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マレーシヤに於ける工業化と創始産業法
前 川 忠 良
は し が き
第1章1947年〜1957年までの産業構造の変化 第1節 マラヤ連邦
第2節 シンガポール 第2章 工業化政策の推進 第1節 マラヤ轡B 第2節 シンガポFル 第3節 ・マレーシや運邦
第3章 マレーシや工業発展上の諸問題 第1節 対外的問題
第2節 国内的問題 第4章 むすび
は し が き
1957年8月31日,旧マラヤ連邦11州が独立国として発足して以来,6年目にあたる1963 年9月16日に,イギリス保護領であったシンガポール州,北ボルネオのサバ,サラワクを 合同して,14州で構成されるマレーシや連邦が成立した。以来,数々の問題を内包しつつ
も東南アジアに於ける新興国として着実に建国の途を歩んでいる。
元来,シンガポール及び旧マラヤ連邦は,生ゴム,錫の二大産業を初めとして,コブラ 椰子油,鉄鉱石,木材等の第一次生産物を輸出し,食料,繊維品,機械等の第二次生産物 を輸入する,いわゆる後進国特有の経済構造を特色としていた。即ち,マラヤのゴム及び 錫の輸出量はマラヤの全輸出額の70%近くを占め,ゴムは年産78万ポンド(1963年)で,
世界供給量の絶,錫は年産約72万屯(1963年)で,同じく世界供給量の殆以上を占めてい る。しかし,最近,かくの如き植民地的な第一次生産物依存から脱却し,健全な国民経済 の発展が企画され,急速な工業化が促進されつつある。吾が国からも多くの企業が進出し,
日本との関係も緊密化の傾向がある。前号に於てはJ.J. Puthucheary氏の著書を中心 として,マラヤに於けるゴム,錫産業の実態を把握しようとしたが,本号に於てはE.:L.
Wheelwright氏の著書を中心として,マラヤ工業の発展を辿ることにする。
第1章 1947年より1957年までの産業構造の変化 第1節マラヤ連邦
マラヤ連邦に於ける1947年より1957年に至る間の人口の増加は,全人口490万人から627 万人に137万人,28%の増加を示している。 (第1表)この中,労働人口の変化は,第1 次産業の就業者が68.7%から61.3%え減少し,第2次産業の就業者が7.4%から9.6%え上 昇したが,特にその増加の顕著な部門は,政府行政機関,警察及び軍隊と英国軍関係従業 員の増加である。
これはまた都市人口の増加となって現われ,130万から266万えと倍増している。
第1表 連邦:労働人口1947〜1957
産 業
農 業 鉱業 製 造 i業
建築土木 電気水道
商 業
運輸通信
官 公 庁
娯楽サービス
警官軍隊
そ の 他
1947
員釧 %
千人 1240.5 47.7 126.2 13.3 4。4
173.1 65.9 了6.7 97.5 23.4 6.1
66.2 2.5 6.7 0.7 0.2 9.2 3.5 4.1
5.2 1.3 0.4
1957
員数1% 千人 1244.8 58。5 135.7 67.8 11.6 195.2 74.8 116.1 104.9 98。7 18.1
58.5 2.8 6.4 3。2 0.6 9.2 3.5 5.5 4.9 4.6 0.8
増 加
員釧 %
舌念i
10.8 9.5 54.3 7。0 22.1 8.9 39.4 7.4 75.3 12.0
0.3 22.6 7.5 402.5 152.2 12.8 11.4 51.4 7.6 321.8
全労働人口 1・875,21 100。・12,126・21 100.・i 251,・1 13.4
都市人口
全 人 口
1,301,4 4,908,1
2,668,0i
6,278,8i
1,366,6 1,370,7
105.0 27.9
またマラヤに於ける人口問題は,同時に民族問題を無視して考えられない。 (第2表)
全人口の52.0%を占めるマラヤ人に対して,支那人華僑は35.4%を占め,更に印度人が 10.8人を占めているが,これらの民族の相異が,社会の階層分化と一致する傾向があり,
マラヤ人が一般に地方に於て農業,漁業等第1次産業に従事する低所得層であるのに対し て,支那人は商業,工業等に予て圧倒的多数を占め,都市人口の大半は彼らによって占め
られている。ここに民族間の問題が経済上の対立として現われる傾向があり,民族間の流
血の惨事の発生の例等から,国家の政策に於ても,単なる経済政策ではあり得ない問題を
含んでいる。マラヤに於ける国民経済の発展の重心が,第1次産業の農業開発と,第2次
マレーシヤに於ける工業化と創始産業法 41
第2表マレーシャ人口構成
:支 那 人
マ ラ ヤ 人 印 度 人
、パキスタン人 ダ イ マ 族
その他氏族 混血その回
合 計
一マラヤ
2670
3916 813 0
133
7532
%
35.4
52.0
10,8
1.8
71.9
シンガポール 1279 238 142
0
41
1700
%
75.2
14.0
8.4
2.4
16.2
婁ラワ到%
353i27.0
137
0
764 53
1307
10.5
58.5
4.1
10.5
マレ停シや
合 計 %
43・2141.1
4291
955 764
22了
10476
41.0
9.1
7.1
2.2
100%
産業たる工業の発展の何れに置かれるかは,常にこの点が考慮されて来たのである。マレ ーシや連邦の結成により,諸民族の協和が唱われているが,ラーマン首相のマラヤ人主義 は,政治に於ても,経済問題に於ても無視し得ない。この点が最も顕著に現われているの は,マーレシや中央政府とシンガポール政府の対立的な側面であろう。われわれはこれら の問題も工業開発について無視し得ない。
(イ)マラヤの工業を国際復興開発銀行(1.B.R.D.)の分類によって見れば,
(a)手工業:屋根ふき,籐製品,金属細工,手織物1仕立品等で,:地元産出の材料に よって,本人乃奎家族労働によるものである。
(b)Processing:ゴム,錫,木材,米,魚類ココナッツ油,ヤシ油等の軽度の加工 であって,農作業に近い形態のものである。
(c)食料:飲料,煙草
(d)機械工業:これは初歩的な鍛治屋,作業場,鋳物業及び主として機械を用いる鉄 道工場まで含んでいる。大工場は殆んどシンガポールにあり,連邦所在のものは部 晶の修理程度のものが多い。しかし,イポーには錫鉱山の設備製造業がある。
これらの企業は砂利ポンプや,錫鉱石乾燥機や,ゴム撹伴機械を生産する。その他 有棘鉄線,針金網を造る工場や,小型漁船建造業がある。
(e)各種工業:レンガ,セメント,金属容器,ガラス瓶等である。その他ゴム靴,ホー ス,自転車タイヤ,チューブ等の生ゴムの簡単な加工業等である。
以上の工業形態は1947年から1957年の独立当時まで殆んど変化はなかった。 (第3表)
これら工業の経営規模を見ると,次の通りである。 (第4表)事業所5,004の中,従業 員20人以下はその86%,100人以下は12%,100人以上は1.5%である。
1957年の人口統計によれば,製造業従業者135,000人中34%(45,000人)は個人生産業
者であって,彼らはゴム靴,織物業者の半分,手工業者の%を占める。一方,∵般機械
工場では個人生産者は%で,建築,土木業では↓倉以下である。
第3表 連邦:第2次産業の雇傭1947〜1957
食 料 飲 料 煙 草 織 物 履 物 木;製品 家 具 紙製 品 印 刷
籐製品その他
ゴム製品 化学製品
非金属鉱石
基礎鋼材 金属製品 一般機械
雑工業 電気機械
1947.
