水産商品の流通に関する若干の問題 : 日本水産業 のマーケティング展望
その他のタイトル Market Structures in Fishing Industry
著者 柏尾 昌哉
雑誌名 關西大學商學論集
巻 4
号 5
ページ 353‑369
発行年 1959‑12‑30
URL http://hdl.handle.net/10112/00021748
水産商品の流通に関する若干の問題︵柏尾︶
日本水産業のマーケティソグ展望
l l 水産業︵漁業︶という産業部門において生産される商品は非常に複雑であり又多岐にわたっている︒それは︑水 産物が極めて多くの種類に分れ︑それぞれ違った特性を有していることによるようである︒反面︑それが人間の嗜 このように複雑多岐にわたる水産商品の中心は魚類である︒水産物の中には︑魚類の他に︑貝類︑イカ︑タコ︑
クジラ等の水産動物類及びコンブ︑ワカメ等の水産植物類が含まれているが︑
に足らない存在でしかない︒貝類︑水産植物等は︑現在沿岸で行われている浅海養殖とか内水面狸殖を中心として
︵ 表
1)
に見られるようにその地位は誠に低い︒だから︑商品としての水産物という場合︑そ のほとんどの部分を占めているのは魚類であることを知らねばならない︒
さて︑この複雑多岐な水産商品を大きく二つに類別すると︑ 生産されているが︑ 好の多様性の要求を満しているともいえよう︒
一
︑ 商 品 と し て の 水 産 物
一は生鮮商品であり二は加工商品である︒生鮮商品 柏
水産商品の流通に関する若干の問題
クジラと力1一を除けばほとんどとる
尾
昌哉
(表1) 年度別漁獲高推移(捕鯨を除く)(単位1.000トン・()は形)
3︑塩蔵品︵荒巻サケ︑ f︑燻製品︵サケ︑
サケ
︑
マス
︑
マス
︑
ニシン等の燻製等︶
ニシン等の塩蔵品等︶ e︑焼煮品︵サバ︑イワシ等の焼乾等︶ d︑煮乾品︵カツオ節︑ 遠沖
洋 漁
合 漁
I昭28I昭29I
I (1~叫
業 IJ晶I ﹁
0幻6
め 7
の
0 . 4 6 3 9 2 1 , 4 ( 1 (
昭30l
(1ぶ閉I
姐 叫 福 吋
昭32 919 (17.0) 2,287 (42.3) 1,865 (40. 7)
サパ
節等
︶
C︑塩乾品︵棒クラ︑開きクラ︑アジのひもの︑丸ぽし等︶
昭31 I 温)I
?轟│
沿 岸 一 般 1ht?月狐 _ _
漁業 養殖・内水面Ico?翡)Ico?翡)I(O?tぶIco罰ぶI I ic盃闘ぷ閉ぶI({轟│A諜)I({晶
業
b︑素乾品︵スルメ︑カズノコ︑乾カレイ等︶
計
a︑凍乾品︵カンテン︑凍乾スケソウ等︶ る︒ただ︑加工用原料として供せられるものは︑すべて加工商品として再成作I m
現し︑その類別に入るので︑ここでは考慮の外におく︒弓りょ次に︑加工商品となるとその種類は更に増加する︒︐
゜
2 p5 9 9
︐
鑑年産ほ2︑乾製品 1︑冷凍品︵フィーレー︑
スチ
ーク
等︶
︻A
]
食
用 悶目ぼしいところを列挙しただけでも次のようである︒
441 (0.03)
水産
商品
の流
通に
関す
る若
干の
問題
︵柏
尾︶
︑ ︑
とはいうまでもなくなま物である︒そして︑その中心は鮮魚である︒とこ
︑ ︑
ろで︑なま物といっても︑それが消費者に連なる形態から︑直接人間の生
食或は使用に供せられるものと︑加工用原料として供せられるものがあ
2︑粕︵しめ粕等︶
この多種多様な水産加工商品も︑消費者に連なる立場から分類すると︑食用されるものと非食用のものとに分け
られる︒ただ︑これ等加工商品は︑なま物に較べると水産業特有の一連の特性例えば漁獲の季節性︑不安定性︑非
標準化性等の影響はかなり小さくなっている︒
[B ]
コン
