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訪問入浴サービスに対して対象者が持つ思いや期待すること〜訪問入浴サービスの質の向上を目指す〜

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Academic year: 2021

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(1)勇美記念財団 2017 年度在宅医療助成研究 完了報告書. 【研究テーマ】 訪問入浴サービスに対して対象者が持つ思いや期待すること~訪問入浴サービスの質 の向上を目指す~. 【申請者】 氏名:桑原. 唯. 所属: アサヒサンクリーン株式会社. 在宅介護センター. 天理. 連絡先住所: 〒632-0016 奈良県天理市川原城町 875 メモリーホーム第一ビル 101 〔TEL〕(0743)63 -4126 〔FAX〕(0743)63 -4130 〔E-Mail〕yui_kuwahara111@yahoo.ne.jp 平成 30 年 9 月 30 日提出.

(2) 【本研究の目的】 日本人は、文化的背景から身体が清潔かどうかはその人の精神を示すものと捉え、身体を きれいに保つことは社会の発展のレベルがある程度反映されると考えている。日本人にと って、入浴をすることは生活習慣であるばかりではなく日本の文化となっている。また、入 浴には心理的なリラックス効果や爽快感を得ることができ、身体的には温熱効果による血 液循環の促進がある。医療では、全身の皮膚状態の観察、浮力によるリハビリテーション効 果もあることがわかっている。 高齢化の進む現在、要介護・要支援認定者数も増加し、訪問入浴サービスを受ける対象者 も年々増加している。訪問入浴サービスとは、介護保険法により要介護者の居宅を訪問し、 入浴を目的に浴槽を提供して行われるものである。このサービスは、看護職1名以上、介護 職2名以上で行い、そのうち 1 名が常勤職員であることが介護保険法で定められている。 訪問入浴サービスでは、病院や施設で入浴を許可されない対象でも、対象者自身や家族の ニーズがあり、医師の許可があれば、そのサービスをうけることが可能である。実際に、何 年も入浴できていなかった対象者が、訪問入浴サービスの利用で入浴が可能になったケー スは何例もある。研究者も入浴でき大変喜ばれる場面を何度も体験しており、その姿を見て 介護者である家族も喜んでもらえることが多い。 訪問入浴サービスを主に行う事業所は、平成 27 年度で 2032 か所(平成 27 年厚生労働 省)であるが、年々減少傾向にあることが報告されている。その理由として、サービスを提 供する人件費が介護報酬のほとんどを占めており、事業経営のために訪問件数の確保と他 事業所と連携するなどの努力が行われている。それに伴い、経験のある職員の確保が困難に なり、対象者と継続した関わりを持たない職員が訪問するという現状がある。 訪問入浴サービスにおいて、看護職の役割は対象者が入浴できる状態であるかを判断す ることである。訪問入浴サービスでは、医療度の高い対象者が多く、現在の身体的状況を的 確にアセスメントし、さらに高度な処置を行う技術やその場その場の臨機応変な対応も必 要になる。しかし、現在、経験のある常勤の看護師の確保が困難で、日雇い派遣看護師でサ ービスを提供しているのが現状である。 したがって、日によっては看護師の経験数や技術、対応にばらつきがあり、対象から求め られているサービスの提供が困難であることを実感している。しかし、実際、訪問入浴サー ビスを受ける対象者の思いについての研究や調査を行ったものは見当たらない。 入浴本来がもつその人の習慣や価値観を満たし、ある一定レベルの援助が提供でき、今後 の訪問入浴サービスの質の向上につなげるために、対象者また家族の訪問入浴サービスに 対する思いや期待について把握する必要があると考える。.