員数1%
17,983 1,143 2,791 4,121 14,764 17,135 3,417
305
2,723 21,010 2,334 1,393 2,361 2,701 3,223 16,934 1,223 10,600
14.3 0.9 2。2 3.3 11.7 13.6
2.了0.2 2。2 16.7 1.9 1.1 1.9 2.1 2.6 13.4 1.0 8.4
1957
員数[%
17,596 1,773 3,147 2,779 22,788 19,998 6,583
316
4,319 8,800 2,102 1,958 4,252
873
2,738 23,577 2,180 9,930
13.0 1.3 2.3 2.0 16.8 14.7 4.9 0。2 3.2 6.5 1.6 1.4 3.1 0.6 2.0 17.4 1.6 7.3
変 化
員数1%
一387
630 356
−1,342 8,024 2,863 3,166
11 1,596
一・
P2,210
−230
565
1,891
−1,828
−485 6,643
957
−670
一2.2 55.1 12.8
−32.6 54.3 16.7 92.了
3.6 58.6
−58.1
−9.9 40.1 80.1
−67.7
−15.0 38.2 78.2
−6.3
全製造剰 126・16■100.・ 135,70911・・.・1 9,548け.6
鑛重劉 111漏91:1 135,了09 66.7 67,807 33.3
9,548 7.6 54,349 403 8
全第二次藤1139・619100.o【2・3・51611・・.o1 63・897145・8
第4表連邦:経営規模別従業員(1959)
律業員数規模別
全時閤常傭なし
1〜4 5〜9
10〜19 20〜29 30〜49 50〜99
100〜199
200〜・499 500+
企業数 LO26
1,916 753 639 275 183 133
49 25
5
販売高
9.1 60.3 97.3 124.9 90.6 119.8 267.1 222.6 232.7 35.4
従業員数
部分時間 全時間
874 965 605 928 200 298 126 84 14 130
0
4,740 4,920 8,675 6,529 6,879 9,023 6,333 7,311 2,963
賃金百万弗
0.4 6.2 7.0 13.1 10.0 10.3 14.9 10.4 11.4 5.7
総 計 5・oo4 i 1,260,114・224157・373 89.5
マレ門シヤに於ける工業化と創始産業法 43 かかる状況に於ては,工業統計は極めて作成困難である。1959年の統計では,6万人に
すぎなくて,1957年の人口統計による従業員数の半分という結果さえ現われる。
(ロ)次に,これらの事業所の所有,管理を見ると,1955年の1.B.R.D.統計では,製 造業の所有,管理は殆んどがアジア人であり,その従業員の80%〜90%が支那人で,残り が印度人である。しかし,これら支那人の所有は大多数が小経営である。1962年のWhee・
Iwright氏の調査では,海外資本が非常に多いことが明らかになったが,大企業の83事業 所の公称資本, 144百万弗の中,連邦住民所有は23百万弗で,シンガポール住民所有49百 万弗,海外所有は72百万弗であり,海外所有の大半は,英本国の会社である。
この調査は1962年号行われたが,独立後設立された創始産業法による企業は除外されて いるが,事実は,それらの企業の殆んどが,1957年に既に存在していたものである。その 事実から,製造業に於ける海外資本の比率は非常に高いものであると考えることが出来る。
従って,1.B.R.D.の1955年報告の考えに反して,製造業に於ける支配的な役割は欧州 人の所有であったと,彼は指摘している。従業員については,もちろん第2次産業の賃金 労働者の約%が支那人であり,製造業ではその比率は%に達することも事実である。マラ
(第5表)連邦:第2次産業に於ける労働力配分
マ ラ ヤ 人 心 那 人 印 度 人 そ の 他
合 計
従業員釧%
48,418 130,091 22,388 2,619
23.7 63.9 11.O
L3
;製 造 業
従業員釧%
26,588 97,502 10,086 1,206
19.6 72.0 7.5 0.8
建築土建ii韓
従業員釧%
21,830 32,589 12,302 1,413
32.0 47.9 18.0 2.0
合 計i 2・3・51611・・,・1 135,382}1・・.・1 68・13411・・.・
(第6表)連邦:州別工業事業所配分(1959)
難 名 事業餅数隣上高(百方弗) 賃金労働者数
Selangor Perak Johore Penang 小
Kedah
I(elantan
Malacca Negri・Sembilan Pahang Perlis Trenggan11
計
1,077 1,113 610 724 3,524 517 194 178 237 259
44 51
32%
22 12 14 70 10 4 4 5 5
1
326.5 238。2 238.8 158.3 961.8 126.2 18.8 55.2 69.5 17.6 7.1 3.8
26 19 19 13 77 10 1 4 6 1
18,979 10,785 10,405 7,333 47,502 4,990 2,211 1,786 2,809 1,393
353 553
30 18 17 12 77 8 4 3 5 2
合 計 5…411・・}1.260.■10・161・59711・・
ヤ人と印度人は製造業より も,専ら難山,土木等の戸外作業に従事している。 (第5表)
㈲ 工場の州別所在は第6表の通りである。それによっても明らかな如く,マラヤに於 て工業が集申しているのは4州であり,申3州は人口が多く,都市化の傾向が大である。
特にSelangor州はどの州、よりも比較的大規模な工場が多いが,その大半はKuala Lu・
mpur周辺に集申しているし,またどの州よりも平均して最大の規模をもっている。
第2節 シンガポール
1957年には,シンガポールの人口は144万で,マラヤ連邦(627万)の種に近い。しかし,
