昭和36年4月3日第3種郵便物認可 平成20年5月25日(年4回25日)発行 ISSN 0912-7437 日本海難防止協会情報誌
夏
NO.537
2008
【特集】
協会創立
50
年の歩み
海上の安全と
環境保全をめざして
助成事業 この情報誌は競艇の交付金による 日本財団の助成金を受けて作成しました。目 次
2008夏
No.537【特集】協会創立50年の歩み
海上の安全と環境保全をめざして
協会の創立50周年を迎えて/
日本海難防止協会 会長 友國 八郎────笆
海上交通の安全と海洋環境の保全を願って/
海上保安庁 長官 岩崎 貞二────笳
船舶の安全運航と安定輸送の確保に向けて/
日本船主協会 会長 前川 弘幸────笘
漁船の安全操業をめざして/
JF全漁連 代表理事会長 服部 郁弘────笙
外航船の船長が見た日本の海/
日本船長協会 会長 森本 靖之────笞
英知を結集し安全運航と環境保全を/
日本船舶機関士協会 会長 大内 博文────筐
人材の育成と安全運航/
航海訓練所 練習船 船長 竹本 孝弘────笋
安全運航をめざして再点検と再確認/
第二管区海上保安本部長 梅田 宜弘────筥
取材:各種船舶の安全対策への取り組みを追う/
フェリー、漁船、タグボート、内航船の会社と運航管理者、乗組員に聞く────筱
協会の50年を振り返る/
主な活動と組織図・主な調査研究事業の紹介────箴
特集以外の記事
海の気象 富山湾の高波/日本気象協会────簗
海保だより プレジャーボート海難の現状/海上保安庁 交通部────篶
船舶海難の発生状況/主な海難/海上保安庁提供────簧
海守便り 繰り返される事故/海守事務局────簪
苫小牧港を利用する船舶は注意を/ 胆振東部日高海域漁業操業安全基金協会────簟
海外情報/ロンドン連絡事務所────簷
日本海難防止協会のうごき────簫
平成20年度全国海難防止強調運動について────簽
編集レーダー────籌
海上の安全と環境保全をめざして
戦後の混乱を乗り越え、ようやく日本経済が立ち直りの兆しを見せ始めた1958年(昭和 33年)に当協会は創立された。当時、未だ戦争の傷跡が色濃く残り、日本の海運・水産に おけるハード、ソフト両面の安全対策が十分に行き届かないという状況にあった。 貨物船はもとより漁船や旅客を満載した連絡船の相次ぐ遭難によって、多数の尊い命を 失うなど、放置できない重大海難が多発していた。 こうした事態を重く見た運輸省(現国土交通省)は、海難防止活動の必要性を強く訴え た。海上保安庁、海運水産関係者などに広く呼びかけ、世界で最初の民間の海難防止団体、 「社団法人日本海難防止協会」が創立されたのである。 当協会は今年、50周年の節目を迎える。これまで、日本の高度経済成長によってもたら された船舶の大型化、高速化に対応した海上交通の安全確保に取り組んできた。 また、本州四国連絡橋、東京湾横断道路の建設など大型プロジェクトにおける航行安全 対策、海洋環境へ重大な影響を及ぼす船舶の海難に伴う積荷や燃料油の流出事故への対策、 さらには、船舶のバラスト水への対策など海洋環境保全に関する調査研究事業も積極的に 進めてきた。 今号では、これまでの取り組みを「協会の50年の歩み」として振り返るとともに、重大 海難を二度と繰り返えさないために、人材育成に取り組む練習船や訓練船、激しい国際競 争を生き抜く外航船、国民の生活物資輸送に欠かせない内航船、物流の動脈として活躍す るフェリー、吹き荒れるシケのなかで日夜操業する漁船、港の安全を守るタグボートなど、 それぞれの分野で活躍する船と関係者の安全への取り組みを追った。 愛媛県(八幡浜市)と大分県(臼杵市)を結ぶ九四オレンジフェリー日本海難防止協会の創立50周年を迎え、 一言ご挨拶申し上げます。 当協会は、1958年(昭和33年)に発足し ました。当時の日本は戦後の混乱を抜けて 成長への移行期でしたが、船舶航行を取り 巻くインフラは十分なものではなく、重大 事故が絶えませんでした。昭和29年には、 台風による青函連絡船の座礁転覆事故や漁 船の大量遭難が発生しました。そこで、政 府の要請を受け、運輸省指導の下、船舶交 通の安全に関係する民間団体がこぞって参 加し、船舶の航行安全に取り組む専門組織 として、社団法人日本海難防止協会が設立 されました。 当協会が設立された当初に最も力を入れ て取り組んだ事業は、日本の各地に海上安 全のための専門家を派遣して具体的な指導 をすることでした。 昭和40∼50年代になると、わが国経済の 成長とともに巨大な船舶が登場しこれに伴 う大型鉱石専用船の折損沈没事故、東京湾 における LPG 船の衝突炎上事故などが発 生しました。当協会では専門家による原因 調査を行い、防止対策を検討する体制を作 りました。さらに、海上公害を防止するた めの海洋汚染防止法の制定などと機を一に してタンカー原油流出事故対策や船舶から の排出油規制などの研究を開始しました。 昭和50年代以降は、本州四国連絡橋、東 京湾アクアライン、海上空港などの建設に かかわる航行安全対策が大きな課題となり ました。関係当事者と学識経験者ならびに 関係官庁の参加も得て海洋プロジェクトの 実現に貢献しました。その後も羽田空港第 4滑走路建設と東京港における航行安全の 両立のための各種検討を重ね、現在、空港 は建設着工されています。 船舶交通の安全や環境規制は、IMO 会 議で世界共通ルール化されますが、当協会 ではロンドン事務所を設け、各国情報を集 め会議に参加する日本政府代表団の支援に 当たり、本部では国内関係者の意見集約の 場を設けています。また、シンガポール事 務所では、アセアン諸国における航行安全 対策や海洋環境保護のノウハウの伝授やマ ラッカ海峡の航行安全に関する調査を行う など積極的に活動を推進しています。 これまでの活動を支えて頂きました多く の関係者の皆様に心より御礼申し上げます とともに、引き続き、当協会の活動にご支 援、ご協力を賜りますようお願い申し上げ ます。
協会の創立5
0周年を迎えて
!日本海難防止協会 会長 ともくに友國
はちろう八郎
このたび、社団法人日本海難防止協会が 創立50周年という意義ある節目の年を迎え るに当たり、心からお慶び申し上げます。 日本海難防止協会は、海上保安庁が創設 した10年後の昭和33年に世界初の民間の海 難防止団体として創立し、以来、海上交通 の安全確保や海洋環境の保全のために、あ らゆる角度から国内外における調査研究を 活発に展開されております。また、本情報 誌「海と安全」等を通じ多くの方々に対し 海上の安全に関する有益な情報を提供する など、長年にわたる様々な業績に対し敬意 を表する次第であります。 本年は、当庁にとっても、節目となる創 設60周年の記念すべき年です。昭和23年5 月に正義仁愛のもと誕生して以来、国内外 の諸情勢が激動する中において、海上にお ける治安の維持、海上交通の安全確保、海 難救助、海上防災、海洋の環境保全などの 業務を日夜たゆまず着実に遂行し、現在に 至っています。節目の年に更なる飛躍、発 展を遂げたいと思っています。 安全な海を目指す上で、重要な一つとし て、海難を減少させること、仮に海難が発 生しても被害を最小限にとどめることが必 要であると思っています。 