日本赤十字九州国際看護大学学術情報リポジトリ
タイトル
手術後の患者が捉えた看護における察しの様相とその意味 : 患者の
心情と患者が捉えた看護師の行為に焦点をあてて
著 者
大石みゆき
掲載誌
日本赤十字九州国際看護大学紀要,12 : pp 33-45.発行年
2013.11.29
版
publisher
U R L
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日本赤十字九州国際看護大学. 2014.日本赤十字九州国際看護大学紀要 第 12号 (2013年11月)
手術後の患者が捉 えた看護における察 しの様相 とその意味
一患者の心情 と患者が捉
えた看護師の行為に焦点をあてて-大石 み ゆき1)原著
本研究は、手術後の患者が捉えた看護における察しの様相とその意味を明らかにすることを目的として、術後の患者8名に半構造 化面接を実施し質的記述的に分析した。その結果、得られたカテゴリより、3つの様相すなわち "患者が不快な心情を抱き続けてい る様相""患者の心情が看護師に伝わり察しの行為が生じた様相""患者の不快な心情が快の心情-と変化した様相"が抽出された。 察しの3つの様相において、患者は 【不快さを言わないでおくことを良しとする】【どうしたらいいのかわからない】との心情から【言 わないまま抱き続けている不快さ】を抱いていた。それが患者の 【不快さを抱き続けるありのままの姿】となり 【患者の不快さにか なう看護師の察しの行為】が生じていた。そのことにより患者は 【看護師の察しの行為で生じたその瞬間の心地よさ】と 【残 り続け る看護師の察しの行為-の価値】を感 じていた。看護における察しの意味として、まず患者一看護師の関係性を一気に向上させる機 会であるとの意味が示唆された。また察しでは患者が援助要請をせずとも患者の心情にかなった援助が生じていた。このことより、 看護における察しは、患者にとって援助要請の際に伴 う自尊心の低下をきたすことのない援助機会であるとの意味が捉えられた。 キーワー ド:察し、術後の患者、術後急性期、患者の心情 、自尊心 Ⅰ 緒言 看護実践 には対象理解 が欠かせ ない。 ウイ-デ ンバ ック 1)は患者 の援助-のニー ド、つま り援助欲求の見 極 めの重要性 を言及 した。そ して、そのためには患者 に質問 し、確認 を求 めるコ ミュニケーシ ョンがキーで あると述べた 2)。その対象理解 のあ り方 は、患者 の欲 求 に相違 ない看護 をす る うえで必要不可欠である。 しか し、患者 の援助欲求 に関す る研究3)、4)によれ ば、 患者 は援助要請 をす る場合 と、援助要請 を しない場合 がある。つま り患者 は援助欲求の全てを言語化 してい るわけではない。 さらに、患者 は看護師に対 し 「言わ な くて も察 して欲 しい」 と感 じてい る5)。重症筋無力 症であった長潰 6)は闘病生活 において 「私の頭 の中か ら常に離れ なかったのは、いつ仕事 に復帰できるか と い う焦 りと不安で した。 しか し、 このよ うな苦 しい患 者 の思いはついにナースには察 して もらえませ んで し た」 と述べてい る。 「察 し」 とは辞書7)によれば、 「隠 された事情 を外 に現れた様子な どか ら感 じ、推測 して了解す ること」 1)日本赤十字九州国際看護大学大学院看護学研究科 研究生 である。 1970年代 には 日本人の文化的特性 として察 しが随所で記述 されてい る8)、9)。その後、コミュニケ ー シ ョン学上にて、察 しは文化 コミュニケーシ ョンの 一側面 として唱 え られてきた 10)、ll)、12)。それは 1990 年以降 も続 き、近年 、察 しはシステムやモデル として、 よ り科学的に述べ られてきた。佐 々木13)は、 日本人 のあいまいなメ ッセー ジか らコ ミュニケー シ ョンが 成立す ることをシステム として捉 え 「察 し用法」と述 べた。Ishii14)は、察 しを遠慮 の対概念 として 「遠慮 一察 しコ ミュニケー シ ョンモデル」を開発 し、遠慮 に よって縮小化 された送 り手のメ ッセージが、言語的な 伝達 を経 ることな く、受 け手の察 しによって解釈 と理 解 のな され る過程 を示 した。つま り、察 しは相手が積 極 的 に発信 していない メ ッセー ジを的確 に把握す る ことを示 している。 さらにTakai&Ota15)、16)は、 日 本的対人 コンピテ ンス尺度 (対人 コンピテ ンス尺度 -人間関係 の開始や維持 で必要 とされ る能力)の第一要 素 を 〔察 し能力 (PerceptiveAbility)〕としてい る。 この察 し能力 とは 「1:相手か ら明確 な返事が もらえ な くて も大体 どの よ うな返事 が意 図 され てい るのか がわかる」、 「2:何か響 曲 されてい ることにす ぐ気 がつ く」、 「3:相手がいいに くそ うな ことがあるこ-表 1 対象 となった患者 の概要 対象者 性別 年齢 疾患名 (手術名) 入院 回数 手術 回数 面接 日の術後 日数 面接 時間 A 男 64 B 男 67 C 男 70 D 女 68 心筋梗塞 肝臓癌 肝臓癌 肝臓癌 E 女 72 僧帽弁 ・三尖弁 閉鎖不全症 F 男 49 不安定狭心症 G 男 64 不安定狭心症 2 1 1 1 3 3 2 1 2 2 1 1 3 1 H 女 78 狭心症 ・大動脈弁 閉鎖不全症 3 2 14 15 日1 12 12 9 13 14 37 34 30 39 59 28 32 18 とをす ぐに察知できる」 との項 目で示 されている。 これ らのことか ら、察 しは対人関係 に影響 を与える はた らきゃ能力であ り、相手が抱いている心情 を言語 に頼 らず理解す るよ うな現象 と捉 えることができる。 それは言語化できない心情 を抱 く側か らすれば、言わ な くても相手がわかって くれた、 と感 じる経験 といえ よ う。そ して 「言わな くても察 して欲 しい」や 「つい にナースには察 してもらえませんで した」 と表明す る 患者 には、看護師の察 しによって理解 されたい心情や 看護師の察 し-の期待があることを予測 させ る。 察 しをテーマ とした先行研究は、松崎17)の 「察 しに 基づ くケアのプロセス」のみである。 この研究では、 看護師が捉 えた察 しに基づ くケアのプロセスを質的記 述的に分析 し、看護師が 「今、ここにいる患者 を認識 す る段階」か ら、患者 一看護師の 「関係の構築の段階」 に至る10段階を明 らかに した。その うえで、察 しは即 時性 を備 えたケアを導 くと述べている。 しか し、看護 師側か らのアプローチのみによる察 しの探求では 「言 わな くても察 して欲 しい」 と表す患者の心理はつかみ きれない。また看護 における察 しは患者 一看護師の二 者間の現象であることや、看護師に察 してもらえた と 判断できるのはその患者で しかない ことを考慮 した場 合、患者側か らも察 しを捉 える必要があると考える。 そこで今回は、看護 における察 しを患者側か ら浮き 彫 りに し、看護 における察 しとい う現象 に関連 した患 者の心情 と患者が捉 えた看護師の行為に焦点をあて、 看護 における察 しの様相 とその意味を明 らかにす るこ とを 目的 とした。 これ らのことは看護の対象理解 をす る うえでの基礎資料にな りえる。