シンガポールの製造業人口は,連邦のそれが135,700人であるのに対し,約半数の66,8 00人を擁している。これは第2次産業に従事している労働力が,連邦の9.6%に比して,
19。0%と約2倍も高率である為である。そして,その人口は,東西42km,南北22kmの小 島に住んでいる。その意味でシンガポールは,マレーシヤでは最も工業の集中化された地 域である。シンガポールの経済活動人口は,第7表の通りであり,シンガポールの総人口 の75%を占める支那人が,第2次産業に於ては84%を占めている。シンガポール経済に支 配的な役割を果している貿易,商業を反映して,第3次産業の人口が高率を占めるが,そ の中には主として,英国の大基地と関係ある防衛的役割に直接関係している42,000人を含 んでいる。
ここでも手工業グループの最大のものは 第7表 囈 ル:翻1欝ゴム樹ヒや衣服であり,次いで柚餅工業
部 門悪業酬%
農 業 漁 業 鉱 山 製 造 業 建 築 土 木
電気,ガス,水道
商 業 運 輸 通 信 サ 一 ビ ス 業 そ の 他
40,200 1,600 66,800 24,600 5,600 121,500 50,300 161,300 8,300
8.4 0.3 13.9 5.1
「.2
25.3 10.5 33.6
L7
合 計1.480,3・・110…
従業員は,その約60%が100人以上の従業員を擁する大企業に属する。
には,50,640人中15,148人の,各種公的機関に従事し,
ポール政庁,市役所の業務にたつさわる者も含まれている。従って,それらの従業員を除 外して4.2%としても,何れも大企業の重要性は明らかである。しかも,それらの殆んど が欧州人による所有である。500人以上の従業員を持つ4つの大企業は凡て欧州人所有で
木製品,籐製晶,竹製品,食料,缶詰,煙 草,化学製品,非金属鉱物,金属製品,紙,
印刷,図書等である。特にシンガポールで は,機械工業,修理業,ブリキカン,機械
.部品等の漁場が多い。資本集約度の高い部 門の製造業がマラヤ連邦では36%に比して
ここでは43%を占めている。
シンガポールの製造工業構成については Puthucheary氏が詳細に研究しでおり,
その一部は前号に於て紹介したところであ
るQ
彼の統計によると,製造業の50,640人の
しかし,彼の統計
英国基地の軍事的作業や,シンガ
マレーシヤに於ける工業化と創始産業法 45
あり,200人〜500人の労働者を擁する25工場の中,18工場もまた欧州人所有である。従っ て,欧州人所有の24工場で,シンガポールにある私企業の労働力の%を占めている。また 500人以上の従業員を有する支那人企業は存在しないが,50人以上の従業員を擁する87の 支那人工場は,全従業員の%ををしめている。
第8表 シンガポール:製造業規模別,雇傭者,労働者数
520+
200〜499 100〜199 50〜99
30〜・49
小 計 20〜29 10〜19 10以下
支那人所有
企矧%軍職%
7・
30 50 76
163 109 305 1,750
0.3 1.2
2。1
3.3
6.8 4.5 12.7 72.9
2,075 5.9 3,984 11.2 3,427 9.7 2,809 7.9
12,295 2,435 3,964 5,633
34.7 6.8 11.2 15.9
西欧人所有
企糊%脚劃%
4 18 9 26 7
64 1 9
0.2 0,8 0.4 1.1
0.3
2.7
0.4 2,480 5,172 1,305 1,822 243
11,022
20
123
7.0 14.5 3.7 5。1
0.7
31.0 0.1
0.3
合 計
企画%髄劃%
4 25 39 76 83
227 110 314 1,750
0.2 1.1
1.6 3。2 3.5
9,5 4.5 13.1
72.9 2,480 7,243 5,389 5,249 3,052
23,317 2,455 4,087 5,933
7.0 20.4 14.9 14。8 8。6
65.7 6.9 11.5 15。9
合計]2,327ig6.9}24,327168.6174}帥1,165}31.4}2・40ゆOI 3・492}10・.0
先進国では比較的小規模と思われても,マラヤでは非常に大きな工場であって,その意 味で,シンガポールでは大企業が支配的であるといえる。一般に大企業とはより高度の資 本と生産性をもつものであっても,ここでは労働者数が尺度になっていて,相対的に重要 な役割を果すものと解することが出来る。
軍隊及び政府等の公的機関の大規模事業所は,輸送機関,機械,電気,設備等に従事し ている。一般にシンガポールの大企業はゴムや,材木,パイナップル缶詰等の原材料の小 規模加工,包装,ゴム製品,セメント,ガラス,レンガ,タイル等の鉱業生産物や,飲料 酒類等である。30人以下の小規模工業の大半は,食料,鍛治屋,落餌,鋳造,メッキ,印 刷,出版,洋裁,洋服調整,時計修理,宝石,靴,家具,ロープ,製氷,舟大工,自動車 修理等である。
第2章 工業化政策の推進 第1節マラヤ聯邦
(1)計画の大要
α)マラヤ連邦開発案 (Draft Development Plan of the Federation of Malaya)
(1950年8月)これは社会厚生事業(第1部)経済一般(第2部)貿易産業 (第3:蔀)よ
りなり,第2部が連邦政府の直轄する6ケ年計画であったQそれによれば,
1)ゴム,錫その他の第1次産業の増大を計り,特にゴム樹の植替等マラヤの伝統的産
業の保全。
2)第1次産業の多角的発展,割干,運輸,通信の開発投資。・
であり,具体的には1955年までに,ゴムは7万5千屯,錫7万屯,鉄鉱石150万屯,
パーム油6万3千屯,コブラ13万屯,ココナツ油6万6千屯,パイナッフ。ル,75万箱,米 53万5千屯,材木49万屯,魚7万屯,石炭70万屯まで引上げることであった。しかし,こ の開発計画は充分な成果を発揮:することが出来なかった。理由は朝鮮動乱後の反動として 起った1952〜53年のゴム及び錫の値下りによる景気後退と,共産ゲリラに対する軍事費の 増大であった。
1950年の6ケ年計画は,第1次産業中心であって,未だ第2次産業の育成は積極的にと りあげられていないことは注目を要する。
(ロ) 1.B.R.DPeport.