ここ数年、我が国の海難発生隻数は、ほ ぼ横ばいを続けています。本年の2、3月 には、社会的反響の大きな海難も発生しま した。海難を減少させるために、まずは、 海難原因を分析し効果的な対策を講じてい く必要があると思います。それぞれに、発 生海域、船の種別、原因等は異なり、海難 防止策の検討にあたっては、様々な見地か ら考えなければなりません。当庁だけでな く、海事関係機関との連携も強化し、総合 的・効果的な海難防止施策を展開すること も重要です。また、安全対策を検討するに あたっては、最新の IT 技術等の活用も不 可欠であり、現在 AIS を活用したシステ ムの構築を進めているところです。 日本海難防止協会では、IMO への参画、 マラッカ・シンガポール海峡における安全 対策など国際的な分野においても積極的に 取り組んでおり成果を上げられていること を高く評価しています。 海は世界に繋がっており、海上保安庁と しても海外関係機関との連携・協力を推進 し、アジア・太平洋地域における海上の治 安・安全の確保に尽力していきます。 貴協会におかれましても国内外における 更なるご活躍に期待いたします。
海上交通の安全と海洋環境の保全を願って
海上保安庁 長官 いわさき てい じ岩崎
貞二
日本海難防止協会の創立50周年を心より お慶び申し上げます。 貴協会は、1958年の設立以来、わが国周 辺の海上交通や海洋環境汚染などの問題に 積極的に取り組み、その改善に大きく貢献 されてまいりました。これまでの関係者の ご尽力に対し深く敬意を表する次第です。 さて、海運は産業活動と市民生活を支え る重要なインフラです。世界の海上荷動き 量はこの30年間に2倍以上に拡大し、現在 も BRICs の経済発展などを背景に拡大し 続けています。一方、わが国においても、 輸出入に占める海上輸送の割合は重量ベー スで99.7%、金額ベースでも約7割を占め ており、世界においてもわが国においても、 安定した海上輸送の確保は経済・国民生活 の向上に必要不可欠です。 当協会は、こうした輸送需要に応えつつ、 安定的かつ効率的な輸送サービスを提供す ることが、私ども海運会社の社会に対する 責務であると考えています。そのために、 何よりも優先すべき命題として「船舶の安 全運航の維持」を掲げております。人と船 と貨物の安全を守り、安全で確実な輸送を 実現することは、同時に海洋汚染・海上災 害の防止にも寄与することとなり、各海運 会社においてもハード・ソフト両面から船 舶の安全運航の徹底に弛むことなく取り組 んでおります。 また、当協会としては、国際海事機関 (IMO)をはじめ国際的な規則・基準の 策定に関して国内外の検討にも積極的に参 画することはもちろんのこと、貴協会とも 引き続き連携してまいりたいと存じます。 貴協会は、経済成長や技術の進展に伴い、 船舶の大型化、専用船化の流れに的確に対 応し、調査研究活動の成果を通じて運航技 術の向上や安全・効率的な海上交通の促進 に多大な貢献をされてきました。 また、ロンドンおよびシンガポールに設 置した連絡事務所を活用し、IMO におけ る航行安全および海洋環境保全に関する審 議に参画・情報収集するほか、アセアン地 域の汚染防止体制強化への支援、わが国の 原油輸送等にとって生命線であるマラッ カ・シンガポール海峡の航行安全・環境保 全に向けた活動に携わるなど、国際的な活 動も展開されております。 こうした貴協会の取り組みが、「船舶の 安全運航」に大きな役割を果たしてきたこ とは論を待ちません。今後も、蓄積された 知見を活かし、さらに大きく発展、活躍さ れることをご期待申し上げます。
船舶の安全運航と安定輸送の確保に向けて
社団法人 日本船主協会 会長 まえかわ ひろゆき前川
弘幸
日本海難防止協会設立50周年を心よりお 祝い申し上げます。貴会が全国海難防止強 調運動等で業界の中心となって海難防止に 貢献されてきたことに対し、全国の漁業者 を代表して感謝いたしますとともに敬意を 表する次第であります。 さて、漁業では就業者難と高齢化の進行 により産業活力の減退が極めて大きな問題 となっています。そのため、官民をあげて 山積する課題に取り組んでいるところです が、就業環境の改善は重要な要素の一つと なっています。 漁協系統運動を身上とする我々は、制度 改正や緊急対策等その時代の喫緊の課題を 解決するために運動してきましたが、一方 で、経営改革、貯蓄推進、漁協合併など組 織内部の改善運動にも取り組んでおり、安 全対策では主として地域毎に取り組みが進 められてきました。 JF 全漁連は、10数年来全国的な事故発 生状況アンケートを継続実施し、その分析 結果から高齢者の1人乗り操業における死 亡事故の割合が複数人数乗組みの若齢者よ り4倍も高いことを指摘し、ライフジャケ ット常時着用運動を喚起して参りました。 また、現場の担当者となる漁協役職員の活 動支援を目的とする手引きやリーフレット の配付を通して、取り組み促進を訴えてま いりましたが、その際に日海防の担当者の 専門的な助言を頂きました。日海防の情報 誌「海と安全」には、漁船海難、小型船舶 の安全対策が度々特集され、これらを増 刷・配付して活用いたしました。特集は時 宜にかなったもので、現場の普及啓発活動 において大きな助けになったものと高く評 価しております。 また、5年前の船舶職員法の改正により 1人乗り漁船の操業時にライフジャケット 着用義務化が導入されたのを契機に、全国 的な購買運動が起こりライフジャケットの 普及が顕著に進みましたが、着用率を大き く向上させるまでには至りませんでした。 その後、今年4月からの1人乗り操業中の 全面義務化を前に、全国的に官民あげて周 知活動に努めてまいりましたが、昨今の調 査では漁業者のライフジャケット着用率の 向上が認められ、それとともに漁業者の死 亡者数が減少する兆しが見えてきました。 これを確実なものにするため貴協会をはじ め関係組織のご協力のもとに、ライフジャ ケット常時着用を根付かせる運動を全国的 に展開し、海中転落による死亡0を目指し たいと思います。
漁船の安全操業をめざして
全国漁業協同組合連合会 代表理事会長 はっとり いくひろ服部
郁弘
日本船長協会誕生と経緯
商船の殆どが撃沈され、6万余名の船員 が亡くなった先の大戦が終わって5年、戦 後の復興活動がスタートし、連合国からよ うやく外航船の就航が認められた1950年に この協会は誕生した。 その目的は、船長に課せられた義務と与 えられた権限を自覚し、信念を持って責務 を完遂し、不断に学術技術の研鑽練磨に励 み日本海運の復興に貢献することにあった。 70年代に入り外航船舶1,600隻、外航船員 5万6千人を擁する世界有数の海運国にな った。 しかし、やがて迎えた円の固定レートの 廃止(71年)とプラザ合意(85年)を経て、 円価値の大幅上昇に伴い、今日の外航海運 では日本籍外航船が95隻、日本人船員数は わずか2千6百人に激減してしまった。昨 年、海洋基本法が制定され、エネルギー資 源のほぼ全量と食糧の6割を外国に依存し ている我が国の海運がこのような状況にあ ることを憂い、国家安全保障の見地から、 日本船と日本人船員を増やすべしとの方針 が盛り込まれた。このことを心から歓迎し たい。忘れられない航海
