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母親の養育意識と保育内容
松 浦 勲
A Study of Maternal Care Attitude and the Curriculum of Nursly School
Isao MATSUURA
1.はじめに
現在,さまざまな視点から「家庭教育」のあり方が問われている。とりわけ,青少年の
「非行」 「問題行動」の主要な原因が, 「家庭」にありとされ,しかも「幼少期からの家 庭でしつけが不十分」と批判されている。そこには,「本来,しつけは家庭で行うべきも (注1)
のである」という前提にたって,論議されている。しかし,「本来,家庭がしつけをする べきである」というまえに,現実の家庭がしつけをする形成力をそなえているかどうかの 現実の可能性を探らずして,「本来論」あるいは「べき論」で論じても,問題の解決には ならないであろう。そこで,まず,現実の家族における親が,どのような養育意識を形成 しているのか,また,親の養育意識が,うけ手である子どもにどのような形で内面化され,
行動となってあらわれているかを明らかにする必要があろう。とかく,現在の子どもを論 ずる時に, 「基本的生活習慣」の未確立,「生活リズム」の乱れ,「遊べない子」等々と指 摘されるが,それは,子ども側の問題であると同時に,親側の問題であるともいえる。
「基本的生活習慣」の未確立があるとすれば,親がその確立の重要性をどの程度認識し,
子どもに形成しようとしているのか,あるいは,重要視していないから子どもに形成され ていないのか,重要視しているが,他の要因が入りこみ形成しにくくしているのかを,実 証的に明らかにしていく必要があろう。何故ならば子どもにとって,「基本的生活習慣」
の未確立があるならぽ,それを「家庭が行うべきである」としたり,「学校」「幼稚園」
「保育所」が行うべきであるとして互いにその役割を押しつけあうだけでは,「未確立」
のままに放置されるであろう。「未確立」である子どもをめく・って,「どこで」形成する ことが可能であるのかの現実的な可能性を追求することが,今,切実に求められているの ではなかろうか。
われわれは,まず,母親自身が基本的生活習慣の確立を当然視しているかどうか(最 近,親自身の未熟さを指摘されることを考える)の意識と子どもの実態,更に意識と実 態のズレをもたらす要因を「しつけの一貫性」「学歴」「生活時間」「家族観」にまと め,実証的にあきらかにするものである。
22 長崎大学教育学回教育科学研究報告 第31号
2。親の養育意識と子どもの実態についての調査設定 1)調査手続と方法
調査法:質問紙を留置法により,対象者にわたし,翌日,回収する。
調査期日:昭和58年3月
調査対象:長崎市内の保育園,幼稚園に子どもを預ける母親205名,回収率100%であ つた。ただし,記入不十分なため,分析したのは154票である。
対象者設定理由:対象者は,上記のように,保育園,幼稚園に子どもを預ける母親で あるが,5才児のクラスの子をもつ母親である。それは,4月から 入学予定の子どもで,入学にそなえて,当然,そなえるべき基本的 生活習慣が確立しているのであろうという推定のものに,対象者を 限定する。
2)質問紙の構成と調査事項 ①フェース・シート
家族形態,家族人員,子どものきょうだい数,父母の就労の有無,父母の職業,就業 上の地位,勤務の場合の経営規模,職種:,職業収入の使途,勤務地
②設問事項
家族形態の動向,母親の就労経験と現在の就労状況,現在の住宅状況,家族をめぐる 人的ネットワーク(近隣,親族,友人),父母の生活時間,子(対象児)の生活時間,
対象児の生活実態,母親の養育意識,しつけの役割分担(父母の分担と父親と子ども の接触頻度),夫婦関係0
3.調査結果
1)対象者の基本的属性
対象者の基本的属性を一回して示したのか,表1である。6才児(昭和57年4月段階で 5才児として,保育園,幼稚園に入所しているが,昭和58年3月ではほとんどの子が6才 児となっている)をめぐる家族環境をすべてあらわしているのが表1である。父親,母親 の年令は,いずれも30才〜34才層にモードがみられるが,母親は7割近くが34才以下であ るのに比し,父親は逆に,35才以上が5596以上を占め,現代日本の結婚年令の男女差を ここでも示しているといえよう。と同時に同じ6才児といえども,それが長子であるか,
