって身近な頼れる社協であること、またその認 知度を上げることが必要である。一方で、多様な課題に対応する社協職員にとっても、支援の むずかしさやしんどさを抱えており、支援者を支援することも重要である。 そこで本研究では、以上の内容について、総合相談における社協の現状や課題を明確にし、社 協がこれまで以上に多様な相談を受け止め、課題解決に地域とともに取り組み、地域に求めら れる存在として認識されるために、何が必要なのかを検討することを目的とする。 (3)研究の方法 本研究では、どのような相談も受けつける社協の総合相談における現状と課題を明らかにし、 地域住民個々の課題に対する個別相談を社協活動にどのように活かしているのか、今後の社協 における総合相談対応について検討することを目的として、近畿圏内の市町村社協(197 件)を 対象に「社会福祉協議会における総合相談等の現状と今後の対応に関する調査」を実施した。調 査票は、郵送にて配付し、返信用封筒にて回収した。調査期間は、2019 年 10 月 11 日∼ 2019 年 11 月 15 日である。 調査内容は、基本事項、社協における「総合相談」の位置づけ、組織・実施体制、実施方法、 相談の具体的な内容、総合相談を地域福祉として展開しているかに関する項目についてである。 (4)倫理的配慮 本調査によって得られた情報については、統計的に集計、分析、処理し、回答した個人が特 定されないことを明記して実施した。また、質問紙への回答をもって同意したとみなすことを 明記して実施した。
2.調査について
本稿では、調査結果について、①総合相談の計画等への位置づけ、②社協における組織・実 施体制、③人材育成、④他機関との連携、⑤課題共有の場、⑥社会資源の開発の 6 つの視点で 分析した結果をもとに、社協の今後のあり方について検討する。 (1)調査対象者および回収率 本調査は近畿圏内の市町村社協(197 件)を対象に調査票を郵送で配付し、返信用封筒にて 回収した。回収数(率)は、63 件(31.9%)である。 (2)結果と考察 回答のあった市町村社協の内訳は、市が 36 件(57.1%)、町・村が 24 件(38.1%)、中核市が 3 件(4.8%)である(図 1 参照)。そして、総合相談の位置づけについて尋ねた結果は、「社協 活動の重点項目の 1 つとして位置づけている」社協が最も多く、33 件(52.4%)、次に「相談支 援事業として記載している」社協が 20 件(31.7%)、「認識しているが、特に計画等には記載し ていない」社協が 6 件(9.5%)、「特に意識していない」社協が 2 件(3.2%)である。「その他」 の 2 件(3.2%)は、「重点項目ではないが、計画に記載している」「地域福祉活動計画の取り組 み項目に『総合相談窓口』と記載」している(図 2 参照)。 次に、「総合相談の位置づけ」と「社協に寄せられる相談の具体的な内容」23 項目1)(複数回 答可)について尋ねた結果をクロス集計したところ、総合相談を「重点項目に位置づけている」 1)23 項目の内容は、「生活費や収入」「病気や健康問題」「 認知症・介護」「子育て・教育障害(手帳あり)」 「 障害(手帳なし)」「住まいの不安定」「家賃・住宅ローン」「多重債務」「就職困難」「仕事上の不安・ト ラブル」「コミュニケーション・人間関係」「メンタルヘルス」「家族関係」「ひとり親」「ひきこもり・不 登校」「地域との関係」「外国籍」「虐待・DV」「犯罪被害者」「刑余」「災害被災者」「その他」である。 