ブ菓
子等
︶
コウ
ジ潰
等︶
水産商品の流通に関する若千の問題︵柏尾︶ 1︑魚油品︵グリセリソ︑石鹸等の原料︶
非 食 用
f︑魚醤油品︵魚ミソ等︶ e︑塩辛品︵カツォ
イカ
︑
ウニ等の塩辛等︶ d︑潰物品︵粕潰︑ C︑焙乾調味品︵魚セソベイ︑魚アラレ︑
ノシ
イカ
等︶
つまり一般工業製品にやや近づいて来るのである︒ b︑煮熟調味品︵ツクダニ︑ a︑練製品︵カマボコ︑
チク
ワ︑
/
ン' ペ
ン/ ヽ
ハム
︑
ソー
セー
ジ等
︶
5︑調味品 C︑味付缶詰品︵大和煮︑トマト煮︑カラシ潰︑照焼等︶ b︑油潰缶詰品︵マグロ︑
カツ
ォ︑
サバ
︑
イワ
シ等
︶
a︑水煮缶詰品︵サケ︑ 4︑缶詰品
マス
︑
カニ
︑
サバ
等︶
ような傾向を辿ったかということである︒
二 ︑ 戦 前 戦 後 に お け る 水 産 商 品 の 変 遷
水産商品の流通に関する若干の問題︵柏尾︶
︵ 表
2)
註
( 1 )
水産業という言葉と漁業という言葉は現在ではほとんど同じ意味で使われている︒即ち︑漁業というときは︑漁拐︑養殖
加工の全部門を含む水産業を意味していることが多い︒なお︑狭義の漁業は漁拐についてだけ使用され︑水産業の一部門と
して扱われていた︒
( 2 )
清水亘﹁製造加工篇・総論﹂︵水産物便覧︶一1一ー四頁参照
明治末葉の一五0万トン級から一貫して増加カーブを画き︑大正末期には三
00
万トソを越え︑昭和七年頃即ち
漁船の一般的機動化完了の時期をもって年間約五
00
万トンのピークに到達し︑以後太平洋戦争勃発まで四
00
五00
万トソの横ばい状態を辿るのが︑戦前の日本漁獲高の概要である︒
今ここで検討しようとするのは︑これ等の漁獲物がどのような形の水産商品として市場に現われ︑又それがどの
水産商品の大宗は昔は生鮮商品であり︑それが時代の経過とともに加工商品に代置されて行ったことほ衆知の通
りである︒乾製品︑塩蔵品︑調味品等の加工商品は︑藩制時代に既に現出しているが︑これ等加工商品が急激な増
加を見せるのはいうまでもなく資本主義経済の下においてである︒
漁獲高の増加にともなって生鮮商品も次第に増大しているが︑重要なことは︑率として次第に低下しているとい
︵ 表
2)
うことである︒つまり︑水産加工商品が年とともに増えるという極めて当然の結果が見られる︒しかし︑
を更に詳細に見ると︑同じ加工商品でも率においては︑非食用加工のそれは低下しているのに食用加工のそれは急
激に上っていることが判明しよう︒これは非食用加工商品として幕末以来飛躍的な需要増加を続けていたイワシ及
四
(表2) 消費用途別漁獲高推移 (単位1,000トソ)
つまり︑従来主として中国を市場に乾製品及び塩蔵品を輸出していたのが︑日貨排斥等で次第に伸びなやみ︑大
1 大
水産商品の流通に関する若干の問題︵柏尾︶
二ご
1漁獲大高I4鮮 │688I I 202 I
戸
1 2,180 I
生 18.9
用 獲
食F
ぅ 漁 加 工 用 総
食 用
14 I 昭
1漁獲高 I 彩 1漁獲高I % 180 I 26.8 I 980 1 763 I 25.o 11. 8281 1,412 I 48.2 I 2,161 I 2,9551 100.0 1 4,9491 彩
31. 6 │
竺
59. 8 │
100.0 1
8
36.3 44.8 100.0
水産新報社「水産二十年史」統計,水産庁資料課「水産統計」より作製。
(表3) 日本の輸出水産商品推移 (単位1,000円)
