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補填材料としてのGlutaraldehyde処理豚心膜についての基礎的、臨床的研究

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(受付 昭和61年2月18日)

Experimental and Clinical Studies on Glutaraldehyde Preserved Porcine

Pericardium as a Heterogenous Bioprosthesis

Hiroyuki NISHIYAMA

Department of Surgery 1, Tokyo Women’s Medical College

In patch implantation in the descending thoracic aorta of mongrel dogs, glutaraldehyde preserved procine pericardium(Stabilized Porcine Pericardium:SPP)was cornpared with other prostheses, such as Dacron and Teflon, especially in terms of durability, tissue reaction and formation of pseudointima covered the patches. Grossly aneurysm formation, degeneration and calcification was not seen in SPP

patchs. In scanning electron microscopic stadies, thin pseudointima developed faster, but peeled easily

from the surface of SPP patches. Microscopically almost no foreign body reaction was seen around SPP

patches implanted into the thoracic aorta and subcutaneous tissue。 Based on these good results in animal models, SPP was clinically used in 46 patients corlsisting of 41 cases of congenital heart disease and 5 cases of acquired heart disease.

The purpose of SPP was classified into three groups;(A)patches for closure of defect in 37 cases,(B)

angioplasties in 6 cases,(C)suture reinforcement in 4 cases. The 46 patients were evaluated post−

surgically by cardiac catheterization, angiography and echocardiography. In the majority of these cases, no complication occured, but slight bulge formation was found in two cases, i.e. a patch for closure of a ventricular septal defect, angioplasty for coarctation of aorta respectively.

In a case of transposition of great arteries, abnormal echo was found on the buffle of SPP by

echocardiography. In long term observation, from 3 years and 7 months to 7 years and 8 months, no specific complication related to SPP was observed. Therefore, it was considered that SPP is a useful material as a heterogenous bioprosthesis in cardiovascular surgery.

緒 言 外科領域における生体内補填材料の使用は近 年,先天性・後天性疾患を問わず必要なものとなっ ており,このために種々の人工・生体材料が開発, 研究され臨床に応用されている.これらの生体材

料の1つにGlutaraldehyde処理豚心膜がある

が,この材料について基礎的な動物実験を行ない, その安全性や有用性を確認した後,臨床例への応 用およびその長期予後について検討し,その有用 性を認めたので報告する. 基礎実験 1.材料および方法 材料:Glutaraldehyde処理豚心膜(Stabilized Porcine Pericardium;以後SPPと略す)は1976 年Copenhagen大学のRygg I.H.らDにより開 発,報告されたものであり.新鮮豚心膜をCar− pentierの方法2)3)で処理し,0.625%Glutaralde− hyde液中に保存したものである.その表面構造は 写真1のごとく膠原線維束が表面に露出し,凹凸 不整の0.8∼1.Ommの結合織膜である.これを犬

(2)

A

Elastica V』n Gieson s重ain x 80 SEM x 1600 写真1 Glutaraldehyde処理豚心膜(SPP) A:組織像:膠原線維を主体とし,わずかに弾性線維を含む厚さ0.8∼1.Ommの結 合織膜 B:走査電顕像:表面構造は膠原線維が表面に露出し,不整である. の胸部大動脈に移植し強度,組織反応,仮性内膜 形成状態等について検討した. 方法:実験には10頭の健康な雑種成犬(9kg ∼16kg)を用いた. pentobarbiturate(25mg/kg) を経静脈的に投与後,気管内挿管し,bird respir・ atorにて呼吸管理を行なった.右側臥位にて左門 6肋間開胸した後,胸部大動脈にside clampをか け,2ヵ所に15×10mm大の穴をあけ, patchを補 填した.patchの材質としては, SPPとその比較 対象としてDacron (polyester) およびTeflon

(polytetraHuoroethylehe)を使用した.すなわち

10枚のSPP patchと5枚のDacron patchと3

枚のTenon patchを縫着した.10頭の成犬は移植 後3時間から7ヵ月後の各時期に剖検に付した. 剖検時,直ちに胸部大動脈移植部分を採取し, 内腔の血液成分を生理食塩水にて洗浄した後, patch補填部の反対側にて切開した. patch吻合 部を肉眼的に観察した後,一部を10%ホルマリン

