クロモグラニン, シナプトフィジン, CD3, CD20, CD30, EMA, S100) では全て陰性であり組織学上腫瘍細胞の起 源および 化の方向性は明らかでなく, 未 化な上皮性 悪性腫瘍かその他の間葉系腫瘍であるかの鑑別も困難と 判断され, 同院での最終病理診断は malignant tumor, small round cell typeであった.術前精査にて側方リンパ 節転移を認めたため, 術前化学放射線療法後に手術が予 定された. しかし, 12月上旬に行われた化学放射線療法 の効果判定の CT/MRI で多発肝転移の出現が確認され たため手術適応が無くなり, 全身化学療法目的に同月中 旬当科紹介入院となった.腫瘍マーカーは CEA・Ca19-9 は正常範囲内であったが, NSE が 61.1ng/mlと上昇して いた. 第 6病日に FORFILI (l-LV 200mg/m CPT-11 180mg/m 5-FU bolus 400mg/m 5-FU 持 続 静 注 2400mg/m ) にて化学療法を施行したが, その後腹部膨 満感が強くなり,第 22病日に腹部 CT を施行したところ 以前の CT と比較し,腹水貯留が著明であり,化学療法は 無効でかつ Performance Status 3-4と全身状態が著明に 不良となり, 治療方針は緩和医療となった. その後, 全身 状態は に悪化し第 33病日未明に死亡となった. 家族 から同意を得, 病理解剖を施行した. 病理解剖を行った ところ直腸 Rb領域を主体に 7.5× 5 cmの全周性 4型腫 瘍を認め, 直腸割面では粘膜下を主体に広がる黄白色充 実性の病変を認め, 前立腺へ直接浸潤していた. また, 肝 臓両葉に多発性転移を認め, 腸間膜全面が黄白色調の転 移巣で埋め尽くされていた. 組織学的には H.E 染色で は, びまん性に増生する腫瘍を認め, 好酸性顆粒状の胞 体と卵円形腫大核を有していた. 核はクロマチンが疎に 凝集し, 赤く明瞭な核小体を伴っていた. 巨核, 多核, 奇 形核が散見され, 裂像が高度に認められた. また, 広範 囲に壊死を伴っていた. 免疫染色では, ケラチンがごく一部で陽性であり肉腫 ではなく癌腫であると えられた. また, 免疫染色の LCA, クロモグラニン, シナプトフィジン, NSE, CD56 は全て陰性であり, 内 泌細胞癌や悪性リンパ腫は否定 的であった. 以上より最終的に未 化癌と診断した. 組 織型診断が困難であったが最終的に直腸未 化癌と診断 した 1剖検例を経験した. 直腸未 化癌は極めてまれで あり, 予後不良の症例が多い. 今後化学療法を含めた有 効な治療法の開発が望まれる. 直腸未 化癌について若 干の文献学的な 察を加えて報告する. 4.脱水・電解質異常・急性腎不全を呈した直腸絨毛腫 瘍の一例 清水 雄大,坂元 一郎,大木 孝 山田 達也,中村 正治,菅野 雅之 高他 大輔(独立行政法人国立病院機構 高崎病院 外科) 小川 晃 (同 病理) 【症 例】 76歳の男性で, 糖尿病でインスリン治療を受 けていた. 平成 19 年 12月に食思不振が出現, 平成 20年 5月になり血糖コントロールが悪化した. 近医で入院加 療を受けていたが, 腎機能障害も併発し, 当院へ転院と なった. 難治性の下痢も続いており, 入院時血液検査で は, Na 118.0mEq/L, K 4.0mEq/L, Cl 78.0mEq/L, BUN 137mg/dL,Cr 3.06mg/dL と著明な低 Na・Cl血症,腎機 能障害を呈していた.腹部骨盤 CT では,直腸に全周性の 腫瘍を認めた. 周囲への浸潤像やリンパ節腫大は認めな かった. 