(3) 【研究方法】 1. 研究デザイン インタビュー対象の発言をデータとする質的記述研究デザインでおこなった。 2. 面接日時と場所 面接は、対象者の自宅で対象者と家族の都合が良い日を選択してもらい研究者が訪 問した。場所は、対象者のインタビューはベッドサイド、家族のインタビューは対象 者の声が聞こえる範囲で話し声が聞き取れない隣室で行った。 3. 対象者 訪問入浴サービスを利用し、初回の入浴ではなく、言語コミュニケーションが可能で、 研究参加の同意を得られた対象者3名、またその家族介護者3名を対象とした。 4. インタビューの方法 訪問入浴対象者と家族に対して、訪問入浴を利用に対する思いや期待していることに ついて半構造化インタビューを行った。インタビューの内容は、 “はじめて訪問入浴を 利用したときどのように思ったか” “現在、訪問入浴において問題点と感じていること はあるか” “訪問入浴で一番よいと思うところはなにか” “今後、訪問入浴に期待するこ とは何か”について自由に回答してもらった。インタビューを行うにあたり、6名の対 象者と家族全員に録音の依頼をした結果、5名の許可はえられたが1名は拒否したた め面接中に適宜メモを取り、面接終了直後にメモの内容を整理した。インタビュー終了 後、録音内容およびメモ内容を逐語録として紙媒体に起こした。また、対象の背景を把 握するためにカルテから、介護度、家族背景、既往歴、入浴の利用状況などの情報を収 集した。 5. 分析方法 対象者、家族のそれぞれの逐語録より、訪問入浴に対しての思いが表出されている語り の部分を意味のあるまとまりでコード化した。コード化したものから意味内容が同類の ものを集めてサブカテゴリー化し、更にカテゴリー化した。データ分析の過程では質的 研究のスーパーバイズを受けながら進めた。.

(4) 6. 期間 2018 年 3 月~2018 年 8 月. 7. 倫理的配慮 研究者は、対象者および家族に対し研究の趣旨と内容、研究の参加協力は自由意志で 有ること、利益・不利益はないこと、個人情報を保護すること、データの保管と管理は 厳重にすること、結果を公表すること、研究終了後、データは破棄することを明記した 文書を口頭で説明し、書面にて同意を得た。本研究は研究者が所属する大学の倫理委員 会の承認を得ておこなった。. 【結果】 1. 対象者の概要 研究参加の同意が得られた対象者は3名とその家族3名であり、その概要は表1に 示すとおりである。面接時間は 12 分から 33 分であった。 2. 分析結果 データ化し分析を進めた結果、対象者、家族ともに4つのカテゴリーが抽出された。こ のカテゴリーを表 2・3 に示す。以下、【. 】がカテゴリー、《. 》がサブカテゴリーを. 示す。 (対象者) 【適切なケアを受けられないことに対する不満】 これについては、《看護師によってケアや対応が粗雑なことに不満がある》《同じ職員 が来ないため、信頼関係が築きにくい》《看護師に頼みたいことがあるが時間が限られて いて言いにくい》《職員によってケアや対応が粗雑になるので不満がある》《訪問入浴を 利用する前に説明が不十分だったため、利用できるか不安があった》が含まれた。 【訪問入浴サービスのケアやシステムに対する要望と期待】 これについては、《訪問入浴の看護師は医療行為を必要なときは行ってほしい》《訪問 入浴の設備に対して不満や要望がある》《入浴の時間は希望や環境に合わせて考慮してほ しい》《今までの入浴習慣と同じように入浴したい》が含まれた。.

(5) 【適切なケアや職員の対応に対する満足感】 これについては、《看護師の現在の対応で満足している》《どの職種の職員であっても 同じケアをしてくれる》《現在の訪問入浴の所要時間や設備は適切である》《現在の訪問 入浴サービスに対して満足している》《清拭をしてもらうより、入浴する方が満足する》 が含まれた。 【ケア中に職員と話すことに対する満足感】 これについては、《訪問入浴では色々な職員と話すことができることが楽しみである》 《(病院やデイサービスと比べ)訪問入浴ではコミュニケーションを入浴中に行う》が含 まれた。 (家族) 【適切なケアをうけられないことに対する不満】 これについては、《看護師によってケアが統一されていないことに対する不満がある》 《利用前に入浴方法の説明が不足していたため不安があった》《職員によってケアが粗雑 であることへの不満がある》が含まれた。 【訪問入浴サービスに対する期待と要望】 これについては、《環境や体調によって希望にあわせた入浴時間を提供してほしい》 《今までの入浴と同じ物を使ってほしい》が含まれた。 【適切なケアや職員の対応に対する満足感】 これについては、《現在の訪問入浴の看護師のケアや技術に満足している》《職員と話 すことで外の情報が知ることもでき、楽しくサービスをうけることができている》《職員 の対応や設備に満足していている》が含まれた。 【訪問入浴の看護師が医療行為をできないことに対する不満】 これについては、《訪問入浴の看護師も必要なときは医療行為を実施してほしい》《訪 問入浴の看護師が適切な医療対応ができないのなら必要ない》が含まれた。.