次子であるかによって親の年令の広がりを示していることもわかる。
学歴は,父親,母親とも高校卒業者がもっとも多いが,次いで多いのが短大・大学卒業 者である。特に母親の高学歴者が多いのは,調査対象園の理由による。これは後述の職業 でも同じことがいえる。対象児をサンプリングする段階で,母親が有職であるか無職であ るかを考え,幼稚園と保育園を設定し,前者は二つの幼稚園,後者に6つの保育園を選ん だ。前者の場合,長大附属幼稚園を選定したために親の階層がかなり高いステイタスに限 定されている。後者の場合,長崎市内の農漁業を中心とする地域にある保育園1ヵ所,商 業地に立地する保育園3ヵ所,住宅地に立地する保育園2カ所を選定している。これらの 事が父親母親の学歴・職業に影響しているものと考えられる。
職業についていえば,父親の7割弱が雇用者である。経営規模をみると,300人以下が 65%を占め,300人以上の大企業18.4%,官公庁,公社が18.4%である。更に,職種をみ ると「専門,事務,管理」系従事者が6割以上を占めており,更にそのうち,専門技術
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24 長崎大学教育学部教育科学研究報告 第31号
系,管理職が全体の45%を占めているのは,対象者選定にかなり影響されているといえ る。母親の場合,無職35.1%,有職64.9%である。母親が有職の場合は,ほとんど保育園 児であるが,家族形態で直系家族形態をとる場合,子どもの世話をする祖父母が同居して いる場合,幼稚園児の場合も若干みられる。母親の職業は,勤務が47.4%であり,フルタ イマー, パートタイマーの割合は3:2である。経営規摸は7割弱が300人以下に集約さ れる。職種も父親と異なり,事務,販売,サービス,外交が5割をこえる。現代の婦人労 働者の職業,職種の典型的パターンを示している。職業で得た収入をどのように使用して いるのかを見ると,父親の場合,世帯主として家計維持者として74%が家計に全面的に入 れるが,母親の場合60%にとどまる。しかし,家計に全面的,あるいはほとんど入れるを あわせると83%が家計に入れている。収入山金に関しては,夫婦別産制の考え方もあり,
一概にいえないが,少なくともいえることは,母親が就労することによって得る収入は家 計を支えるために重要な位置づけを与えられているといえよう。
対象者の子ども数は6才児の子をふくめて, 「2人」の場合がもっとも多い。次いで
「3人」であり,「1人」である。母親が「有職」か「無職」かで,子ども数をみると,
「有職」の場合, 「3人以上」が41.5%を占めるが,母親「無職」の場合, 「2人以下」
が83.7%を占める。現在,日本の平均子ども数は1.74人であるから,子ども数が3人以上 の場合は,母親が就労しなければ生計維持出来ないのか,あるいは,子どもを多くもちた いから,母親が就労しているのか,いずれにしろ,母親の就労の有無と子ども数と関連が あるといえよう。
家族形態は,夫婦家:族が83.8%を占め,直系家族形態は12.3%と少なく,従って家族人 員も規定され,4人家族が半数を占め,典型的な現代日本の家族の姿を示しているといえ
よう。
2)母親の養育意識と子どもの実態
ここでは,上記の設問事項のうち,「母親の養育意識」と「子どもの実態」を中心にみ ていくことにする(その他の事項はいずれ,別の機会に,完全なかたちでまとめる予定で ある)。母親の養育意識を①親子間のコミュニケーションと「けじめ」の指標として,朝 の「おはよう」,夜の「おやすみ」のi挨拶をあげ,子どもが「挨拶」をするのを,あたり まえと思っているのか,してくれなくてもいいが,したほうがいいと感じているのか,親 子の間で挨拶などしてもらわなくてもいいと思っているのかを問い,現実に,子どもがい つも挨拶しているのか,時々しかしないのか,ほとんどしないかをみる。