カナダサスカチュワン州の
非鉄金属投資環境調査
2019 年
おことわり：本報告書の内容は、必ずしも独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構としての見 解を示すものではありません。正確な情報をお届けするよう最大限の努力を行っておりますが、本 報告書の内容に誤りのある可能性もあります。本報告書に基づきとられた行動の帰結につき、独立行 政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構及び執筆者は何らの責めを負いかねます。本報告書に関す るお問い合せは、下記メールアドレスまでお願い致します。 調査部金属資源調査課：mric@jogmec.go.jp
カナダサスカチュワン州の非鉄金属投資環境調査
2019 年 6 月
I 目次 I. 鉱業関連一般概要 ... 1 1. サスカチュワン州における鉱業の概要 ... 1 (1) 概要 ... 1 (2) 鉱業生産状況 ... 2 (3) 探鉱状況および探鉱プロジェクト状況 ... 18 2. 鉱業行政機関および関連機関 ... 22 (1) 連邦行政機関 ... 22 (2) SK 州行政機関 ... 23 (3) 鉱業関連機関 ... 24 3. 鉱業関連の社会情勢... 27 (1) 鉱業界の現況 ... 27 (2) 環境問題 ... 28 (3) 先住民 ... 28 (4) 外国投資 ... 30 (5) 投資環境調査 ... 31 II. 鉱業関連法規の概要 ... 34 1. 鉱業法および関連規則 ... 34 (1) 一般鉱業法 ... 34 (2) ウラン関連連邦法 ... 35 (3) 探鉱・採掘手続き（ウラン以外） ... 35 2. 鉱業税制及び関連規制 ... 41 (1) 鉱業税制の概要 ... 41 (2) 法人所得税 ... 41 (3) SK 州税制 ... 43 3. 鉱業に関するその他の法制度 ... 46 (1) 環境法 ... 46 (2) 先住民法 ... 62 (3) 閉山法 ... 65 III. その他 ... 73 1. 鉱山・探鉱会社 ... 73 (1) 鉱山会社 ... 73 (2) 探鉱会社 ... 73 2. 探鉱・開発プロジェクト一覧 ... 75
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はじめに
高い鉱物資源ポテンシャルが指摘されている国／地域の中には、鉱業制度の安定性、環境問題、先住 民・地域住民問題等の政治的・社会的リスクが顕在しているために、探鉱開発投資が停滞しているケー スが少なくない。こうした国／地域における投資阻害要因を特定し、実際に投資を行う際の留意点を把 握するため、当機構では投資環境調査を実施している。本報告書はJOGMEC バンクーバー事務所が現地コンサルタント（Pan Pacific Personnel Inc.）の協 力を得て、2019 年 3 月時点でのカナダサスカチュワン州の投資環境に関する実用的ガイドとして作成 したものである。 I. 鉱業関連一般概要 1. サスカチュワン州における鉱業の概要 (1) 概要 サスカチュワン州（以下、SK 州）はカナダ中部に位置する州で、日本の全国土面積の約 1.7 倍に当た る 651,036Km2 1を有し、カナダ全国土面積の約 6.5％を占める。人口は 2018 年 7 月 1 日現在 1,162,062 人2でカナダ全体の約 3％を占め、2007 年から 2017 年末までの 10 年間で 16.2％3の伸びを見せてい る。また、SK 州の GDP は 2015 年、2016 年にはマイナス成長であったが、2017 年には前年度より 2.9％上昇し、鉱物販売額も 2015 年、2016 年に一旦落ち込んだものの、2017 年には再度上昇している 4。 世界の小麦の全輸出量の 3 分の 1 が SK 州よりの輸出である他、植物油、豆類、畜産品などでも世界有 数の生産、輸出地として知られているが、農業や畜産に並んで鉱業も SK 州経済に大きく貢献してお り、主要産業の一つとなっている。 SK 州の鉱業活動を鉱物生産額から見ると表 1-1 のとおりで、2017 年では石油の生産額が全鉱物生産額 の 56％を占め、これに続き石こうが 30％、ウランが 9％となっている。金属鉱物に関してはウランの 生産量が最も多く、ウランが SK 州の鉱業界に占める役割は大きい。カナダはウランの生産量が世界第 2 位であり、SK 州がカナダで唯一のウラン生産州であることから、SK 州はウランの生産において世界 的にも重要な位置を占めていると言える。 SK 州において 2017 年現在生産されている非鉄金属鉱物は、ウランの他は、金とその副産物としての 銀、銅、鉛、亜鉛と限られている。SK 州の金の生産額はカナダ全体の 1.4％であり、それ以外の金属 鉱物については SK 州の占める位置は微小である。 1 このうち土地面積は 591,670Km2、淡水域 59,366Km2。
Statistic Canada: https://www150.statcan.gc.ca/n1/pub/11-402-x/2010000/chap/geo/tbl/tbl07-eng.htm 2 Statistic Canada
https://www150.statcan.gc.ca/n1/daily-quotidien/180927/dq180927j-eng.htm?HPA=1&indid=4098-1&indgeo=0 3 Statistic Canada, https://www150.statcan.gc.ca/n1/pub/12-581-x/2018000/pop-eng.htm
4 Economic Review 2017, Government of Saskatchewan:
2 図 1-1 カナダ・SK 州地図 http://ftp.geogratis.gc.ca/pub/nrcan_rncan/raster/atlas_6_ed/reference/eng/can_eng.pdf http://ftp.geogratis.gc.ca/pub/nrcan_rncan/raster/atlas_6_ed/reference/bilingual/sask.pdf 表 1-1 SK 州鉱物生産額5 （単位：百万 C$） 鉱物 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 2017 石油 10,324 12,369 12,412 13,668 15,222 7,910 6,743 8,888 天然ガス 639 491 385 483 689 421 323 362 石こう 5,582 6,853 5,972 5,609 5,700 6,096 4,182 4,763 ウラン X X X X X X 1,118 1,413 砂、砂利 51 90 98 90 93 91 93 98 その他 2,079 2,190 1,965 2,128 2,426 2,659 1,411 812 合計 17,985 21,413 20,349 21,405 23,348 16,665 13,454 15,876 X：非公開 (2) 鉱業生産状況 1) ウランの資源量、生産量から見たカナダ（SK州）の世界における地位 (i) 資源量
5 Economic Review 2017, Government of Saskatchewan:
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日本、カナダを始め31か国が加盟する経済協力開発機構/原子力機関（OECD/NEA）6が世界のウランの 資源、生産、需要に関し定期的に出版しているレッドブックとして知られる「ウラン2018：資源、生 産、需要」7によると、カナダの2017年現在の回収コストUS$260/kgU以下のウランの回収可能既知資源 量（recoverable identified resources）8は846,400tとされ、豪州、カザフスタンに次ぎ世界第3位、また、 回収可能確認資源量（recoverable reasonably assured resources）は592,900tで豪州に次ぎ世界第2位となっ ている。 表1-2 世界のウラン既知資源量国別分布（回収コスト<US$260/kgU）7 （2017年, 単位：100t） 国 確認資源量(1) 推定資源量(2) 既知資源量 (1)+(2) 資源量 % 順位 資源量 % 順位 資源量 % 順位 豪州 2,054,800 25.7 1 1,400,600 29.1 1 3,455,400 27.0 1 カザフスタン 904,500 11.3 2 434,800 9.0 3 1,339,300 10.5 3 カナダ 846,400 10.6 3 592,900 12.3 2 1,439,300 11.2 2 ロシア 656,900 8.2 4 260,000 5.4 6 916,900 7.2 4 ナミビア 541,700 6.8 5 368,500 7.7 4 910,200 7.1 5 南アフリカ 449,300 5.6 6 259,600 5.4 7 708,900 5.5 7 ニジェール 425,600 5.3 7 336,400 7.0 5 762,000 6.0 6 中国 290,400 3.6 8 136,700 2.8 11 427,100 3.3 9 ブラジル 276,800 3.5 9 155,900 3.2 8 432,700 3.4 8 ウクライナ 219,100 2.7 10 137,700 2.9 10 356,800 2.8 10 インド 157,000 2.0 11 149,000 3.1 9 306,000 2.4 11 グリーンラン ド 148,200 1.9 12 66,800 1.4 13 215,000 1.7 12 ウズベキスタ ン 139,200 1.7 13 57,600 1.2 14 196,800 1.5 14 チェコ 118,900 1.5 14 50,700 1.1 15 169,600 1.3 15 モンゴル 113,500 1.4 15 49,800 1.0 16 163,300 1.3 16 米国 100,800 1.3 16 1,400,600 29.1 12 201,600 1.6 13 その他 545,500 6.8 - 257,200 5.3 - 802,700 6.3 -- 合計 7,988,600 100.0 - 4,815,000 100.0 - 12,803,600 100.0 - 6 NEA 加盟国は，日本を含め，豪州，オーストリア，ベルギー，カナダ，チェコ，デンマーク，フィンランド，フランス， ドイツ，ギリシャ，ハンガリー，アイスランド，アイルランド，イタリア，韓国，ルクセンブルク，メキシコ，オランダ， ノルウェー，ポーランド，ポルトガル，ロシア，スロバキア，スロベニア，スペイン，スウェーデン，スイス，トルコ， 英国，米国の 31 か国。（ニュージーランド，チリ，イスラエル，エストニア，ラトビアを除く OECD 加盟国及びロシア。） 外務省ウェブサイトより。https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/atom/oecd_nea.html
