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子どもの食行動と食教育に関する研究

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茨城大七教育学部教育研究所紀要20号(1988)413 一一51 43

子どもの食行動と食教育に関する研究

一生活時間調査および栄養調査の分析より一

中 澤 き み

は  じ め に

 胎内で生じた小さな生命はまだ自分で栄養を摂取する力をもたず母体血を栄養源として発育する。栄 養素の授受は胎盤で行われ,児にとって必要な栄養素が必要な量だけ鼻血から児血に移行する。母の食 事が不充分な場合でも栄養素は児に優先的に与えられる。たとえそれが母親に意識されなくても母は骨 身をけずって胎児の栄養を守っている。児が新生児として生まれ出ると早速自分で栄養をとり入れる行 動が始まる。児の唯一の栄養源である母乳は児の未発達な消化機能,速やかな発育,まだ弱い感染防衛 力などに適するような形態,組成をもち,児の必要に応じて分泌量も変化する。授乳時の母波幕は平安 そのもので,児は哺乳を通じて生後はじめての人間関係を樹立する。生異数カ月間は全世界の子どもが ほぼこのような栄養条件のもとで育ち,生活環境の格差にもかかわらず発育や健康状態も全く変わらな い。その後はこの乳児栄養の理想像とも雷える母乳から乳児を離す準備が開始される。見方をかえれば 長期間続けられた単調な乳栄養から百花練乱の食生活に旅立つ第一歩であり,授乳哺乳による母との皮 膚のふれ合いを断つ独立への第一歩でもある。このように離乳は母子両者にとって身体的にも精神的に も,また生活面からも画期的な変化をもたらすビッグエベントである。今までと異なりどんな食物が栄 養の供給源になるかには大きな地域差,家庭差があり,その選択調整如何が乳児の健康や発育に強い影 響を及ぼす時期でもある。途上国にみられる小児の強度の栄養障害の多くはこの時期から発生し始める。

離乳が完了して幼児期に入ると子どもの食環境は一変する。消化機能の発達により,また自制する力も つき家族と一緒の食卓を囲むことが可能になる。これは子の人間関係を広げ深めるのに役立ち,また食 事作法を身につけさせるしつけの時期ともなる。保育所,幼稚園などにおける集団での食事は友達関係 を育てるの社会性をのばす機会となり,また食物に対する偏見の少ない離乳期にかけては生涯の健康を 左右するよい食習慣確立の好機である。しかし知能発達と生活環境とがうまくかみ合わないと食行動に いろいろの問題をひき起こし易く,これに親の過保護や無関心が加わって事態を悪化させる例も少なく ない。前記の離乳期に頻発する途上国の栄養障害は幼児初期に向けで一層強度になることが多く,現在 国際的救済活動の焦点になっている。学童期から思春期の問に栄養所要量の最も大きな,言いかえると 食欲の最も旺盛な時期を迎える。そのため幼児期にみられた食に関する問題行動の多くはこの間に消失 する。一方,この一時期に加速される身体発育,性的成熟,高度化する精神作用などが相まって意識的 に栄養摂取を制禦しようとする行動が現われ.これが誤った方向に進むと,時に重大な健康障害を招く ことがある。この時期には食環境は,一層拡大され,自分で食物を選択しなければならない機会が多く なるので健康維持のために栄養・食生活に関する基礎知識をしっかりと身につけさせたい時期である。

 さ一Cs近年成長期の子どもの生活行動と,それに伴う食生活に変化が起ってきていぎ1従来子ども の生活行動は,子ども達で作る小さなグループを単位として行なわれ,遊びの場を形成してきた。さら

(2)