Ⅱ
研究方法 1.研究デザイン 本研究では、患者が捉 えた看護 における察 しとい う 現象での患者の心情お よび患者が捉 えた看護師の行為 について事実に即 して詳細に記述す ることのできる質 的記述的デザイ ンを用いた。 2.研究協力者の選定 今回、察 しとい う現象 を捉 えるにあた り、察 しの対 概念 とされ る遠慮、すなわち患者の遠慮が生 じる状況 を先行研究 18)、19)か ら考慮 した。それ らの研究によれ ば、遠慮は患者の性格特性や入院経歴等の内的要因よ りも入院患者 を取 り囲む看護師の多忙 さや態度、看護 師が減 る夜間や交代す る時間帯等の外的因子 との関連 性がみ られた。特に、看護師が多忙 とされ る外科病棟 や集 中治療室において患者の遠慮は有意にみ られてい た。質的記述的デザインにて研究を実施す るには研究 対象の語 りが必要である。 よって集 中治療室 よりも外 科病棟に入院中の患者、なかでも、手術前のあわただ しい状況にある患者 より、それまで受けた看護 を振 り 返 り語 ることのできる術後回復期の患者が研究対象 と して妥当であると判断 した。 そこで研究承諾の得 られた1施設の2つの外科病棟 の病棟師長 より、面接が可能 と思われ る術後の患者 を 紹介 してもらい研究 目的を説明 し、同意が得 られた患 者8名 を研究協力者 (以下、患者 とす る) とした。 3.データ収集 データ収集は、患者-の半構造化面接 にて行った。 面接前に入院経験のある知人にプ レインタビューを実 施 し、インタビューの具体的な方法について検討 した。 また、プ レインタビューの内容か らイ ンタビューガイ ドの検討 を行い妥当性の確保 に努 めた。主な面接内容 は、患者が捉 えた看護 における察 しでの患者の心情お よび患者が捉 えた看護師の行為についてである。面接 は1人 1回 18-59分 (平均面接時間35分)であった。 ー34-日本赤十字九州 国際看護 大学紀要 第12号 (2013年 11月) その面接 内容は対象者の承諾 を得て録音 し逐語録 とし た。患者が面接 日の翌 日または翌々 日に退院を控 えて いたため、語 りに対す る研究者の解釈 を面接 中に患者 に伝 え、事実 と解釈内容の相違がないよ うに しデータ の信頼性の確保 に努 めた。また患者の承諾の下に、カ ルテか ら病名、入院 ・手術回数等を情報収集用紙に転 記 した。収集期間は平成15年8月26日∼10月28日 であった。 4.用語の定義 察 し :患者が、言語化 していない心情に対 し看護師が 何 らかの行為を示す ことで理解 された と感 じたこと 患者の心情 :察 して欲 しかった、察 して くれた、察 し て くれな くていい、察 してもらえたな ど、察 しに関連 した患者の思いの全て 5.分析方法 まず逐語録 を繰 り返 し読み、語 られた察 しに対す る 印象 を予備的要約 として作成 した。そ して語 られた察 しをひ とつひ とつ再構成 し、それ をデータとした。そ して、看護 における察 しでの患者の心情 と患者が捉 え た看護師の行為についての語 りを切片化 し、意味内容 を損ねることのないよ うに文脈 に留意 しなが らコー ド とした。各 コー ドの類似性、相違性 を検討 しなが らサ ブカテ ゴリ化 ・カテ ゴリ化 した。 コー ド・サブカテ ゴ リ ・カテ ゴリの抽出については、予備的要約で得た印 象 とかけ離れ ることのないよ う常にデータと見比べな が ら行 った。 さらに、抽出 されたカテ ゴリ間の関係性 を検討 し、察 しの様相 を段階的に捉 えた。また、患者 の心情 と患者が捉 えた看護師の行為 を焦点 として考察 を加 え、看護 における察 しの意味を見出 した。カルテ か ら得た情報は、患者の理解お よび分析の際の参考に した。また、分析の全過程において、質的研究の経験 者 にスーパーバイズを受 け分析の妥当性 と信悪性の保 持に努めた。 6.倫理的配慮 本研究にあた り、病院の看護部長お よび2つの外科 病棟の病棟師長に研究の説明を行い、同意 を得た。患 者-の研究依頼では、研究 目的、研究方法、協力者の 個人情報の保護、研究の参加 ・中止は 自由であ り中止 しても不利益は生 じない ことを文書お よび 口頭で説明 し書面にて同意 を得た。面接は病棟内の個室で行い、 面接 中に研究者 と患者以外の入室がないよ う配慮 した。 また患者が術後であったため面接開始時間や途 中の疹 痛を疹痛スケール (疹痛 レベル 0か ら疹痛 レベル 5ま での6段階のフェイススケール)にて管理 した。具体 的には、疹痛 レベル3以上の患者 には面接 を実施 しな い方針 とし、疹痛 レベル 0か ら2であっても患者の申 し出があれば面接 は中止できると説明 した。面接内容 の録音記録や逐語録、カルテか らの情報 を記載 した記 録物や同意書の控 えな ど、全ての記載物は研究者の責 任の下、施錠できる場所に保管 し厳重に管理 した。 本研究は大分大学医学部大学院看護学専攻研究倫理 審査委員会での承認 を得て実施 した。 Ⅲ 結果 1.対象 となった患者の概要 対象 となった患者は8名で、平均年齢は66.5歳 (± 8.4歳)であった。患者の疾患は心疾患が 5名、肝臓 癌が 3名であった。患者の面接 日の術後 日数は9-15 日であ り、いずれ も翌 日か翌々 日に退院を控 えていた。 全患者の うち、手術が初めての患者は 5名、複数回の 患者は3名であった。患者の概要を表1に示す。 2.患者が捉えた看護における察 しの様相 察 しにおける患者の心情 と患者が捉 えた看護師の行 為についてのコー ド数は135コー ドであった。そのコ ー ドを比較分析 した結果、27サブカテ ゴリ、7カテゴ リが抽出された。分析の一例 を表 2に、抽出されたカ テ ゴリ ・サブカテ ゴリとコー ドの一部を表 3に示す。 次いで、抽出されたカテゴリ間の関係性 を検討 し、察 表 2 分析 の一例 察 しの再構成 語 りの切片化 抽 出 した コー ド (術後、傷の痛み (術後、傷の痛み (術後、傷の 痛みも) も)もう、ふうふ も)もう、ふうふ ふ うふ う (目を閉 う言って我慢して ういって我慢して じて口をぱくぱく) い た○ふ 一 つい た○ ふ 一 つ 言 って (痛みを) ふ-つて (目を閉ふ-つて (目を閉 我 慢していた○ (痛みを)どうした じて 口をぱくぱ じて口をぱくば く)言ってどうし く)言ってどうし ていいのか わかん ていいのかわかん らいいのかわから ないんです○もう、 夜遅いから、看護 師さんは大変忙し いから我慢できた ないんです○もう、夜遅いから、なかった○夜遅いから、看護 らと思うしね、と看護師さんは大変 師はとても忙 しい にかく看護師さん忙しいから我慢で から 我慢しようと は忙しい、2交代 きた らと思 うし 思ったoとにかく も3交代も大変o ね、とにかく看護 看護師さんは忙し 師さ