7 Uranium 2018: Resources, Production and Demand: https://www.oecd-nea.org/ndd/pubs/2018/7413-uranium-2018.pdf
8 既知資源量(identifiable resources)は確認資源量（reasonably assured resources）と推定資源量(inferred resources)の合計をい う。
4 図 1-2 主要資源国のウラン既知資源量（回収コスト<US$260/kgU） 0 500000 1000000 1500000 2000000 2500000 3000000 3500000 既知資源量 (100t) 確認資源量 推定資源量
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図1-3 世界のウラン既知資源量国別分布 (2017年)
出典：Uranium 2018: Resources, Production and Demand, Nuclear Energy Agency/International Atomic Energy Agency
6 カナダのウラン資源のほとんどは SK 州北部の Athabasca Basin に存在し、この地域の鉱床は世界最 大の高品位鉱床であるとされている。例として、McArthur River 鉱山のウラン含有率は平均 18％で あり、世界で最も高い品位を誇っている。カナダの鉱床より採掘されるウランは他の世界の鉱床よ り採掘される平均品位の 10 倍から 100 倍近く高いとされている。カナダのウラン既知資源量は、豪 州、カザフスタンに次ぎ世界第 3 位であるが、カナダの既存のウラン埋蔵量は現在の生産レベルで 今後 40 年は存続するとみられている。また、地質学的考証に基づけば更に相当量の未開発の鉱床が 存在することが推定されている9。
Saskatchewan Geological Survey が発表している SK 州の鉱物ポテンシャルは図 1-4 に示す通りであ る。
9 About Uranium, Natural Resources Canada https://www.nrcan.gc.ca/energy/uranium-nuclear/7695
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図 1-4(1) SK 州鉱物資源ポテンシャル（北部）
Resource Map of Saskatchewan 2018 Edition, Saskatchewan Geological Survey Miscellaneous Report 2018-1 http://publications.gov.sk.ca/documents/310/97534-ResourceMap2018_English.pdf ウランポテンシャル ヘリウムポテンシャル ウラン鉱脈 ベースメタルポテン シャル 石油プール 金鉱脈 金ポテンシャル ガスプール 銅・亜鉛鉱脈 ピートポテンシャル オイルサンドポテンシャル 銅・ニッケル/コバルト鉱脈 石炭ポテンシャル 石こう・塩資源地区 鉛・亜鉛鉱脈
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図 1-4(2) SK 州鉱物資源ポテンシャル（南部）
Resource Map of Saskatchewan 2018 Edition, Saskatchewan Geological Survey Miscellaneous Report 2018-1 http://publications.gov.sk.ca/documents/310/97534-ResourceMap2018_English.pdf ウランポテンシャル ヘリウムポテンシャル ウラン鉱脈 ベースメタルポテン シャル 石油プール 金鉱脈 金ポテンシャル ガスプール 銅・亜鉛鉱脈 ピートポテンシャル オイルサンドポテンシャル 銅・ニッケル/コバルト鉱脈 石炭ポテンシャル 石こう・塩資源地区 鉛・亜鉛鉱脈
9 (ii) 生産量 カナダは 2008 年まで継続的にウラン生産量において世界 1 位であったが、2009 年にカザフスタンが カナダを抜き、以降現在までトップの座を保ち、カナダは世界第 2 位の座を維持している。2017 年現 在、世界のウランの約 3 分の 2 はカザフスタン、カナダ、豪州の 3 国より生産され、カザフスタンが 世界の全生産量の 39％、カナダが 22％、豪州が 10％を占めている。 表 1-3 過去 10 年間の国別ウラン生産量の推移10（単位：t） 国 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 2017 カザフスタン 8,521 14,020 17,803 19,451 21,317 22,451 23,127 23,800 24,575 23,391 カナダ11 9,000 10,173 9,783 9,145 8,999 9,331 9,134 13,325 14,039 13,116 豪州 8,430 7,982 5,900 5,983 6,991 6,350 5,001 5,654 6,315 5,882 ニジェール 3,032 3,243 4,198 4,351 4,667 4,518 4,057 4,116 3,479 3,449 ナミビア 4,366 4,626 4,496 3,258 4,495 4,323 3,255 2,993 3,654 4,224 ロシア 3,521 3,564 3,562 2,993 2,872 3,135 2,990 3,055 3,004 2,917 ウズベキスタン* 2,338 2,429 2,400 2,500 2,400 2,400 2,400 2,385 2,404 2,404 中国* 769 750 827 885 1,500 1,500 1,500 1,616 1,616 1,885 米国 1,430 1,453 1,660 1,537 1,596 1,792 1,919 1,256 1,125 940 ウクライナ* 800 840 850 890 960 922 926 1,200 1,005 550 南アフリカ 655 563 583 582 465 531 573 393 490 308 インド* 271 290 400 400 385 385 385 385 385 421 チェコ 263 258 254 229 228 215 193 155 138 0 ロマニア* 77 75 77 77 90 77 77 77 50 0 パキスタン* 45 50 45 45 45 45 45 45 45 45 ブラジル* 330 345 148 265 326 192 55 40 44 0 フランス 5 8 7 6 3 5 3 2 0 0 ドイツ 0 0 8 51 50 27 33 0 0 0 マラウイ ND 104 670 846 1101 1132 369 0 0 0 世界合計 43,853 50,773 53,671 53,494 58,490 59,331 56,042 60,497 62,368 59,531 U3O8換算 t 51,702 59,875 63,295 63,084 68,976 69,969 66,089 71,343 73,548 70,201 世界の全需要に 対する割合** 68% 78% 78% 85% 86% 92% 85% 90% 98% 92% * は推定値。
**World Nuclear Association より。 ND はデータなし。
10 World Nuclear Association:
http://www.world-nuclear.org/information-library/nuclear-fuel-cycle/mining-of-uranium/world-uranium-mining-production.aspx 11 World Nuclear Association によるカナダのウラン生産量は、Natural Resources Canada が発表している生産量と多少異 なっている。
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図 1-5 世界総ウラン生産量に占める各国のウラン生産量の割合(2017 年) 出典：World Nuclear Association
図 1-6 ウラン生産国トップ 10 の生産量の推移
出典：World Nuclear Association.