に近隣社会における人間関係にゆがみを生じ,子ども達自身の肉体的行動の場を空間的にも時間的にも 失いつつある。このことを食生活全体に与える変化としてみるならば,遊びとしてのエネルギー消費量 が大きく減少した結果,三回の食事と間食によるエネルギー摂取要求量が少なくなってきていることに 表われている。エネルギー消費量が減少している現在,子ども達の食事に対する要求は,生理的要求か ら精神的,文化的要求へと変化が起ってきている。その結果,食事や間食が遊びの行動としてとらえら れ,場合によっては三回の食事よりも間食に対する要求が大きくなってきている。図1に示すように学 童の体位は非常に個体差が大きく,平均値に対する偏差値の高い子どもが増えてきている。しかし,栄 養情報は平均的な数値で提供されており,子ども達の個別の要求に対応できる栄養情報は示されていな い。生活行動の違う子どもには,それぞれ異なった生理的要求があるという理解がなければならない。

個々の子どもにとって,一つのケーキ(菓子)の持つ生理的意味には大きな違いがあり,子どもの行動 に対応して,どのように食物をコントu一ルするかという知的行動が求められる。その行動の方向づけ はホームマネージメントの重要な一端を担っていると考えられる。第三次改訂栄養所要蚕ほ,成人を対 象として身長・体重別となり,個体差を問題にし始めているが,もっと個体差の大きい成長期の学童に

とっては,年齢階層別にしか対応していない。学校給食についても同様であるが,個体差に対応させよ うとすると自由摂食にまかせることになる。自由な摂食が生理的要求に対応したものであればよいが,

好き嫌いなど好みがはたらいた場合には問題が生じる。子どもの好き嫌いについて分析し,人間が文化 的要求にどう対応し,生理的要求との間でバランスのとれた条件とは何であるかを明らかにする必要が 生じるのである。学童期の食行動に関する研究の一課題として,以上のような諸問題が指摘される。

(蛎)

(%)

10

5

o

身 長

全国平均 IO

5

o

(鰯)

10

5

o

130 140 150 160 (cm)

(%)

10

5

o

30 40 50 60 70 (kg)

図1 対象児の身長,体重の分布

   全国平均については昭和6玉年度学校保健統計より作図

(3)

中澤:子どもの食行動と食教育に関する研究 45

研 究 目 的

社会構造の変化に伴って,学童期の子ども達は肉体的行動の場を空間的にも時間的にも失いつつある のが,今日そして今後の問題である。エネルギー消費の状況について,学童の生活時間調査を行ない,

消費行動の問題点を確認することは意義あることと考える。

 それぞれの子ども達がどのようなエネルギー消費パターンを持つかを解析することによつで,子ども の行動の個性に対応したエネルギー供給のための資料と,供給万法論を確立するために必要なデーター を得ることを目的として本研究を行なった。

調査対象および方法

 調査対象は生活時間調査を含めた調査プログラムの内容を理解し,子ども自身が解答し得る学齢であ ることを条件として小学校5・6年生を対象とした。水戸市内の小学校及び鹿行地区の小学校5・6年 生を対象に調査を行なった。対象学童数は男子270名,女子273名,合計543名である。調査期間は昭 和62年7月の平日の一日とした。

 調査の内容は,学童の生活に関するアンケート調査と生活時間調査(time study)および栄養調査 からなり,アンケートの内容は性別,家庭の職業,家族構成,通学方法,通学時間,クラブ活動の状況,

帰宅後の生活行動,休み時間の過し方,階段昇降回数,就寝時間,睡眠時間,身体状況等であり,日常 の生活行動など生活時間調査補助データーを求め,確認することを目的として行った。

 生活時間調査による1日のエネルギー消費量の計算は,各労作別にRMRを適用し一日のエネルギー       (3)

消費量を求めた。RMRの数値については,学童用のRMRを用いた。摂食内容の分析および算出方法 は我が国の国民栄養調査の方式に準じておこない,計量法による可識量測定で算出法は,標準日本食品 成分嚢挺よった。

結果および考察

 1 生活環境

 平均家族数は4人36%,5人32%であり,同胞数は3人31%,2人53%,1人11%である。父の職業 は会社員65%,自営業23%であり,母の職業は専業主婦69%,有職者31%である。両親の平均年齢は 父43歳,母39歳である。