入社後まだ1年も経たない1963年の冬、 8千トン級の欧州航路貨物船に次席3等航 海士として乗船した。当時のロンドン港は テームス河を遡ること約5時間、ロンドン 塔やロンドン橋が見える処にバースがあっ た。潮高に合わせて閘門付きの岸壁に着岸 する。荷役も終わり出港の準備が整ったが 霧が深く翌日まで待つことになった。翌日、 霧は薄くなったが時々濃くなる。船橋には 会社専属のパイロット、船長、1等航海士、 私、操舵手2人、船首には甲板長と船匠が 見張りと錨要員として配置に就く。 視程100∼300mの濃淡の中を静々と河を 下る。もう河口まで約1時間というところ まで来たとき、船首から「左舷前方に白灯」 と報告あり、直後に船橋でも確認できた。 ガスの中からにゅうっと現れたのは船首を 本船に向けた大きなタンカーである。「ハー ド・スターボード」とパイロットが叫ぶ。 じわーっと右回頭を始める。近くに迫った 相手の船首が2番ハッチ左舷をかすめ、3 番ハッチも辛うじてかわった。船橋付近に 当たる!と思い、思わずテレグラフに抱き つく。キックの作用を利用して船尾を右に 寄せるため「ハード・ポート」。外航船の船長が見た日本の海
社団法人 日本船長協会 会長 もりもと やすゆき森本
靖之
本船は4番ハッチ左舷側をえぐりとられた相手船の船首の人影が間近に見える。ま だ衝撃がない。助かったかなと思った瞬間、 鈍く腹に響く音響とともに震度4程度の衝 撃を感じた。5万トン級タンカーの船首が 本船4番ハッチ左舷側をえぐり取っていっ た。修理は近くのドックで3カ月近くかか った。この航海が終わったとき、船長は職 を辞して故郷に帰られた。
大型船の運動性能
私が初めて船長を経験した船は、15万ト ンの鉱石船であった。豪州ポートダンピア で鉄鉱石を満載した。此処は私には初めて 来る港。港外に出るまでの曲がりくねった 水路での操船は今でも忘れない。(その後 この水路は強制水先区になった。)大きく 左転し、また直ぐに大きく右転して水路を 抜け出す。左舵20度を取ってもしばらく反 応がない。その時間の長く感じられたこと。 無意識にブリッジの窓枠を回頭方向に押し ている。回り始めたら止まらない。早めに 当て舵を取って次の進路にのせる。曲った 水路では両端のブイが重なって見える。血 圧の高まりと掌に汗を感じる。船速を落と してゆっくり航行したいが、それでは舵効 が低下し、潮の影響も大きくなる。僅か30 分ほどの時間であったが、無事に抜け出し た時には体がふぁっと軽くなるのを感じた。 もう現場を離れてから20年も経つが、今 でも、たまにうなり声を出して、夜中に目 覚めるときがある。乗り上げ寸前も夢でよ かったと安堵する。 大型船は船速を落とせば舵効が低下し、 船速を上げれば船体沈下量が増える。UKC (船底下のクリアランス)が僅か3m し か確保できないマラッカ海峡、UKC が少 なくなれば更に舵効が低下する。この海峡 を満載のタンカーで通る時の船長の心労を お察しいただきたい。緊急停止を掛けても 3∼4海里の進出距離がある。 こんな大型船でも、海面と水深に余裕が ある限り、相手船が小型であっても当然に 航法に従って避航する。 困ることは、漁船が集団で操業している ときである。レーダーで予めキャッチでき れば集団を迂回するが、湾内や瀬戸内海の 航路筋では迂回も難しく、船速を落とし警 笛を吹鳴しながら漁船側に注意をしてもら わなければ、本船は目的の港に近づけない。 漁船の集団には、航行しているものと漁 労中のものが混在している場合があり、見 た目ではいろんな方向を向いており、1対 1の横切りや行き合いのルールではとても 制御しきれない状況となる。こういう場合 には予防法17条「最善の協力動作」によっ て衝突の回避を図る以外に良策はない。 余談になるが、先般の漁船と自衛艦の衝 突事故に関し、マスコミは1対1の横切り 関係で自衛艦に避航義務があったという論 調で解説していたが、誰も予防法の17条に 触れていなかったのは、勉強不足と言うべ きか、大きくて強い方が悪いという判官び いきの国民性の所以か。外航船船長が見た日本の海
当協会は、これまで太平洋側の主要港に 寄港する外航船船長にアンケートを実施し た。主な設問は、港湾設備、航路の状況、 航路標識、航行情報の提供、水先制度など に関するものである。約850人の船長が回答をくれた結果では、港湾のハードとソフ トについてはいずれも高く評価していた。 船長の国籍は、アジア圏が約6割、欧米系 が約2割、日本人が1割、であった。 回答の末尾に自由記入欄を設けたところ、 多くの船長たちから「漁船と小型船が航法 を順守するように指導してほしい」という 意見が寄せられた。 欧米主要港のアクセスや海峡は、一般的 に通行分離帯を設け整流が図られている。 私の経験では航路内で漁船が邪魔になると 感じたことはなく、週末のサンフランシス コ湾には多数のヨットが繰り出しているが、 本船航路だけはクリアーにしているマナー に感心した覚えがある。 我が国は内航船や漁船が多く、欧米諸国 と状況が違うとしても、航法やマナーに関 しては海洋国の名に恥じぬものであって欲 しいと思う。漁労従事者には「オレ達は生 活が掛っているんだ」という気持ちが、小 型内航船には「荷役と航海直の連続で、せ めて港外に出たら自動操舵で少しは楽をさ せろ」という気持ちがあるだろう。しかし、 マナーや「船員の常務」は船舶の大小に拘 らず海上で働くもの万人に共通する責務で あろう。
一寸ニュアンスが違う衝突予防法
世界の船が行き交う「海」の交通ルール は、万国共通でなければならない。それが 「海上衝突予防に関する国際条約」である。 我が国は、この条約を受けて「海上衝突 予防法」を制定した。しかし、国際条約と 我が国の衝突予防法との間には、狭水道の 航行に関して微妙にニュアンスが違う。条約第9条には「A vessel engaged in fishing shall not impede the passage of any other vessel navigating within a nar-row channel or fairway.」(直訳:漁労に 従事している船舶は、狭い水道又は航路筋 の内側を航行している他の船舶の通航を妨 げてはならない。)と規程されている。 これに対し、我が国の海上衝突予防法第 9条第3項(狭い水道等)には「航行中の 船舶は、狭い水道において漁労に従事して いる船舶の進路を避けなければならない!。 ただし、この規定は、漁労に従事している 船舶が狭い水道等の内側を航行している他 の船舶の通航を妨げることができることと するものではない"。」これが日本の条文 である。 条約では漁船側に他船の航行を妨げては ならないと明記しているのに対し、我が国 の条文では、!まず他の航行船舶に対して 漁労船への避航義務を課している。これは 条約にない。一方で、"漁労船に対しても 水路内を航行する他船舶の進路を妨げても よいとするものではないと、条約の簡明な 表現に対して回りくどい表現になっている。 条約のルールが当然日本でも同じ筈だと理 解する外国人船長には、このニュアンスの 違いを知る由もない。これでは、我が国の 狭水道で混乱が起きること必定であり、海 上交通安全法を制定して、東京湾、伊勢湾、 瀬戸内海の各海域に航路を指定して、航路 内では200m 以上の巨大船に対して、漁労 船はその進路を避けなければならないと定 めている。 漁業権が確固として存在する我が国にあ って、国際条約を国内法化するときの関係