三区分 大 1 │ 大 5 I 大 11 I 昭 1 I 昭 5 輸出 I彩 I輸出 I % I輸出 I彩 I輸出 I % I輸出 I彩 岳 詰 品 │2,2921 15.11 2,2051 9.311,8061 14.31 5,2941 21.1133,1911 48.1 乾製・塩蔵│11,4521 67.3119,1811 81.2117,9001 11.3'26,4041 57.7lz6,3601 38.2
そ の 他 │2,8741 17.612,2431 9.511,8061 14.31 5,2941 21.119,4121 13.7
計 116,6201 100.0123,6291 100.ol25,0651100.0145,69ol 100.ol6s,9641100.o
大蔵省「貿易年表」より作製。
五
であるが︑その背後には北洋を中心とした巨大漁
別業会社の生成があったことを忘れてはならない︒ の躍進は︑第一次ョーロッパ大戦を契機としたの 品が新しい花形として登場して来る︒この缶詰品 代は大正をもって終りを告げ︑昭和に入ると缶詰 ている︒そして︑この乾製品及び塩蔵品の全盛時 る
が︑
によってその輪画を辿ろう︒
︵ 表
3)
の輸出数字も正しくこれを裏づけ 大正年間は乾製品及び塩蔵品の時代だといわれ 字が得られないので輸出水産商品の推移︵表
3)
内訳はどうなっているであろうか︒正確な統計数 食用加工商品である︒さて︑この食用加工商品の 要するに︑絶対的にも相対的にも躍進したのは 加工が盛んになって来たからである︒ くならないのは︑肥料に代って工業用及び薬用の びニシンの農業肥料の需要が︑大正年間を頂点として次第に減少して来るからである︒それでも︑数字が案外小さ
︑ol> 増大の傾向は太平洋戦争突入の時期まで続いている︒ 全部に当てはまるのである︒ 水産商品の流通に関する若干の問題︵柏尾︶
正末期頃を転機として︑大戦中に躍進した巨大漁業会社の缶詰輸出が︑
は市場をも独占する段階にまで進んだということであり︑日本の輸出水産商品は大正から昭和へかけて乾製品及び
塩蔵品から缶詰品へと中核が移行したということである︒そして︑この傾向は多少のずれをもって日本の水産商品
食用加工商品の絶対的相対的増大傾向の中核は実に缶詰商品であったということになる︒そして︑この缶詰商品
太平洋戦争突入による日本漁業の打撃は深刻であった︒この戦争にともなう
(1
)
生産手段の収奪
( 2
)
生産手
政策
︵筆
者︶
段生産の停止
(3
)
漁業労働力の収奪
(4
)
漁場の収奪
(5
)
国家的系統的漁業統制機関設置による大資本中心の
の諸事項は︑日本漁業の基本構造を大きくゆさぶり︑それを次第に衰退の渕へ追いこんで行った︒敗
戦の現実は日本漁業の今後の立直りを疑わせる程の悲惨な状態を呈したのである︒
けれども︑戦後の日本漁業の復興は意外な程早かった︒巨大資本中心︑外海進出という伝統的な二つの甚本的政
策の線に沿って︑戦前とは違った内容ではあるが︑漁船をはじめ種々の生産手段も漁獲高も配給組識も急速に回復
して行ったのである︒特に︑漁獲高の復興状態は︑既に︵表
1)
でも示したように戦前最盛期を上まわるものであ
り︑三二年には遂に五四0万トンの新記録をうち立てるに到っている︒ただ︑このような漁獲高復興は︑実に巨大
5 1
資本漁業の復興であり︑極めて多数を占める漁民層の復興ではないということを充分留意しておかなければなるま
ともあれ︑漁獲高は急速に回復したのであるが︑戦前の水産商品の態様及び傾向は︑どのように再現し叉は変化 ヨーロッパを市場として次第に発展し遂に
六
︵ 表
5)
さて︑戦前と同じように︑食用加工水産商品の内訳を日本の輸出水産商品の推移から分析すると︑缶詰品の躍進 直りと新たな発展とに対応しているものといえよう︒
(表4) 消費用途別日本漁獲高推移 (単位1,000トン)