http://www.world-nuclear.org/information-library/nuclear-fuel-cycle/mining-of-uranium/world-uranium-mining-production.aspx カザフスタン 39% カナダ 22% 豪州 10% ニジェール 6% ナミビア 7% ロシア 5% ウズベキスタン* 4% 中国* 3% 米国 2% ウクライナ1% * 南アフリカ0% インド* 1% 0 10,000 20,000 30,000 40,000 50,000 60,000 70,000 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 2017 カザフスタン カナダ 豪州 ニジェール ナミビア ロシア ウズベキスタン 中国 米国 ウクライナ
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世界で生産されるウランの過半は国有鉱山会社によるものであるが、カナダでは主に Orano Canada 社（以下、Orano 社）及び Cameco Corporation 社（以下、Cameco 社）の 2 社により生産されてい る。世界各国における主なウラン生産会社は図 1-7 のとおりで、上位 10 社によるウラン生産量は世 界総生産量の 86％を占める。
また、2017 年における世界のウラン鉱山の生産量トップ 10 は表 1-4 の通りで、SK 州の Cigar Lake 鉱山と McArthur River 鉱山が上位 2 位を占め、これらで世界総生産量の 22％を占める。
図 1-7 世界ウラン総生産量に対するトップ 13 社によるウラン生産量の割合 出典：World Nuclear Association
http://www.world-nuclear.org/information-library/nuclear-fuel-cycle/mining-of-uranium/world-uranium-mining-production.aspx 表 1-4 世界トップ 10 ウラン生産鉱山（2017 年）12 鉱山 所在国 所有会社 タイプ 生産量 (tonnes U) 全世界生産量に 対する割合(%)
Cigar Lake カナダ Cameco (50%) 坑内掘り 6,924 12
McArthur River カナダ Cameco (69.8%) 坑内掘り 6,193 10
Tortkuduk &
Myunkum カザフスタン Katco JV/Areva ISL 3,519 6
Olympic Dam
豪州 BHP Billiton 副産物/
坑内掘り 2,381 4 Budenovskoye 2 カザフスタン Karatau
JV/Kazatomprom-Uranium One ISL 2,352 4
Inkai カザフスタン Inkai JV/Cameco ISL 2,116 4
SOMAIR ニジェール Areva (63.6%) 露点掘り 2,116 4
South Inkai カザフスタン Betpak Dala JV/Uranium One ISL 1,982 3
Ranger 豪州 Rio Tinto (68%) 露点掘り 1,945 3
Budenovskoye 1,
3 & 4 カザフスタン
Akbastau
JV/Kazatomprom-Uranium One ISL 1,931 3
トップ 10 合計 31,458 53%
12 World Nuclear Association
http://www.world-nuclear.org/information-library/nuclear-fuel-cycle/mining-of-uranium/world-uranium-mining-production.aspx Kazatomprom 21% Cameco 15% Orano 13% Uranium One 9% CNNC & CGN 6% ARMZ 5% Rio Tinto 4% Navoi 4% BHP Billiton 4% Energy Asia 4% General Atomics/Quasar 3% Sopamin 2% Paladin 2% Other 8%
12 また、2015 年までの世界のウランの生産量と需要量の長期的推移は図 1-8 のとおりで、需要量は 2000 年頃まで増加を続け、その後横ばい状況を続けている反面、生産量は 1990 年代半ばより増加を 続けている。そのため、1990 年頃より 2015 年に至るまでは需要が供給を上回っていたが、近年では そのギャップが徐々に小さくなっている。 図 1-8 世界のウラン生産量と原子力発電所需要量の推移 （t）
出典：OECD-NEA/IAEA, World Nuclear Association
http://www.world-nuclear.org/information-library/nuclear-fuel-cycle/mining-of-uranium/world-uranium-mining-production.aspx
2011 年から 2017 年までの国別ウラン需要量の推移は表 1-5 のとおりであり、中国の需要が過去 7 年 間で倍以上に伸びている他、スロバキア、パキスタンでも上昇がみられ、一方、日本、フィンランド、 ドイツでは大きな減少が見られる。それ以外は、各国ほぼ同じレベルで推移している。
13 表1-5 ウランの主要使用国の需要量の推移13 ウラン需要量 (tU) 予定原子炉需要量(2018) MWe 2011 2012 2013 2014 2015 2016 2017 建設中 原子炉 計画中 原子炉 提案中 原子炉 米国 18,376 19,724 19,622 18,816 18,692 18,161 18,996 2,500 3100 30,000 フランス 9,254 9,254 9,320 9,927 9,230 9,211 9,502 1,750 0 0 中国 4,079 6,550 6,711 6,296 8,161 5,338 8,289 12,841 50,900 154,000 ロシア 4,912 5,488 5,090 5,456 4,206 6,264 5,380 4,889 27,135 21,000 韓国 4,029 3,967 4,218 5,022 5,022 5,013 4,730 7,000 0 8,800 ウクライナ 2,288 2,348 2,352 2,359 2,366 2,251 1,944 0 1,900 12,000 英国 2,093 2,096 1,828 1,738 1,738 1,734 1,772 0 15,600 2,300 カナダ 1,845 1,694 1,764 1,784 1,784 1,630 1,592 0 1,500 0 ドイツ 1,934 1,934 1,889 1,889 1,889 1,689 1,480 0 0 0 スペイン 1,379 1,355 1,357 1,274 1,274 1,271 1,275 0 0 0 スウェーデン 1,366 1,394 1,505 1,516 1,516 1,471 1,188 0 0 0 ベルギー 995 995 1,017 1,017 1,017 1,015 987 0 0 0 インド 1,305 937 1,326 913 1,579 997 843 5,400 10,500 32,000 日本 2,805 4,636 366 2,119 2,549 680 662 2,756 12,947 4,145 スロバキア 299 307 675 392 466 917 651 942 0 1,200 チェコ 591 583 574 563 566 565 649 0 2,400 1,200 UAE 0 0 0 0 0 0 627 5,600 0 14,400 スイス 527 527 521 521 521 521 497 0 0 4,000 フィンランド 1,152 471 1,127 480 751 1,126 494 1,720 1,250 0 ハンガリー 331 331 357 357 357 356 349 0 2,400 0 ブルガリア 309 313 317 321 324 327 327 0 0 1,200 ブラジル 318 321 321 325 326 329 321 1,405 0 4,000 南アフリカ 304 304 305 305 305 304 279 0 0 9,600 メキシコ 285 279 270 277 270 282 248 0 0 3,000 パキスタン 113 117 117 99 101 270 217 2,322 1,170 0 アルゼンチン 208 124 212 213 215 215 195 27 1,950 1,300 ルーマニア 175 177 177 179 179 179 183 0 1,440 0 イラン 168 170 172 174 176 178 157 0 2,200 6,300 スロベニア 137 137 137 137 137 137 141 0 0 1,000 オランダ 102 102 103 103 103 102 82 0 0 0 アルメニア 63 64 86 87 88 88 77 0 1,060 0 バングラデシュ 0 0 0 0 0 0 0 2,400 0 0 ベラルーシ 0 0 0 0 0 0 0 2,388 0 2,400 チリ 0 0 0 0 0 0 0 0 0 4,400 エジプト 0 0 0 0 0 0 0 0 2,400 2,400 インドネシア 0 0 0 0 0 0 0 0 30 4,000 イスラエル 0 0 0 0 0 0 0 0 0 1,200 イタリア 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 ヨルダン 0 0 0 0 0 0 0 0 0 2,000 カザフスタン 0 0 0 0 0 0 0 0 0 1,800 北朝鮮 0 0 0 0 0 0 0 0 0 950 リトアニア 0 0 0 0 0 0 0 0 0 2,700 マレーシア 0 0 0 0 0 0 0 0 0 2,000 ポーランド 0 0 0 0 0 0 0 0 6,000 0 サウジアラビア 0 0 0 0 0 0 0 0 0 17,000 タイ 0 0 0 0 0 0 0 0 0 5,000 トルコ 0 0 0 0 0 0 0 1,200 3,600 9,500 ウズベキスタン 0 0 0 0 0 0 0 2,400 ベトナム 0 0 0 0 0 0 0 0 4800 7,100 世界合計 62,552 67,990 64,978 65,908 66,883 63,404 65,014 57,740 154,282 376,295
13 World Nuclear Power Reactor & Uranium Requirements
14 図 1-9 ウラン使用上位 10 か国のウラン需要量の推移(2011 年～2017 年) 出典: http://www.world-nuclear.org/information-library/facts-and-figures/world-nuclear-power-reactors-and-uranium-requireme.aspx 2) SK州におけるウランの生産状況 前述のようなウランの世界的な需要供給の現状を背景に、SK州のウランの生産状況を見てみると以 下のとおりである。 SK州がカナダで唯一のウラン生産州であることから、ウランに関する世界におけるカナダの位置付 けはそのままSK州の位置付けとして見ることができる。SK州はウラン生産量において世界第2位を 占める。