1954年国際復興開発銀行の調査団が来訪し,マラヤの経済を調査分析し,いわゆるInter national Bank for Reconstruction and Development.(1.B.R.D.)Reportを行
った。その要点は次の通りである。
1)ゴム樹の勢門及びゴム産業に関する調査研究。
2)土地の灌概利用。
3)漁業資源の調査。
4)第2次産業の育成と貿易の拡大
1.B.R.D. Reportに於て,第2次産業の積極的育成が第1次産業と共にとりあげら れたが,工業化の理由として次の事が説明される。
マラヤの如き第1次産業輸出国が,何故工業化を計らねばならないかと云う二つの理由 は,人口増加と,景気変動である。
毎年3%の人口増加は,ゴム,錫貿易の主要産業では,その結果起っそくる労働人口 の増加を吸収することが出来るとは,到底考えられない。たとえ土地の開拓や植林が行わ れたとしても。
第2ば,第1次生産物の価格は価格変動が大きいことが云われている。総輸出額が国民 総生産の30%になると,輸出価格の変動の為に,国民所得の不安定性の大きな理由となる
ことは明らかである。国民所得に相対的に第2次産業が拡大することは,この影響を明ら かに緩和する。それはオーストラリや等の他の国の例を見ても明らかである。労働党の調 査によると,1953年には製造業は総国民所得の14%を占めたが,それは余りに過大評価で あって,Walterの調査によれば,1955年〜58の間には,僅かに5%にすぎなかったとし ている。その両者の相異は調査方法の相異に原因があり,Walterの誤差を調整しても,
9%と考えられる。1961年に於てさえも,6%乃至10%である。
更に,LB.R.D. Reportは工業促進の方法について,輸出の為にゴム製商晶が中心
マレ戸シヤに於ける工業化と創始産業法 47 になることが出来るとは考えない。何故なら,ゴムはその価値に比して軽量で,容積が小 さい為に,船積輸送価格は安価につくからである。即ち,タイヤのような主たる製品に於 てもゴムはその僅かな部分を占めるにすぎず,タイヤの重量,容積は製造過程に於て附加 されるものだからである。これによって,ゴム製造業と云うものの最善の経済立地は,消 費地中心に近いことがわかる。
また,錫工業の可能性についても大きな期待はかけられない。何故なら,錫も,殆んど の製造業使用に於て,最少の成分となるものにすぎないからである。錫壽工業は鉄鉱石か ら鉄鋼を作る際に利用されるが,マラヤにコークス炭が存在しないことが,ハンディキャ ップとなる。
従って,工業拡大の最大の期待は,小数の大工場を作るよりも,論る程度は輸出可能な 家庭用品を主体として,広汎に発展させることである。そして家庭用ゴム製品,タイヤ等 の生産や,木製品,セメント,粘土生産物,パイナップル缶詰,魚類加工,軽機械工業,
家庭用品,織物,編物,衣類等の加工技術の急速な改良を主張する。
尚,マラヤは,高い労働生産性を保証する額の資本を提供しうる程裕福な国でもなく,
またマラヤは比較的賃金水準が高いために,労働集約的な商品をもって,アジア市場で競 争することは困難であることを指摘し,その為には先進資本主義国に対しても,またアジ
アの後進諸国に対しても,保護関税の体系化が検討されねばならないと主張す 驕B ㈲マラヤ第1次5ケ年計画(1956〜1960)
第1次計画に於ける公共投資総額は約11億マラヤ弗 (1米弗一3.06マラヤ弗)で,その 中約10億:マラヤ弗は経済及び社会開発に,更に開発支出のうち60%は,経済部門に,30%
は社会部門に配分された。この低土をなす基本方針は,LB.R.D。 Reportであり,農…
業の多角化と工業化を促進することであった。労働党の工業開発報告(lndustrial Revel−
opment Working Party Report)はマラヤ独立の1957年に連邦政府によって採用された が,その報告は細部に或る程度の相異はあるが,1.B.R.D. Reportの勧奨と大差ない。
ただ,ココナッツ,パームからの野菜油の抽出,廃材からのハード・ボードの製造や,
稲わらを原料とした紙製品の如く,地元生産物の加工についての研究の重要性を指摘して いる。国内で製造可能な輸入晶,例えば缶詰,魚類,野菜,果物,ビスケット,マカロニ,
その他支那から輸入される特殊な食品,煙草,建築材料,塗料,印刷物等の産業の育成を 主張している。
これらを実現する為の工業金融については,新規工業信用制度が公的会社の形態をとり,
Malayan Industrial Development:Finance:Ltd.(M.1.D.FL.)が創設され,連邦政府 がスポンサーとなって,主要な商業銀行,保険会社, Common Wealth Development Co「PorationやCommon Wealth DeveloPment Finance Companyが合同して作ら れた。これらの会社は,M.1.D.F :L.の株式資本を所有して,長期及び中期の信用(
10年〜15年)を提供した。1962年3月末のM.LD.E.L.の貸借対照表では15百万弗の
資本が提供されている。
また,政府はこれら工業育成計画を実現するために,1958年以来Pioneer産業法を制
定しお。
また工業団地の育成が行われ,社会資本の投資が重点的に行われた。 1 Tasek Industrial Estate (378エーカー) (イポー市)
Petaling Jaya (4,000エーカー) (クアラルンプール市)
Johore Bahru Casseway (シンガポール)
Buttefworth (600エーカー)
首都クアラ・ランフ。一ル郊外6マイルの地点Petaling Jayaを開拓して,住宅地帯を 含むNew Townを作り,すでに100以上の工場と1万戸の住宅と4万人の人口を集め,
一蔀政府建物,学校,研究所,プール,病院も加えて理想的な近代都市を形成している。
更にクアラ。ランプールとクラングとの中間Batu Tigaに州首都を移転し,工業都市の 開発が計画されている。また,Tasek Industrial耳StateやButterworthの工業団地の 整備が活濃に行われており,Butterworthでは港湾設備の拡充も併行して行われ,ここに は日本資本参加の近代的精糖工場あり,マレーシヤの消費量の70%を生産している。
第1次5ケ年計画に於ける公共投資
