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喀血のコントロールに苦慮した1例 利用統計を見る

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山梨肺癌研究会会誌 1ユ巻2号 1998

喀血のコントロールに苦慮した1例

山梨医科大学 第1病理 平島奈緒子 三俣昌子 山梨厚生病院 呼吸器外科 坂晶 虎走英樹 有泉憲史 橋本良一 同 呼吸器内科 池田華子 岩井和郎 要旨: 喀血を主訴として来院した56才の男性の症例について 検討した。画像上は、胸部CTで左上葉を中心に肺胞出血があり、 左気管支動脈造影にて、動脈の拡張と末梢側の不規則なコイル状の 造影が見られた。喀血のコントロールのため、左肺上葉切除術が施 行され、切除肺について病理学的検討が加えられた。組織学的には、 S3を中心に限局性に肺末梢の小動脈、小静脈の内膜肥厚と内腔狭窄 が見られたので、肺静脈閉塞症と同様の病変が喀血の原因となった と考えられた。 key word:喀血、肺静脈閉塞症、内膜肥厚 はじめに  喀血は、血疾程度のものから緊急処置を要 するものまでその程度は様々であり、原因と なる疾患も多岐に渡るため出血部位の確認と その機序の鑑別が困難な事がある。  今回、山梨厚生病院にて、喀血を主訴とし て来院し、術前にはその出血原因がつかみ難 かった小動・静脈病変例について報告する。        症 例

患者:M.N殿56才男性

主 訴:喀血 既往歴:生来の聾唖者で、30才頃に腸閉塞 にて手術歴あり、54才から十二指腸潰瘍。 家族歴:特記事項なし

喫煙歴:1日20本

現病歴:平成10年8月末より寝汗を自覚し ていたが、特に発熱等なかった。同年の9月

28日頃より咳が多くなり、9月30日血疾

を認めた。同年10月3日、200cc程の

喀血があり、同日緊急入院となった。

現症:身長162cm体重555㎏

脈拍72/分、整血圧92/60mmHg体温36.9℃ 表在リンパ節は触知せず心音純呼吸音清 腹部平坦軟 腸雑音低下 肝脾腫を認めず ばち指を認めるがチアノーゼは見ない 入院時検査所見:白血球が11300/μ1と上昇し ていたが、CRP上昇なく、凝固能にも異常 を認めなかった。動脈血ガス分析にて、68.4 皿mHgと低酸素血症傾向を示していた。 画像所見及び経過:9月30日、外来初診時 の胸部X線正面像(図1)では、左上葉に淡 い濃度上昇が見られた。

 10月3日、入院時の胸部CT〔図2)で

左上葉S3を中心に肺胞隔壁に囲まれたような 形態の斑状の濃度上昇が認められ、肺胞出血 が考えられた。この他、右中葉、左上葉舌区、 両下葉にもすりガラス状の淡い濃度上昇域が 存在したが、吸入性の変化と思われた。

図1 胸部X線写真

一96一

(2)

平成10年9月1日 同日L気管支鏡が施行されたが、凝血塊の付 着はあったが新鮮な出血は認めなかった。  翌4日施行された気管支動脈造影では、右 気管支動脈には著変を認めなかったが、左の 気管支動脈は、上方に向かう2本の動脈が拡 張していて、それより末梢では、コイル状に 造影された。 (図3) この時点で、明らかな出血がなかったこと、 気管支動脈の径が細い事より、コルク、スボ ンゼル等の挿入は不可能と考えられた。検査