水産商品の流通に関する若干の問題︵柏尾︶
□ :昭
25 I 昭 28 i昭
32区分 漁獲高 I% I漁獲高I% I漁獲高 I 生 鮮 │1,889 │五]]1,184 │ 26.1 │ 1,028 │ 35 │ 43.o │ 1,896 │ 41.8 │ 2,607 1
崩1非食用│ 1,580 │ 13.21 1, 456 │ 32.1 │ 1,775 │
1 4,5 ・ 総 漁 獲 │4,3441 100.0 1 4,5
彩
19.0 1,865 48.2 32.8
して行ったであろうか︒
36 ! 100.0 水産庁資料課「水産統計Jより作製
(表5) 日本の輸出水産商品推移 (単位1,000,000円)
□区分
: 昭
10 I昭
2s 1昭
32輸 出 I% I輸 出 I% I輸 出 I形
缶 詰 品 I49 I 56.o i 12,3s1 I 40.4 : 15,1471 53.3
冷 凍 品 I 3 I 3. 6 │ 6, 528 │ 21.3 │ 4,476 │ 14. o
乾 製 品 I 1s I 20.1 1 3,9591 12.9 I 2,1391 4.6
そ の 他 17 │ 20. 3 │ 7, 787 │ 25. 4 │ 7, 203 │ 28. 1 総 金 額 I87 I 100.0 1 30,6351100.0 I 28,9651100.0
大蔵省「税関統計」より引用作製。
七
料としての発展を示すもので︑日本工業の立 は違っているが︑これは水産商品の工業用原 つ地位を回復して来ている点が戦前の傾向と えって来る︒ただ︑非食用加工商品が少しず 加工商品の絶対的相対的増加の傾向がよみが 七年頃までのことで︑以後は再び戦前の食用
しかし︑このような傾向ほせいぜい二六︑ て
いる
︒
機がまだ充分緩和されていないことを物語っ は︑戦後日本国内を襲った異常な程の食糧危 そこに急減していることとであろう︒
Jれ を占めていた非食用加工品が僅か一0%そこ を見せていることと︑逆に戦前三0ー四0%
︵ 表
4)
によると︑二五年の数字で先ず目立つのは︑戦前には二
0%を割っていた生鮮品が四0%を越える急増
(4 ) (5 )
註
3( )
加工水産商品の傾向として摺んでも大過ないであろう︒ という戦前の傾向は︑ここでは更に顕著となっており︑実に三二年度には輸出水産商品の半分が缶詰品である程の急激な増加傾向を示している︒逆に︑大正期に全盛を誇った製品及び塩蔵品は次第に低調となり︑これに代って冷
この輸出水産商品は︑三二年の総食用加工水産商品の約五0%を占めているのであるから︑大体︑すべての食用
ここで以上の総傾向を示すと次の通りである︒いわゆる生鮮品は減少し加工商品が増加している︒中でも急増す
るのは食用加工商品であり︑その中核が缶詰の飛躍的増大である︒
北洋漁業における独占資本の生成発展及び缶詰品の躍進については次書に詳しいから参照されたい︒
近藤康男﹁日本漁業の経済構造﹂ニ︱ーニ六頁
新川伝助﹁日本漁業における資本主義の発達﹂一九五ーニーニ頁
露領水産組合﹁露領漁業の沿革と現状﹂
露領漁業記念誌刊行令﹁露領漁業合同記念誌﹂
岡本正一﹁北洋漁業の大革命﹂
水産局﹁日本水産製品誌﹂
岡本正一﹁漁業発達史・カニ缶詣篇﹂
小沼勇﹁漁業における﹃危機﹄の展開﹂一0頁参照
近藤康男絹﹁前掲書﹂二四ー九六頁参照
新川伝助﹁前掲書﹂︱︱︱八一ー四一九頁参照
宇野・山田・近藤・山田監修﹁日本農業年報
I l ﹂二
0‑
l二五三頁参照
同 右
﹁ 日 本 農 業 年 報 皿
﹂ 一 八 六 ー ニ
00
頁参照 凍品が活況を示しはじめている︒ 水産商品の流通に関する若干の問題︵柏尾︶
八
九
a "
