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日本災害法研究史(下)

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日本災害法研究史(下)

前 田 定 孝

復興・まちづくり計画

復興・まちづくりについては,東日本大震 災後の現段階における高台移転や,地盤全体 が沈下した沿岸部の対策などが課題となって いる。しかしながらその研究史は浅く,1995 年の阪神淡路大震災からの復興をめぐる議論 において急速に展開してきたといえる。

そこでは,主として復興に際しての都市計 画をめぐる議論,都市空間における個別の住 宅の耐震化の義務づけの可否,被災者個人の 居住保障等について議論されてきた。さらに 東北地方太平洋沖地震・津波以降は,漁業者 の生業再建支援も課題となっている。

本来,この論点については,都市計画論を 踏まえた本格的検討を要するのであるが,筆 者の能力に照らして後日に譲らざるをえない ために,本稿では,さしあたりその主要なも のに限定して検討する。

① 都市計画をめぐる議論

防災都市計画をめぐる議論としては,1976 年の日本土地法学会編住宅政策・防災と法 理論において林育男が都市計画と一口に 言われるけれども,それは人命の安全,それ と直接かかわる防災的視点は当然街づくりの 前提でなければならないとしたことなどが 目立つ。そこで林は,地域地区制の中から

出てくる問題としては,やはり防火地域,準 防火地域等による都市の不燃化の推進ではな かろうかとする(110)

その後,復興まちづくりにつき,安本典夫 はその手法に関して,①一定の地域を指定し て,その地域の抜本的改善を図る,たとえば 公用換地(土地区画整理事業),公用権利返還

(第1種市街地再開発事業),公用収用(第2 種市街地再開発事業,住宅地区改良事業)等 の強制的手段を組み込んだ法定事業,②地域 指定をして,一定の計画の下に修復的改善を 図る,たとえば融資・補助などの誘導を用い るものや地区計画とのセットで,都市計画 法・建築基準法などの規制を緩和し,それに 融資・補助などもあわせて誘導するというも の,③個々の建築に対する融資・補助,ある いは総合設計制度などによる規制緩和で誘導 し,良質のストックを形成するもの,④規制 緩和によって既存不適格建築物の再建を可能 にして復興を促進するもの,および④公的住 宅の建設に分類する(111)

土地利用規制につき,三木本健治は,河川 法との関連でその現行法制度を検討してい

(112)。そこでは,とりわけ河川法について,

洪水処理に関連する土地利用制限に関して,

高水敷,遊水池,河川予定地,河川保全区域 その他について検討している。

(2)

さらにこれらの点につき,その民主主義的 および権利保護的意思決定過程も問題とされ た。たとえば五十嵐敬喜は,1995 年3月 14 日になされた神戸市の都市計画決定について 検討するなかで,自治体住民に対する応答義 務ならびに公開性および専門性についての問 題を指摘する(113)

この点,住民参加につき,すでに安本典夫 がまちづくりのプロセスで災害に対応でき る住民とその組織が形成されることが期待さ れると指摘している(114)。さらにそこでは,

その合意形成と合意の積み重ねを可能とす る仕組みの必要性およびそこで用いられる 換地ないしは公用権利返還などの採用,変 更・廃止への反映を可能とする制度のあり方 が説かれた(115)。同時に安本は,避難所→仮 設住宅→建築基準法八四条制限→都市計画事 業施行の道を一直線に進むものとされて いた復興プロセスの考え方が,阪神大震災 の経験のなかで,災害復興では,計画を検 討・策定する段階から,可能な限り住民の復 帰を確保し,そして部分的に町の復興を行い ながら,事業を進める,その事業も方向修正・

手直しをしながら進めるすなわち,復興 プロセスの構築自体に,コミュニティを可能 な限り再生していく復興の過程において も,地元に住民が復帰し,話合い,助け合う というコミュニティシステム,生産・流通・

サービス活動など地域の経済活動のつながり が回復することが急がれることを指摘す (116)

② 都市空間における個別の住宅の耐震化 の義務づけの可否

個人の住宅の耐震の義務づけの可否につ

き,櫻井敬子は,住民には災害対策基本法7 条1項でいう地域防災計画で定める責務を誠 実に果たすべきこと,同2項で自発的な防災 活動に参加する等して防災に寄与する努 力義務があること,もっぱら住民自身の保護 の目的として住民自身に対して市町村長によ る特定区域立入制限・禁止,退去命令等の発 出が予定される(63 条1項)などの私人へ の負担は,災害に対する国家責任の限界の 表れとして,私人自身の自己責任が地震 行政において正統な地位を有することから認 められるものとし,耐震化を一律に義務づ け,罰則をもってこれを担保することは,耐 震化しないことが一定の合理性を持ち,耐震 化の義務づけが国家による後見的規制である という観点から,適当とは思われないとす (117)

かかる論点についてはすでに,古くは最大 判 1963 年6月 26 日刑集 17 巻5号 521 頁(奈 良県ため池条例事件)において,ため池の堤 とうを使用する財産上の権利を有する者は,

本条例一条の示す目的のため,その財産権の 行使を殆ど全面的に禁止されることになる が,それは災害を未然に防止するという社会 生活上の已むを得ない必要から来ることで あって,ため池の堤とうを使用する財産上の 権利を有する者は何人も,公共の福祉のため,

当然これを受忍しなければならない責務を負 として,憲法二九条三項の損失補償はこ れを必要としないと判断した例がある。ま た,保木本一郎は,特殊地域的特性に由来す る一種の危険物を目的とする財産権が,条理 上,当然受けるべき内容制限と解しかかる制 限のもとに一定地域の災害を未然に記夏・防 止する機能を果たしうるものであって,厳し

(3)