②子ども自身の 身辺処理,すなわち,登園準備,食後の自分の食器のあとかたずけ,衣服の着脱のあとし まつ,おもちゃのあとかたずけをすることを,母親が「子どもがする事」を,あたりまえ と思っているのか,しなくても仕方がないがしてくれた方がいいと思っているのか,して くれなくてもいいと思っているのかを問い,現実に子どもの実態をみる。③母親がどのよ うな子どもになってもらいたいか(子ども観)を,外遊びが好きで衣服など汚しても元気 な子どもであってほしいのか,字が書け,本がよめる子よりも,自分の事はきちんと出来 る子であってほしいのか,ほしいものをがまん出来る耐性をもった子になってほしいのか それぞれを母親がどのように考え,それが子どもの行動となっているかどうかを問うたも のである。④「はし」のもち方を通して,道具の使用に連らなる子どもの手先の発達と日 本人の食事マナーに関する事項を,母親がどのようにとらえ,実際に子どもはどうかを問
母親の養育意識と保育内容(松浦) 25
う。⑤家庭での実務の一端を子どもがひきうけることを母親がどのように考え,実際に子 どもが,どのような実務をになっているのかを検討する。
上記の母親の意識を問題にするのは,従来の家族の中では,上記の項目に代表されるこ とは,ごくあたりまえの事として,母親は考え,子どもは「しつけ」られていたといえよ う。が,最近の子どもの実態から,母親自身も「あたりまえ」の事としての意識そのもの も形成されていないのではないか,その結果,子どもにも形成されずに,行動となってあ らわれないのではないかという仮説があった。
① 全体的特徴
母親の意識で「あたりまえ」となっている割合の高い順からあげると,「おもちゃのか たずけ」97.6%,「登園準備」89.2%,「親子間の挨拶」85.1%,「衣服の着脱のあとし まつ」80.7%,「子どもは元気一杯外遊びをするものだ」78.3%, 「はしの正しいつかい 方」「ほしいものをがまんする」67.0%,「本もよめて,字も書ける子」63%,「食後の食 器のあとかたずけ」62.7%,「家庭での実務」48.8%となる。上位にランクされるのは,
子ども自身の身辺処理であり,下位はいわゆる「家事労働」に位置する「食器の後かたず け」「家庭内での家族全体の決まった役割の遂行」である。子ども観は,「子どもは元気 に外遊びをするのがあたりまえ」は8割近くが肯定しているが,従来,就学前までは,
「字が書ける,本がよめる」事も大事であるが,「きちんと自分の事は出来る子」を親は 求めたといわれるが,現在は,その両方を求めている親が63%いることがわかる。
全体として,子どもの自立のための身辺処理を「あたりまえ」の事として考えている親 がほとんどであるといえる。しかし,「家庭内での家族全体の役割遂行」を求める母親が 半分以下であることは,注目に値する。幼児に限らず,小,中学生になっても家庭内での 家族全体のための役割遂行がなされていない実態が各種のデータから報告されているが,
(注2)
母親の常識としても形成されていないという事の意味を考えねばならない。家事労働を省 力化した耐久消費財の普及,それによって生じた母親の時間的余裕があるから,実際に
「家事労働に子どもまで参加しなくてもよい」と考える親がふえているのであろうか。だ とすると時間的余裕がない就労している母親の意識はどうであろうか。就労している母親 49%,無職の母親61.5%が「家庭全体のための役割遂行」を期待しており,むしろ,無職 の母親の割合が高いのである。民俗学の知見によれば,子どもは「七つ前まで神のうち」
といわれ,かわいがられ,大事にされたが,七才(現在の5才)をすぎると重要な労働力 として,その発達段階に応じて役割をもたされたという。農業を中心としたがっての社会 と現在は異なる故に,単絡的に比較は出来ないが,生活の中に組みこまれることによっ て,家族を支える一存在としての子ども自身の自負,そして「仕事を遂行する」ことによ って得る知識,技術,技能,ひいては「見通し」を学ぶ機会を子ども自身は失ない,また 親自身は従来の「子育ての知恵」を断絶したところで,現在の子育てを行っているのでは ないだろうか。親が多忙であったのは,従来の親も,現在の,特に共働きの母親も同じで あったといえよう。
