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修士論文の和文要旨 研究科 専攻 大学院情報理工学研究科基盤理工学専攻博士前期課程 氏名鈴木雄大学籍番号 論文題目 置換基導入型アミノルシフェリンによるホタル生物発光特性制御 要 旨 ホタル生物発光はルシフェリン - ルシフェラーゼ (L-L) 反応により進行し ( 下図 ) その反

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修 士 論 文 の 和 文 要 旨

研究科・専攻 大学院 情報理工学研究科 基盤理工学専攻 博士前期課程 氏 名 鈴木 雄大 学籍番号 1933069 論 文 題 目 置換基導入型アミノルシフェリンによるホタル生物発光特性制御 要 旨 ホタル生物発光はルシフェリン-ルシフェラーゼ(L-L)反応により進行し(下図)、その反応性と 発光特性は酵素ルシフェラーゼ(Fluc)による触媒作用と精密な励起分子の安定性制御により調 整されている。近年、ルシフェリンアナログを用いたイメージング技術発展が目覚ましく、進 歩を支える反応機構解析が重要になっている。本研究では、発光活性の高いアミノルシフェリ ン(1a)の着目し1)、そのアナログの生物発光特性を基に酵素活性部位の機能解明を目指して2) 1a のベンゾチアゾール環の 7’位に置換基導入したアナログ 1b-g を合成し、アミノ基近傍での 置換基の立体障害や電子的効果がL-L 反応の発光特性に及ぼす影響を調査した。置換基として、 ハロゲン(F, Cl, Br)、フェニル基、アルキル基を導入した。pH 6.0 と 8.0 の緩衝液中で L-L 反応 を行い、発光測定を行った結果、アナログ 1b-g の発光スペクトルは 1a と同様 pH 依存の変化 を示さず、置換基が大きくなるにつれて発光強度が小さくなることを見出した。生物発光の極 大波長を母体の1a と比較すると、メチル置換体 1f は長波長シフトを示し、エチル置換体 1g は 波長シフトを示さず、それ以外のアナログはすべて若干短波長シフトを示した。これらの値を 評価するため、発光体であるオキシルシフェリンの蛍光性と相関のあるルシフェリン体自身の 蛍光性を調査した。ハロゲン置換体1b-d の蛍光極大波長は 1a と比較して短波長シフトを示し、 フェニル、アルキル置換体1e-g は 1a より長波長シフトを示した。蛍光極大波長の置換基依存 性はDFT 計算の結果にも対応していた。また、すべてのアナログは溶媒極性の増大に対応して 蛍光極大が長波長シフトする蛍光ソルバトクロミズム性を示した。生物発光波長と蛍光波長の 関係を評価すると、酵素内活性部位での励起状態のオキシルシフェリンの存在位置が、ハロゲ ン置換基を導入した場合は極性の高い環境、フェニル基およびアルキル基を導入した場合は低 極性な環境に誘導されたことを示す。ハロゲン置換基とメチル基は結合方向のみに立体障害の 影響を及ぼすが、フェニル基とエチル基の場合はベンゾチアゾール環のπ平面からそれた方向 にも立体障害を及ぼし、酵素内での誘導部位に差異が生じるものと考えられる。本研究により、 ルシフェリン近傍の酵素内活性部位の分子環境の違いにより、生物発光の波長制御が行われて いることを明らかにすることができた。 Fig. ホタルの L-L 反応と本研究で用いたアミノルシフェリンとそのアナログの分子構造 1) White, E. H.; Wörther, H.; Seliger, H. H.; McElroy, W. D. J. Am. Chem. Soc. 1966, 88, 2015.

2) Kakiuchi, M.; Ito, S.; Kiyama, M.; Goto, F.; Matsuhashi, T.; Yamaji, M.; Maki, S.; Hirano, T., Chem. Lett. 2017, 46, 1090. N S HO S NH COOH + ATP + O2 Fluc Mg2+ N S O S N O+ hv + CO2 + AMP + PPi

firefly luciferin oxyluciferin

N S H2N S N R 6' 7' 2' COOH H 1a: R = H (aminoluciferin) 1b: R = F 1c: R = Cl 1d: R = Br 1e: R = Ph 1f: R = Me 1g: R = Et aminoluciferin analogues(1)

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学籍番号

1933069

氏  名

鈴木 雄大

基盤理工学専攻 化学生命工学プログラム

主任指導教員

平野 誉  教授

指 導 教 員

牧 昌次郎 准教授

提 出 日

令和3年1月25日

令和2年度 修士論文

置換基導入型アミノルシフェリンによる

ホタル生物発光特性制御

主任指導教員印 指導教員印

(3)

内容

第1 章 序論 ...1 1.1 ホタル生物発光 ...1 1.2 発光色変化の原因と仮説の検証 ...3 1.3 本研究の目的 ...6 第2 章 本論 ...7 2.1 置換基を有するアミノルシフェリンの合成 ...7 2.2 ハロゲン置換基を有するアミノルシフェリンアナログの合成 ...7 2.2.1 6-アミノ-2-シアノベンゾチアゾールの合成 ...7 2.2.2 6-アミノ-2’-シアノ-7’-ハロゲンベンゾチアゾールの合成 ...7 2.2.3 アミノルシフェリンアナログの合成 ...8 2.3 ハロゲン置換基を有するアミノルシフェリンアナログの分光学的性質 ...8 2.3.1 生物発光(BL) ...8 2.3.2 電子吸収と蛍光 ...9 2.3.3 DFT 計算による評価 ... 12 2.3.4 7’位にハロゲン置換基を導入したアミノルシフェリンの生物発光波長の考察 . 13 2.4 フェニル、アルキル置換基を有するアミノルシフェリンアナログの合成 ... 16 2.4.1 7’-フェニルアミノルシフェリン 1e の合成 ... 16 2.4.2 7’-アルキル-6’-アミノ-2’-シアノベンゾチアゾールの合成 ... 16 2.4.3 7’-アルキルアミノルシフェリン 1f-g の合成... 18 2.5 フェニル、アルキル置換基を有するルシフェリンアナログの分光学的性質 ... 18 2.5.1 生物発光(BL) ... 18 2.5.2 電子吸収と蛍光 ... 19 2.5.3 DFT 計算による評価 ... 22 2.5.4 フェニル・アルキル導入型ルシフェリンの生物発光波長の考察... 23 第3 章 結語 ... 28 実験の部 ... 30 1. 実験機器と方法 ... 30 1.1 機器分析... 30 1.2 クロマトグラフィー ... 32 1.3 基本操作... 33 1.4 紫外可視吸収スペクトルの測定 (UV) ... 34 1.5 蛍光スペクトル測定 (FL) ... 34 1.6 生物発光測定 (BL) ... 35

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合成の部 ... 37 参考文献 ... 55 謝辞 ... 57

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1

1 章 序論

1.1 ホタル生物発光

ホタル生物発光は、ルシフェリン(発光基質)の反応がルシフェラーゼ(酵素)による酵 素作用を受けて起こる1。この反応はルシフェリンールシフェラーゼ(L-L)反応と呼ば れている。ルシフェリンは、Mg2+存在下のルシフェラーゼの触媒作用により、ATP と反応し て活性化され、さらに酸素と反応して励起状態のオキシルシフェリンを生成し、基底状態に 戻る際にエネルギーの差分の一部を光として放出する2Scheme1-1-1)。 Scheme 1-1-1. ホタルの L-L 反応 L-L反応の特徴は、多色発光と高い発光効率を実現している点にある。これらの発光特 性を生かし、バイオイメージング3ATP 検出などの発光分析に用いられ、ライフサイエ ンス分野を中心に応用化されており、生物発光特性の人工制御が望まれている(Figure 1-1-1)。 Figure 1-1-1. ホタル L-L 反応の応用例4 ホタル生物発光の研究には長い歴史があるものの、L-L 反応の分子機構は未だ解明されて いない点が残されている。そのため、人工的な発光波長や発光強度などの制御に関する研 究が進んでいるが、完全な発光の人工制御には至っていない。このような状況に対して、 我々は反応機構研究を進めており、特に発光波長制御の仕組みに注目している。発光甲虫 (ホタル、ヒカリコメツキ、鉄道虫)は、すべて同じ発光基質を用いて発光しているが、 N S HO S N COOH + ATP + O2 luciferase Mg2+ N S HO S N + hv + CO 2 + AMP + PPi O luciferin oxyluciferin

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2 異なる発光極大波長を示す5。これらの発光波長の違いは、それぞれの発光甲虫が持つ酵 素が異なることに起因する。それにより、酵素内活性部位の環境が異なることにより、励 起状態のオキシルシフェリンの安定性や性質に違いが生じていることが明確であり、発光 波長制御に関与するルシフェラーゼの機能を検討している。 Figure 1-1-2. 発光甲虫 ヘイケボタル (Luciola lateralis) ヒカリコメツキムシ (Pyrophorus) 鉄道虫 (Phrixothrix) Photo:Professor Vadim R. Viviani Prof. A. Roda Prof. T. Hirano