い保安基準を定め,住居と一定の保安距離を 保つべきであるとする国家法レベルでのコン ビナート防災法の発想と軌を一にするとす る。保木本は,さらに危険状態に対して公法 上の不行使を理由として,遅くとも本件事 故発生当時には,本件擁壁はきわめて不完全 な状態にあり,これを放置するときは崩壊す るおそれが著しく,もし崩壊すれば下部住宅 地の家屋のみならず,その居住者の生命にも 危害がおよぶ危険のあることが明らかであっ て,宅造法の趣旨目的に照らすと,法一六条 所定の改善命令を発し,行政代執行法による 代執行の措置によってでもその命令の実行を 期し,危険を除去すべき場合にあたるとみる のが相当として行政上の損害賠償責任を肯 定した大阪地判 1974 年4月 19 日判時 740 号 3頁に依拠し,法律上の要件が単に具備さ れているからといって,権限の不行使が当然 に違法となるものではなくて,その自由裁量 が著しく合理性を欠くと認められる場合,違 法性を帯びるとする(118)

耐震化を義務づけうる権限と住民個人の自 己責任とがいかなる関係にあるのか,今後さ らに精緻化される必要があろう。

③ 被災者の生活再建に対する公的支援 1 個人補償か社会保障か

被災者の生活再建支援をどうするのかは,

日本に災害法制における一貫した課題であ る。

この点,すでに雲仙普賢岳災害からの復興 の際においても問題となった。その際には,

被災者の復興は自助努力が原則であり,

個人補償など個人の資産形成に資する公的助 成は許されない(私有財産の保全は自己責任

が原則)という行政法理(第1ドグマ)と,

公費の支出は税収を財源とするものであ り,税負担が国民間に公平でなければならな いのと同様に,税収の配分においても公平性 が確保されなければならず,公費の支出は公 共のためになされなければならない(公平 性・公共性の原則)という行政法理(第2ド グマ)の2つのドグマが厚い壁として横た わっていたことから,個人の住宅再建が進 展しなかったとされる。しかしながら同時 に,当時の海部俊樹首相が当時の鐘ヶ江管一 島原市長に対する市長だけの責任にはしな い。いよいよの時は特別立法ででも対処す るとの発言を契機とした復興基金の設置等 において,すでに,このころから,かなり意 識的に自然災害による過去の損失補償(補 償論)被災者の将来の生活再建支援(保 障論)という概念が区別され議論されるよう

になった(119)

この問題は,阪神淡路大震災からの復興過 程において,その法的性格をめぐる大論争に 発展した。そこでは,行政の責任を介在さ せた国家賠償や財産補償を求めたというよ り,自助自律するうえでの土台回復のための 生活者に対する公的援助を求める(120) とり くみがなされた(121)。そこでは,当初提起され た個人の資産形成に対する公金支出の是非を めぐる論点から,居住権をめぐる公共性の実 現の設定方法へと,議論の深化をみた(122)

たとえばそこで,上記個人の資産形成に公 金を支出できないとの一方の論に対し,伊賀 興一は,(生活保護とは異なって)被災とい う生活事故によって,住居と日常生活家財と いう生活基盤が破壊され,生活運営が困難に 見舞われ,そのまま放置すれば生活自助の完

(4)

全な破綻に陥入りかねない状況に対し,生活 保護を受皿とすることは,被災者に対し,完 全な生活破綻までこの国と社会は何ら支援を なさないことを意味することから,果して,

これが今時の被災者の受けた災害という生 活事故に対するこの国と社会のあるべき対 応であろうかと批判し,さらに災害によ る個人被害は自助努力が原則であるとして も,被災者が災害の長期化によって生活や生 業の本拠に立ち戻ることができず,したがっ て,自助努力の基礎が失われているような状 況が見受けられ,それを放置することが著し く公益に反するといった場合に,自らの生計 の手段が得られるよう行政がその支援を行う こととしたものであると考えることができ とする点(1992 年奥戸町委託調査報告書)

に公益性を見出そうとする(123)

かかる自助努力の基礎の再建に公益性を見 いだす論に対し,阿部泰隆は,個人補償否定 論は,生活保護以外に現金を支給する方法は ないというが,現に国家は,年金,医療,雇 用保険などに見るように,生活保護以上に各 種の支援策を講じていることなどから,れらの谷間にある被災者に対してある程度の 支援をすることは,憲法二五条一項から請求 権としては要求されないとしても,国家の立 法政策として合理性を持つ(124) としつつ,

社会保障なら何とでも金を出せるのではな く,生活基盤の回復のためであるからには,

震災によって本当に支援を必要とするように なった者に,他の制度による支援との均衡を 考慮して,その被災の程度に応じて,しかも,

すでになされた支援を控除して,手を差し伸 べる仕組みが必要であるとして,困った順 救済すべきであるとし(125),重傷者や親を

失った者,長期失業者を放置して,借家人を 焼け太りにしつつも,小災害の被災者が救済 されえない市民立法案を一見人道的に見え て,実は本当に困った者を放置して,それほ ど困っていない者に大金を与える,きわめて 非人道的な案であるとする(126)

なお,その阿部は,当初焼け太り論が,

国家賠償法の適用や正当補償の要件に該る とはいいがたい自然災害被災に対し,説得力 を欠いていたことから,やがて公的補償 は社会保障における二重の基準の法制化とし て容認されうる(127) とする論を展開するに 至った。この過程で,困っている順にの基 準として,身体と財産では一般には身体の 法が重要である。軽傷ならともかく,大怪我 と家の損壊を比較すれば,前者が気の毒であ る。亡くなったらどうしようもないが,残さ れた孤児はいちばん気の毒である。普通の者 は,老親が死んだ場合と子どもが死んだ場合 では,後者の方がより嘆き悲しむ。重度障害 になった者は本人自身と家族みんな気の毒で ある。障害者のなかでは最重度の者から救済 すべきであるとした(128)