図 1 回答社協内訳 ⏫࣭ ᮧ 38.1% ᕷ 57.1 % ᕷ㸦୰᰾ᕷ㸧 4.8% 図 2 地域福祉計画・年次計画等への位置づけ ♫༠άືࡢ㔜Ⅼ㡯┠ ࡢ㸯ࡘࡋ࡚ࠊ⨨ ࡙ࡅ࡚࠸ࡿ 52.4% ┦ㄯᨭᴗࡋ࡚ グ㍕ࡋ࡚࠸ࡿ 31.7% ㄆ㆑ࡋ࡚࠸ࡿࡀࠊ ≉ィ⏬➼グ㍕ ࡣࡋ࡚࠸࡞࠸ 9.5% ≉ព㆑ࡋ࡚࠸࡞࠸ 3.2% ࡑࡢ 3.2%社協(33 件、52.4%)では、最も多い社協で 22 項目、少ない社協で 4 項目、平均して 13.6 項 目の相談に対応している。一方、「相談支援事業として記載している」社協では、平均して 10.3 項目、「計画等に位置づけていない」社協で平均して 6.8 項目、「特に意識していない」社協で は、平均して 6 項目と少ない(図 3 参照)傾向である。このことから、総合相談を重点項目に 位置づけている社協の方が選択肢に挙げた社協に寄せられる相談が多様であり、相談内容の幅 が広いことが推測される。 次に、「総合相談の位置づけ」と「具体的な連携先」(25 項目)について尋ねた結果をクロス 集計したところ、「重点項目の 1 つに位置づけている」社協は、多いところで 18 項目、少ない ところで 2 項目、平均して 9 項目、「相談支援事業として記載している」社協は平均して 7 項目 に対して、「必要と認識しているが記載していない」社協は 4.3 項目、「特に意識していない」社 協は 5 項目と少ない傾向にある(図 4 参照)。「重点項目に位置づけている」社協のほうが、連 携している機関・団体数が比較的多く、地域の支援ネットワークの構築につながっていると推 測できる。 以上のことから、総合相談を計画等にきっちりと位置づけることによって、幅広い相談対応 や多様な連携による活動等の活性化につながっていくと考えられる。 図 3 総合相談の位置づけと相談の具体的内容(平均) 13.6 10.8 6.8 6 19 0 2 4 6 8 10 12 14 16 18 20 図 4 総合相談の位置づけと連携機関・団体(平均) 9 7 4.3 5 12.5 0 2 4 6 8 10 12 14
また、総合相談に対する組織体制(担当部署)について尋ねた結果(複数回答可)は、「地域 福祉部門で担当している」社協が 39 件(61.9%)と最も多く、「地域福祉部門とは別の部門で 担当している」社協が 10 件(15.9%)、「特に担当を決めていない」社協が 12 件(19.0%)、「総 合相談を担当する部門を設置している」社協が 3 件(4.8%)である。その他の 9 件(14.3%) は、「管理職、兼任係長で後方支援を行っている」「少人数の事務局職員で担当者 1 名を決めて いる」「CSW が担当」「地区担当という形で担当している」「全部署が担当するようめざしてい る」「総務部門で総合福祉相談事業(心配ごと相談)として位置づけている・地域福祉部門で地 区福祉委員会と連携して福祉のまちかど相談を実施している」「担当職員はまだ配置されていな い」「地域福祉部門と総務部門で担当している」「相談支援係」である(図 5 参照)。 