病 院
に おけ る紐 文 花
と ネ ッ 軒 汐 ‑ 身軽
三重 大 学 大 学院Å 文社会科 学 研究科
社会科 学 専 攻 1 06 M 2 54・ 田 妙 子
平成1 9 年度
学 位
論 文病院に おける組織文化とネッ トワ ー ク経営
三重 大学 大学院人文社会科 学研 究科修士課 程 社会科 学 専攻地域経 営法務 専修
豊 田 妙 子
論 文 目 録
三重 大学大学 院人 文社 会 科 学研究科
社会 科 学 専攻 地域 経 営 法 務 専修 氏 名 豊 田 妙 子
論文題目 病院に おける組織文 化 とネ ッ トワ ー ク経 営
論 文 要
本 論文 は、 病 院経 営につ いて、 以 下の 2 点か ら考 察を試み るものであ る。 1 点は、 病 院を 構 成 する各 職 種 間の コ ン フリ ク ト を職 種の持つ 組 織文化の視 点から分 析 する もの であ り、 2
点目 は、 病 院を中心に 一 般 診 療 所 や地域 間 ネッ トワ ー クの構 築を考え る。
医療は、 国民の健 康を守る た め に 必須のもの であ り、 基 本 的サ ー ビス とし て誰 もが 同 じよ うに享 受でき なけ れば ならない。 そのた め に は、 病 院組織の構 成 員であ る各 職 種が、 各々 の 専 門 性を十 分に発 揮でき、 かつ そ れ ら が円 滑に提 供 さ れ な ければ な らない。 そ れ は、 院 内に
と ど ま らず、 地 域に おいても同様であ る。
医 療機 関の構 成 員の多 くは、 専門 性を強 く 持っ た職 能 集団であ り、 病 院 経 営に つ いて の認 識が薄いということ ができ る。 加 えて、 国 家資格を有し、 専 門 職 能とし て の帰 属は み ら れ る が、 組 織‑ の帰 属 意 識が低い集 団と もいうこと ができ る。 ま た、 これ らの職 能 集 団は、 病 院 組 織にさ まざまな下位文化を存 在させ る。 こ の ような なか で、 各 職 能が もつ 能 力を十 分に発 挿 すること ができ る場を提 供 すること が、 医療サ ー ビス の質 ・ 効 率の向上のた め に重 要であ る。 そのた め に管理者は、 さまざまな 下位 文化に よ る コ ン フリ ク ト解 消のた めの マネジメ ン ト をする 必要がある。
国民 医療 費が増 大し、 政 府 財 政の負 担が問題となっ てきた。 し か し、 その問題解 決に市 場 原理 を導入 し てはならない。 市 場 原理の導入 は、 医療が崩 壊した というア メリ カ と 同 じ轍を 踏むこと になる。 医療は、 国民 の健 康を守る た め に 必須のものであ り、 基 本 的サ ー ビス とし
て誰も が、 同じように享 受でき なけ れ ばならない。 し か しなが ら、 資 本は限ら れてお り、 無 制 限に供 給 すること はでき ない。
した がって、 その配 分は、 あ く までも 医学 的 見地 に た ったものでなけ れば ならず、 ひとつ の
医療 機 関で提 供できる 医療サ ー ビス には限界が あ ることから、 医療 資 源の効 率 的 な 供 給のた め に、 一 つ の組 織だ けでは な く、 地域にお け る資 源の利 用を考 慮 する 必要が あ る。 すな わ ち、 現 在の医療機 関の現 状を踏ま え たうえで地 域 ネッ トワ ー クの構 築を行 うことであ る。
も く じ
はじめに ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 1
第1 章 病 院経 営 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 2
1 . 病 院組織
2 . 病 院 経 営に影 響 する もの
3 . 診 療 報酬制 度
4 . 医 療サ ー ビス