かかる論争を通じて,国が個人に対して金 銭等を支払う3つのケース――①損害賠償,

②損失補償,③社会保障――以外に,憲法 16 条でいう損害の救済がある……この請 願権規定メニューの中に,あえて損害の 救済という文言を入れたところに意味があ

(129) とする津久井進の見解や,戒能通厚の

住宅ではなく居住,すなわち資産と しての住宅ではなく都市住民による共同空間 形成のための不可欠の権利である居住に対 する権利の実現形式として住宅と良好な居 住環境を保障することこそ,自治体によるま

(5)

ちづくりの公共性の根拠とされ根幹とさ

れるべき(130) とする論などが展開された。

近年においては,国家が災害により住居 を失った私人に対して,応急的な救援策とし て行う避難所の提供ないし仮設住宅 の範囲を超えて,恒久的な住居そのものを国 が直接提供することは,個人の私有財産を国 家が税金を使って提供することになり許され ず,同じ趣旨から私人の恒久的な自宅購入費 用の一部または全部を国家が拠出することも 許されず,単に自身で家屋を失い,自宅を 再建することが困難であるというだけで,公 金を当該自宅所有者に提供することはそのま までは正当化されないのであり,仮に補助金 という形で個人に公金を提供するのであれ ば,自宅再建を経済的に支援することになり,

コミュニティーを再構築するとか,あるいは,

コミュニティーの経済活性化を刺激すると か,そういった公益性への関連づけを行 うことが不可欠の条件となる(131) とする視 点から批判する論者も存在する。

この論争につき安本典夫は,(この論争で 求められたのは)生活再建上どのような困 難が現実にあり,生活再建のためどのような 体系でどのような支援がなされるべきか,そ れはどのような性格のもので(例:社会保障 か,見舞金か),どのような要件の下でなされ るか(事前の拠出を前提としない類の社会保 障も被災という事実にもとづいて割り切って なされることもありえようが,やはり収入・

資産要件や,身体上の障害という要件等は求 められることもあるのではないか),などに ついての具体的な検討と議論であったはず なのにしかし,生活再建支援策の議論は,

全壊家屋についての一律数百万円,半壊はそ

の半額の給付のぜひを軸に行われたのは,

議論の深化にとってこれは残念なことで あったとする(132)

2 被災者再建支援法制度の形成とその問 題点

これらの論争のなかで,2000 年の鳥取西部 地震を契機に,鳥取県被災者住宅再建支援条 例が,2001 年に制定された。それは,震災 一一日後における最大三〇〇万円の補助とい う英断であった(133)。すなわち,住宅を資 産とみるのではなく居住権を軸にする考え 方である。この条例提案に際し当時鳥取県知 事であった片山善博は,総務官僚時代の後輩 にあたる官僚に問い合わせたところ,憲法 違反といわれた。いったい何条なのか教 えてくれというと,モゴモゴと言葉を濁して

いた(134)被災した人の多くが出ていくと,

残った人も結局は集落を維持できなるという ダメージを受けます。いくら道路を直し,橋 をかけ直し,崖崩れを止めたとしても,肝心 の集落が崩壊して住民がいなくなってしまっ たら,いったいこれは何の復興だということ になります。その地域を本当に復興しようと 思ったら,生活の場所である住宅を建て直す ことを抜きに考えられないと直感しまし

(135) という。

この制度を手はじめとして,さらに,2003 年には,議員立法で被災者生活再建支援法が 制定された(136)

3 被災者生活再建支援法の制定と問題点 この被災者生活再建支援法は,1条で都 道府県が相互扶助の観点から拠出した基 金を活用して被災者生活再建支援金を支給す

(6)

るための措置を定めることによりその生 活の再建を支援し,もって住民の生活の安定 と被災地の速やかな復興に資することを目 的とし,3条で当該都道府県の区域内に おいて被災世帯となった世帯の世帯主に対 して,世帯の世帯主に対し,当該世帯主の申 請に基づき,被災者生活再建支援金の支給を 行う制度である。その支給額は,当該自然 災害により火砕流等による被害が発生する危 険な状況が継続することその他の事由によ り,その居住する住宅が居住不能のものとな り,かつ,その状態が長期にわたり継続する ことが見込まれる世帯(同法2条2号ハ)で 政令で定める世帯の世帯主に対する支援 金の 300 万円を上限として支給されること となった。

この制度は 2007 年改正でさらに,手続の 簡素化のために渡しきり制となり,年齢要件 および収入制限が撤廃され,ならびに上限が 300 万円に引き上げられたことが特徴であ り,同時にこの改正附則3条により,2007 年 能登半島地震,同新潟県中越沖地震,および 同年の台風災害についても遡及適用されるこ ととなった。

しかしながら本法の実効性については,批 判が残る。

たとえば現在の枠組みに対して吉田邦彦 は,生活再建をトータルに捉えて産業災害,

生活基盤の破壊に対する災害救助に臨む べきなのであり,こうした救済がなされず,

単に住宅補償だけを――これすらも,不十分 なことは前節で見たとおりだが――説いて も,空虚且非現実的であり,地域コミュニ ティーは崩壊するとし,とくに避難所・

仮設住宅・復興住宅という枠組みについて,

当然のことのように,どのみち取壊される 住居を公費で作り,何度も転居を余儀なくす るというやり方で,すべて処理しきれるもの なのかとする(137)