者の苦労の跡が窺われる。 それでは、我が国のこの2本立ての航行 規則が十分に遵守されているのだろうか。 浦賀や伊良湖或いは備讃瀬戸に設定され た航路内では、季節により或いは時間帯に より、危険と隣り合わせの状況になる。週 末になればこれに遊漁船が加わってくる。 諸外国と比べ、航路内に漁船が多く、し かもなかなか本船進路を開けてくれない現 状に、外国人船長たちが嘆くのも当然であ る。備讃瀬戸は春先から初夏にかけてコマ セ漁が盛んになる。この漁法は、仕掛けた 網で潮の流れを利用してコマセを獲るので ある。この網が航路を閉塞するような状態 で展張されることもしばしばあり、大型船 がやむを得ず航路外に飛び出し、豊島の南 端をぎりぎりに航過した例も聞く。この時 期の内海水先人の苦労は大変なものである。 網は漁船と異なり航法の適用が難しいら しいが、航路は陸上の幹線道路と同じ社会 的使命を帯びている。したがって、往来妨 害という観点からの強い指導も期待したい。 私たちはお魚が大好きな国民であり、ま た、漁師さん達の生活に影響するようなこ とを決して望むものではない。しかし、こ れらの「航路」は、無害通航権が認められ た国際海峡と同じ法的性格を有する海面で あり、少しでも国際条約上の交通ルールに 近づけるべく対策を執り、関係者は海難の 防止に努めること強く希望する。併せて来 島海峡を逆走するような外国船への対策も 必要である。
沿岸海域の状況
我が国の沿岸は世界有数の船舶輻輳海域 である。特に太平洋側の輻輳度は高く小型 内航船が多いことも特徴である。衝突事故 の多くが変針点付近で発生することは統計 により明らかにされている。 当協会は、太平洋側の主な変針点におけ る本船の通航実態を調査し、現場船長への アンケートを踏まえ、衝突海難の予防を願 って、1970年6月、潮岬沖や大王崎沖など 8か所に自主設定の通航分離方式を策定し 発表した。その後の通航実態調査とアン ケートを経て2回改良を加え今日に至って いる。 先般実施した外航船船長へのアンケート 結果では、この分離方式は外国人船長の多 くが認知し高く評価しており、どうして諸 外国のように強制化しないのかという声が 多くあった。法的な強制力を持たない分離 通航方式では衝突予防効果もあまり期待す ることができない。 最近、AIS を利用して電子海図上に仮想 のブイを設けることが技術的に可能である と聞く。チャート上に分離通航方式を印刷 することが諸般の事情で難しいのであれば、 これから普及するであろう電子海図では、 変針点にブイを設定し整流を図り、衝突事 故の予防に役立てることも可能であろう。 如何に素晴らしい分離通航方式が制定さ れても、自動操舵に任せて見張りを疎かに する船舶には画餅に帰してしまう。 海難事故の予防は、大切な海の環境保全 に資するものであり、当協会は日本人船員 や日本船が減少した状況にあっても、海難 の撲滅と海洋国家に相応しい海のマナーの 構築に向かって発信していく所存である。はじめに
乗船中の海技者にとって安全運航は最大 の使命である。現場において誰でもヒヤ リ・ハットの経験(不安全行動・不安全状 態など)はするが、それを事故に繋げず、 まして海難事故とさせないことが肝要であ る。 自衛艦「あたご」と漁船「清徳丸」の衝 突事件は記憶に新しいが、発生原因は現在 調査中である。 海難の種類別発生件数の中では乗揚げ・ 衝突・遭難が約65%を占め、機関損傷事故 が約10%占めている(海難レポート2007参 照)。理事官が海難と認知しない機関損傷 や故障はこれをはるかに超える件数が発生 している。 ここでは大型船機関部のこれまでの流れ を振り返りつつ、機関長・士が如何に船舶 の安全運航に係わったかについて考えてみ る。燃料油低質化への戦い
!日本船舶機関士協会は昭和22年9月22 日、任意団体として発足し(昭和27年社団 法人となる)、昨年60年の還暦を迎えた事 になる。正会員1,230名、賛助会員107社の 構成で運営されている。会員数は最大5,700 名を擁した時期があったが、日本海運の変 遷とともに他の日本人海技者と同様減少し てきている。 戦後、海運の復興は、船舶の大型化・専 用船化・高速化と共に、機関室内関連機器 も大きく変化してきた。ディーゼル主機関 は、新技術の開発と改良・改善の歴史であ り、同時に使用燃料油の低質化への戦いで あった。低質化と定員削減のはざまで
昭和30年代中頃より燃料油の低質化が始 まり、時には運転時間500時間位で主機関英知を結集し安全運航と環境保全を
社団法人 日本船舶機関士協会 会長 おおうち ひろふみ大内
博文
シリンダーライナーの磨耗をチェック(内径の計測) 海難レポート2007 事件別発生件数グラフピストンのオーバーホールをしなければな らない状況であった。 海運業界の熾烈な競争は、乗組員の合理 化となり、職員・部員共に定員の削減がス タートした。 燃料油の低質化は、エンジンで使用する 前に清浄機を使用して夾雑物や不純物を除 去する必要がある。勿論現在のスラッジ自 動排出型ではなく、原理は同じでも手動ス ラッジ排出型で、機嫌が悪くなるとスラッ ジ側へ燃料油流出が止まらなくなり、当直 中の機関士を煩わす厄介者であった。 当時の燃料油のグレードは180cst 油へ の挑戦であった。現在は500cst 油が使用 されているのを見ると技術の進歩と取扱管 理手法の改善に目を見張るものがある。
機器の自動化への挑戦
次には自動化への挑戦が始まった。温 度・圧力・水(液)面そして機器類の起動・ 停止は、全て人間が自らの手で制御するも のであった。それが順次自動化され、騒音 と暑苦しい機関室当直もエアコンの効いた 機関制御室に変わってきた(当時制御室の エアコンは機器類の保護のためにあるので 当直要員は必要時を除いて入室禁止との話 があった)。 M ゼロ船(機関室夜間無当直)の出現 は昭和40年前半である。いかに自動化船に 慣れたとはいえ、機関室は当直者がいるの を前提にしてきた機関長・士は、頭で理解 しても心身共に休める状態ではなかった。 ディーゼル主機関の整備作業当時、各社にあって M ゼロ船の第1船 目を経験した機関長・士に聞けば、本番移 行前にトライアルはあったものの、いざ本 番となると、とても仮眠できる状況ではな かったとのことである。 当時乗船していた機関士の話として「M ゼロ当番時、夜間機関室をそっと見回りに 行くと機関長にばったり出会って驚いた」 などという笑えない話が今も残っている。 自動化機器の大幅な採用と各機器の信頼性 の 向 上 は、甲 板・機 関 部 員 の 共 用 化 (DPC)へ動き出し、乗組員の合理化へ と繋がり、船員制度の近代化に進むことに なる。
近代化船・混乗船の出現
