長野工業高等専門学校紀要 ・第 2 8 号 ( 1 9 9 4 ) 9 1
カ リフォルニア州における州教育 予算歳入のメカニズム
中 村 護 光
( 平成 6 年 8 月 3 0 日 受理)
The Mechanism of Educational Finance in the State of California
Morimitsu NAKAMURA
Thr o u g h myv is i t s ' t op u bl i cs c hoo l sa n ds c ho o ldi s t r i c to f n c e si nCal i f o mi a , l a c ko f f
un d swa st h et o p i cmo s tf r e q ue n t l ya n dl o u d l yt a l ke da bo u ta sama j o rdi 爪c ul tp r o bl e m t h e ywe r et h e nf a c i n g.I ts e e me dt h ata l lt h ee du c a t i o n a la c t i v i t i e ss t a g na t e d,s t o p p e d a n dwe r ef o r c e dt or e t r e a tb e c a us eoft hi sr e a s o n.Pu bl i cs c ho o l si nma n yo t h e rs t a t e s i nt h eU. S. mu s tha ves i m il a rdi 爪c u l t ymo r eo rl e s s . St i l laCa l i f o r ni apr o bl e ms e e mst o bep e Ⅳa s i vea ndc hr o ni c . W h a t ' sapa r t i c u l a rma l a dywi t h仇i ss t a t e ?Thi spa pe rs t ud i e s 仙ee d u c a t i o na lf u n °i n gme c ha n i s m a n di t shi s t o r i c a lba c kg r o u n d.
1 . カ リフォルニアの州経済の現況
合衆国の経済 は ,1 9 9 4 年末 までには, ゆるやかな成長が期待 されている.実質国内総生産 は 1 9 9 4 年 には 2. 6% の成長が見込 まれ,個人所得 については,労働市場 の僅 かなが らの好転 で 4% ,企業利益では 1 1 % の上昇 が見込 まれている. しか し, カ リフォルニア州 の経済 は,
この景気の波には乗れないままである.雇用状況 は下降を続 け,卸売業 は前年実績 を下 回 り, 建設事業 も大幅 に落 ち込 んでいる. 1 9 9 3 年末からは,消費者 の購買意欲が高 ま り,若干 なが
ら景気回復 の兆 しが見 えはじめたが,年明けの 1 月の ロス市郊外を震源地 とす る地震に見舞 われ, この災垂 による南 カ リフォルニアの経済に与 える影響 は少な くない. しか し,多額 の 連邦政府 の緊急援助 と融資, これを受けた災害復興 のための公共事業への投資 は低迷す る地 域経済 にかえってプラスに作用す るとの見方 もある. こ うした天災 は別 として, この州経済 の不況を長引か している要因には, まず ク リン トン政権 の経済政策 における国防予算の削減 があげ られ る. これ ま七,国家の国防予算のおよそ 2 2% がカ リフォルニアに投下 されてお り, 特 に航空機産業 における雇用のカ ット,軍事基地 の閉鎖の余波は 1 9 9 5 年 まで続 くと見 られて いる. また,建築,不動産部門 もオフィス,ホテル,店舗 な どの これまでの過剰供給 に よ り 受注不振であ り,融資を行 ってい る金融機関の経営を も圧迫 しているといわれてい る.現 に
ロスアソゼルスにおいても ,do wnt o wn に限 らず,隣接す る Gl e ndal e 市 ,Or angeCount y
など至 る所で ,Fo rRe nt , Cl o s e d のサインが目につ くのである. カ リフ
ォル ニアをベースと
した‑イテク関連産業では,安い コス トを求めて国内外へ事業拡張が図 られてお り,全 国的
な C o mput e r s や e l e c t r o ni cc o mpo ne nt s ‑の需要 の増加 に比 べ,州 自体 はまだその恩 恵 に
浴 してはいない.州の製造部門を中心 とす る産業の輸出依存の割合は大 きいが,世界的経済 の低迷の中で,輸出関連産業の停滞 も続 いていると言われている.また金融,運輸,卸小売 り業などのサービス業における規模の縮小や人員削減 も行われ ,1 0 年前の経済活動の ブーム の再来,それに伴 う州の税収の再現は致底見込めず,深刻 な景気後退で ,1 9 9 0 年 5 月を ピー クに 1 9 9 2 年1 1月の統計では ,8 0 万人の雇用が失われてお り,雇用が景気後退前の状態 に回復 す るのは 1 9 9 6 年当初 と予想 されている.