このように,被災者生活再建支援制度につ いては,その後も,改正後にあっても非常に 使いづらいという声が相次いだことから,

新潟県は他の都道府県と同様に,国の生活 再建支援制度に加えて,県独自の支援策を とった。これは国の制度の不足を補う上乗せ 支援であり,同時に国制度の対象外となる世 帯への横出し支援である。これは所得制限を 設けず,使途について制限を緩和する措置を とったりしている。被災者の実感からすれ ば,これでもなお十分とは言い難いであろう が,このような状況は国の生活再建支援制度 が法改正後もなおも有する問題点を浮き彫り にするものであったように思われる(138) する制度のでき不できをめぐる批判も存在す (139)

同様に,被災者生活再建支援法制度による 被害判定において,全壊,大規模半壊,半壊,

一部損壊によって支給される金額に相当の差 が出る仕組みとなっているために,被災者 の中には,一部半壊であっても,修理するた めには家一軒再建するほどの金額がかかるこ とが見込まれる世帯が少なくなく,全壊世 帯の住民が家を再建し,半壊や一部損壊世帯 の住民が家を修理・再建できないという現状 が生じてくるために,被災者間でお互いの 生活困難を共有することが困難な状況が生じ ているとする指摘もある(140)

(7)

4 災害救助法の解釈上の限界性と住宅再 建に対する給付の可能性

この点について,災害救助法の解釈問題が 影を落としている。すなわち災害救助法 23 条でいう救助について,同1項で十 前 各号に規定するもののほか,政令で定めるも のとされ,この規定を受けた災害救助法施 行令8条は,その種類につき一 死体の捜 索及び処理および二 災害によつて住居 又はその周辺に運ばれた土石,竹木等で,日 常生活に著しい支障を及ぼしているものの除 去をあげ,同2項では救助は,都道府県 知事が必要があると認めた場合においては,

前項の規定にかかわらず,救助を要する者(埋 葬については埋葬を行う者)に対し,金銭を 支給してこれをなすことができるとしつつ も,厚生労働省の解釈では災害に際して,

食料品その他生活必需品の欠乏,住居の喪失,

傷病等に悩む被災者に対する応急的,一時的

な救助(141) とされることから,恒常的な住宅

はその対象とならないと解されたことによる とされる。

これらの災害救助法の解釈は,1947 年の制 定に際して,非常災害に際して罹災者の救 助に万全を期すことが,個人の保護のために も,また社会秩序の保全を図るためにも緊急 事である(1947 年第1回国会衆議院厚生委 員会議事録,葛西政府委員答弁)との立法意 図に反して運用されたものとして批判の対象 となった。たとえば,阪神淡路大震災の復興 過程で被災者生活再建支援制度の制定に力を 注いだ伊賀興一によると,その解釈内容につ き,(上記のように)応急にして,一時的救 に限定すること,現物給付は行うが,金支給を可能とする前記(23 条2項知事

が必要と認めた時は,現金を支給して救助を することができるとする……筆者)規定は,

例外的で,現物を支給しようにもそれが不能 である場合等に限定する,とする解釈がある。

現金を支給すること自体を否定しようとする この考え方は,被災による生活運営能力破壊 という事態に対する直接支援を否定するもの といわざるを得ない。災害救助法は,本来,

自助努力の土台回復のための公的支援を 展望したものとして,解釈・運用されなけれ ばならないものというべきである。生活運営 は私的自治の範囲であり,そのあり様を公的 に規制するに至る方策は排除されねばならな い。そうした理念からすると,生活運営能力 の回復のための公的支援の原理は,現金の直 接給付制度であり,その使途は問わないも のであり,(阪神では)前記法構造を生かし 切り,弾力的かつ全面的に活用するという事 態にはほど遠い運用実態であり,こうした 法律の研究が不十分であったことが,この国 の公的支援システムの検討と確立を大きく遅 らせた要因の一つ(142) と厳しく批判した。

④ 生業再建支援のあり方

生活再建と同時に,東日本大震災において は,漁業等の生業の再建が問題となった。こ の点につき法的論点での検討は数少ないなが らも,吉田邦彦は,被災者再建支援は,より 包括的に居住を考える必要があり,また,

金銭的保障だけで足りるわけでもないこと から,新潟中越地震において被害者は,長 期間生業(棚田での農業)と断絶させられて,

クローズアップされたことなどからこの ような見地から,検討すべき第一は,生業な いし事業補償という問題であるとする(143)

(8)

この点,水産業の復興に際して,村井嘉浩 宮城県知事が提起した水産業復興特区におけ る民間企業の漁業権への参入等が問題とされ た。この場合,漁業法に基づく漁業権のうち,

特定区画漁業権と共同漁業権が漁業協同組合 にのみ免許するとされているのに対し,それ 以外の定置漁業権および特定区画漁業権以外 の区画漁業権は漁業協同組合以外にも免許の 道が開かれている。この点につき,漁業権 の優先順位は,漁業種類ごとの特性に応じて 細かく定められており,一般に考えられてい るように漁業権がすべて漁協にのみ免許さ れ,企業(法人)は参入できないという単 純なステレオタイプの図式で二分して表すこ とのできるものではないこと,その優先順 位の見直しについて議論する際には,個別の 漁業種類ごとの特性と,現行漁業法における 優先順位の規定内容を充分に踏まえた上で,

個別・具体的な議論を行う必要があり,に,組合か企業(法人)かという軸以外に,

地元優先か否か経験者優先か否か個 人優先か法人優先かという軸の組み合わ せも考えて議論する必要があろうとし,さ らに,水産業は単に狭義の(漁船)漁業だけ ではなく,加工・流通まで含めた一連の過程 があってはじめて成立する産業であること から,その一連の過程のうち,どの部分に重 点的に民間活力の導入を図るのが効率的か,

という視点も重要であるという指摘もあ (144)