電 力 142百万弗 水 道 80 〃 下水道 16 〃 交 通 206 〃 通 信 151 〃
⇔第2次5ケ年計画
マラヤ連邦に於ける華僑資本に比して,農業人口の主体たるマラヤ人の貧困は,政治的 不安定の原因となる恐れがあり,かつマラヤ人ゐ人口増加は極めて高く,就業人口の増加 は必ずしも工業によって吸収されることは出来ない。むしろ土:地開墾等による農業開発の 方が,その投下資本の割には雇傭吸収率が高いと考えられる。また回教を信奉するマラヤ 人の生活は,工業等の近代的社会に順応することが困難であった。
かくの如き観点から,第2次5ケ年計画は工業開発よりむしろ,農業開発に重点を置い たものと云われている。すなわち,
1)農民の経済的社会的厚生水準の向上 2)急増する労働人口に対する雇傭の増大
3)生産量の増大とゴム価格変動に左右されない生活水準の維持 4)ゴム以外の農産物の多様化と工業化の促進である。
かくの如く,国民経済発展の重点が工業におかれるか,農業におかれるかは問題のある
ζころであろうが,かってマラヤに資本主義国際商品のゴム園の開発は盛んに行われたが,
マレーシヤに於ける工業化と創始産業法 49 その必要とする主食は僅かに%を供給するにすぎなかった。かくて,マラヤ北部に於ては 米作技術の積極的改良が試みられ,日本技術者の導入と共に飛躍的成功を治めつつある。
また農業の多角化の一環として,非効率な原地産甘庶栽培を輸入種甘蕪に切換えることに よって,砂糖消費の国内調達が努力されている。
第2次5ケ年計画の公共投資は,交通362(百万米ドル)公共事業402(百万米ドル)通 信72.9(百万米ドル)である。しかし乍ら,1963年4月マレーシや連邦結成に際し,1966 年よりマレーシや第1次5ケ年計画の実施が発表され,それまではマラヤ第2次5ケ年計 画が踏襲されることになった。しかし,マレーシヤの結成に関して,インドネシアは新植 民地主義の現われとして対立し,軍事費の増大傾向が現われている。
(2)パイオニヤ産業法その他の諸政策
マラヤ第1次5ケ年計画,第2次5ケ年計画を通じて,パイオニヤ産業法,外国資本の 導入,保護関税等の一貫した政策を見ることが出来る。
〔イ) Pioneer Industries
マラヤの工業化に於て,最も特徴的なものは,Pioneedndustriesである。これは19 58年8月に法律化された。これによって,商工業大臣が納得しうる会社に対して創始産業 の資格が与えられることとなった。その条件は,原則として次の如きものである。
a)その産業は未だ連邦の経済的要求乃至発展に相応した経営規模で行われていないこ
と。
b)産業の将来の発展にとって,希ましい見透しがあること。
c)その産業の建設と発展を促進することが,公共の利益の為に好都合であること。
企業が,この条件を満たし得ると判断される場合には,商工大臣によって,創始産業の 資降が与えられ・一度び生産が開始されるζ・現在施行中の法入所得税40%が凡て免除さ れる。但し,投資された固定資本の量によって,夫々免除期間が決定される。即ち,10万 弗以下の創業固定資本投資に対して2ケ年,10万弗〜25万弗は3ケ年,25万弗以上は5ケ 年,更に租税上の恩恵は,創始産業の資格期間中発生した損失は,その資格を失う期間に 持嘩すことが出来る。そしてまた創始産業資格が過ぎた時に企業が減資の目的の為に,現 在存在している企業の全財産を新企業として取扱うことが出来るという内容である。
しかし,この証明書 (Pioneer Certifica毛;e) には条件または要望事項など附せられる ことがあり,「従業員にマレー人雇傭を優先せしめること」あるいは「将来さらに生産規 模を拡張すること」その他「原料調達先指定」 「製晶の一定比率の輸出振向け条件」等が その例である。pio鵬er Certificateを得た会社は,上述の免税の優遇を受ける他に,関 税措置等保護措置を与えられる場合が多い。また,英本国及び英連邦等スターリング地域 を除き,外国資本の導入に関しては,地元資本との合弁会社形式をとることが多く,かつ,
その利潤分配が貿易収支対策の一環として現物分配方式をとる場合がある。
1962年3月までに57の工業部門と297の工業生産物がPio驚6rとして選定された,その
結果,1963年6月までに,99社がPioneer産業資格を獲得した。その公称資本は133.6百 万弗に及び,その73%は海外からのものである。その中70工場が生産中であり,約5,000 人の労働者を雇傭している。1962年6月に,操業中のこれらの企業の資本,所有,雇傭の 詳細は第9表の通りである。1963年末までのそれは,指定品目336,業種61,会社数106社 で,その約90社が生産を開始し,従業員数は7,400名,化学製品48%,金属製品26%,食 品飲料,タバコその他26%となっている。
㈲ 外国資本の導入
パイオニヤ産業法が外国資本に対して,国内資本ζ同様に適用され,且つ,外国資本に 対して行われる特別な誘因は次の如きものである。
a)国有化の場合には充分な補償を与えると云う約束。正式の協定としては,アメリカ,
西ドイツとの間に調印が行われている。
b)二重課税免除協定。二重課税が免除されると云う包括的な協定がマラヤ連邦と英国 及び英連邦諸国との問に施行されている。またマラヤ連邦は英国,デンマーク,ノルウェ ー,スエーデン相互に適用されているご重課税協定に従っている。
この協定に特徴的な一般原則は,収入の発生した地域と,収入を受領する人の居住地域 と両方で課税されることはないことである。
c)資本と利益の移動の自由
スターリング地域では,資本,利益,利益配分の移動は完全に自由である。スターリン グ地域以外からの投資は政府の認可が必要であるが,一度認可せられると,その投資に関 係ある資本と利益の移動は自由である。
⑭ 保護関税
関税諮問委員会が商工業大臣の産業開発局(Industrial Development Division of the Ministry of Commerce and Industry)内に,次の事を参考とすることを条件として 設立された。
関税による保護,原料輸入税の軽減,国産税の軽減,戻税等を連邦内の製造業の為,ま
たは製造業創設の為に,個々に適用することについて,または,政府の産業発展政策の原
則に応じて,政府の関税政策を含んだ援助や特権を適用することについて,商工省大臣に
調査し,助言することである。
マレドシヤに於ける工業化と創始産業法 51
第9表マラヤ連邦におけるパイオニヤ企業(1958〜62)