2. 1 99 3‑94 年度の州の K‑1 2 教育予算
カ リフチルニア州の 1 9 9 3 ‑9 4 会計年度 における予算総額 は,. お. 串そ 5 1 0 億 ドルであ り,内 一般財源から総額 3 9 0 億 ドル,特別財源か らは 1 2 0 億 ドル となっている.主な内訳は,個人 か らの所得税が 3 2. 5 % ,売上税 3 0. 6 % ,銀行及 び企業 か ら 9. 5 % , 自動車税 8. 9 %,Hi gh wa y 使用税 が 5. 0 % な どである. また,歳 出の内訳 では,保健厚生 が 3 1. 0 %,c o mmu ni t y c o l ‑ 1 e ge s を含めた K‑ 1 4 教育 ‑2 9. 6 % , この他 に高等教育,産業 ・運輸 ・住宅,青少年 ・成人 矯正施設, 自治体への補助等 となっている.一般会計予算の中だけでみ ると ,K‑ 1 4 教育 は 3 9. 9 % と保健厚生の 3 3. 8 % を抜いて第‑位の座 を占めている.
カ リフォルニア州の幼稚園 ( ki n d e r ga r t e n ) から hi g hs c ho o l の最上級生 1 2 学年 までの K
‑ 1 2 教育 に投資 され る額の内訳 は次の通 りである.概ね 5 0. 9 % ( 1 4 6 億 ドル)が州の一般会計 予算で ,3 2. 5 % ( 9 3 億 ドル)が地方資産税で賄われてお り,残 りの 1 6. 6 % が連邦政府 ( 2 2 億 ドル)及びその他の l o c a ls o ur c e s( 2 6 億 ドル) に頼 っ七いる.州全体で Kl1 2 教育 に使われ る 1 9 9 3 ‑9 4 年会計年度 ( 7 / 1 ‑翌年 6 / 3 0 . まで)の総掛 ま ,2 8 0 億 ドルをこえている. これは他 の どの州 より多い額であ り ∴1 9 8 5 ‑8 6 年度の 1 7 5 億 ドルか ら比べると 1 0 0 億 ドル以上の増加 と なっている.
K‑ 1 2 教育の基本姿勢は,子供たちに質のよい教育 を提供す ることを通 して,州 に効果的 に投資す ることをテーマとしてお り,教育予算 に関す る法規に則 った予算付 と,生徒‑人当 た りの教育投資額においては,前年度を下回らないことを確認 しなが ら,州は次の よ うな事 業 プログラムを発表 している.①就学前教育の充実拡大 ( 低所得家庭‑の補助) @ He a l t hy St ar t ( 就学児童への健康管理,地域サービスのための協力 ・連携の拡大)( 卦早期の精神衛 坐 ( 子供の学校不適応の発見 と治療 ,K‑3 児童への心のカウセ リング)@代替教員の確保 とその資格取得の整備 ( 学校区による代替教員の用意 と資格取得を奨励す るプログラム)で ある. この他 に ,t heOp po r t uni t y Sc ho o l sPr o gr a m ( 就学機会提供 プログラム) と Co r ・ r e c t i o na l Fa c i l i t i e sPr o gr a m ( 矯正施設拡大 プログラム)を通 して成人教育に対 して現行 な みの予算付けを行 うこと,生徒の学力評価 プログラムの充実,学校改革への予算付け,ニ ケ 国語教育教員研修 プログラム拡大なども同じく主要項 目に挙げられている.
しかし. ,、 そのような州の予算規模や事業スローガソの下でも, 日常の学校現場では, カ リ
フォルニア州の経済不況が ようしゃな く州の公教育を直撃 してい. る. カウソセラー,学校看
護婦等にはじまる人員削減,図書費,教材教具の不足がいたるところで深刻化 している.他
州 と比べ,特 に,学校現場では教育予算の不足が恒常的で,かつ声だかに叫ばれているよ う
に思 える.全国的に見た場合, カ リフ
ォルニア州は,生徒‑人当た りの教育支出額において,
特 にこの 4 年間で毎年下降線 をた ど り,現行 の $4, 5 6 9 は全国平均 の $5, 6 8 6 を 1 9. 6 % も大 き
カリフォルニア州における州教育予算歳入のメカニズム 9 3 く割 り ,51 州の中で 40 位であるとい うデータがそ うした事実を裏付けている.勿論,他州 と 比べた生徒数の著 しい増加がその第一理由 として上がって くるが,人 口の規模や多様 な人種 構成で類似 している Ne w Yo r k がおよそ $9, 0 0 0 で全米第 2 位であることを考 える と, この 学級へつぎ込 まれる額 ははるかに見劣が しているのである.
