1 27
日本 にお け る トランポ リン競技規則 の変遷 ( 2)
田 野 有 ‑
1 9 7 2 年 [ 昭 4 7 ],JTA (日本 トランポ リン協会)が創設 され, 日本体操協 会 か ら分離 ・ 独立 し,十年 にわた る ≠ 体操界傘下での競技会〟に終止符 を打 っ た。
同年, FI T( 国際 トランポ リン連盟)に正式加盟 を果 たす とともに,我 が国 における初 の国際ルールの採用 に向か って,JTA の関係役員 による,辛 くと も胸 お どる FI T 制定版 の競技規則 の翻訳作業 は,日本 の トランポ リン競技界 に とって, まさに画期 的な一大事業 となった。
この国際規則 に準拠 した JTA 版 『 競技規則及 び審判法』の制定, そ して こ の親則適用 まで には約 2 年 の歳 月 を要 し,公式競技会 にお ける初 めての適用 は ,1 9 7 4 年 [ 昭 4 9 ]の第 1 1 回全 日本選手権大会
(1)以後で ある。 (これ は我が 国 にお ける トランポ リン競技規則改訂 としては ,2 回 目にあた るものである)
前稿 で筆者 は, この改訂が " 体操競技採点法か ら トランポ リン競技採点法 への大変貌〟である‑ と記 し( 2 ) ,その重要 ポイ ン トと考 えられ る条項 を列挙 し たが,本稿 で は, この再改訂版 の競技規則 を も含 め, これ以後,第 四改訂版
に至 るまでの一連 の競技規則 における改訂項 目を点検 ・分析 し,我が国 にお ける トランポ リン競技規則 の変遷 ‑ を考察す る もので ある
。そ こで先ず, (この新規則 が適用 され る以前の) 1 9 7 3 年 [ 昭 4 8 ]までの競技 規則 と ,1 9 7 4 年 [ 昭 4 9 ]か ら適用 された新規則 の重点項 目を比較対照 しなが
ら," 大変貌〟 を遂 げた内容 について明 らか に してみたい。
(1)J TA 主催の初回の全 日本選手権大会。これ以前は, J GA( 日本体操協会)が主催 する 「 全 日本新体操選手権大会大会
」の中の一分野 として実施。
(2) 「日本における トランポリン競技規則の変遷 ( 1) 」田野有‑,小樽商科大学人文
研究第 8 0 帝 ,1 9 9 0. 8 ,P. 6 5 ,1 0 行 〜1 1行
128 人 文 研 究 第 8 4 輯
表 1 競 技 規 則 の 再 改 訂 に よ る ≠大 変 貌 〃 の 内 容 比 較
重点項目 1 9 6 8 年 〜 1 9 7 3 年 (初 改 訂 版 ) 1 9 7 4 年 〜 1 9 7 6 年 (再 改 訂 版 ) 審判員数 ・ 旦丞( 主審1 ,審判員 4 ,カウンタ‑1 ) 弓 喧 ( 主審1 ,副審3 ,審判員 1 2 ) *審判長1を除く
* 第
2条
1[ 体操方式の採用] *第1 条 E シンクロ審判剰 扮業制度の確立]
*第 3 条 A , B [ 体操方式の採用] *第1 1 条 ,1 2 免 1 3 条 [ 種別新設]
補 助 着 ・4 名の配置を 董璽 ・4 名の配置を 塾
( スポッダー) *第 5 条 3 *第 4 条9 ,第 7 条 4 ,別 条 2 , 3 , 4
[ 危険防止への配慮] 按全対策の強化. 徹底]
農 技 場 * 宣透垂型ヱ ・ ・ ・ ・ 天井までの高さ. 器具の台数‑‑墾 至 審判席‑ シンクロ時の台( *第 ‑骨から 5 条1 ‑. , 設置)間隔‑ 5 2 . 畳 m , 3 艶 遷堅型 , 匝廻 に設置 4 ‑2 m [ 競技特性考劇̲
器具寸度 ・ 旦杢墜塗壁過 量の規格によるもの ・ 日 本ト ランポリン 協会制定の規格によるもの
*第 1 条 [ J G A 概 則 *第 6 条 1 [ J T A 版規則の誕生]
・ フレーム→高さ . . . 1 m ,枠の内側 ‑4 . 4 9 m ・ フレーム→高さ ‑0 . 9 5 ‑1 . 0 5 m 巾 ‑2 . 6 7 m ・ ベッド → 3 . 6 ‑4 . 3 mX1 , 8 ‑ 2 . 1 5 m