日本籍船の確保と競争力強化で近代化船 の出現があったが、一方各船社では外国人 船員(部員)との混乗化が昭和50年頃より 始まっている。 昭和57年、運輸省(船舶局)指導の下に、 産官学の協力体制「船舶信頼性調査委員 会」(S&O 財団)が設立され、機器の安全 性と信頼性調査技術を確立するため、参加 船社からの生データを収集しデータベース を構築した(総データ114,707件)。データ は運航実態の評価や舶用機器の信頼性解析 結果として学会などで報告されている。実 故障情報を対象とした機器信頼性の解析は 継続して重要な課題であったが、近代化船 や混乗化船が増えるに従い、報告書記載の 煩わしさから生データの収集が難しくなり 信頼性調査委員会の作業は終了した。低質化に伴う事故が多発
燃料油の低質化は380cst 油への移行段 階になり、現場ではピストンリングの異常 磨耗・折損、シリンダライナーの磨耗・ ヒートクラック発生、ブローバイによる掃 気室火災、排気弁の吹き抜けなど燃料油に 起因する事故が多々報告された。 これを受けて!日本船主協会 海務幹事 会(機関管理研究会)で船社からの報告書 を集計し、燃料油の分析結果とあわせ実態 を報告した。機関メーカーの努力はあった が、ユーザーである船社(現場機関長士) の協力が、燃料油・潤滑油(シリンダ・シ ステム油)の改善要請となり、又現場での 管理手法の改善となった。 近代化船は最終段階のパイオニアシップ 整備不良で破損した軸受メタル ディーゼル発電機クランクボルト折損事故(11名船)まで進んだが、国際競争力の面 から外国人船員との混乗船への大きな流れ になり、現在に至っている。
故障事例をデータベース化
当協会では、日本人機関長士が海上勤務 から陸上での船舶管理業務への転換が多く なったことを踏まえ、船舶管理会社ならび にその前線で活動するスーパーインテンデ ント(SI)の実態について調査を開始した。 更に、乗船勤務の減少は、乗船中に経験す る機器類の故障などに出会うチャンスが少 なくなってしまう。これをカバーするため、 故障事例を調査し、それを会員に公開し、 多くの故障や事例を共有することとした。 会員所属の船社で起こった事例を報告し て貰い会誌「マリンエンジニア」に掲載、 一方では故障件数をデータベースに収録し、 利用できるようにした。 平成19年度までに3,221件の収録を完了 しているが、データ数としては未だ少ない。 !日本船主協会の協力を得ながら、今後 とも活動を継続し、利用価値のあるデータ ベースとしたいと考えている。過去の事例を有効活用
機関関係の故障やトラブルは決してゼロ にはならない。乗船中の経験が少なくなっ ている今、過去に起こった故障やトラブル を熟知しておくことは極めて有意義なこと である。これによって、事故発生を事前に 防ぐことが出来れば、安全運航ひいては海 難事故を未然に防ぐことになり、燃料油流 出などによる海洋環境の汚損を防止するこ とにもつながるのである。安全と環境を守るために
燃料油の低質化と省エネルギー対策は、 安全運航の達成と共に機関長士に課せられ た命題である。同時に地球環境保全のため、 船舶から排出される NOX・SOX・CO2規制 の実施時期が国際機関で合意されてきた。 メーカーや関係機関でその具体的対策が動 き出した。現場に於ける処方箋は現場の機 関長士が確立しなければならない。!日本 船舶機関士協会は会員の英知を結集して、 船舶の安全運航と地球環境保全に取り組ん でいきたい。 機関制御室の機関長はじめに
航海訓練所は昭和18年の創設から、安全 かつ効率的な航海訓練をとおして、知識と 実践力、海技従事者として要求される資質 を兼ね備えた優秀な人材を育成してきまし た。また、地球環境の保全と社会の発展に 寄与する諸研究も実施しています。 現在、帆船2隻、ディーゼル船2隻、ター ビン船1隻、計5隻の大型練習船を運航し、 従来から実施していた船員養成施設である 大学(東京海洋大学、神戸大学)、商船高 等専門学校、海技教育機構の実習生に加え、 平成9年からは開発途上国実習生(フィリ ピン、ベトナム、インドネシア、バングラ デッシュ)、また平成19年からはフィリピ ン最大の私立商船大学マリタイム・アカデ ミー・オブ・アジア・アンド・ザ・パシフ ィック(MAAP)学生の受け入れも開始 し、国籍も異なる多種・多人数の実習を行 っています。更に国土交通省、海事関係団 体の職員を研修生として受け入れ、船舶運 航に係る実務研修を積極的に行っています。 このように、非常に高密度の実習・研修 を行うにあたっては練習船の安全運航が第 一の責務であり、また練習船での安全管理、 安全活動などは、実習生・研修生の安全意 識向上にも大きく寄与しています。 今回、この紙面をお借りして航海訓練所 における安全運航に関する教育・訓練の取 組みを紹介します。安全管理体制
平成16年10月20日、海王丸が台風23号に よる強風と高波により走錨して伏木富山港 内の岩瀬漁港の防波堤に漂着、座礁、多く の負傷者を発生させるという大事故が発生 しました。当所ではこの事故を教訓とし、 それまで独自に運用していた安全管理シス テムの再構築を図り、平成19年4月「任意 ISM(国際安全管理規則)コードの認証」 を取得し、以降、当所の安全管理体制は ISM コ ー ド に 基 づ く 安 全 管 理 シ ス テ ム (SMS)を適正に実施・維持することを 基本としています。SMS には練習船運航 の特徴に対応した航海支援を取り入れると ともに、乗組員だけでなく実習生、研修生、 便乗者、見学者などに対する安全管理が盛 り込まれています。加えて、日本各地にお ける錨泊地のデータベース化を進め、安全 運航に役立てています。 また、個々の乗組員等の安全確保につい て国土交通省は、船員災害防止活動の促進 に関する法律に基づき、船員災害防止に関 する基本計画(5年ごと)および船員災害 防止実施計画(毎年)を作成し、船舶所有 者に計画の効果的推進の協力を呼びかけて います。これに基づき、当所は独自の船員 災害防止実施計画(毎年)を策定し、更に 現場に応じた練習船ごとの災害防止実施計 画を作成しています。計画の作成および実 施にあたっては「計画を立て」(Plan)→人材の育成と安全運航
独立行政法人 航海訓練所練習船 船長 たけもと たかひろ竹本
孝弘
「計画を実施し」(Do)→「実施結果を評 価し」(Check)→「評価を踏まえて見直 し、改善する」(Act)という一連のサイ ク ル(PDCA サ イ ク ル)を 繰 り 返 し、安 全をスパイラル状に高めていく努力をして います。 一方、乗組員・実習生の健康保持増進の ため、災害防止実施計画と同様に健康保持 増進計画を毎年策定、実施しています。
安全活動
