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千葉県周辺における降水量・降水日数の平年値の分布

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Academic year: 2021

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千葉 県周辺 におけ る降水量 ・降水 日数 の平 年値 の分 布

1.は じ め に 気 候 誌 とは,特 定 の地 域 に お け る気 候 特 性 を総 合 的 に 記 述 した もの で あ る.気 候 誌 の記 載 に は,そ の 地 域 の気 候 につ い て 分 布 を 含 め た詳 細 な記 述 が 必 要 で あ る.平 均 値 や 植 生 を 重 視 す る気 候 誌 や 天 候 の 特 性 を重 視 す る気 候 誌 もあ り,問 題 意 識 や 目的 に よ って 記 載 の仕 方 は 多 様 で あ る. 人 文 地 理 学 の環 境 と して の気 候 の 記 述 は, 主 に平 均 値 や 出現 頻 度 の 多 い現 象 が 記 載 の 中 心 と な っ て い る.し か し,千 葉 県 にお け る 積 雪 害 の よ う に,出 現 頻 度 は少 な く と も,社 会 的 ・経 済 的 影 響 の大 き な気 象 現 象 は気 候 誌 と して 重 要 な 事 項 で あ る(黒 坂,1994). 出 現 頻 度 の 多 少 や,異 常 気 象 ・気 象 災 害 の 理 解 に お い て,気 候 の 平 均 的 姿 を 理 解 して お く こ と は 不 可 欠 で あ る. 本 論 文 で は,1976年 よ り整 備 が 開 始 さ れ た 地 域 気 象観 測 シ ステ ム(通 称 ア メ ダ ス:AM eDAS;AutomatedMeteorological DataAcquisitionSystem)の 準 平 年 値 に 基 づ い て,年 降 水 量 分 布 図 な らび に各 月 の 降 水 量 分 布 図,年 降 水 日数 分 布 図 並 び に各 月 の 降 水 日数 分 布 図 を 作 成 した. 用 い た 資 料 は,気 象 庁(1993)の 「地 域 気 象 観 測(ア メ ダ ス)準 平 年 値 表 一 月別 値(降 水 量 ・気 温 ・風速)」 で あ る.こ れ に は,ア メ ダ ス が 全 国 に整 備 さ れ た1979年 か ら1990年 まで の12年 間 の 平 均 値(準 平 年 値)が 掲 載 さ れ て い る. 2.平 年 値 の持 つ 意 味 2.一1.気 象 統 計 の 概 要 気 象 観 測 の 方 法 に つ い て は,日 本 気 象 協 会 か ら 「気 象 観 測 法 」 が刊 行 され て い る.こ れ は主 に気 象 官 署 が行 う地 上 気 象 観 測 を対 象 と して い る.気 象 庁 以 外 の 人 た ち が 気 象 観 測 を 行 う際 の指 針 と もな るよ うに配 慮 され て い る. そ の 地 点 の 気 候 を表 す代 表 値 に 平 年 値 が あ る.平 年 値 は,世 界 気 象機 関 の 規 定 に よ り, 西 暦 年 数 の1位 の数 が1の 年 か ら数 え て連 続 す る30年 間 の 累 年 平 均 値 を い う.気 温 が平 年 に比 べ て 何 度 高 い とか とい う平 年 は こ の平 年 値 を 基 準 と して い る. 30年 間 の 累 年 平 均 値 を用 い る の は,余 り長 い期 間 を と る と長 期 の 変 動 の 影 響 が 大 き く現 れ て しま うた め で あ る.ま た 短 す ぎて もそ の 時 の 平 均 状 態 を現 わ せ な い た め で あ る.た と え ば,1995年 現 在用 い られ てい る平 年 値 とは, 1961年 か ら1990年 の30年 間 の平 均 値 で あ る. 気 象 官 署 の 平 年 値 を含 め た統 計 値 は 「日本 気候 表 一 そ の1」,「 日本 気 候 表 一 そ の2」 と して,刊 行 され て い る.「 日本 気 候 表 一 そ の1」 に は,月 別 平 年 値 と統 計 開 始 以 来1990 年 ま で の 極 値 が掲 載 され て い る.統 計 期 間 が 30年 に満 た な い場 合 も8年 以 上 あ れ ば平 年 値 に準 じ る値,つ ま り準 平 年 値 と して 記 載 され て い る. しか し,気 象 官 署 の観 測 網 だ け で は,集 中 豪 雨 な ど の局 地 的 な現 象 を十 分 に と ら え る こ と が で き な い.そ の た め,1976年 よ り順 次, 地 域 気 象 観 測 シ ス テ ム(ア メ ダ ス)が 整 備 さ