SK州のウランは主にSK州北部のMcArthur RiverとCigar Lake近辺の鉱山で生産され、ここで生産され るウランは世界で最大かつ最高の品位を誇っている。
しかしながら、需要の停滞により世界最大のウラン生産会社であるCameco社は2017年11月に
McArthur River鉱山とKey Lake鉱山を一時的に閉鎖した。これにより、2017年のSK州のウラン生産量 は前年比32.8％減少し、生産額では53％の減少となった（表1-6）。2018年にCameco社はこれら鉱山 の閉鎖を無期限に延長することを決め、2016年に閉鎖されたRabbit Lake鉱山同様、今後はウラン市 場の動向により再開の可否を決定することとしている。 表1-6 SK州（カナダ）ウラン生産量と生産額の推移14 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 2017 生産量 (t) 8,703 10,133 9,927 9,017 9,520 7,889 9,780 13,279 14,133 9,501 生産額 (千 C$) 953,858 1,358,144 1,230,182 1,307,174 1,197,441 806,418 933,583 1,609,476 1,248,600 585,040
14 Natural Resources Canada, Annual Statistics of Mineral Production 2018-2017p http://sead.nrcan.gc.ca/prod-prod/ann-ann-eng.aspx 0 10,000 20,000 30,000 40,000 50,000 60,000 2011 2012 2013 2014 2015 2016 2017 需要量 (t U) 米国 フランス 中国 ロシア 韓国 カナダ ドイツ スペイン スウェーデン 日本
15 図1-10 SK州（カナダ）ウラン生産量と生産額の推移（2008年～2017年） SK 州内の操業中（一時閉鎖中のものを含む）のウラン鉱山は表 1-7 に示すとおりである。 表1-7 SK州内のウラン鉱山15 鉱山 所有者 2017年 生産量 (100万lbs) 埋蔵量 資源量 (t) 品位 (%) 含有量 (lbs U3O8) ライセン ス期限 Key Lake (露天掘り) Cameco Corporation (83.3%) Orano Canada Inc. (16.7%)
250.7 (2017年休 山) (pv) 61.1 0.52 0.7 2023年 (pb) - - - (t) 61.1 0.52 0.7 McArthur River (坑内掘り) Cameco Corporation (69.805%)
Orano Canada Inc. (30.195%)
(pv) 1097.5 9.90 239.5 (pb) 593.3 9.15 119.6 (t) 1690.7 9.63 359.1 Cigar Lake (坑内掘り) Cameco Corporation (50.025%)
Orano Canada Inc. (37.1%) 出光興産 (7.875%)
TEPCO Resources Inc. (5.0%) 99.0 (pv) 215.6 16.88 80.2 2021年 (pb) 386.6 13.81 117.7 (t) 602.1 14.91 197.9 Rabbit Lake (坑内掘り) Cameco Corporation (100.0%) - (2016年休 山) (m) - - - 2023年 (i) 1836.5 0.95 38.6 (t) 1836.5 0.95 38.6 注：pv:確定鉱物埋蔵量; pb: 推定鉱物埋蔵量；m: 精測鉱物資源量；i:概測鉱物資源量’ t: 合計 15 Orano, Cameco ウェブサイト http://mining.areva.com/EN/canada-119/orano-canada-incactivitiesoperations-partnerships-and-overviews.html https://www.cameco.com/businesses/uranium-operations/canada/cigar-lake/reserves-resources 0 200,000 400,000 600,000 800,000 1,000,000 1,200,000 1,400,000 1,600,000 1,800,000 0 2000 4000 6000 8000 10000 12000 14000 16000 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 2017 生産額（千 C$) 生産量（ t） 生産量 生産額
16
SK州で生産されたウランは主にオンタリオ州（以下、ON州）のBlind Riverにある精製所において濃 縮され、その88％が主に米国、ヨーロッパ、アジアの各国に原子力発電用に輸出される。残りのウ ランはカナダ国内の19の原子炉（CANDU; Canadian Deuterium Uranium） reactor16において使用さ れ、カナダ全体の電力の約15％を供給している。
カナダでは年間1.2十億C$相当のウランの生産と精錬が行われており、カナダ国内でウラン産業に係 る直接被雇用者は3,000人を超え、その大多数がSK州北部の住民である。
図 1-11 カナダのウラン鉱山、精錬所、原子力発電所
出典：Uranium and nuclear power facts, Canada Natural Resources https://www.nrcan.gc.ca/energy/facts/uranium/20070#L2
17 (ii) その他金属鉱物の生産状況 (A) 金 SK 州における金属鉱物の生産額は、ウランに次ぎ金が第 2 位を占める。ただし、カナダ全体の金生 産額に占める SK 州の金生産額はわずか 1.6％程度に過ぎない（2017 年）。 SK 州の過去 10 年の金の生産量と生産額は以下の通りで、2014 年以来増加を続けている。 表1-8 SK州（カナダ）金生産量と生産額の推移17 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 2017* 生産量 (kg) 1,375 1,461 1,480 2,412 2,412 1,991 1,988 2,313 2,302 2,562 生産額 (千 C$) 41,063 52,186 80,045 120,327 129,347 93,038 89,486 110,317 122,422 135,489 *2017年は推定値 図1-12 SK州（カナダ）金生産量と生産額の推移 SK州内で現在操業を行っている金鉱山は以下のとおりである。 表1-9 SK州内金鉱山18 鉱山 所有者 生産量 （2017年） 埋蔵量 備考 Seabee Gold Operation (坑内掘り) SSR Mining Inc. 83,998 oz (2,381kg) 確定/推定 440,000oz 2018年から2023 年の予想年間生 産量100,000oz
17 Natural Resources Canada, Annual Statistics of Mineral Production http://sead.nrcan.gc.ca/prod-prod/ann-ann-eng.aspx 18 SSR Mining ウェブサイトより。 http://www.ssrmining.com/operations/production/seabee/ 0 20,000 40,000 60,000 80,000 100,000 120,000 140,000 160,000 0 500 1000 1500 2000 2500 3000 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 2017 生産額（千 C$ ） 生産量（ t） 生産量 生産額
18 (3) 探鉱状況および探鉱プロジェクト状況 1) カナダ、SK 州の探鉱状況の概要 2017 年におけるカナダ全国における探鉱事業（探鉱、埋蔵物評価等）への支出額は、表 1-10 に示す 通り前年より 34.2％増加し約 21.8 億 C$で、2018 年には更に 8.0％の増加が予想されている。しかし ながら、2017 年の SK 州の探鉱支出は前年より約 16.4％減少し、2018 年にはこれより更に約 2.1％の 減少が予想されている。これは、SK 州の主な鉱物であるウランと石こうの探鉱活動の停滞に起因す るものと思われる。 図 1-13 カナダ各州の探鉱/埋蔵物評価支出（2016 年-2018 年）
出典：Canadian Mineral Exploration, Information Bulletin, March 2018, Natural Resources Canada https://www.nrcan.gc.ca/mining-materials/publications/17762
19 表 1-10 カナダの州別、資源別探鉱/埋蔵物評価事業支出（2016 年~2018 年）19 州/準州 年 卑金属 貴金属 鉄 ウラン ダイヤモンド その他* 合計 割合 (百万 C$) (%) SK 州 2016 0.5 3.1 0 159.9 7.1 58.2 228.7 14.0 2017 3.3 9.5 0 136.0 6.5 35.9 191.2 8.7 2018* 10.3 10.3 0 120.4 23.3 23.0 187.2 7.9 ニューファンドラン ド・ラブラドール州 2016 7.4 11.7 2.8 1.0 0 2.4 25.4 1.6 2017 10.8 23.4 2.0 0.8 0 4.6 41.5 1.9 2018 15.0 23.9 4.0 1.0 0 4.3 48.3 2.0 ノバスコシア州 2016 1.6 2.1 0 0 0 1.7 5.3 0.3 2017 1.1 16.6 0 0 0 0.5 18.2 0.8 2018 0.4 16.5 0 0 0 0.8 17.7 0.8 ニューブランズウ ィック州 2016 10.6 0.9 0 0 0 2.7 14.2 0.9 2017 10.6 2.4 0 0 0 2.9 15.8 0.7 2018 14.1 3.1 0 0 0 2.7 20.0 0.8 ケベック州 2016 47.7 206.0 5.2 … 3.3 35.1 297.4 18.3 2017 69.0 425.8 3.8 ... 2.6 72.7 573.9 26.3 2018 99.4 406.6 6.9 ... 5.3 104.8 623.1 26.4 オンタリオ州 2016 77.1 300.1 … 0.1 4.7 12.2 394.3 24.2 2017 117.3 402.5 0.5 ... 5.0 14.4 539.7 24.7 2018 76.7 452.5 0.6 ... 