次に,親の意識は,子どもにどのように内面化され,行動になってあらわれているだろ うか。r親子の朝,夜の挨拶」66.7%, 「登園準備」63.9%, 「はしの使い方」54%,
「衣服の着脱のかたずけ」50.9%,「字が書け,本がよめ,衣服の着脱のできる子」50.3
%「ほしいものをがまん出来る子」47%,「おもちゃのかたずけ」44.6%,「外遊びをし
26 長崎大学教育学部教育科学研究報告 第31号
て衣服をよごしてくる子」34.5%,「食後のあとかたずけ」25.6%,「家庭内での家族全 体のための役割遂行」23.2%の順である。全体の傾向をみると 「習慣化」されているの は,低い。もっとも, この割合は, 「時々はする」を除外したものであり,「時々はす る」割合も入れてみると8割をこえ,「やらない」のは2割にすぎない。しかし,子ども は人との交わり方の原型を家庭で学ぶが,親子の挨拶を朝夜に習慣化している子どもが7 割引満たない現実があるのである。
図1は,親の意識(当然あたりまえと考えている)と実際に子どもが行動しているかど うかの差をあらわしたものである。親と子の意識と実態のズレの大きいものは,①おもち ゃのかたずけ53.0%,②外遊びをする子43.8%,③食後の後片ずけ37.1%,④衣服の着脱
図1 母親の期待と子どもの実態
97.6 89.2
爵「 85.1
待 80.7
(母考
B響塵た 子り ど
66.7 63.9
62.7
50.9
44.6 48.8
63.0 T0.3
78.3
67.0
T4.0 67.0
S7.0 ま も
え が
と や 34.5
つ 25.6
てし》る
23.2 左
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け
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のかたずけ29.8%,⑤家庭内での家族全体の仕事の遂行25.6%,⑥登園準備25.3%,であ る。逆に親と子の意識と実態のズレの小さいものは,①字を書き,本をよみ同時に衣服の 着脱の出来る子12.2%,②はしの使い方13%,③親子間の挨拶18.3%,④ほしいものはが まんする20%である。全体的にいえることは,親の意識の期待度の高い項目は,子どもの 遂行率も高いといえる。が,「おもちゃかたずけ」は親の意識が一番高いにもかかわら ず,子どもの遂行率は7番目であり,約45%しか遂行していない。このことは子どもにと って「おもちゃ」の位置ずけの変遷を物語るかもしれない。豊富におもちゃがあり,次々 とマスメデアによって「おもちゃ」の流行がつくられ,従来の子どもの「宝物」としての
「おもちゃ」の位置が失しなわれている姿ではないだろうか。それは「子どもがおもちゃ などほしいといった」時に,すぐ与えるのではなくがまんをさせるのか否かを問うた項目
母親の養育意識と保育内容(松浦) 27
で,67%の母親が「がまんさせる」と答えているが,実際にはがまんする子は47%であ り,がまんしてほしいが仕方なく買う母親が55%もいる。「ほしいもの」を次々と買い与 えている母親,次々に買ってもらった「もの」を大事にする事なく,「あとかたずけ」も
しない子の姿が浮かびあがる。そしてまた,子どもは「外遊びをするもの」であるという 子ども観の母親が8割も占めるのに,実際は,子どもは「外遊び」をしない。別の個所で 子どもの遊びを質問しているが(今回は,分析していない),やはり,室内でのゲーム遊 び,テレビをみる等が圧倒的に多い。
母親の意識と子どもの実態でギャップの最小は,「字が書けて,本がよめて,衣服の着 脱が出来る子」である。母親の意識としては高くないが,子どもの実態は高い。これは何 を意味するのであろうか。子どもの実態は,母親たちの「本音」をあらわしてはいないだ ろうか。「おもちゃのかたずけ」「衣服のかたずけ」「ほしいものをがまんする」を「た てまえ」としては期待しつつ,しかし,実際には,「本がよめたり,字が書けたりする子
」を「本音」としては子どもに期待し,第一義的にとらえ,家庭内で「しつけ」られてい るのを物語ってはいないだろうか。もっとも,対象児が保育園,幼稚園に通園しているこ とから,そこで「しつけ」られた可能性もある。しかし,「モノのかたずけ」 「耐性」も 保育園・幼稚園で「しつけ」られている。とすると,やはり,母親が「しつけ」るために 努力しているか否かが,定着し,習慣化の要となろう。