 2 身体状況

 対象児の平均身長・体重は表1に,身長および体重の階級別分布は図ヱに示した通りである。身長は 130 cmから170απまで40 cm G eわたってばらついており,中央値は145.0(±)2. O cmであった。この中央 値は全国学童調査平均値とプラス3.7 cmの差があったが,調査母集団として適当な集団であると確認さ れた。中央値より(±)の範囲内には全体の35%,(±)20%の範囲内には全体の75%が含まれる。(±)30%を超 えたものが11%みられた。体重は24K牙から77K2にわたってばらついており,申央値は37(±)3K3であった。

この中央値は全国学童調査平均値とプラス2 Kseの差があった。中央値より仕>10%の範囲内には全体の41

%,(±}20%め範囲内には全体の70%が含まれた。(±)30%を超えたものは14%みられた。

 対象児年齢の体重1K9当たりのエネルギー必要量は60 Kcal/KSt/dayであるから,単純な計算値によ るmネルギー消費量は,上記体重の差から最小値M40Kea1,最大値3,720 Kca1となり,体重による大き

(4)

表1 平均身長および体重

平均 年生幌) 5年生(如 6年生幌〉 6年生㈱

身長㎝

rD

1422

¥84一

138ユ

¥5β一

 137.9

¥ 62一

撃77

¥ 6.4一

 146.9

¥ 73一

体重k牙

rD

 35.6

}8.1

 32β

}79

 312¥ 53一  38.7¥ 7.2︸

 40.C}

¥ 7.5皿

%30

20

10

1OO 150 200

図2 ローレル指数の分布

(9.v)

20

10

1500 2000 2500 3000 3500 4000        (kcal)

図3 1日のエネルギー消費量の分布

なエネルギー消費量の差があると推定された。さらに運動が付加された場合,体重1 KS当たりのエネル ギー必要量が大きくなり,ますます個体差が生じるものとみなければならない。例えば,30分間なわと びをした場合,24㎏の学童のエネルギー消費量が84Kcalであるのに対し,同じ運動を62㎏の学童が行 なった場合216Kca1と,132 Kca1のエネルギー消費量の差が生じることになる。

 対象児のm一レル指数の平均は男子128,女子ユ24であり,170以上 エ00未満は各々3%みられ た。栄養状態を判定する指数として,カーブ指数,ゴーレル指数,ブm一カー指数が適用されるが,成 長期,特に小学校の高学年であることから,m一レル指数を用いて判定の基準にすることとした。対象 児のローレル指数の分布は図2に示す通りである。93から206までばらつきがみられ,申央値123(±>

3であった。ローレル指数の判定結果より標準(118〜148)に位置する対象児は52%,肥満(160以 上)が6%,やや肥満(149〜159)も含めると12%の対象児が肥満傾向にあるといえる。やせ型(98

〜117)に属する対象児は36%であった。

 3 エネルギー消費量の分布

 対象児の一日のエネルギー消費量の分布は図3に示す通りである。1376Kca1から3967 Kc alまで 2,591Kcalにわたってばらついており,中央値は2095(士)170 Kcalであった。中央値より(±)10%の 範囲には対象者の41%,(±)20%には対象者の76%が含まれる。また(±)30%以上の対象児が10%みられた。

 ローレル指数より対象児を肥満群および対照群に分け,生活時間内容をみると表2の通りである。睡 眠は一日約9時間で両肩間の差はなかった。食事および身のまわりの用事に費やす時間にも差はみられ なかった。肥満群に高値がみられた内容は,休息および読書・勉強であり,一方対照群の方が多く時間 を費やしていた活動は軽作業・室内遊び,テレビ・ファミコン,運動・外遊びであったが有意差は認め

(5)

中澤:子どもの食行動と食教育に関する研究 47

表2 生活時間の内容(1日当り) 単位:分

肥 満 群 対 照 群

平均 SD 平均 SD

睡   眠 539.6 61.9 542.5 51.1

食   事 115.4 47.4 103.6 18.6

身のまわりの用事 40.5 25.2 51.1 24.0

休   息 64.1 6三.0 45.4 38.5 軽作業・室内遊び 74.工 90.0 106.4 100.3 読書・勉強 198.0 121.0 156.8 109.3 テレビ・ファミコン 110.7 80.1 142.9 105.0 運動・外遊び 55.0 69.7 9圭.0 83.2

表3 運動強度別生活時間(エ日)単位:分

肥 満 群 対 照 群

RMR値 平均 S.D. 平均 S.D.