(名称略M』Malaya, F=Federation)
会 社 名
M.Batteries Ltd F.Paint Faρtory Ltd I.C. I Paint M. Ltd P.A. R. M. Paint・wores F.Lta Sissons Paints East:Ltd M.Acid Works Ltd Cement Acid Ltd
General Container Co. Ltd F.Industries Ltd
M.Cables Ltd Ferranti M.:Ltd Beechan Ltd Insul ationss M. Ltd
lMonsoon Manufacturing
Co. Ltd Lison Co. Ltd
Sincere Maもch&Tabacos Factory Ltd
I. l. Bitumen Products l M Ltd レTh。M。,。IB。xC。:
1 ・fM.Ltd
iG1・x認11・nb・・y・M.Ltd
l
bum・x Ltd
Franco.M. Co, Ltd Century Batterles M. Ltd M.Weaving Mills Ltd Kelantan Matah Ltd M.Industria1:Ltd Beatrice Foods Ltd 正{ock Joo Ltd
Colgate・Palmoline Ltd Food Specialties I/td M.:Nozawa Asbestos Cemert Ltd The Lion dentifrice Ltd
生 産 物
公称 資本
1千弗
ラ ヂ 詠 吟: 料 塗 料
塗: i畔
塗 料 Sulphuric Acid セメント添加物 Crown corks 綿 製 品 電 線 竃 力 計 ヘヤークリーム 絶 縁 物
強力芝刈機
プラスチック
・マ ツ チ
Bitumen織物
金属コンテナー 薬 晶 薬 品 薬 品
Iead acid
衣 料
マ ッ チ
建築用材
ミル1 N製品
ボルトナット
歯みがき粉 ミルク製品 耐火ボード 歯みがき粉
2,365 761 1,500 540 850 1,000 300 244 1,000 2,153 310 200 300
10
140 1,875 510 2,000 2,000 250
20
700 3,000 500 305 3,300 250 200 5,000 257 199
所 有
外国資本
金額 1,920 375
80 1,500
486 850 645 153 0 0 2,153 310 200 0 0 0
9 0 2,000 250 0 385 2,837 0 0 1,650
200 5,000 100
98
国 名
米 国 香 港
インドネシア
英 国 オラ ンダ 英 国 香 港.
オFストラリや
英 英 英
香
国 国 国
港
英 国
デンーマーク
オドストラリや 香
英
カ
ノ、
日
日
ナ バ
倭
国
ダ マ 本 本
シンガポ 一ル
マラや連邦 金 額
279 276 0
54
0 355
82
244 1,000 0
.0
0 300
10
140 1,155
58
2,000 0 0
20
146 162 500 305 1,650 250 0 0 155
74
従業 員数
300 112 38 57 29 100 6 38 62 47 14 17 65 16 9 205 30 63 52 70 32 35 527 350
32.
164 14 45
61
71
33
M.marine lndustri6s Ltd M Consumer:Ltd JQhnson Ltd M.Brew6ries I.td Carrier International Ltd M。N.S。DLtd
Naar den M pty Ltd F.Plastics Ltd
M.Ulnited Industrial Ltd F。Metal Printing:Ltd ゴF.ch:emical Ltd
F.1 ron works Ltd Alqan M. Aluninun Ltd Colg ate.Palmolive Ltd Far.East Metal WorK:s Ltd.
Zuelling Feedmills Ltd.
Asi3 chemical corp Ltd Che単茸cal Industries M.Ltd
Rebar M。 Ltd M.electri亡al Ltd Pe鴎ak matah Factory Ltd The National Iacquer &paint Co。 Ltd
Larn soon corparal ]しtd She111@Refining Co。
Cri{tall M. Ltd Dunlop M. Ltd M.Zups Ltd M.shgar
ma卿facturing Co. Ltd M.lndustrial pla忌tiocs Ltd M.Fibre Containes:Ltd M.Frozen Foods Ltd Poly Plastics Ltd M.Umbrella Factory Ltd Hume Industries M. Ltd M. 』Pharma ceutic31 ..Fact・y Lt .
AlinOlnoto M。 Ltd。
水産物缶. l
歯みがき粉.
パ ウ ダ ー
ビ 、一 ル
冷房装置
合成detergents
合成香料
プラ.スチック H:ousehold utensilS
コ ソテナー Monosodiun 91utamate.
亜鉛鉄板
ア ル ミ 板 合成deterg印ts
自 転 車 化学動物食:
化.学動物食
エチール.
アルコール プレハブ住宅
電気扇風機
マ ッ チ 塗 料 み が き 粉
石油製精
金属サッシ窓 タ イ ヤ フ ア スナー 砂 糖
プラスチック セ ン ヰ 板
冷凍食 晶
プラスチック 洋 傘
アスベスト セメント 合板 薬 品 味 ノ 素
500 431 1,000 9,000 500 500 120 245 400 125 500 800 1,024 600 400 300 60 625
245
0
1,000
11.
500 510 100 100 200
12,000 55 23.
350
2,000
200
1 20
100 1,500 625 400
日
英 0
350カ 500英 120オ
0 0 0 0 487日 547カ 450
600カ 0 240 0 0
1.
O
0 0
250香 0
100.