生鮮商品の基本的特徴は︑それが﹁極めて︑強い腐敗性商品の一っ﹂であるということで︑貯蔵の困難を意味し
商品としての性格に強い制約を与えている点である︒勿論︑このような特徴に関して種々の対策が講ぜられてい
る︒けれども︑まだ根本的解決には遠く及んでいない︒最も進んだ対策といわれる冷凍冷蔵業の発達普及にしたと
ころで︑漁獲高の不安定性︑季節的変動性︑輸送の困難性等の水産業特有の諸条件の前には無力を暴露している︒
すると︑生鮮商品が強い腐敗性商品であるという特徴は程度の差はあるがそのまま残されていることになる︒
叉︑水産資源はそのほとんどが極めて流動性の強い移動的なものであるから︑恒常的な漁獲高生産は不可能であ
り︑しかも︑その商品の品質は全く非画一的である︒加えて︑沿岸資源の枯渇化にともなう漁業の一般的な沖合遠
洋への進出は︑漁獲高生産を一層不安定なものにし︑輸送時間による商品の価格低下を大きいものにしている︒
このような諸事情を考えると︑生鮮商品は近代的企業から造り出される近代商品とは似てもつかないものである
ことが判る︒だから︑生鮮商品は近代的取引も行われず近代的流通経路にも乗り得ないものなのである︒例えば︑
見本取引も銘柄取引も先物取引もここでは見出すことはできず︑依然として原始的な対人的現物取引が中心となっ
ているし︑流通経路近代化の中核といわれるマーケティングも見られないのである︒
ところで︑生鮮商品について忘れてならないもう︱つの重要なことは︑これが極めて多くの代替商品をもってい
るということである︒動物性クンパク質供給源という点からだけでも︑それは他の動物性食品と競合の立場に立っF ているし︑しかも恒常的供給という面ではそれに遥かに及ばない︒ということほ︑水産生鮮商品の独占は誠に困難
水産商品の流通に関する若干の問題︵柏尾︶ 最初に生鮮商品を観察しよう︒
水 産 商 品 の 流 通
れらの多種多様の加工商品全般を通していえることほ︑生鮮商品の甚本的特徴であった腐敗性を或る程度克服して
(;;J, 1図)71,産生魚羊商品流通経路
生: 産 壱
(主として香託)
キ昴 地 市 場l
{入オ・Lせり 1中 蓄
(小売)
ノJヽ 売
う肖 曹
加工商品の種類の多いことほ既に述べたが︑こ さて︑加工商品の親察へ移ろう︒
強くうちだされているといえよう︒ はもっばらそれを流通過程で掌握するという線が
要するに︑生鮮商品についての巨大資本の方針 ても巨大資本の進出ほ目覚しい︒ 本が独占するに至っている︒更に冷凍冷蔵につい なう運搬についても運搬船の九
0
%以上を巨大資
も手を伸している︒又︑漁業の沖合遠洋化にとも し又は直営するとともに︑生産地の水揚地市場に 本は︑大都市の卸売市場のほとんどを支配系列化 要は︵第
1
図︶のようであるが︑例えば︑巨大資
であり且つ効果の少ないものであるということを示している︒
近代的商品でないこと︑独占が困難且つ効果が少ないということ︑この二つの事情の下では巨大漁業資本といえ どもそのまま見送るのは当然であろう︒事実︑生鮮商品は現在主として多数の一般礁家や中小企業によって生産さ れ︑巨大資本はむしろそれを流通過程を通じて掌握しようという方向へ進んでいる︒水産生鮮商品の流通経路の概
水産商品の流通に関する若干の問題︵柏尾︶
10
(表6) 冷 凍 冷 蔵 業 推 移 (単位,能力は立坪)
昭 30 I 昭 31 I 昭 32
全 国 1巨大資本I % I全 国 1巨大資本I 96 I全 国 1巨大資本1 %
工 場 数l 227 │ 197 │ 8. 9 │ 232 I 1991 s.6 I 2491 212 [ 8.5 製氷能力 I 24,480 1 6,732 I 21.51 25,791 I 6, 783126.31 26,866 I 7,039126.2