母親の養育態度は, 「意識」は高いが, 「子ども中心」で甘えさせ, 「しつけ」も十分 におこなわれていなく, 「知的側面」の強制は努力されているといえよう。
②母親のしつけの一貫性と意識と実態
親の子どもに対するしつけの態度は,親子関係の基本的なあり方を規定するものである が,特に,しつけに「一貫性」があるかないかは,子どもの遂行に大きな影響を与える。
ここでは,親のしつけの「一貫性」の指標として, 「夜,ねる時間を決めているか」の問 いに対する解答のうち①きめている(A)②きめていない(B)と母親の意識と子どもの 実態とのズレをあらわしたのが図2である。母親の意識では, 「おもちゃのかたずけ」以 外は,すべて,「一貫性がある」母親が高く,かつ,子どもの実態でも高く・親の意識と 子どもの実態とのズレの差が,より少ないのは「一貫性がある」A群である。
しつけの「一貫性」を規定する客観的要因として,家族形態,家族人員,子ども数があ げられるが,「夫婦家族形態」で,家族員が4人,従って子ども数2人の家族がしつけの
「一貫性」においては一番高いといえる。しつけの「一貫性」の低い家族は,子ども数1 人の, いわゆる「ひとりっ子」の場合が高く,更に直系家族形態の場合も高い(表2,
表3)。しつけの「一貫性」の有無は,子どもに親の意識が内面化され,行動にも示され 表2 子ども数としつけの一:貫性
A
B
4人
表3 家族形態,人員としつけの一:貫性 1人
4 人
14
2人
47
40
3人
17
20 2
8
家族形態1夫婦家副直城館
家族人員ほ久又父又又又
A
B
3 43 16 1
12 35 16 6
2 4 1 7 4 1
28 長崎大三教育学部教育科学研究報告 第31号 図2 母親のしつけの一貫性と意識と実態のズレ
97.2 98.8 92.7
91.4
85.7
90.0
83.3 82.
74.3 76.2 72.8 75.7
70.0 タ意態識騨一輪71.4 67.2 74.3
63.1 53.6
◆し
31.4 60.7
Q3.8 58.6
47.6 55.7
34.5
z
64.3
@44.1
R1.3
@19.2
58.3 T6.0
40.0 29.8
62.9 63.1
S5.2 55.7
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S0.5
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図3 母親の学歴と母親の期待・子どもの実態 一100%
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母親の養育意識と保育内容(松浦) 29
る場合が高いことから,しつけが内面化されにくい家族は,一入っ子で,直系家族形態を とる場合が多いといえる。
③母親の学歴と意識と実態のズレ
母親の意識を規定するものとして,「学歴」がある。母親の学歴別に「意識」と「実 態」のズレをあきらかにしたのが図3である。全体の特徴として,母親の「意識」と子ど
もの実態とのギャップの差が少ないのは「高卒」の親の場合である。高卒の母親の意識は 高くなく,子どもの実態は相対的に高い。母親の意識は高いが,子どもの実態が相対的に 低いのは,「大学卒」の母親の場合であり,子どもの実態が一番低いのは「中卒」の母親 である。「大卒」の母親の意識は,全般的に他の母親たちより「高い」と同時に子どもの
「実態」も高い。親が「あたりまえ」という意識を形成している場合には,子どもの行動 にも定着しやすいという事を示している。大卒,高卒共に, 「字も書け,本も読めると同 時に衣服の着脱のできる子」を期待している割合をこえて,子どもの実態があり,大卒の 場合,14%もこえている。同じく子ども観として「外遊び」をする子として95%もの母親 が当然強しているにもか,わからず,実際は40%でしかない。この二つの項目は,大学卒 の母親の「たてまえ」としての子ども観と,「本音」として子どもに要求している「しつ け」の内味を端的に示している。