一旦発生した事故に対して、同様の事故 を防止するため「事故に学ぶ」ということ は大変重要です。しかし、教育・訓練機関 である当所において事故は「起こしてはな らないもの」であり、「事故に学ぶ」前に 「事故は絶対に起こさない」という考えに 立って安全活動を行わなければなりません。 そもそも安全とは常に努力を続けなければ 維持できないものであり、「安全」に対す る取組みを組織や個人の「文化」のレベル まで高め、乗組員や実習生が海難事故を起 こさない、安全を最優先とする気風や気質 を育てていく必要があります。そのため当 所における安全活動は、安全文化・安全風 土の醸成を主眼として実施しています。 安全活動の第一歩は乗船時訓練です。乗 組員は5隻の練習船を1.5年から2年の周 期で転船しますが、転船の都度、SMS で 定める乗船時訓練を実施し、船内生活、環 境保護、保安応急、SMS などに関して訓 練を繰り返し行います。実習生、研修生等 の乗船時訓練にはほぼ1日を費やし、特に 初乗船の実習生等には階段の上り下り、手 練習船日本丸すりの持ち方といった船上動作の基本から 徹底的に訓練を行い、安全に対する基本的 な考え方の教育・訓練を実施します。 安全活動を徹底する一方で、発生した事 故災害、ヒヤリハット、軽微な事故に対し ては速やかにその情報を集め、広く周知し て同様の事故およびその事故を契機とする 重大事故を防ぐ必要があります。そのため、 既に構築している船陸間ネットワーク上に 安全衛生に関する「掲示板」を作成し、陸 上・海上を問わずいつでも情報を共有でき るようにしています。事故災害、ヒヤリハ ット、軽微事故報告には事故原因の5M(人 間的要因、設備的要因、環境・作業的要因、 管理的要因、任務的要因)!を記載する欄を 設け、事故に関連した様々な要因の繋がり を解明する手掛かりとしています。その他 にも練習船ごとに、気掛かり情報の収集や 安全パトロール、安全講習会、危険予知訓 練(KYT)、作業前のワンポイント KY な どを積極的に実施し、安全文化・安全風土 の醸成に努めているところです。また、季 刊紙「安全と衛生」を独自に編集、発行し ています。平成20年春に131号を発行し、 30年以上にわたり、安全と衛生の向上に寄 与しています。 船舶運航の面から見ると、気象海象の変 化が激しく、船舶交通が輻輳する我が国沿 岸や内海を主に航行する練習船では、衝突、 乗揚げなどの海難の危険は高くなります。 そのため SMS に基づく各部当直、出入港、 特殊運航などの手順書や要領書を作成し、 厳格な航海当直の維持を図っています。ま た、今年度からは民間の海運会社と連携し、 相互訪船などを通じて安全運航の維持・改 善に関する相互協力体制作りを開始してい ます。
安全を求める人づくり
事故災害を防ぐ様々な工夫・仕掛けを行 っても、それを実施するかどうか、最後は 「人」です。何事にも関心を持ち、安全に 対する強い感受性を備えた、安全を求める 人づくりが大切です。そのためにはヒヤリ ハット事故報告を充実させることが重要だ と考えます。ヒヤリハット事故報告の目的 は、ヒヤリハットが災害へと発展する拡大 要因を取り除くことで事故防止を図るとと もに、作業者がヒヤリハットした体験を報 告しあって個々の作業者の危険予知能力を SMS 航海訓練所 安全環境保護方針向上させ、安全意識を啓蒙するものです。 職員のみならず、実習生に対しても実習 場面におけるヒヤリハット事故報告を行う よう呼びかけ、意識の向上を図っています。 残念ながら報告件数は、年30件程度とま だ少なく、今後はヒヤリハットに対する意 識を高めるための“工夫”が必要と考えて います。また、安全教育も更に充実しなけ ればなりません。安全教育は一方的、画一 的に実施しても効果は期待できません。ト ップ(経営トップのみならず、陸上海上を 含めた組織内全体)の安全に対する熱意や 基本的な考え方を示し、作業者の安全に対 する意識を向上させ、全員で安全意識を高 めていく雰囲気を作るような方向性を待た せることが重要です。 このように安全運航への取組みを実習訓 練の場面で実施することにより、生きた教 材として活用し、安全に対する基本的考え 方の定着に努めています。
安全を守る環境づくり
安全な作業環境を維持するための計画 的・継続的な投資を行い、また職場内の円 滑なコミュニケーションを図り、職場の安 全を守る環境づくりが重要です。各練習船 では既に安全パトロールを導入しています が、これを更に効果的に実施することで、 安全な職場づくりが図られると考えます。 安全パトロールでは各部の担当者が他の部 の職域に対して定期的に実施することが有 効です。おのおのの視点で現場をパトロー ルし、不安全状態、不安全行動などの指摘、 是正、異常の早期発見等のほか、良い点を 評価し、自分の職域とのレベル差を認識す ることで、船内全体の安全に対するレベル アップにつながります。また実習生も含め パトロールに参加することで、全員の安全 への意識を高めることができ、安全を求め る人づくりにも貢献できます。 さらに進めなければならない環境づくり は作業の標準化です。SMS により重要機 器の運用、危険な作業、当直業務などに関 しては手順書、要領書の整備が進み、標準 化が図られつつありますが、まだ十分では ありません。船舶運航に関しては、海難原 因の約8割が人的要因に関連して発生して いることから、航海当直を含め、船内で実 施する主要な作業について、人的要因も考 慮し、安全・確実な当直の維持および作業 を実施するための標準化を急ぐ必要があり ます。おわりに
ひとたび重大事故が発生すると、それま で事故防止のためにいかに努力をしていよ うとも、その努力の何倍もの経済的・社会 的な制裁を受けることとなります。また死 亡災害が発生すれば、事後に再発防止に向 けたどのような努力を払っても失われた命 は戻ってきません。 海難事故は様々な要因が複合・連鎖して 発生すると考えられます。発生の防止には その連鎖を早い段階で切断することが必要 であり、航海訓練所の様々な安全に対する 取組みが安全運航を支える人材育成の一助 になればと思います。 参考文献 ! 1樋口 勲:安全管理の現場力,中央労働 災害防止協会,平成16年7月はじめに
私はこれまで、巡視船艇などの運航実務 に従事してきたほか、海上保安庁の一般職 員を養成する京都府舞鶴市の海上保安学校 において、運用術の教鞭を執ってきました。 また、海上衝突予防法などの海上交通法 規の解釈やその運用のほか、海難防止対策 にも取り組んできました。これらの経験を 通して思うことは、何故、海難が減らない のか、貴重な人命や財産がいとも簡単に失 われるのかといった素朴な疑問です。 近年、船舶には、最先端の情報通信技術 が普及しており、従来のレーダなどに加え、 GPS、AIS(船舶自動識別装置)や電子海 図といった電波や電子の技術を使った航海 計器などが多く搭載されています。これら の航海計器などを上手く使うことにより、 これまで操船者が位置の測定などに割いて いた時間を見張りなどに当てることが可能 となり、航海の安全がより一層確保される ようになるだろうと期待されていました。 しかしながら、現実には必ずしもそのよ うにはなっていません。私は、陸上部署に おいて航行安全を担当していた時、海難が 発生し、貴重な人命や財産が失われる度に、 どうすれば海難を減少させることができる か自問自答しながら、その都度、注意喚起 の文書を発出するなどして対処療法的な対 策を講じてきました。 確かに、対処療法的な対策により、ある 程度の即効は期待できるものの、ある一定 の期間が過ぎてしまうと、また同種の海難 が発生するようになります。正に、『災(海) 難は忘れた頃にやって来る』という諺のと おりになるわけです。 それでは、海難の発生を根本から阻止(防 止)する対策は無いのでしょうか。私は、 抽象的ながら『操船者自らが、絶対に海難 を起こさないという強い意志を持って細心 の注意を払いながら操船をすること』に尽 きるのではないかと思っています。 私は、海上保安学校のかつての練習船「い さづ」(総トン数、約530トン)の航海長や 広島県呉市にある海上保安庁の幹部職員を 養成する海上保安大学校の練習船「こじ ま」(総トン数、約3,130トン、写真参照) の船長を経験しましたが、この経験などか ら、操船者は、具体的にどのようなことに 留意すれば安全運航が確保できるかについ て以下私見を述べたいと思います。安全運航の確保のための留意点