〜0.3 181.6 82.1 186.8 105.8

0,4〜0。9 394.3 132.8 356.4 121.4 1.0〜1.9 130.2 99.9 132.6 110.0

2.0〜3.9 104.1 63.7 119.2 968

4.0〜 26.6 50.8 22.5 30.0

      〈5}

られなかった。さらに,RMRによる運動強度により5段階に活動を大別し,肥満群と対照群との生活 時間をみると,表3に示す通りで,両離間にはほとんど差はみられず,運動強度別にはむしろ同じよう な活動をしていると考えられた。

 4 男女別エネルギー消費量

 エネルギー消費量を男女別にみたものが図4である。男子は120Kcalから4000 Kcalまで2750 Kcalにわたってばらついでおり,中央値は2エ50 Kca1であった。女子は1250 Kca1から3000K:cal まで1750Kcalにわたってばらついており,中央値は2065Kca1であった。男子と女子を比較する 30%  20   10   0 〔kca1〕0   10  20  30% と男子の方がエネルギー消費

(男子)

1250 一15001 1500 一1750 ユ750〜2000

2000 一一2250 2250 一250

2500 ・一 2750 2750 t一 300 3000 ・一一3250

3250 一350

3500 一h一 3750

3750 一4000

(女子)

図4 男女別エネルギー消費量の分布 はもっと運動を付加してもよいのではないかと考えられる。

 5 午前と午後のエネルギー消費量の分布

水準の高い方へ分散しているこ ことがわかるが,これは体重 と運動量の違いによるものと 考えられる。基本的な分布と

しては左右対象の正規分布を しているので,身体状況から みても,第二次性徴期前の学 童は男女の差を補正する必要 はないものと考えられる。運 動量は,男子の方が積極的で あるのに対して女子は消極的 とみられるが,女子に対して

 午前と午後のエネルギー消費量の分布は図5に示す通りで,午前中のエネルギー消費量は,574 Kcalから1760 Kcalまで1186 Kea1にわたってばらつきがみられ,中央値は918(±)70Kcalであ った。午後のエネルギー消費量は824K ca1から2216Kcalまでエ392 Kc alにわたってばらつきが みられ,中央値は1218仕)115Kcalであった。中央値より(±)10%の範囲内には全体の36%,(±)20%

の範囲内には全体の64%が含まれる。また(±)30%を超えた対象児が14%みられた。

(6)

20.Oof IO O (kcal] O

600一一 700 700・一 seo 800・一一 900 900 一IOOO 1000〜玉玉00 1100一一1200 1200 一一1300 1300一一・1400 1400 一一 1500 1500一一1600 1600一一一1700 1700一一1800 1800−1900

1goo 一一 200e

2000−2100

2100 ・一 2200

2200−2300

10 20%

図5 午前と午後のエネルギー消費量

       (kca玉)

 6 ローレル指数とエネルギー消費量

 ローレル指数とエネルギー消費量の相関は図6に 4000 示す通りで,相関係数O. 70と正の相関がみられた。

       3000エネルギー消費量が子どもの体位を表現するローレ ル指数とよく相関することで,エネルギー消費量は        20eo 体位の影響をうけていることがわかる。

 一方,2500Kcal以上のエネルギーを消費して 10。o いる対象児についてみると,ローレル指数が100か

ら200まで幅広く分布している。ローレル指数エ17  0 以下(やせ型)に属する対象児の35%が,よく運動

することによつで2500Kcal以上を消費している。

︒・︒◎︒・   oo  OO OO Oぎ.︑事

︒︒禽醜︒露ピ..薄紫雑・・

0 α7

γ

100 150 200 250

図6 iiT一レル指数とエネルギー消費量の相関

 ローレル指数150以上の肥満傾向にある子どもが高いエネルギー消費量を示しているのは,体重の大 きさによるものであり,運動をしてエネルギーを消費している子どもとは供給するエネルギー量を区別