しの様相 として3つが抽出された。その概要について コー ドは< >、生データを 「」であらわ し、様相 まず抽出されたカテゴリを述べ、次に様相について述 を " "で示す。 コー ドや生データ上、意味のわか り べる。(以下、カテゴリを 【 】、サブカテゴリを 『 』、 にくい部分は ( )で補った。) 表 3 抽出したカテゴリ・サブカテゴリ、コー ドの一部 カテ ゴ リ サブカテ ゴ リ コー ドの一 部 言わないまま抱いる不快 さき続 けて 自分では どうにもできないほどの術後の<(術後の痛み も)ふ うふ う (目を閉 じて 口をぱ くぱ く)言って我 慢 してい 身体のき つ さ た> 手術が成功 したのか不安 <手術のあ とうま くいったかな、私の病気 は どうだつた か と不安がある> 予想 していなかった術後の状態-の <術後の 私は元気がなかった> 危ぶみ <自分だけが悪い、 自分が悪いか ら創がつか ないん じゃないか と心配 > 他者の手を借 りて排湛す ること-の <術後4日間は出す もの減 らそ うと、 ご飯 を半分 しか食べなかった > たま らない嫌 さ <(尿 を)取ってもらうの が子 どもみたいで本 当に嫌だった> 自分で したい ことに 自信が もてない <(術後初めての トイ レ歩行時)少し怖い感 じ、歩 け ば歩 けるな とい う感 じ があった> ち ょっとしたことを頼む こと-の蹄曙 <(術後のシャワ一時)腕が痛 くて背 中に手 がいかず流 して くれた らな- と 思った> 不快 さを 言わないで 不快 さを言 うことが多忙な看護師の手を <夜だか ら、看護師 さん少ないか ら申し訳ない と思って腰が痛 いのをこらえ 煩わせ るとの遠慮や気兼ね不快であつて も ていた><手術が終わった らどん どん動いたほ うがいい と言われていた し、 私 もそ う 示 されたことをや り抜 く した方がいい と思った > 抱いている不快 さを知 られ ることで看護 <(手術について気 になることを)あんま り言 うと おか しい しみっともない 師におか しな人 と思われ ること-の憂い他の人の決定、 自然の流れ に任せ る ><いつかは治 る、治 るときは 治 るんだつて気持 ちがあるか らおまかせ してま お くことを良 しとす る 不快 す > さを言つても事態は変わ らない と <(眠れな くても)今夜は しょうがないつて思った > 思 うことか らの止むを得な さ <言 つて も トイ レにいけるわけ じゃないか らしょ うがない と思 う> 患者であつても不快 さを言わず 自分で <甘えはあかちゃん (だか ら)> できることは したい <(手術後の)患者であってもできることは しな くてはな らない と思 う> 年下の芸 能人-の好意が知 られ る ことの恥ずか しさ <こんな年だか ら(看護師が)おか しい と思 うかもしれん> どうした ら どんな物があるの か どうした らいいのかわか らない <手術後、何 をどうしていいのかわか らない、音楽を聞いていいのか も わか いいのか らない > わか らない不快 さを 言わない <初 めてだか ら、そんなもの (氷) を口にいれていいかわか らない > ことを良 しとし、不快 さを言わ ずに抱 き続 けるあ りのままの姿 <水が も飲 めるとは思 ってないか ら無意識で舌をなめていた> 抱き続 ける <全 く痛 くないわけではないか ら自分で も気がつかない うちに暗号 とかが あ りのままの姿患者の不快 さにかな う あったか もしれない> 看護師の 察 しの行為 思っていることを看護師が聞いた言わな くて も、聞いて欲 しい と <あれ ?つて (腰痛につ いて)聞いて くれた> 言わな くても、言ってほ しい .聞き たい <(腰痛時)言わな くても "じゃあ、薬 をもつてこよ うか"つて看護師 さんが と思っているこ とを看護師が言った 察 して言って くれた> 言わな くても、 して欲 しい ことを <(元気がなかった とき )iの歌をかけて くれた看護師 さんがいた> 看護師が した <(言わな くても尿器-の排浬が終わるまで)病室の外で待 ってて くれた看 護師がいた> 看護師の 言ってない不快 さを <看護師の しぐさ、言葉、全てが 自分のこ とをよく わかって くれていると よくわかって くれている言い知れない嬉 しさ 思った><(言 う前に背 中を流 しま しょうか と)言って くれた ことがまた嬉 しかつた > 察 しの行為で 生 じたその瞬間 とにか くほっとした <<((歌をかけて くれた とき)嬉 しかつた、 と-つて看護師の言葉 によ り) 自分だけが着 きが悪い、 自も嬉 しかつた >分が悪いか らここがつ の心地よさ 少な くなる不快 さ かないん じゃないか とい う心配がふっとび安心 した> <痛みを感 じさせないよ うに して くれているのがわかると気持 ちの良 さが違う感 じがす る> 看護師は思いや りがある <(身体の)拭 き方に思いや りがあった、なんてや さしい と思った > 残 り続 ける看護師の察 しの行為-の価値 遠慮 を感 じさせな くなるよ うな信頼感 < わかって くれていると思 う人がいれば、ちょっ と頼む といえる> 術後 を過 ごす人間に とつての <(言わな くても)わかって くれ る人がいるのは心の支 え、がんばろ う 、よ 弛まない励み しや ろ うと思える> 患者ひ とりひ とりを大切 にす る看護師 <(痛みを
日本赤十字九州国際看護大学紀要 第12号 (2013年11月) 患者が不快な心情を 抱き続けている様相 患者の心情が看護師に伝わり 察しの行為が生じた様相 言わないまま抱き続けている不快さ 不快さを言わな いでおくことを 良しとする どうしたら いいのか わからない 不快さを抱き 続けるありの ままの姿 患者の不快さ にかなう看護 師の察し の 患者の不快な心情が 快の心情へと変化した様相 看護師の察しの行為 で生じたその瞬間の 心地よさ 残り続ける看護師 の察しの行為 への価値 時間の流れ 凡例 l lは患者の心情
⊂
