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ショットピーニング加工を技術教材へ応用するため の基礎研究

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Academic year: 2021

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奈良教育大学学術リポジトリNEAR

ショットピーニング加工を技術教材へ応用するため の基礎研究

著者 堀端 眞彦

雑誌名 教育実践研究指導センター研究紀要

巻 9

ページ 89‑94

発行年 2000‑03‑31

その他のタイトル Basic examinations for application of shot

peening to teaching materials of metal working

URL http://hdl.handle.net/10105/4180

(2)

応用するための基礎研究

照i?1サ3 眉

(奈良教育大学教育学部技術科)

Basic examinations for application of shot peening to teaching materials of metal working

Masahiko HORIHATA

(Metal Working Laboratory, Department of Technological Education, Nara University of Education)

要旨:中学校技術・家庭科の金属加工教材に付加的加工を施し、より興味深く、教育効果のある ものとするために、ショットピーニング加工の適用の可能性を検討した。鋼球を自由落下させ、

アルミニウム合金板に衝突させて表面を粗くする条件を実験で調査した。その結果、中学生の体 格および安全性も考慮して、直径2mmの鋼球を1mの高さから1回あたり1kgで4回投射するこ

とで、十分に加工できることが明らかになり、金属加工教材に応用することが十分可能であるこ とが明らかになった。

キーワード:金属加工、ショットピーニング

Synopsis:Teaching materials for Metal Working can be more attractive and educational by an additional work. So, possibility of shot peening technology is estimated as an application for teaching materials. By falling steel balls freely on aluminum alloy sheet, the conditions (diameter of balls, amout of balls, height of fall, etc) to make surface mat and to make pattern or design on the surface are examined, considering safety and height of juniour high school students. As result, the best conditions are obtained as follows. 1 ) Diameter of steel shotis2mm. 2) Weight of shots is 1 kg per one fall. 3) Number of fall is four. 4) Height of fall is 1 m. It became clear that shot peening can be applied to teaching materials.

Keywords:Metal Working, Shot Peemng

1.はじめに

ショットピーニング加工とは、金属材料表面に鋼球等を衝突させて材料表面層を冷間加工によ り硬化させる加工法で、同時に疲労強度向上効果があり、表面清浄と防食にも効果がある。また、

表面に細かな凹凸ができるので装飾的効果も一部では利用されている。

一方、中学校技術・家庭科の金属加工領域で実習教材としてキーホールダーやペンスタンド、

テープカッターなどを採用している学校が最近は多く見られる1)。これらの実習教材では金属材

料表面がそのまま製作品に残る部分が多い。

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堀端 眞彦

これらの金属加工教材の表面にショットピーニング加工を施して全面もしくは部分的に粗くし て模様をっけることが可能であると考えられる。このショットピーニング加工を加えることで生 徒の個性をより発揮しやすく、より関心を引く教材になると考えられる。また、金属の性質につ いての理解を深める手助けになると考えられる。

そこで、中学生でも安全に使用できる加工装置の製作も含めて、ショットピーニング加工を金 属加工教材へ適用する可能性を検討するために基礎的な実験を行った。

2.実験装置

中学校で利用することを想定して、鋼球の投射には加速装置等の特別な装置を用いず、鋼球を 自由落下させて被加工物に衝突させることとした。また、中学校3年生の平均身長が男子で165.

2cm、女子で155.1cmである2)ので、鋼球を落下させる高さは 安全性を考慮して最高2mとした。

図1に示すようにアングル材を組み、硬質塩化ビニール管

(内径83mm)を通して鋼球を自由落下させる装置を製作した。

長さの異なる硬質塩化ビニール管を使用することで投射高さ を変化させることが可能である。鋼球が衝突する部分の側壁、

底部および図1には示していない前面の扉は厚さ0.4mmの鋼 板で作り、騒音防止のために内側には厚さ1mmの天然ゴムシー

トを貼り付けた。

鉛直に鋼球を落下させるために脚部にはネジ(六角ボルト)

による高さ微調節装置を取り付けた。パイプの上端からおも りを垂らし、4脚のネジを調整することでパイプが鉛直にな るように設置でき、落下中の鋼球がパイプ内壁に当たってエ ネルギーが損失したり、偏って集中しないようにした。

3.実験方法および結果

図1に示すように、パイプ直下の加工台上に試験片として 板厚1mmのアルミニウム合金板(材質:A2014−0、寸法:

50×50mm)を置き、パイプ上端から鋼球(ボールミル用鋼球、

材質:SUJ−2)を自由落下させた。

実際の金属加工教材としては銅または黄銅の板厚2mm前後 の硬質板材がよく用いられているが、鋼球の衝突による変形 を調査しやすくするためにアルミニウム合金板を完全焼鈍

(360℃4時間保持後炉冷)したものを使用した。

また、装置を簡単にするために落下させた鋼球は1回ごと に扉を開けて回収することとした。そのために、落下後の鋼 球がアルミニウム合金板上に残り、後続の鋼球が直接アルミ

ニウム合金板に衝突するのを阻害することを避けるため、ま 図1 ショットピーニング加工装置

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た作業中に鋼球をこぼさないように考えて、1回の投射量は1kgとした。

3.1.鋼球の直径の影響

鋼球の落下高さ(試験片表面からパイプ上端までの高さ)を2mに設定して、直径が1/16in、

2mm、4mmの3種類の鋼球を1〜5回投射し、鋼球の直径の影響を調査した。

参考として、各鋼球の1個の質量および1kg分の鋼球の個数を表1に示す。

鋼球を投射することによって鋼球の当たった表面に細かなくぼみができ、残留応力が発生する ために反りが発生する。そこで、試験片中央の反りの高さを測定した結果を図2に示す。ここで 反り高さがプラスとは、鋼球が当たった面の中央が凸型に盛り上がったことを示す。

図2から、直径1/16inの鋼球を使用した場合には、ばらつきが大きいが直径2mmの場合と はぼ同程度の反りが発生し、ともに投射回数が増えるに従って反り高さも大きくなる傾向が見ら れる。一方、直径4mmの鋼球を使用した場合には、直径1/16inおよび2mmの場合とは逆に 反った。同様に投射回数に従い反りも大きくなっているが、その値は他に比べて非常に小さいこ

とが分かる。

本実験ではアルミニウム合金の完全焼鈍材を用いたために大きな板反りが測定できたが、この 表1 鋼球の寸法、質量および個数

直 径 1 個 の 1 k g 分 の

/ m m (in ) 質 量 / m g 個 数 / 千 個 1 . 5 8 (1/16 ) 16 . 4 6 1 . 2

2 .00 3 3 . 0 3 0 . 3

4 .00 2 6 4 3 . 7 9

1   2   3   4   5   6

N u m b e r o f s h o t  / 一

図2 加工後の板反り高さ

板反りは被加工材に硬い材質のものまたは 厚いものを使用することによって小さくな ると考えられる。そのため金属加工実習教 材では問題になることは希であると思われ

る。

次に、試験片の中央部の表面粗さRa

(中心線平均粗さ)を表面粗さ測定機(ミ ツトヨ、サーフテスト301)で測定した結 果を図3に示す。投射回数がゼロの時の表 面粗さは投射前の試験片の表面粗さを表す。

直径4mmの鋼球を使用した場合、表面粗 さは投射回数の増加に伴い増加しているが、

直径1/16inおよび2mmの場合には最初 の1回で大きく表面が粗れ、3回目以降で は逆に表面粗さが減少する傾向が見られる。

また、4回以上鋼球を投射した後の表面粗 さは鋼球の直径が大きいほど大きな値を示

している。

表面の状態を表すパラメータとしては、

表面粗さの他に反射率、光沢率等があるが、

加工後の試験片の反りが加工条件によって 異なるので正確な比較は困難と考えられた。

そこで、別のパラメータとして圧痕のつい

ている面積の割合に注目した。しかし、試

験片から直接に測定することは困難であっ

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堀端 眞彦

たので、カーボン紙をはさんだ白紙にアルミニウム合金試験片の場合と同様に鋼球を投射し、黒 くなった部分の面積の割合をパソコンによる画像処理によって求め、圧痕面積率とした。パソコ ンに中央部(直径50mm)の画像を入力し、2階調化処理を行った後のパターンを図4に示す。

同じ質量¢鋼球を投射したため、直径の小さい鋼球を使用したはうが細かく数多くの圧痕が生

1   2   3   4   5   6

N u m b e r o f s h o t  / 一

図3 加工後の表面粗さの変化

∈ ユ  

\   和

∝     S   S   O   u エ D

じることがわかる。また、1/16inの鋼 球を5回投射した後ではほぼ全面に鋼球が 当たっていることが明らかになった。

鋼球の当たり具合を数値化するために、

この画像から黒のピクセル数を計算し、元 の直径50mm中の黒い部分の面積の割合(圧 痕面積率)を求めた。その結果を図5に示 す。

投射回数が増えるに従い圧痕面積率は大 きくなり、同じ投射回数の場合には鋼球の 直径が小さいほど圧痕面積率は大きく、直 径1/16inの鋼球を5回投射後の面積率 は96.7%とはぼ全面に鋼球が当たっている ことを数値的にも確認できる。