して考えなければならないことがわかった。

 7 消費エネルギー量と栄養摂取量

 運動量が多く一日3000Kca1から4000 Kca1のエネルギーを消費している子どもについて,これ を補なう食生活を考えると,三食をバランスよく語ること,朝食に偏よりのない栄養を付加することが 重要な条件となる。さらに,その上で不足するエネルギーを間食で補なうことが必要な場合が生じてく る。しかし,平均値に対応した栄養学で作成したメニューにより,3000Kcalを摂取すれば高たんぱ く食となり,たんぱく過剰が生じるであろう。したがってこれら高エネルギー消費グループに対しては メニューに含まれるたんぱく質含量が低く,同時にエネルギー量の多いものが望ましいものとなる。

 一万,高エネルギー消費グループでも肥満傾向にある子どもについては,運動によるエネルギー消費 が少ないので異ったメニューが必要となる。また逆に1500Kcalの低エネルギー消費グループが対象 児に4%存在していたが,これらグループでは,平均的メニューで必要量を摂取しようとすればたんぱ

く質が不足することとなり,これらの子どもに対してはメニューに含まれるたんぱく質含有量が高く,

(7)

中澤:子どもの食行動と食教育に関する研究 49

     学年・性別

h養素 平 均 5年生(男 5年生幽 6年生(男 6年生(女)

エネルギー  (Kcal) 1,677 1,684 1,558 1β15 1,652 たんぱく質     (9) 672 67ユ 61.6 728 67.2 動物性たんぱく質  (s) 41.7 41.1 37.9 44.7 422 脂   肪    (9) 62.4 61!7 572 68.3 62.2 動物性脂肪     (9> 363 367 33b 38b 35.7 糖   質    (s) 202.5 2065 192£ 214.7 197.4

カルシウム      (脇 523 540 514 548 494

鉄      (鰯 7.5 73 7の 8.3 7.4

ビタミンA   (1.U) 2,121 2,166 1,889 2,583 1,895

ビタミンB1    (嚇 1.08 1.08 0.93 1.20 1ユ2 ビタミンB2    {瑚 ま。ユ8 1.工8 1.26 1.27 1.14

ビタミンC     (嘱 78 77 66 94 75

同時にエネルギー量の低いものが望ましいと言える。したがって,標準体重で1500Kca1のエネルギ ー消費量である場合には運動を付加しエネルギー消費量を高くするような栄養指導が必要となってくる。

したがって,今日の子どもには,運動量のコントw一ルと食事のコントu一ルの両方で対応しなければ 適切な栄養指導は出来ないこととなる。以上のことから,エネルギー消費量により大きく三グループに 分けられる。「平均値周辺の子どもに対応したエネルギー,蛋白バランス食」「高エネルギー食」「低 エネルギー食」の三形態が必要となる。また運動量にも食事と同様に個人に合った運動付加量の指導が 必要といえる。

 対象児の一日の平均栄養摂取量は表4に示す通りで,エネルギー,鉄,カルシウム,たんぱく質が所 要量を下回っている。前述の対象児のエネルギーの消費量からみで,午前中のエネルギーの70彩を朝食 で補なうとするならば,例えば牛乳200cc,卵1個,ハム2枚を基本として,エネルギー消費量が574 Kca1である学童は,バター付きのトースト半枚,平均的学童は1枚半,ユ760Kcalの学童は4枚食べなけ れば消費量とのバランスがとれないこととなる。朝食を軽くする家庭が多くみられるが,この場合は,昼       食,間食,夕食の三食       表4 平均栄養摂取量       で一日のエネルギー       を摂取していること       になる。その上,エ       ネルギー不足をスナ       ック菓子などに代表       される間食で補なお       うとするとミネラル       やビタミンの不足を       きたすことなる。し       たがって調査の結果       からみると,エネル       ギー消費量の多い学       童のみならず,朝食       が栄養摂取において       重要な役割をもって   動物性たんぱく質比   62%   61%   62%   61%   63%   いるといえる。