下部消化管内視鏡検査で, 直腸に全周性で の 高い隆起性病変を認めた. 表面構造はほぼ 一な絨毛状 で,粘液が多量に付着していた.EUSで,腫瘍による筋層 の破綻を疑わせる所見は認めなかった.生検では tubulo-villous adenomaであった. 大腸造影 X 線検査では, 直腸 RaRb 領域に apple core sign を認めたが, 腸管壁の伸展 性は保たれていた. 下痢は難治で症状に波があり, 連日 の補液・内服治療にも関わらず, BUN 161.8mg/dL, Cr 6.89mg/dL まで上昇する急性腎障害と, 血糖 500mg/dL 超の高血糖を来すこともあったが, 大量の輸液による脱 水の補正, インスリン投与で速やかな改善をみた. 以上 から,直腸絨毛腫瘍に伴って下痢・脱水・電解質異常・高 血糖をきたす Electrolyte depletion syndrome (EDS) と 診断し, 切除の方針とした. 精査で進行癌の所見を認め ず, 内視鏡下粘膜下層剥離術について検討したが, 全周 性の巨大腫瘍で, 術後の狭窄が懸念されたため, 外科的 切除の方針とし, 腹会陰式直腸切断術 D 2郭清を施行し た. 摘出標本の肉眼所見は, 径 150×90×25mmの巨大な 全周性絨毛腫瘍で, 腫瘍は軟らかく悪性の所見は認めな かった. 腫瘍を全割し検索したところ, 腫瘍表面はすべ て絨毛腺腫で覆われていたが, 深部に径 15×12mmの癌 を認め, 病理学的に tubular adenocarcinoma, well differ-entiated type (tub1), pSS, INFa, ly1, v1, pN0, sH0, sP0, cM0,fStageⅡと診断された.術後 6か月現在,下痢・電解 質異常・腎障害の再燃や, 癌の再発の徴候は認めていな い. 【 察】 絨毛腫瘍 villous tumorは, 肉眼的に隆 起性病変の大部 の表面構造が絨毛状ないし微細顆粒状 で, 割面および組織学的にも絨毛状構造を呈する腫瘍と 定義される. 大腸腫瘍の 0.8%, 大腸腺腫の 1.3∼3.4%を 占め, 直腸から S状結腸に好発し, 腫瘍径 5 cmを超える ものでは癌の併存率が 80%と高率であると報告されて 第 27回群馬消化器病研究会 192
いる. 腫瘍径に比して深達度が浅いことが多いことから, 早期癌症例には縮小手術を推奨する報告の一方, 進行癌 症例も少なからず存在することや, 局所切除後の再発例 の報告もあり, 術式の選択には慎重を要するとの意見も ある. 絨毛腫瘍からの大量の粘液 泌により脱水, 電解 質異常をきたすことがあり, EDSと呼ばれる. EDSを併 発する頻度は絨毛腫瘍の 0.76∼2.4%と稀であるが, 腫瘍 径が 10cmを越えると発症が増加するといわれる. 切除 により改善が期待できるが, EDSによるショックで救急 搬送された症例や死亡例も報告されている. 本症例では, 直腸絨毛腫瘍により EDSを来たし, 耐糖能が悪化した と えられた. 術前検査や摘出標本の肉眼所見でも癌の 合併は不明であったが, 病理組織検査で絨毛腫瘍の深部 に漿膜下に達する進行癌を認め, 術前診断の困難性が指 摘された. 【結 語】 難治性の下痢の鑑別疾患として, 絨毛腫瘍も念頭におく必要がある.絨毛腫瘍では,術前・ 術中の癌の局在, 深達度の診断は困難であり, 術式の選 択には充 な検討が必要である. 5.