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同時に3カ所の脳出血を認めた2例

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Academic year: 2021

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(1)

10 函医誌 第26巻 第1号(2002)

 高血圧性脳出血は,通常一カ所の出血であるが,稀に 離れた部位に同時に脳出血が生じることがある。このよ うな多発性脳出血は,高血圧性脳内出血の0.7-2%程で,

稀な出血と考えられる1,2,4)amyloid angiopathy も多発性脳出血を起こすことがあるが,組織学的に確定 診断を行ったamyloid angiopathyによる多発性脳出血 の報告はなく,明らかな頻度は不明である。

 多発性脳出血の機序として,1)1次性脳出血が全く 同時に発生した。2)1次性脳出血に起因する高血圧,

脳圧亢進,脳循環動態の変化により,遠位部の血管が破 綻を起こし2次性に脳出血が発生した。の2つの場合が あると考えられている1,2,4)。我々は,同時に3カ所に 出血が見られた脳出血例を2例経験したので報告する。

症     例

 平成12年4月1日より平成131231日の間に,血管 奇形,脳動脈瘤破裂,静脈血栓症,外傷などによる脳内 出血を除く,症候性脳内出血128例が当院へ来院した。こ のうち同時に多発性の脳出血を認めたのは,高血圧性脳 出血106例中1例0.9%),皮質下出血22例中1例4.5%) 合計128例中2例(1.5%)であった。同時に3カ所の脳 出血を認めた極めて稀な2症例を報告する。

 症例1:66歳男性。高血圧,喘息の既往,習慣性アル コール多飲,喫煙歴があり,来院時肝機能障害を認めた。

平成131128日突然の左片麻痺で発症した。右巨大被

殻出血(128ml)に加えて,両側小脳半球後方の小脳鎌

に接する部分に脳出血を認めた(図1)。被殻出血に対し て開頭血腫除去術を行った。急速な脳圧亢進が後頭蓋窩 の静脈圧を変化させ,小脳鎌近傍の小脳皮質下出血が生 じたと考えられた。

 症例2:79歳女性。パーキンソン病の治療を行ってい た。平成131120日突然の左麻痺にて発症,右頭頂葉 の3カ所の皮質下出血を認めた。MR Venographyでは 明らかな静脈閉塞は見られなかった(図2)。高血圧がな く,高年齢からamyloid angiopathyによる出血と考え ら れ た。最 初 の 出 血 近 傍 の 局 所 脳 圧 亢 進 が 起 こ り,

amyloid angiopathyで脆弱になった近傍の血管から出 血したものと考えられた。

考     察

 血管奇形,脳動脈瘤破裂,静脈血栓症,外傷などを除 いた脳内出血は,組織学的にmicroangiopathylipo- hyalinosisamyloid angiopathy)が原因であると考え られている。Lipohyalinosisでは,罹患動脈の血管壁自 体が脆弱化しており,さらに微小動脈瘤が形成され,

amyloid angiopathyでも,微小動脈瘤の形成や,血管壊 死が起こり血管壁が脆弱化しており,出血の原因とな 5)

同時に3カ所の脳出血を認めた2例  

今泉 俊雄1, 吉川 純平 千葉 昌彦 丹羽  潤 熊坂隆一郎 奈良  理 伊藤  靖 小出 明知

3Simultaneous Intracerebral Hemorrhages

−Report of Two Cases

Toshio IMAIZUMI,Junpei YOSHIKAWA

Masahiko CHIBA,Jun NIWA,Ryuichiro KUMASAKA Satoshi NARA,Yasushi ITOH,Akitomo KOIDE

Key  words:Multiple intracerebral hemorrhages ――

       MRI ―― CT ―― Intracranial pressure  症例報告 

1,市立函館病院 脳神経外科 2,市立函館病院 救命救急センター

(2)

11 函医誌 第26巻 第1号(2002)

1.症例1について

 過去の報告から同時に多発性の高血圧性脳出血症例の 特徴は,1)稀であること。2)発症年齢や出血部に関 しては単発性の高血圧性脳出血と同様であること。3)

重症例が多いこと。4)皮質下出血が同時に合併する場 合があること。などである1,2,4)。症例1では,巨大被 殻出血から離れた後頭蓋窩の小脳鎌を境に左右対称に小 脳内の血腫が見られたことが興味深い。こうした被殻出 血や視床出血に小脳出血が合併する症例は,多発性脳出 血では決して稀でない4)。通常高血圧性小脳出血では歯 状核部が多く,小脳の皮質直下の出血は稀である4)。こ うしたことから症例1では巨大出血による二次的な高血 圧による遠隔部の動脈破綻,静脈や毛細血管からの出血 が原因である可能性は低く,発症時の急激な脳圧亢進に より静脈圧が急激に上昇し,静脈洞に近い小脳脳表の出

血が起こったと推測される。本例でアルコール,高血圧,

肝障害が多発性出血に関与したことは否定できない。

2.症例2について

 症例2は高年齢であり,高血圧がないこと,皮質下出 血であることからamyloid angiopathyが原因と推測さ れる。直径200μ m程の動脈が1本破綻しても出血巣は せいぜい直径1cm程でしかない。破綻動脈や破綻動脈が 属する動脈系に血管痙攣,血栓形成,血行停止などによ る循環停止が起こり,その結果細動脈に急激な透過性亢 進が起こり,二次的に出血が大きくなっていくと考えら れている5)。実際,組織学的に出血辺縁部の細血管は類 線維素変性が強い。また,静脈や毛細血管からの出血も 関与する。Amyloid angiopathyでは,高血圧の合併,抗 凝固剤の服用,外傷が脆弱化した血管損傷の引き金とな 3)。症例2では最初の出血による周囲の局所脳圧亢進 図1 症例1

 来院時のCT(左,中央):右被殻の巨大な脳出血に加えて,両側小脳半球後方の小脳 鎌に接する部分に脳出血を認めた。

 来院1週間後のT 1-weighted MR image(右):小脳鎌に接する部分に小脳皮質下出血 を左右に認めた。

図2 症例2

 来院時のCT(左,中央):右前頭葉,頭頂葉に小さな皮質下出血を認めた。

来院3日目のMR Venography(右):明らかな脳表静脈の閉塞はなく,血腫が独立して 3カ所あることがわかった。

(3)

12 函医誌 第26巻 第1号(2002)

が脆弱化した血管を伸展,圧排し,さらに透過性を亢進 させ多発性の出血の原因となったと推測した1,2,4)

文     献

1)Kabuto MKubota TKobayashi Het al Simultaneous bilateral hypertensive intracerebral hemorrhagesTwo case reports. Neurol Med ChirTokyo199535584-586.

2)Kohshi KAbe HTsuru ESimultaneous hy- pertensive intracerebral hematomasTwo case reports. J Neurol Sci, 2000181137-139.

3)McCarron MONicoll JARIronside JWet al Cerebral amyloid angiopathy-related hemorr- hage. Interaction of APOE ε2 with putative clinical risk factors. Stroke, 1999301643-1646.

4)丹野裕和,小野純一,須田純夫ほか:同時に発生し た多発性高血圧性脳内出血の検討−5症例の報告と文 献的考察−.脳外科,198917223-228.

5)吉田洋二:高血圧性脳出血の病理.高血圧性脳内血 腫の外科治療.半田 肇,佐野圭司監修.The Mt.

Fuji Workshop on CVD1986pp-.

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