はじめに、我が国において、1年間にど れ位海難が発生しており、その原因は何で あるかについて見てみたいと思います。 海上保安庁の分析結果を基に、結論部分 のみを引用しますと、平成19年までの過去 10年間に発生した海難の年平均隻数は、約 2,600隻前後です。また、海難原因は、そ の約75パーセント強が、「見張不十分」「操 船不適切」「機関取扱不良」といった人為安全運航をめざして再点検と再確認
第二管区海上保安本部 本部長 うめ だ よしひろ梅田
宣弘
的な要因であり、所謂、ヒューマンエラー によるものです。 「間違う可能性のあることは必ず間違え られる」というマーフィーの法則がありま すが、人間が機械(船舶)を取り扱う(操 船する)限りにおいて、間違いは繰り返さ れ、事故は、絶対に無くなることはないと いう事実を認識する必要があります。重要 なことは、起こり得るであろう事故を如何 に少なくするかということです。 事故の発生と事故原因を語る時、引き合 いに出されるのが「ハインリッヒの法則」 です。ご承知のとおり、1個(件)の事故 (アクシデント)に至る過程においては、 29個もの「ヒヤリ、ハット」する小事故(イ ンシデント)があり、その下には目に見え ない300個もの小さな異常(要因)が発生 (潜在)しているというものです。この300 個もの異常(要因)の全て、または大宗を 除去することができれば、事故(海難)は 絶対に発生しないわけです。 私も、これまで数々の「ヒヤリ、ハット」 した失敗事例を経験しましたが、その原因 を考えて見ると、そこには海難を誘発しそ うな潜在的な要因があったにもかかわらず、 それを積極的に除去しなかったことが反省 点として挙げられます。 その中でも、「たぶん大丈夫だろう。海 難なんか起こる筈が無い」といった軽率、 驕慢な気持ちで操船に臨み、遵守すべき基 本的な事項を疎かにしたことが最大の反省 点であったように思います。 以下、私が操船にあたり重要視している 5点について取り上げたいと思います。
「安全運航についての基本原
則の遵守」
昔から、我々操船者に対し、安全運航の ための3L の原則が教授されてきました。 Look−out(見張り)、Log(丸太)と Lead (鉛)の3つの頭文字をとったものです。 つまり、Look−out を怠れば、たちどこ ろに衝突や乗揚げの危険が生じますし、安 全な速力を意味する Log(海上に漂ってい る木材等の至近を自船の船首付近と船尾付 近が通過する時間を測定し速力を算定)と 安全な水深(自船の正確な位置の把握)を 意味する Lead(紐の端に鉛の錘を付け、 それを海底に下ろすことにより水深を測 定)を欠けば、Look−out を欠いた場合と 同様、衝突や乗揚げの危険が増すこととな ります。 この3L の原則をいかなる状況下におい ても操船者は安全運航の要諦として心に刻 んでおく必要があります。特に、教育機関 や船舶運航の職場においては、この3L の 原則を徹底的に教育することが肝要です。「海上交通ルールの理解とその実践」
陸上では、「信頼の原則」がほぼ定着し ていますが、海上では、未だ程遠い状況に あります。海上は陸上と違い、種々の国籍 の船舶に種々の国籍の船員が乗船している ため、各国における海事教育の相違などに より、船員の知識・技能の点で、レベルに 差のあることは否めません。 実際、「こじま」による世界一周の航海 において、世界の共通ルールである海上衝 突予防法でさえ、十分に理解しているのだろうかと疑わざるを得ない外国船舶を散見 しましたし、我が国の周辺海域においても しばしばこのような船舶を見かけます。 このような実態があることを考えると、 相手船がルール通りの運航を実践している 筈であるという信頼の原則を期待して自船 を操船するのは極めて危険であり、このこ とを肝に銘じておく必要があります。 さりとて、安全運航を確保するための基 本の一つは、海上交通ルールの十分な理解 とその実践であることは論を待たないとこ ろであり、今後とも船員教育において、こ のことを徹底させる必要があります。
「船舶間同士の互譲の精神の涵養」
洋上においては、海上交通ルールを厳格 に遵守するだけでは、船舶間の衝突を防止 することは出来ません。 海上衝突予防法第8条は、「船舶は、他 の船舶との衝突を避けるための動作をとる 場合は、できる限り、時間的に十分な余裕 のあるうちにその動作をとり、かつ、船舶 の運用上の適切な慣行に従って、ためらわ ずにその動作をとらなければならない。」 と規定しています。これは、相手船との複 雑な見合い(航法)関係が出てくる前に、 相手船のことを考え、自船から先に避航(先 行避航)することを奨励しているわけです。 言い換えれば、お互いが譲り合いの気持 ちを持って自船を操船すべきであるという 互譲の精神を謳っているものと理解するこ とができます。操船者に、この互譲の精神 が涵養されることとなれば、衝突海難は容 易に防止できるものと確信しています。「良好なコミュニケーションの促進」
陸上の組織でもコミュニケーションの不 足や欠如が原因で様々なトラブルなどが発 生しています。船舶においては、時として コミュニケーション不足や欠如が海難発生 の原因となる場合があります。船舶が、安 全を確保するためには、常時、四囲の状況 を的確に把握しなければなりません。 しかしながら、操船者一人で四囲の状況 把握に万全を期すことは不可能であり、見 張員等からの的確な報告は欠かせません。 近年、船橋内におけるコミュニケーショ ンを円滑にするための BRM 研修が盛んに 行われていますが、幾ら研修を積んだとし ても人間関係において、互いに信頼関係が 醸成されていなければ、機能しないものと なり、情報共有という真のコミュニケーシ ョンを図ることはできません。このために は、仕事全般の管理監督者であり、また、 自船の運航に全責任を有する船長自らが、 船内の融和に努め、コミュニケーションを 促進する必要があります。 一方、自船内の乗組員同士のコミュニ ケーションのみならず、相手船とのコミュ ニケーションも重要です。とりわけ、ふく そう海域においては、相手船の操船意図を 早期に把握することが極めて重要となりま す。その一例として、私は、マラッカ・シ ンガポール海峡など船舶交通がふくそうす る海域において AIS が衝突回避の手段と して有効に機能することを確認しました。 これは、AIS により知り得た相手船の船 名を VHF を介して喚呼し、相手船の操船 の意図を早期に知ることにより、お互いが未然に衝突を回避するというものです。 ただ、この場合において、相手船とのコ ミュニケーション能力がなければ、その実 効を期すことはできません。このためにも、 これからの時代、英語などの語学力を身に 付けることが益々重要となっています。