) は患者が捉え た看護師の行為 吟 は影響を与えている方向 一一 は患者の心情の変化を 表す は様相の範囲 図 1 患者が捉 えた看護における察 しの様相 患者が捉えた看護 における察 しでは、患者は 【言わ ないまま抱き続けて いる不快 さ】を抱いていた。その 不快 さに対 し 【不快 さを言わないことを良 しとする】 または 【どうしたら いいのかわからない】との心情か ら、患者はその不快 さを言語化 していなかった。そ し て患者は 【不快 さを 抱き続けるあ りのままの姿】を呈 していた。その患者に対 し、【患者の不快 さになか う察 しの行為】が生 じて いた。 さらに、看護師の察 しの行 為に対 し、患者は 【 看護師の察 しの行為で生 じたその 瞬間の心地よさ】と 【残 り続ける看護師の察 しの 行為 -の価値】を感 じていた。次に、得 られたカ テゴリの関係性を比較検討 した結 果 、次の3つの様相が抽出された。 【言わないまま抱き続け ている不快 さ】【不快 さをいわ ないでお くことを良しと する】【どうしたらいいのかわ か らない
】これ らの カテゴリは、患者に不快な心情が 生 じたにもかかわら ず、それを言語化せず抱き続けて いたことを示 してい る。そのため、この部分を "患者 が不快な心情 を抱き続けている様相" とした。 【不快 さを抱き続ける ありのままの姿】【患者の不快 さにかな う看護師の察 しの行為】この 2つのカテゴリ は、言語化 していな い患者の不快 さに対 し、看護師の 行為が生 じたことを 示 している。そのため、この部分 を "患者の心情が看護師に伝わ り察 し の行為が生 じた 様相" とした。【看護師の察 しの行 為で生 じたその瞬間の心地よさ】 【残 り続ける看護師 の察 しの行為-の価値】これ らの カテゴリは、看護者 の察 しの行為を受けた患者の不快 さが変化 し、快の心 情を得たことを示 している。その ため、この部分を "患者の不快な心情が快の心 情- と 変化 した様相" とした。各様相 とカテゴリの関係性を図 1に示 す。 3.各様相の分析結果次に様相毎にそれを構成するカテゴリ ・サブカテゴ リについて詳 しく述べる。 1)患者が 不快な心情を抱き続けている様相 この様相は、【言わ ないまま抱き続けている不快 さ】 【不快 さを言わないで お くことを良しとする】【どうし たらいいのかわからない
】とのカ(1)【言わないまま抱き続けている不快 さ】 このカテゴリは 『自分ではどうにもできないほどの 術後の身体のきつ さ』『手術が成功 したのか心配』『予 想 していなかった術後の状態-の危ぶみ』『他者の手を 借 りて排壮すること-のたまらない嫌 さ』『自分で した いことに自信がもてない』『ちょっとしたことを頼むこ と-の蹄蹄』との6つのサブカテゴリから構成 された。 患者8人の うち5人が<ふ うふ う (目を閉じて口を ばくばく)言って (痛みを)我慢 していた><どう言 った らいいのかと思 うほど寒かった><コップ一杯で もぐーっと (飲むことを)夢にみるくらい飲みたかっ た>等の 『自分ではどうにもできないほどの術後の身 体のきつ さ』を抱き続けていた。 「(集中治療室にいるとき)もう喉がからからになる しきつかったん じゃ。なんか、コップ一杯でもぐーっ と夢にみるごたる飲みたかったけど」 (H氏)o また肝臓癌のため部分肝切除術を受けたC氏は<手 術のあとうまくいったかな、私の病気はどうだったか と不安がある>と述べ、術後に 『手術が成功 したのか 心配』 との思いにかられていたことを表出した。 弁置換術を受け、術後思 うように回復 しなかった E 氏は<術後の私は元気がなかった>と述べ、部分肝切 除術後、術創の一部に治癒遅延を生 じたB氏は<自分 だけが着きが悪い、自分が惑いか ら創がつかないん じ ゃないかと心配 >と述べ、『予想 していなかった術後の 状態-の危ぶみ』を抱き続けていた。 また患者は、 トイ レ歩行が不可能な時期に<術後4 日間は出すもの減 らそ うと、ご飯を半分 しか食べなか った>< (尿を)取ってもらうのが子 どもみたいで本 当に嫌だった>等、『他者の手を借 りて排壮すること-のたまらない嫌 さ』を抱いていた。 そ して、 トイ レ歩行が可能 となったA氏は< (術後 初めての トイ レ歩行時)少 し怖い感 じ、歩けば歩ける なと言 う感 じがあった>と述べ、『自分で したいことに 自信がもてない』心情を抱いていた。 さらに患者はシャワーや歩行できるほど回復 した時 期にあっても< (術後のシャワ一時)腕が痛 くて背中 に手がいかず流 してくれた らな- と思った>< (術後 初めての トイ レ歩行時)自分では大丈夫かなって思い、 できれば支えて欲 しかった>等、看護師に対する欲求 が生 じても 『ちょっとしたことを頼むこと-の蹄蹄』 があ り、不快 さを言わないままでいた。 (2)【不快 さを言わないことを良しとする】 このカテゴリは、患者が不快 さを抱き続ける理由と もいえる 『不快 さを言 うことが多忙な看護師の手を煩 わせるとの遠慮や気兼ね』『不快であっても示 されたこ とをや り抜 く』『抱いている不快 さを知 られることで看 護師におかしな人 と思われること-の憂い』『他の人の 決定、自然の流れにまかせる』『不快 さを言っても事態 は変わらないと思 うことからの止むを得なさ』『患者で あっても不快 さを言わず 自分でできることは したい』 『年下の芸能人-の好意 を知 られ ることの恥ずか し さ』の 7つのサブカテゴリから構成 された。 8人の患者の うち7人が<夜だか ら、看護師さん少 ないか ら申し訳ない と思って腰が痛いのをこらえてい た><看護師の手を煩わせた らいけない と思 う>< (看護師に気をつかわせるので)なるべ く言葉 とか顔 に (気持ちを)出さないようにしていた>等、『不快 さ を言 うことが多忙な看護師の手を煩わせるとの遠慮や 気兼ね』を抱いていた。 そ して患者は<手術が終わったらどんどん動いたほ うがいい と言われていた し、私もそ うした方がいいと 思った><痛み とか管 とかいっぱい入ってて、その 日 のスケジュールをこなすことで精一杯 ><お水は飲め ない と聞いていたから>と述べ、『不快であっても示 さ れたことをや り抜 く』ことを優先 していた。 また< (手術について気になることを)あんま り言 うとおかしい しみっともない>と述べ、『抱いている不 快 さを知 られることで看護師におか しな人 と思われる こと-の憂い』を抱き続けている患者 もいた。 さらに患者は<いつかは治る、治るときは治るんだ って気持ちがあるからおまかせ してます>と述べ、『他 の人の決定、 自然の流れに任せ る』 との意志か ら不快 な心情を抱き続けていた。 また<今夜は (眠れなくても) しょうがないって思 った><言っても トイ レに行けるわけじゃないからし ょうがないと思 う>と述べ、『不快 さを言っても事態は 変わ らないと思 うことからの止むを得なさ』によって 不快な心情を抱き続けていた患者 もいた。 そ して 『患者であっても不快 さを言わず 自分ででき ることはしたい』 と、<甘えはあかちゃん (だから)