過去 30 年にわたる生徒一人当た りP教育費の全国比較で, カ 1 )フォルニアの公立学校 は, 1 9 60 年 ,7 0 年代では,統計が始 まった年の第 5 位からは順位は落ちていても常に全国平均 を 上回っていた. 8 0 年代は概ね平均値 に安定 していたが ,90 年代 に入 ってからの落ち込みが激 しい.州予算に占める教育費の増加 に比 して, ど うして このような劇的な順位の低下が起 こ ったのであろ うか. この疑問が,カ リフォルニア州 における現在の公立学校 の予算 の窮状 を 解 く一つのかざを提供 して くれた.つま り教育費の額の問題 と共に,教育費の出所 とい う構 造上の問題 に起因 し,その結果 として起 こってきたカ リフォルニア州の事情があった. ここ で, このカー リフォルニア州の現在 に至 るまでの K‑1 2 教育費歳入のメカニズムを歴史的経過 を整理 しなが ら探 ってみた.
3. 資産税による教育費財源の確保の矛盾
1 96 0 年代はカ リフォルニア州 も他の多 くの州 と同様に,学校区は,各々その地区の地方資 産税 によって教育費の大部分をまかなっていた. Lや、 し, この資産税 に頼 るとい う方法 では, 例 えば,住民がつつましやかな生活 を送 らl {いるj :うな学校区に於いて彼等が学校運営 のた めに,毎年高率な資産税を払 っても,資産価値の高い地区で僅かな資産税率 により運営 され る学校区の教育予算にはるかに及ばないとい う現象が出て くる可能性があった.実際に 1 9 7 0 年に ロスアソゼルスの北隣 りに位置す る Ke r nCo un t y 内の隣接す る 2 つの学校 区で起 こっ た顕著な事例が これを証明 した. ・ Mc ki t t r i c kEl e me n t a r ySc ho olDi s t r i c t は,石油採掘 の
・ 利益により,資産税の割合が 0. 39% でも,生徒‑人当た りの教育費は $3, 3 06 となったが, こ の一方 Chi n aLa keEl e me n t a r ySc ho olDi s t r i c t では, ‑ . 評価資産額の 3. 60% の課税 にもかか わ らず,生徒‑人当た りわ教育費は僅か $35 8 にす ぎないとい う状況が出来て しまったのであ
る.
こ うした矛盾をついて,おきた裁判 が 1 96 8 年の Se r r a no 対 Pr i e s t 訴訟であった.学校教 育費 について,資産税の税率が どの学校 区でもほぼ等 しくなることを求めた もので ある.
