はじめに
2008年2月24日、富山県の東部に堤防を 大きく超えて高波が人家に侵入しました。
地元、北日本新聞の被害記事によれば24日 早朝、黒部市生地から入善町芦崎地区付近 一帯の海岸線で高さ5m を超える高波が 発生。黒部市生地で午前6時から6時半に かけて高波が高さ3m の堤防を越えて住 宅地に流入、70棟余りが床下浸水。住宅や 倉庫八棟でガラスや壁を破る被害。入善町 芦崎地区は、150世帯に避難指示。射水市 の新湊漁港沖合は高波で2人が漁船から転 落し、1人が死亡とあります。天気図を見 ますと北日本で低気圧が急速に発達し、西 高東低の冬型気圧配置が非常に強まって、
北日本の海上は猛烈にしけました。今回の 低気圧を「爆弾低気圧」として何度も繰り 返して放送していた TV 局もありましたが、
この表現の是非については後半で、筆者の
意見を述べたいと思います。
富山湾の地形と寄り回り波
富山湾は西に能登半島、東に3,000m 級 の北アルプスの山々という袋状の地形です。
冬期北西季節風が卓越する場合は能登半島 が自然の防波堤となりますが、北から北東 方向の開口部からは高い波の侵入が容易で す。2004年10月、台風23号の暴風と高波で 海王丸が座礁事故を起こしたのも、北東か ら北々東方向からの暴風と高波が原因でし た。富山湾の波浪害に古来、寄り回り波が あります。低気圧が発達しながら通過した 後、富山湾の風や波が静まり、漁やその準 備を再開しようとする頃に、突如打ち寄せ る高波をいいます。不意を突かれるために 被害が大きく、歴史上多くの悲惨な記録が 残されています。この寄り回り波は、主に 北海道西方海上の海域で発生した波浪が、
うねりとして富山湾に伝わってきた高波で
富山湾の高波―寄り回り波について―
!日本気象協会 気象予報士
とみざわ まさる
富沢 勝
2008年2月24日03h 天気図
2008年2月23日21h 天気図
す。冬型気圧配置となり、北海道あるいは その東方海上に非常に発達した低気圧があ り、北海道西方海上で強い季節風が長時間 続くと、この海域で高波が発生します。こ の高波がうねりとなって南々西へ向かうわ けですが、日本海から富山湾の奥にまでの びる海域は1,000m 以上の深い海域のため、
うねりのエネルギーを減衰させることが少 なく、その伝搬に条件が整っているのです。
低気圧の中心は2月22日21h に日本海西 部で1008hPa でしたが24時間後の23日の21 h に は980hPa と1日 で 実 に28hPa も 気 圧 が下降して、急激に発達しました。「爆弾 低気圧」とは北緯60°付近で中心気圧が24 時間で24hPa 以上低下する(北緯40°なら 約18hPa 以上)温帯低気圧をいいます。
気象庁は2007年春から予報用語を改正し、
○低気圧により防災上注目すべき天気現象 や特徴などが異なることから、低気圧に ついての特別な呼称は設けない。
○状況に応じて、「急速に発達する低気圧」
「猛烈な風を伴う低気圧」などのように 具体的な記述、解説を行う。とあります。
爆弾低気圧の「爆弾」は、戦争や紛争を 想起させるのでよくないとの噂も聞きます。
いずれにしても、気象注・警報とその内容 や各地の実況値を正しくわかりやすく伝え、
各地気象台や管区気象台、気象庁の出す情 報に注意すべきで、気象庁が決めた予報用 語をきちんと使うべきと筆者は考えます。
しかし、この寄り回り波という大波のも たらす破壊力から漁船の安全や海岸地方に 暮らす人々の生命財産を守るために、どう やって的確な情報を提示して、早めの避難、
退避をするかといった課題が新たな問題点 となりました。今後は国交省、水産庁、県、
気象台などの壁を越えて連携して発生メカ ニズムの解明にあたるという方向性が出て います。
※(参考資料は気象庁、富山地方気象台 HP、
気象協会天気図)
寄り回り波発生時の天気図例と水深概略図
富山地方気象台 HP より
低気圧の発達過程定 2008年2月
気象庁 HP より
(表1)プレジャーボート海難種類(5年間)
(表2)
(表3)ミニボート海難隻数と海難に伴う死者数