冷蔵能力│390,737168,379 f 11.5 I 430,836173,237 f 11.o I 538,558181,554 f 11.o
凍結能力 l7,6291 1,030113.51 8,2231 1,069112.91 9,3151 1,231 [ 13.0
水産週報社「水産年鑑」 P,529より作製
巨大資本は大洋漁業,日本水産,日魯漁業,極洋捕婉及び日本冷蔵五社の数字である。
いるということであり︑従って貯蔵の困難性をかなり打開しているという点で ある︒勿論︑多種多様の加工商品の違いによって貯蔵性も叉強弱はある︒例え 品︑焙乾調味品等の調味品は四ヵ月以上貯蔵できるし︑乾製品や塩蔵品になる
と六カ月は完全貯蔵でき︑缶詰に至っては一カ年以上貯蔵できる︒
この多種多様なしかも性質の違う水産加工商品の中には︑非近代的商品から 近代的商品に至るまでのあらゆる性質の商品が混在している︒凍乾品︑素乾品 塩乾品等の乾製品にしても︑生鮮商品よりは遥かにましだが︑漁業特有の漁業 高の不安定性や季節的変動性の影響から脱し切れず︑恒常的生産は困難であ り︑品質も標準化されていない︒塩蔵品や調味品にしてもそうである︒ただ︑
缶詰品になると貯蔵性が強くなるから恒常的生産も可能となり︑又商品の標準
化も行われ︑
いわゆる近代的商品としての性質を具えている︒
ところで︑これ等水産加工商品は近代的であるとないとを問わず多くの代替 商品をもっている︒従って︑独占は困難であり効果が少ない︒
非近代的商品と近代的商品が混在していることと独占が困難で且つ効果が少 ないという事情の下で︑巨大資本はどう動くであろう︒それが流通過程掌握に 主力を注いでいることは前に述べた︒事実︑乾製品︑塩蔵品︑調味品等は︑特 水産商品の流通に関する若干の問題︵柏尾︶
t
︑カ
マボ
コ︑
.I
チクワ等の練製品はせいぜい
10
日以内であるが︑煮熟調味
(?¥'2図) l│t産加工西品流涸経路 生 産 考
( 巨 大 登 本 )
ホ 場 地
カロ エ 工 士 島 i加 工 工 場
(巨大資本直営及び'系列) ! (そ の 他 )
佳口 = 元
)」\ 二ワ
ぅ肖 費 者
巨大資本のサケ︑
マス
︑
カニの缶詰は早くも国際
く一貫作業であった︒第一次ョーロッパ大戦時に
生 産 壱 ぽ の tり
市 場
とって缶詰製造は︑生産から消費に至るまで正し まった︒既に流通過程を掌振している巨大資本に とした水産加工商品の独占は実にこの部門から始 ラの南氷洋も同様である︒巨大資本の缶詰を中心 洋は早くから巨大資本の独占の場であった︒クジ ラがその代表である︒サケ︑
マス
︑
力二の豊庫北
水産物とは何であろう︒サケ︑ 独占である︒巨大資本がそのほとんどを漁獲する
巨大資本が打った手は水産物の種類を軸にした
であ
る︒
様流通過程で掌握するという方向を示している︒
水産商品の流通に関する若千の問題︵柏尾︶
定のものを除くとほとんどが漁家や中小企業や協同組合によって生産されているが︑これ等の流通は直接間接巨大 資本の手を経るようになっている︒このように巨大資本は非近代的加工商品と思われるものについては生鮮商品同 問題は近代的加工商品である缶詰である︒巨大資本は当然この缶詰商品の独占をねらうであろう︒ところが︑缶
詰製造という技術は比較的小規模でできる上に︑水産物の種類が甚だ多いのである︒いわば独占は非常に困難なの
マス
︑
カニ
︑
クジ
註
( 6 )
新川伝助﹁前掲書﹂四四三頁
的商品にのし上っていたが︑これは高い独占利潤を巨大資本にもたらしたのである︒
この
サケ
︑
マス
︑
力二の缶詰における巨大資本の国際的信用は︑他の水産物の缶詰の信用にも及んで来る︒とい