第2 章 組 織文化 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 12
1 . 組 織文化
2 . 下位 文 化
3 . 病 院に おける組 織 文 化
4 . 病 院にお け る組 織文化の マ ネジメ ン ト
第3 章 ネッ トワ ー ク経 営 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・2 2
1 . ネッ トワ ー ク組 織
2 . 組 織文化 マネジメ ント とネッ トワ ー ク経 営
3 . 病 院とネッ トワ ー ク経 営
4 . 病 院 経 営と地 域 連 携
第4 章 病 院 経 営と協働 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・3 2
1 . 地域 ネッ トワ ー ク経 営の必要 性
2 . 地域 ネッ トワ ー ク構 築と‑ ル ス ケア
お わ り に ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ I ・ ・ ・ ・41 謝 辞 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・4 2 参 考文献 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・4 3
は じ め に
今日、 医療を取り巻く情 勢は、 めま ぐ る しい変 化を遂 げて いる。 なか でも、 国 家 予算の中で医療 費の適正利用 という観 点から、 医療 費の使 途に つ いて見直し がな さ れてきた。 そ れ ら は、 必ず しも現 状を見据えて いる と はいえないが、 病 院を はじめ とする 医療 機 関の経 営を 見直 す機 会と もなっ たこと も事 実であ る。 政 策誘 導とは い え、 各医療機 関の機 能 分 化がす すめ ら れ、 質の良い医療は当 然であ る が、 効 率の良
い医療サ ー ビス の提供が 必須と なっ てき た。
一 方で、 医療 機 関の構 成 員の多く は、 専 門 性を強く持った職 能 集 団であ り、 病 院 経 営につ いて の認識が薄いということ ができる。 加 えて、 国 家 資 格を有し、 専 門 職 能とし て の帰 属は み ら れ る が、 組 織‑ の帰 属 意 識が低い集 団ともいうこと ができ る。
このよう な なか で、 各 職 能がもつ能 力を十 分に発揮 すること ができ る場を提 供する こと が、 医療サ ー ビス の質 ・ 効 率の向上のた めに重 要であ る。
ま た、 医療サ ー ビス を享 受 する 地域 住民 に も変化が 見 ら れ る。 IT (info r m atio n
te chn ology) 化が進む につ れ、 さ まざまな情報を 入 手すること ができる ようになり、
情報の非対 称が薄れつ つ あ ることであ る。 病 院・ 一 般 診 療 所のそ れ ぞ れ が、 果たす
べ き使 命を全 うすること が, 利用者の健 康を守ることになる。
本 稿では、 このよう な 状況 を踏ま えて、 病 院単位の経 営のみならず、
一 般 診 療 所 や医療 機 関の利用者を含め たネッ トワ ー ク構 築に つ いて考 察を試み る0
第1 章では、 病 院組 織に つ いて、 特に病 院経営に影 響 する ものとし て、 診 療 報酬 制 度によ り も た ら さ れ る弊 害と、 医療が もつ サ ー ビス財とし て の特 徴につ いて確認 を行 うo 続いて第2 章では、 病 院の構 成員が、 職 能 集 団とし て の文化をも ち、 そ れ ら をマ ネジメ ントすること が、 円 滑 な病 院経 営に欠か せないこと を考 察する。 第3 章に おいて、 院 内に お け るネッ トワ ー ク経 営の必要性を確認する。 最 後に第4 章で、 現 在の 医療機 関の現 状を踏ま えて、 人々 の ‑ ル スケア に影 響を 及 ぼす地域 ネッ トワ