150 7,370
11 54
2,000 0 0 15 0 100 396
ナ
ラ ン 本
国
ダ 国 ダ
本
ナ ダ ナ ダ
カ ナ 英 英
港
ダ 国 国
オーストラリや
香
香
港
港
106 130 0 9,000 150 0 0 245
60
125 498 307 0 0
.400 60 60 420 0.2 11 500 169 97 0 50 0 55 12 91
0 200 117 「46 1,500 510 0
166 35 52 180 37 33 13 40 172 64 42 90 177 61 131 27 36 126 132 48 271 末嫁動
〃
〃
〃
〃
〃
〃
〃
〃
〃
〃
ク
〃
〃
〃
マレーシヤに於ける工業化と創始産業法 53
Brady,s M. Ltd Calorcem M. Ltd Tong Meng Co M。 Ltd
J.&.JHoMLtd
Tacζm Ltd
プラスチツ列 1 塗料・セメントI I 家庭アルミ製品 歯 ブ ラ シ 金 属 板
211 186 0.4
・36 500
175 60 0 0 0
オドストラリヤド 香 港
100 126 0.4 36 500
末嫁二
二1
二
し
第2節 シ ンガポール
(1)計画の大要
シンガポールは1959年に独立し,人民行動党People s Action Party力敏権をとった が,工業発展の為の調査は,前の政府によって実施されていた。すなわち,コロンボ・フ。
ラン工業発展顧問官1Colombo Plan hdustrial D6velopment AdviserのF。」。 Lyle 氏による調査であって,シンガポール政府に報告された。1958年11月に完成し,1959年1 月にシンガポール立法議会Legislative Assemblyに上程された。 An Industrial De∀el・
opmemt Programmeがこれである。
G):Lyle報告
Lyle報告の基本的な立場は,シンガポールをマラヤ連邦との経済的統一が,工業発展 の為には絶対に必要である。その為には問題解決にあたる共同工業発展委員会Joiht Ind・
ustrial Developmemt Counci1力穀置されて,共同市場,同一保護関税,工業共同誘致 について努力しなければならぬ。それは経済的な閥題であるだけでなく,政治的な問題で ある。しかし,先見の明ある政治的な解決を待たなければ,この勧告が履行されることは 出来ないだろう。
シンガポールに1958年に失業者が55,000人以上居たから,たとえ世界貿易が毎年2%つ つ増大することによって,シンガポール貿易が潤うとしても,今日,12年間に合計6万人 の為の仕事が,貿易面に供給されるにすぎないだろう。しかし,この期間中に約4万人の 求人があると考えられるから,貿易拡大による雇傭量の増大は,余りに僅少である。従っ て,シンガポールの失業問題を解決する唯一の可能性ある方法は,工業化を促進する以外 にない。かつ,継続的に工業発展を行う為には,次の如き準備がされねばならない。
1)商工大臣省内に工業促進課を設け,強力にして有効な措置が自由に行われうる・よう にする。
2)工業統計調査の実施 3)輸入貿易統計調査の実施
4)シンガポールに対する外国輸出業者及びシンガポールに工業誘致出来そうな外国企 業のリストを作成する。
更にアメリカ企業による管理指導によって,新しい工業発展組織をつくることや,新規
企業の為に必要資金の%を提供出来るような組織を作ること,その為にはマラヤのM。1.
D.F.しと同じ組織を作ること,州所有第1次,第2次産業の廃止を行うことを提案して
いる。
それらの提案に基いて次の如き諸政策が行われた。
(1)Pioneer産業法(1959年)
この法制化はマラヤ連邦のそれをモデルとして作成され,最初の5ケ年間は収入税を免 除する。しかし,シンガポールでは,資本の最少限度の制限がない。
(2)工業拡大法
既存の工業の場合でも,新たに改良された生産物を生産する場合には1収入税の免除が 5ケ年間与えられる。そして,それは新しい資本支出量にスライドされ,最低1万ドルに 対して11%,1万ドル増加する毎に1%つつ附加され,従って5万ドル以上新資本支出に 対しては15%免除となる。法令は明らかに,工業拡大が連邦よりもシンガポールで行った 方が有利なように計画されている。
(3),製造業統制令
製造業者の登録指定を行うことが出来る。すなわち,登録されなければ,次の業種は誰 も経営することは出来ない。その業種は石鹸,ビスケット,万年筆,歯みがき粉,チョコ レート,電球,資料,エナメル,煙草,マッチ等である。統制官は一定の期間これらの商 品製造を希望する新しい業者を拒絶することが出来る。
第10表 シンガポールに於ける経済活動人口推定
D957 1962 1969 1972
人・合訓471・50・ 523,000 602,100 707,500
増 副 51,500 了9,拍0 105,400
(2)1961〜4年5ケ年計画
これはマラヤ連邦の場合よりも遙かに,工業化を強力に推進しようとするものであった。
人口が毎年4.3%づっ増加し,その3.6%が自然増であり,0・7%は主としてマラヤ連邦 からの移民であると予想される。従って,経済活動人口は第10表の通り推定される。1957
〜62年までは毎年労働力は1万人以上増加し,次の5ケ年には毎年15,800人,次の5ケ年 には21,000人つつ増加すると推定される。この予想にシンガポールの失業問題ではマラヤ 連邦からの流入を考慮して入れておかねばならないからである。シンガポールに於て雇傭 が増大しても,マラヤ連邦に於ても同様の比率で雇傭が増大しなければ,それだけ失業者 がシンガポールに流入することによって,シンガポールの失業者はより急速に増大すると 考えられる。1959年までの10ケ年間に75,000人がマラヤ連邦からシンガポールに流入した
と云はれており,しかもその後半に於ける流入速度は極めて大であったからである。1957 年の貿易業従業員は,71,362名で,製造業従業員よりも約5,000人多かったが,1955年か
ら59年までは貿易が沈滞気味であったから,今後この業種従業員の増加を期待することは
マレーシヤに於ける工:業化と創始産業法 55 困難である。従って,失業問題の解決は製造業にかかって来ると考えられる。今後工業化 推進政策によって,シンガポールは輸出のための工場や,輸入原材料の加工業産の工業都 市となって発展し,市場は益々拡大して,国民所得は最高水準まで増加することになると 期待される。かくの如き計画の下に於ける支出計画は第11表の如きものであった。しかし,
工業化の為の資金導入は,資本所有者が工業についての無知識が最大の障害である。貿易 業や商人として成功した経験では工業を創始することは不適当である。と云うのは商人資 本は短期間に危険と利益とを勝負するからであって,工業創業に必要な資本の性格とは異
っている。
第11表 シンガポール開発計画に於ける支出
1.産業開発
a 土地及 び 農業 b 工業及 び 商業
工 E.D.B(経済開発局)