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3

1.2 発光色変化の原因と仮説の検証

ホタルルシフェリンの発光色変化メカニズムは長年にわたり研究されてきた61.1 章で、 発光甲虫の違いで発光色が異なることに言及したが、同じ北米産ホタルルシフェラーゼを 用いても、in vitro で L-L 反応を行う際の水溶液の pH の違いによって、赤色と黄緑色の異な る発光を示すこと知られている7Scheme 1-2-1)。一方、6’位のヒドロキシ基をアミノ基に 置換したアミノルシフェリンは、水溶液のpH を変化させても常に赤色発光を示す基質とし て知られている8。そのため、バイオイメージングの分野で広く利用されているアナログの 一つである9。この二つの基質の違いは、6’位の置換基のみである。ホタルルシフェリンと アミノルシフェリンの 6’位の置換基は、フェノール性ヒドロキシ基とアミノ基であり、酸 性、塩基性という違いはあるものの置換基の空間的な大きさには差異はほとんどない。この 6’位の置換基の違いにより pH 依存性の違いが現れるメカニズムも未解明な課題の1つであ る。 Scheme 1-2-1. ルシフェリンとアミノルシフェリンの発光特性の比較 6’位のヒドロキシ基とアミノ基の違いによる発光特性変化については、以下の機構が提 唱されている10(Scheme 1-2-2、Scheme 1-2-3)。 酵素の活性部位には、極性が高い場所(極性ポケット)と低い場所(非極性ポケット) の2 種類の場所がある。また、L-L 反応で生成するオキシルシフェリンの励起分子は、溶 媒の極性によって蛍光色が変化するソルバトクロミズム性を持つことが知られている11 つまり、酵素内の活性部位においても、ルシフェリンの存在位置が変わることによって、 その極性の違いを反映して発光のソルバトクロミズム様の現象が起き、極性ポケットに誘 導された時は赤色発光、非極性ポケットに誘導された時は、黄緑色発光を示すと説明され る。 天然型ルシフェリンは、酸性のフェノール性ヒドロキシ基(OH)をもつため、塩基性アミ ノ酸がある場所に誘導される。塩基性アミノ酸が、極性ポケットと非極性ポケットの両方 に存在するため、天然のルシフェリンは非極性ポケットと極性ポケットの両方に誘導さ れ、黄緑発光と赤色発光を示す。pH= 6 の場合は、非極性ポケットのルシフェリンが失活 するため、赤色発光のみが観測される。pH = 8 の場合は、極性ポケットと非極性ポケット 由来の発光が観測されるが、極性ポケットでの発光は、非極性ポケットでの発光に比べ弱

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4 いため、黄緑色発光しているように見える。 Scheme 1-2-2. 天然型ルシフェリンの発光メカニズム 一方、アミノルシフェリンは、6’位に塩基性のアミノ基(NH2)を持つため、酸性アミ ノ酸がある場所に誘導される。酸性アミノ酸は、極性ポケット側にのみ存在するため、ア ミノルシフェリンでは、pH 非依存性の赤色発光を示すと説明されている。

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5

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6

1.3 本研究の目的

ホタル生物発光の多色発光は、ルシフェラーゼ活性部位による精密なオキシルシフェリ ンの励起分子の安定性や性質の制御に基づいて発現していると考えられる。当研究室では、 この発光色制御機構を明らかにするため、アミノルシフェリンとその誘導体の発光特性を 調査してきた11。さらに、ゲンジボタルルシフェラーゼの結晶構造12を参考にすると、前節 で説明した通り、発光色の調整は活性部位内での励起分子の存在位置が重要であると考え られる10。置換基導入したルシフェリンアナログが数多く報告されている13が、ルシフェラ ーゼ活性部位内の存在位置の調整に着目した系統的な評価は未だなされていない。本研究 では、特定の位置として、7’位に置換基導入したアミノルシフェリンを合成し、その発光測 定により発光特性を評価して、発光色制御に働くルシフェラーゼ活性部位内での励起分子 位置の効果を明らかにすることを目指した(Figure 1-3-1)。具体的には、アミノルシフェリ ン1a を基準にして、7’位にハロゲン、フェニルおよびアルキル基を置換基導入したアナロ1b-g を合成し、アミノ基近傍での置換基の立体効果や電子的効果が L-L 反応の発光特性 に及ぼす影響を調査した。これにより、ルシフェリンアナログ開発の分子基盤を固め、バイ オイメージング試薬改良の礎を作ることができる。 Figure 1-3-1. 置換基導入による励起分子の存在位置の調整 Figure 1-3-2. 合成したアミノルシフェリンアナログ N S H2N S N R 1a: R = H 1b: R = F 1c: R = Cl 1d: R = Br 1e: R = Ph 1f: R = Me 1g: R = Et COOH

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2 章 本論

2.1 置換基を有するアミノルシフェリンの合成

アミノルシフェリンの分子構造は、左側のベンゾチアゾール部位と右側のチアゾリン環 部位からなる。本研究においては置換基を有するアミノルシフェリンを合成するため、まず 置換基を導入したベンゾチアゾール部位のニトリル体を合成し、D-システインで縮合環化 することにより置換基導入型アミノルシフェリンアナログの合成を計画した。 Scheme 2-1. アミノルシフェリンの合成計画

2.2 ハロゲン置換基を有するアミノルシフェリンアナログの合成

2.2.1 6-アミノ-2-シアノベンゾチアゾールの合成 2-クロロベンゾチアゾール 2 を出発原料として、濃硝酸と濃硫酸によるニトロ化反応でニト ロ体3 を得た。次にシアン化ナトリウムを用いた置換反応によりシアノ体 4 を合成し、4 の ニトロ基を亜鉛により還元して、アミノ体5 を得た14 Scheme 2-2-1. 6-アミノ-2-ベンゾチアゾールの合成 2.2.2 6-アミノ-2’-シアノ-7’-ハロゲンベンゾチアゾールの合成 アミノニトリル体5 にハロゲン化試薬であるセレクトフルオル、塩化スルフリル、N-ブロ モスクシンイミドをそれぞれ反応させることにより、ハロゲン体6-8 を合成した。

H

2

N

N

S

S

N

CO

2

H

aminoluciferin

H

HNO3, H2SO4 0 ℃, Ar, 2 h 41 % N S Cl N S Cl O2N DABCO,NaCN MeCN/H2O 10:1 Ar, r.t. 3.5 h 92 % N S CN O2N 2 3 4 Zn, NH4Cl MeOH, Ar, r.t. 0.5 h 45 % N S CN H2N 5 ベンゾチアゾール部位 チアゾリン環部位

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8 Scheme 2-2-2. 6-アミノ-2-シアノ-7-ハロゲンベンゾチアゾールの合成 2.2.3 アミノルシフェリンアナログの合成 シアノ体5-8 に D-システインとの縮合環化を行い、アミノルシフェリン 1a とそのアナロ1b-d を得た。母体の 1a に関しては、文献既知15のリン酸ナトリウム緩衝液(SPB)を用い た縮合環化(ref)を行ったものの、収率が 10%未満であったため、炭酸カリウムを用いた環化 反応を試みたところ1486%の収率で合成することができた。 Scheme 2-2-3. ルシフェリンアナログの合成

2.3 ハロゲン置換基を有するアミノルシフェリンアナログの分光学的性質

2.3.1 生物発光(BL)

アミノルシフェリン1a とアナログ 1b-d について、リコンビナント Ppy (photinus pyralis) N S CN H2N F N S CN H2N Cl N S CN H2N Br N S CN H2N Selectfluor MeCN/THF 2:1 Ar, r.t. 5.5 h, 21 % SO2Cl2 CH2Cl2, Ar 0℃, 4.5 h, 76 % NBS CHCl3, Ar, r.t. 0.5 h, 40 % 5 6 7 8 N S CN H2N 5 N S CN H2N 5 N S CN H2N 5 N S H2N 1a S N COOH D-Cystein・HCl・H2O K2CO3, MeCN/H2O 10:1 Ar, r.t., 5 h, 86 % N S H2N CN F N S H2N F S N COOH D-Cystein・HCl・H2O 250 mM SPB(PH= 8) MeOH Ar, r.t., 4.5 h, 39 % 1b 6 N S H2N CN Cl N S H2N Cl S N COOH D-Cystein・HCl・H2O 250 mM SPB(PH= 8) MeOH Ar, r.t., 21.5 h, 77 % 1c 7 N S H2N CN Br N S H2N Br S N COOH D-Cystein・HCl・H2O 250 mM SPB(PH= 8) MeOH Ar, r.t., 1.5 h, 67 % 1d 8