液に固定しHE。染色, Masson染色, E.V.G.染

色にて,内皮および外皮層と移植組織周囲の組織 反応について検討を行なった.また一部は走査型 電子顕微鏡による検討のため1%Glutaralde− hyde液(燐酸bufferを使用)で固定し,これを0.1

Mリソ酸bufferにて2時間洗源後,1%OsO4

(Millonigの固定液)にて固定した. 次に100%アルコール液にて脱水後,酢酸イソア ミル門中に浸した後,臨界点乾燥を行ない,イオ ンスパッタリング蒸着し,これを走査型電子顕微 鏡(HMS−2R)により,内皮の新生状態を観察し

た.また同時に3頭の成犬に開胸側の皮下に

SPP, Dacron, Tenonの5mm大の移植片を固定 し,これを剖検時に採り出し,10%ホルマリン固 定後,H.E。染色し,光学顕微鏡にてこれらの材料 との組織反応について検討した. 2.結果

Dacron patch, Tefron patchがその断端の厚み

や硬さから,細かい縫合にはやや困難なことと比 べると,SPPは比較的薄く,加工が容易である上 に,未処理の心膜よりはGlutaraldehyde処理さ れているために特有のしなやかさがあり,patch 縫着の手技ではSPPが最も容易であった.また, 縫着後の血液の漏ればSPPでは認めなかった.

使用した18枚のpatch(SPP 10, Dacron 5, Tenon 3)のいずれにも著明な瘤形成や変性,劣化,石灰 化はなく,周囲の異物反応もほとんど見られな かった.次に主にSPP patch移植後の経時的な変 化について述べる. 1)移植後∼3日目 移植直後のグラフト内腔は肉眼的にも赤色凹凸 不整で,血液細胞成分に富む赤色血栓層に覆われ る(写真2A).走査電顕では血小板,赤血球,白 血球等の血液成分の沈着がみられる(写真2B).

(3)

写真2 移植直後のpatch表面 A:patch部の肉眼像.赤色凹凸不整で,血液細胞成 分に富む赤色血栓層に覆われる. B:走査電顕像.血小板,赤血球,白血球等の血液成 分の沈着がみられる. 移植後3日目になると,幽肉眼的にも表面は平滑な 薄い膜で覆われたように観察される.これを走査

電顕で観察すると変形した血小板を中心に

0.1∼0.2μ程度のフィブリン糸が網目構造を造っ ている.一部ではフィブリン細網に粘着した血小 板は種々に変形し,球形化や偽足突起を伸ばして 不整形となりあるいは線維は融合して更に太い線 維に変化する過程をみる(写真3). 2)移植後9日目

肉眼的にはpatch吻合部よりpatch内2∼3mm

のところまで半透明な平滑な面が続いているのが みられる(写真4A)。走査電顕的にもこの部分は 細胞表面に多数のmicrovilliを持った新生内皮細 胞が線状あるいは扁平な偽足様の突起を出して隣 接する内皮細胞と連なり,また重なり合っている. 基底部では血小板が嵌入し偽足突起を出して相互 写真3 移植後3日目 馬 patch部の走査電顕像.0.1∼0.2μ程度のフィブリ ン糸が網目構造をつくっている. 灘.

難藪

写真4 移植後9日目 A:肉眼像.吻合部よりpatch内2∼3mmのところ まで平滑で白色半透明な膜様のものが覆っている. B:走査電顕像.細胞表面に多数のmicrovilliを 持った新生内皮細胞が線状あるいは扁平な偽足様の 突起を出して隣接する内皮細胞と連なり合ってい る.基底部では血小板が嵌入し偽足突起を出して相 互に連絡し,一部では新生内皮細胞とも突起により 連絡しているのが観察される.