復興計画における諸問題

震災からの復興という場合に,復興への 提言――悲惨のなかの希望および復興基本 法(6月 20 日成立)において明記された内容

の妥当性について,あらためて検証されなけ ればならない。たとえば復興基本法2条1号 でいう単なる災害復旧にとどまらない活力 ある日本の再生を視野に入れた抜本的な対 ,同4号の少子高齢化,人口の減少及び 国境を越えた社会経済活動の進展への対応等 の我が国が直面する課題や,食料問題,電力 その他のエネルギーの利用の制約,環境への 負荷及び地球温暖化問題等の人類共通の課題 の解決に資するための先導的な施策への取 という理念,および同 10 条でいう復興 特別区域制度などの意義とその後の展開が 検証されなければならない。

⑷ 国土強靱化型復興をどうみるか

惨事便乗型復興と人間復興 この間,ナオミ・クラインのショック・

ドクトリン上・下(岩波書店)がベストセラー になった。スマトラ島地震・津波をはじめ,

災害を奇貨として大規模開発を推進するの は,洋の東西を問わずとられてきたことのよ うである。関東大震災や阪神・淡路大震災,

さらに東日本大震災などの大規模災害から復 旧・復興は,資本主義社会においては,ビジ ネスチャンスの一挙的創出という側面をも

(145)。実際に,日本の政府・財界は,まず

復旧と復興を区別し,復興を日本経済の再 生・創生と位置づけた上で,今後の成長期 待分野として環境・エネルギー医療・社 会保障サービスIT・インフラ構築農林 水産業を重視しつつ,税と社会保障の一体 改革新成長戦略TPP 協定参加などと いった震災以前から財界が要求してきた政策 群を,強力な指揮命令をもった司令塔の確 道州制を視野に入れる復興特区広

(9)

域産業復興計画等の大胆な手法を用いて早 期実現していく方針を掲げてきたとされ

(146)。それは同時に,府県を廃止し,同州

政府に一本化させることにより,多国籍企業 の活動基盤となるグローバル化対応の空港,

港湾,道路などのインフラストラクチャーと 企業誘致補助金などに選択と集中できる ことが強調される道州制を志向するもので

もある(147)

東日本大震災の激甚被災地である東北3県 は,近代資本主義の成立以来,幾度も,洪水,

冷害,津波,地震といった自然災害に遭遇し その災害からの復旧・復興過程において,

肝心の被災者の生活再建が後景に追いやら れ,復旧・復興政策が被災地外から進出して きた資本の蓄積手段となった歴史的経験を有

している(148)。同様に,阪神淡路大震災から

の創造的復興の過程においても,神戸空 港建設や新長田駅前地区再開発などの大規模 開発が優先された。この点,福田徳三の人 間復興の理念が思い起こされる。災害か らの復旧・復興にあたっては,被災地におい て被災者の生活を支える地域産業と雇用,生 業を再建すること,即ち被災者が主体として 直接関わる地域内再投資力の再建こそが必

(149) であり,この点,災害救助法の住民サ

イドに立った運用が求められる(150)

しかしながら,現実には,二十兆円に達す ると予想される復旧・復興市場に内外の復興 ビジネスが算入し,それらの視点が集中する 仙台市の繁華街は復興景気に沸いており,

さらに今回の震災においては,財界が要求 した開かれた復興論に沿って復興特区 方式によって農業,漁業分野,医療分野での 規制緩和がなされ,そこに外資系企業も

含む多国籍企業やアグリビジネス,環境・医 療関連ビジネス資本が進出し,被災者が手放 した土地を自らの資本蓄積の手段として活用 しようとしている(151) という。それどころ か,もっぱら東京などに本社を置くグロー バル企業の視点から,被災地内陸部の自動 車・電子部品関係のサプライチェーン関連工 場及び高速道路網などのインフラの復旧に力 点が置かれた結果,内陸部の復旧が迅速に 行われたのに対し,被災激甚地の三陸海岸 地域や福島県の原発事故被災地への復旧投資 は大きく立ち遅れるなどの復興格差が

発生した(152) とされる。

② 復興基本法における復興と構造改 革路線

これに対し飯島淳子は,東日本大震災から の復興を語る場合,(津波からの復興という)

まちづくりにとどまらない――ゼロという よりマイナスからの――地域づくりの必要 性と“壊滅”した市町村の回復の必要性 という二本柱が据えられるとする(153)。同時 に,阪神淡路大震災からの復興と比較した場 合,阪神・淡路大震災からの復興においては,

国と兵庫県の支援を受け,先進的なまちづく り協議会と対峙しつつ,当の被災自治体であ る神戸市が中心的な役割を果たしえたのに対 し,東日本大震災からの復興においては,被 災市町村は主体たりうる力を失っているこ とに特徴がある(154) とされる。そこでは,国 が中心的なまたは大きな役割を果たすことが 客観的に求められながらも,国を中心とす る第一の構図は,大企業をはじめとする市場 とは直接的に結びつくことができたとして も,市町村の先の地域集落まで射程に収める

(10)

ことはできず,ここでは地域集落は置き去 りにされてしまうこと,そこでは(ボラン ティアのような)非領域的自治は,人と人 をつなぐことの重要性が認識されている今 こそ,そのポテンシャルが試されるべきであ ものの,非領域的自治は,人に着目した

(土地から切り離された)自治であるがゆえ に,必ずしも成功するとは限らないこと,

それにもかかわらず東日本大震災の被災地 が,農林水産業を主産業とする,まさに土地 につながれた共同体であることを指摘し,

かかる土地につながれた自治〈領域的自治〉

は,伝統のしがらみに足を掬われるおそれは あるものの,その効果は,……まずは期待し うるものであり,期待すべきものであって,

この領域的自治を働かせるためにこそ,市 町村の回復がさまざまな側面から探られてい ることが,指摘される(155)