「操船時における平常心の保持」
船舶のふくそうする海域や視界不良時に おける航行においては、操船者は、非常に 神経を使うものです。常に平常心を保って 操船に当たりたいものですが、なかなか思 うようにはいきません。理由としては、自 分自身の操船能力不足、航行海域の不案内 や気象・海象が改善しないことへの不安、 定刻どおりに運航できないことへの焦りな どに加え、睡眠時間の不足、オーバーワー クによる疲労、ストレスの蓄積などといっ た要因が考えられます。操船者が、平常心 を失った状態は、船舶にとっては、正に危 機的な状況にあると言えます。それでは、 操船者が、平常心を常時保つた めには、どうすればよいのか。 その要諦は、「悲観的に準備 し、楽観的に対処する」という 危機管理への心構えを堅持する ことではないかと思っています。 具体的には、経験と知識の不断 の蓄積に加え、事前にあらゆる ケースを想定(イメージトレー ニング)し、最悪のケースの場 合でも楽観的に対処(操船)で きるよう、発航前における機器 類などの点検やあらゆることを 想定した航海準備をしっかりし ておくことが必要であると考えています。おわりに
現在社会においては、既に「安全神話」 が崩壊していると言われています。それだ からこそ、安全を確保するためには、「各 種システムの謙虚な再点検」や「安全のベー スとなるもの、それに欠けているものがな いかの再確認」を確実に実施することが不 可欠です。人間が人間である以上、必ず過 ちを冒すものであることを再認識するとと もに、「安全運航の確保」のためには、愚 直なまでに潜在的な危険要因を排除するこ とが操船者に求められているのです。 安全の ABC と言われるものがあります が、これは、「あ(A)たり前のことを、 ぼ(B)んやりしないで、ち(C)ゃんと やれ」というものです。情報通信技術が急 速に発達した時代であるからこそ操船者に 基本的な事項の再点検・再確認が求められ ているのです。 霧のゴールデンゲートブリッジ真下を航行する練習船「こじま」四国開発フェリー株式会社
∼フェリー会社と乗組員に聞く∼
様変わりしたフェリー航路
四国愛媛を起点として阪神に直行する大 型フェリーは1社を残すのみとなっている。 その1社、愛媛県西条市に本社を置く四 国開発フェリー株式会社(愛称:オレンジ フェリー)を訪ねた。 今から20年前に供用が開始された瀬戸大 橋や10年前の明石海峡大橋、さらには、9 年前のしまなみ海道の全通など本州四国連 絡橋の供用や高速道路網の整備による影響 が大きかったと振り返るのは、当社の実践 せ の けい ぞう 部隊で指揮を執る副社長の瀬野恵三さん (58歳)である。瀬戸内海の大動脈として
当社は、1万総トン級2隻と1万5千総 トン級1隻、計3隻の大型カーフェリーを 所有する。愛媛の東予港・新居浜港と神 戸・大阪を結ぶ。年間輸送量は、トラック 16万台、乗用車2.5万台、旅客30万人にお よぶ。 オレンジフェリーは、日本国中が、モー タリーゼーション、カーフェリー時代の到 来と沸き返っていた昭和47年東予∼大阪に 3,000総トンクラスのカーフェリー2隻を 投入し、航路を開設した。昭和51年には、 3隻3便へ。輸送需要の増加に対応し、船 の大型化を図るとともに、平成15年には、 将来における九州・四国・京阪神を結ぶ海 上輸送ルートの重要性を予測し、同ルート の海陸一貫輸送を達成するために、グルー プ会社として八幡浜∼臼杵航路に新規参入 を果たした。同業他社と異なった発想
東予港は、フェリーバースとして極めて 恵まれた環境にあった。背後地に広いス ペースを確保していたことで、急を要しな いコンテナ、シャーシはこのスペースに仮 置きし、比較的積みスペースに余裕がある 昼便に積み込んで運ぶという効率的な輸送 を行うことができたのである。 当時、ほとんどのフェリーバースは、乗 船待ちの大型トラックや乗用車であふれ、 あふれた車は、一般道までつづき、交通渋 滞まで引き起こしていたのである。 こうした、フェリー事業の将来を予測し、 荷主ユーザーのニーズに積極的に応えてい取材:安全対策への取り組みを追う
フェリー、漁船、タグボート、内航船
四国開発フェリー副社長の瀬野さんくという初代社長の発想があったからこそ 厳しい競争時代をしのいでこられたのだろ うと瀬野さんは振り返る。
欠かせない地元の協力と
従業員の力
「初代社長が残した、『昨日よりは、良 い今日とする。今日よりは、より良い明日 となる』という社訓をこれまでも念頭にお いてきたし、これからも基本にしていきた い。地元住民の理解と協力、さらには従業 員とその家族の力があってこそフェリー事 業は成り立つものです」と瀬野さんは強調 する。 初代社長から現社長に至るまで、この考 え方は、継承されている。新たに整備され た新居浜東港の新バースも、フェリー事業 としての特性を生かし、港湾地区にあらゆ る貨物に対応可能な4,000坪の物流倉庫を 確保し、ユーザーのニーズに的確に応えて いる。 当社で運航管理者として、日々奔走する ま き あきひこ 真木明彦さん(55歳)から、フェリー事業 としての安全対策について聞いた。無事故への誓いを新たに
「当社では毎年4月、グループ会社を含 む全社員が参加する安全確認のための自主 訓練航海を行っています。 昭和59年4月17日濃霧の備讃瀬戸で当社 所属フェリーが砂利採取船と衝突し、相手 船の乗組員2名が亡くなるという、あって はならない重大海難が発生しました。この 事故の痛切な思いを絶対に風化させてはな らないとの決意のもとに、事故があった4 月17日を中心に訓練航海を実施、全社員が 向こう一年間の無事故への誓いを新たにし ているのです。この訓練も今年で25回目を 数えています」と真木さん。LANで迅速・確実な情報を共有
「運航管理は、運航者全員が、情報を共 有し、その同じ情報に基づき正確な判断を していくことが重要です。当社では、運航 船舶、各営業所、各現場事務所が社内 LAN で繋がっています。港内状況を把握するた めのカメラをはじめ、各船の乗組員名簿、 積荷、旅客など運航に関する情報を集積で きる運航データベースのシステムを構築し ています。ノートパソコン1台で社内、自 宅、移動中など、24時間体制でフェリーの 運航状況をすべて把握することが可能です。 物流倉庫を備えた新居浜東港(おれんじホープのブリッジから) 運航管理者として日夜奔走する真木さんしたがって、会社から発信する運航上の指 示も現場判断と大きく異なることは、ほと んどありません。また、乗組員への教育訓 練として過去の海難事例を引用し、シミュ レーションを行うなど事前対応を可能とす る訓練の実施やヒヤリ・ハットの経験事例 の発表を行い、原因の究明と対策を講じる ことによって事故発生の要因を除去する取 り組みを進めています」と真木さんは、運 航管理者として最も重要視していることに ついて話してくれた。