・ ベッド →ゴムケーブル *第 7 葦 1 0 0 本づり 3 . 6 mX [ 現在のミド 1 . 8 m ルサイズに相当] [ *第 寸度に幅があるが,最大値付近の数値からみて, 6 ‑1 6 条 2 m 2 / m の巾で織ったもの 現在のラージサイズに相当]
演技再現 * 塾 ・ 些 旦係の新設( * 第 4 条 1 1 演技銅 ) [ 演技の再確認日疑義への対処]
演技中断 一 著しい流動性の欠如 ‑0 . 4 ‑0 . 6 の減点 ・ 規定の順序で規定演技を実施しない場合
・ 身体の一部がベッドの外に出た ‑0 . 4 ‑0 . 6 の減点 ・ 自由演技において申告通りの順番で実施しない場合
・ ベッド内での完全中断 ‑ 1 . 0 の減点 ・ 身体の一部がベッド 以外のものに触れた場合
・ 身体がベッド 外に出て中断,および補助都こ 触れた ・ スポツタ一に助けら れた場合
・ . . 2 . 0 の減点 ・ 危険を感じ,競技中に台を離れた場合
*第 7 条 B2 , 3 ・ シンクロでパ丁け‑と異なる技をした場合
[ 減点法にて対処し,演技続行可能] *第 2 0 条 1 [ 中断‑演技終了,続行不可能]
日本 における トランポ リン競技規則 の変遷
(2)1 29
重点項目 ‑1 9 6 8 年 〜 1 9 7 3 年 (初 改 訂 版 ) 1 9 7 4 年 〜 1 9 7 6 年 (再 改 訂 版 )
得点計算 ①規定演技 ①規定演技
ー4 名の審判員のうち,最高. 最低の両点をカット ,中間の二得 ・ 個人の場合→中間の二得点の和の平均値 ×2
点の和の平均点を求め,これを決定点とする ・ シンクロの場合→[ ( A 台平均 値+ 8 ‑ 台平均値 ) +2 ‑同時性減
* 第 4 条 9 ,第 6 条 [ 廼 墜 星堕 に近 似 蓮 如 *第 2 3 条 l O [ 実施点の比重を重視 ]
②自由演技 ③自由演技
・ 実施点+矧要点+構成点 = 1 0 点備点の場合) ・ 実施点は「 姿勢評価点」と表し,これのみで1 0 点法採点し,壁
・ 男子‑ 嘆施 5 . 0 +簸度 3 , 0 +構成 2 . 0 =1 0 点 度点はこれとは別に算出される
・ 女子‑ 実施 * 第7 5 . 条 0 +某度 1 2 . 4 +構成 [ 埜墜撃墜堕 室に近似] 2 . 6 =1 0 点 [ 星室 邸 ・ ・ 個人競技での最終得点算出法は,中間平均値 値) シンクロ競技での最終得点算出法 ÷2 *第 ‑同時性減点 2 3 条 1 0 倒 ×2 +難度得点‑となる は,[ ( A [ 複雑化,実施点重視] 台平均値 ×2 十敷皮得点 +B 台平均 発 度 点 ・ 種目の観葉 表を男女別に示し ,A( 高級難度) ,B 仲敷革度) , 灘度点の算出法については別に定め,男女共通とし,宙返りの
C
ほ概観勘に区分言れらを演技の中に 親込むべき個数を甥 回転度数. 捻り 度数により 0 . 1きざみのポイント 計乱さらに, 女別に)定めている 宙返り 時の姿勢によって 0 . 1 の追加点が与えられる方式
* 第 7 条 1 ,A 睦墜越 廼 昼に近似] * 第2 2 条 [ トランポリン競技独自の採点方法]
減点基準 ・ 実施に対する減点については,その程度により ,小欠点 ( 0 . 1 ‑ ・ 減点基準を示す 8 項目のうち ,5 項目が「 最後の着地」時につ 0 . 3 ) ,中欠点 ( 0 . 4 ‑0 . 仇 大欠点( 1 . 0 ‑2 . 0 ) の三群に分 け , いて記されており ,「 身体コントロールの乱れ ( 0 , 1 ‑0
.5 日 こ さらに,それらの中で具体的事例をあげ,減点を記している o 関しては 上選員廻 毎週にとどまってt ) る
* 第 7 条 1 ,B * 第 2 5 条 1 . 2 . 3 . 4 . 5 . 6
[ 埜塑 型 蛭 に 近似] [ 演技中断条項が別設定されたことに起因する]
[ 両足での安定着地 静止姿勢の冊 ] 中間値差 ・ 採択される二得点の差は,平均値に対して,次の限界を越えた ・ 採択される二得点の差は,平均値に対して,次の限界を越えた
時,主審との協議が必要 時,主審との協議が必要