(6) 表1. 対象者属性. 年齢. 性別. 入浴利 用. 疾患、治療. 身体状況. 介護 者. 介護度. 下肢麻痺、手指巧緻性な 1 40 代. 男性. 3年. 脊髄損傷. し 尿道留置カテーテル. 母. 要介護5. 妻. 要介護4. 妻. 要介護5. 両踵褥瘡 非小細胞肺がん 2 60 代. 男性. 8 ヶ月. (末期) 転移性胸髄腫瘍、. 下肢麻痺. 化学療法. 3 80 代. 糖尿病、慢性腎不. 両下肢膝下切断. 全、透析. ペースメカー. 男性. 7年. 年齢. 性別. 仕事. 1 60 代. 女性. なし. あり、夫、義両親. なし. 2 60 代. 女性. あり. なし. なし. 3 70 代. 女性. なし. なし. 心疾患. 家族 その他の家族の同 居. 疾患.

(7) 表2. 対象者のカテゴリー. カテゴリー. サブカテゴリー 看護師によってケアや対応が粗雑なことに不満がある 同じ職員が来ないため、信頼関係が築きにくい. 適切なケアを受けられ ないことに 対する不満. 看護師に頼みたいことがあるが時間が限られていて言いにくい 職員によってケアや対応が粗雑になるので不満がある 訪問入浴を利用する前に説明が不十分だったため、利用できるか不安があ った. 訪問入浴サービスのケ. 訪問入浴の看護師は医療行為を必要なときは行ってほしい. アやシステムに対する. 訪問入浴の設備に対して不満や要望がある. 要望と期待. 入浴の時間は希望や環境に合わせて考慮してほしい 今までの入浴習慣と同じように入浴したい 看護師の現在の対応で満足している. 適切なケアや職員の対. どの職種の職員であっても同じケアをしてくれる. 応に対する. 現在の訪問入浴の所要時間や設備は適切である. 満足感. 現在の訪問入浴サービスに対して満足している 清拭をしてもらうより、入浴する方が満足する. ケア中に職員と話すこ とに対する 満足感. 訪問入浴では色々な職員と話すことができることが楽しみである (病院やデイサービスと比べ)訪問入浴ではコミュニケーションを入浴中 に行う.

(8) 表3. 家族のカテゴリ. ー カテゴリー. サブカテゴリー. 適切なケアをうけられ. 看護師によってケアが統一されていないことに対する不満がある. ないことに. 利用前に入浴方法の説明が不足していたため不安があった. 対する不満. 職員によってケアが粗雑であることへの不満がある. 訪問入浴サービスに対. 環境や体調によって希望にあわせた入浴時間を提供してほしい. する 期待と要望. 今までの入浴と同じ物を使ってほしい 現在の訪問入浴の看護師のケアや技術に満足している. 適切なケアや職員の対 応に対する 満足感. 職員と話すことで外の情報が知ることもでき、楽しくサービスをうけるこ とができている 職員の対応や設備に満足していている. 訪問入浴の看護師が医. 訪問入浴の看護師も必要なときは医療行為を実施してほしい. 療行為を できないことに対する. 訪問入浴の看護師が適切な医療対応ができないのなら必要ない. 不満. 【考察・まとめ】. 研究の計画段階では、訪問入浴の看護師は日によって看護師の経験数や技術、対応 にばらつきがあり、対象から求められているサービスの提供が困難であるため、一定 のレベルの援助が提供できていないことが対象や家族の不満につながっていると考え ていた。実際にそのような不満もあったが、新たに職員との「会話」に対象者や家族 も楽しみや満足感を持っていることがわかった。田中らは「清潔援助では、患者は人 前で肌を露出し、他人に身をゆだねることになるため、看護師は倫理的な姿勢で接す ることになる」と述べている。このように、入浴は対象のプライバシーの配慮が高い 援助であり、そして倫理的な姿勢で対応することが対象および家族との信頼関係を築 く中で「会話」が重要なツールであったと考えられる。 現在、訪問入浴は、介護行為に位置づけられており、医師から医行為に対して指示を 受けるシステムがないため、訪問入浴の看護師は医行為を制限されている(厚生労働 省、2005)。しかし、対象者や家族から看護師は病棟看護師や訪問看護師との違いは ないため、医行為を要求されることが多く、信頼関係を考えると断り切れないのが現 状である。今回の研究でも、対象者および家族から医療行為を要求するカテゴリーも 抽出された。特に、医療行為は家族介護者の介護負担にもつながるため対象者に比べ.