この裁判 は,一般に Se r r anov s .Pr i e s t として知 られているが,原告は Lo sAnge l e s学校
区り児童生徒 とその父母であ り,代表は J o h nSe r r a noJ r . である. また被告 は ,t heSt a t e
Tr e a s u r e r の Ba ke r Pr i e s t で, この他に州関係では ,t h e Supe r i n t e n de nt of Publ i c
l n s t r uc t i o n 及び ,t heCo n t r ol l e r ,同時に Lo sAn ge l e sCo u nt y の関係では ,t heTa xCo l ‑
l e c t o ra ndTr e a s u r e r 及 び ,t heSu p e r i nt e n d e nt とい う,州 と c o un t y 双方の教育, .出納,
税務 の最高責任者達であった. この裁判の結果は ,1 9 71 年 8 月 3 0 日に州の最高裁判所 の裁定
で原告の告訴理由が支持 されて,■ 結審 したのである .1 96 0 年代 には州内の公立学校 の歳入の
90% は,地方学校税 として使われる資産税 からの収入 と州からの教育補助金の主に二つ の財
源か ら成 り立 っていた. 1 9 6 8‑69 年度では,州全体の教育費は,地方資産税 55. 7% ,州の補
助金 3 5. 5% ,連邦政府の助成金 6. 1 % ,その他 2. 7% から出ている. この訴訟の第一理由は,
地方資産税を中心 とした教育費の財源捻出方法では,学校区ごとにかな りの差があ り,不公
平が生 じているとして, この様 な事実は合衆国及びカ リフォルニア州の憲法で保証 されてい る法の下での平等を否定す るものであること.第二の理由は,第一理由の結果 によ り,児童 生徒が,他の学校 区と同程度ないしは,それ以下 の教育の機会 しか受けられないとい う状況 にあっても,他の学校 区と比べて,納税者は, よ り高率の税金を支払 うよう求められている 事実が存在す ること.第三の理 由は第一,第二理 由と合わせて,現行のシステムは違憲であ り,被告に学校教育費財源の配分の改善を行 う法的執行命令を求めて,一定期間内において, 被告及び州議会が これに応ず る改善を行わなければ,裁判所は,現行のシステムを再編成す
る法的権限を留保するよう求めたものである. これに対 し,被告全員が異議を申し立てた.
Lo sAng e l e sCo un t y の高等裁判所は,原告の 3 つの告訴理由はいずれ も論拠不十分である として,異議申立 てを支持 して, ‑原告の訴 えを却下 したのである. しかし, この裁判は,州 最高裁判所に上告 された.最高裁は,州の立法府 に共通の学校システム ( e q ua lp r o t e c t i o n) の提供を求めている現行州憲法第 9 条第 5 項 は,単に学校区の富を比較 して,それ によ り, 公教育の質の優劣が直接決め られるとは解釈 はされないものの, この保護平等を うたった条 項 の下で,税 に支 えられたすべての公的機関が住民サービスの面で等 しく行 き届いた力を発 揮 しているとは言い難いとして, これまでの判決を覆 し,原告を支持す る判決を下 したので あった.
4. 学校区 と州の教育費負担の逆転
Se r r a n o 対 Pr i e s t の州最高裁 の判決 を きっか けに, カ リフォル ニア州 で は ,1 9 7 8 年 に Pr o po s i t i o n1 3 が州民投票にかけられ,支持 され, これを受 けて学校区が行 う資産税率の引 き上げに制限が設 けられたのである.そ して資産税の上限枠設定 による税収減は,その不足 分 を州の一般会計が負 うところとなった. この時の法案 AB 8:Ba i l o u to fLo c a lGov e r n ・ me nt の通過 により地方資産税 は学校区の教育総予算の中に占める割合がおよそ 1 / 4 に縮小 さ れた. ここにカ リフォルニアの公教育 の中での学校 に対す る州政府 と地方学校区の比重 は完 全 に入れ替わ ったのである. これまで主 として学校区の予算付けにた よっていたサ ービスは 州が直接,間接に予算措置をす ることにな り,財政上の権限及び管理に関す る多 くの権限が 地方学区から州に移 ったのであった.
この Pr o p. 1 3 は,資産税の上限を求めて 1 9 7 8 年 6 月 6 日の州民投票にかけ られて,信任 さ れた州憲法の改正発議である.その時に州民に意向を問 うたのは次の項 目であった.
・1 9 7 5 ‑7 6 年の評価基準を資産税の評価基準 とし,資産税の評価基準の今後の引き上げを制 限す る.
・歳入の増額を意図 した州税 に関 しては,いかなる変更 について も,立法府の 2 / 3 以上 の賛 成を必要 とす る.
・州 により資産への新たなる従価税や,売買取引への課税を禁止する.
・資産以外で,地方自治体が課税をす る特別税 には,地域住民の投票 において 2 / 3 以上の賛 成を必要 とす る.
これによる財政上の影響については ,1 9 7 8 年 7 月 1 日から始まる会計年度 を発端 として,
地方 自治体の資産税からの収入減は ,1 9 7 8 ‑7 9 会計年度では,およそ 7 0 億 ドルにのぼると推
定 され, この損失補填に関 しては,次の 2 つの対案が考 えられた.