10.7 27.1 567.5 24.0 マニトバ州 2016 14.9 31.2 0 0.1 0 1.1 47.3 2.9 2017 11.9 27.0 0 ... 0.3 1.9 41.1 1.9 2018 19.7 24.1 0 0.1 2.1 1.7 47.7 2.0 アルバータ州 2016 0 0.1 0.3 0.8 0.1 15.4 16.7 1.0 2017 0 0 ... 0.2 0.1 24.2 24.6 1.1 2018 0.2 0 1.3 0.1 0 31.5 33.3 1.4 BC 州 2016 41.8 142.9 0.5 0 0 0 46.3 2.8 2017 57.7 200.0 0.3 0 0 44.6 302.6 13.8 2018 76.9 198.3 0.3 0 0 60.0 335.5 14.2 ユーコン準州 2016 27.5 62.8 0 0 0 0.1 90.4 5.6 2017 25.5 143.0 0 0 0 0.2 168.7 7.7 2018 28.0 221.1 0 0 0 0.2 249.4 10.6 ノースウエスト準 州 2016 1.2 12.1 … … 59.5 0.2 73.0 4.5 2017 11.4 22.2 0 0 56.3 1.3 91.2 4.2 2018 18.5 22.4 0 0 42.3 3.0 86.2 3.7 ヌナブト準州 2016 6.4 179.6 13.7 1.9 2.9 0 204.5 12.6 2017 3.7 158.1 2.5 0.4 12.3 0 177.0 8.1 2018 7.0 125.5 2.5 0.2 8.6 0.1 143.9 6.1 合計 2016 236.7 952.6 22.5 163.9 77.7 175.4 1,628.8 100 2017 322.2 1430.5 9.1 137.4 83.2 203.1 2,185.5 100 2018 366.2 1504.4 15.9 121.8 92.3 259.1 2,359.7 100 * その他には、他の金属、鉄、非金属を含む。; ... は微小額のため非掲載 2018 年は支出予定額 注：本表の 2017 年、2018 年の値は 2018 年 10 月改定値であるため図 1-14 の 2017 年と 2018 年の値（改訂前）と異な る。
19 Annual Statistics: Exploration Plus Deposit Appraisal Expenditures, by Province and Territory, by Mineral Commodity Sought, 2015 Preliminary Estimates Spending/Exploration Plus Deposit Appraisal Expenditures, by Province and Territory, by Mineral Commodity Sought, Spending Intentions 2016, 2017, 2018, Natural Resources Canada
2018:http://sead.nrcan.gc.ca/expl-expl/ExploTable.aspx?FileT=362017&Lang=en 2017:http://sead.nrcan.gc.ca/expl-expl/ExploTable.aspx?FileT=302017&Lang=en 2016: http://sead.nrcan.gc.ca/expl-expl/ExploTable.aspx?FileT=292017&Lang=en
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図 1-14 カナダ各州の探鉱支出（2018 年予想） （百万 C$）
出典: Annual Statistics: Exploration Plus Deposit Appraisal Expenditures, by Province and Territory, by Mineral Commodity Sought,, 2018 Revised Spending intentions
http://sead.nrcan.gc.ca/expl-expl/ExploTable.aspx?FileT=362017&Lang=en 2) SK 州の探鉱状況 表 1-10 及び表 1-11 に示すとおり、SK 州における探鉱活動は探鉱支出からみると、ウランと工業用 鉱物（主に石こう）に係るものがほとんどで、過去 3 年においてはウランの探鉱支出が SK 州内の全 探鉱支出の 60％から 80％近くを占めている。 図 1-4 に示す通り SK 州北部には多くのウラン鉱床が発見されており、そのポテンシャルも州北部の 広範囲に及び、生産されるウランの品位や過去の生産状況からも SK 州においてウランの探鉱活動が 活発であることは当然ともいえる。表 1-10 に示すとおり、2018 年の SK 州の探鉱支出予想額は、ケ ベック州（以下、QC 州）、ON 州、BC 州、ユーコン準州（以下、YK 準州）に次ぎ、カナダの州及 び準州内で第 5 位を占める。ただし、前記の通り、過去 10 年近いウラン価格の低迷を受け、ウラン 生産と同様に探鉱活動も低めに推移している。 表 1-11 SK 州の探鉱支出の推移（2008-2018）20 鉱物 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 2017 ウラン 204.4 108.6 103.2 101.2 115.8 143.8 138.7 136.1 156.1 132.4 ダイヤモンド 73.2 10.9 17.3 7.9 5.2 4.2 3.6 17.3 9.2 3.8 金 8.9 3.0 9.5 10.5 13.1 6.3 6.0 2.2 6.2 4.9 ベースメタル 6.8 3.0 6.5 13.3 13.0 7.8 2.9 3.8 0.5 6.4 工業鉱物 180.7 151.2 184.0 160.3 176.5 74.3 64.6 51.5 26.7 29.4 合計 473.9 276.6 320.5 293.2 323.6 236.4 215.7 211.0 198.8 176.9
20 Saskatchewan Exploration and Development Highlights 2017, Miscellaneous Report 2017-2, Government of Saskatchewan http://publications.gov.sk.ca/documents/310/104745-2017_EDH_final_with%20cover_15%20Nov%202017.pdf この値は、表1-11 の Statistic Canada の数値とは若干異なる。 SK, 187.2 NL, 48.3 NS, 17.7 NB, 20 QC, 623.1 ON, 567.5 MB, 47.7 AB, 33.3 BC, 335.5 YT, 249.4 NT, 86.2 NU, 143.9
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図 1-15 SK 州の探鉱支出の推移（2008-2017）
Saskatchewan Exploration and Development Highlights 2017, Miscellaneous Report 2017-2, Government of Saskatchewan http://publications.gov.sk.ca/documents/310/104745-2017_EDH_final_with%20cover_15%20Nov%202017.pdf SK 州内における主な探鉱・開発プロジェクトは末尾の表 3-3 に記載する。 0 50 100 150 200 250 300 350 400 450 500 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 2017 ウラン ダイヤモンド 金 卑金属 工業鉱物
22 2. 鉱業行政機関および関連機関 カナダは連邦国家であり、州・準州はカナダ憲法（Constitution Act, 1867）に明記されている州・準 州関連の分野についてのみ管轄権を有し、それ以外の事項は連邦が管轄する。ウランを除く鉱物・ エネルギー資源等の天然資源は州・準州政府の管轄事項とされており、よって、各州・準州は独自 の鉱業法を有し、これに基づき各州の担当省庁が鉱業活動を管理している。ただし、ウランを始め とするカナダ全体に関わる事項とされる一部の分野に関しては連邦組織が直接あるいは間接的に鉱 業活動に関わってくる場合もある。また、管轄当局以外にも、NGO である調査機関、各種公的、民 間支援機関、鉱業協会等が鉱業活動を支援している。 (1) 連邦行政機関 鉱業に関連するカナダの連邦管轄機関は以下のとおりである。 1) カナダ天然資源省
カナダ天然資源省（Natural Resources Canada - NRCan）21は、エネルギー、鉱山・資源、林業、地球 科学、有害物、爆発物、北部環境に関する事項を管轄する。前記のとおり、天然資源に関する事項 は各州の管轄下にあるため、NRCanが直接鉱山事業に関する事項に関わることはないが、Department of Natural Resources Act（S.C. 1994, c.41）に基づき、前記の管轄分野に関するプログラムやポリシー を調整、推進、実施し、天然資源に関する規則や基準の開発に参画する等の役割を果たす。また、 鉱業に関する情報、統計などを提供する。
2) 政府-先住民関係・北部事業省・カナダ先住民サービス
2017年8月に現与党の自由党は、先住民のニーズをより良く満たし、権利を尊重し、政府と先住民が 対等なより良い関係を築くため、それまで先住民関連事項を管轄していたカナダ先住民・北部事業 省（Indigenous and Northern Affairs Canada - INAC）22を解散し、政府∸先住民関係・北部事業省 （Crown-Indigenous Relations and Northern Affairs Canada- CIRNAC）23 とカナダ先住民サービス省 （Indigenous Services Canada-ISC）24の2つを新しく設立した。
CIRNACは先住民のステータス、コミュニティ、北部事情・北極圏ポリシー、先住民と政府との協 定、コンサルテーション、エンゲージメント等、先住民の対外的事項を管轄し、ISCは先住民の健 康、先住民の子供達の利益、教育等先住民に対するサービスを提供する。
3) カナダ環境・気候変動省
カナダ環境・気候変動省（Environment and Climate Change Canada - ECCC）25は、カナダにおける自然 環境保護を管轄し、環境に関する法令の作成、改正、管理を担当する。また、カナダ環境保護法（Canada Environmental Protection Act 1999）に基づき、オゾン減少物質許可、海中廃棄許可、有害物質のカナダ よりの搬出又はカナダへ搬入許可等を発行する。