次に、総合相談の実施体制(複数回答可)について尋ねた結果をみると、「各種相談窓口を担 当する職員が互いに連携する場(会議等)を設けている」社協が最も多く、31 件(49.2%)、次 いで「相談支援担当と地域支援担当とが連携する場(会議等)を設けている」社協が 18 件 (28.6%)、「担当部門の長が総合相談の推進について統括している」社協が 15 件(23.8%)、「相 談支援部門と地域支援部門とで構成するチーム制をとっている」社協、「総合相談について社協 内で連携・調整をするコーディネーターを配置している」社協は 2 件(3.2%)である(図 6 参 照)。 図 5 総合相談の担当部署 10㸦15.9㸣㸧 3㸦4.8㸣㸧 12㸦19.0㸣㸧 9㸦14.3㸣㸧 0 5 10 15 20 25 30 35 40 45 ᆅᇦ⚟♴㒊㛛࡛ᢸᙜࡋ࡚࠸ࡿ ᆅᇦ⚟♴㒊㛛ࡣูࡢ㒊㛛࡛ᢸᙜࡋ࡚࠸ࡿ ⥲ྜ┦ㄯࢆᢸᙜࡍࡿ㒊㛛ࢆタ⨨ࡋ࡚࠸ࡿ ≉ᢸᙜࢆỴࡵ࡚࠸࡞࠸ ࡑࡢ 39㸦61.9㸣㸧 図 6 総合相談の実施体制 31㸦49.2㸣㸧 18㸦28.6㸣㸧 2㸦3.2㸣㸧 2㸦3.2㸣㸧 15㸦23.8㸣㸧 9㸦14.3㸣㸧 5㸦7.9㸣㸧 0 10 20 30 40 ┦ㄯ❆ཱྀࢆᢸᙜࡍࡿ⫋ဨࡀࠊ࠸㐃ᦠࡍࡿሙࢆタ͐ ┦ㄯᨭᢸᙜᆅᇦᨭᢸᙜࡀ㐃ᦠࡍࡿሙࢆタࡅ͐ ┦ㄯᨭ㒊㛛ᆅᇦᨭ㒊㛛࡛ᵓᡂࡍࡿࢳ࣮࣒ไ͐ ⥲ྜ┦ㄯࡘ࠸࡚♫༠ෆ࡛㐃ᦠ࣭ㄪᩚࢆࡍࡿࢥ࣮͐ ᢸᙜ㒊㛛ࡢ㛗ࡀ⥲ྜ┦ㄯࡢ᥎㐍ࡘ࠸࡚⤫ᣓࡋ࡚࠸ࡿ ࡑࡢ ↓ᅇ⟅
さらに、新たな地域福祉活動や社会資源の開発にどの程度取り組んでいるかについて尋ねた 結果をみてみると、「取り組んでいる(恒常的に取り組んでいる)」社協が 34 件(54.0%)、「取 り組んだことがある」社協が 14 件(22.2%)、「特に取り組んでいない社協」が 14 件(22.2%) である(図 7 参照)。 次に、組織体制(担当部署)と新たな地域福祉活動や社会資源の開発に取り組んでいるかに ついて尋ねた結果をクロス集計したところ、「地域福祉部門で担当している」社協の 25 件 (73.5%)が、総合相談から新たな地域福祉活動や資源開発につなげられており、圧倒的に地域 福祉部門で対応している社協のほうが新たな地域福祉活動や社会資源の開発に取り組むことが できていると推察される(図 8 参照)。以上のことから、総合相談の専門部署を設置するよりも、 地域福祉部門で総合相談を担い、多様な地域の課題に対応するなかで、新たな地域福祉活動の 創出や社会資源の開発につながっていると考えられる。 図 7 新たな活動、資源開発への取り組み状況 54.0% 22.2% 22.2% 0.0% 1.6% 0.0% 10.0% 20.0% 30.0% 40.0% 50.0% 60.0% 図 8 総合相談担当部署と新たな活動・社会資源の開発 73.5 14.7 8.8 11.8 14.7 57.1 14.3 28.6 14.3 42.9 21.4 28.6 7.1 0 10 20 30 40 50 60 70 80 ྲྀࡾ⤌ࢇ࡛࠸ࡿ㸦ᜏᖖⓗྲྀࡾ ⤌ࢇ࡛࠸ࡿ㸧 ྲྀࡾ⤌ࢇࡔࡇࡀ࠶ࡿ ≉ྲྀࡾ⤌ࢇ࡛࠸࡞࠸