><
(手術後の)患者であってもできることは しなく てはならない と思 う>ことか ら、不快な心情を抱き続 けていた。 「甘えと言えばあかちゃん、結局看護師さんがする ー 3 8-日本赤十字九州 国際看護 大学紀要 第12号 (2013年11月) のが当た り前ではない、どの程度できるか、自分がで きないことをさせて早 くよくなってもらうとい う気持 ちがある」 (A氏)。 そ して70代のE氏は30代の男性歌手 (i)の歌が生 きがいであ り、最前列でのコンサー トを楽 しむ人であ った。 しか し<こんな年だから (看護師が)おか しい と思 うかもしれん>と述べ、『年下の芸能人-の好意を 知 られることの恥ずか しさ』からその心情を看護師に 伝えていなかった。 「彼 (i)の歌が大好きで大好きで、でもこんな年だか ら (看護師が)おか しいと思 うかもしれん」 (E氏)。 (3)【どうしたらいいのかわからない】 このカテゴリは 『どんな物があるのか、どうした ら いいのかわからない』 とい うサブカテゴリか ら抽出さ れた。その内容は<手術後、何をどうしていいかわか らない、音楽を聞いていいのかもわか らない>< (辛 術は)初めてだからそんなもの (氷)を口に入れてい いかわからない>等であった。 2)"患者の心情が看護師に伝わ り察 しの行為が生 じた 様相" この様相は、【不快 さを抱き続けるあ りのままの姿】 と 【患者の不快 さにかな う看護師の察 しの行為】の 2 つのカテゴリから捉えられた。 (1)【不快 さを抱き続けるあ りのままの姿】 このカテゴリは、患者が抱いている自己の不快な心 情について 『言わないことを良 しとし、不快 さを言わ ずに抱き続けるあ りのままの姿』から抽出された。そ れは 【言わないまま抱き続けている不快 さ】からにじ み出る、 しか し、患者が意図 していない しぐさや身振 りのことであった。それは<水が飲めるとは思ってな いか ら無意識に舌で唇をなめていた><全 く痛 くない わけではないか ら自分でも気がつかない暗号 とかがあ ったかもしれない>と患者が察 しを想起する中で語 ら れた しぐさ等であった。なかでも 『手術が成功 したの か心配』を抱いていたC氏は、看護師より<顔がこわ ばってたよ、あま りにも話 さない し何を言ってもはい と言 うだけで、とても不安のようで したけどどうで し たか、と言われた>と語った。 (2)【患者の不快 さにかな う看護師の察 しの行為】 このカテゴリは、【言わないまま抱き続けている不快 さ】に対 して患者が受けた看護師の行為の集約である。 これ らの行為は、患者か ら看護における察 しとして捉 えられていた。内容は 『言わなくても聞いて欲 しいと 思っていることを看護師が聞いた』『言わなくても言っ てほしい ・聞きたい と思っていることを看護師が言っ た』『言わなくてもして欲 しいことを看護師が した』と の3つのサブカテゴリから構成 された。 A氏は 『自分ではどうにもできないほどの術後の身 体のきつ さ』について、< (もともと腰痛があること を言っていなかったとき)"あれっ?"って (腰痛につ いて)聞いてくれた>と述べ、『言わなくても聞いて欲 しいと思っていることを看護師が聞いた』ことを表出 した。 また< (腰痛時)言わなくても "じゃあ、薬をもっ てこようか"って看護師さんが察 して言ってくれた> と語った。C氏の場合は 『手術が成功 したのか心配』 を抱き続けている際、看護師が<Cさん、熱があるけ れ どこれは正常ですよ、お しっこも良く出てますよ、 順調ですよ、ガーゼが汚れているけどおか しな汚れ方 じゃないですよ" と言った>、B氏は<創の治 りが悪 い と思っていた時、言わなくても "ここはみんな着き が悪いですよ、Bさんだけが着きが悪いん じゃないで すよ"と言った>等 として、『言わなくても言ってほし い ・聞きたい と思っていることを看護師が言った』 こ とが示 された。 また< (元気がなかった時)iの歌をかけてくれた看 護師さんがいた>< (言わなくても尿器-の排涯が終 わるまで)病室の外で待っててくれた看護師がいた>
<
(トイ レで支えて欲 しい と思った時)後ろか ら脇を 支えてくれた看護師がいた>< (痛みを感 じている時) 傷の周 りや背中をゆ-つくり拭いて、けれ ど足はごし ごしと拭いてくれた看護師がいた>等、『言わなくても して欲 しいことを看護師が した』ことが抽出された。 3)"患者の不快な心情が快の心情- と変化 した様相" この様相は 【看護師の察 しの行為で生 じたその瞬間 の心地よさ】と 【残 り続ける看護師の察 しの行為-の 価値】のカテゴリから捉えられた。 (1)【看護師の察 しの行為で生 じたその瞬間の心地よ さ】 このカテゴリは、看護師の察 しの行為を受けた際に、 患者が瞬時に感 じた心情から抽出された。患者は看護 ー 3 9-師の察 しの行為を受け、『言ってない不快 さをよくわか ってくれている』『言い知れない嬉 しさ』『とにかくほ っとした』『少なくなる不快 さ』『看護師は思いや りが ある』を感 じていた。 8人の患者の うち、7人が<看護師のしぐさ、言葉、 全てが自分のことをよくわかってくれていると思った
><i
が好きなことをわかって くれている><眠れた かと聞かれなかったので、眠れなかったことを看護師 がよくわかってくれていると思った>< (排尿中、病 室外に出てくれたことは)私が恥ずか しいとい うこと をよくわかってくれていると思った>等 として、看護 師が 『言ってない不快 さをよくわかってくれている』 と感 じていた。 「iの歌をかけてくれた とき、あー私が元気が出な かったのはこのせいだ、私はiの歌が聞きたかったん だって思いました。 自分でもよくわか らなかったこと をね、看護婦 さんがよくぞ気付いて下 さった、i君を 好きなことをわかって下さる人もいるって」 (E氏)。 そ して患者は看護師の察 しの行為に率直な喜びや感 激を感 じていた。それは< (言 う前に "背中を流 しま しょうが 'と)言ってくれたことがまた嬉 しかった> < (歌をかけてくれた時)嬉 しかった、 と-つても嬉 しかった>< (脇を支えられた時)母親が子 どもの面 倒をみてくれるような (感 じで)感激で した>< (ひ とつだけの氷が)喉を うるお しておい しかったよ一、 あのときのことは忘れない>等の 『言い知れない嬉 し さ』であった。 「言わなくても (看護師が) してくれたとき、感激 ですわ、それはもう言葉にならない (漢)」 (A氏)。 