連邦管轄の環境影響評価は ECCC の下位組織であるカナダ環境評価局（Canadian Environmental Assessment Agency）26が担当する。カナダ環境評価局は 2019 年に 2012 年カナダ環境影響評価法 （Canadian Environmental Assessment Act, 2012 - CEAA）が改正され影響評価法（Impact Assessment Act） 21 http://www.nrcan.gc.ca/home 22 https://www.aadnc-aandc.gc.ca/eng/1100100010002/1100100010021 23 https://www.cameco.com/invest/markets/uranium-price 24 https://www.canada.ca/en/indigenous-services-canada.html 25 https://www.canada.ca/en/environment-climate-change.html 26 https://www.canada.ca/en/environmental-assessment-agency.html
23
として新しく施行された際は影響評価局（Impact Assessment Agency）として連邦管轄の環境影響評価 を全て主導することとなる。
4) カナダ原子力安全委員会
カナダ原子力安全員会（Canadian Nuclear Safety Commission）27はカナダ国内における核エネルギー 及び核資源を規制する独立行政機関で、原子力発電所の操業、核エネルギー管理法等の法令に基づ く規制を実施する他、ウランの探鉱、採鉱、精錬、廃棄、閉山等のライセンス取得等の手続き及び 核関連物質に関する環境評価を主導する。ただし、2019年の新影響評価法施行後は新しく設立され る影響評価局が核関連物質に関する環境評価も主導することとなる。
5) カナダ雇用・社会開発省
カナダ雇用・社会開発省(Employment and Social Development Canada - ESDC)28は、社会福祉、雇用に 関する政策の策定や資金分配を行う。 (2) SK州行政機関 SK 州における鉱物の探鉱、採掘を管轄する機関、その管轄許認可及び根拠法は表 1-12 のとおりであ る。 表 1-12 SK 州における鉱物探鉱・採掘に関連する政府機関 機関 管轄許認可 根拠/関連法令 エネルギー・資源省 Ministry of Energy and Resources29 • 鉱物管理登録(Mineral Administration Registry)30 鉱業各種許可 鉱区申請 鉱物リース 鉱物保有権(Mineral tenure) • 土地売却
• 鉱物権税(Mineral rights tax)
• Energy and Mines Act • Mineral Resources Act • Crown Minerals Act • Land Titles Act
• Mineral Tenure Registry Regulations • Mineral Taxation Act, 1983
• Mineral Rights Tax Regulations, 1998 • Crown Mineral Royalty Regulation • Subsurface Mineral Tenure
Regulations 環境省 Ministry of Environment31 • 有害物・安全廃棄物管理 • 環境影響評価 • 鉱物許可(Mineral permits) 汚染管理施設操業許可 汚染管理施設建設、変更、拡 張許可 閉山計画、閉山基金認可 閉山義務履行解除 • 国家保留地管理 • 大気質管理 • 森林管理 • 野生動物保全
• Conservation Easements Act • Environmental Assessment Act • Ecological Reserves Act • Environmental Management and
Protection Act, 2010
• Fisheries Act (Saskatchewan), 1994 • Forestry Professions Act
• Natural Resources Act • Provincial Lands Act
• Sale or Lease of Certain Lands Act • Water Appeal Board Act
• Wildlife Act, 1998
• Wildlife Habitat Protection Act • Mineral Industry Environmental
Protection Regulations, 1996 27 https://nuclearsafety.gc.ca/eng/ 28 https://www.canada.ca/en/employment-social-development.html 29 https://www.saskatchewan.ca/government/government-structure/ministries/energy-and-resources 30 https://www.saskatchewan.ca/business/agriculture-natural-resources-and-industry/mineral-exploration-and-mining/mineral-tenure/mineral-administration-registry-saskatchewan-mars 31 https://www.saskatchewan.ca/government/government-structure/ministries/environment
24
機関 管轄許認可 根拠/関連法令
貿易・輸出開発省 Ministry of Trade and Export Development32 • 事業の開始 • 先住民との鉱物地表リース契約 • 北部社会経済利益 SK州北部における鉱山活動に おいて地方のコミュニィティ への利益提供促進 • 北部SK州環境品質委員会 (Northern Saskatchewan
Environmental Quality Committee (NSEQC))
• SK州北部のウラン鉱業活動に関 わる環境規制
SK州北部のウラン鉱業活動に 関わる環境規制
• Economic and Co-operative Development Act
• Foreign Worker Recruitment and Immigration Services Act • Human Resources, Labour and
Employment Act
• Indian and Native Affairs Act • Natural Resources Act
• Norther Saskatchewan Economic Development Act (3) 鉱業関連機関 1) 全国組織 カナダ全域にわたる鉱業関連組織及び団体は表 1-13 から表 1-15 のとおりである。 表 1-13 カナダの全国鉱物関連組織 組織 目的、活動等
Canadian Institute of Mining, Metallurgy and Petroleum33
1898 年に設立された非営利団体で、カナダの鉱物、金属、資源、エネル ギー業界内の技術的専門家を支援し、知識と技術の交換やネットワーク 作りなどを推進する。業界、学会、政府よりメンバーは 11,000 名を超え る。多くの出版物やイベントを提供する。 Mining Association of Canada34 カナダにおける持続可能な鉱業を推進し、鉱業界を支援する。カナダに 鉱物生産基盤を置くほとんどのベースメタル、貴金属、ウラン、ダイヤ モンド、石炭、オイルサンド等の企業が会員となっている。連邦、各州の 鉱業関連当局や、先住民や環境に関する全国組織、鉱業関連国際組織と も連携して活動を行っている。
Canada Mining Innovation Council (CMIC)35 クリーンな技術と気候変動の抑制を目指し、エネルギーコストの大幅な 軽減、生産性の向上、温室効果ガスの排出の減少に寄与する技術やプロ グラムを推進する。 各州の官庁、協会、コンサルタント、製造業者、探鉱会社、鉱山会社、調 査機関、大学等がメンバー。
Prospectors and Developers Association of Canada (PDAC)36
カナダの探鉱、開発に関する業界団体。8,000 名を超える個人（探鉱者、 開発者、地球科学者、コンサルタント、鉱山管理者、学生、関連投資財務 関係者等）関係企業をメンバーとする。
Canadian Aboriginal Mineral Association (CAMA)37 先住民による組織。鉱物業界、鉱業活動、土地や資源に対する先住民の 権利について先住民の理解を深めることを目的とする。 32 https://www.saskatchewan.ca/government/government-structure/ministries/trade-and-export-development 33 https://www.cim.org/ 34 http://mining.ca/ 35 http://cmic-ccim.org/ 36 http://www.pdac.ca/ 37 http://www.aboriginalminerals.com/
25
組織 目的、活動等
Canadian Land Reclamation Association (CLRA)38 鉱山再生の計画、実行への個人、法人の参加を支援する非営利団体。 メンバーは業界、大学、コンサルタント会社、政府当局等。 National Orphaned/Abandoned Mines Initiative (NOAMI)39 所有者不明の鉱山又は所有者が鉱山の清浄化を行わない鉱山に関する調 査。鉱山の清浄化についてのワークショップも提供。
Northern Centre for Advanced Technology Inc.40 (NORCAT)
鉱山の生産性、作業者の健康と安全を向上するため、監督者トレーニン グ、鉱山作業者トレーニング等各種訓練コースを提供する。また、短 期、長期でのオフィス、研究所等のスペースも提供する。ON 州拠点。 Centre for Excellence in
CSR41
企業の社会責任に関する資料の作成および情報の提供。 Mining Suppliers Trade
Association (MSTA Canada)42
メンバー会社による鉱業関連の商品、サービスの提供。 サプライヤーの検索支援、トレードショー開催等。 表 1-14 地質関連機関 組織 目的、活動等 Geological Association of Canada43 カナダにおける地球科学についての学識者による審議、地球科学の一 般、専門家及び学識者への普及と利用を推進する。各種雑誌や出版物を 出版。 Geological Survey of
Canada44 Natural Resources Canada, Earth Sciences Sector に属する政府団体。 地球科学に関する情報の提供、調査を行う。 Saskatchewan Geological Survey45 エネルギー・資源省に属し、地質、鉱物資源に関する情報提供を行 う。 表 1-15 鉱業関連調査機関とその業務 組織名 目的、活動等