さらに総合相談の実施体制と新たな活動創出・資源開発とをクロス集計したところ、「各種相 談窓口を担当する職員が互いに連携する場を設けている」社協で 18 件(52.9%)、「相談支援担 当と地域支援担当とが連携する場(会議等)を設けている」社協で 14 件(41.2%)と新たな地 域福祉活動の創出や社会資源の開発につながる可能性が高い(図 9 参照)と考えられる。以上 のことから、総合相談について社協内で連携・調整をする専門的なコーディネーター等新たな 人材を配置(1 件、2.9%)するよりは、今ある人員や組織の中で、相談支援と地域支援が相互 に連携し合う体制づくりを進めることが効果的であると考えられる。 次に、人材育成について尋ねた結果は、「外部研修への派遣を行っている」社協が 51 件(81%) と圧倒的に多く、「社協内部で研修を実施している」社協は 18 件(28.6%)、「社協内部で定期 的な事例検討会等を実施し、職員相互の研さんを推進している」社協は 11 件(17.5%)、「スー パービジョンの体制を構築している」社協は 10 件(15.9%)である(図 10 参照)。このように 外部研修を活用している社協がほとんどであり、内部のスーパーバイズ機能は低く、組織的な バックアップ体制の構築ができていない社協が多いのが現状である。 図 9 総合相談の実施体制と新たな活動・社会資源の開発 52.9 41.2 2.9 2.9 29.4 17.6 2.9 57.1 14.3 7.1 14.3 7.1 14.3 35.7 14.3 7.1 21.4 14.3 7.1 0 10 20 30 40 50 60 ྲྀࡾ⤌ࢇ࡛࠸ࡿ㸦ᜏᖖⓗྲྀࡾ⤌ࢇ࡛࠸ࡿ㸧 ྲྀࡾ⤌ࢇࡔࡇࡀ࠶ࡿ ≉ྲྀࡾ⤌ࢇ࡛࠸࡞࠸ 図 10 人材育成 51㸦81.0㸣㸧 18㸦28.6㸣㸧 11㸦17.5㸣㸧 10㸦15.9㸣㸧 3㸦4.8㸣㸧 4㸦6.3㸣㸧 5㸦7.9㸣㸧 4㸦6.3㸣㸧 0 20 40 60 ⫋ဨࡢᐇ㊶ຊࡢྥୖࢆᅗࡿࡓࡵࠊእ㒊◊ಟࡢὴ㐵͐ ⫋ဨࡢᐇ㊶ຊࡢྥୖࢆᅗࡿࡓࡵࠊ♫༠ෆ㒊࡛◊ಟࢆ͐ ♫༠ෆ㒊࡛ᐃᮇⓗ࡞᳨ウ➼ࢆᐇࡋࠊ⫋ဨ┦͐ ⫋ဨࡢᐇ㊶ຊࢆᨭ࠼ࡿࢫ࣮ࣃ࣮ࣅࢪࣙࣥࡢయไࢆᵓ͐ ᕷẸ┦ㄯဨ➼ࡢ㣴ᡂㅮᗙ➼ࢆ⾜ࡗ࡚࠸ࡿ ⫋ဨᕷẸࡢྜྠࡢᏛ⩦➼ࢆᐇࡋ࡚࠸ࡿ ࡑࡢ ↓ᅇ⟅
しかし、人材育成と寄せられる具体的な相談の内容(23 項目)とのクロス集計の結果をみて みると、「社協内部で定期的な事例検討等をしている」社協が 18 項目、「スーパービジョン体制 をとっている」社協で 14.7 項目、「社協内部で研修会を実施している」社協で 14.5 項目に対し、 外部研修への派遣をしている社協は 12.8 項目となっている。また、「市民相談員等の養成講座 を実施している」社協(21.3 項目)や「職員・市民の合同研修会等を実施している」社協(16.8%) も比較的相談の幅が広い(図 11 参照)。社協内部の研修やスーパービジョン体制をとっている 社協や社協独自に実施している市民等の研修会に取り組んでいる社協のほうが相談の幅は広い と考えられる。社協内部のスーパービジョン等の人材育成の体制を強化することによって、こ れまで以上に社協として相談への対応が充実し、市民にとっても相談しやすい体制の構築につ ながるのはないかと考えられる。 また、個別ケースの相談支援からの気づきや課題を共有したり、話し合ったりする機会や場 があるかを尋ねた。その結果は、47 件(74.6%)の社協が「職場内で日常的な職員ミーティン グを通して共有」している。また、「地域ケア会議や障害者自立支援協議会、法人連絡会等の場 で話し合っている」社協は 28 件(44.4%)、「地域で、住民や関係者と気づきや課題を共有する 会議等を開催している」社協は 20 件(31.7%)と社協外の地域での話し合いの場や機会を持つ 社協も多い傾向である。しかし、「職員が自主的に集まって話し合いをしている」社協は 17 件 (27.0%)、「部門を超えて職員が参加し、話し合う企画会議等を設けている」社協は 15 件(23.8%) など、職場内で意図的に職員が集まって話し合う場は少ない傾向である(図 12 参照)。 図 11 人材育成の方法と相談の具体的な内容(平均) 12.8 14.5 18 14.7 21.3 16.8 10.6 0 5 10 15 20 25