カリフォルニア州における州教育予算歳入のメカニズム 9 5
‑ 現行法では,新税を課す る時は,州の立法府 の特別の承認が必要であるが,提案では, 地域住民の 2 / 3 の承認で課税を可能 とし・ ,地方自治体が資産税 に代わ り,他 に目的を特定 し ない税を課税で きるとするこ̲ とで税収を図 る道を開いた.
‑ 個人所得,売上を対象 とした州 ないしは地方税の税率を引き上げる.ただ し, これ は, これまで資産税 の 6 5% が企業 により支払われてきたことに比べて,個人所得,売上税 は一般 の個人納税者が支払 う性格のものであるか ら,市民に この肩代わ りが どこまで受 け入れ られ るかとい う問題 を残 した.
従来の法では,学校区は地方資産税の徴収を許可 されてお り, この時点で学校 区の歳入の ほぼ半分 ( 4 7 %) は, この資産税に,依存 している状態であった.同時に行政の他の部門 も, この資産税 に依存 していたのである.市の財政はその 2 7 % を ,c o u n t i e s の財政 は 4 0 % を, 普 た消防区のような特別区では,資産税がその歳入の 9 0 % を占める重要 な財源 となっていたの である. こ うした地方資産税 は不動産 ( 土地,家屋),. 個人資産 ( i n ve n t o r ie s ) ,公益事業, 鉄道等の事業活動上の占有地の評価等から成るものであるが, イソフレ,新築,所有 の規模
などを加味 して,価値の変動に応 じて定期的に調整 されている.資産税の税率に上限が設 け られ ると,税収減に伴い, この税を拠 り所 としていた学校,矯正機関,消防,保健厚生の部 門間でのパイの配分が問題 となってきたのである.
5. 州依存の教育予算体 系の確立
1 9 8 0 年代 には ,1 9 8 4 年に St a t eLo t t e r y からの学校‑の予算付 けが承認 され, クジの売上 げの 3 4 % が公教育‑まわ ることとな り,新たな教育費への財源が加 えられた. しかし,当初 紘,一時のカンフル剤 となったが,教育予算上の歳入 に占め る割合は縮小 を続 け ,1 9 9 3 ‑9 4 年度では , 2 %を割 っている.その後 ,1 9 8 8 年にカ リフォルニア州の教育費 を決める体系に 決定的な影響を及ぼす発議が1 1月の州民投票で承認 されたのである. これが Pr o po s i t i o n9 8 であ り,州の一般会計予算の少 な くとも 4 0 % が c o mmu n i t yc ol l e ge s を含む Kl 1 4 公教育‑
回されることを保証す る画期的な内容のものとなった.
この提案 は,公立学校及 び c o mmuni t yc o l l e ged i s t r i c t s に対す る州の最低限度の予算付 けを確立 し,学校に一定の基準枠で州の一般会計予算からの支出を保証す るために州憲法を 改正す るとい う発議であった. 1 9 8 8 年11 月に州民の百万人以上の署名を集め,州民投票 にか けられて,支持 を受けた ものである.また当時,州はインフレや,生徒の在籍数を基準 に毎 年,調整の上,公立学校や c o mmuni t yc ol l e ge s ‑の配当額を支出 してお り, カ リフオル. ニ
ア州憲法は,州 や学校 区を含むほとんどの公共機関‑毎年配分す る額 については, インフレ や対象人口に基づ く制限を設けている.税収が公共機関‑の一定の基準配当額を上回 る時 は, 余剰額は納税者 に返還 されねばならないと定めていた.
この発議 は,州の公立学校への予算の配当方法に加 えて, この税収入の余剰分 の扱 いも変 更 し,州の Ed uc a t i o nCo de に追加修正を行 うものであ り,主な内容 は,次 の通 りである.
1 ) 公立学校及び c o mmu ni t yc o l l e ge ‑の最低限度 の予算付けを確立す る.
2 ) 州の税収入の余剰分を K‑ 1 4 のために最大幅 まで使用出来 るようにす る.
このために,州議会 に s t a t er e v e n uef u nd の確立を要求す ると同時に,州民への学校及 び
学校区の自己茸任を明確にし ,3 ) 学校区に s c hoo lac c o unt a bi l i t yr e po r tc a r ds ( 学校報告
香) を準備 させ,学校 に配付 し,報告 させ る義務 を負わせ ることを求めた.