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9 ルシフェラーゼを用いて生物発光(BL)スペクトルを測定した。pH 8.0 と 6.0 の GTA 緩衝液 中の条件において、室温でL-L 反応を行った15(Figure 2-3-1)。アミノルシフェリン 1a は pH に非依存の発光を示す。同様に1b-d も pH 非依存性の発光を示すかを調査するために、pH 6.0 と 8.0 の両方の条件で測定した。確認のため、アミノルシフェリン 1a も含めて調査し た。

Figure 2-3-1. (a) pH = 6.0, (b) pH = 8.0 における 1a-d の生物発光スペクトル

アミノルシフェリン1a 同様、ハロゲン化アナログ 1b-d は、pH 6.0 と 8.0 で同じ発光極 大を持つスペクトルを示し、pH 非依存性の発光を示すことが解った。 発光強度は、ハロゲン置換基が大きくなるにつれて、発光強度が減少することがわかっ た。 1a(H)>1b(F)>1c(Cl)≈1d(Br) 発光極大波長は、7’位にハロゲンを導入すると約 5 nm 程度の短波長シフトすることが解 った。発光極大波長は、ハロゲン自身の電子的な置換基効果によるものと酵素内の反応場 の極性環境の影響という2 つの要因により制御されるため、以下の章にて発光波長制御の 要因に関する調査を行った。 2.3.2 電子吸収と蛍光 ハロゲン置換基効果による電子的な影響を調査するため、アミノルシフェリン1a とアナ ログ 1b-d について、紫外可視吸収スペクトル(Abs)及び、蛍光スペクトル(FL)を測定した。 溶媒には、アセトニトリル、メタノール、水をそれぞれ用いた。各溶媒に対する基質の濃度 はそれぞれ1.0 × 10−5 mol/L に調整した。 N S H2N S NH COOH + ATP + O 2 Fluc Mg2+ N S H2N S N O+ hv + CO 2 + AMP + PPi R R

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10

生物発光における発光体はオキシルシフェリンである。置換基を有するオキシルシフェ リンの蛍光波長とルシフェリンの蛍光波長には相関があることが知られているため11、ルシ

フェリンアナログの蛍光を測定することで、生物発光波長制御の要因である置換基による 電子的な効果を評価することとした。

Figure 2-3-2-I. 1a-d の紫外吸収スペクトル(Abs)、蛍光スペクトル(FL) 溶媒:アセトニトリルat 298 K

Figure 2-3-2-II. 1a-d の紫外吸収スペクトル(Abs)、蛍光スペクトル(FL) 溶媒:メタノール at 298 K N S H2N S NH COOH + ATP + O 2 Fluc Mg2+ N S H2N S N O+ hv + CO 2 + AMP + PPi R R

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11

Figure 2-3-2-III. 1a-d の紫外吸収スペクトル(Abs)、蛍光スペクトル(FL) 溶媒:水 at 298 K

Table 2-3-2-I. 1a-d の紫外可視吸収特性(298 K)

Solvent [ET(30)*] λab / nm (ε / 104 dm3 mol−1 cm−1)¥ 1a (R=H) 1b (R=F) 1c (R=Cl) 1d (R=Br) Acetonitrile [45.6] 364 (1.6) 362 (1.2) 360 (1.4) 361 (1.6) Methanol [55.4] 364 (1.7) 362 (1.0) 360 (1.7) 361 (1.8) Water [63.1] 353 (1.6) 346 (1.2) 349 (1.4) 353 (1.6) *E T(30): kcal mol−1 16。 ¥吸収極大波長(λab)と括弧内はモル吸光係数(ε / 104)。

Table 2-3-2-II. 1a-d の蛍光特性(298 K)

Solvent [ET(30)*] λfl / nm (Φf)¥ 1a (R=H) 1b (R=F) 1c (R=Cl) 1d (R=Br) Acetonitrile [45.6] 470 (0.71) 470 (0.59) 463 (0.48) 462 (0.43) Methanol [55.4] 491 (0.93) 490 (0.74) 480 (0.71) 480 (0.62) Water [63.1] 524 (0.87) 524 (0.79) 511 (0.86) 511 (0.64) *ET(30): kcal mol−116 ¥蛍光極大波長(λfl)と括弧内は量子収率(Φf)。 アミノルシフェリン 1a とアナログ 1b-d の紫外可視吸収スペクトルと蛍光スペクトルを Figure 2-3-2 に示し、そのデータを Table 2-3-2 にまとめた。蛍光特性において、蛍光極大波 長 λfl値は、1a が 470-524 nm、1b が 470-524 nm、1c が 463-511 nm、1d が 462-511 nm であり 溶媒に依存して異なる波長を示した。量子収率は0.43 以上であった。ここで興味深いこと に、1a-d における λabとλfl値が、ハロゲン置換基の電子求引性の増加に伴い、概ね短波長シ フトすることが解った。これはハロゲン置換基が1b-d のフロンティア軌道のエネルギー準 位を変化させていることを意味している。また、溶媒極性は水>メタノール>アセトニトリ

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12

ルの順番であるため、1a-d の λfl値は、溶媒の極性が高くなるにつれ、顕著に長波長シフト

するソルバトクロミズム性を示すことが解った。

さらに、溶媒の違いによる1a-d の λfl値の変化は、λab値の変化よりも大きい。つまり、こ

れらのアナログにおいては、励起一重項状態(S1)の方が基底状態(S0)よりも溶媒の極性に影

響されやすいことを示している。1a-d が HOMO から LUMO に電子遷移するにあたり、分 子内で電子分布の偏りが大きくなり、これによりS1状態の方がS0状態よりも分子内で分極 した性質、すなわち双極子モーメントが大きくなる。そのため極性溶媒中において S1状態 の安定化がS0状態よりも大きく、溶媒の極性が高くなるにつれて、S1状態とS0状態のエネ ルギー差が小さく、低エネルギーなために、結果として長波長シフトが起きるのである。 2.3.3 DFT 計算による評価 アミノルシフェリン 1a とアナログ 1b-d の分光学的性質と π 電子的性質の関連性を分析 するために、B3LYP/6-31+G(d)を用いて oxy-1a-d の DFT および TD-DFT 計算を行った(Table 2-3-3)。

Table 2-3-3-I. B3LYP/6-31+G(d)を用いた DFT および TD-DFT の計算データ Compound (substituent) HOMO /eV LUMO /eV ΔEH−L a /eV

Transitions b λtr c/ nm (f) Configuration d,e

oxy-1a (R=H) -6.00 -3.05 2.96 S0 → S1 456 (0.61) H → L (0.69) oxy-1b (R=F) -6.14 -3.14 3.00 S0 → S1 453 (0.54) H → L (0.70) oxy-1c (R=Cl) -6.15 -3.12 3.03 S0 → S1 450 (0.56) H → L (0.70) oxy-1d (R=Br) -6.15 -3.12 3.03 S0 → S1 450 (0.55) H → L (0.70) a HOMO と LUMO のエネルギーギャップ。b励起エネルギーが最も低い励起一重項状態へのπ, π*遷移。 c遷移エネルギーから推定される波長。d励起の構成。e H、および L は、それぞれ HOMO、LUMO を示す。 すべてのアナログのS0→S1遷移は、HOMO→LUMO の電子遷移による π、π*遷移である。

計算されたHOMO と LUMO のエネルギー差(ΔEH-L)は、S0→S1の遷移エネルギーから計算

した波長tr)に対応しており、ハロゲン置換基の電子求引性の増加に伴い ΔEH-L値は大きく なり、λtr値は小さくなっている。なお、電子求引性の指標としてはハメット則17のσp値を 用いると(Table 2-3-3-II)、H < F < Cl ≈ Br の順番に電子求引性が大きくなることが知られ ている。 Table 2-3-3-II. 水素原子とハロゲン原子の σp値の比較 原子 σp H 0 F 0.06 Cl 0.23 Br 0.23 上記の計算結果は、観測した 1a-d の λab値と λfl値が、ハロゲン置換基の電子求引性の増

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13 加に伴い短波長シフトしていた実験結果をサポートしている。さらに、ハロゲン置換基によ る電子求引性の増加は、HOMO と LUMO の両方のエネルギー準位を下降させている。特に、 HOMO のエネルギー準位が、LOMO のエネルギー準位と比較して大きく下降しているため、 エネルギー差ΔEH-L値が増加することがわかる。 Figure 2-3-3. オキシルシフェリンアナログのアセトニトリル中での DFT 計算結果 2.3.4 7’位にハロゲン置換基を導入したアミノルシフェリンの生物発光波長の考察