皿 Kallang 投資 :皿 Jurong 投資 IV 土 地 造 成 V 電 気 VI水 道 V旺 ガ ス
c輸送及び通信
2.社会 開発
a 保 健 衛 生 b 教 育 c 厚生 施 設 d 住 宅 e 下 水 道
f 広報・啓蒙
3.行 政 費
100.00 40.00 45.00 5。60 78.50 54.23 14.03
合
百万弗 53.27
33ア.36 117.32
35.80 94.48 1.77 153.60 47.36 16.87
507.95
349.88 13.19 871.02
かくの如き資本市場の性格,構造を変革し,公的組織を通じて工業用資金を調達し,彼 らを工業に従事させるよう導く必要がある。この目的でもって,僅かに百万弗の資本しか 持たなかった工業化促進局(Industrial Pronotion Board)にとって替る経済開発局(E・
conomic Development Board)が設立された。
①経済開発局(E。D.B)
1961年8月1日に設置され,国連援助に依る軽工業サービスセンターを設立,新興工業
に対してバイオチヤ産業法の適用以外に資本の半額貸付等の措置を行い,その他工業設置,
生産管理,販売等の技術指導を行って来た。㌧
E.D.Bは新興工業を設立し,又は既存の工業の成長を促進すると云う第一の役割を果す ことが出来るように非常に広汎な権力が与えられている。そして,その職務遂行の為四つ の分局,産業振興課,金融課,計画及び技術指導課,産業協力課がある。
ジンガポール政府は総額100百万弗をED.Bに割当てたが,1916年12月31日現在が40百 万弗が配分され,1962年60百万弗,1963年80百万弗に達した。
最初の投資の36百万弗は,以前のシンガポール総督府1とよって海外に投資されていた英 国の国債,社債等に肩代りされて,1961年の12月までには全く産業には融資されなかった が,1962年12月までに約10百万弗が貸出された。内訳は次の通りである。
1)船舶解体 2)精 油 3)印 刷 4)小麦精粉 5)ビーフン製造
6) steel rolling
7)金属晶
工業団地
2857.4弗 2000.4弗 100.4弗 1000.4弗 50.4弗
4,000.4弗 100.4弗 ②
軽工業の為の三ケ所の工業団地が,住宅局とシンガポール産業開発会社の協力で発展し
?つある。それらは,Tanglin H:alt(42エーカー)Red Hill(23エーカー)Bendemee「
Road(7ニーカー)であるが,凡て敷地は予約されており,28工場が実際に操業に入って いる。労働者の住宅も住宅局によって,団地周辺に建築されている。しかしこれらの団地 は,Jurong:New Townとその工業団地と比較されると余りに小さい。、E.D.Bがこの Juroug地区の計画を担当しているが,その資金は別個にシンガポール政庁が担淫してい る.この計画は最初に1500エーカーの重工業用地と1040エーカーの製造業敷地とが用意さ れている。2つの製造業が操業中であって,更に47工場が380エーカ7の敷地を割当てら れている。これらの中25工場が1964年に生産を開始する予定である。Jurong工場団地は
シンガポrル港から約7マイル,島の南西部に位置する。そして大型船舶用の天然の良港 に面している。この地区に道路や鉄道が新しく建設され,重工業,軽工業の各種工場設備 と20万人の住宅地帯を擁し,学校,商店,病院その他公共センター,公園が附設され,マ レーシや最大の工場都市として,ここ2,3年の建設は驚異的である。
③ 創始産業会社
以後1963年末までに,77業種255品目,払込資本累計,225.4百万マラヤドル, (1米ド ルー3Mドル)雇傭量8,850名,119の会社が登録され,その中33工場が実際に生産を初め,
19社以上が建設中である。これらの資本の中,一般募集36百万M弗,日本からの借入れが
マレーシヤに於ける工業化と創始産業法 、 57 15百万M弗,合計51百万M弗の%は海外資本である。その半分以上が石油精製,及びその 関連加工製品であって,資本集約度が高く,それによる直接雇傭は比数的小さい。
詳細は第12表の通りである。
㊨ その他二重課税免除協定が,マラヤ連邦,英本国,スエーデン,デンマーク,日本との 間に締契され,非スターリング地域を除いて,資本金や利潤についての移動は自由である。
第12表 シンガポールに於けるパイオニヤ産業(1964年3月)
会 社 名
Shell Refinery Co. Ltd。
Maruzen Toyo Oil Co. Ltd Mizrahie&. Co。 Ltd.
Magnolian Dairies Ltd.
Metal Tubes and Chemical Products Ltd.
Singapore Cement . Manufacturing Co. Ltd。
South East Metal Industries Ltd.
Tumasek Enterprised Ltd.
Prilna Ltd.
Mazhamex Ltd.
Shell I Lubriごants Blending Co.
Shell Bitumen.Manufacturing、
Co. Ltd.
National Iron and steel mills Ltd.
Bitumen Pa6kaging Ltd.
pragon Industries Ltd.
Castrol Ltd.
Daiwa M. Ltd.
New Zealand Dairy Supplies Ltd.
Ferris Industries M。Ltd.
Calter Ltd.
・ρcean Garme堪s Ltd Cement Aids Ltd
■
Office Equipment lnanufactures Ltd Yangtzckiang Garment Ltd。
Wing Tai Garment S.Ltd.
Pelican Textiles Ltd.
Hoo Wah Manufacturing Co.
S.Garment Factory Ltd.
・Kuvang Joo Seng M。 Ltd.
Veneer Products Ltd.
Sin Chew Garment Factory M,.Ltd。
生 産 物
石 油
石 油
薬 品
.ミ ル ク
金属チューブ
歯プラシ
セ メ ン ト
金 属 板
.綿 製 三 門 麦 粉
チュウインガム
潤 滑 油
Bitumen
製 鉄
Bitumen.
コンアナー
旧 基 滑 油
プレハブ住宅
ミ ル ク
テレビジヨン
石. 油 衣 服
ヤメント添加物
事務用品
衣 衣 織 衣 衣 植
服 服 物 服 服 物 油 Plywood
衣 服
.資 本
外国
9,750 250 200
0
150
2,400
0 200 1,000 150 2,000 1 250
0
1,000 300
0
1,000.
500 100 300
120.
国 二
二 ナ ダ 日本その他『
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