うのはこうである︒巨大資本のレッテルがなければ少なくとも国際的缶詰商品とはなれないということである︒こ
れは国内市場にも波及し︑缶詰商品の主導権は巨大資本の手中に落ちることになる︒そして︑このことは種々の水
産加工缶詰を製造している中小企業や漁家や協同組合を次第にその系列下に包摂して行くことになる︒例えば︑大
洋漁業は︑林兼産業︑林兼食品︑林兼水産加工等の直轄工場の他に︑太平洋水産︑長崎農産化工︑青森缶詰︑五洋
水産︑九州製缶等等︑その支配工場は︑枚挙にいとまがない程多い︒
このようにして缶詰商品はほとんど巨大資本の独占或は支配が完了した︒後は︑代替商品との競争だけである︒
ところで︑水産物の種類による独占ほ缶詰商品から他の加工商品にも及びつつある︒乾製品でも燻製になるとサ
ニシンを有する巨大資本の独占であるし︑塩蔵品もそうである︒又︑冷凍冷蔵を通じてのフィーレー︑
最後に︑加工商品の中で非食用のものであるが︑これは薬用及び化学工業商品となるのであるからほとんど完全
な近代的商品ということができる︒いうまでもなく︑この部門は巨大資本の独占である︒
以上によって︑水産加工商品が水産物の種類を通じて巨大資本の独占が進行し︑それが最も強く進行しているの
が缶詰品及び薬用・化学工業品であることが判明した︒これは︑水産加工商品の増大︑中でも缶詰品の激増と肥料
に代る薬用・化学工業品の漸増が明瞭に裏書きしているといってよいであろう︒
水産商品の流通に関する若干の問題︵柏尾︶ スチーク等も独占の傾向が強い︒ ケ ︑
マス
︑
水産商品の流通に関する若千の問題︵柏尾︶
マー
ケ
国民経済研究協会編﹁日本人の食糧﹂三ー四六頁参照
例えば︑流通過程に最も強力に進出しているといわれる大洋漁業を例にとって見よう︒同社の直接系統に入っているもの
だけでも︑東京中央市場に大都魚類︑名古屋に大東魚類︑京都に大京魚類︑大阪に大阪魚市湯︑熊本に熊本魚類︑佐賀に
佐賀魚類︑鹿児島に大洋水産と各主要都市全部に及んでいる︒
水 産 業 の マ ー ケ テ ィ ン グ
マーケティングは大独占企業の経営活動を軸として展開されるものである︒だから︑それは資本主義が高度化し
て独占段階に入り︑独占資本間の不完全競争が激化した段階において現出するものである︒それは︑具体的には︑
大独占企業が固定市場を維持拡大して独占を強固にするために流通機構を支配統制して行くことであり︑更には流
通機構の支配統制を通じてあらゆる経営の有機的統合を行う過程であるとともに経済学的には産業資本による商業
資本の独自的領域である流通過程そのものへの直接的進出又は支配を意味している︒
さて︑日本の資本主義も日露戦争後はいわゆる独占の段階に突入する︒そして︑それは相次ぐ世界的恐慌の影響
を蒙りながら次第に高度化し同時に不完全競争を激化させて行ったのである︒特に︑危機的様相を呈した昭和二年
から四年にかけての世界的大恐慌の時代にはそれが極めて高度に達し︑何等かの打開策が必須とされる段階に立ち
至ったのである︒そして︑この年代でアメリカのマーケティング運動は生起した︒しかし︑日本ではマーケティン
日本水産業においても︑日露戦争後は北洋の厖大な利権の上に資本主義漁業が急速に発達し︑巨大独占資本が見
事に成長した︒この巨大資本にとっても昭和二年から四年へかけての世界的大恐慌の痛手は大きかったが︑ グは育たなかった︒
( 7 ) ( 8 )
四
一四
は当然だからである︒
一五
ティングには向わなかった︒巨大資本は︑対内的には︑中小資本を集中し独占をより一層強化することによって自
己防衛するとともに︑半封建的性格をもつ漁民からの徹底的収奪を行い︑対外的には︑より積極的な外海進出を強