Figure 2-3-4-I. 蛍光スペクトル(in MeCN)と生物発光スペクトル(pH = 8.0)の比較

生物発光とアミノルシフェリンの蛍光を比較するため、それぞれのスペクトルをFigure 2-3-4-I に並列して示した。生物発光の極大波長の制御には、酵素内活性部位での存在位置の 違いによる分子環境の影響と基質の置換基の違いによる電子的な効果という、大きく二つ のファクターがあると仮定できる。前節2-3-2、2-3-3 より 7’位にハロゲン置換基を導入す るとアミノルシフェリン1a に比べ、λab値とλfl値が短波長シフトした。また、ハロゲン置

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14 換基を7’位に導入すると生物発光の極大波長 λbl値は、アミノルシフェリン1a に比べて小 さな短波長シフトを示した。もし、L-L 反応で生成したオキシルシフェリン体の励起分子 が、酵素内の活性部位内における同じ存在位置をとっていれば、生物発光の極大波長も蛍 光波長と同じ程度の短波長シフトが得られると予想される。しかし、観測された生物発光 スペクトルでは、蛍光波長に比べて短波長シフトの程度が小さかった。この結果は、酵素 内活性部位での励起発光体の存在位置の違いも反映していることを示している。ハロゲン 置換基を導入することで、無置換の場合に比べて極性の高い環境に移動しているために、 発光波長の小さな長波長シフトが起こり、結果として、生物発光スペクトルでは、ハロゲ ン置換基を導入した場合も短波長シフトの程度が小さかったと説明できる。 Figure 2-3-4-II は、ハロゲン置換基導入した際の酵素内活性部位での存在位置の違いによ る分子環境の影響を模式的に示したものである。1b は、1a と比較して、λfl値とλbl値がほ とんど変化していないことから、酵素内での存在位置変化による分子環境の影響はないと 考えられる。1c-d は、1a と比較して、λfl値が短波長変化している一方、λbl値がほとんど変 化していないことから、酵素内での存在位置変化による分子環境は、1a と比べ、極性環境 に移動していると説明できる。この結果から、F 原子の立体障害では、分子環境の変化に 影響は及ぼさないが、Cl、Br 原子の大きさになると立体障害が、酵素内での分子環境の変 化に影響を及ぼすことを示唆する。この結果は、渥ら18が報告した水素原子、ハロゲン原 子の共有結合半径の大きさの傾向とも一致する(Table 2-3-4)。 Table 2-3-4-I. 原子の種類と共有結合半径 原子の種類 共有結合半径 / pm H 32 F 64 Cl 99 Br 114

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15 Figure 2-3-4-II. 酵素活性部位内の存在位置の模式図 Table 2-3-4-II. 天然型ルシフェリンの生物発光波長19 Subustrate λbl / nm acidic basic 1a: X = H 611 556 1b: X = F 622 562 1c: X = Cl 617 570 N S HO S N COOH H + ATP + O2 Fluc Mg2+ N S O S N O+ hv + CO2 + AMP + PPi R R 1a: R = H 1b: R = F 1c: R = Cl

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16 浦野らにより、ハロゲンの置換基導入効果として、天然型ルシフェリンと7’位にハロゲ ンを導入した生物発光極大波長の違いについて報告されている19 天然型ルシフェリンを酸性条件で生物発光させたとき、アミノルシフェリンと生物発光 極大波長の値が近いことから、アミノルシフェリンと近い酵素活性部位に誘導することが わかる。ハロゲンを導入すると、酸性条件での生物発光極大波長は、天然型ルシフェリン に比べ長波長シフトしている。一方、ハメット則のσp値を用いる(Table. 2-3-3-II)と、ハ ロゲン置換基は、電子求引基であることから、置換基効果としては短波長シフトが予想さ れる。このことから、ハロゲン置換基の導入による立体障害が、酵素内での存在位置を変 化させ、天然型ルシフェリンよりも極性環境に移動させていると考えられる。これは、ア ミノルシフェリンにハロゲン置換基を導入した際、酵素内の極性環境に移動させることを 支持する結果となる。

2.4 フェニル、アルキル置換基を有するアミノルシフェリンアナログの合成

2.4.1 7’-フェニルアミノルシフェリン 1e の合成 ブロモニトリル体8 とフェニルボロン酸による鈴木カップリング反応により、フェニルニ トリル体9 を合成した。粗生成物のシアノ体 9 と D-システインによる縮合環化を行い、ル シフェリンアナログ1e を得た。ブロモニトリル体 8 からの2段階の収率は 13 %であった。 Scheme 2-4-1. 7’-フェニルアミノルシフェリンの合成 2.4.2 7’-アルキル-6’-アミノ-2’-シアノベンゾチアゾールの合成 ニトロ体3 に2等量のグリニャール試薬を作用し、DDQ で酸化処理してアルキル化された 10、11 を合成した。ニトロニトリル体 10、11 を亜鉛により還元し、アミノニトリル体 12、 13 を得た。 Scheme 2-4-2. 7’-フェニルアミノルシフェリン 1e の合成 N S H2N CN Ph N S H2N Ph S N COOH D-Cystein・HCl・H2O 250 mM SPB(PH= 8) MeOH Ar, r.t., 15 h 1e 9 Pd(PPh3)4 1,4-dioxane, 2M Na2CO3aq, Ar, 90℃, 3 h. N S CN H2N 8 Br + B(OH)2 N S O2N MeMgBr DDQ,THF, Ar, -80℃, 40 min, 45 % N S O2N CN Me CN 3 Zn, NH4Cl MeOH, Ar, 40 min, r.t., 68% N S H2N Me CN 10 N S O2N EtMgBr DDQ,THF, Ar, -80℃, 40 min, 14 % N S O2N CN Et CN 3 Zn, NH4Cl MeOH, Ar, 2 h 10 min, r.t. N S H2N Et CN 12 11 13

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17 アルキル基導入反応はGraziano らの論文 20を参考にしており、その反応機構を以下のよう に進行していると推察される。 Figure 2.4.2. アルキル化の反応機構20 N S CN N O O N S N BrMgO O CN H N S N BrMgO CN H O R R MgBr N S N BrMgO CN O H R O O CN CN Cl Cl N S N BrMgO CN O H R O Cl Cl NC NC O N S N O O R CN OH O Cl Cl NC NC BrMg N S N O O R CN OH OMgBr Cl Cl NC NC

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18 2.4.3 7’-アルキルアミノルシフェリン 1f-g の合成 シアノ体12, 13 に D-システインとの縮合環化を行い、アナログ 1f-g を得た。 Scheme 2-4-3. 7’-アルキルアミノルシフェリン 1f, 1g の合成

2.5 フェニル、アルキル置換基を有するルシフェリンアナログの分光学的性質

2.5.1 生物発光(BL)

アミノルシフェリン1a とアナログ 1e-g について、リコンビナント Ppy (photinus pyralis) ルシフェラーゼを用いて生物発光(BL)スペクトルを測定した。pH 8.0 と 6.0 の GTA 緩衝液 中の条件において、室温でL-L 反応を行った(Figure 2-3-1)。前述の通りアミノルシフェリン 1a は pH に非依存の発光を示す。同様に 1e-g も pH 非依存性の発光を示すかを調査するた めに、pH 6.0 と 8.0 の両方の条件で測定した。確認のため、アミノルシフェリン 1a も含め て調査した。アミノルシフェリン1a 同様、フェニル、アルキルルシフェリンアナログ 1e-g は、pH 6.0 と 8.0 で同じ発光極大を持つスペクトルを示し、pH 非依存性の発光を示すこと が解った。発光強度は、以下に示す通り、置換基が大きくなるにつれて発光強度が減少する ことがわかった。

1a(H) > 1f(Me) > 1g(Et) > 1g(Ph)

発光極大波長は、1a と比べてフェニル体 1e では 6 nm の短波長シフトすることがわかり、 アルキル置換体では、1a と比べメチル体 1g では 7 nm の長波長シフト、エチル体 1g では波 長シフトはほとんど観測されなかった。発光極大波長は、フェニル基とアルキル基による共 役や超共役による影響を含む電子的な置換基効果によるものと、酵素内の活性部位の反応 場の極性環境の影響という 2 つの要因により制御されるため、以下の章にて発光波長制御 の要因に関する調査を行った。 N S H2N CN Me N S H2N Me S N COOH D-Cystein・HCl・H2O 250 mM SPB(PH= 8) MeOH Ar, r.t., 4 h 20 min, 19 % 1f 12 N S H2N CN Et N S H2N Et S N COOH D-Cystein・HCl・H2O 250 mM SPB(PH= 8) MeOH Ar, r.t., 1 h 40 min, 67 % 1g 13

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Figure 2-5-1. (a) pH = 6.0, (b) pH = 8.0 における 1a, 1e-g の生物発光スペクトル