Center for Excellence in Mining Innovation46 (CEMI)
鉱石発見率の向上とコスト減少、深部掘削の危険低減、鉱山の生産性向 上、NPV/ROI の向上、環境パフォーマンス向上等を目指して研究、調 査を行っている。ON 州拠点。
Mineral Exploration Research Centre47 (MERC) 鉱床、環境に関する調査を始め、各種教育訓練コース、ワークショップ を提供。Laurentian University の関連調査機関。カナダを初め世界各国の 鉱山採掘会社や調査機関と連携している。ウラン埋蔵調査などを行って いる。ON 州拠点。 Mining Innovation, Rehabilitation and Applied
Research Corporation 48 (MIRARCO) 地力学上研究、安全性研究、決定支援ソフト、持続可能なエネルギーソ リューション、気候適応調査等を行っている。ON 州拠点。 Fraser Institute49 (独立非営利調査教育機関) 各種調査、研究を行っているが、鉱業関連では、年次鉱山会社調査、鉱 山ポリシーレビューなどがある。 38 http://www.clra.ca/ 39 http://www.abandoned-mines.org/en/ 40 http://www.norcat.org/ 41 https://www.cim.org/en/CIMSubSites/CentreForExcellence 42 https://mstacanada.ca/ 43 http://www.gac-cs.ca/index.html 44 https://www.nrcan.gc.ca/earth-sciences/science/geology/gsc/17100 45 https://www.saskatchewan.ca/business/agriculture-natural-resources-and-industry/mineral-exploration-and-mining/saskatchewan-geological-survey 46 https://www.cemi.ca/ 47 https://merc.laurentian.ca/ 48 http://www.omicc.ca/ 49 https://www.fraserinstitute.org/
26 2) SK 州鉱業関連機関 SK 州内の鉱業関連協会、労働組合、地質関連機関、調査機関としては、表 1-16 及び表 1-17 のものが ある。 表 1-16 SK 州の鉱業関連組織 組織 目的、活動等 Saskatchewan Minint Association (SMA)50 SK 州内の 25 の鉱山操業者を始め鉱山、探鉱会社を代表し連邦、州政府当局 向けの活動や、知識、情報の提供、業界内外での連携の促進などを行う。 International Minerals Innovation Institute51 SK 州の業界組織で、SK 州を世界で最も革新的かつ持続可能な鉱業の地とす べく、調査、開発、教育、トレーニングなどのプログラムを提供する。 表 1-17 鉱業関連労働組合 労働組合 目的、活動等 United Steelworkers of Canada52 (USW) 北米のスチールワーカーの組合で、カナダに第 3 区、第 5 区及び第 6 区の 3 つの区域を有し、SK 州は第 3 区に属する。Cameco 社員は Local8914 に属す る。 50 http://saskmining.ca/ 51 https://www.imii.ca/about-us/ 52 http://www.usw.ca/
27 3. 鉱業関連の社会情勢 (1) 鉱業界の現況 カナダで唯一のウラン生産州であり世界のウラン生産量の22％を生産するSK州は、ウランの生産、 探鉱において世界で主導的な立場に立つのみならず、SK州で生産されるウランの88％が世界各国の 原子力発電用に使用されていることより、エネルギー供給面においても世界的に重要な位置にある と言える。 しかし、2011年の福島原発事故以来、ウラン価格は70％以上下落し、SK州に拠点を置くウラン生産 で世界最大のCameco社がSK州内のKey Lake鉱山及びMcArthur River鉱山を一時的閉鎖するなど、ウ ラン業界にとっては厳しい状況が続いている。 ウラン価格は2011年の約75US$/lbから2016年11月には18US$/lbまで落ち込み、2017年から2018年にか けて徐々に回復の方向に向かい2018年11月には約29US$/lb 53まで回復した。このウラン価格の上昇を 受け、Cameco社は2017年には赤字を計上したものの、2018年第一四半期の売り上げは昨年の同時期 より約12％上昇し439百万C$となり黒字に転換している。また、Cameco社のウラン鉱山一時閉鎖と カザフスタンのウランの生産量の低減に伴いウランの世界的な供給量は大幅に低下し、一方で継続 的に操業をしている原子力発電所に加え、日本で稼働停止していた原子力発電所の一部再稼働54も含 め、世界各地での新規原子炉の建設、計画も進んでいることなどから、今後は需要に供給が追い付 かずウランの価格は上昇するという見方も強い。 図 1-16 ウラン価格の推移 Natural Resources Canada
https://www.nrcan.gc.ca/energy/facts/uranium/20070#L1
World Nuclear Association が 2017 年 9 月に発表した Nuclear Fuel Report: Global Scenarios for Demand and Supply Availability 2017-2035 の概要55によると、ウランの需要は、2017 年現在 391GWe であると ころ、悲観的シナリオ（Lower Scenarios）では 2030 年まで低迷を続けその後 2035 年までに多くの原 子力発電所が閉鎖され下落すると予想される反面、標準的シナリオ（Reference Scenarios）では 2025 年には 455GWe に、2035 年までには 482GWe まで上昇、さらに、楽観的シナリオ（Upper Scenario） では、2025 年までに 455GWe、2035 年までに 625GWe まで上昇すると予想されている。
53 Cameco ウェブサイトhttps://www.cameco.com/invest/markets/uranium-price 54 原子力発電所の現状、資源エネルギー庁
http://www.enecho.meti.go.jp/category/electricity_and_gas/nuclear/001/pdf/001_02_001.pdf 55 Global Scenarios for Demand and Supply Availability 2017-2035, World Nuclear Association http://www.world-nuclear.org/our-association/publications/publications-for-sale/nuclear-fuel-report.aspx
28 (2) 環境問題
1) カナダ環境評価法改正
2018年2月に連邦政府はカナダ環境評価法（Canadian Environmental Assessment Act, 2012）を環境影響 法（Impact Assessment Act）に改正する法案（Bill C-69）を国会に提示し、2018年11月現在上院での 審議が進められている。改正法案は、より確実、予想可能な、迅速、透明性のある環境影響評価、 先住民の権利を保証し、その知識を生かした評価、一般参加、科学に基づく審査等を目指したもの であるとされている。主な改正点はカナダ環境影響評価法のセクションで説明する。
2) 温室ガス汚染価格法制定
連邦政府は2018年3月に炭素税を全国的に導入するための温室ガス汚染価格法（Greenhouse Gas Pollution Pricing Act - GGPP）56法案を議会に提出し、6月21日に国王裁可を受けたが、これに対しSK
州政府57は、連邦政府にはSK州民に炭素税を課す憲法上の権利はないとして当該法の制定の合憲性 を確認すべくSK州の上訴審に判断を求めた。SK州はSK州には炭素税より有効な温室ガス抑制措置 があり、炭素税は高価でかつ非効果的な措置であるとして反対している58。これに対し連邦政府は炭 素税課税は連邦政府の管轄であると主張し、SK州がGGPP法に従った措置を取ることを求めてい る。裁判所の判断は2019年の春以降になる予定である。 (3) 先住民 1) SK 州の先住民と連邦、SK 州政府との関係 2016 年国勢調査によるとカナダ全体で約 167 万人が自らを先住民と認めており59、そのうち SK 州の 先住民は総数で 175,015 人、そのうちファースト・ネーションが 114,570 人（約 65.5％）、メティス が 57,880 人（約 33.1％）、イヌイットが 360 人（約 0.2％）となっている60。 鉱業活動が環境や先住民の文化に与える影響などより、鉱山活動を行うに当たっては、通常、先住民 との抵触が生じることが多い。しかし、後に記載する Fraser Institute の調査でも明らかにされている とおり、カナダの州のうち、SK 州は先住民と鉱山会社とが連携して鉱業活動を進めるケースが多く、 また、ウラン鉱山作業員の多くが先住民であることからも、SK 州における鉱山活動には先住民との 協力が得られることが多い。 Fraser Institute の調査によると、SK 州はカナダの他州に比べ先住民との問題が生じる可能性が少ない 州であると探鉱会社より見られている。これは、図 1-17 に示す通り SK 州全域が歴史的条約及び条約 地権利合意（Treaty Land Entitlement agreements）の対象地となっており、先住民と連邦政府との間で 土地に関する合意がなされているため、BC 州のような先住民と政府との土地に関する争いが生じる 可能性が少ないためであると考えられる（図 1-17 の赤の斜線部分が先住民が土地の所有権に対し権 利の主張を行い政府と現在も交渉中である地域、緑の斜線部分がその結果合意が達成した地域であり、 SK 州には当該主張がなされた地域はない）。即ち、SK 州では先住民による土地所有権主張が鉱業活 動に与える可能性は非常に少なく、これが SK 州が鉱業投資について魅力的な投資先であるとみられ ている大きな原因の一つであると考えられる61。 56 https://laws-lois.justice.gc.ca/eng/acts/G-11.55/ 57 オンタリオ州も同様に連邦の炭素税課税に反対している。 58 https://www.saskatchewan.ca/government/news-and-media/2018/april/25/carbon-tax-case
59 Indigenous peoples and communities (Crown-Indigenous Relations and Northern Affairs Canada): https://www.rcaanc-cirnac.gc.ca/eng/1100100013785/1529102490303