また患者の うち、肝臓癌で部分肝切除術を受けた 3 人全員が、『とにかくほっとした』ことを表出した。そ れは< (看護師の言葉により)自分だけが着きが悪い、 自分が惑いからここが着かないん じゃないかとい う心 配がふっとび安心 した>< (術後、順調 と言われ)あ ー大丈夫なんだな- と思った>等であった。 そ して、患者は< (排尿中、病室外で待ってくれる) 看護師がいると (尿器での排浬は)嫌なんだけど気分 が楽><痛みを感 じさせないようにしてくれているの がわかると気持ちの良さが違 う気がする>と、『少なく なる不快 さ』を感 じていた。 またD氏は< (身体の)拭き方に思いや りがあった、 なんて優 しいと思った>と述べ、『看護師は思いや りが ある』 と受けとめていた。 (2)【残 り続ける看護師の察 しの行為-の価値】 このカテゴリは、看護師の察 しの行為が患者にとっ て どんな価値づけを与えたかを説明するカテゴリであ る。それは 『遠慮を感 じさせなくなるような信頼感』 『術後を過 ごす人間にとっての弛みない励み』『患者ひ とりひ とりを大切にする看護師』『看護師ならではの能 力』 とい うサブカテゴリから構成 された。 看護師が 『言ってない不快 さをよくわかってくれて いる』 と感 じた患者は<わかってくれていると思える 人がいれば、ちょっと頼む と言える>< (わかってく れていると思 うと)逆に何でも言える感 じになる>< 眠れなかったことをわかってくれていると思ったので 部屋を変えて欲 しいとすんな り言えた>と、『遠慮を感 じさせなくなるような信頼感』を得ていた。 「看護師 さん忙 しい ・・けれ ど ・・・わかって下さ っていると思 うと ・・・安心感みたいなのがあって、 かえって何でも言えるような感 じにな りますね」(D氏)。 また患者にとって看護師の察 しの行為は< (言わな くても)わかってくれる人がいるのは心の支え、頑張 ろ う、よしやろうと思える>< (iの歌をきいて)コン サー トでピックをもらったことを思い出 し、まだ歩 く のがきつい時期だったけど早 く元気になろ うって思っ た>等、『術後を過 ごす人間にとっての弛みない励み』 となっていた。 そ して患者は察 しの行為をした看護師を 『患者一人 一人を大切にする看護師』と捉えていた。それは< (痛 みを感 じさせないようにしてくれることは) とても大 事にされている、看護師がひ とりひ とりを大事にして いる>< (Bさんだけが創のつきが悪いん じゃないと 言われ)患者一人一人に対 して適切なア ドバイスをし てもらっている気持ち>として表出された。 さらに患者は、<看護師は注意 してよく見ている、 看護師でなければ気付かないこと>や<私は歌が聞き たかったんだと思った、それをよく気付いた>と、『看 護師ならではの能力』を認める者 もいた。 「それは看護師さん じゃない と気付かんとこじやと 思 う、普通の人ならわか らんとこじやと思 うよ、看護ー40-日本赤十字九州 国際看護 大学紀要 第12号 (2013年11月) 師さんはやっぱ違 うと思 うわ」 (H氏)。 Ⅳ 考察 本研究では、術後の患者が捉えた看護における察 し とい う現象での患者の心情 と患者が捉えた看護師の行 為に焦点をあて、135コー ド、27サブカテゴリ、7カ テゴリを抽出した。そ して各カテゴリの関係性を比較 検討 した結果、"患者が不快な心情を抱き続けている様 相""患者の心情が看護師に伝わ り察 しの行為が生 じた 様相""患者の不快な心情が快の心情- と変化 した様 相"を見出した。ここではまず各様相の特徴を捉える。 次いで、その特徴をふまえ、患者からみた看護におけ る察 しの意味を考察する。 1."患者が不快な心情を抱き続けている様相"の特徴 この様相での特徴は、患者が不快 さを意図的に発信 しようとしていない点である。 ここでは患者の不快 さ が生 じた時期 と、不快 さを言わない背景について考察 する。 まず 【言わないまま抱き続けている不快 さ】では患 者が 『自分ではどうにもできないほどの術後の身体の きつ さ』や、癌である自分の 『手術が成功 したのか心 配』した り、『予想 していなかった術後の状態-の危ぶ み』等を抱いていた。そ して、これ らの不快な心情の 多 くは、患者が術後まだ単独行動の不可能な時期に抱 いていたこととして語 られた。そのため、これ らの患 者の不快な心情は術後急性期の心情であると理解でき た。その不快 さとともに患者には 【不快 さを言わない ことを良 しとする】もしくは 【どうしたらいいのかわ からな
い
】の心情が共存 していた。 【不快 さを言わないことを良 しとする】では患者の 看護師に対する遠慮が示 された。遠慮は集団思考や和 を重視する特性によって生 じる20)。それは他者 との関 係性を優先するために発言や行動を控える態度である。 今回、患者は術後であっても、<夜だから、看護師さ ん少ないか ら申し訳ない と思って>と不快 さを言 うこ とを遠慮 していた。それは、患者が看護師 との関係性 を優先するための態度 と受け取ることができる。 この ことから患者が遠慮を示す ことは看護師 との関係性を 重視 した うえでの態度 と捉え、その点に理解を示 した うえでの看護師の関わ りが求められるといえよう。 また 『患者であっても不快 さを言わず 自分でできる ことはしたい』は<甘えはあかちゃん (だか ら)>< (手術後の)患者であってもできることはしなくては ならない と思 う>との心情が含まれていた。 これ らの 心情は、患者の生きざまとしての信念に裏付けられた 自己呈示 と捉えることができる。 自己呈示 とは、他者 が自分に対 して形成するイメージを自身の望む形にし たいと試みることであ り、自尊心を維持する機能があ る21)。 自尊心 とは、自分 自身-の価値 と能力に対する 評価感情で自分 自身を価値あるものとする感覚である 22)。今回、< (尿を)取ってもらうのが子 どもみたい で本当に嫌だった>と術後の排壮状況における自己を 卑下する患者がいたように、術後の自尊心は術前のそ れ と同じとはいえない。だか らこそ患者は、術後に不 快 さを抱きながらも、自分でできることはしたい、と 自己呈示することによって、無意識的にイメージ通 り の自己を保ち、自尊心を維持 しようとしたのではない かと考える。そのことが、【言わないまま抱き続けてい る不快 さ】を生 じていたと捉えられた。 【どうしたらいいのかわからない