この発議への州民投票にあた っては,知事が反対 の声明を出 し,州教育長,教職員組合, PTA 代表が賛成 の声明を出す とい うよ うに,州当局 の中で も意見が二分 された.
賛成側の提案理 由は, 一 . 次 の通 りである.
・この発議 は税金を新たに引き上げる性格 の ものではな く,公教育向上 のための s t at ef und の使 い方を決めるものであって,州財政への荷重 な負担 とはな らないこと.
・現状 では, カ リフォルニア州 の学校 は,全国の他の どの州 と比べて も生徒が過密の状態で あって,基礎科 目の指導 に十分 目が届かず, コースによってはそれを削 らね ばならない事 態が出ている. また, カ ウンセラーの数が圧倒的に不足 し,生徒の教育上,職業上 の人生 設計 を十分 に援助 出来 ない上,非行 ,dr uga bus e の兆候 ある生徒 にも機敏 な対応 がで き ない こと.
・ここ十年間,公立学校を支 える資産税を財源 とした割合 は ,4 3% か ら 3 2% に減 ってお り, 加 えて,公教育へ の所得税 が 占め る割合 も ,4. 6% か ら 3. 3% に減 り,生徒‑人当た りで 1, 0 0 0 ドルの減 となっていること.
・1 91 0 年にカ リフオル土ア州憲法は,公立学校 のシステムを支 えるための資金の準備 を州 に 求め る条項を加 えた.その後 ,1 9 2 0 年代 の初期 に,生徒一人一人 に使われ る最低限度額 が 保証 され るよ う憲法で うたい,教育への支出はイソフレ調整 されてきた. しかし, ここ 1 0 年間,当事者間の合意が ない との理 由で教育費への支出は抑 えられていること.州議会 は, 州財政の危機的状況時を除 き,公立学校‑配当 され る最低限度の教育費を保証す るべ きで あ り,それによ り学校 を予算上の駆 け引 きや,政治的駆 け引 きの場 か ら開放すべ きである こと.
・ 州 に予算規模 を上回 る税収の余剰が生 じた場合,その分を教育費‑ まわ し,授業改善,戟 一員 の給与改善, クラスサ イズの縮小等に当てられ るよ うにす ること.
・Pr op.9 8 は,学校 に,学力評価テス トの得点,中退率,校 内規則, クラス規模,教材,授 業内容,学校管理状況等 の項 目を通 して校 内の現状 を報告す るよ う求め,市民に対 す る各 学校 の責任を よ り明確にす ることを求めていること.
・また反対側の理由は次の通 りである.
すでに教育 は予算編成上 の最優先項 目となってお り,州の一般会計 の 5 0% 以上が学校 に費 や されている現状ではあえて,法による保証 は必要 としないこと. 1 9 8 2 年以来,生徒 の在寿 数 は 1 4% の増加 であったに もかかわ らず,学校への予算付 けは 7 8% の増加 となってお り,戟 員の平均給与 は全国第 5 位 である.その上,更 にこの提案 は,老人保健医療,麻薬対策,交 通渋滞緩和対策等の他 の公共のサービスをカ ットして,その犠牲 の上 に立つ ものであ るため, 州関係 の主要 な公共 サー ビスを低下 させ,危機 にさらす ことになること. Pr o p. 9 8 が,数年 の うちに大幅な増税を引 き起 こす必要 に迫 られることが予想 され ること. この提案 に よる州 の財政負担への危機感を訴 えている.
なお ,Pr o p.9 8 は ,1 9 9 0 年 6 月▲ に Pr o pos i t i o nl l l でその一部 が修正 されたが,内容 は重
度障害者への資産税 の評価及び納税の免除 に関す るものである.
カリフォルニア州における州教育予算歳入のメカニズム 9 7
6. 苦境 に立つ州の教育予算
公教育 に対す る財政負担は,依然 として伝統的な資産税からの税収入が過半数を占め る州 がある一方で, カ リフォルニア州の学校区の予算は ,Pr op.1 3 で,その資産税 に上限が定 め られた後,その不足を州が負担する形をとった.更 に Pr o p.9 8 では,一般会計に占める教育 費の最低限度の割合を保証す ることで,州の財政責任を決定的なものとした.学校 の教育予 算が大 きく州の負担 となったのである. この方法で ,8 0 年代には,州は発展す る経済力 に支 えられ,教育費の負担をカバーす る余力があったが ,9 0 年代の景気後退の中では, これを う める術のない状態に追 い込 まれてしまったのである. ここ 3 年連続 の多額の赤字財政で, こ の Pr o p.9 8 の前途 は一層多難なもの となっている.縮小す る′ 1イの分け前を求めて ,Pr o p.