室から帰室後、更に200ccの新鮮血の喀

出が認められたため、喀血のコントロールの 為に、同日、左肺上葉切除術が施行された。  切除肺においては肉眼的にS1∼S3を中心 に強い出血が見られ、気管支内に凝血塊の付 着を認めた。また肺門側の動脈は拡張してい た。組織学的には、出血部に限局して末梢の 小動脈と小静脈の中等度∼高度の細胞線維性 内膜肥厚と、これによる内腔の狭窄が見られ た。 (図4)その静脈の内膜肥厚のすぐ末梢 側で、血管壁が破れ肺胞腔に出血していると ころが1ヶ所存在した。 (図5)  以上より、肺静脈閉塞症と同様の病変が、 喀血の原因となったと考えられた。患者は、 術後に喀血は見られず、経過は良好で約3週 間後に退院した。         考 察  肺静脈閉塞症:PVOD(pulmon町y ven。− occulusive・disease)は、肺内静脈とくに肺小 静脈の内膜肥厚、及び血栓による進行性閉塞 を特徴とし、僧帽弁狭窄症や肺動脈幹狭窄な どの肺静脈遠位の狭窄、閉塞のないものであ るり。  比較的若年者(20才以下)に多く、成人 では2:1で男性に多い。  症状は一般の肺高血圧症と同様で、労作時 呼吸困難、易疲労感を初発とし、その後には うっ血、水腫、チアノーゼ、失神、血疾など が見られる。  その原因は、まだ不明なところが多いが、 血栓症の先行が示唆されている2)。その他に 感染症(vaSOtropic Virusや、インフルエンザ、 トキソプラズマなど)、免疫異常、細胞毒性 のある化学療法剤(アルカロイドなど)など の関与が報告されている。  病理学的には、今回の症例と同様に、小静 脈の内膜の線維性肥厚による内腔の部分的、 あるいは完全閉塞が主体をなしている。また その閉塞とともに再疎通像が見られ、周囲の 毛細血管の拡張像とともに血管腫様になるこ ともある。気管支動脈は拡張し、中膜の肥厚 を見ることが多い。  その予後は通常不良で、罹病期間は幼児で 数週、成人で1年ないし2年である。時には

骨髄移植に伴ったPVODのように、ステロ

イドに反応することもある3)。

図2 胸部CT像

図3二左気管支動脈造影 一97一

(3)

山梨肺癌研究会会誌 11巻2号 ユ998 今回の症例は、病理学的に1.細動脈から細静 脈にかけての内膜肥厚がみられ、2.限局性の 気腫形成が見られ、3.その付近の小葉間隔壁 の小静脈に、かなり著明な変化を見る事から 変化の部位と質から見ると、VOD(ve且。一 。cculuSive disease)と同様のものと考えられた。 但し、病変がかなり限局性なので、肺高血圧 症状を伴う事はなかったのではないかと思わ れる。また、血管壁が破れていたところの周 囲の肺胞には、多量の出血とともにヘモジデ リンを貧食したマクロファージを多く認める ので、過去にも少量の出血はあった可能性も ある。       ま と め 1、喀血を主訴とした56才男性の症例を検  討した。 2、肺の末梢側小∼細動脈・静脈ともに内膜  肥厚が見られ、それより中枢側は拡張、  蛇行し、肺胞中隔毛細血管が破裂出血を  来していた。 3、末梢病変は、PVODと同様の病変であ 。,tt   るが、病変の領域が狭いため、肺高血圧  症の所見を示さなかったと考える。        参考文献 1.清水興一:肺静脈閉塞症.病理と臨床1991  Vol.9No.8:1022−1026 2.Wagenvoort,C.A.,and Wagenvooπ, N.:Pathol−  ogy of pulmonary hypertension, New York、  1977. John Wiley&Sons、 inc. 3.Williams LM et a1.:Pulmonary veno−occluSive  disease in an aCtult following bone marrow tran−  splantation, Chest,1996109(5):1388−91

      撫

      譲

麟。、.me−le.ec、

ゴ竺:態壷ξ醸叉ダ

1∴1蘂㌫響:己響・、

∴・:ジ,汽∴一ビ

㌫ご㌦無導、

図4:組織像(HE染色)

      轍

      灘

図5.組織像(EVG染色)

一98一

参照

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