  脂肪エネルギー比    33    33   33   34   34    午前と午後ともに   糖質エネルギー比    48    49   49   47   48   1000KtC al前後に対        園児の50%が集中し        ており,午前中に一       日のエネルギー消費 量の半分を消費していると考えられるので学童期の場合は,夕食にウェイトをおく必要はなく,朝e昼

・夕のエネルギー供給配分は1:1:1が理想的であるといえる。一方午後は午前と違い,各個人の生 活行動の違いにより,相当エネルギー消費パターンにばらつきがみられる。1600Kcal以上消費してい

る学童のうち,運動量の増加でエネルギーを消費している場合には,間食によりエネルギーを補給する ことは意味のあることとなる。

(8)

 個人のローレル指数を用いて,体格別の栄養摂取量を表5に示した。体格別にエネルギー摂取量の相 違はみられなかった。なお,表6に消費エネルギー量,栄養摂取量,たんぱく質,脂質,糖質の摂取地

表5 体格別栄養摂取量      ローレル指数

h養素 ユ60以上 エ59〜ユ00 100未満 エネルギー  (Kca1) 1,611 1,682 L685 たんぱく質     (9) 73.9 672 67.2 動物性たんぱく質  (9) 48.1 41β 41.1 脂   肪     (9) 63.3 62β 60.5 動物性脂肪     (9} 40.4 36.1 32.1 糖   質     (9} 179.2 204β 210.0 カルシウム      (翻 547 53エ 476

鉄      く諭 7.1 7.5 8.0 ビタミンA    (1.U) 2,500 2,141 1β47 ビタミンBユ    (吻 1.09 1.07 1.03 ビタミンB2     (繭 1.30 1.17 1.09 ビタミンC     ㈱ 59 79 77

(kcal/kg)

60

40

20

o

※※※

男    女   男   女 X X ,.. Xx 〉:(〉.v 消費エネルギー量   栄養摂取蟹

囮肥灘 二幅鰭

煤f P〈 O,05 ij.( >K P〈 O,Ol

図7消費エネルギー量と栄養摂取量        (体重ユkg当り)

表6 消費エネルギー量。栄養摂取量について 肥満群 対照群

平均 SD 平均

SD

消費エネルギー量 (Kca1) 2.316◎ 3588 1955 299.3

〃   (Kcaレk夢 498 9.5 62.王 5.8 栄養摂取量    (Kcal) L7202 375β 2,133.1 387β

〃    Kc訊/紅牙 38D 9◎ 68.4 14.2

たんぱく質       (9) 753 232 86.1 21.1

脂   質      (9} 613 22.6 69.3 16.0

糖   質      (9) 219ρ 462 283.8 66.1

所要量に対する摂取量  % 81β 168 105.9 229 消費量/摂取量    (%〉 140ρ 44.0 93.5 17ユ

(X X:P〈 ODI)

張巌楽※※※鉤素 楽※※楽※※

栄養所要量に対する摂取量,消費エ ネルギー量と栄養摂取の比をまとめ て示した。一日の消費エネルギー量 は,肥満群が多いが体重1 KS当りに 換算すると対照群の方が多い。また 栄養摂取量については,一日当り総 量,体重1K牙当り量,各栄養素量,

いずれも対照群の方が高値を示した。

図7は体重1㎎当りの摂取量および 消費量を示したものである。所要量 に対して,肥満群は平均81.6%と少 なく,対照群は平均105.9%と多く 摂取しており,両群間に有意差が認 められた。さらに。消費されるカロリーと摂取されるカロリーの比は,肥満群140。0%,対照群93.5%

であり,肥満群の方が過食でないという傾向がみられた。 (P<0.0エ)今回の調査では,肥満群と対 照群について,行動内容,行動量および栄養摂取量の比較を行ったが,行動の内容については両群にあ まり差がみられなかった。一方消費エネルギーについては一日総量は肥満群が多いが,体重1kg当りの 換算値では対照群の方が多く,対照群の方が活動が活発であることを示し,生活時間内容の分析結果を 裏づけるものである。