9 8 によ り予算付 けが保証 されていない s o c i a ls e r vi c e s に関わ る団体 は,教育 のために とっ ておかれ る Pr op. 9 8 の教育予算の弾力的,. 柔軟 な割当を求めて,議会に圧力をかけている.
1 9 9 3 ‑94 年の予算編成 においては,州知事 は,予算案の成立にあた り ,Pr o p.9 8 の一時的執 行猶予 と ,ki nde r ga r t e n の入園年齢 の 6 ケ月遅延 を提案 してお り,今後 この法 に対す る風 当た りはますます強まる気配である.
ところで ,1 9 9 3 ‑9 4 会計年度の予算法案 の成立 にあた っては,知事 はい くつかの t r ai l e r bi l l s に調印 した.苦境 に立つ州の教育予算 は,それ ら法案 の助 けを借 りて,辛 うじて成立
をみたのである. これ らの通過法案は,州予算の支出方法,税体系にい くつかの重要 な修正 を加 え,当面の教育予算の確保に大 きく貢献 した. 〜
SB1 1 3 5 の Cha pt e r6 8 /St a t ue so f1 9 9 3 は,資産税 による税収の うち,市や ,c o un t i e s ,及 び特別区での使用分 2 6 億 ドルを学校区や c o mmuni t yc o l l e g e s へ移す ように し, . 州の一般会 計で負担す る学校区や c o mmu ni t yc o l l e ge s へまわ る公立学校教育費の 2 6 億 ドル分を捻出す るよ うにしたのである. これを埋め合わせ るため ,SB 5 0 9 の Cha pt e r 7 3・Cha p t e r 4 1 8 / St a t u e so f1 9 9 3 は ,1 9 9 3 ‑9 4 会計年度 の前半 6 pヶ月間は,州の ha l f ・ c e nt ( 0. 5 %) の売上税 を延長 し,地方自治体への配当にあてるととを可能にした.またその後 ,1 9 9 3 年11 月の州民 凝 票では, この売上税 による課税の再延長 が認 め られている.また ,SB 4 5 2 の tha pt e r
6 0 /St a t ut 占 sof1 9 9 3 ,及び AB7 6 0 の Chap t e r6 2 /St a t ut e so f1 9 9 3 は ,r e nt e r s ' t a xL c r e d i t の優遇措置を 2 年間据 え置 くとともに,地方自治体が負 う州への様々な義務条項を廃止す る
ことを定 めた. 1 9 9 3 ‑9 4 会計年度 における K‑ 1 2 教育では ,1 9 9 2 ‑9 3 年度 と同様 の生徒一人 当た りの予算額 を確保できそ うであるが ,SB3 9 9 の Cha pt e r ' 6 6 /St a t l i e so f1 9 9 3 も,生徒
「人 当た りり前年並 の額 を維持す る州 の公約履行 に大 き く貢献 した.. つ ま り ,1 9 1 8 年 の Pr o p.1 3 の通過 までは,学校予算への助成額は ,ApA ( Av e r a geDa i l yAt t e nda n c e ) に基 づいて一般会計予算か ら自動的にまわ るよ うな de r i va t i o n ( 派生) s t a t ue が機能 していた.
しか し ,Pr o p.1 3 の通過の後 は, この de r i va t i o n に代わ り, .州議会が,毎年の予算法案審議
の中で地方自治体への一定の配当額を定め ることになった. この配 当額 は ,ADA ‑ と資産税
の税収見込みに基づいて算定 されていたため,常に年度途中での調整が必要 となった. この
ため,学校区は予定 していた十分 な税収が得られないため,予算の執行ができず,その赤字
を補填す る必要が出て くる場合 もあった.加 えて,州か らの毎年の赤字補填分の配 当額が,
会計年度の終了後 も数 カ月にわた り執行 されなかった り,それに対す る助成金の受 け取 りの
可否,受領時期 もわか らない恐れ もあ るとい う欠点 も持 っていた. SB 3 9 9 は,助成額 に関 しては州議会 の意見を反映 させ るとの条件付 きで,旧法の s t at ut or yde r i vat i onme t hod の 限定的使用を許可 し,学校 区及 び c ount y が当初 の予算額 を確保 で きる資金繰 りの手段 を回 復 したのである. この転換 に よ り,学校区の当初予算 は,資産税 か らの税収 の如何 にかかわ
らず,一定の助成基準で予算の執行が保証 され ることになった.