2.5.2 電子吸収と蛍光 フェニル基とアルキル基の置換基効果による共役や超共役による電子的な影響を調査す るため、アミノルシフェリン1a と比較しながらアナログ 1e-g について、紫外可視吸収スペ クトル(Abs)及び、蛍光スペクトル(FL)を測定した。溶媒には、アセトニトリル、メタノール、 水をそれぞれ用いた。各溶媒に対する基質の濃度はそれぞれ1.0 × 10−5 mol/L に調整した。 先に述べた通り、生物発光における発光体はオキシルシフェリンであるが、置換基を有す るオキシルシフェリンの蛍光波長とルシフェリンの蛍光波長には相関があることが知られ ているため11、ルシフェリンアナログの蛍光を測定することで、生物発光波長制御の要因で ある置換基による電子的な効果を評価することとした。 N S H2N S NH COOH + ATP + O 2 Fluc Mg2+ N S H2N S N O+ hv + CO 2 + AMP + PPi R R N S H2N S NH COOH + ATP + O 2 Fluc Mg2+ N S H2N S N O+ hv + CO 2 + AMP + PPi R R

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Figure 2-5-2-I. 1a, 1e-g の紫外吸収スペクトル(Abs)、蛍光スペクトル(FL) 溶媒:アセトニトリルat 298 K

Figure 2-5-2-II. 1a, 1e-g の紫外吸収スペクトル(Abs)、蛍光スペクトル(FL) 溶媒:メタノールat 298 K

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Figure 2-5-2-III. 1a, 1e-g の紫外吸収スペクトル(Abs)、蛍光スペクトル(FL) 溶媒:水at 298 K

Table 2-5-2-I. 1a, 1e-g の紫外可視吸収特性(298 K)

Solvent [ET(30)*] λab / nm (ε / 104 dm3 mol−1 cm−1)¥ 1a (R=H) 1e (R=Ph) 1f (R=Me) 1g (R=Et) Acetonitrile [45.6] 364 (1.8) 369 (1.2) 370 (1.1) 369 (1.8) Methanol [55.4] 363 (1.7) 365 (1.1) 370 (1.1) 348 (1.5) Water [63.1] 353 (1.6) 350 (1.1) 347 (1.2) 348 (1.5) *E T(30): kcal mol−1 16。 ¥吸収極大波長(λab)と括弧内はモル吸光係数(ε / 104)。

Table 2-5-2-II. 1a, 1e-g の蛍光特性(298 K)

Solvent [ET(30)*] λfl / nm (Φf)¥ 1a (R=H) 1e (R=Ph) 1f (R=Me) 1g (R=Et) Acetonitrile [45.6] 470 (0.71) 482 (0.64) 478 (0.82) 478 (0.76) Methanol [55.4] 491 (0.93) 502 (0.75) 509 (0.87) 502 (0.88) Water [63.1] 522 (0.87) 537 (0.68) 520 (0.88) 533 (0.73) *ET(30): kcal mol−1 16 ¥蛍光極大波長(λfl)と括弧内は量子収率(Φf)。 紫外吸収スペクトルと蛍光スペクトルをFigure 2-5-2 に示し、データを Table 2-5-2 にまと めた。蛍光特性について、アミノルシフェリンアナログ1a, 1e, 1f, 1g の λfl値を比較すると、 1a が 470-522 nm、1e が 482-537 nm、1f が 478-520 nm、1g が 478-533 nm であり溶媒に依存 してそれぞれが幅を持つことがわかった。量子収率は、いずれの誘導体も 0.64 以上の高い 値であった。1a と比べて 1e の λabとλfl値が長波長シフトした要因は、ベンゾチアゾール部 位とフェニル基の共役による影響であると考えられる。1f, 1g の長波長シフトの要因は、ア

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22 ルキル基とベンゾチアゾール部位が超共役しているためと推察される。これは、フェニル基 とアルキル基がこれらの相互作用によって1e, 1f, 1g のフロンティア軌道のエネルギー準位 を変化させる役割を果たすことを意味している。 1a および 1e-g の λfl値は、溶媒の極性が高くなるにつれ、顕著に長波長シフトするソルバ トクロミズム性が観察された。 溶媒ごとに、長波長のものから順に並べると、アセトニトリル、メタノール、水でのデー タは、以下のようになる。 アセトニトリル:1e (Ph) > 1f (Me) = 1e (Et) > 1a (H) メタノール:1f (Me) > 1e (Ph) = 1g (Et) > 1a (H) 水:1e (Ph) > 1e (Et) > 1a (H) > 1f (Me) この結果から、置換基効果の他に、溶媒による水素結合の影響が敏感に働くことが示唆さ れる。酵素内においても微小な水素結合性の変化が発光波長に影響を及ぼす可能性がある。 さらに、1e-g の λfl値の溶媒依存性の変化は、λab値の変化よりも大きい。ハロゲン置換体 での評価と同様に、これらのアナログの励起一重項状態(S1)の方が基底状態(S0)よりも双極 子モーメントが大きく、溶媒の極性が高くなるにつれ、S1状態とS0状態のエネルギー差が 低エネルギーとなり、結果として蛍光の長波長シフトが起きる。 2.5.3 DFT 計算による評価 アミノルシフェリン 1a とアナログ 1e-g の分光学的性質とπ電子的性質の関連性を分析 するために、B3LYP/6-31+G(d)を用いて 1a および 1e-g の DFT および TD-DFT 計算を行った (Table 2-5-3)。

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Table 2.5.3. B3LYP/6-31+G(d)を用いた DFT および TD-DFT in MeCN の計算データ Compound (substituent) HOMO /eV LUMO /eV ΔEH−L a /eV Transitions b λ tr c/ nm (f) Configuration d,e 1a (R=H) -6.00 -3.05 2.96 S0 → S1 456 (0.61) H → L (0.69) 1e (R=Ph) -5.95 -3.04 2.91 S0 → S1 468 (0.52) H → L (0.70) 1f (R=Me) -5.93 -3.03 2.90 S0 → S1 468 (0.53) H → L (0.70) 1g (R=Et) -5.93 -3.03 2.90 S0 → S1 468 (0.54) H → L (0.70) a HOMO と LUMO のエネルギーギャップ。b励起エネルギーが最も低い励起一重項状態へのπ, π*遷移。 c遷移エネルギーから推定される波長。d励起の構成。e H、および L は、それぞれ HOMO、LUMO を示す。 すべてのアナログのS0→S1遷移は、HOMO→LUMO の電子遷移による π, π*遷移である。

HOMO と LUMO のエネルギー差(ΔEH-L)と計算された遷移エネルギーから推定される波長

tr)において、フェニル基導入による共役とアルキル基導入による超共役の影響により ΔE H-L値は小さくなり、λtr値は大きくなっている。これは、1e-g の λab値とλfl値が、1a よりも長

波長シフトしている実験結果をサポートしている。さらに、フェニル基とアルキル基の導入 による共役、超共役の影響により、LUMO 準位には大きな影響がないものの、HOMO のエ ネルギー準位が大きく上昇している。このため、エネルギー差であるΔEH-L値が増加する。

HOMO のエネルギー準位の上昇が大きい理由は、HOMO の電子分布が影響している。1a の 7’位の炭素とプロトンの間には、プロトンには電子分布がないため、節は存在しない。一方、 フェニル基の炭素とベンゾチアゾールの 7’位の炭素間、アルキル基の炭素とベンゾチアゾ ールの 7’位の炭素間には共役による軌道間相互作用により節が生じている。そのため軌道 が不安定化するため、フェニル体とアルキル体のアミノルシフェリンのHOMO 準位が上昇 する。 2.5.4 フェニル・アルキル導入型ルシフェリンの生物発光波長の考察

Figure 2-5-4-I. 蛍光スペクトル(in MeCN)と生物発光スペクトル(pH = 8.0)の比較

生物発光とアミノルシフェリンの蛍光を比較するため、それぞれのスペクトルをFigure 2-5-4-I に並列して示した。前述の通り、生物発光の極大波長の制御には、酵素内活性部位で