飯島はさらに,阪神大震災からの復興過程 と比較して,第一に注目すべきは,被災地の 復興と日本の再生をペアとする思考である こと,第二に注目すべきは,つなぐとい う提言のキーワードであることを指摘する。

構造改革路線とからめて,あらためてうがっ た見方をすれば,それは,前者がグローバル 化にともなうサプライチェーン構造などの企 業の生産体制を意識した全国レベルでの国土 政策的な視野に立った復興を示唆する(156) に対し,後者は,その民間主導による推進を 意味するものに対する批判として読み解くこ とができるように思われる。

③ 惨事便乗型国土強靱化と人間の復興 地方自治体が住民の生命・人権を保障する ことのみを目的としているとすれば,そこで

は,人間の生活の復興に重点を置いた総合行 政が求められる(157)。この点において,都市部 と比較した場合に三重県南部のような過疎化 しつつある地域において強みといえるものが あるとすれば,それは近隣関係であろう(158) 市町村はかかる地域の強みを助長しつつその 災害対策を行わなければならないのであっ て,それは上記のような惨事便乗型の復旧・

復興とは真逆のものである(159)

同様に,宮入興一は,救急救助につき,短 期だけでなく中長期的な生活,生業,生存機 会の再生へのつなぎ施策など,応急型から 生存機会再生型へ,社会インフラ復旧につ き公共施設等を元の状態に戻す原型復旧 から災害に強い安全・安心のまちづくりとい う意味での改良復旧復興へ,生活・生業 の再建につき個人財産自己責任型から被 災者の生活・生業・就労・コミュニティの一 体的な再建という意味での地域共同社会再 生へ,復興まちづくりのあり方につき,成 長・開発型の創造的復興から人間復興 による維持可能な社会形成を目指した復興 へ,および上からの集権・官僚型復興か ら下からの分権・自治型復興へという方 向性を提起する(160)

この点でとりわけ三重県南部は,その産業 構造において東北のリアス式海岸沿岸部と類 似する。そこでは,復興特別区域を通じた区 画漁業権の株式会社への開放の動きなど,三 重県でこそ再燃する可能性がある。この点,

住民の要求と日本の憲法構造に根差した検討 が求められる(161)

上記で指摘したように防災行政の任務と は,災害時においてその使える資源を適正に 配分するに際しての裁量権を市町村に付与す

(11)

るものである。そこでは,地域において解決 が求められる行政課題を発見し,それに対し て適切な権限を条例制定等を通じて創出する ことをはじめとしたさまざまな法的工夫が求 められることになる。

高台移転……住宅建設における興のあり方

住宅地復興をどうするのか。この点,第1 にいわゆる高台移転をどう推進するのか,第 2に地盤が沈下した沿岸部をどうするのか,

および第3に震災復興という大規模な面的対 応に対して,建築基準法上の制限で充分かど うかという論点がある。

第1に高台移転につき,明治津波後の大船 渡市吉浜地区(旧吉浜村)が例示される。こ の点につき,(災害対策基本法および災害救 助法といった)現在の日本の災害法制は防 災・救援・復旧という三つの場面を念頭にお きつつ,行政の対応を詳細に定めるものの,

避難者を含めた被災者の人権や尊厳を守ると いった視点が全体として希薄な印象を受け として,1998 年に国連人権委員会に提出 された国内強制移動に関する指導原則を 指針として災害に関連する既存の法令や政 策を再検証すること(162) を提唱する見解も ある。

第2に,プレート運動によって平均で数十 センチから1メートル規模で沈下した沿岸部 の排水とその復活的利用のあり方が問題とな ろう。

第3に土地利用規制のあり方につき,民党の石原伸晃議員からも出ている声です が,建築基準法ではなく,災害対策基本法で 所有権,利用権の制限をやらないといけない

でしょう。これはもうあきらかなことで,こ れを復興法に入れられるかどうかがポイント になるでしょうとする見解がある(163)。そこ では,建築基準法 84 条に基づく規制のあり 方が検討されることになる。

この点,復興計画をめぐり,前述の第 12 回 行政法研究フォーラムにおいて中井検裕は,

2012 年5月に決定された陸前高田市震災復 興計画策定方針の策定につき,二度と人命 が失われることのないように安全性を確保す ることが最優先とされたことを踏まえて,

高田・今泉の両地区において,高台移転への 要望,盛り土によるかさ上げ市街地の安全性 への懸念等の意見が多く,その後,被災者に 選択肢を示すという意味で,物理的に可能な 限りの高台候補地を加える方向で素案を修正 したことにつき,被災都市における安全に 対する考え方と,都市としての復興・再生の 両立のさせ方について,復興計画に策定段階 においてはまだ市民合意が得られていなかっ ことなどから,人口減少・高齢化時代の モデル都市という大きなイメージを共有しつ つも,状況に柔軟に対応しつつ,計画と事業 が相互に呼応しながら最適な着地点を見いだ すダイナミックな計画行為が求められると する。そのうえで,今後の事業計画につき,

土地区画整理事業については,事業区域を可 能な限り一体的に決定することによって先 行して事業に入る地区とそうでない地区の被 災者の間に発生する不公平を抑制すること および換地計画に際して従来のコミュニティ のまとまりを尊重することや場所によっては 造成費が異なることになるのに対して減歩率 を調整することが課題となること,防災集団 移転促進事業につき,それが任意の事業であ

(12)

るという点についての困難性があること,な どを指摘する(164)

さらに,同フォーラムにおいて大田直史は,

復興推進計画および復興整備計画に関連する 法制度につき,その復興推進協議会につき手 続的な民主性に問題があること,みなし許可 につきより丁寧な手続保障が要請されるこ と,事業主体および住民の意向に対する配慮 につき,被災地住民およびその代表者の協議 会への参加を保障する必要性があることを指