ー クの構 築の必要 性と方 法つ いて の提 案を行 う。 特に、 個々 の医療 機 関が、 その製 品で あ る 医療サ ー ビス に つ いて の価 格を 独自で決 定 すること ができない、 というこ とによ る影 響を考 慮 する。
‑ 1 ‑
第1 章 病院経 営
1 . 病 院組 織
病 院と は、 「医療 法 (昭和2 3 年 法 律2 05 号)」 によ り規 定さ れてお り、 医師ま た は 歯 科医師が 医業ま た は歯 科 医業を行 う場 所であ り、 か つ 2 0 名以 上の入院 設 備を有し ている もの をいう1。 さら に、 同法に お いて、 医療 提 供 施 設の機 能に応じ効 率 的行わ れ、 他の保 健 医療 ・ 福 祉サ ー ビスとの連携が行わ れ る よう配 慮 す べきであ る と医療
の あ り方に つ いて述べ ら れて いる2。
この ような今日 の病 院の姿は、 第二次 世 界 大戦 後、 連 合 国軍総司令 部(G H Q:G e n e r al He adqu a rt e r s) 公衆 衛生福 祉 部の指示 に よ る 近代 化の影 響を受けて いる。
そ れ まで のわ が国の病 院 組 織は、 「は じめ に医 師あ り き」 という 一 人 医療に原 型を み ること ができ る。 江 戸時 代からの自由開 業 医 制 度の影 響を受け、 医 師を中心 に組 み 立て ら れてき た。 医療 行 為は医 師 一 人ですべて実 施さ れ、 医 師の判 断に よ り看護 人など が雇い入 れ ら れてきた3。 このような 一 人医療が、 「 医師の手 足論」 を 生 み出
した。 「医 師の手 足論」 と は、 大正 2 年の大審院判例で、 看 護 などの医 師免 許を も た ない職 種に、 医 師の指 導の 下に生斜こ危 害が 及ば ない範 囲での治 療 行 為の補 助をさ
1 医療 法では、 以 下の よう 規 定さ れている。
第1 条の 5 この法 律に お いて、
「病 院」 と は、 医師又 は歯 科医師が、 公衆又 は特 定 多 数人のた め 医業又 は歯 科医業を行 う場所であって、 2 0 人 以 上の患 者を 入院さ せ る た め
の施設 を有 する ものをいう。 病 院は、 傷 病者が、 科 学 的でかつ適正 な診 療を受け るこ と ができ る便 宜を 与 え ること を 主 た る 目的とし て組 織さ れ、 か つ、 運営さ れ る もので
な け ればな ら ない。
2 医療につ いて , 医療 法では 以 下のように述べ ら れて い る。
第1 条の 2 2 医 療は、 国民自らの健 康の保 持 増 進のた めの努 力を基礎と して、 医 療を受け る者の意 向を十分に尊 重し、 病 院、 診 療 所、 介 護老 人保 健 施 設、 調剤を実 施 する薬局 その他の医療を提 供 する施設 (以 下 「医療提供 施設」 という。) 、 医療を受け る者の居宅等に おいて、 医療 提 供 施 設の機 能 (以 下 「医療 機 能」 という。) に応じ効 率 的に, か つ, 福 祉サ ー ビス その他の関 連する サ ー ビス との有機 的 な連 携を図りつ つ提 供さ れ な け れば なら ない。
第1 条の4 4 病 院又 は診 療 所の管理者は、 当 該 病 院又 は診 療 所を 退院 する患 者が 引き続き療 養を 必要とする場 合に は、 保健 医療サ ー ビス 又 は福 祉サ ー ビス を 提供 する 者との連 携を 図 り、 当該 患 者が適切 な環 境の下で療 養を継 続 すること ができ る よう配 慮し な け れ ば な ら ない。
3 井 部俊子, 中西睦子 監修: 看護 管理学 習テ キス ト第2 巻 看 護 組 織 論, 日本 看 護 協 会出版 会, P 1 5 0 ‑ 1 5 1, 2 0 0 7.
院 長
!.