次に、総合相談を実施するうえで、他機関との連携をどのようにおこなっているのかを尋ね た。その結果は、「個別ケースの相談支援で、他機関と連携している」社協が最も多く、55 件 (87.3%)である。次いで、「地域ケア会議等へ参画している」社協が 46 件(73%)、「行政の庁 内連携会議等に社協として参画している」社協が 20 件(31.7%)、「管内の相談支援機関のネッ トワークを構築している」社協が 15 件(23.8%)である(図 13 参照)。個別支援をもとに、地 域の関係機関等との連携を拡充し、地域ネットワークの構築へとつながっていると考えられる。 また、地域の他機関連携・協働のなかで、相談ネットワークの中核的機能を担っているのは 「行政」が 32 件(50.8%)、「社協」が 25 件(39.7%)である(図 14 参照)。 図 12 課題共有の場 17㸦27.0㸣㸧 15㸦23.8㸣㸧 20㸦31.7㸣㸧 28㸦44.4㸣㸧 12㸦19.0㸣㸧 4㸦6.3㸣㸧 5㸦7.9㸣㸧 1㸦1.6㸣㸧 0 10 20 30 40 50 ⫋ሙෆ࡛ࠊ᪥ᖖⓗ࡞⫋ဨ࣑࣮ࢸࣥࢢࢆ㏻ࡋ࡚ඹ᭷͐ ⫋ሙෆ࡛ࠊ⫋ဨࡀ⮬ⓗ㞟ࡲࡗ࡚ヰࡋྜ࠸ࢆࡋ࡚͐ ⫋ሙෆ࡛ࠊ㒊㛛ࢆ㉸࠼࡚⫋ဨࡀཧຍࡋࠊヰࡋྜ࠺͐ ᆅᇦ࡛ࠊఫẸࡸ㛵ಀ⪅ࠊẼ࡙ࡁࡸㄢ㢟ࢆඹ᭷ࡍࡿ͐ ᆅᇦࢣ㆟ࡸ㞀ᐖ⪅⮬❧ᨭ༠㆟ࠊἲே㐃⤡͐ ከᵝ࡞ᶵ㛵ࡀㄢ㢟ࢆඹ᭷ࡋࠊ㐃ᦠ࣭༠ാࡍࡿࡓࡵࡢ͐ ≉࡞࠸ ࡑࡢ ↓ᅇ⟅ 47㸦74.6㸣㸧 図 13 総合相談を実施する際の他機関との連携(複数回答可) 46㸦73.0㸣㸧 15㸦23.8㸣㸧 20㸦31.7㸣㸧 5㸦7.9㸣㸧 2㸦3.2㸣㸧 0 20 40 60 ಶูࢣ࣮ࢫࡢ┦ㄯᨭ࡛ࠊᶵ㛵㐃ᦠࡋ࡚࠸ࡿ ᆅᇦࢣ㆟➼ཧ⏬ࡋ࡚࠸ࡿ ⟶ෆࡢ┦ㄯᨭᶵ㛵ࡢࢿࢵࢺ࣮࣡ࢡࢆᵓ⠏ࡋ࡚࠸ࡿ ⾜ᨻࡢᗇෆ㐃ᦠ㆟➼♫༠ࡋ࡚ཧ⏬ࡋ࡚࠸ࡿ ࡑࡢ ↓ᅇ⟅ 55㸦87.3㸣㸧
次に、連携している機関・団体等の数を尋ねた結果は、「1 ∼ 5 団体」が 32 件(38.1%)、「6 ∼ 10 団体」が 25 件(33.3%)、「11 団体以上」が 16 件(25.4%)である(図 15 参照)。 しかし、中核的機能を担っている機関と連携している機関・団体の数をクロス集計した結果 では、「行政が中核的機能を担っている」ところでは、「1 ∼ 5 団体」が多く 16 件(66.7%)、「社 協が中核的機能を担っている」ところでは「6 ∼ 10 団体」が 10 件(47.6%)、「11 団体以上」が 9 件(56.2%)である(図 16 参照)。「行政」より「社協」が中核的機関を担っている方が連携 している機関・団体の数が多く、社協が中核的機能を担うことによって、地域における連携力 が高まることが推察される。 