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『教 育 学部 紀 要 』文教 大 学 教 育 学部'第29号1995年 黒 坂 裕 之 れ た.降 水 量 の 観 測 点 に つ いて は,全 国 で 約 1300地 点 あ り,約17㎞ 四方 に1ヶ 所 の 割 合 で あ る.電 話 回線 に よ っ て,自 動 的 ・即 時 的 に デ ー タ を収 集 で き る よ うに な って い る無 人 の 観 測 所 で あ る. 降 水 量 は地 形 ・地 物 の影 響 を著 し く受 け る 気 候 要 素 で あ る.そ の た め,局 地 性 が 大 き い と い え る.観 測 法 の 改 訂,統 計 法 の 改 正 や 観 測 所 の 移 転 な どの 原 因 で,時 代 に よ り資料 の 質 が 異 な っ て い る.観 測 所 の 移 転 な どの場 合 に は,同 一 の地 点 名 で あ っ て も,別 の地 点 と 判 定 され,長 期 間 の 平 均 な どが 求 め られ な い こ とが あ る. 2.2.平 均 値 と合 計 値 平 均 値 は た えず 変 動 す る観 測 値 を1つ の 数 値 で表 わ す の に最 も広 く用 い られ て い る.平 均 値 は この 値 が必 ず しも最 も よ く現 れ ると い うわ け で は な い が,一 般 に標 準 的 な気 象 状 態 を示 す もの と して用 い られ る. 気 象 状 態 は 年 に よ って 異 な り,あ る年 だ け の 資 料 で 気 候 を判 断 で き な い.平 均 値 を使 う 場 合 に は年 々 の 変 動 を 念 頭 に お く こ と が必 要 で あ る.と くに降 水 量 は,日 照 時 間 な ど と と も に,変 動 が 大 き い気 象 要 素 の1つ で あ る. 合 計 値 と は あ る期 間 に つ い て の観 測 値 の 総 和 で,一 定 時 間 内 の 積 算 値 で 測 られ る降 水 量 や 日照 時 間 な どの 気 象 要 素 に つ い て 求 め る. あ る期 間 と は,日,半 旬,月,年,寒 候 期 で あ る.寒 候 期 とは 前 年 か ら当 年 に い た る冬 期 の期 間 を い う. 日合 計 値 は定 め られ た 観 測 時 刻 の観 測 値 の 合 計 で あ る.半 旬 合計 値,旬 合 計 値,月 合 計 値 は そ れ ぞ れ の期 間 内 の 日合 計 値 の 合計 で あ る.年 合 計 値 は年 間 の 月 合 計 値 の 合 計 で表 わ す こ とに な って い る. 3.千 葉 県周 辺 の 降水 気候 3.1.年 降 水 量 の 分 布 一14一

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『鞘 学部紀要』文教大学教育学部 第29号1995年 黒 坂裕 之

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『教育学部紀要』文教大学教育学部第29号 1995年 黒 坂 裕 之 第 1図に,千葉県を中心とした地域におけ る降水量の観測地点の分布を示す.図中の一 点鎖線は千葉県の範囲を示す.千葉県内には 17のアメダス観測点がある.気象官署の 4地 点を含む.その4地点とは,銚子地方気象台, 千葉測候所,館山測候所,勝浦測候所である. 銚子地方気象台は移動があり,平年値は求め られない. 第

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図に年降水量の分布を示す.単位はmm であり,等値線は200mmごとに記入しである. 関東平野中央部に 1200mmを下回る少雨域があ り,県北部の下総台地で、1300"'1500mmで、ある. 県南部の房総丘陵で、2000mmを越える.千葉県 内の最多雨地点は黒原で、2340mmで、ある. この ような多雨は関東地方では丹沢山地に現れる だけである.南房総は温暖多雨の気候が現れ ている.

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2

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)

月降雨量の分布 第

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図は各月の降水量分布を示す.単位は mmで、あり,等値線は 1月・ 2月と 12月は 10mm ごとに,他の月は20mmごとに記入してある. ここでは,最も降水量の少ない月として1 月,梅雨季として6月および台風季として 9 月の降水量分布の特徴を中心に述べる. 1月は降水量が少ない.県北部は月降水量 40mm以下で、あるが,南房総や九十九里浜平野 は50mmを越え,房総丘陵で、は70"'80mmで、ある. 関東平野内陸部で、は20mm以下と乾燥している. 70mmを越える房総半島の南東部は,伊豆半島 同様,南岸を東進する低気圧の影響を受ける ためと考えられる. 2月・ 12月も関東平野中 央部で少雨であり,房総丘陵で多雨となって いる. 梅雨季の

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月には,房総丘陵では月降水量 200mmを上回り,勝浦などの海岸部でも 200mm を上回る.これに対し,県北部は 150mm以下 であり,関東平野部で比較的降水量の少ない 地域に属している.高い山がなく,太平洋岸 を東 東北東進する低気圧による降雨も房総 丘陵でさえぎられるためと考えられる.