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24 の存在位置の違いによる分子環境の影響と基質の置換基の違いによる電子的な効果という、 大きく二つの要因が働いている。この2 つの観点で、生物発光の極大波長を評価した。 まず、フェニル体1e について考察する。生物発光波長は、1a に比べてフェニル基を 7’位 に導入すると6 nm 短波長シフトした。一方、溶液中では、1a に比べ、λab値とλfl値は長波 長シフトしていた。この結果は、1a に対して酵素内活性部位での反応位置が異なることを 意味し、より低極性な環境に移動していることを示唆する。もし、L-L 反応で生成したオキ シルシフェリン体の励起分子が、酵素内の活性部位内において、同じ存在位置をとっていれ ば、生物発光の極大波長も蛍光波長と同じ程度の長波長シフトが得られると予想されるか らである。この他に、酵素内の活性部位での立体障害により、ベンゾチアゾール環に対し、 フェニル基が直交して、共役が切れることも考えられる。この場合でも、超共役的な影響は 残ると予想され、存在位置の変化がより重要に出ると予想される。 次に、メチル体1f について考える。生物発光の極大波長は、1a に比べて 7’位にメチル基 を導入することで、7 nm 長波長シフトした。蛍光測定結果から、水中を除き、1a に比べて メチル体1f の λfl値は長波長シフトしており、生物発光の結果と合致する。従って、L-L 反 応でオキシルシフェリン体の励起分子を生成する酵素内の活性部位の位置が、1a とメチル1f でほぼ同じであることを示唆する。 エチル体1g については、1a と比べて、7’位にエチル基を導入しても生物発光波長はほと んど変化がなかった。一方、アミノルシフェリン1a に比べ、λfl値はいずれの溶媒中でも長 波長シフトしていた。この結果は、エチル体1g の酵素内活性部位での存在位置が、1a に比 べて低極性な環境に移動していることが考えられる。 ハロゲンの置換基導入では、酵素内では極性な環境に移動すると考えられるが、フェニル 基とエチル基を導入した場合では、低極性な環境に移動したとみられる。 これらの違いは、立体障害の働き方の違いによるものと推察する。ハロゲン置換基におい ては、立体障害は結合方向と原子半径による大きさしか作用しないが、エチル基とフェニル 基ではベンゾチアゾール環のπ平面からそれた方向にも立体障害が作用するため、酵素内 での存在位置の変化の仕方が異なっていることを示している。メチル基の場合は、ベンゾチ アゾール環のπ平面からそれた方向にも立体障害がかかるが、エチル基、フェニル基に比べ れば、置換基の大きさが小さいため、酵素内活性部位での存在位置の変化が小さいと予想さ れる。

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Figure 2-5-4-II. 各アナログでの酵素と基質の立体障害のかかり方の模式図

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26 アルキル置換基の導入効果として、先行研究より、天然型ルシフェリンと 7’-アリルルシ フェリンの生物発光スペクトルの違いが報告されている 22。天然型ルシフェリンでは、pH 依存性の発光波長変化を示しているが、7’-アリルルシフェリンは、pH 非依存性の発光を示 すことから、7’位へのアリル基導入がアミノルシフェリンと近い酵素活性部位での発光に誘 導することがわかる。つまり、7’-アリルルシフェリンは、アミノルシフェリンと同様に pH に依存せずに一定の酵素内活性部位で発光していると仮定できる。また、7’-アリルルシフ ェリンの発光波長は、天然型ルシフェリンの酸性条件の発光波長に近い。詳しく見ると、天 然型ルシフェリンの酸性条件の発光波長に比べ短波長シフトしていることから、アリル基 導入による立体障害が酵素内での存在位置を変化させ、天然型よりも低極性環境に移動さ せていると考えられる。これは、アミノルシフェリンにフェニル基やエチル基を導入した際、 酵素内の低極性環境に移動させることを支持する結果となる。 また、Navizet らによる MD 法を用いた QM-MM 計算による、オキシルシフェリンと Fluc の位置関係を示したドッキングシミュレーションのデータが報告されている(Ref)(Figure 2-5-4-IV)。Fluc 活性部位内で、天然型オキシルシフェリンでは、ベンゾチアゾール環の 6’位 のオキシド基は水を経由したSer314 との水素結合による相互作用を有するが、7’-アリルオ キシルシフェリンでは、6’位のオキシド基と Ser314 との相互作用がなくなり、Ser314 から 離れた位置にずれていることが予想されている。 また、天然型オキシルシフェリンより7’-アリルオキシルシフェリンの方が Arg218、Ser347、 Gly246 との距離が近くなっている。このシミュレーションの結果は、アリル基の立体障害 により、酵素内での存在位置変化が起き、分子環境の変化に影響を及ぼしていることを支持 し、その分子環境が低極性になっていると説明できる。

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3 章 結語

L-L 反応の発光波長制御には、L-L 反応で生成するオキシルシフェリンの S1状態が存在 する酵素内活性部位の位置での分子環境の性質が重要な役割を持つ。本研究では、アミノル シフェリン1a を基準化合物として、そのベンゾチアゾール環の 7’位に置換基導入したアミ ノルシフェリンアナログを有機合成し、その生物発光特性と分光学的性質を調査すること で、発光色調整のメカニズム解明に取り組んだ。特に、置換基による電子的効果に加え、酵 素内活性部位における S1 状態のアミノオキシルシフェリンの存在位置に対し、7’位の置換 基による立体障害の影響を調べた。、 ハロゲン置換基(F, Cl, Br)を導入した 1b-d の場合、アミノルシフェリン 1a に比べ、λbl値 は、若干短波長シフトした。溶液中でのλfl値は、1a に比べて、より大きく短波長シフトし ていた。従って、λbl値の置換基依存性は、発光体の励起分子の酵素内活性部位での存在位置 が1a に比べ、より極性の高い環境に誘導されたことを示す。 フェニル置換体1e の λbl値は、アミノルシフェリン1a に比べて若干短波長シフトした。 一方、溶液中での1e の λfl値は、1a に比べて長波長シフトしており、生物発光の結果は、酵 素内活性部位での発光体の励起分子の存在位置が1a の場合より低極性な環境に移動したこ とを支持する。 メチル置換体1f の λbl値は、アミノルシフェリン1a に比べて長波長シフトした。溶液中 での1f の λfl値も、1a に比べて長波長シフトしており、この結果は、酵素内活性部位での発 光体の励起分子の存在位置が1a と類似していることを示している。 一方、エチル置換体1g の λbl値は、アミノルシフェリン1a とほぼ同じ波長であった。一 方、溶液中のλfl値は、1a に比べて長波長シフトしていた。生物発光の結果は、酵素内活性 部位での発光体の励起分子の存在位置が1a の場合よりも低極性な環境に誘導されたことを を示す。 以上の結果から、1a のベンゾチアゾール環の一定の位置に置換基導入を行っても、立体 障害の働き方の違いによって、励起状態のオキシルシフェリン体の酵素内活性部位での存 在位置が変化することを見出した。具体的には、ハロゲン置換基のように立体障害が、結合 方向のみ且つ共有結合半径による大きさしか作用しない場合は極性の高い環境に誘導され る。一方、フェニル基およびエチル基の場合は、ベンゾチアゾール環のπ平面からそれた方 向にも立体障害がかかるため、励起状態のオキシルシフェリン体の酵素内活性部位での存 在位置はより低極性な環境になる。 本研究により、L-L 反応において、ルシフェリン分子の微小な大きさの変化や立体障害の 方向が発光波長制御に影響を及ぼすことがわかり、基質と酵素の相互作用を発光波長の変 化から考察することができた。今後、本研究で得られた情報を基に X 線結晶構造解析やド ッキングシミュレーションのデータも得ることで、ホタル生物発光の波長制御メカニズム 解明へとつながる。

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29 今後の展開としては、7’位と異なる向きに立体障害がかかると予想される 4’位や 5’位に 置換基導入したアミノルシフェリンアナログを合成し、分光学的調査をすれば、置換基の立 体障害の働き方が、生物発光波長に及ぼす影響がさらに明らかになり、ホタル生物発光機構 の解明につながるであろう。 Figure 3-1. 今後の研究展開

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実験の部

1. 実験機器と方法

1.1 機器分析 ・ 核磁気吸収スペクトル測定(NMR) 日本電子社製 JEOL ECA-500 型装置(500MHz)を用いて測定した。表記は“1H-NMR(測 定周波数, 測定溶媒): δ 化学シフト値(多重度, スピン結合定数, 水素数)”と記した。化学 シフト値は、テトラメチルシランを内部標準(δ = 0.0)として、ppm で表した。多重度は、 s(一重線)、d(二重線)、m(多重線)などで表記し、幅広いシグナルには br と記した。NMR 測定用の溶媒には以下に示したものをそのまま用いた。 ・CDCl3 関東化学株式会社製, 99.8 ATOM%D、0.03% TMS ・methanol-d4 関東化学株式会社製, 99.8 ATOM%D、0.03% TMS ・ 質量スペクトル測定(MS) エレクトロンスプレーイオン法(ESI) 日本電子社製 JMS-T100 AccuTOF を用いて、エレクトロンスプレーイオン化法(ESI)に より測定した。なお、装置の設定は脱溶媒ガス250℃、オリフィス1電圧 80℃、ニードル 電圧2000 V、リングレンズ電圧 10 V、オリフィス1電圧 85 V、オリフィス2電圧 5 V と した。サンプル送液はインフュージョン法で行ない、流速20 μl / min とした。“MS(ESI) m/z 質量数(M + 付加イオン)”と記載した。 ・ マトリックス支援レーザー脱離イオン化法(MALDI) 日本電子社製JMS-S3000 SpiralTOF™-plus を用いて、マトリックス支援レーザー脱離イオ ン化法(MALDI)を用いた。マトリックスには、α-シアノ-4-ヒドロキシケイ皮酸を用い た。この測定は、牧研究室の伊藤喜之研究員に依頼した。