】は術後に体験す る様々なわからないことをわからないままにする患者 の傾向を示 している。その傾向は、手術が初めてにて 喉が渇いた等の不快 さを言っていいのか、音楽をきい ていいのかがわか らない との体験 として語 られた。 こ れ らの患者の語 りからは術後急性期をや りす ごす余裕 のなさが うかがえた。 この余裕のなさが、術後の、患 者 自身のわからないことについての解決を阻み、【どう した らいいのかわからない】心情を生 じると捉えられ た。また、看護ではその時々に生 じる患者の疑問点を 把握 し援助することにより回復過程を促進できる。 し たがって、わからないことをわか らないままにすると の術後の患者の傾向を看護師が理解することは、周手 術期看護の向上につながると考える。 2."患者の心情が看護師に伝わ り察 しの行為が生 じた 様相''の特徴 この様相の特徴は、患者が言語的 ・意図的に伝えて いない不快 さに対 して的確な援助が提供 された点であ る。 患者は<わかってほしくてふ うふ ういったわけじゃ なかった><なるべ く顔 とか言葉に出さないようにし ていた>等、抱いている不快 さを意図的に発信 しては いなかった。 しか し、その不快 さを発信 しない様子、 すなわち 【不快 さを抱き続けているあ りのままの姿】 から看護師は患者の心情を受け取ったことが予測でお きる。そ して 【患者の不快 さにかな う看護師の察 しの 行為】として、患者の心情-の理解をその場で示 してー41-いた。これは、松崎23)が言及 した、察 しは即時性を備 えたケアを導 くとの結論 と一致性がある。そ して患者 が捉えた看護師の行為は即時的であるだけではなく、 その時 ・その場の患者の不快 さにぴった りとかな う行 為であることが うかがえた。 3."患者の不快な心情が快の心情へと変化 した様相" の特徴 この様相の特徴は、患者の不快 さが快の心情- と変 化 し、察 しの意味づけが示 された点である。 看護師の行為により患者には 【看護師の察 しの行為 で生 じたその瞬間の心地よさ】や 【残 り続ける看護師 の察 しの行為-の価値】が生 じていた。 【看護師の察 しの行為で生 じたその瞬間の心地 よ さ】には、『言い知れない嬉 しさ』や 『とにかくほっと した』等が含まれていた。 これ らの心情について患者 は喜びや感銘を押 さえきれない口調で語 り、強 く印象 づけられている様子が うかがえた。そのような喜びや 感銘が指 し示す ことは、患者が術後に抱いていた不快 な心情は、限界 ともいえる耐えがたい心情であった と い うことである。 これは、患者は言わなくても察 して ほしいと思っていると述べた鈴木24)の、放っておけば 自分の命に関わることも患者はこらえようとするとの 言及 と同 じである。そんな耐えがたい心情であったか らこそ、不快 さが解決 もしくは軽減 された際に患者は 感銘を得たのだと考える。 それ とは別に、抱いていた不快 さに対 し、察 してく れた ら、との心情を抱いていた患者 もいた。 このこと は、看護師に察 してほしいと願 う持舜間が患者にあるこ とを示 している。つま りこれは、患者には患者の望む 理解様式があることの提示である。今回の患者が感銘 を示 したのは、患者の不快な心情が患者の望む理解様 式つま り、察 しによって理解 されたか らではないかと 考える。 これによって、患者の望む理解様式に看護師 が沿 うことの有用性が示唆 された。 また、【残 り続ける看護師の察 しの行為-の価値】に は 『患者ひ とりひ とりを大切にする看護師』『術後を過 ごす人間にとっても弛みない励み』が含まれていた。 これ らは、「手や足はごしごしと拭 くけれ ど、傷の周 り はゆ-つくり拭いて下さって、なんて思いや りのある 看護師さんって思いま した。看護師さんが一人一人を 大事にしている」や< (言わなくても)わかってくれ る人がいるのは心の支え、がんばろ う、よしやろうと 思える>等から捉えられた。 これ らの語 りか ら、患者 は術後疹痛に配慮 した清拭に代表 されるような 日常的 な看護師の行為か ら察 しを捉え、看護師の行為やその 存在について価値づけを行っていることが把握できた。 4.看護における察 しの意味 次に、察 しの各様相の特徴をふまえ看護における察 しの意味を考察する。 察 しでは、術後急性期であっても看護師 との関係を 重視する患者の様子が見受けられた。聞入主議論 25) によると、 日本人は人 と人の縁 と間柄にこだわ り、関 係性すなわち親密度によって対人行動のもち方が異な る。その親密度には、〔無縁
〕
〔仲間〕
〔馴染みの他人〕 〔気のおけない関係〕の4分類がある26)。 〔馴染みの 他人〕は遠慮や 自制心を利かせ る関係性であるのに対 し 〔気のおけない関係〕は遠慮のない率直な関係性で ある27)。一般的に 〔馴染みの他人〕から 〔気のおけな い関係〕に推移するには、時間やきっかけを要する。 今回、看護師に対 し患者の遠慮が生 じていた状況は、 双方の関係性が、馴染みの他人、の領域であることを 示 している。 しか し患者は、看護師の察 しの行為か ら<
(わかってくれていると思 うと)逆に何でもいえる 感 じになる>とい うような 『遠慮を感 じさせなくなる ような信頼感』を得ていた。 このことは、看護師の察 しの行為が患者一看護師間の関係性を一気に深め、遠 慮が不要で最 も親密度の高い<気のおけない関係 >に 推移 したことを反映 している。つま り、看護における 察 しには、患者一看護師関係を一気に向上 させる機会 であるとの意味が存在すると考える。また、< (わか ってくれていると思 うと)逆に何でもいえる感 じにな る>は、鈴木 28)が唱えた 〔基盤 となる安心感〕を反映 している。〔基盤 となる安心感〕とは、伝わっていると い う安心感に乗って患者が心を開いてコミュニケーシ ョンを始めることである。 よって察 しは安心感につな が り、患者一看護師間のコミュニケーションを良い方 向-導 くことも示唆 された。 そ して、今回抽出された 【言わないことを良 しとす る】は、術後患者 自身の自尊心を維持するための自己 呈示であることが見出された。 自尊心は援助要請をす る際に低下するといわれている29)。 自尊心が低下 しや すい術後 とい う状況下で、患者が不快 さを述べ援助要 請をすることは、自尊心をさらに低下することにつな がる。 よって、患者が術後に不快 さを言わず抱き続け ることは、すでに低下 している自尊心のさらなる低下 を回避するための一種の自己防衛 とも捉えられる。 こー42-日本赤十字九州 国際看護 大学紀要 第12号 (2013年11月) れに対 し、察 しでは患者が援助要請をせず とも、その 時の患者の心情にかなった看護師の行為が生 じる。そ の観点か らすると、察 しは患者にとって援助要請に伴 う自尊心の低下をきたす ことのない援助機会であると の意味が潜在 していると考える。そ してそれは、術後 のように自尊心が低下する状況におかれる患者にとっ て適 した看護のひ とつ といえる。 