9 . 5 0 ‑1 0 . 0 0 では 0 . 2 点 9 . 0 以上の時 0 . 2 以上 8 . 5 0 ‑9 . 4 5 では 0 . 3 点 8 . 5 ‑8 . 9 0 . 3 以上 7 . 0 0 ‑8 A5 では 0 . 5 点 8 . 4 以下の時 0 . 5 以上
その他の場合 は 1 . 0 点 シンク占で同時性の減点値差が 0 . 5 以上の時
130 人 文 研 究 第 8 4 輯
以上,競技規則上 で重要 と考 え られ る内容 を項 目 ごとに整理 してみたが, こうしてみ る と, いか にその規則 内容 が一変 したかが容 易 に理解 で きる。 シ ンク ロナイズ ド
(3)[ 通常,略 して シンクロ と呼称 ]( 以 下,本稿 で はシンクロ と記 す) 種別 の新設,使 用器 具 の大型化,採点 ・ 得点計 算 の変化,演技続行 の 重視 , そ して審判員数 の増加 ・業務 の分化 ‑な ど,諸項 目において,新 たな
トラ ンポ リン競技独 自の競技規則 が打 ち出 されたので あ る。
ここで,特 に注 目 してお きた いの は, 1) シンクロ競技 ( 種別 )の新設
2)演技 に対 す る評価 ・採点 方法 の変化
3 ) 中断演技 へ の対処 方法 の変化 ‑‑の三点 で あ る。
1)の 『シンクロ競技 ( 種別 )の新設』 について は, それ までの体操界 で は 考 え られ ない競技種別 の新設 で あ る。 まさに トラ ンポ リン競技 な らで はの特 質 を示す種別 で あ り,個人競技 とは全 く異 なった魅力 を宿 してい る
。これ以 後, この種別 は個人競技 と共 に公式競技 ( 種別 )として位 置づ き,現在 に至 っ てい る
。シンクロ競技 には 8 名 ( 主 香 l,副審 3 , A 台審判 2 , B 台審判 2 )の審判 員が必要 となった。 また, この競技 の最終得点算 出 はか な り複雑 で あ り,特
に自由演技 において は これが特徴 的で あ る。
(3) 「トランポ リン用語」藤田一郎,宮田和久,田野有一,伊藤直樹,細川賢一, 伊熊克己共著,文化書房博文社,1 9 8 6. 4. 3 0 ,P. 5 6 ,1 8 行〜2 6 行,‑ 〔 SYN‑
CHRONI ZED TRAMPOLI NE〕 ‑‑‑二台の トランポ リンを並列 してセッ ト し,各々の台に一人の演技者が上が り,同時に同 じ種 目を演ずる競技 をいう.
個人の演技 とは違い,その同時性の美 しさを主張するこの種別ならではの魅力
を有するものである。世界選手権等において も,正式競技 として位置づけられ
ている。シンクロナイズ ドとは,同調 されるとか同調するという意味。
日本におけるトランポリン競技規則の変遷 ( 2) 131 雷 シンクロ競技 にお ける最終得点算出法
・規定得点・ ‑ ‑[ ( A 台平均値 +B 台平均値) ÷2 ‑同時性減点値] ×2
・自由得点‑ ‑[ ( A 台平均値 +B 台平均値) ÷2 ‑同時性減点値] ×2
+ 難度点
・決勝得点‑‑規定演技 + 自由演技
*A 台 な らびに B 台の ( 姿勢採点) 審判,同時性審判,難度審判
(4)の人 数 は, それぞれ 2 名づつである
競技規則上 の必要審判員数の急増 は, このシンクロナイズ ド競技の新設 に 伴 う影響 と,難度審判員 の専業化 によるものである.再改訂 により,一挙 に 十名 の審判員増 は,いわ ば " 大改革〟 の一つ と言 える。
2 )の 『 演技 に対す る評価 ・採点方法 の変化』 については,主 として自由 演技 にお ける最終得点算出方法のそれ を意味す る。 即 ち,それ までの 「 十進法 による最終得点表示」か ら,「 演技 の姿勢採点 ( つ ま り,今 日でい う演技点)と, 同時制採点 において十進法が用 い られ,これ とは別 に計算 された難度点が姿 勢評価点 に加算 され,最終得点表示 され る」方式 に切 り換 えられたのである
。■ 自由演技 にお ける最終得点算出法 例‑ ‑個人競技の場合
・旧方式‑‑男子‑実施点 5. 0 + 難度点 3. 0 + 構成点 2. 0‑l o貞
(配点)