図 14 中核的機能を担っている機関等 25㸦39.7㸣㸧 2㸦3.2㸣㸧 14㸦22.2㸣㸧 2㸦3.2㸣㸧 1㸦1.6㸣㸧 0 5 10 15 20 25 30 35 ⾜ᨻ ♫༠ ࡑࡢࡢᨭᶵ㛵 ≉Ỵࡲࡗ࡚࠸࡞࠸ ࡑࡢ ↓ᅇ⟅ 32㸦50.8㸣㸧 図 15 連携している機関・団体の数 38.1% 33.3% 25.4% 3.2% 0.0% 10.0% 20.0% 30.0% 40.0% 50.0% 1㹼5 6㹼10 11௨ୖ ↓ᅇ⟅ 図 16 中核的機能を担っている機関と連携機関・団体 16㸦66.7%㸧 8㸦38.1%㸧 7㸦43.8%㸧 5㸦20.8%㸧 10㸦47.6%㸧 9㸦56.2%㸧 2㸦12.5%㸧 6㸦25%㸧 6㸦28.6%㸧 2㸦12.5%㸧 1㸦4.8%㸧 1㸦6.3%㸧 0 5 10 15 20 25 30 㐃ᦠࡋ࡚࠸ࡿᶵ㛵࣭ᅋయ1㹼5 㐃ᦠࡋ࡚࠸ࡿᶵ㛵࣭ᅋయ6㹼10 㐃ᦠࡋ࡚࠸ࡿᶵ㛵࣭ᅋయ11௨ୖ பท ೂ ֭֭֜౫࣍ ၟ֪ଂֽ֢֥փ֩փ ֭֜ ኅषး
野田(2017)は、生活困窮者自立支援法(以下、支援法と略す)を切り口に、近年経済的困 窮に至る要因が他の課題と複雑に絡み合ってきていることを指摘している。このことが個人や 世帯の抱える課題の多様化にもつながっていると考えられる。これらに対して、野田(2017: 30)は、「公的なサービスというフォーマルサービスだけではなく、民間サービスやインフォー マルなサービスまでも含め、より重層的で幅の広い支援体制の構築が必要である。地域におけ る、住民活動から自治体における各種サービスまでや専門機関からの専門的サービスまでを、重 層的で多様なネットワークで繋ぐ必要がある」と指摘している。また、「公的なサービスだけで はなく民間のサービスや、インフォーマルなサービスも含めて、柔軟な対応が必要であるが、社 会資源を柔軟に連携させる方法が行政サービスの中では十分確立されていないのではないか」 とも指摘している。さらに潜在的なニーズを抱えている人等に対して、「早期に対象者を発見す るシステムとして、地域住民の福祉活動や民生児童委員活動など、より地域と密着した活動で 地域や住民の中で対象者が発見できるシステムを作るなど、地域組織などとの連携は不可欠」 とも指摘している。 つまり、地域共生社会の実現に向けて、その中核的な役割を期待されている社協として、地 域のネットワークを重層的に構築し、多様な課題解決に向けて地域に応じて柔軟に、取り組ん でいくための体制を整備することが求められていると考えられる。 以上のことから、今後、地域共生社会の実現に向けて、社協として総合相談を進めていくた めには、社協職員個々の力量等に任せるだけでなく、社協として総合相談を計画等に明確に位 置づけること、そして組織としてスーパーバイズ機能を高め、今ある資源を工夫し、幅広い連 携のあり方を模索し、1 人ひとりの職員が意識を高めていくことで、新たな地域福祉活動の創 出や社会資源の開発につながっていくと考えられる。先述した佐藤(2015)が指摘している「公 共性」、「多様性」、「主体的参加」を社協の特質としつつ、その特質ゆえの課題として、住民及 び地域の主体性を高めていく活動を展開していくこと、すなわち地域福祉活動を推進していく こと、地域共生社会の実現に向けた取り組みが社協の宿命ではあるが、そのための援助技術は 社協ワーカー個々の経験に頼っており、次世代へ継承しづらいという現状に対して、社協の組 織としてどのように取り組むかが課題であると考えられる。本調査でも、社協内部の研修体制 の脆弱化が示唆され、社協職員の人材育成を強化するような体制づくりを進めていくことが重 要であると考えられる。そのために、全国的に組織されている社協の強みを活かし、市域、圏 域、都道府県域の垣根を超えた多様な社協相互の研修の場を創設し、社協職員相互が類似した 事例等について他の社協の対応例や参考となる事例等を学び、情報交流、研鑽の場を検討して いくことを提案したい。