(4)

写真5 移植後17日目 A:patch部の肉眼像. patch中央部には淡赤色の斑状の変化を残すが径の2/3∼3/ 4段目で半透明の白色膜に覆われている. B:走査電顕像.細胞表面にmicrovilliを有する新生内皮細胞は複雑な相互嵌合に より隣接する細胞と密に結合している.また細胞間にみられる基底層もほぼ均一な 状態となり,血球成分の付着もわずかである. に連絡し,一部では新生内皮細胞とも突起により 連絡しているのが観察される(写真4B). 3)移植後17日目 肉眼的にはpatch中央部には淡赤色の斑状の 変化を残すが径の2/3∼3/4位まで半透明の白色の 膜に覆われている(写真5A).光顕的にはpatch の内層は線維組織が吻合部より連続的にみられ, その中央部に近い部分ではヘマトキシリンに染色 される仮性内膜の薄層がみられる.これを走査電 顕により観察すると細胞表面にmicrovilliを有す る内皮細胞は複雑な相互嵌合により隣接する細胞 と密に結合している.また細胞間にみられる基底 層もほぼ均一な状態となり,血球成分の付着も目 立たない(写真5B).しかしながら,この仮性内 膜とSPP表面の結合織層との結合は弱く,容易 に剥離された(写真6).patchの外被膜層は比較 的薄く線維芽細胞を含む線維結合識に覆われてい る.また,この部でのSPPに対する組織反応はほ とんどみられない. 4)移植後33日目 肉眼的にはpatchの内面は全面白色の光沢が あり平滑である.光顕的にはSPP内面には線維 組織が覆い,その上に仮性内膜がはっている(写

難難

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写真6 移植後17日目 仮性内膜とSPP表面の結合識層との結合

蓮夢

光顕像: は弱く,標本作製中の外力により容易に剥離された. またpatchの外被膜層は比較的薄く線維芽細胞を 含む線維結合識に覆われている.周囲の異物反応は ほとんどみられない.(masson染色×32) 真7A).走査電顕では吻合部は滑らかで, pannus の形成も少なく(写真7B),この拡大像では新生 内皮細胞はお互いに密接に癒合し,わずかに細胞 間に基底層をみるに過ぎない.新生内皮細胞は17 日目と比べるとより扁平になっている(写真7 C)。 5)移植後2ヵ月∼6ヵ月

(5)

写真7 移植後33日目 A:patch部の肉眼像. patchの内面は全面白色の光 沢があり平滑である. B:走査電顕像.吻合部は滑らかで,pannusの形成 も少ない. C:走査電顕像.拡大像では新生内皮細胞は扁平で, お互いに密接に癒合しているが,まだわずかに細胞 間に基底層をみる. 写真8 移植後3ヵ月 Patch移植部および中央部とも全面に新生内皮細胞 により覆われ,SPPとの結合もしっかりしている, 外被は薄く,細胞浸潤はわずかである.(masson染 色×32) patch移植部および中央部とも全面に新生内皮 細胞により覆おれ,SPPのとの結合もしっかりし ている.外被は薄く,細胞浸潤はわずかである(写 真8).また皮下に移植されたSPP, Dacron, Tenonの小片はいずれも周囲にわずかの小円形 細胞浸潤をみたのみであった. 3.小野 10頭の成犬の胸部大動脈にSPPをpatchとし 表1 Glutaraldehyde処理豚心膜の臨床応用例 合 併 症 疾 患 名 例 数 使用法 3ヵ月以内 3年7ヵ月∼7年8ヵ月 先天性心疾患 プアロー騒騒症 23 A,B (一) (一) 心室中隔欠損症 9

A

1寧 (一) 大血管転位症 2

A

1串串 (一) 心内膜床欠損症 2

A

(一) (一) 心房中隔欠損症 1

A

(一) (一) 弁下部肺動脈狭窄症 1

A

(一) (一) 大動脈縮窄症 1 B 1零 (一) 大血管右室起始症 1

A

(一) (一) 大動脈弁輪拡張症 1 C (一) (一) 後天性心疾患 心筋硬塞後左室瘤 3 C (一) (一) 心筋硬塞後心房中隔欠損 1

A

(一) (一) 心腫瘍(血管腫) 1 C (一) (一) 計 46 3 ・:軽度膨隆形成 軸:SPP上の異常エコー

(6)