④母親の就労の有無と意識の実態のズレ
「しつけ」をする場合に,生活構造からくる時間の問題はいかなる影響を与えるのであ ろうか。特に,母親の就労→しつけ不十分→子どもの非行という図式で単絡されやすい。
図4 主婦専業の母親と自営業の母親との比較
自一自営業の母親 専一主婦専業の母親
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94.0 92.0
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親子の挨拶自 専 登園準備自 専
食か繧ス フず?ッ
ニ自 専
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オた自 専
おか烽ス ソず竄ッ
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・ー事家家仕熨S遂で体認のの自 専
字本服で をのき 曹謦・驍
ォみ脱子 衣も
ゥ 専
鍵享享自 専
1確
イつ自 専
ほがオま
「ん烽キ フる自 専
30 長崎大学教育学部教育科学研究報告 第31号
確かに,無職の母親と,就労している母親の比較をすると,母親の意識,子どもの実態と ともに無職の母親の場合が高い。わずかに,「はしのつかい方」では就労している親の母 子どもの場合が10%ほど高い。これは,おそらく,保育園児の場合に,保育園で集団で給 食をとるために,子ども集団の中で, 「はしの使い方」がしつけられるために割合が高い といえる。母親が就労しているとはいえ,母親の職業,職種,によって異なる。就労の有 無は「時間」の問題が大きいからである。図4は,専業主婦の母親と,自営業の母親との 比較をみたものである。自営業の場合,雇用されている母親と異なり,「生活時間」が不 規則であり,かつ,「長時間」拘束されるからである。母親の意識では,「家族のための 仕事」「字が書け,本がよめ,衣服の着脱の出来る子」が12〜13%低いが,その他の項目 では,専業主婦の母親と変わらない。しかし,子どもの実態は,「家族のための仕事」「は
しの使い方」以外は,ことごとく低い。特に「食後あとかたずけ」6.4%, 「こどもの耐 性」28.0%であり,後者の場合,30%以上の差がみられる。一一方,「家族のための仕事」
は母親の意識は13%も低いが,実際,子どもの実態は専業主婦より8.5%も高く,親と子 のズレが小さくなっている。家族のための仕事の内容をみると「おわん並べ」 「配達の手 伝い」 「動物の世話」 「風呂洗い」 「洗たくものの処理」と多様である。 「出来ないから
させないのか」 「出来るけどさせないのか」にわかれるが,自営業の特徴である「時間的 余裕のなさ」が端的に示されているのではないだろうか。登園準備,食後のかたずけ,お
図5 夫婦中心家族の意識と実態
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親
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43.0
親 子 の 挨 拶
登 園 準 備
見た 後ず のけ
あ と か
脱 衣 の か た ず け
おた家全字よも 外
竜謳馨講馨
や の事 の子 す の 家遂下着 る
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の もす っ のる か を
母親の養育意識と保育内容(松下) 31
もちやのかたずけなど,丁寧に「しつけ」ねばならない項目は手ぬきされ,家族のための 仕事は,「必要」に温まられて子どもが行動しているのではなかろうか。「ほしいものを がまんさせる」耐性をつちかう部分でも,多忙のために,「がまん」するよりもすぐに買 い与えているといえよう。生活構造からくる生活時間に規定されて,子どもの「しつけ」
が十分になされてない姿を如実に物語っていると思われる。
⑤夫婦中心家族の意識と実態