なお,通常の予算編成 においては ,cos t ‑ of l l i vi ngad 5 us t me nt s( COLAs ) の生活費 のイソ フレ調整が適応 されているが,現在の経済の落 ち込み に鑑み ,1 99 3 ‑94 ,1 99 4‑9 5 年度 の今 後 2 年間は,予算規模決定の際に この COLA を使わ ない措置が とられている 二 ∵
州経済に直接的 に大 き く依存す るよ うになった カ 1 ) 7 オル ニア州の K‑ 1 2 教育予算の前途 はます ます険 しい ように見 える.加 えて, この州の恵 まれた気候や,伝統的 な移民受 け入れ の土壌 に引かれて,国の内外か らやって くる人々の数 は年々増加 し,それに伴 う多様 な人種 構成や教育上 の諸問題 が及ぼす i mpact も他州 に比類 ない ものが あ り,州の教育予算や州が 教育 に費やすエネルギーの多 くを削いでいる. アメ. リカの教育 は,個性尊重 の教育,補償教 育 の充実 した アメ 1 )カソデモクラシーに乗 らた教育を信条. tLなが ら, カ リキュラムに於 け る選択科 目の豊富 さ,能力別 の講座の設置 ,al t e r nat i veeducat i on ,二 カ国語教育 な ど様々 なメニューを用意 している. しか し, それを保証す る予算付 け,すなわち,歴史的経過 を経 てた ど り】 ついた現行 の州の教育予算歳入のメカニズムが今や行 き詰 まっている.. この メカニ ズムが山積す る問題 を抱 えなが ら,豊 かな個性教育を今後 どこまで維持できるのか. どの よ うに直面す る難局 に対拠 してい くのか.改革を断行す る場合, どの分野で, どのよ うな改革 を試衣, どの ように対応 してい くのか.1 ヵ リフォルニア州 は, ご く近 い将来 にその答 えを出 さな くてほな らないのである.その経過 と結果 は,同様に教育財源の州への依存を指向す る 他州の動向に大 き く影響 を与 えるばか りでな く,教育費歳入のメカニズムのモデル ケースと
して今後,▲ 全 国的 な傾 向を形成 してい くこととなろ う.
参 考 文 献
t 1 ) ‑( 1 9 9 3 )Go u e mo r ' sBu d ge t1993‑ 94.( Sa c r ame n t o:De pa r t me nto fFi na nc eo ft heSt a t eo f vCa li f o r ni a ),
‑ 2 ) ( 1 9 9 3 ) Go v e r no r ' sBu d ge tSumma7 y1 993‑ 94.( Sac r a me nt o:Go ve r nor ' s
Of n c eo ft heSt at e o f. Cal i f or ni a)
3 ) ( 1 9 9 2 ) Co v e ; no r ' sBu d ge tSumw u 1 7 y1 99 2‑ 93.( Sac r a me nt o:Go ve mo r ' s
Othc eo ft heSt a t e o fCa l i f o mi a)
4 )1( 1 9 9 3 ) CALI FORNI A GOVERNMENT AND POLI TI CS ANNt L AL 199 3‑ 94. ( Sa
・c r a me ni b:cal i f or ni aJ our na lPr e s s )
5 ) ( 1 9 9 3 )Th eCONDI TI ON o fEDUC ATI ON 1 9 9 3.( U. S. De par t me nto fEdu c a t i o n:
Ofhceo fEduc at i o na lRe s e ar c handI mpr o ve me nt )
6 ) ( 1 9 9 3 ) . Dl ' ge s t o f Edu c a t i o n S h z t i s i i c s1993.( U. S. De pa r t me n tofEd uc a t i o n:
Ofnceof Edu c a t i ona lRe s e a r c handI mp r ove me nt )
17)