行することによって危機を打開しようとしたのである︒ために︑漁民への圧迫は更に強化され︑軍事的色彩は深化
この段階では巨大漁業資本の支配が流通過種に及ぶのほ当然であるが︑その支配方法は︑商人資本の独自的活動
分野はそのままにしておいて︑上からの資本支配を通じて商人資本全体を支配系列化して行くという行き方をとっ
てい
る︒
つまり︑巨大漁業資本がそれ自体流通過程を担当するのではなく︑自己の支配系列下の商人資本を通じて
の流通過程支配の形態である︒すべての巨大漁業資本が政商的回漕問屋を出発点としていたことを考えれば︑その
近代的独占の基底にこのような性格が内包されていたとしても怪しむには当るまい︒
第二
次大
戦後
︑
日本経済の復興がかっての独占資本の整備巨大化を中心に進められて行ったことは既に知る通り
で︑水産業も例外ではない︒ここにマーケティング運動の契機があった︒
占が高度化すればする程激化して行くものであり︑世界的商品過剰現象に対処する手段が真剣に考えられ始めるの
日本の水産業におけるマーケティング運動も歩みのろいものではあるがこうして発生した︒巨大漁業資本の流通
過程支配が︑商人資本を排除しての直接的進出に代って来ていることは︑何よりもこれを雄弁に物語っている︒
水産業におけるマーケティングの具体的事例を見よう︒
水産商品のマーケティングが最も近代的性格をもっ︐たものから展開されるであろうことは想像に難くない︒とす
水産商品の流通に関する若干の問題︵柏尾︶
して
いっ
た︒
つまり︑資本主義経済の本質的矛盾は独
物についてほ詳言するまでもあるまい︒ 漁業資本が生産を独占しているサケ︑
マス
︑
えば︑巨大漁業資本がほとんど独占しているサケ︑
マス
︑
しかしながら︑缶詰商品以外の水産商品になると︑
一シンにしても︑燻製品となると︑ 定独占水産物の缶詰から全水産物のそれに及ぼうとしている︒ 水産商品の流通に関する若干の問題︵柏尾︶
ると︑缶詰商品か薬用及ぴ化学工業商品ということになる︒しかし︑薬用及び化学工業商品は︑量において缶詰商
品に遥かに及ばないし︑加えて缶詰商品は今なおすばらしい勢いで増加している︒だから︑缶詰商品が水産業のマ
ーケティングの先鋒となったのである︒
巨大漁業資本は︑独占的水産物を中核として︑缶詰商品については既に︑市場調査︑
PR
︑広
告︑
セールス・プ
ロモーション︑技術改善︑生産計画等の一連のマーケティング運動を強力に推進している︒特定の独占水産物の缶
詰を通じて形づくられた︑日魯漁業の﹁赤の平行線﹂日本水産の﹁ヒノマル印﹂大洋漁業の﹁マルは﹂極洋捕鯨の
﹁キと旗印﹂等は︑既に国際的にまで信用のあるブランドになっている︒そして︑このプランドの威力は︑今や特
マーケティングは容易に具体化していない︒それは主として
その商品の独占の困難性︑標準化の不可能︑漁獲高不安定にともなう価格の変動性等々の水産商品特有の性格に基
因している︒だから︑この分野では流通過程掌握という昔ながらの方法から前進しようという気配は見えない︒例
マーケティングは影
が薄い︒燻製品が︑品質の画一性を欠き保存期間が短く︑その上最終販売が分割売りのためプランドの威力が消費
者に及ばず︑ために消費需要の市場調査もできず生産計画も立たない︑等の性格をもっているからであろう︒巨大
ニシンについてすら︑缶詰商品の他はこの調子なのである︒他の水産
けれども︑既に述べたように︑缶詰商品が水産商品の中で占める比率が次第に圧倒的となって来ている現在︑巨
一六
大漁業資本が︑缶詰商品を中心にマケーティソグを推進しているのは一応妥当性を有するものとい
︑ ︒
水産商品の流通に関する若干の問題︵柏尾︶
一七
わねばなるま