また、ショットピーニング加工後の金属 板表面の目視での粗さおよび光沢を表現す

投 射 回 数

鋼 球 の 直 径

1 / 1 6 i n 2 m m 4 m m

1 回

一 腰 ・   −

. 1潜

t

.一匹ー

. 一 ・、−ド ー       ナ ′ t ヽ ヽ

1噸 撃 彗野 師 ・

5 回

図4 鋼球の圧痕パターン

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るパラメータとしては表面粗さRaよりこ の圧痕面積率の方が適していると思われる。

以上の結果から、使用する鋼球の直径は 小さいはうが、反りは大きいが、表面粗さ

は大きく、圧痕の面積率も大きくなること が分かった。しかし、細かい鋼球を使用す ると作業中に飛散しやすく危険であり、ま た取扱いにくいので直径2mm程度が適当と 考え、以後の実験には直径2mmの鋼球を使 用した。

3.2.投射高さの影響

投射高さが2mの場合には鋼球を投射す るときには高さが70〜80cm程度の踏み台が 必要となる。そこで、作業性および安全性 を考慮して投射高さをさらに低くできるか どうか検討するために直径2mmの鋼球を使 用して投射高さを1mに低くして、同様の 実験を行った。

図6に試験片の反り高さの結果を投射高 さ2mの結果と比較して示す。

投射高さを1mと低くすると2mの場合 に比較して反りも小さくなることが確認で きる。

次に表面粗さRaの測定結果を図7に示 す。

投射高さ1mの場合には投射高さ2mの 場合に比較して加工後の表面粗さは小さな 値を示しているが、投射回数4,5回では その差は小さく、同程度に表面が粗くなっ ていることが分かる。

次にカーボン紙をはさんだ白紙に鋼球を

3    2

1 二 m 一

〇 二   U   L

1   2   3   4   5   6

N u m b e r o† s h o t  / −

図5 圧痕面積率の変化

1   2    3    4    5    6

N u m b e r o f s h o t  / 一

図6 投射高さの板反りへの影響

投射し、求めた圧痕面積率の結果を図8に示す。

投射回数3回までは投射高さが2mの場合に比較して鋼球の当たる圧痕面積率が小さいが、投 射回数4,5回ではほぼ等しい圧痕面積率が得られることが分かる。

以上の結果から、投射高さを1mに低くしても4回以上投射することで投射高さ2mの場合と

同等の金属表面を得られ、かつ反りが小さくなることが明らかになった。

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堀端 眞彦

4.金属加工教材への適用方法案

実験結果から、ショットピーニング加工 を中学校の抄術・家庭科の金属加工教材に 適用する方法として次のような方法が考え られる。生徒が各自考案したパターンを切 り抜いた紙またはゴムシートなどを貼り付 けた金属加工教材の部品に投射高さ1mで 直径2mmの鋼球を落下させ模様をつける。

または部品全面に鋼球を投射して表面を粗 くする。

投射量は加工する材料によって異なるの で予備実験が必要となるであろう。

効率的に加工するには投射した鋼球を回 収し、パイプ上端まで搬送する自動装置に すれば作業効率はよいが、生徒にとっては 加工したという実感が少なくなると考えら れる。

5.まとめ

金属表面に鋼球を衝突させるショットピー ニング加工の原理を応用して、金属加工教 材に鋼球を自由落下させ、衝突させること で表面に細かな凹凸をっけることが次の条 件で可能であることが実験によって明らか になった。アルミニウム合金に加工する場 合、1)鋼球の直径2mm、2)落下高さ1 m、3)投射量1回1kg、4)投射回数4 回。

この結果を参考に、中学校技術・家庭科 の実習教材の表面を粗したり、模様をっけ ることが可能であることが明らかになった。

最後に、本研究に協力してくれた広瀬和 明君に感謝いたします。

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∪ 上 D

1   2    3    4    5    6

N u m b e r o f s h o t  / 一

図7 投射高さの表面粗さへの影響

1  2   3   4   5   6

N u m b e r o f s h o t  / 一

図8 投射高さの面積への影響

参考文献

1)堀端眞彦:「奈良県内中学校における金属加工領域の履修状況と工具・設備の調査研究」、

『奈良教育大学教育実践研究指導センター研究紀要』、Ⅳ0.7pp47−53,1998

2)平成8年度、文部省・学校保健統計調査

参照

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