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31 ・ 紫外可視吸収スペクトル測定(UV)

Agilent Technologies 社製 Varian Cary 60 分光光度計(走査速度 600 nm /分;データ間隔 1

nm)で測定した。測定には UV 測定用 25±1℃の石英キュベット(1 cm の経路長)を用いた。 測定用の溶媒を使用し、セル中の試料溶液は1.0 × 10−5 mol/L の条件で行った。セルホル ダーには 25℃の恒温水を循環させた。恒温水の循環には、井内盛栄堂社製 低温恒温水 槽LTB-125 を用いた。 ・ 蛍光スペクトルと量子収率測定(FL) 浜松ホトニクスQuantaurus-QY 絶対 PL 量子収率測定装置を用いて測定した。測定に はFL 測定用 25±1℃の専用の枝付石英キュベット(1 cm の経路長)を用いた。UV 測定の ときと同様に、測定用の溶媒を使用し、セル中の試料溶液は1.0 × 10−5 mol/L の条件で行 った。 ・ 生物発光測定(BL)

ATTO AB-2200 ルミノメーターを用いて生物発光強度を測定し、ATTO AB-1850 分光 光度計(データ間隔 1 nm)で生物発光スペクトルを測定した。測定条件の詳細は 1-6. 生 物発光測定(BL)に記載した。

・ 密度汎関数理論(DFT)計算

Gaussian09 プログラム(Rev. D.01)を用いて行った。DFT には、6-31G+(d)ベースの B3LYP 関数を条件として計算した。分子グラフィックスは、GaussView, Version 5 を使用 した。

(36)

32 1.2 クロマトグラフィー

・ 分析用薄層クロマトグラフィー(TLC)

TLC Plate- Wako、Silicagel 70F254、厚さ0.25 mm (20 cm×TLC Plate20 cm)を適正サイズに

細かくカットして用いた。化合物の検出は、UV (254 nm, 365 nm)照射、および発色試薬 に浸漬した後、加熱発色させることで行った。 【発色剤】 ・p-アニスアルデヒド: p-アニスアルデヒド 13 ml と酢酸 5 ml を、エタノール 478 ml に溶かし、濃硫酸18 ml を添加したものを用いた。 ・リンモリブデン酸溶液: リンモリブデン酸 5 g をエタノール 100 mL に溶かしたもの を用いた。 ・ニンヒドリン溶液: ニンヒドリン0.3 g を酢酸 3 ml、ブタノール 100 ml に溶かした ものを用いた。 ・ 分取用薄層クロマトグラフィー(PTLC) Analtech 社製 TLC Plate、Silicagel GF、厚さ 0.5 mm or 2.0 mm を用いた。“[TLC プレー トの横の長さ(mm)×縦の長さ(mm)×厚さ(mm), 展開溶媒]×枚数”と記した。 ・ シリカゲルカラムクロマトグラフィー 関東化学社製シリカゲル60 N (球状、中性)、粒子径 63-210 µm を用い、“[充填剤の重 さ, カラムの直径(φ), 展開溶媒]”と記した。 ・フラッシュクロマトグラフィー

山善社の可変波長型紫外線吸収検出器Prep UV-Vis10V、送液ポンプ NO. 580S を用いた。 山善社のユニバーサルカラム(シリカゲル: 粒形 30 µM)とインジェクトカラム(シリカゲ ル:粒形 70 µM)を用い、“[展開溶媒]”と記載した。

(37)

33 1.3 基本操作 ・ 有機合成の基本操作 溶液の濃縮にはアスピレータの減圧下、ロータリーエバポレーターを用いて行った。痕跡量 の溶媒の除去は、冷却器で冷却したトラップを介して真空ポンプを用いて行った。溶媒の混 合比はすべて体積比で記した。反応溶液の加熱にはシリコン油を入れた油浴を用いた。反応 溶液の冷却は冷媒を満たしたデュワー瓶に反応溶液を浸して行った。0℃前後では氷水を冷 媒として用いた。 有機合成用の溶媒 【合成溶媒】 ・酢酸エチル ・ヘキサン ・クロロホルム ・メタノール ・エタノール ・アセトニトリル ・テトラヒドロフラン(THF) ・ジクロロメタン ・1,4-ジオキサン ・ベンゼン ※上記の溶媒に関しては、関東化学株式会社製 一級溶媒を用いた。 有機合成には、以下の試薬を使用した。 【合成試薬】 ・濃硫酸:和光純薬工業株式会社製 ・濃硝酸:和光純薬工業株式会社製 ・シアン化ナトリウム:和光純薬工業株式会社製 ・1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン:関東化学株式会社製 ・亜鉛:和光純薬工業株式会社製 ・塩化アンモニウム:関東化学株式会社製 ・Selectfluor®:アルドリッチ社製 ・塩化スルフリル:和光純薬工業株式会社製 ・N-ブロモスクシンイミド:関東化学株式会社製 ・チオ硫酸ナトリウム:和光純薬工業株式会社製 ・炭酸ナトリウム:関東化学株式会社製

(38)

34 ・テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0):東京化成工業株式会社製 ・フェニルボロン酸:和光純薬工業株式会社製 ・D-システイン塩酸塩・一水和物:和光純薬工業株式会社製 ・炭酸カリウム:和光純薬工業株式会社製 ・りん酸二水素ナトリウム:関東化学株式会社製 ・りん酸水素二ナトリウム:関東化学株式会社製 ・THF(脱水 super):関東化学株式会社製 ・臭化メチルマグネシウム、テトラヒドロフラン溶液:関東化学株式会社製 ・臭化エチルマグネシウム、テトラヒドロフラン溶液:関東化学株式会社製 ・2,3-ジクロロ-5,6-ジシアノベンゾキノン(DDQ):関東化学株式会社製 ・セライト : 和光純薬工業株式会社製 Celite 545 をそのまま用いた。 ・12M 塩酸:和光純薬工業株式会社製 1.4 紫外可視吸収スペクトルの測定 (UV) ・ アミノルシフェリンアナログ1a-g の紫外可視吸収スペクトル測定 アミノルシフェリンアナログ1a-e, g を精密に秤量し、それぞれアセトニトリルに溶解し て1.0×10-4 M のアセトニトリル溶液を調整した。1f は、アセトニトリルに溶解しなったた め、メタノールで調製した。これから1 ml のホールピペットを用いて複数の 10 ml メスフ ラスコに1.0 ml ずつ移した。移し取った 10 ml メスフラスコを真空デシケーター中にて液体 窒素冷却のトラップを装着した真空ポンプ(約 1 mm Hg)を用いてアセトニトリルまたはメ タノールを除去した。これを各種溶媒(CH3CN、MeOH、Water)を用いて 10 ml にメスアップ し、1.0×10-5 M の各種溶液を調整した。測定条件として、測定間隔 200-700 nm、スキャン速 度600 nm/min、データ間隔 1.0 nm、デュアルビーム、ベースライン補正をしてスペクトル 測定した。測定前のベースライン測定は各種溶媒を2.0 ml を用いて測定した。 1.5 蛍光スペクトル測定 (FL) ・ アミノルシフェリンアナログ1a-g の蛍光スペクトル測定 アミノルシフェリンアナログ1a-e, g を精密に秤量し、それぞれアセトニトリルに溶解し て1.0×10-4 M のアセトニトリル溶液を調整した。1f は、アセトニトリルに溶解しなったた め、メタノールで調製した。これから1 ml のホールピペットを用いて複数の 10 ml メスフ ラスコに1.0 ml ずつ移した。移し取った 10 ml メスフラスコを真空デシケーター中にて液体 窒素冷却のトラップを装着した真空ポンプ(約 1 mm Hg)を用いてアセトニトリルまたはメ タノールを除去した。これを、各種溶媒(CH3CN、MeOH、Water)を用いて 10 ml にメスアッ プし、1.0×10-5 M の各種溶液を調整した。 蛍光スペクトルと蛍光量子収率の測定は、専用の枝付石英キュベットに各種溶媒を約2 ml 入れ、絶対PL 量子収率測定装置の基本条件(波長分解能< 2 nm,受光素子チャンネル数 1024

(39)