て移植し,その強度や組織反応,仮性内膜の形成 状態について検討した.比較対象として,すでに 多数例に臨床材料として応用されているDacron, Teflonも同様に移植し,検討を行なった. 結果では,SPPは著明な瘤形成や変性,劣化, 石灰化はみられず,Dacron, Te且onに比べても早 期に薄層の仮性内膜形成がみられたが,表面の結 合織層との結合はやや弱く剥離しやすい傾向がみ られた.また,SPPに対する組織反応はpctch周 辺及び皮下移植材料の検討でもほとんどわずかで あり,Dacron, Te且onに比べても特記すべき変化 はなかった. 臨床研究 1.対象および方法 1978年5月より1982年6月までに東京女子医大

第1外科において手術を施行し,術中SPPを使

用した46例を対象とした.46例を疾患別にみると 表1のごとく先天性心疾患は41例であり,その内 分けはファロー四徴症23例,心室中隔欠損症9例, 大血管転位症2例,心内膜床欠損症2例,心房中 隔欠損症1例,弁下部肺動脈狭窄症1例,大動脈 縮窄症1例,大血管右室起始症1例,大動脈弁士 拡張症1例であり,後天性心疾患は5例で,心筋 梗塞後左室瘤3例,心筋梗塞後心房中隔欠損1例, 心腫瘍(血管腫)1例に使用された.46例の手術 時の年齢分布は先天性心疾患群では11ヵ月から58 歳,平均12.4歳,後天性心疾患群では38歳から60 歳,平均51.0歳であった.また性別では,男30例, 女16例であった.これらの46例について,術後1 ∼3ヵ月に心カテーテル検査,心アンギオ検査, 心エコー検査による検討を行ない,SPP使用によ る早期の合併症をまた手術後より長期経過後の合 併症について検討した.なお46例の術後観察期間 は3年7ヵ月∼7年8ヵ月である. 2.結果 これらの46例は使用部位別に表2のごとく大き く次の3つに分類した.(A)patchとしての使用 例,(B)管状あるいは半管状に縫製して用いた 例,(C)縫合補強材としての使用例.このうち, (A)patchとしての使用例は37例あり,右室流出 路再建が22例と最も多く,その使用方法にも2重 表2 Glutaraldehyde処理豚心膜の使用方法 使用方法 A)patchとして使用 右室流出路再建 (1弁つぎ) 心室中隔欠損部閉鎖 内膜床欠損部閉鎖 心房中隔欠損部閉鎖 左心房再建 心房中ba田e B)管状あるいは半管状に縫製して使用 肺 動 脈 大 動 脈 C)縫合補強材として使用 左心室瘤切除部 Benta11術後のWrapping 症例数 22 (4) 10 2 1 1 1 5 1 3 1 合わせにしたものや心室側のみ,あるいはその全 長にわたってDacron, TeHonによる裏打ちをお いたものなど種々のものがみられるが,いずれの 例も術後のアンギオ検査やその後の臨床症状にお いて再狭窄を思わせる所見はみられない(写真 9).また,丁丁流出路再建例中4例にSPP 2重 構造弁を持つグラフトを使用したが,弁の硬化, 石灰化は認めていない. 次に心室中隔欠損閉鎖術例が10例と多いが,こ れにSPPを単独,2重張り合わせ,人工材料を間 に挾んでの2重張り合わせ,片面のみを人工材料 で裏打ちしたものと強度を考えて種々の工夫を行 なった.10例中9例には術後のアンギオ検査やエ コー沚クにより異常は認めなかった(写真10)が, SPP単独で欠損の閉鎖を行なった1例において 術後7日目の心エコー検査により,収縮期におけ るpatch部分の右室側への軽度の膨隆を認めた (写真11).しかし,この例では,術後早期よりみら れることより,SPPの脆弱性による可能性を全く 否定はできないが,手術手技によるものではない かと考えている.また,Mustard手術の心房内

ba田eとしてSPPを単独で用いた1例に術後の

心エコー検査上心膜片に付着した異常エコーを認 めた.(B)の使用例はSPPを写真12のごとく管状 にして,ファロー四徳症に伴う肺動脈の低形成や 閉鎖に対して肺動脈再建を行なった5例である が,術後の心カテーテル上圧較差もほとんど認め