夫婦の結びつき方,愛情のあり方は,子どもにとって決定的な意味をもつ。子どもの非 行の裏には,夫婦の愛情にひびがあり歪みがあるといわれる。しかし,日本の典型的な家 族関係では,親子関係中心に展開され,夫婦家族形態が70%をこえている現在でも変わら ない。夫婦中心の家族か親子中心の家族かを計る指標として,「子どもぬきの夫婦の共通 行動」の有無と,「子どもと夫との好物が一つあったら点れに与えるか」の夫婦としての 関係性をとり, いずれも認められる家族を「夫婦中心」家族とし,認められな:い家族を
「親子中心」家族とする。圧倒的多数86.5%が「親子中心」家族であり, 「夫婦中心」家 族は13.5%にすぎない。しかし, 「夫婦中心」家族の内容をみると,親の意識と実態のズ
レが少ないのが目立つ。意識と実態がイコールで示される項目が二つもあり,かつ,全体 の特徴で示したように,子どもが家庭での何等かの役割をうけもち遂行している割合が少 ない中で,ここでは50%近くが何等かの役割を遂行している。このパターンの属性との関 係でみると,同学歴者(大卒と大卒5,高卒7,中卒1)が65%を占め,同じく妻有職が 65%,夫の職業で多いのは「専門技術者」 「管理者」が半数である。
「子ども」中心として家庭生活が展開されず,かといって,子どもを「放任」するのでは なく,夫婦を中心として,子どもも家族の一員として役割を与え,遂行させようとしてい る家族の出現がある。
3.おわりに一保育内容との関連で
親の養育意識と子どもの行動をみてきたが,全般的には,親が「あたりまえ」として考 えるほどには,子どもは内面化し行動していない事実があった。とりわけ,子どもが家族 の一員として家庭内の何等かの役割を遂行することを「あたりまえ」と考えない母親の多 くの出現があり,事実,子どもの行動とはなりえていなかった。しかし,全般に予想して いたほど母親の意識は低くなく,母親が「あたりまえと考えている割合が高いほど,子ど 竜の行動も定着している割合が高いのがわかった。しかし母親の「あたりまえ」と考える 意識と子どもの行動との間のギャップは何から生ずるのか,それを生じさせている媒介項 は何であるのかを分析する必要がある。
一つ言える事は,「無職」の母親の子どもは相対的に行動化の割合が高かった。これは 時間的余裕のない自営業従事者と対照的であった。生活の中から必要にせまられて行動化 するに至らない現代においては,「時間をかけて余裕をもってくりかえし」しつけること によって可能であるとすれぽ, 「生活時間」の使い方の意義は大きくなってくる。 しか
し,現代における既婚で無職の母親は今後増々減少してくるであろう。ここでとりあげた
「無職」の母親は,きわめて階層的要因を強くもっていた。対象者選定でのべたように,
長崎大学附属幼稚園の母親が90%を占める。「無職」としての要因と同時に階層的にステ イタスが高いという要因もあわせもっているといわねばならない。人間としての自立をう
32 長崎大学教育学部教育科学研究報告 第31号
ながす「しつけ」を規定するのは「階層的要因」が大きいといえる。現在,働き続ける母 親たちが増大している中で,子どものしつけは増々放棄されることになる。だとすると,
保育園,幼稚園において,保育内容の養護の面をうけもつ役割が大きくなってくるのでは ないだろうか。現在の特徴は,生活習慣の確立の前に, 「字が書け,本がよめる」子を求 めている親の姿があり,また保育園,幼稚園もその面を保育内容の重要な要としてカリキ ュラム化している。単に「しつけ」は親が,家族が担う役割とせずに,どこまで家庭で,
親でになえるのかを,それぞれの園の実態(具体的にはどのような家族の子どもでその園 が構成されているか)に即して検討し,保育所においての生活習慣を確立し,自立のため の能力,技術を身につけさせるその方法をつくりあげ,それを家庭に,親に還元していっ て,家庭でもその効果をあげるように配慮することが求められているといえる。
注
1)総理府調査r少年非行問題に関する世論調査』1983年10,月30日発表,朝日新聞1983年10月31日 報道。「非行原因」を46%の人が「家庭」にありとし,「幼少期からの家庭でのしつけが不十分」
52%としている。
2)総理府調査『日本の母親と子ども』1979年。
深谷昌志r孤立化する子ども』NHKブックス,1983年。
(昭和58年10月31日受理)