35 ch)で測定した。 ・ 分光測定用の溶媒 【分光測定用溶媒】 ・アセトニトリル ・メタノール ・蒸留水 ※上記の溶媒に関しては、関東化学株式会社製 けい光分析用を用いた。 1.6 生物発光測定 (BL) ・アミノルシフェリンアナログ1a-g の生物発光スペクトル測定 測定溶媒として、GTA 緩衝液(0.15 M、pH 8.0 と pH 6.0 の 2 種類)を用いた。30 μM のアミ ノルシフェリンアナログ1a-g 溶液(GTA 緩衝液)、20 μM Ppy ルシフェラーゼ溶液(10%グリ セロールを含むGTA 緩衝液)、0.10 M 硫酸マグネシウム溶液(GTA 緩衝液)、1.0 mM ATP 二 ナトリウム塩溶液(GTA 緩衝液)を pH 8.0 と pH 6.0 の 2 種類ずつ用意した。基質は、緩衝液 への溶解性が悪いため、3 mM DMSO ストック溶液を作製した。生物発光測定するために、 ルシフェリンアナログ溶液5 μL、Ppy ルシフェラーゼ溶液 5 μL、硫酸マグネシウム溶液 5 μL と GTA 緩衝液 35 μL をポリスチレンキュベットに入れた。その混合物にマイクロシリン ジでATP 二ナトリウム塩溶液 50 μL を添加することにより L-L 反応を開始させ、AB-1850 ルミフルキャプチャーで生物発光スペクトルを測定した。最終濃度は、ルシフェリンアナロ グ15 nM、Ppy ルシフェラーゼ 1.0 μM、硫酸マグネシウム5.0 mM、ATP 0.5 mM である。以 上の操作をTable 1-6 に簡単にまとめた。 Table 1-6. アミノルシフェリンアナログ 1a-g の測定条件 濃度 体積 最終濃度 GTA (pH 8.0 と 6.0) 0.15 M 35 μL ― 基質 30 μM 5 μL 1.5 µM 酵素 20 μM 5 μL 1.0 μM MgSO4 0.10 M 5 μL 5.0 mM ATP 1.0 mM 50μL 0.5 mM ・ 生物発光測定用の試薬 ・ルシフェラーゼ(北米産ホタル Photinus pyralis 由来)は以下のものを用いた。 Promega 社製のリコンビナント(組み換え型)酵素(カタログ番号 E1701) ・GTA 緩衝液 2-アミノ-2-メチル-1.3-プロパンジオールと 3.3-ジメチルグルタル酸と

(40)

36 2-アミノ-2-ヒドロキシメチル-1.3-プロパンジオールをモル比 1:1:1 で混ぜ合わせて 溶液にした。 ・ATP 二ナトリウム塩溶液(GTA 緩衝液) Sigma 社製 ATP 二ナトリウム塩水和物を用いた。 ・硫酸マグネシウム溶液(GTA 緩衝液)、 和光純薬工業社製の硫酸マグネシウム七水和物を用いた。

(41)

37

合成の部

2-クロロベンゾチアゾールのニトロ化 300 ml ナスフラスコに 2-クロロベンゾチアゾール 9.0 ml(69 mmol)、濃硝酸 24 ml、濃硫 酸90 ml を入れ、0℃にてアルゴン雰囲気下で 2 時間撹拌した。反応終了後、500 ml の氷入 りビーカーに反応液を投入し、生じた沈殿物を水:メタノール(=1:1)の混合溶媒で洗いなが ら、ブフナーロートでろ過を行った。ろ液のpH が 4 になるまで、ろ紙上の固体を水で洗浄 した。得られた固体を1 日乾燥させた後、固体を 80℃に加熱した酢酸エチルに溶解させ、 再結晶を行った。得られた結晶をヘキサン:酢酸エチル(=1 : 1)で洗浄しながらろ過し、2-クロロ-6-ニトロベンゾチアゾール(6.00 g, 28.2 mmol, 41%)を白色針状結晶として得た。 1H-NMR (500 MHz, CDCl 3) δ (ppm) 8.75 (d, J = 2.3 Hz, 1 H), 8.39 (dd, J = 9.2, 2.3 Hz 1 H), 8.08 (dd, J = 8.6 Hz, 1 H). m/z (MALDI, CHCA) Found: 214.9618 ([M+H]+). C

7H4ClN2O2S requires 214.96765.

HNO

3

, H

2

SO

4

0 ℃, Ar, 2 h

N

S

Cl

N

S

Cl

O

2

N

(42)

38 クロロニトロ体のシアノ化 500 ml ビーカーにシアン化ナトリウム 715 mg(14.6 mmol)、蒸留水 30 ml を入れ、シアン化 ナトリウム水溶液を調製した。500 ml ナスフラスコに 2-クロロ-6-ニトロベンゾチアゾール 2.91 g(13.6 mmol)、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)251 mg(2.24 mmol)、ア セトニトリル300 ml を入れ、ここに調製したシアン化ナトリウム水溶液を加えた。反応液 を室温にてアルゴン雰囲気下で3.5 時間撹拌した後、0.3 M 塩化鉄(III)水溶液 10 mL を加 えてクエンチした。反応溶液に水30 ml を加え、生成物を酢酸エチル 300 ml を用いて抽出 した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、減圧濃縮し、2-シ アノ-6-ニトロベンゾチアゾール(2.58 g, 12.6 mmol, 92%)を黄色粉末として得た。 1H-NMR (500 MHz, CDCl 3) δ (ppm) 8.95 (d, J = 2.3 Hz, 1 H), 8.52 (dd, J = 9.2 Hz, 2.3 Hz, 1 H), 8.38 (d, J = 9.2 Hz, 1 H). MS (ESI): m/z Found: 203.98747([M-H]-). C 8H2N3O2S1 requires 203.98677.

(43)

39 ニトロニトリル体の還元 500 ml ナスフラスコに 2-シアノ-6-ニトロベンゾチアゾール 223 mg(1.09 mmol)、メタノー ル40 ml、塩化アンモニウム 696 mg(13.0 mmol)を入れ、5 分間撹拌した後、亜鉛 1.61 g (24.6 mmol)を加え、室温、アルゴン雰囲気下で 10 分間撹拌した。反応液をセライトろ過 し、ろ液を減圧濃縮した。得られた固体をヘキサン洗浄し、2-シアノ-6-アミノベンゾチアゾ ール(86.4 mg, 0.49 mmol. 45%)をオレンジ粉末として得た。 1H-NMR (500 MHz, CDCl 3) δ (ppm) 7.95 (d, J = 9.2 Hz, 1H), 7.08 (d, J = 2.3 Hz 1H), 6.96 (dd, J = 8.6 Hz, 2.3 Hz, 1H), 4.13 (br, 2H). MS (ESI): m/z Found: 176.02742 ([M+H]+). C 8H6N3S1 requires 176.02824.

N

S

CN

O

2

N

N

S

CN

H

2

N

Zn, NH

4

Cl

MeOH, Ar, r.t., 0.5 h

(44)

40 アミノニトリル体のフッ素化 20 ml ナスフラスコに 2-シアノ-6-アミノベンゾチアゾール 53.7 mg(0.306 mmol)を入れ、 アセトニトリル5 ml、テトラヒドロフラン 2.5 ml に溶解し、室温、アルゴン雰囲気下でこ こに Selectfluor® 158 mg(0.447 mmol)を加え、5.5 時間撹拌した。反応溶液に水 20 ml を 加え、生成物を酢酸エチル(50 ml x 2 回)で抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水 硫酸ナトリウムで乾燥した後、減圧濃縮した。得られた粗生成物をカラムクロマトグラフィ ー[シリカゲル 20.3 g クロロホルム] にて分離、精製し、6-アミノ-2-シアノ-7-フルオロベン ゾチアゾール(14.1 mg, 3.38 mmol, 24%)を黄色結晶として得た。 1H-NMR (500 MHz, CDCl 3) δ (ppm) 7.82 (d, J = 8.6 Hz, 1H), 7.09 (t, J = 8.6 Hz, 1H), 4.16 (br, 2H). MS (ESI): m/z Found: 194.01922 ([M+H]+). C 8H5F1N3S1 requires 194.01882. N S H2N CN + N N F ClH2C 2BF4 -MeCN/THF Ar, r.t., 5.5 h N S H2N CN F

Figure 2-3-1. (a) pH = 6.0, (b) pH = 8.0 における 1a-d の生物発光スペクトル
Figure 2-3-2-I. 1a-d の紫外吸収スペクトル (Abs) 、蛍光スペクトル (FL)
Figure 2-3-2-III. 1a-d の紫外吸収スペクトル (Abs) 、蛍光スペクトル (FL)  溶媒:水   at 298 K
Table 2-3-3-I. B3LYP/6-31+G(d) を用いた DFT および TD-DFT の計算データ  Compound  (substituent)  HOMO /eV  LUMO /eV  ΔE H−L  a/eV
+7

参照

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