(7)

Postoperative 写真9 右室流出路再建例 Dacronにより裏打ちしたSPPを使用した例 RV graphy

/ 、

㎏・emPA

の 声・

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鰐ψ

写真10 心室中隔欠損閉鎖術例

・参 //

(8)

写真11心室中隔欠損閉鎖例術後1週目の心エコー像 A:拡張期 B:収縮期におけるpatch部分の右室側への軽度の 膨隆がみられる. られず,造影でもその拡大度は良好であった.(写 真13).また大動脈縮窄症でSPPを2重に重ねて 使用し,大動脈再建を行なった例では心カテーテ

ルの引き抜き圧差は24mmHgから2mmHgと改

善したが,造影上軽度の膨隆を認めた(写真14). (C)の縫合補強材として心筋梗塞後の左室瘤切除 部縫合に用いた3例およびBentall手術のwrap・ ping 1例ではその結果は良好であった. 術後長期経過の調査できた41例についてその予 後を検討した.41例は術後3年7ヵ月から7年8 ヵ月を経過しており,このうち術後早期の諸検査 により異常を認めた3例を含めた39例では現在, 全く問題なく社会生活を送っていた.残りの2例 で1例は大動脈暉暉拡張症にてBenta11手術に縫 写真12 肺動脈再建例 SPPを管状にして肺動脈再建を行なっているところ. 合補強材としてSPPを使用した例で,術後5年 3ヵ月後に脳塞栓のため左半身麻痺となったが, 心臓には異常所見を認めていない.他の1例は ファロー四汗症でTenonにより裏打ちしたSPP を右四流出路再建に使用した例であるが,術後2 年10ヵ月目に学校で急死したが,その原因につい ては不明であった. 3.一括 SPPを,先天性心疾患41例,後天性心疾患5例 の計46例に使用した.使用部位別では,(A)patch として37例,(B)管状あるいは半管状に縫製して 使用したもの6例,(C)縫合補強剤として使用し たもの4例であった.術後早期の諸検査では,大 部分満足できるものであったが,心室中隔欠損閉 鎖をSPP単独で行なった1例と,大動脈縮窄症 の1例でSPP使用部位に軽度の膨隆をみとめ,

心房内ba田eとして使用した1例でSPP上に異

常エコーを認めた.このうち,41例の長期の観察 ではSPPによると思われる合併症は認めなかっ た. 考 察 心臓血管外科領域において,その欠損部の修復 や狭窄部の拡大には人工・生体を問わず種々の補 填材料が使用されている.人工材料においては,

以前より1valon sponge, Orlon, Nylon, Dacron,

Teflon等について実験的,臨床的に詳細な検 討4)噌11)がなされており,現在ではDacron7},

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Po8toperative 写真13 肺動脈再建例 ファロー四温症でTenonで裏打ちしたSPPによる右室流出路再建と肺動脈の閉 鎖に対して肺動脈再建を行なった例

PREgOP POST−OP

写真14 大動脈再建例 大動脈縮窄症でSPPを2重に使用し,大動脈拡大を行なった例で術後に軽度の膨隆 がみられる.

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Teflon9)∼11)が堅牢で耐久性にすぐれ,かつ異物反 応が少ない理由により主に臨床応用されている, 人工材料に比べて縫合が容易で血液透過性のない 生体材料では,同種・異種の心膜・筋膜・脳膜等 が使用されている12)∼26).このうち異物反応のない 自家心膜の使用が最も多くみられる.しかし,自 家心膜は強度において十分とはいえず,採取にお いても新生児や再手術時には制約がある.また, 自家心膜使用例の検討においても比較的早期に移 植片の萎縮・変性をみとめ,特にその中央部では hyaline degenerationをおこし,萎縮が著明であ り,この部の瘤形成や穿孔をおこしたとの報 告12)∼15)もみられる. 今回,我々が実験的および臨床的検討をおこ