さらに、〔よい看護〕を看護師側の視点から明らかに した武村 ら 30)は、その要素に 【患者を知る】【患者が 価値を認め満足する】を示 し、【患者を知る】は患者が 安心や喜びを感 じることであるとした。本研究におけ る 【看護師の察 しの行為で生 じたその瞬間の心地よさ】 には、『言い知れない嬉 しさ』『言ってない不快 さをよ くわかってくれている』『とにかくほっとした』のサブ カテゴリが含まれていた。 これ らのサブカテゴリは患 者の安心や喜びを示 していることから 【患者を知る】 と類似性が認められる。そ して、武村 らの 【患者が価 値を認め満足する】と、本研究の 【残 り続ける看護師 の察 しの行為-の価値】はその性質が一致 していると いえる。よって、患者が捉えた看護における察 しは 〔よ い看護〕 と近い概念であることが示 された。 最後に、今回の患者が捉えた看護における察 しは何 気ない 日常的な看護に潜んでいると受け取ることがで きた。 よって、患者は看護における察 しを日常的に捉 え、喜びや安心、信頼感 を感 じているといえる。 この ことは看護師が看護実践 してい くうえでのひ とつの動 機づけにつながると考える。
Ⅴ
結論 術後の患者8名を対象に看護における察 しの様相 と 意味を探求 した結果、以下の3点が明らかになった。 1. 術後の患者が捉 えた看護における察 しより、 7 カテゴリと27サブカテゴリが抽出され、 "患者 が不快な心情を抱き続けている様相" "患者の 心情が看護師に伝 わ り察 しの行為が生 じた様 相" "患者の不快な心情が快の心情- と変化 し た様相"が見出された。 2. 術後の患者は不快な心情を抱きつつも、看護師 との関係性の保持や 自尊感情の低下を回避す る 一種の防衛機制 としてその不快 さを言わずにい た。察 しはそのような患者に適 した看護のひ と つのあ り方 として捉えられた。 3. 看護における察 しは、患者 一看護師の関係性 を 一気に向上 させ る機会であるとの意味、援助要 請の際に生 じる自尊心の低下をきたす ことのな い援助機会であるとの意味が見出された。 Ⅵ 研究の限界と今後の課題 本研究では、看護における察 しを患者から捉えた結 果、察 しの3つの様相 と察 しの意味として、患者一看 護師の関係性を一気に向上 させ る機会であるとの意味、 患者の自尊心の低下をきたす ことのない援助機会であ るとの意味を見出すことができた。 しか し研究対象が 1施設の術後の患者であることや年齢 ・疾患に偏 りが あることから、幅広い状況下の患者を対象 とした研究 が望まれる。また、察 しは患者一看護師の二者間での 現象である。よって今回の患者を対象 とした半構造化 面接による質的記述的な研究手法では、その一側面を 明らかにしたに過ぎない。今後は参与観察により察 し における患者 と看護師の相互作用を確認することや、 関わった看護師-の面接による研究を重ね、看護にお ける察 しの概念化を試みることが課題である。 Ⅶ 謝辞 術後であるにも拘わらず協力を頂いた患者の皆様に 深 く感謝いた します。また、本稿 をまとめあげる過程 で適切なご指導 と励ましを絶え間なく与えて下さいま した 日本赤十字九州国際看護大学の本田多美枝教陵に 心より感謝いた します。 本研究は、平成15年度大分医科大学院医学系研究科 修士課程に提出した修士論文を再分析 し考察を刷新 し たものである。 受付 2013.8.7 採用 2013. 文献 1)ErnestineWiedenback:CLINICALNURSINGAHelping Art.1964、外 口玉子、池田明子 :臨床看護の本質 患 者援助の技術 改訳 第二版.pp15-20、現代社、1984. 2)ErnestineWiedenback、Carolaine E.Falls: Commnication key to effective nursing.1978、
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ー44-Bull of The JRCKICN No. 12 November, 2013
Original Article
Patients' perceptions and interpretations of nursing care:
Focusing on postoperative patients' feelings and perceptions of nursing care and practice
Miyuki OHISHP)
The purpose of this study is to clarify postoperative patients' perceptions with regard to nurses' care. Eight patients responded to semi-structured interviews in 2004. Interviews were audio-taped and transcribed verbatim was analyzed using a qualitative descriptive approach. Participants in the study consisted of five men and three women. Their ages ranged from 49 to 78 years.
The results showed that patients concealed their displeasure, believed that it was better not to express their displeasure, and that they were not sure how they should proceed. However, nurses' awareness and perceptiveness of the patients' needs allowed for patients to feel relaxed, open up and feel valued as a whole.
Nurses' perceptiveness plays an important role in patient care and treatment. This is essential in relaxing and giving confidence to patients after surgery:
Key words: perception, postoperative patients, patients' feelings, displeasure, self-esteem
1) The Japanese Red Cross Kyushu International Collegeof Nursing