(9) 家族から多くのコードが抽出された。今後、超高齢社会を目前に今後さらに医療度の 高い在宅療養者の増加が予想され、在宅介護(介護保険)の現場で医行為が必要性は 増大し、訪問入浴サービスにおいても看護師による医行為の提供が要求されると考え られるため、対象者や家族のニーズにあった制度の改正が要求されるのではないかと 考えられる。 今回、対象者と家族とそれぞれ別に分析を行ったが、対象者では訪問入浴にたいして 満足に感じる項目が家族より多く抽出された。これは、入浴が清潔ケアは本質的なニ ードを満たすケアであり、また日本人の文化的背景でもある入浴は対象が在宅生活を 送る上で欠かせないケアであるのではないかと考えられる。 今回の研究では、言語コミュニケーションが可能であることを条件としたため対象 が限られてしまった。今後は対象者を増やせるように、今回の研究結果から質問紙を 作成した全国調査など研究を継続したいと考えている。 【感想】 本研究に対する助成金の交付ありがとうございました。このような助成金をいただい ての研究は初めてで、また所属機関でも初めてであったため、研究について様々なこ とがわからなく手探りの中で実施したため一つ一つに時間がかかり予定がすべて遅れ てしまい研究期間も足りないまま終了してしまいました。そのため、ご迷惑をかけて しまいました。訪問入浴は今後まだまだ利用者が拡大していくと考えられますが、病 院や訪問看護のように研究はすすめられていません。そのため、今後も継続して研究 を進めていきたいと考えています。 この研究は公益在団法人 在宅医療助成 勇美記念財団の助成により行われたもので す。 【参考・引用文献】 高森美智代(2007):入浴介護の歴史と現状,応用老年医学 1(1)42-43 厚生労働省(2016):訪問入浴介護の実態調査及び医療連携と業務の効率性についての調 査研究事業報告書,平成 27 年老人保健事業推進費等補助金老人保健健康増進事業,デベロ 老人福祉研究所 厚生労働省(2013):介護サービス事業所における医療職のあり方に関する研究事業,平成 24 年老人保健事業推進費等補助金,株式会社三菱総合研究所 厚生労働省(2015):社会保険審査介護給付分科会,第 142 回,参考資料2 厚生労働省医政局長(2005):医師法第 17 条,歯科医師法 17 条及び保健師助産師看護師法 31 条の解釈について,医政発第 0726005 号.

(10) 小口富美江,佐藤明美,大川潤,他1名(2016):在宅終末期筋萎縮性側索硬化症患者への入浴 支援の方法と意義についての一考察,第 46 回日本看護学会論文集 在宅看護,19-22 田貫武弥,笠井恵子,阿久津裕子,他5名(2015):ターミナル後期の進行がん患者に対する共 同訪問入浴の検討,ホスピスとホームケア,23(1),17-20 松岡弘子、城戸照彦、塚崎恵子(2007):訪問入浴介護従事者の連携に対する認識の相違 看護職・介護職の連携の実際と必要性について,訪問看護と介護,12(6),486-494 春日広美,佐藤正子,遠山寛子(2007):訪問入浴サービスに同行する看護職員に求められる 専門的な技術,第 38 回地域看護,151-153 平尾百合子,栗原君枝,佐々木美保ら(1997):訪問入浴サービスにおける看護(1)、訪問看 護と介護、2(6)、412-415 平尾百合子,片山富美代,栗原君枝ら(1997):訪問入浴サービスにおける看護(2)、訪問看 護と介護、2(6)、416-419 松村千鶴、深井喜代子(2014):看護師が行う清潔ケアに対する入院患者の認識、日本看護 技術学会誌、12(3),60-63 田中広美、岡崎寿美子(2007):清潔援助場面にみられる看護師の倫理的配慮、日本看護教 育学会誌、16(3),37-47.

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参照

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