なったSPPは1976年Copenhagen大学のRygg

ら1)により報告されたものであり,Carpentierの 方法2)3)により豚心膜をGlutaraldehyde処理し, 心膜中のcollagenにcrosslinkageをおこすこと でdurabilityの増強を図るとともに抗原性の低 下と抗血栓性を期待したものである.Glutar− aldehydeは従来殺菌消毒剤,電顕用組織固定剤と して用いられていたが,生体組織の化学処理薬剤 としてcrossHnkageの効率が高く,熱や化学薬品 に安定であることより,今日生体弁をはじめとし て種々の臓器の固定保存液として使用されてい る27). Glutaraldehyde処理異種心膜の生体反応に関 しては,Galloら20), Meusら21)の実験的・臨床的 研究がみられる.Meusら21)は実験的にGlutaral− dehyde処理異種心膜を犬の心膜欠損部への補填

材として使用し,他にPTFEやpolyethylene,

siliconecoated polyesterなどの高分子人工材料 も同様に使用し,3∼12ヵ月の長期にわたって比 較検討しているが,Glutaraldehyde処理心膜が他 の人工材料に比較して胸膜や心外膜との癒着が少 なく,反応もほとんどな:かったという良好な結果 を報告している.また,Galloら20)はこれを臨床例 に応用し,早期では癒着も軽度で変性もなく良好 な結果を報告している.我々の実験でも移植した SPP周辺にはわずかの小円形細胞浸潤をみるの みで異物反応はごくわずかであった,しかし, Galloら22}は最近の臨床応用例の報告で心膜移植 面の対側の心外膜が反応性に肥厚し,癒着がみら れたと報告していることは長期観察の必要性を示 唆している.次に血流面に接する部位に使用する 補填材料としては,良好な器質化と早期の上皮形 成が重要であるが,このためにはフィブリン層が 極めて薄く,かつ材料とよく固着することが必要 である.一般に代用血管を生体に移植した時,ま ず血液が触れると血漿蛋白の吸着と同時に血小板 の粘着,凝集を誘起して薄い血栓膜の形成をみる. 続いて器質化に向かって液性成分の浸出,種々の 細胞の動員が行なわれ,内皮細胞の新生と相まっ て人工繊維間隙の膠原線維化が進み,いわゆる仮 性内膜が完成する28)∼33).内膜;の形成は,材質によ る特殊性というものは存在せず,単に異物に付着 した血栓の器質化として内被細胞により内被が覆 われるとされている29)が,我々のSPP patchの仮 性内膜の形成様式を観察した実験結果ではDa− cron, Teflonと比べてSPPは仮性内膜の覆い方 は比較的早く,薄い良好な仮性内膜の発育をみた, しかし,その固着性は弱く,容易に剥離された. これはその表面性状が細かいcollagen丘berの露

出した状態でnon porousであること,

Glutaraldehyde処理による抗血栓性による等が 考えられる.すなわちSPPは心内補填材料とし ては血液透過性がなく,仮性内膜の形成が早いと いう利点を持つ反面,その結合が弱く,外膜線維 層も薄いため,その耐性面での弱点が考えられる. しかし,仮性内膜の覆い方は動物によっても異な り33),Bergerら34), DeBakeyら7)は動物実験と異 なり,人では内膜形成はほとんど不完全であると 述べており,SPPについても使用部位や大きさに よっては長期間にわたる観察が必要と考えられ る. また生体内補填材料として外科的に使用する場 合重要な点は,手術時の二二操作の容易さ,使用 部位での解剖学的形状への造形性,二二後の生理 学的な機能への影響,縫合強化材として止血性や 支持組織としての柔軟性,遠隔期の劣化の有無な どであるが,SPPはGlutaraldehyde処理特有の しなやかさがあり,縫合針や鋏の使用などの縫合

(11)