おわりに
本稿では、地域共生社会を実現するために、その中核的組織として位置づけられている社協における総合相談をどのように位置づけ、展開していくことが大切か、また 1 人ひとりの社協 職員としての力量を向上させるためにどのようなことが必要か等について、①総合相談の計画 等への位置づけ、②社協における組織、実施体制、③人材育成、④他機関との連携、⑤課題共 有の場、⑥社会資源の開発の視点で、社協の今後のあり方について検討してきた。 総合相談を明確に計画等に位置づけ、1 人ひとりの社協職員がそれを意識して取り組むこと、 社協内部で個別支援の情報や地域の課題等を相互に情報共有し、1 人ひとりの職員の力量やそ れぞれが持っているネットワークを社協としての資源と捉え、地域における多様なネットワー クの構築につなげること、1 人のスーパー職員が存在すればよいのではなく、その職員が持つ 力を分かち合い、個々にどのように活かすことができるのかを考え取り組んでいくことが大切 であると考えられる。 地域はこれまで以上に多様化が進み、ますます複雑な課題を抱えながら暮らす人々が増えて いくと考えられる。また新型コロナウイルスの感染拡大により、これまで以上に地域における 生活課題は地域にあふれ、深刻さを増しているように思われる。そうしたなかで、いかに社協 としての力量を発揮することができるかがこれまで以上に問われてくるだろう。阪神淡路大震 災以降、頻発する自然災害等への対応にも最前線で取り組み、社協としての力量を積み上げて きているが、それらをさまざまな場面で柔軟に即時的に発揮すること、そしてそれを継承して いくことが今後の社協のあり方を考えるにあたっては大切なことであろう。 最後に、本研究の課題として、調査の対象を近畿圏内の市町村社協としていること、回収率 もあまり高くないため、調査対象範囲を広げ、わが国の社協の現状や課題について詳細な調査 を実施する必要がある。また、社協の認知度等を把握するために、地域を対象にした調査を実 施し、住民がどの程度社協の存在を知り、どのような事業を実施しているかについてどの程度 理解しているのか、生活上の困りごとを抱えたときに、まずはどこに相談しようと考えている のか等に関する調査を実施することも必要であろう。 本稿は、2019 年度京都ノートルダム女子大学研究助成による研究の一部である。 参考文献 佐藤哲郎(2015)「地域福祉の推進における社会福祉協議会の役割と特質」『松本大学研究紀要』第 13 号、 41-49 社会福祉法人 全国社会福祉協議会 地域福祉推進委員会(2018)「『社協・生活支援活動強化の方針』∼ 地域共生社会の実現に向けた事業・活動の展開」全国社会福祉協議会 地域福祉部 忠岡一也(2012)「社会福祉協議会の展開と地域福祉」『桃山学院大学社会学論集』第 46 巻 1 号、55-78 野田秀孝(2017)「生活困窮者自立支援制度に関する一考察―地域福祉視点からの支援システム」『とやま 発達福祉学年報』8、27-31、富山大学人間発達科学部発達教育学科発達福祉コース