直腸カルチノイドの内視鏡治療 小野里康博,蘇原 直人,飯塚 春尚 石原 弘(しらかわ診療所 群馬消化器内視鏡医療センター) 伊藤 秀明 (前橋赤十字病院 病理部) 柿崎 暁 (群馬大院・医・病態制御内科学) 【目 的】 近年大腸内視鏡検査の普及により微小直腸カ ルチノイドの発見例が増加している. その治療法として, 腫瘍径 10㎜以下, 筋層浸潤なし, 傍直腸リンパ節腫大な し, 生検で異型のないカルチノイドを内視鏡的切除の適 応とする方針が浸透してきているが, まだ治療ガイドラ インは存在せず, 様々な切除方法が行われている. その 結果, カルチノイドは粘膜下腫瘍の発育形態をとるため, 内視鏡的切除により垂直断端陽性となることがある. burning effectを期待し経過観察している症例も多いと 思われるが, 追加外科切除すべきか苦慮する症例にも遭 遇するのが現状である. 今回, 直腸カルチノイドの診断, 内視鏡治療の適応, 切除方法および追加治療の有用性を 検討し, 内視鏡治療方針を提示する. 【対象と方法】 1997年以降にしらかわ診療所と前橋赤十字病院で経験 した, 微小直腸カルチノイド 43例 46病変を対象とした. 超音波内視鏡 (EUS)により術前診断を行い,内視鏡的切 除の適応を腫瘍径 10mm「以下,筋層浸潤なし,傍直腸リ ンパ節腫大なし, 生検で異型のないカルチノイドとし, 切除標本で細胞異型なし, かつ脈管侵襲なし, かつ完全 切除である症例を治癒とした. 追加治療は, 細胞異型ま たは脈管侵襲を認める症例はリンパ節郭清を含む追加外 科切除の適応とし, 細胞異型も脈管侵襲も認めない一部 断端陽性例には内視鏡的マイクロ波凝固法 (EMCT) の 追加, 広範な断端陽性例には内視鏡的粘膜下層剥離術 (ESD) の追加の適応とした.術後の経過観察は定期的に, EUS による局所精査と腹部 US による転移検索を行い, 症例に応じて CT を行った. 【結 果】 1997年 1月か ら 2008年 7月までに 43例 46病変の直腸カルチノイド が局所切除され, 治療に伴う偶発症は認めなかった. 年 齢は 31∼87歳 (平 57.8歳),男女比 31:12,存在部位は Rb :Ra:Rs 30:15:1, 腫瘍径は 3∼10mm (平 6.6mm) であった. 治癒切除は 32例 35病変 (75.1%) で, 経過観 察率 83.3%, 平 観察期間 4.5年で転移, 遺残再発は認め なかった.ESD 導入後,2チャンネル法 EMR (2T-EMR) は 6 mm以 下 の 小 病 変 に し か 行 わ れ ず, 完 全 切 除 率 100%であった. 水平断端陽性例はなく, 垂直断端陽性で あった 11例 11病変 (ポリペクトミー3/4病変, 通常の EMR2/2病変,2T-EMR4/26病変,ESD2/10病変)は,全 例異型や明らかな脈管侵襲がないため, 追加外科切除し た症例はなかった. 一部垂直断端陽性 9 例に EMCT を 追加し, 平 観察期間 3.8年で遺残再発, 転移を認めな かった. 広範な垂直断端陽性の通常の EMR 後 2例に ESD を追加し, 1例は遺残が完全切除でき, もう 1例は 遺残なしが確認できた. 【結 語】 大腸内視鏡検査で 発見した直腸カルチノイドは EUSによる術前診断を行 ない, 腫瘍径 10mm以下, 筋層浸潤なし, 傍直腸リンパ節 腫大なし, 生検で異型のないカルチノイドを内視鏡的切 除の適応とし, 細胞異型なし, かつ脈管侵襲なし, かつ完 全切除である症例を治癒とすることは妥当である. 完全 切除率の高い 2T-EMR または ESD による切除が必要 で, 6mm以下の小病変は 2T-EMR で充 である. ポリペ クトミーや通常の EMR は完全切除できないため行うべ きではない. 内視鏡的切除の適応病変であれば, 一部垂 直断端陽性でも EMCT による burning effectの追加が 可能である. 広範な垂直断端陽性例には ESD の追加が 有用と える.