ずれにも良好な拡大をみており,術後早期および 長期の観察でも特に障害をみなかった.Abdulali ら23)もGlutaraldehyde処理牛心膜を同様の部位 に使用し5年以上経過した17例について検討して おり,それらの症例では移植部位に石灰化や収縮, 拡張などの合併症を認めず良好な結果を得てい る,また,SPPを管状にして用いた肺動脈再建例 における成績においても,SPPの術中の縫合の容 易さ,手術時間の短縮ぽかりでなく再建後の血行 動態においても良好で,満足すべきものであった. 縫合強化剤としての使用例でも止1血性,支持組織 としての柔軟性等の優れた特性の上に,任意の大 きさが選択し得るという特殊性もおおいにいかさ れており,良好な結果がみられた,46例のうち最: も問題となる高圧下でのSPP使用例で,心室中 隔欠損閉鎖に使用した10例のうち9例では術後の 臨床所見,心エコー検査,アンギオ検査等におい て問題なく良好な長期経過をとっているが,1例 で術後の心エコー検査によりpatchの膨隆を認 めた.しかしこの例では術後すぐみられたことよ り,SPPの破損よりも術中操作による可能性が考 えられる.また,大動脈縮窄症の縮窄部の拡大に

SPPを2重に重ね合わせたpatchを用いた1例

で骨形成を認めた.この例は術後6年経過の現在 元気に通学している.しかし,このような高圧下 でのSPPの使用は高圧系における圧負荷や,頻 回の振動に伴うSPPの組織構造の変化等による 強度の低下の可能性も考えられる.また,Glutar− aldehyde処理により強度よりも伸び率が増加す るという報告35)もあることから,代用心膜弁での 安全性が確認されつつあるとはいえ,今後の大動 脈等の高圧部位へのSPP単独での使用は慎重で はみられなかった. 結 語 Glutaraldehyde処理豚心膜(SPP)を10頭の成 犬の胸部大動脈にpatchとして移植しDacron, TeHonを比較材料として,その強度や組織反応, 仮性内膜の形成状態について光顕および走査電顕 的に検討した. 結果は,SPPは著明な瘤形成や変性,劣化,石 灰化はみられず,Dacron, Te且onに比べても早期 に薄層の仮性内膜形成がみられた.しかし,早い 時期では表面の結合織層との結合はやや弱く剥離 しやすい傾向がみられた.また,patch周辺及び皮 下移植材料の検討では,SPPに対する組織反応は きわめて軽度であった. この良好な結果により,SPPを先天性心疾患4! 例,後天性心疾患5例の計46例の臨床例に応用し た.使用部位として,(A)patchとして37例,(B) 管状あるいは半管状に縫製して使用したもの6 例,(C)縫合補強剤として使用したもの4例で あった.術後,3ヵ月以内の早期の観察では,大 部分満足できるものであったが,心室中隔欠損閉

鎖をSPP単独で行なった1例と,大動脈縮窄症

の1例にpatchの軽度膨隆をみとめ,心房内

ba伍eの1例に心エコー上SPPに接した異常エ

コー

認めた.また,術後3年7ヵ月∼7年8カ

,月経過後の観察では,いずれの例にもSPPに関 係したと思われる合併症はみられず良好な結果で あり,SPPの心臓血管外科領域における臨床応用 は有用であると考えた. 稿を終わるにあたり,御指導ならびに御校閲を賜 わった和田壽郎教授に深甚なる謝意を表します.また

(12)

実験に御協力いただいた第1外科教室の諸先生,走査 電顕標本作製を御指導下さった総研電子顕微鏡研究 室長北 重夫先生に心より感謝いたします.なお本論 文の要旨は第1回日本・ミイオマテリアル学会(1979

年)およびlst World Biomaterial Congress(Austria, 1980)において発表した.

文 献

1).Sφrensen, H.R. and Rygg,1.H.:Aprelimi− nary report on the first 100 patients receiving

stabilized porcine pericardium implants

(November 1976 to March!980):PQIystan Bioprostheses information. Polystan A/S Generatorvej 41 DK・2730 Herlev, Denmark

(1980>

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(13)

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valve heterografts in children, J Thorac Car・

参照

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