刺 院 良
図 1 国立病 院 発足時の組 織
せ ても 医師 法 違反になら ないというもので あ る。 この考え方は、 医師以外の医療に か かわ る職 種を 医師の従 属 物と みな すた め、 医師を頂 点とした組 織が構 成さ れ、 他 職 種の主 体 性が 認 め ら れない こと に な る1。 つ ま り、 この ような過 程 ・ 考え方のも と 発 達し てき た病 院は、 「医師の仕 事 場とし て位 置づけ ら れ、 医 師は病 院 長とし て診 療 と管理の両方の責務」 を持つ ことにな った2。 前述の内容は、 第二次 世 界 大 戦 後に発 足 した。 国立病 院の組 織図から も、 読み取ること ができ る (図 1) 3。 病 院 長は、 す
べ て の権限 を有 することになっ てお り、 「国立病 院 機 構及 運営二 関ス ル件 依 命通牒 ( 昭 和21 年 発)」 で病 院 長の職 務が規 定 されて いる4。 この時 点では、 ま だ医療がG H Q に よ り近 代 化 され た といわ れなが らも、 「医 師の手 足論」 は そ のま ま の構 図で あ る。
その後、 「厚生省 組 織 規 定 (昭和2 7 年 厚 令4 1)」 によ り国立大 学 付 属 病 院 内部 組
1 医師の手 足論といわ れ る判 例 (医師 法違反ノ件: 大正 二年 (れ) 第 一 七 三 一 統、 大 正二年 十二月 十 八 日宣 告 判 決) が あ る。
一 人ノ疾 病ヲ治 療ス ル ハ 腎ノ行 薦ニ シテ 之ヲ常 業トス ル ハ 撃 業ナ リ故二人ヲ診 察シ
テ治療ス ル ハ 勿 論 診 察セ ス シテ治療ス ル モ亦 瞥ノ行 烏二非ス ト 云ウヲ得ス
ー 腎 師力自ラ治 療 行 烏ヲ烏ス ニ首り腎 師ノ免 許ヲ有セサ ル者ヲ使 役シ其 指 揮 監 督ノ 下二治 療 行 鳥ヲ補 助セ シ ム ル モ補 助 者ハ 単に瞥 師ノ手 足 トシテ行 動ス ル ニ止 マ リ 竜モ危 険ノ虞ナ キヲ以 テ其 治療 行 鳥ハ腎 師ノ行 為ニ シテ腎 師ノ治 療 行 烏以 外二 無 免 許 腎 業ノ行 烏アル モノト 云ウヲ得ス
こ の当 時の医 師 法は、 明 治三十九年 法律 第四十七号で あ る。 2 池上直己 ほ か : 日本の医 療, 中公新 書, 中 央公論 社, P 5 0, 1 9 9 6.
3 厚生省 医 務 局 編 : 国立病 院 十 年の歩み, 厚生省医務局, P 2 2, 1 9 5 5.
4 前 掲 書3, P 6 6.
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図 2 国立大学 付 属 病 院 内部 組 織 図
( 医
診 療 療技 支 術 援 部 部 門
薬 検 放 栄 剤 査 射 養 部 科 線 科 図 3 病 院 組 織図の例
辛 蘇 部 門
( I ? 三 ‡ :
課 課 課
庶 務
r
*
図 家 厚 庶
書 政 生 務
係 係 係 係
織が 示 さ れ た (図 2) 1。 この ころにな る と、 部 門 制を とっ て はい ないが、 職 能別組 織と なっ て いる。 これ は、 「医師 法」 の ほ かに 「保 健 婦 助 産 婦 看 護 婦 法 (昭和2 3 年 法 律2 0 3 号)」 、 「診 療エ ックス線 技 師 法 ( 昭 和2 6 年 法 律2 2 6 号)」 などが制 定さ れ、 職 種に よ る専 門性が確立 し てきた た め と考え ら れ る。
現 在、 多 くの病 院では、 病 院長を トッ プに各 部 門 ( 診 療 部 門 ・ 看 護 部 門 ・ 医療 技 術 部 門 ・ 事 務 部 門 など) が位 置 付け ら れ る職 能 部 門 制 組 織によ り、 医療活動を 展開
1 厚生省医務局編: 国立病 院 十 年の歩み, 厚生省医務局, P 4 9 1 , 1 9 5 5.