摘する(165)

おわりに

以上,戦後日本において展開した災害法の 研究史を概観した。そこでは,初期において,

むしろきわめて貧弱とさえいわれた災害 法学研究は,阪神淡路大震災後から急速に発 展し,中越地震および東日本大震災を経て,

大きく発展しつつある。しかしながらその発 展においても不均等性が目立つ。とりわけ,

復興過程に関する研究については,被災者再 建支援法制度をめぐる論点につき,都市計画 法学との関連などもあって,順調に展開して いるのに対し,初動,応急対応,および復旧 段階に関する研究は,大規模津波等における 国と都道府県との役割分担や協力のあり方を めぐる検討や,災害時要援護者対策における 対象者の個人情報の取扱いに関連する分野の 他,目立った展開はないように思われる。さ らに,地域防災計画策定をめぐる,リスク・

アセスメントや計画策定手続論についても,

さらにはその行政計画論の視点からの分析 も,その他の分野における住民参画論と比較 して,必要な成果をあげているとは思われな

(166)。同様に,災害時において,市町村長等

の指揮のもとで,またはボランティアで応急 対応に協力した住民や支援者が活動中に死傷 した場合に,いかなる補償等がなされなけれ ばならないのかについての研究・検討も,ほ とんどみあたらない。同様に,昨今,市町村 合併による災害対策への否定的影響について の分析が見られるようになった(167) ものの,

法的分析はいまだに不充分である。

最も大きな課題として,災害時において国 家がいかなる法的責務を負うべきなのかにつ いての自然権にまでさかのぼったような検討 は,決定的に不足しているようにも思われる。

それでは,具体的にいかなる研究課題から 着手すべきなのであろうか。さしあたり,初 動,応急対応,災害救助,復旧,および復興 のそれぞれの段階における論点を,順番に論 じることが,考えられる。この点,本稿もか かる視点に依拠して,整理したものである。

これに対して,それぞれの対策が,いかなる 社会的必要性に根ざして歴史的に制度化さ れ,変容していったのかという,歴史的な制 度形成史という視点からの研究も要請されよ う。それは,災害法制度というものをあらた めて社会的にその地位を再確認し,そのこと を通じて公法全体のなかで位置づけし直すと いう意味を有するものである。

(110) 日本土地法学会前掲註⒀,135-36 頁〔林育 男〕。

(111) 安本災害復興と法――災害復興まちづくり に焦点をあてて公法研究 61 巻(1999 年),181 頁参照

(112) 三木本健治水害と土地利用規制〔開発運営 1〕自治研究 51 巻7号(1975 年),96 頁以下。

(13)

(113) 五十嵐敬喜阪神・淡路大震災と都市計画 法律時報 67 巻7号(1995 年),61-62 頁。

(114) 安本典夫東海地震対策と防災まちづくり 自治研究 61 巻9号(1985 年),81 頁。

(115) 安本前掲註,185-86 頁参照

(116) 同前,187-89 頁。この点安本は,わが国行 政法原理は,基本的には手段である個々の行為 形式について,その要件,手続,効果(およびそ れについての救済)を論じる理論体系であった ため,規制行政についても事情の変更に対応す る仕組みは十分とはいえなかったのに対し, 業を遂行するプロセスは,意思形成・合意形成と その組織化,そして事業内容の具体化または変 更へ,そして事業実施・終了と新たな管理の段階 へ,という流れをたどるという場合に,時間 の流れに沿って,当初の合意と,より深まった合 意,各の合意の持つ効力が展開していく構造が 検討されるべきとする。同,190-91 頁。

(117) 櫻井敬子地震に対する国家責任について 自治研究 79 巻1号(2003 年),95 頁。

(118) 保木本一郎災害と裁判法法律時報 49 巻4 号(1977 年),75-76 頁。

(119) 高橋和雄編東日本大震災の復興に向けて

(古今書院,2012 年),104-06 頁〔福崎博孝〕。

なお,雲仙普賢岳災害におけるとりくみとそこ で出された教訓の数々が,その後の 1993 年の北 海道南西沖地震をはじめ,その後の阪神淡路大 震災,中越地震,中越沖地震などの災害における 復旧・復興をめぐるとりくみにおいて,基本的な 枠組みを提示したことを見逃してはならない。

参照,高橋和雄・木村拓郎編火山災害復興と社 (古今書院,2009 年)参照。

(120) 伊賀興一被災者の生活再建援助法案につい て法律時報 69 巻6号(1997 年),64 頁。

(121) この点,阿部泰隆がその現金支給は,個人 補償といわれたりするが,そうではなく,生活再 建支援として理論構成すべきであるとするの は,この制度を憲法 29 条でいう財産権に求める のではなく,憲法 25 条に基づく社会保障制度に 求めるものであり,この点,学説はおおむね一致 しているものと思われる。阿部大震災対策に

おける(憲)法解釈と法政策公法研究 61 巻(1999 年),155 頁,阿部行政法の進路(中央大学出 版部,2010 年),345 頁および安本前掲註,177 頁参照。なお,阿部は被災者再建支援法につい て,同論文 347 頁で自宅居住者ならともかく,

なぜ借家人にも 500 万円も支給すべきなのか,

疑問が多いとし,さらに,公営住宅に入居で きた借家人は,かえって住環境が改善された(い わゆる焼け太り)のであって,その上で 500 万円 も支給を受ける根拠はないとする。そこでは,