60 Statistic Canada, Aboriginal peoples in Canada: Key results from the 2016 Census https://www150.statcan.gc.ca/n1/daily-quotidien/171025/dq171025a-eng.htm
61 Mining and First Nations collaboration thriving in the land of living skies, Fraser Institute
29
図 1-17 包括的土地所有権
30 (4) 外国投資 1) カナダの外国直接投資 カナダにおける外国直接投資の形態としては、既存企業の買収を通じての投資が、新規事業立ち上げ による投資よりはるかに多い。2017 年度（2016 年 6 月∸2017 年 6 月）にカナダ投資法に基づき通知を 行った外国投資件数は 737 件、企業価値にして 50.31 十億 C$で、そのうち通知のみで承認されたもの は 715 件、外国投資審査を受け承認された件数は 22 件であった62。 表 1-18 外国投資審査・通知数より見たカナダにおける外国投資状況63 2013 年 2014 年 2015 年 2016 年 2017 年 買収/新規設立数 企業買収 487 478 524 498 529 新規事業 177 177 180 128 186 外国投資審査/通知 承認数 審査承認 18 11 15 15 22 通知承認 664 655 704 626 715 2017 年度の投資審査にかかった期間は平均 84.6 日であったが、これは 3 件の大規模投資の審査が長 期の及んだためであり、平均的な審査期間は 71.5 日であった。 投資先セクター別にみるとサービス業が最も多く、2017 年の天然資源関連事業（石油・ガス、その他 鉱業、鉱業関連事業）への投資は全体の約 21%を占める。鉱業への投資は 2015 年に一旦減少した後 2017 年まで増加傾向を示している。 表 1-19 カナダへのセクター別外国投資額64 （百万 C$） セクター 2014 年 2015 年 2016 年 2017 年 鉱業 36,871 21,064 24,357 28,242 石油・ガス 122,548 133,470 136,476 119,865 鉱業関連 14,724 14,273 14,301 14,122 製造業 198,325 181,061 176,696 176,200 卸売業 54,990 61,884 68,741 74,670 小売業 38,536 31,114 34,301 35,790 財務・保険業 99,259 115,853 126,833 136,974 企業管理業 123,467 158,838 167,399 170,885 その他 55,951 65,355 59,634 67,287 合計 744,671 782,912 808,738 824,035 カナダへの直接投資の投資国では、2017 年の投資件数で米国が全体の約 54％（397 件）を占め、こ れに次ぎ、中国 6％（46 件）、英国 6％（41 件）、ドイツ 5％（36 件）、フランス 4％（32 件）、日本 3％（21 件）となっている。
62 Annual Report, Investment Canada Act 2016-17
https://www.ic.gc.ca/eic/site/ica-lic.nsf/vwapj/2016-17AnnualReport.pdf/$file/2016-17AnnualReport.pdf 63 Comparative Data Between Last Twelve-month Period and Cumulative Period
https://www.ic.gc.ca/eic/site/ica-lic.nsf/eng/h_lk00015.html 64 Annual Report, Investment Canada Act 2016-17
31 C＄C＄
図 1-18 カナダへの国別外国投資割合（2017 年） 出典：2018 Canada’s State of Trade, Global Affairs Canada
https://www.international.gc.ca/economist-economiste/assets/pdfs/performance/state_2018_point/SoT_PsC_2018-Eng.pdf (5) 投資環境調査 Fraser Institute が毎年世界各国の鉱山、探鉱会社に対して行っている鉱業投資環境調査65によると、 SK 州は、表 1-20 に示す通り、投資魅力度で世界第 2 位、鉱業政策指数で第 3 位、ベストプラクテ ィス鉱物ポテンシャルで世界第 2 位となっている。 カナダ国内では環境規制の不安定さが投資抑制とならない州について第 2 位であるのを除き、いず れの指標についてもトップに立ち、カナダ国内で最も投資環境が良い州と見られていると言える。 これは、SK 州が石こうの埋蔵量で世界第一位（世界の約 50％）であることや石油、ガスの生産にお いても上位に立っていることもその要因と考えられるが、ウランの埋蔵量及び生産量において世界 で上位を占めることも大きな要因であるとみられる。 また、同じく Fraser Institute が行った鉱業活動に係る許認可の取得にかかる期間についての調査によ ると、SK 州における鉱業許認可は 83％が 6 カ月以内に取得できており、遅くとも 18 カ月以内には 全調査対象会社が許認可を取得できている（表 1-21）。 当局自体が設定しているタイムラインの実現状況に関しては、SK 州については、80％以上実現され ていると答えた会社は 83％、60％～80％実現していると答えた会社は 17％に上り、SK 州では設定 されているタイムラインが守られているケースが多いことを示している（表 1-22）。 65 Survey on Mining Companies: 2017
https://www.fraserinstitute.org/sites/default/files/survey-of-mining-companies-2017.pdf 米国 54% 中国 6% 英国 6% ドイツ 5% フランス 4% 日本 3% オランダ 2% オーストラリア 2% インド 2% 韓国 1% アイルランド 1% その他EU7% その他 7%
32 表 1-20 Fraser Instutute による投資環境調査結果による SK 州のランク抜粋66 調査項目 2013 (全 112) 2014 (全 122) 2015 (全 109) 2016 (全 104) 2017 (全 91) 投資の魅力度 6 2 2 1 2 1 1 1 2 1 鉱業政策指数 10 4 5 2 4 1 2 1 3 1 ベストプラクティス鉱物ポテンシャル67 14 6 11 4 7 1 3 2 2 1 既存法令の実施、解釈、執行の不確実性* 5 2 4 1 3 1 4 1 3 1 環境規制の不安定性による投資抑制* 3 1 1 2 1 1 3 1 6 2 法規制の重複性と矛盾による投資抑制* 3 1 6 1 16 3 19 4 5 1 税制による投資抑制* 8 4 13 6 17 4 9 3 15 3 先住民の土地権利主張に関わる不安定性による投資抑制* 24 4 32 4 30 3 7 1 8 1 野生/公園保護地域の不明瞭性による投資抑制* 21 1 38 4 25 2 19 1 11 1 インフラ* 6 2 2 1 2 1 1 1 2 1 注： 右欄はカナダ国内での SK 州の順位 *はこれらの要素が投資を抑制する要因とならないとみられる評価度。 表 1-21 鉱業許認可取得期間68 州 2 カ月以下 3－6カ月 7－10カ月 11－14カ月 15－18カ月 19-23カ月 24カ月以上 BC州 18％ 42％ 24％ 9％ 3％ 0％ 3％ マニトバ州 56％ 22％ 0％ 0％ 0％ 0％ 22％ ニューファンドランド州 100% 0％ 0％ 0％ 0% 0％ 0％ ノースウェスト準州 14％ 43％ 43％ 0％ 0％ 0％ 0％ ヌナブト準州 0％ 14％ 43％ 43％ 0％ 0％ 0％ オンタリオ州 42% 29％ 4％ 13％ 4％ 0％ 8％ ケベック州 40％ 45％ 5％ 0％ 0％ 0％ 10％ SK州 50％ 33％ 0％ 0％ 17％ 0％ 0% アラスカ州 45％ 36％ 9％ 0％ 9％ 0％ 0％ アリゾナ州 22％ 22％ 0％ 11％ 11％ 11％ 22% ネバダ州 29％ 38％ 10％ 0％ 14％ 0％ 10％ 表 1-22 当局自体が設定しているタイムラインの実現状況 州 80%-100% 60%-80% 40%-60% 20%-40% 0%-20%
66 Survey on Mining Companies 2017
https://www.fraserinstitute.org/sites/default/files/survey-of-mining-companies-2017.pdf Survey on Mining Companies: 2016
https://www.fraserinstitute.org/sites/default/files/survey-of-mining-companies-2016.pdf
Survey on Mining Companies: 2015
https://www.fraserinstitute.org/sites/default/files/survey-of-mining-companies-2015.pdf
Survey on Mining Companies: 2014
https://www.fraserinstitute.org/sites/default/files/survey-of-mining-companies-2014.pdf
Survey on Mining Companies 2013
http://www.saskatoonchamber.com/ckfinder/userfiles/files/Research%20Papers/2013/Survey%20of%20Mining%20Companies.pdf
67 土地規制がなく業界のベストプラクティスを想定した場合（Policy/Mineral Potential assuming no land restrictions in place and assuming industry “best practices”）
68 Permit Times for Mining Exploration in 2017, Fraser Institute
33 BC州 18％ 21％ 27％ 12％ 21％ マニトバ州 11％ 33％ 11％ 11％ 33％ ニューファンドランド州 80％ 20％ 0％ 0％ 0％ ノースウェスト準州 43％ 43％ 0％ 0％ 14％ ヌナブト準州 14％ 14％ 29％ 0％ 43％ オンタリオ州 46％ 21％ 13％ 13％ 8％ ケベック州 40％ 30％ 20％ 0％ 10％ SK州 83％ 17％ 0％ 0％ 0％ アラスカ州 58％ 17％ 8％ 17％ 0％ アリゾナ州 33％ 11％ 0％ 22％ 33％ ネバダ州 29％ 43％ 10％ 5％ 14%