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月 も分布の傾向はほぼ同じで,南部の房総丘陵 に多いが,その量は 6月より少なく, 140mm 程度である.県北部は,関東平野部の少雨の 中心域となり, 100mm以下となる.この分布 の傾向は

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月もほぼ同じであるが,房総丘陵 で、の降水量は220mmを上回る 9月には台風による降雨が多い季節である が,房総丘陵で、200mm以上で、ある.黒原では, 2600mmを上回る.県北部は200mm以下で,横 芝で、は 170mmとなっている. 10月・ 11月も房総丘陵で多雨,北部で少雨 とし、う分布を示す. 各月とも,降水量の多少はあるが,南部の 房総丘陵で多く,北部の下総台地で少ないと いう類似の分布傾向をもっている.

3. 3.

年降水日数の分布 第4図は年降水日数の分布を示す.等値線 第 4図年降水日数分布 20km ANNUAL L圃 圃 ー 圃 圃 ・ 圃4 -18

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-千葉県周辺における降水量・降水日数の平年値の分布 第5ー 1図 月降水日数分布 8 2Okm 2Okm JANUARY

/

θ

13 2Okm 2Okm MARCH APRIL

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『教育学部紀要』文教大学教育学部第29号 1995年 黒 坂 裕 之 第 5-2図 月降水日数分布

G)

12 2Okm 2Okm MAY JUNE

J 3 r

ー¥、

-

-

-

.

J

2Okm 2Okm JULY AUGUST - 20ー

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千葉県周辺における降水量・降水日数の平年値の分布 第5ー 3図 月降水日数分布

10 SEPTEMBER

20km OCTOBER 2Okm

:

2Okm 2Okm NOVEMBER DECEMBER

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『教育学部紀要』文教大学教育学部第29号 1995年 黒 坂 裕 之 間隔は

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日である.ここで,降水日数とは臼 降水量

1m

m

以上の降水のあった日の数である. 房総丘陵で

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'

1

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日,南房総から半島の中 央部は

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日,県北部では

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日以下となる. 茨城県の海岸部,鹿島灘でも

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日を上回っ ている.銚子の統計値はないが,

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1

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日を上 回ると考えられる.

3

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4.

月降水日数の分布 第

5

図は各月の降水日数の分布を示す.等 値線の間隔は1日である. 冬季の

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月,"'-'

2

月は降水日数が

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"

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"

'

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日で ある.南西部で多く県北西部で少ないという 分布を示す.

3

月,

1

1

月も冬季と類似の分布 を示す. 梅雨季の 6月には,県内はほぼ同数の降水 日数である. 7月には房総丘陵では

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1

日以上 と多く,九十九里平野から佐倉にかけて

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0

日 以下と少ない. 台風季の9月には,房総、丘陵で

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日と多く なり,東京湾岸から県北部にかけて少なくなっ ている. 各月とも房総丘陵で多く,県北部ないし北 西部で少なくなっている. しか

L

, 日数の差 はかならずしも大きなものではない月もある.

4

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まとめ

アメダスの観測値をもとに,千葉県を中心 とした地域の,降水量と降水日数の準平年値 の分布図を作成した. 年降水量は県北部の下総台地で

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0

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'

"

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m

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で、あり,県南部の房総丘陵で、

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m

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を越え る.県内の最多雨地点は黒原の

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3

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0

m

m

で、あり, この降水量は関東地方では丹沢山地に匹敵す るものである.月降水量は,いずれの月も南 部の房総丘陵で多く,北部の下総台地で少な いという分布をしている. 日降水量1

m

m

以上の日数である降水日数は 各月とも房総丘陵で多く,県北部ないし北西 部で少なくなっている.しかし日数の差は かならずしも大きなものではない月もある. 今回用いられた,

1

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年間という期間は気象 観測が行われてからの約

1

0

0

年間の中でどの ような位置を占める期間なのかを明らかにし ておくことは必要なことである.つまり,降 水量の長期変動の考察が必要である. また,異常気象に伴う災害などを考えるな らば,平年値だけではなく,最大値や最小値 といった極値についてもその分布を明らかに しておく必要がある. これらについては,次の課題としたい. [付記] 本研究は財団法人千葉県史料研究財団の 「千葉県史自然誌」編さん事業の一環として 行われている研究の一部である.また,本研 究に使用した研究費の一部は,文教大学教育 学部共同研究費(代表,菊地一郎)ならびに 黒坂の個人研究費を使用した.

資料・文献

気象庁(1993) 地域気象観測(アメダス) 準平年値表一月別値(降水量・気温・風速) .

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黒坂裕之

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千葉県における積雪災害 の特徴.文教大学教育学部紀要,第28集,

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