 また,栄養摂取に関する数値は,いずれも対照群が大きく,対照群の方が食物を多く摂っているとい

(9)

中澤:子どもの食行動と食教育に関する研究 51

う傾向がみられた。以上の結果は,体を動かすことが少なく,過食傾向にあるとされている肥満児の行 動特性とは一致しなかったが,今回の調査の対象校において栄養指導を行っでいると聞きおよ載学校 における栄養指導は学童の栄養摂取の調整におよび,その成果の一端をうかがうことができた。しかし 消費エネルギーが摂取エネルギーを上回りながら,なお肥満が改善されない場合,肥満特有の代謝メカ ニズムなどの他の要因により太り過ぎに至る可能性も考えられるかもしれない。今後さらに追跡調査を し検討をすすめてゆきたい。

 1 対象児の体位は,身長・体重ともに全国統計と同様の分布とばらつきがみられ,この調査の結果 から学童の問題を指摘することが可能であると推定された。体型には細身型と肥満型が10%の頻度で出 現し,それらの学童の間には身長で10cmY)/上,体重で10 KS以上の差がありこれらの学童に労働または運

動を付加した場合,消費エネルギーにおいては二次関数的に増加,または減少することがわかった。し たがって成長期の学童について平均身長・平均体重から算出された栄養量を基準として,それに対応し た食生活や栄養指導には大きな欠陥と疑問が存在することを指摘することができる。

 2 エネルギー消費量を午前と午後に分けて子どもの行動から算出した結果,午前のエネルギー消費 量と午後のエネルギー消費量との間に大きな差はみられなかった。したがって,朝・昼・夕三食エネル

ギー供給バランスは1:王:1であることが望ましいという結論が導かれる。現状では午後に間食のエ ネルギー供給が大きいということを考えると,午後の6・7時間の間にエネルギーのほとんどが供給さ れることになり,栄養指導は一食の栄養iバランスではなく,一日の食事回数と,一日トータルのメニュ ーバランスの問題として整理しなければならないことが指摘される。

 3 学童は,静止型と運動型とに分けられるが, 運動型の学童が増加することによって栄養のバラン スをとるような方向が望まれる。静止型の子どもはより虚弱な体質を形成し,運動型の子どもは高エネ ルギー低栄養型の食品摂取量の増加により,肥満型に成長していくだろうことが予想され,運動付加と 栄養のバランスの両者が平行して生活行動に組込まれなければならないということが指摘される。

 4 学童期には学校給食の実施下において家庭の食事とのエネルギー供給バランスが問題となる。学 校給蝕輔18・回骸で,輔餌騰1,・95回(一日3回として)のうちのt 1・過ぎない。一H のエネルギー消費量の高い学童が10%みられることからエネルギーの消費量と運動量のバランスのとれ たメニューを作成すること。それには家庭での朝食,間食,夕食が調節の重要なポイントとなる。特に 学校給食メニューは栄養確保に重点がおかれているため,一日のエネルギー摂取量と蛋白質とのバラン スをコントロールしなければ,過剰障害が生じる。したがって今後の栄養指導は,母親が子どもの行動 と食事に対する個別的認識をもち,さらに栄養に関する知識を高めることが課題となると考察された。

1)中澤きみ:「子どもの食行動と食生活上の問題点」『茨城大学教育学部教育研究所紀要』19 P 25〜32 1987 2)厚生省公衆衛生局栄養課編:「昭和54年改訂日本人の栄養所要量」『第一出版』P 44〜45 1979 3)沼尻幸吉:「エネルギー代謝計算の実際」『第一出版』P35〜40 1972

4)科学技術庁資源調査会編:「四訂日本食品標準成分表」『医師薬出版』P29〜251 1983 5)沼尻幸吉:「生活活動のエネルギー消費」『第一出版』P12〜15 1974

参照

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