持ち家の所有者の財産権については財産的価値 の損失があるのに対して持ち家の場合はそれが ないことを根拠としているようであるが,前述 のようにこの制度の憲法上の根拠を財産権では なく生存権に求めるのであれば,かかる指摘は 理論的混乱であるといわざるをえない。なお,

この論点をめぐるその他の議論として,小山剛 震災と国家の責務公法研究 61 号(1999 年),

201 頁は,いかなる給付制度にも悪意の利得者 や過剰な利得者が存在しうること,横並びが 制度の望ましい新設・改善を阻害しうること,従 来の義捐金中心の被災者救済システムはむしろ 著しい事実上の不平等を惹起してきたし,また,

阪神・淡路大震災において事実上破綻したこと,

国家は各人の自律的判断の基礎となるべき情報 を必ずしも提供してこなかったことなどから,

震災被災者に対して生活再建の端緒となるべき 給付を行い,かつ過去の震災にこれを遡及させ ることに十分な理由があると考えるとする。

さらにこの点,後述のように,この制度の根拠に つき,生存権から派生する居住権に求める見解 がある点については,理論的な発展として評価 されうる。なお,これらの見解に対し工藤達朗 自然災害からの保護を求める憲法上の権利 公法研究 61 号(1999 年),211 頁は,補助金の 交付に公共性の要件が課せられるのは,公共事 業はやるやらない自体を政策的に判断すること が可能な問題だからであり,これに対して,

生存権の実現は,やること自体は憲法上の義務 であって,どこまでやるかという程度の問題に ついてのみ政策的判断の余地があるにすぎず,

(14)

やることは義務であるとすれば,ここで公共 性の要件をあらためて問題にする必要があるの か,疑問とする。なお,吉田邦彦都市居住・

災害復興・戦争補償と批判的法の支配(有斐 閣,2011 年),119 頁は,現行法ではミーンズテ ストがはずされていることから,補償的側面 もあるのではないかとする。

(122) 被災者生活再建支援法の制定過程については 出口俊一大整理・激甚災害と個人補償⑴∼⑶ 賃金と社会保障 1998 年 10 月上旬号,11 月上旬 号,12 月上旬号参照。

(123) 伊賀興一自然災害被災者に対する公的支援 制度の検討甲斐道太郎編著大災害と法(同 文館,2000 年),175-76 頁。

(124) 阿部泰隆災害被災者の生活再建支援法案

(上)ジュリスト 1997 年9月 15 日(No. 1119),

104 頁。

(125) 同前,106 頁。

(126) 同前,111 頁。

(127) 伊賀前掲註(123),179 頁。

(128) 阿部泰隆大震災復興案の提唱自治研究 71 巻 10 号5頁。この点につき吉田邦彦は,財産 よりは生命・身体の救済が専決とされるが……,

これは実態を見ない発言であり,居住の安定は,

生命・健康の確保と密接であることは,神戸での 経験が教えるところであるとする。吉田邦彦 新潟中越大震災の居住福祉法学的(民法学的)

諸問題法律時報 77 巻2号(2005 年),85 頁参 照。

(129) 津久井進復興基本法としての憲法片山善 博・津久井進災害復興とそのミッション(ク リエイツかもがわ,2007 年),83-84 頁。

(130) 戒能通厚論争を誘発する法学の構想力法 律時報 68 巻 10 号(1996 年)参照。

(131) 櫻井前掲註(117),99-100 頁。

(132) 安本典夫大震災を政策法学からどう見 るか 阿部泰隆著大震災の法と政策自治研 究 73 巻5号,128 頁

(133) 吉田前掲註(121),82 頁。

(134) 住民が主人公の地方行政――現場での生の 声を聞き,自ら考える人づくりこそ 片山善博・

鳥取県知事に聞く福祉のひろば2001 年7月 号,18 頁。

(135) 同前,13 頁。

(136) この時期,小田実,早川和男,山村雅治およ び伊賀興一により,生活者の自助努力の土台が 破壊されているのに,その土台回復のための有 効な公的支援策が採られていない状況が続いて いるのに対しこうした状況を放置したままで は,この国の社会・経済秩序の危機を真に脱却し えないとの認識のもとに,生活再建援助法案 が提唱されていた。伊賀興一被災者の生活再 建援助法案について法律時報 69 巻6号(1997 年),68 頁参照。

(137) 吉田前掲註(121),82-83 頁。

(138) 石崎誠也災害と被災者生活再建支援ジュ リスト 2005 年1月 1-15 日(No. 1282.),4頁。

この点,新潟県が国の制度の間隙を埋めるため に独自制度を法定外自治事務として制定した点 については,先の鳥取県の制度との関係でも興 味深く,かかる生活密着型の制度の形成過程の 本質を物語るもののように思われる。同様に吉 田前掲註(121),121 頁も,損害認定の限定性や 国・自治体間の支援金の負担のしかた・適用対象 となる市町村の範囲など,マスコミなどでは,

……(法)改正で長年の課題が解決されたかのご とく受け止められるふしもあるが,被災現場を 歩くとそんなことはないことがわかるとする。

(139) さらに山崎栄一自然災害と被災者支援(日 本評論社,2013 年),75 頁は,被災者支援制度と 生活保護制度とのリンクについて言及する。

(140) 井上英夫・井口克郎・村田隆史能登半島地 震による住民の生活被害の実態と人間と地域の 復興への課題―能登半島地震被災住民への聞き 取り調査を踏まえて―金沢大学能登半島地震 学術調査部会編過疎・超高齢化地域での震災に 関する総合的調査研究∼金沢大学平成 19 年度能 登半島地震学術調査報告書(2006 年7月),

178-79 頁。

(141) 災害救助実務研究会編災害救助の運用と実 務 2011 年版(2011 年),212 頁。

(142) 伊賀前掲註(123),169-70 頁。さらに伊賀

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